プロローグ
「今回の任務はごく普通のDスケールオーガになりますね。相手は……まあ、角の生えたゴリラが1体。と考えて問題ないようです」
「角の生えたゴリラ」
A.R.O.A.の職員が渡してくれた資料を見ながら、あなたと相方は顔を見合わせた。
「タブロスから電車で二時間離れた農園に、このゴリラ型オーガが出没するようになったのです。狙っているのは農園に果物狩りに訪れた観光客。昔から美味しい果物で有名な農園ですので、今の時期だと大変な数の一般人が来訪します……」
ふんふん、とあなたと相方は頷いた。
「ゴリラ型オーガは一般人に危害を与えるだけではなく、農園の果樹まで荒らそうとするようです。この農園には、リンゴ、ブドウ、梨、栗の四種類が取り放題、食べ放題なのですが、そのせっかくの収穫物をむしったり樹木に傷つけたり……」
「え? そのゴリラオーガ、リンゴ食べるの?」
相方が思わず突っ込んだ。
「ゴリラなだけに果物好きなんだろうか……」
あなたもそう呟いてしまう。
「さあ、食べてるのかどうかまでは確認が取れていないんですが……。せっかく実った果物を荒らされるわ、一般人は襲われるわで、農園の方はかなり頭が痛い状況ですよね。それで、我々A.R.O.A.に依頼が来た訳です」
「ああ、なるほど」
自然な流れである。あなたと相方は秋の果物を守るためにも受ける気になってきた。
「ゴリラ型オーガはどんな攻撃をしてくるんですか」
あなたが訊ねると、職員は資料の1ページを示した。
「まあ、なんといっても怪力です。人間の何倍もの腕力で殴りかかって来ますので、それに気をつけてください。また、皮膚を岩石のように固くする能力を持っていて、攻撃を岩で受け止めます。さらに、その岩を体外に射出……その岩を投げたり、岩で殴りかかったりするようです」
「……ちょっと手強いんじゃないですか??」
相方は渋い顔で言った。
「そのかわり、知能はまるっきりゴリラですので、戦い方はいくらでもあると思いますよ」
職員は微笑んでいる。
まあそれほどしんどい依頼でもないようだ。
「農園の人に聞いたところでは、ゴリラは大体、朝方八時頃に必ずやってくるようです。農園の人が銃などで威嚇をすると帰っていく事がほとんどですが、たまに果物をむしったり枝を折ったりしていってしまうそうです。朝食気分なんでしょうかね? それから、午後に一般客が大勢いる頃に突然現れて、暴れる事もあるようです。それはその日の気分によるらしく、来たり来なかったり」
あなたはメモを取りながら聞いている。
「農園の人達は、とにかくこの暴れん坊オーガを退治さえしてくれれば、と思っているようです。お礼にリンゴブドウ梨栗、取り放題食べ放題でもてなしてくれるとのこと。また、農園の奥さんは料理研究家でもありますので、頼まれればリンゴやブドウで素敵なお菓子や料理を作ってくれるそうです」
おお、と相方は喜んでいる。
「あとまた、これは噂レベルなんですが……。その農園の奥に”女神のリンゴ”と呼ばれるリンゴの木があって、その木の下で願い事をすると、どんな願い事でもかなうそうですよ。特に恋愛方面に御利益あらかたなそうです」
職員は含み笑いをしながらあなたを見ている。あなたは、気まずくて目をそらし、そのあと相方の方をそっと盗み見た。相方は、平然としている。
「取れたてのリンゴや梨かあ、うまそうだなあ」
(お前は色気より食い気だな、本当に!!)
あなたはなんだかイライラしてきた。お前っていつもそう!
