プロローグ
深夜、自宅。
あなたは絶叫マシーンに乗った時よりも凄まじい悲鳴を上げて卒倒しかけた。
何とか後ろにひっくり返るのをとどまり、よろめきながらバランスを取る。
それからゆっくりと下を向き、深呼吸をした上で残酷な数字を確認。
点滅を繰り返す数字を見ているうちに頭に血が上って下がって、また上って、思わず壁を殴りたくなるが必死に我慢。
そして、絶望してその場に座り込み、必死に原因を考える。
--先週の居酒屋飲み会か!? この間の友達とのランチバイキングか!? それとも秋の新商品のお菓子食いまくったからか!?
……ヘルスメーターは自分至上最悪の数字をつきつけてきていた……
嗚呼、食欲の秋。
そういう訳で翌日の朝。あなたは野菜たっぷりのお弁当持参でA.R.O.A.に向かった。
ちょっと厳しい依頼があって、参加するウィンクルムは全員A.R.O.A.に集合することになっていたのである。
任務の途中にお昼時間になった。
「近所に美味いラーメン屋があるんだって。昨夜、調べておいたんだ。一緒に行こう」
そう誘ってきた。
(ラーメン!? す、好きだけど、あんなコッテリしたものを食べたら……ああ、でも精霊が楽しそうに誘ってくる……)
あなたはぐらぐらと意志を揺るがせながら、慌ててお弁当を取り出す。
「ごめーん、私、お弁当持ってきたの! あなたはラーメン楽しんできなよ!」
「え、そう……?」
精霊は寂しそうだったが、あなたは笑顔で断り切った。
(あ、ダイエット中って言えばよかったかな? でも、私の精霊に自分の体重の話とか体脂肪の話なんて出来ない……笑われちゃうかも。それにやっぱり太ってるとか思われたくない……)
罪悪感があったけれど、それよりも乙女心故に打ち明けられないあなた。
厳しい依頼は三日ほど続き、あなたと精霊は最後には見事に依頼を大成功させることが出来た。
その夕方、精霊はすっかり上機嫌であなたを誘う。
「やったな、成功だ! お祝いに飲みに行こうぜ!」
(う)
今までいつも、任務成功のたびに、あなたたちは居酒屋やバーでお祝いをしてきたのだった。二人とも成人しているのである。
「う、うん……。ごめん、今日はパス! なんかちょっと体調悪いから~」
あなたは目眩の演技の仕草をしながらそう言った。ダイエット中はアルコールのカロリーだって恐いのだ。
「え、大丈夫!? どこが悪いの!?」
「あ、う、うん。頭痛と目眩が……」
「おい、平気かよ!」
「家で休んでいれば平気よ~、それじゃ先に帰ってるね!」
あなたは心配する精霊を振り切って、A.R.O.A.の近くの地下鉄へ直行。精霊はなんだか戸惑っている様子。
あなたは朝夕に近所の運動場に行ってウォーキングに励む事にした。
ウォーキング中は、ダラダラスマホを見てしまわないように、スマホはあえて家に置いていく事にした。
ある日、夕方にウォーキングから戻ってみると、精霊から着信が三件。
慌ててあなたは電話をかけ直した。
「どうしたんだよ? スマホ置いて、どこ行ってたんだよ」
精霊はちょっと怒っているようだ。
「え、えーと……ちょっと、スマホ置き忘れたのよ~」
「スマホって忘れ物しやすいって言うけどさ、トラブルの元だぞ!」
あなたは精霊に叱られてしまった。なんとか笑って誤魔化す。
それから数日後、あなたは休日だったので家の中でプチ断食しながらヨガをしていた。
そこに前触れもなく玄関のベルが鳴った。
出てみると、そこには満面の笑みの精霊が。
「ちょうどそこを通りかかってさ~! お前の好きだって言うケーキ屋がセールやっていたから、買ってきたぞ~! ほら、お前の大好きなシュークリームとエクレア!」
「…………」
そんな糖分を取ってしまったら、今までの努力は水の泡。
あなたは勿論、糖質制限だってしているのである。
一回分ぐらいは激しい運動でもすれば取り返せるかもしれないが、その一回で、リミッター解除になって元通り糖分取りまくったらどうなる。あなたはいつもダイエットで、そのたった一回のミスで意志が貫けなくなっていた。そして悪夢の体重に……。
「ごめん! 悪い! それ持って帰って!!」
あなたはろくな説明もせず、ケーキごと精霊をドアの外に押し出してしまった。
そしてまた数日後--、あなたは、精霊から
『話がある』
