期間限定☆カボチャづくしのテーマーパーク(夕季 麗野 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

――ここは、タブロス市に期間限定でオープン中の「テーマパーク」です。
園内では「カボチャの馬車コースター」、「どっきり★かぼちゃのホラーハウス」の二種類のアトラクションが楽しめます。どちらのアトラクションも、スリル満点。他の遊園地では体験できない、当園ならではの恐怖と興奮をお約束いたします!

また、カフェ・レストランも併設しております。
昼間はカフェとして、夜はレストランとしてお食事や休憩にご利用下さい。

夜の20時からは、広場でパレードが開催されます。
参加ご希望の方は、「コスプレ」または「仮装して」ご参加してください。
色とりどりの電飾で彩られた広場で、二人でダンスを踊ったり、記念写真を取る事も出来ます。

この機会に、お二人の特別な思い出を作ってみてはいかがでしょうか?
普段は恥ずかしくて仮装なんてとても……! と言う方も、このテーマパーク内ではお客様も係員も全員仮装しているので、恥ずかしくなんてありません!
遠慮せず、どんどん新しい自分を開拓してみましょう!

このテーマパークで遊べるのはこの時期だけなので、デートスポットをお探しの際は、ぜひ遊びにいらしてください。二人の素敵な思い出づくりに、かぼちゃが一役買ってくれること、間違いなしですよ。

解説

【施設】

□カフェ 午前10時から午後14時まで。
メニューは、かぼちゃプリン、パンプキンパイ、カボチャまるごとサンドイッチをご用意。(各150jr)
お飲み物は、コーヒー、紅茶、カボチャのポタージュ(各100jr)になります。

□レストラン 午後17時から午後21時まで。
メニューは、カボチャたっぷりグラタン、カボチャごろごろシチュー、かぼちゃと緑黄色野菜のサラダ(各150jr)
お飲み物は、お茶、紅茶、カボチャのポタージュ、ワイン【※ワインは未成年不可】が、それぞれ100jrとなっています。

【アトラクション】

■カボチャの馬車コースター
二人乗り。カボチャ型のジェットコースター。
ぐるぐると回転しながら上昇し、頂点に達したら猛スピードで滑走します。ハードなので、絶叫系が苦手な方は大変かもしれません。
また、かなり密着しますので、意中の方と急接近できるかも。
※乗り物酔いにはご注意下さい。

■どっきり★かぼちゃのホラーハウス
お化け屋敷。真っ暗で入り組んだ迷路状の通路を進み、出口を目指します。
途中、かぼちゃ頭のお化けが沢山飛び出してきます。かなりシュール。
暗いのでランタンをお渡ししますが、足元にはご注意下さい。
また、お化けたちはお客様が怖がって悲鳴をあげると、後ろをついてきます。呻きながらぞろぞろ追いかけてくることもあります。不気味。

■仮装パレード
夜20時からは仮装パレードです。
仮装した上でご参加下さい。電飾で彩られた華やかな広場で手を取り合って踊りましょう。
また、最後には、二人で記念写真を取る事ができます。(200jr)

【注意点】
仮装の内容は、プラン内に簡単に記入しておいてください。
今回は、装備してなくても、仮装内容を書いて下されば問題ありません。
出来る事が沢山ありますので、行動を二~三つまでにまとめて下されば、描写量をパートごとに分けて記述させていただきます。
※入場料として300jr消費されます。

ゲームマスターより

皆様、こんにちは。夕季です。
ついに、かぼちゃの季節が到来しました。
というコトで、かぼちゃ祭りのエピソードです。
乗り物で遊ぶのもよし、料理を食べるのもよし、仮装するのもよし、思う存分カボチャまみれの一日をお過ごし下さいませ(^^)/

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ミサ・フルール(エミリオ・シュトルツ)

  ☆仮装
パステルピンクのプリンセスラインのドレス
頭にはティアラを身に付け、『お姫様』のような装いで

☆ホラーハウス
・・・う(図星)
だって・・・エミリオがいるから大丈夫って思ったんだもん
へ!?あ、あの、その・・・!?(あたふた)
もうエミリオったら・・・ドキドキしすぎて怖いのなんて何処かに飛んでいっちゃったよ(赤面)
エミリオ優しいな・・・大好き(寄り添って)

☆パレード
なんだか本当のお姫様になったみたい
そんなに見つめないで
は、恥ずかしいよ・・・っ
お姫様に見えるのはドレスを着ているからだよね!
普段のお転婆な私じゃとてもそう見えな・・・ありがとう
なんか今日はいつもより増して積極的だね
ええ!?人が見てるよ!?