「どうします? この依頼、受けますか?」
職員の方は、あなたたちのいい返事を期待しているようである。
解説
●任務
ゴリラ型オーガ1体を倒すこと
(Dスケールオーガ)
●ゴリラ型オーガ
角の生えた体長180㎝ほどのオーガ
呼び名 アルチーロ
・非常な怪力
・攻撃を皮膚を岩石に変えて受け止める
・体外に出した岩石を武器にして、投げたり殴ったりする
・知能はタダのゴリラ
●場所・時間
タブロスから二時間ほど離れた場所にある農園
リンゴ・ブドウ・梨・栗 の四つの果樹園があり
アルチーロは朝八時頃必ずリンゴ園から入ってきて果物を取ったりして荒らす。
気まぐれに午後からやってきて一般客を襲う事もある。
農園が一般客に開放されるのは朝九時。
●取り放題
アルチーロを倒したら、農園の人が果物狩りを取り放題食べ放題にしてくれます。
取った果物を農家の奥さんが料理してくれる事も可能です
●女神のリンゴ
噂レベルですが、このリンゴの木には恋愛成就のご加護があるそうです。
●農園の人
農家のご主人、エリック。準備して欲しいもの、ことがあるときはエリックに頼んでください。
プランには
<戦闘準備>
<戦闘>
<戦闘後>
と大体三つに分けて書いていただけると助かります。
ゲームマスターより
秋は果物狩りも楽しみなものです。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
俊・ブルックス(ネカット・グラキエス)
準備 オーガがいつもどこから入ってくるのかを聞く 農園内には8時より前に入り、トランスとハイトランスして待ち伏せ 普通に入り口から入ってくるなら入り口付近の木の陰に 無視して柵とか壊してくるならその付近に隠れておく 場所が分からなければ入ってきそうな場所の目星をつけオーガ・ナノーカを放ち偵察 見つけたら皆の所に向かい知らせる 戦闘 木陰に隠れ味方RKが敵を引き付けるのを待つ 背後等の死角から攻撃し敵が木や後衛に向かうのを阻止 ヒット&アウェイを意識し一撃当てたら後退し次の機会を窺う 戦闘後 農園が戦闘で荒れてたら簡単に片付けを手伝う 果物取り放題はネカと二人で …何か似てると思ったら、ネカのほっぺか(リンゴを顔の横に並べ |
ユズリノ(シャーマイン)
事前 8時より早く農園へ 到着すぐトランスする アルチーロの侵入口の目処がエリックさんに聞ければその周辺で 目処なければ皆と離れ過ぎない位置で 目と耳凝らし隠れてリンゴ園で待機 発見時は仲間に知らせる 戦闘 コンフェイトドライブを彼に使う 危ない時は彼の後ろに避難 岩石攻撃封じや足止めに呪符で拘束を試みる ネカットさんの攻撃時は避ける 戦後 彼の気遣い嬉しい「やったね 戦後の後片付け手伝います 女神のリンゴの木 手を合せ祈る 「今日の無事を感謝したのとこれからの無事を祈った 取り放題は食べ切れる分だけ採る 農家の奥さんにご教授頂き梨のタルト作り 菓子スイーツ2 可能なら皆さんに振る舞いたい 「初依頼がこんなに美味しくていいの? 絡み歓迎 |
セツカ=ノートン(マオ・ローリゼン)
・準備 ご挨拶してから痛んでいる果物があれば貰います ・行動 8時ちょっと前に集合 出入り箇所があればそこに待機 無理なら別々に待機 来たら、木の陰に隠れつつ大声で皆に知らせます ・戦闘 僕は果物を投げて興味をそらす役割だよ 防御を突破しようとする=1人に集中攻撃しようとする>攻撃しようとする の優先度で果物を投げて興味をそらすね 「こんなに美味しい果物あるのに、君はいらないの?」 「ほら、おいしいよー!」 って、興味をそそられるようにするね 出来るだけ攻撃は避ける方向で ・戦闘後 お片づけ、皆んで頑張るね あとはマオと一緒に果物狩り! マオに食べれる範囲でとってもらうよ! タルトもらえたら、ありがとうってお礼いうよ |
●
『農園にゴリラ型オーガが現れる。アルチーロと呼ばれるそのオーガを退治して欲しい』
その依頼を受けたウィンクルム達は、該当の農園に朝七時半過ぎに集合した。
セツカ=ノートンとその精霊マオ・ローリゼン。
俊・ブルックスとその精霊ネカット・グラキエス。