そう言われて、ある静かな喫茶店に呼び出された。
あなたが行くと、精霊は険しい顔をして既にテーブルに着いていた。
「……どうしたの?」
あなたは席に座ると恐る恐る問いかけた。
「単刀直入に聞くけどさ」
精霊は真顔であなたに訊ねた。
「俺と別れたいと思ってない?」
「……は?」
思いも寄らないセリフにあなたは目が点になってしまう。
「他に好きな男が出来たんじゃないか」
精霊は至って真剣な顔であなたにそう聞いて来た。
あなたは何でそうなるのか一瞬分からなかったが、最近の事を振り返り、合点がいってひっくり返りそうになる。
確かに、誘いもパスしていたし、スマホでは挙動不審だし、プレゼント持って来訪した精霊を追い返したし……それは疑われて当たり前だ!
「ちょ、ちょっと待って! ちょっと待ってよ!」
あなたは大慌てで体の前で手を振るが、どうやって言い逃れようか考えている。
(この状況で、実はタダのダイエットだったの! って言ったら、余計怒らせるかも……それに、何㎏増えた?って聞かれたら、答えなきゃいけない。実は今、○○㎏で体脂肪○○なんて、精霊に言えないよー!!)
動揺するあなたを見て、精霊は余計、怪しいと思ったのかきつい口調で問い詰めてくる。
「お前が俺と別れたいっていうなら、俺は未練がましい男だなんて思われたくないから覚悟が出来ている。だけど、俺に隠し事をしたり曖昧な態度を取るのはやめてくれ! 俺がみじめになってくるんだ!」
「ち、違うの。違うのよ……」
さあさあ困った事になってしまった。
たかがダイエット、されどダイエット、食欲の秋と乙女の体重。
あなたのダイエットと精霊の関係はいかに!?
解説
食欲の秋で体重が増えてしまった神人(精霊)が、ダイエットを開始。それに対して精霊(神人)は? というエピソードです。
本文中のパターンをなぞらなくてもOKです!
プランには体重が何キロほど増えて、何ヶ月で何キロ落とす予定か、それを相方に知らせるかどうかを書いてください。
そして計画通りに体重が落とせたかどうか、そしてその間、相方とどんなやりとりがあったかを書いてください。
ダイエットでサプリやグッズを購入したので300jrになります!
ゲームマスターより
太っていようが痩せていようがお前はお前だ、愛してる! というものから、努力するお前は輝いている。結果を出したらますます好きになれるよ! というものまで様々なプランが読みたいです。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
シャルティ(グルナ・カリエンテ)
ダイエット 体重計に乗った時、見た数字が頭から離れなくて落ち着かない な、なによ そわそわ? してないわよ うるさい、してないったらしてない ……増えた 言わせる気? 太ったの。文句ある? …痩せるわよ 3キロ増えた。二ヶ月で完全燃焼(3キロ落とす) 紙に何キロ落とすか書いて精霊に見せる(結果はなんとか成功) これで、いくわよ ……あんた、デリカシーないわね。体重なんて訊かないで 中途半端で終わらせるつもりはないわ え? あ、あー……ええ。そのつもりだけど(照れ ダイエット中、甘いものなどの誘惑に耐えていたところ、稀に精霊に甘いものを口に突っ込まれたりした |
伊吹 円香(ジェイ)
大変ですジェイ 体重が……すごいことになってしまいました(にこっ 5㎏ほど増えました やっぱりお夜食がいけなかったのでしょうか……… え、ええ。秋はお腹が空いちゃうんです、食べてしまうんですよね(視線逸らし ……ダイエット、しますよ、ジェイ 頑張って元の体重に戻しますね 一瞬、現実から逃げたしたくなりましたけれど わ、分かりました。頑張ります……(苦笑 目標:体重が5㎏増えてしまったので、二ヶ月で元の体重に戻す なんとか戻すことに成功 ダイエット中、なぜか急に相方が食事に厳しくなり不思議に感じる ダイエットを開始する前は食事を少々残してもなにも言われなかったが、開始した直後突然きちんと食べるように言われるように |
●伊吹 円香(ジェイ)編
ある晩の事です。
伊吹円香が自宅で精霊のジェイに話しかけました。
「大変です、ジェイ」
「どうかなさいましたか、お嬢」
既に夜も更けて、後は寝るばかりの時刻になって円香にそんな事を言われ、ジェイは分かるか分からないか程度の身構えました。