夢路 希望(スノー・ラビット)
  仮装パレードに興味津々
だけど照れがあり、迷った末
…スノーくんも一緒なら…

※仮装
私はシスターの格好に
(少しスリットを入れてみたりアニメや漫画寄りにアレンジ<裁縫、服装、メイク、サブカルチャー
変じゃないかな…
おずおず窺い
褒められたらもじもじ
「スノーくんも…凄く、かっこいいです」
チラリと見えた付け牙にドキドキ

「あ…えっと、じゃあ…お、お化け屋敷から…」
手を繋ぎ
時間までアトラクションを楽しむ

・パレード
お誘いには頬を染めて頷く
運動神経悪く足を踏まないようにするのに精一杯
引き寄せられると紅潮
笑みに見惚れ
(本当にかっこいい吸血鬼さん)
このまま噛まれても…
って
口に出てました?
あの、そのっ…ごめんなさい(赤面


淡島 咲(ドラグ・ロウ)
  仮装:赤ずきん
お菓子くれなきゃ悪戯しちゃうぞ~…な~んちゃって。
ふふ、今日はよろしくお願いしますね。テーマパーク、思いっきり楽しみましょうね。
仮装、似合ってるですか?ありがとうございます。
ドラグさんも素敵ですよ。
とりあえずカフェの方に行きますかかぼちゃのプリンやかぼちゃのパイなんかもあるそうですよ。ドラグさんは甘い物。お好きでしたよね。
ドラグさんと一緒に甘い物を食べて遊ぶのって楽しいですから。

夜は仮装パレードに参加、ですか?ちょっと照れちゃいますね。
踊り…どんな風に踊れば…?!手を取っていただければなんとかいけそうです!
最後は写真ですね。はい、ちーず!
とっても楽しかったです。


スティレッタ・オンブラ(バルダー・アーテル)
  仮装 魔女
レストラン:サラダ シチュー ワイン
貴方のお誘いなんて珍しい
しかもディナー付きなんてね?
ふふ、楽しかったわ
ホラーハウスで殺気滲ませた貴方見られて面白かったし
コースターでも身体密着して照れてたのとか可笑しかったわ

歩み寄る、ね…
記念日?
クロスケ、数日のうちに考えが大分変わったわね?
可笑しいけど、でもそういうの好きよ

パレードのお誘いまで?
あら
綺麗な会場ね…
って、ダンスか…
私流石にしたことないわよ?

…はい
そこでお決まり文句言う!

まさか踊れるとは思わなかったわ
あの時と同じ仮装なのにまるで別人ね

ふふ、踊りが終わったら記念撮影しましょ
吸血鬼のバルダーに首筋噛まれる写真撮るんだから

私、今度は絶対忘れないわ


アンジェリカ・リリーホワイト(真神)
  ▼仮装
黒猫又
服は真神さまが、見立てください、ました
赤い水干に黒いサリエルパンツ

▼ゆうえんち
この様な場所には、生まれて初めて来ました
すごくキラキラしてるのですね!
おばけ屋敷ですか?はい、行きましょう
どんな所か、楽しみです
…真神さま、溜息をついて、どうしたのですか?