ユズリノとその精霊シャーマイン。
計六名。
彼らが秋の空の下、朝の早い時間に農園の門の前に現れた。
「おはようございます。今日はよろしくお願いします」
「おはようございます」
セツカとマオが礼儀正しく挨拶をすると、俊やユズリノ達も口々に挨拶をした。
既に何度もオーガを討伐してきた俊達は余裕の表情だったが、経験のないセツカやユズリノは緊張で顔が強張っている。それを精霊達が心配している様子だった。
すぐに農園の主人、エリックが丁重に彼らを出迎える。
「今日はどうもありがとうございます。オーガを退治していただければ、農園の果物はいくらでも採ってくれて構わないんで。どうぞよろしくお願いします」
がっしりした体型に野良着姿でエリックはウィンクルム達に頭を下げた。エリックに続いてその奥さんらしい女性も出てきてウィンクルム達に礼をする。
「オーガ退治のために、私どもも精一杯協力しますんで……」
エリックがそう申し出た。
それを聞いて、まずユズリノが訊ねた。
「アルチーロはリンゴ園から襲うと聞いていましたけれど、侵入経路はどうなっているんですか」
「ああ、それは……東の低い木戸を飛び越えて入ってくるんです。その木戸はこちらです」
エリックはウィンクルムを案内するため先に立って歩き始めた。
農園は広い門から入ると広大な空間が広がっている。入ってすぐは可愛い池のある広場だった。そこからリンゴ、ブドウ、梨、栗のそれぞれの果樹園に繋がっているのだ。リンゴ園は広場の右手で、遠目からも赤々としたたわわな実りが見えた。
澄み渡った秋の青空いっぱいに枝を広げたリンゴの木。枝ぶりも、リンゴの実の色艶も、葉の青々とした様子も、エリックやその奥さん達がせっせと世話をしているのがよく分かり、これは人間のみならずオーガだって奪い取りたくなるだろう、というのが分かる気がした。
「見事なリンゴだなあ……」
俊は思わずそう呟いた。
「こんな立派なリンゴを毎朝奪ったり、枝を折ったり乱暴するオーガなんて、許せないね」
ユズリノが真剣な面持ちになって言った。
「でも、リノ、無茶はするなよ」
シャーマインは初めての戦いという事もあり、神人を気遣っている。
「本当に見事な実りですね。ネカザイルとしては、豊穣の踊りを捧げたいところですが……」
ネカットは平然とした顔でそう言い放ち、俊が顔をしかめた。
「ネカザイル??」
「なんでしょうね??」
セツカとマオが聞き慣れない単語に不思議そうな顔をする。
「何も聞いていない事にして。ネカ! 今そんな場合じゃないから!」
俊がセツカを窘めてから精霊に突っ込む。
「あの木戸なんです。他にも2~3箇所、リンゴ園から外に通じる戸があるんですが、他はみんな鉄製で高いものなんですよ」
エリックがそう言って、リンゴの木々の向こうを指差した。そこには、セツカの背丈よりもやや低い高さの粗末な木の戸がある。木戸は農園全体を取り囲むコンクリート塀と外を繋ぐものらしい。外は手入れされていない雑木林だ。
「アルチーロはこの戸を飛び越えて中に入ってきて、毎朝荒らし放題なんです。私や農園の職員が銃で撃ったり爆竹を鳴らしたりすると逃げていくんですが……何しろ厄介なんです」
「なるほど。毎朝ここからなのか。それじゃ、この近くで待ち伏せしよう」
俊が納得してそう言った。たかがゴリラといっても、高い鉄の塀と低い木の塀の違いぐらいはさすがに分かるのか。
「お願いします」
また頭を下げるエリック。
「あ、あの……エリックさん! 痛んでいる果物があったら、分けてもらえないでしょうか!」
そこでセツカがエリックに頼んだ。
「痛んだ果物? たくさんありますが、それが必要なんですか……?」
エリックは不思議そうな顔をしたが、ウィンクルムの頼みだと思って、ついてきた妻に言って痛んだ果物を取ってこさせた。
セツカは籠いっぱいに入った変色しているリンゴや梨、それに虫のついた栗などを見てぎゅっと拳を握りしめる。
「それでは、エリックさん達は安全なところに避難して下さい。後は私達の仕事ですので……」
ネカットが指示を出すと、エリックと奥さんは急ぎ足で農園の事務所の方に戻って行った。