ところが、円香は笑うのでした。
「体重が……凄い事になってしまいました」
にこっ
ジェイは拍子抜けしてしまいます。
「……はあ。体重でございますか?」
暗殺部族で育ったジェイは深夜に大変な事が起こったと言われたら全然違う想像をしてしまいます。
全く思いも寄らない体重の話題に藍鉄の目を瞬かせました。
円香はにこにこしながら話を続けます。
「5㎏ほど増えました。やっぱりお夜食がいけなかったのでしょうか……」
ジェイは円香の小柄な体を見て、5㎏増えるとどんな変化が起こるのだろうと思いました。言われてみれば体のラインがまろやかになったような気もしますが、正直そんなに目立った変化はありません。
それに円香本人がいつものように笑顔を絶やさないため、何がそんなに大変な事なのか分からないジェイでした。
「お嬢、夜食を食べてらっしゃるのですか?」
それ故に、ジェイは夜食の事を気にしました。
ジェイは暗殺業の時代から、体が資本ですので、体調管理には一通りの知識があります。そのため、夜食は体に良くないという事を知っていたのでした。
円香の体重よりも、円香の健康の事が気になってしまうのです。
「え、ええ。秋はお腹が空いちゃうんです、食べてしまうんですよね」
そう言って円香はすっと視線を逸らしてしまいます。
食べていて太ったのなら自業自得と思われるかと思ったのです。
「食べるのは構いませんが、毎日は控えた方が宜しいかと」
ジェイは堅苦しくそう言いました。
ジェイの表情が硬いのを見て、円香は彼女なりに考えました。
やはり、相方にはもの柔らかに微笑んで欲しいものなのです。
「……ダイエット、しますよ、ジェイ。頑張って元の体重に戻しますね」
円香は笑うのをやめて真剣な顔でそう言いました。
「ダイエット……」
ジェイはあまり縁の無い単語を口の中で繰り返しました。
ジェイは体調管理には日頃から気を遣っているので、ダイエットなどした事がありません。
そういう事をする男女が世の中には大勢いることは知っていましたが、正直、気にとめた事もありませんでした。
そのため、ジェイは、ダイエットと言ったら無茶な食事制限をすることと言うようなイメージがありました。倒れるまで食事を抜いたり、酷い時には拒食症になってしまうような事ばかりです。
大事な円香のそんな姿は見たくありまえん。
それでジェイは勢い、円香に劣らぬ真剣な表情になりました。
「あの、お嬢。このようなことを言ってもよいのか分からないのですが、食事を抜くのは賢明ではございません。朝昼晩、欠かさず召し上がって下さいませ」
どことなく口うるさい雰囲気になりながらジェイは円香にそう言い切りました。
円香は一瞬、現実から逃げ出したくなりましたが、こらえます。
「わ、分かりました。頑張ります……」
苦笑する円香。
「私は貴女が頑張ってらっしゃる姿、とても好感が持てると思っております。ですが、無理はなさらないで下さい。お体を壊してからでは遅いのですから」
ジェイはそんな円香に詰め寄るようにして間近に立ってそう言いました。円香は顔が近いような気がしてちょっと身を引いてしまいましたが、ジェイが気にしている事は分かりましたので、食事制限は避けようと思いました。
円香の目標は体重が5㎏増えてしまったので、二ヶ月で元の体重に戻す事です。
ダイエットは、なにしろジェイが食事については厳しいので、運動して脂肪を燃やして体重を減らす事になります。
円香はダイエット中、なぜか急にジェイが食事に厳しくなったので不思議でした。ダイエットを始める前は、食事を少々残しても何も言われなかったのですが、始めた直後から突然、きちんと食べるよう言われるようになったのです。
(普通、逆じゃないのかしら……)
円香はそう思いますが、ジェイも理由があっての事なのだろうと、反抗することはなく、三食きちんと食べていました。
円香の食事は、円香の母の指示で使用人が作ります。
円香がダイエットするという話を聞いて、母はどう受け取ったのか、円香の食事を素食にするように使用人に指示しました。
玄米にぬか漬けに味噌汁ばかり、夕飯に魚介が少しだけ出るというような食事です。
(お母さんは、話題の糖質制限の事を知らないのかしら。でも、玄米は体にいいんですよね?)