かぼちゃ頭に驚いて
「ぴゃっ!」
ぞろぞろ付いて来たオバケを怖がります
「ぴゃああぁぁ!!」
おどろいただけです、こわくないです、おどろいただけです、こわくないです!
「こわく、な…ひっ…ぅえぇぇ」
真神さまに連れられて外へ出たら
一度落ち着く為お茶を頂きます

落ち着いたらパレード見ます

一人は、怖い事がたくさんあったけど
今は一人じゃないから怖くないです


●麗しきシスターと、雪の名を持つ吸血鬼

(仮装パレードかぁ……)
 夢路 希望は、「期間限定☆カボチャのテーマパーク」の広告を目にしたときから、密かな興味を抱いていた。
 行きたい。でも、言い出しにくい。
何となくそわそわしていると、精霊のスノー・ラビットがそっと近づいてきて、彼女の手元を覗き込んだ。
「へぇ……。期間限定のテーマパークだって。行って見ようよ」
「えっ?」
 だが、悩める希望の気持ちを知ってか知らずか、スノーから思ってもないお誘いの言葉が……。
「い、いいんですか?」
「見たいなぁ、ノゾミさんの仮装姿……」
 ――一瞬、スノーに熱い視線を送られて、希望の心臓がどきりと跳ねる。
「……スノーくんも一緒なら……」
 鼓動を逸らせつつ、希望は「行きたい」と素直に答えた。
「うん! 僕も着替えて行くね」
 スノーは、恋人の仮装姿に想いを馳せて、穏やかに微笑んでいたのだった。



 ハロウィンの魔法にかかった遊園地は、色とりどりの華やかな衣装に身を包んだ人々で溢れている。
「お待たせ……スノーくん」
 希望とスノーは、着替えを終えてから園内広場に集合した。
駆け寄ってくる希望の姿を見て、スノーは感嘆の声を上げる。
清楚なシスターの衣装だが、やや長いスカートのスリットから覗く肌が艶やかだ。
メイクの印象もあって普段より大人びて見えるのに、頬を染める仕草は少女のように愛らしい。
「ノゾミさん……凄く可愛い……!」
「あ、ありがとう……。スノーくんも……凄く、かっこいいです」
「――良かった。ちょっと格好つかないかなって思ってたんだ」
 スノーは吸血鬼の仮装をしていたが、あまり自信は無かったらしい。柔らかい耳を指先でつまんで、照れくさそうに苦笑していた。
だが、希望はスノーの口元にちらりと見えた二つの牙に、ドキドキしてしまう。
慌てて目を反らすと、スノーは彼女の手のひらを、ぎゅっと握りしめてきた。
たったそれだけの事で、希望の心は温かくなる。
「それじゃあ、何から行こうか?」
「あ……えっと、……お、お化け屋敷から」
 ヴァンパイアとシスターの二人は、互いの手をしっかり握り合ったまま、ホラーハウスへと向かうのだった。

●可憐な姫君と、心優しき魔王様
 
 ホラーハウスの真っ暗な通路を照らしているのは、手に持ったランタンの灯りだけ……。
しかも、時折不気味なうめき声が追いかけてくるので、恐怖に足が竦んでしまう。
「きゃあっ?」
 ミサ・フルールが思わず悲鳴をあげると、エミリオ・シュトルツは、そっと彼女の肩を抱き寄せた。
 不気味な館に似つかわしくない程、美しいミサの姿――。
パステルピンクのドレスを纏った彼女は、暗闇にひっそりと咲く花のようだ。
エミリオの視線は、自然と可憐な姫に吸い寄せられてしまう。
いつも彼女を見つめているからこそ、エミリオにはミサが無理をしている事はお見通しだった。
「怖いくせに、好奇心が勝って入りたいと思ったんでしょ」
「……う」
 少し意地悪い質問すると、ミサは分かりやすく黙り込んでしまう。
「やっぱり図星だ」と内心苦笑しつつ、エミリオは彼女の柔らかい髪を撫でてやった。
ミサは、消え入りそうな小声で呟く。
「だって……エミリオがいるから大丈夫って思ったんだもん」
 ミサは、エミリオに絶対の信頼を寄せていた。恋人としても、パートナーとしても。
「こら。……こんな所で、可愛いこと言わないの」
 ミサの言葉を聞いたエミリオの胸は、甘酸っぱい喜びで満たされた。
そっと彼女の横髪を指ですくい、耳元へ唇を近付けて囁く。
「……襲われたいの?」
「へ!?」
 エミリオの紅の瞳が、ランタンの薄明かりを受けて燃えている――。
抗えない程に熱のこもった視線が、ミサを捉えていた。
「あ、あの、その……!?」
「ふふ……」
 頬を染めて慌てるミサが可愛くて、エミリオは思わず微笑んでしまう。
「嘘だよ。――それは二人きりの時に、ね」
「も、もう、エミリオったら……。ドキドキしすぎて、怖いのなんて何処かにいっちゃったよ」
 背後から忍び寄るお化けの足音が聴こえて来たが、ミサは落ち着きを取り戻していた。
エミリオの甘い呪文が効いたのだろう。
「ほら、もっと近くに来て。魔王が傍にいるんだよ。お化けなんか怖くないでしょ?」
 闇色のマントに、夜を宿した漆黒の衣装を纏ったエミリオは、まさに魔王そのもの――。
だが、これ程優しくて紳士的な魔王は、他にどこにもいないだろう。
「エミリオ……大好き」
 ミサは、心のままそっと彼に寄り添った。
ランタンの微かな光と恋の熱が、暗闇の出口を柔らかく照らし続けていた。