ウィンクルム達はアルチーロの襲撃に備えて、木戸から離れた木陰に隠れていった。一人、マオだけは味方の射程からずれて木々の間に立った。
俊とネカットがトランスとハイトランスを行い、それを見て他のウィンクルムも次々とトランスを行った。
「よし--行け!」
俊はアヒル特務隊「オーガ・ナノーカ」を木戸の方角へ放った。
小型カメラの搭載された青いアヒルの人形はトコトコと木戸の方へ歩いて行き、辺りを注意深くうかがい始める。瘴気を帯びているため、このアヒル特務隊はオーガに気づかれにくいのだ。
俊はオーガ・ナノーカを操作しながらアルチーロが現れるのを待つ。
他のウィンクルムもそれぞれの持ち場で呼吸を整えている。シャーマインは近くの木陰のリノの肩をそっと叩いて励ました。
(俺にも若干気負いはあるが、リノを守ることに迷いはない)
朝の太陽はだんだん高く登っていき--八時直前。
オーガ・ナノーカは木戸に手をかける巨大な黒い手を撮影した。
「来たぞ!」
俊が仲間に声をかける。
ウィンクルム達に緊張が走る。
木戸に両手をかけて軽々と飛び越えてリンゴ園に侵入したのは、頭に大きな角を生やした巨体のゴリラ。
アルチーロだ。
アルチーロは、目の前に、見慣れた職員ではない男がいることに気がつき、頭を傾げた。
「ウホ!?」
アルチーロの目の前にいるのは、チェインメイルを装備したマオである。他のウィンクルム達は離れた木陰に隠れている。
マオはアルチーロが神人達に襲いかからないようにと、まずアプローチを行って自分に注意を惹きつけた。
「ウオオッ」
相手を敵だと認識したアルチーロは、太い腕をぶんぶん振り回しながらマオに殴りかかって来た。
マオはターゲットシールドを前に突きだして耐える。
ガンッ、ガンッと、ゴリラの非常識なほどの怪力に、盾は今にも吹っ飛ばされそうだ。仲間を信じてひたすら防御に徹するマオ。
アルチーロは相手が意外に手強いことを知ると、うなり声を上げながら、自分の両腕を徐々に岩石に変えていく。
「ウホホホー!」
奇声を上げながら岩の塊と化した腕で、マオを叩き潰そうとした。
そのアルチーロの後頭部に、いがぐりが突き刺さった。
「ウホ?」
腕を止めて振り返るアルチーロ。
その顔面に腐ったブドウが直撃。
「ほら、おいしいよー!」
セツカは先程、エリック達から分けてもらった痛んだ果物を次々とアルチーロに投げつけて、気をそらそうとしていた。
「こんなに美味しい果物あるのに、君はいらないの!?」
そう大声をあげながら、変色して柔らかくなった果物をポイポイとアルチーロに向けて投げる。
「ウガァッ!」
アルチーロはそれが腐ったものだと分かったらしく、腹を立てて腕を振り上げセツカの方へ走り出した。
慌ててマオがアプローチを撃とうとするが間に合わない。
そこに、ネカットの声がかかる。
「行きますよっ、乙女の恋心II!」
セツカを庇おうと飛び出ていたマオは、慌てて身を引いた。
アルチーロの筋肉のついた胸、そこが赤く染まる。
ネカットがエネルギーを照射し、アルチーロの体の中心を焼き焦がしているのだ。
エネルギーの直撃を受けたアルチーロは、声にならない悲鳴を上げて、後ろにのけぞって体を揺らがせる。
そこに、俊が飛び出て行った。
アルチーロの完全な死角から、妖刀紅月を構えて突進。
鋭くアルチーロの岩石化していない脇腹を刃で抉る。
「ギャッ!」
立て続けの攻撃に苦痛の声を立てるアルチーロ。
敵を倒そうと振り返り、腕を振り回すが、俊は素早くリンゴの木陰まで逃げてしまっている。
「シャミイ、頑張って」
その頃、ユズリノは、シャーマインの頭にぽんぽんとコンフェクト・ドライブを行っていた。
「サンキュ」
シャーマインの能力が跳ね上がる。
ユズリノの加護を受けて、シャーマインは、攻撃を受けて大暴れしているアルチーロの前に出る。
アプローチIIで注意を惹きつけた。
振り上げられた巌の腕をスカイエアーシールドが受け止める。
やはりオーガのものとしか言いようがない、異常な怪力で腕を振り回しシャーマインを潰そうとするアルチーロ。
シャーマインはそのアルチーロの攻撃をかいくぐって、片手斧リントヴルムをふりかざし、何とか一打を加える。