円香もそれなりに流行のダイエットを調べているのですが、厳格な母にとっては、粗食が一番体にいいようです。
秋ですから、円香は毎日のようにかぶや人参のぬか漬けを食べ、朝昼晩と様々な種類のきのこの焼きびたしやきのこの和え物を食べさせられました。
晩のご飯の時だけ、焼いた秋刀魚や鰯を食べます。
旬のものは栄養がありますし、何より美味しいのですが、毎日毎日毎日同じような献立ばかりです。
円香は、食事に不平を言うような育ち方はしていませんが、さすがにちょっとずつ……ちょっとずつ、飽きてきてしまいました。
また、朝晩にジェイについて貰いながらウェイトトレーニングをします。
早歩きのウォーキングがメインですが、その前後に柔軟体操やスクワットをするのです。
そちらの方もちょっときついかな……? というようなメニューで毎日毎日こなします。
ダイエットとは継続と忍耐なのです。
毎日のように体重計に乗って測って、一進一退を繰り返しながらも、円香は少しずつ体重を減らしていきました。
頑張っているのです。
そして、目標体重まであと1㎏! というその日。
家に帰ると父が笑顔で円香を手招き。何かと思ったら、知り合いから貰ったもみじ饅頭を一緒に食べてくれとのこと。円香に甘い父親は、円香が全然間食をしなくなったのを見て口実を設けて甘いものを食べさせようとしたのでした。
円香はダイエットを理由に断りましたが、父親は悲しそうな目で円香を見てため息をついています。それで、円香は、父の部屋に行って一緒にもみじ饅頭でお茶をしたのでした。
ダイエットで小さくなっていた胃は、もみじ饅頭を一個食べただけでもすっかり膨らんでしまいました。
そして、夕飯の時間になると使用人が呼びに来て、円香はいつもと同じ粗食を食べる事になります。
「え……と」
円香は、味噌汁とぬか漬けは適当に食べましたが、脂っこい魚とご飯がなかなか口に入りません。
お腹の中で、もみじ饅頭が膨らんでいるのです。
「今日はこれぐらいで……。ごちそうさまでした」
円香はご飯を半分ぐらい残して席を立とうとしました。
「お嬢、ご飯と魚が残っています」
そこで、ジェイがすかさず円香に声をかけました。
「ジェイ、私は今日は、お腹いっぱいなのです」
にこっ
円香はいつものにこやかな笑顔で乗り切ろうとしました。
「お嬢。……前にも言いましたように、食事は本当に大切なものです。あなたの体のために食べてください」
「ジェイ、ですが……」
「お嬢」
堅苦しい真顔のジェイとにこやかな円香の笑顔……。それがぶつかり合います。
一分後、仕方なく円香は席につきました。兄のような立場のジェイを本気で怒らせたら恐いという事を知っているのです。
「お嬢。目標体重まであと1㎏です。明日もウォーキングを頑張れば、期限までにはきっとダイエットは成功です」
食欲が出なくてゆっくりとご飯を口に運ぶ円香に励ますように言うジェイ。円香は飽きてきた粗食の味を噛みしめながら、間食は本当にやめようと思いました。
そんなトラブルも交えながら、円香はダイエットを成功させました。期限の二ヶ月後にはちゃんと元の体重に戻り、ジェイにいつもの笑顔で報告したということです。
●シャルティ(グルナ・カリエンテ)編
シャルティはここのところ、精霊のグルナ・カリエンテから見てとても落ち着きがありません。いつも心ここにあらずで何事か考えに耽っています。
(ダイエット……)
シャルティが考えているのはそのことです。
先日、体重計に乗った時に、見た数字が頭から離れなくて落ち着かないのです。
グルナは用心棒代わりとして、シャルティの自宅に同居しています。ですから、シャルティの苛立たしそうな不安そうな様子はずっと見ています。
ある日の昼食後、食後のお茶を飲みながらも、あらぬ方角を見て爪を噛んでいるシャルティに、ついにグルナが話しかけました。