●お茶目な赤ずきんと、甘党のキョンシー
 
 真紅の頭巾を被った淡島 咲は、童話の中の赤ずきんをモチーフにした愛らしい衣装。
精霊のドラグ・ロウは、異国では定番の妖怪・キョンシーの仮装で登場した。どちらの仮装も、二人の容姿を引き立てる個性的な仕上がりになっている。
「お菓子くれなきゃ、悪戯しちゃうぞ~……な~んちゃって!」
 咲は、いつになくご機嫌に微笑んでいた。
その雰囲気に釣られて、ドラグも素直な感想を述べる。
「仮装、可愛いね。……似合ってるよ」
「本当ですか? ありがとうございます」
「うん。俺、咲ちゃんならイタズラされちゃってもいいかも……! なーんてね」
 ワザと冗談めかして笑うドラグだが、それは本心から出た言葉だ。
今の咲の清純さを見れば、きっと誰もがそう思うだろう。
「ふふ。ドラグさんも素敵ですよ」
「ありがとう! ……でも、ちょっとお札が邪魔かも」
 キョンシーといえば、顔に呪符を貼り付けられて、術者に操られているイメージが一般的。
ドラグの仮装は忠実だが、前が見難くなってしまった。
咲は苦笑を浮べつつ、指でそっと符を避けてやる。
「今日はよろしくお願いしますね。とりあえず、カフェに行きますか?」
 遊園地といえばアトラクションだが、二人には別の目的があった。



「かぼちゃのプリンや、かぼちゃのパイなんかもあるそうですよ」
 『カボチャのテーマパーク』だけあって、併設されたカフェの店内も、ハロウィンを意識した華やかな装飾が施されていた。
窓際のテーブルへ案内された二人は、仲良くメニューを広げあう。
「ドラグさんは、甘いものお好きでしたよね」
「大好きだよー! 咲ちゃんと一緒に食べられて、嬉しいよ」
 咲とドラグは、甘味が大好物。
同じ感性を持つ二人は、スイーツ談義で大いに盛り上がった。
「ね、俺のパイと咲ちゃんのプリン、半分こしない?」
「はい、勿論です。そうしたら、両方食べられますね」
 さくさく食感のパイと、滑らかな舌触りのプリン。
二人一緒だからこそ、二種類のカボチャの味を味わえる。
お菓子を分け合う二人のテーブルは、幸せな笑顔で溢れていた。

●無邪気な猫又と、雅な平安貴族

「この様な場所には、生まれて初めて来ました。すごくキラキラしているのですね!」
 色とりどりの電球に飾られた園内を、鮮やかな衣装を着て歩く人々――。
見た事もない煌びやかな光景に興奮しているのは、アンジェリカ・リリーホワイトだ。
彼女の瞳には、純粋な好奇心が滲んでいる。水干の袖とツインテールの髪を揺らしながら、嬉しそうにはしゃいでいた。
「あんじぇ、はぐれるぞ」
 アンジェリカを見守っているのは、精霊の真神だ。蒼く上品な狩衣と白の袴は、仮装ではなく、彼の普段着。
その洗練されたオーラは、神として祀られていた過去ゆえだろう。
幼い神人と並ぶと、兄のような父のような……そんな雰囲気も感じさせた。
(ふむ。こーすたーとやらは「身長制限」があった気がするのでやめておくか)
「おばけやしきで、大丈夫か?」
「はい、行きましょう……どんな所か、楽しみです!」
 ――不安しかないが、仕方あるまい。
溜息が漏れた真神だが、アンジェリカは不思議そうに小首を傾げていた。
(……手くらいは繋いでやろう)
何も知らないアンジェリカを心配しつつ、真神は彼女の手を引いて歩いて行った。



「びゃっ!?」
「おい、あんじぇ。汝が怖がるから、ぞろぞろついて来ておるぞ」
「で、でも――ぴゃぁあぁ!!」
 ランタンを持ち、夜の闇よりも濃い通路を歩いていく。
それだけでも恐ろしいのに、二人の背後をカボチャ頭が尾行して来るのだ。アンジェリカの奇声は、止まる事を知らなかった。
「変な南瓜だの」
 一方の真神は、いたって冷静。
追いかけてくるお化け連中を、時折じろじろと観察していた。
「怖いなら、もっと傍に来るが良い」
「こ、こわくないです! おどろいただけです! ……こわくないです……!」
 アンジェリカは強がって見せるものの、進んでも進んでも、中々出口は見えてこない。
「こわく、な……ひっ?」
「どう見ても、怖がっているだろうが」
「うっ、うぇえぇ」
 ついには恐怖に耐え切れず、泣き出してしまった。
「――えぇい!」
 堪忍袋の尾が切れた真神は、アンジェリカの手をぐっと握りしめると、背後のカボチャに向かって叫ぶ。
「付いて来るな! あんじぇが泣いたではないか! どうしてくれるのだ!?」
 すると、美青年の迫力ある怒声にびびったのか、カボチャ頭達の動きがピタリと止まった。
その隙に、真神はアンジェリカを引っ張って誘導する。
「あんじぇ、行くぞ!」
「……うぅ……」
 すっかり意気消沈したアンジェリカを見つめながら、真神はこの後のご機嫌取りに思考を巡らせたのだった。

●紅の魔女と、黒き影のヴァンパイア

 静かなレストランの窓辺に、橙色の西日が差し込んでいた。
燃えるような空には薄い紫の雲が流れ、もうじき訪れる夜の気配を告げている。
「貴方のお誘いなんて、珍しい……。しかも、ディナー付きなんてね?」
 スティレッタ・オンブラは、料理とワインを待つ間、じっと窓の外を見つめていた。
魔女と呼ぶには艶やか過ぎる彼女の姿は、夕日さえ照明に変えてしまう。
バルダー・アーテルは、愉しげに瞳を細めるスティレッタの顔を盗み見てから、呟くように言った。
「最近、色々あったしな。お前と同居しているのもウィンクルムなのも変わらんのだし……その、なんだ……少し、歩み寄る努力をしようと思ってな」
 所々言葉を選びながら、淡々と語るバルダー。
――まさか、彼の口から「歩み寄る」なんて言葉が聞けるなんて……。
スティレッタは、それこそ夢の中にいる心地だった。
「ふふ、楽しかったわ。ホラーハウスでは殺気立つ貴方を見られて面白かったし……。ジェットコースターなんて、顔を真っ赤にして照れて、可笑しかったわ」
「……む」
 スティレッタに近づくカボチャ頭を睨みつけたり、不意に密着し合った肌の感触に、ドギマギしたり。
バルダーは一時も気の休まる暇がなかったが、ナンナが笑ってくれるなら目一杯楽しもうと思ったのだ。
「お前が楽しいなら、良かった」
 テーブル越しに視線を絡ませ合う二人のムードは、以前とは明らかに変わっていた。
 料理が運ばれてくると、バルダーは今日のデートの理由をスティレッタに打ち明けた。
「記念日?」
「ああ。丁度A.R.O.A.の依頼を受けたのが、去年の今頃だろう。一周年記念日だ。柄じゃないが、祝うのもいいだろ」
「……クロスケ。数日のうちに、考えが大分変わったわね?」
 今日のデートプランも、頭を悩ませて考えていたのだろう。
バルダーの強張った顔を想像して、スティレッタはくすくすと笑った。
「……笑うな、本気だぞ?」
「ふふ、ごめんなさい。可笑しいけど、そういうの好きよ」
 二人きりのディナーは、料理の湯気と穏やかな空気に包まれて、あたたかな時間となった。