「……おい」
「な、なによ」
「なんでお前この前からそんなにそわそわしてんだよ」
グルナはズバリと聞きました。
「そわそわ? してないわよ」
シャルティはむっとしてそう答えます。
「いや、してるって」
「うるさい、してないったらしてない」
そのまま二人は言い争いになってしまいました。
シャルティは逃げ切ろうとしたのですが、グルナがしつこくシャルティの調子の事を訊ね続け、ついには彼女は根負けしてしまいました。
グルナはそれぐらいシャルティの事を観察しているし、粗暴な態度の中でもちゃんと気遣っているということなのでしょう。
「……増えた」
ぼそっとシャルティは言いました。
「増えた? ……なにが」
「言わせる気?」
「言わねぇとわかんねぇだろ」
シャルティはカチンと来たようでしたが、ここでむきになってまたグルナと喧嘩するのもどうかと思いました。
むすっとした表情で言います。
「太ったの。文句ある?」
何か言われるかな。
言われたら即座に反撃してやる。
そんな表情でシャルティが言います。
「太ったぁ?」
「……痩せるわよ」
シャルティは有無を言わせぬ口調でそう言い切り、すっかり冷めてしまった紅茶をカップから一口飲みました。
グルナは首を傾げています。
むしろどこが太ったのか分からない様子なのでした。
シャルティの目標--
3㎏増えた。二ヶ月で完全燃焼
シャルティは紙に何㎏落とすか書いてグルナに突きつけ、見せつけました。
「これで、いくわよ」
「目標達成できんのか・ つか、今お前何㎏?」
「……あんた、デリカシーないわね。体重なんて訊かないで。中途半端で終わらせるつもりないわ」
シャルティはグルナの前で太ったと言わされた怒りも相まって、目が燃えています。闘志は満々。やりきるつもりです。
「……あっそ。まあ、やるってんなら頑張れよ。無理ない程度に。嫌いじゃねぇからな。お前が頑張ってる姿」
そっけない口調ながらも、グルナはなんだかんだでシャルティを認めていて、褒めるような事を言うのでした。
「え? あ、あー……ええ。そのつもりだけど」
シャルティは照れてしまいます。
グルナは喧嘩もしたけれど、理由はちゃんとしていて、シャルティの落ち着かない様子が気になっただけなのでした。
シャルティもその理由は理解して、これ以上喧嘩することもなく、相方に公表した上でダイエットに励む事にしたのでした。
基本的にシャルティは占い師ですから、それほどアクティブな性質ではありません。
持っているスキルも記憶術に占いに会話術にジュエリー。
どう考えてもインドアです。
記憶や会話はアウトドアでも使えるかもしれませんが、チャンスはインドアの方が多いでしょう。
そんなシャルティのダイエットです。
彼女は食べ物のカロリーを覚えまくって、厳正なカロリー計算に基づく食事制限で体重を落とすことにしました。
運動もしない訳ではないのですが、家の周りを軽くジョギングする程度です。
シャルティは食事は一日三回、決まった時間と決めました。間食は一切抜きです。
献立は一週間分まとめてカロリー計算をして作ります。
それから時間のある時に決まった分だけ材料を買い込み、一週間分おかずをまとめて作り、冷凍しておきます。それを三食決まった時間に回答して食べるのです。
作り置きのおかずが無駄になると思ったら、予定外のおかずも食べられなくなります。実に厳しい食事制限ダイエット。
ちなみに、グルナも記憶術はLV5です。
脳筋のようでいて、結構頭がいいのです。
シャルティのやっている事をそれとなくチェックしていたグルナは、見ているうちに自分も自然と食べ物のカロリーが分かるようになってきました。
何しろ頑張っているシャルティが好きな訳ですから、彼女が今一心不乱に頑張っている姿に興味を持たない訳がないのです。