 食事を終えて店を出ると、二人は仮装パレードが始まる広場へと向かった。
「貴方、ダンス踊れたの? 私は流石にしたことないわよ?」
「大分昔にやってそれっきり忘れてるが、ワルツ程度なら……」
 電飾の明かりが揺らめき、人々は手を取り合ってパレードの輪に加わっていく。
丁度、ワルツのしとやかなメロディーが始まるタイミングだった。スティレッタは、不敵に口元を吊り上げる。
「……はい、そこでお決まり文句言う!」
「は? 決まり文句?」
 一瞬面食らったバルダーだが、すぐにスティレッタの望みを悟った。
「あー……私と踊って下さいませんか?」
 実にぎこちない口調の誘い文句だ。
だが、スティレッタは満足そうに笑っていた。

「ええ、喜んで」
 
 バルダーのリードは力強く、軽快な足運びは心地よい。
 スティレッタは音楽に合わせて体を揺らし、バルダーにすべてを委ねていた。
「まさか踊れるとは思わなかったわ……。ふふ、終わったら記念撮影しましょ。吸血鬼のバルダーに、首筋噛まれる写真撮るんだから」
「……何だ、その記念撮影」
 ――しかも、俺がナンナの首に噛みつくのかよ……。
ヴァンパイアの仮装は、彼女の滑らかな肌に痕をつける為ではない。
バルダーは溜息を吐いたが、それも彼女らしいと思った。今夜の証を残しておく事は、きっと特別な記念になる。
 例え真似事のヴァンパイアとしても、叶えてやりたかった。
「私、今度は絶対忘れないわ」
「……忘れたこと の次は 忘れない……か」
 バルダーは、ぽつりと口の中で呟いた。
(幸せな顔を見られて、良かったのかもしれん)
 胸の中に秘められた言葉は、音楽に溶けて消えてゆく。
目の前で笑うナンナが眩しいほど綺麗で、バルダーはただ、幸福を噛みしめていた。

●夢の仮装パレード

「電飾がキラキラだね! ほらほら、一緒に踊ろう!」
 広場の中心で手を取り合っているのは、咲とドラグだ。
最初は踊り方が分からず戸惑った咲だったが、ドラグが手を取ってくれたので、大分気持ちが軽くなった。
リズムに合わせてターンが決まると、段々楽しくなってくる。
「俺に任せてくれればいいよ。ほら、ね?」
「はい……なんだか楽しくなってきました!」



 咲たちが踊っているそのすぐ近くでは、スノーと希望、ミサとエミリオの二組も、ダンスを始めるところだった。
「お手をどうぞ、シスター?」
「……はい」 
 希望が躓きそうになったり、人とぶつかりそうになっても、スノーが上手に誘導して彼女を守っている。
「……大丈夫?」
 ぴったりと体が密着すると、希望の頬は熱くなった。
リードも巧みで、優しい吸血鬼だなんて……。
今宵は一段と、スノーがかっこよく見えてしまう。
(格好のせいかな……。なんだか、いけないことをしている気分だ)
 だが、それはスノーも同じ気持ちだ。
甘く高揚したダンスのひとときが、二人の心を酔わせている。
「このまま噛まれても……」
「え?」
「……!? って、口に出てました?」
 つい、希望の口から心の声が漏れてしまう。
薔薇よりも赤く染まった頬を見て、スノーは照れたように微笑んだ。
「あの、そのっ……ごめんなさい」
「ノゾミさん、謝らないで――」
 そして、先ほどよりも強く希望を抱き寄せるのだ。
腕から離すのが惜しいほど、彼女が愛おしくてたまらなかったから。



「さぁ、お手をどうぞ。姫」
 エミリオはミサの前に膝をつき、そっと手を差し伸べた。
魔王の衣装を着ていなければ、誰の目にも王子に見える振る舞いだ。
ミサは、そっと彼の掌に自分の手を重ね合わせた。
「なんだか、本当のお姫様になったみたい……」
 煌く電飾の下、ミサは恥じらいに頬を染めている。エミリオは柔らかく微笑んで、ミサの腰を抱き寄せた。
「何を恥ずかしがっているの?」
「だって、普段のお転婆な私じゃ、とてもお姫様になんて見えな……」
「ミサ。ドレスを着ていようとなかろうと、お前が俺のお姫様であることは変わらないよ」
「……ありがとう」
 いつになく、きっぱりと断言するエミリオ――。
力強い腕の感触に包まれると、ミサの胸はいっぱいになってしまう。
「なんか、今日はいつもより積極的だね」
「――お前が可愛すぎて、今にも攫ってしまいたい気分なんだ」
「……エミリオ」
 見つめあう二人の距離はもう、ゼロに等しかった。エミリオの形の良い唇が、ミサの頬を掠めて囁く。
「ねぇ、キスしようか?」
「……ひ、人が見てるよ!?」
「大丈夫。こうやって隠すから――」
 魔王の漆黒のマントは、パレードの輝きも人波も遮る。
――今、この世界には二人きりだよ。
エミリオが悪戯に囁く声が、ミサの耳元に零れ落ちていった。
「……んっ」
「ミサ――」
 マントの中の恋人の秘め事を、誰も知らない。



 ダンスを満喫した咲とドラグは、記念写真を撮るべく列に並んでいた。
一つ前の順番がスティレッタとバルダーだったが、二人の刺激的な写真撮影の光景に、ちょっとびっくり。
「あんな風には流石にできないなぁ。でも、写真かぁ……。咲ちゃんとの写真は初めてだね。嬉しいよ」
「はい、私も。今日はとっても楽しかったので、記念になればなって……」
「え? 本当に?」
 満面の笑顔で殺し文句を言われ、ドラグもちょっとドキドキしてしまう。

「はい、ちーず!」
 
 こうして、二人の初めてのツーショット撮影が終わった。
(今日の咲ちゃんは、赤ずきんって言うより小悪魔ちゃんだよ……)
写真の中の咲とドラグは、幸せそうに微笑んでいる。
――今日の思い出は、いつまでも忘れないようにしよう。
ドラグは大切そうに、写真を握りしめたのだった。



「あんじぇ、機嫌は直ったか?」
「はい! もう元気です」
 ホラーハウスではテンションが下がっていたアンジェリカだが、真神が優しくなだめたおかげで、すっかり元気を取り戻した。
「さあ、ぱれーどとやらを見よう」
 夜のパレードのせいか、観客は昼間より多くなっている。手を離してはぐれたりしないよう、二人は寄り添い歩いていった。
「あの、真神さま。――一人は怖いことが、たくさんあったけど」
「……」
「今は、一人じゃないから怖くないです」
 悲しい過去を背負い、多くのものを失ったアンジェリカ。
孤独と共にあった彼女の傍らに、今は真神が立っている。
「汝が恐れることがあろうが、我が傍にいる。――安心しろ」

 真神の真心は、ひらひら舞う光の粒の中、アンジェリカの胸の奥に降り積もっていった。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 夕季 麗野
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ロマンス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ビギナー
シンパシー 使用可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 10月13日
出発日 10月18日 00:00
予定納品日 10月28日

参加者

会議室


PAGE TOP