一緒に買い物に行った時など、グルナはカロリーの高くない野菜や果物を勧めてくれたりするようになりました。
「気にしてくれているのね」
「まあ、今、任務もなくて暇だからな」
そんな会話をしながら、シャルティはせっせと厳しい食事制限ダイエットを頑張り続けました。
何がきついと言って、……きついのはグルナだったりします。
確かに、彼もカロリーを覚えてくれたりして色々役立つし、グルナが見ていると思えば途中でダイエットを投げ出す気にはなりません。
しかし、グルナと同居している以上、ちょっとでも間食したりカロリーの高いものを食べたりする訳にはいかなくなったのです。ほんの少しの気のたるみも許されないのです。意地です。
二ヶ月の間の辛抱と分かっていても、これは21歳の花盛りの乙女にはきついでしょう。
友達とスイーツを食べに行ったりすることも全く出来なくなるのですから。
それでも燃えているシャルティは根性を出してがんばり抜きました。
そのため順調に体重は減っていき、シャルティは達成感を得る事が出来ましたが……それでもちょっぴりイライラしてしまいます。
一方、シャルティに軽く協力しつつも、自分がダイエットすることもないグルナは、たまにお菓子を貰って帰宅したりするのでした。
何しろ、時期はハロウィーン。A.R.O.A.の本部や行きつけの店でお菓子を貰う機会が増えたし、グルナはそれをいちいち断らない性格なのです。貰えるものは、貰っとく。
しかも平然とシャルティの前でそのハロウィーンのかぼちゃクッキーとかを食べたりするのでした。
「…………」
シャルティはそんなグルナを無表情にじーっと見たりします。
見ないように努力するのですが、視線は勝手にグルナの……否、グルナの食べているクッキーの方に向いてしまうのでした。
「…………」
無言で誘惑に耐えるシャルティ。
するとグルナは、シャルティの方に手招きをします。
「なによ……」
そうシャルティが口を開けた途端、その口の中にクッキーが突っ込まれました。
びっくりするシャルティ。
「A.R.O.A.の職員のおねーさんの手作りだって。うまいだろ」
「ちょ、ちょっと……私、ダイエット中!」
怒りながらも口に入った以上は食べてしまうシャルティ。
「一個や二個なら大してかわらねーよ。それぐらい、外を走ればすぐだ」
「無理矢理突っ込んでおいて何言ってるのよ」
「俺も一緒に走ってやるから」
「はあ? あんたと一緒に? 筋肉バカのあんたについていけって言うの?」
可愛くない事を言うシャルティでしたが、久々に甘いものを食べられて満足そうな様子です。
そして次の日には、二人で、家の周りをいつもより多めに走り回ったのでした。
そんなトラブルも何度かありましたが、二ヶ月後にはシャルティはきっちりと3㎏痩せて元の体重に戻りました。
ダイエットは成功です。
そして、グルナとの距離もちょっぴり縮まったようでした。
依頼結果:大成功
MVP:
エピソード情報 |
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マスター | 森静流 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | コメディ |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ビギナー |
シンパシー | 使用可 |
難易度 | 簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 2 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 10月11日 |
出発日 | 10月17日 00:00 |
予定納品日 | 10月27日 |