益々怒り狂うアルチーロは、大ぶりに腕を振り回し、自分の傷ついた胸を叩いてドラミングを始める。
「ウホオオッ! ウホホホホホー!!」
……まるっきりゴリラである。
そうしているうちに、アルチーロは腕ばかりか、胸、腹、背中、体中のあらゆる部分が岩石化していく。
そして自分の両手を岩石として膨れあがらせ、岩の塊を作り上げる。
そして、その岩の塊でシャーマインを殴りつけようとした。
「!」
間一髪、シャーマインは身をかわすが、地面に呆気に取られるような大穴が出来てしまう。
びっくりして声も出ないユズリノとセツカ。
「ウゥゥ……ウガアア!!」
岩が外れて怒るアルチーロは、また両手から岩石を産みだそうと、手を膨れあがらせる。
「あんなものを神人に当てられたら……」
マオは呆然とそう呟き、必死に自分に注意を惹きつけようとアプローチを放つ。
マオの方に獣の動きで走り出すアルチーロ。
アルチーロの方角にマオがいると悟ったセツカは、籠から痛んだ果物を取り出して、物凄い勢いで投げつけ続ける。
「バカー! マオを傷つけるなー!」
「セツカ……」
こんな場合だというのに、マオの病んだ瞳がセツカの方へ。
ユズリノもシャーマインを庇うために呪符を投げつけてアルチーロの動きを封じ込めようとする。
「シャ、シャミイ……!」
そんなウィンクルムに思わず微笑んでしまいながら、俊は妖刀を構えてアルチーロを死角から攻撃。岩石化していない脚の筋を斬りつける。
アルチーロは痛みでバランスを崩し、地面に膝をついた。
「もう一撃!」
ネカットが叫び、マオとシャーマインはアルチーロの周囲から飛び退いた。
まばゆいエネルギーが放たれて、アルチーロの胸を焼き焦がす。乙女の恋心II。
「ガアアアッ……!」
アルチーロは空に向かって絶叫をすると、そのまま後ろにのけぞっていき、ひっくり返って倒れた。そのままオーガは動くことなく、浄化された。
●
「やったな」
シャーマインはユズリノの肩を抱いてねぎらう。
「やったね」
ユズリノはそんな彼の気遣いが嬉しい。
他のウィンクルム達も、勝利に嬉しさを隠せない。
それからウィンクルム達はそろってリンゴ園の後片付けをしてまわった。
「何もそんなことをしなくても……後は私達がやりますんで」
エリックが遠慮してそう言う。
「いや、散らかしたのは俺達だし」
俊がそう告げて、ウィンクルム達は、ちゃんと自分達が荒らした分は全部自分達で片付けたのだった。
片付けを終えると、ユズリノとシャーマインはリンゴ園の奥にある女神のリンゴを探しに行った。
女神のリンゴは、ひときわ大きな神木のような佇まいのある立派なリンゴの木だった。
ユズリノは丁寧に手を合わせて祈りを捧げる。
(今日の無事を感謝します、女神様。これからもきっと無事で任務をこなせますように……)
オーガを倒すのがウィンクルムの任務なのだから、これからも危険な目には遭い続けるだろう。シャーマインと自分の無事を祈るユズリノ。
「何を祈ったんだ?」
一緒に手を合わせていたシャーマインがそう訊ねた。
ユズリノは正直に、恋愛ではなく任務の無事を祈ったと話した。
シャーマインはふっと笑ってユズリノの頭を撫でた。
「俺もだ。無事でよかった」
そうして初任務を成功で終わらせたことの安心感を噛みしめる二人だった。
二人がリンゴ園の奥に戻っていくと、そこでは籠を借りた他のウィンクルム達が果物取り放題を楽しんでいた。
「リンゴだけじゃなく、梨も栗も、取っていいんだよね!」
セツカは満面の笑みである。
しかし、採っているのはセツカ本人ではなく、もっぱらマオだった。
セツカが背が低くて枝に手が届かないということもあるかもしれない。
「マオ、それじゃないよー……もっと左の大きいリンゴを採って!」
「はい、セツカ。これですね」
そんな会話が聞こえてくる。
一方、俊とネカットはそろって同じリンゴの木のところで実をもいでいた。
「料理も魅力的ですがまずはもぎたてをそのままいただきます!」
ネカットは楽しみにしていたらしく、いい笑顔である。
俊は手頃なリンゴをもいで、ふと、ネカットの方を見る。
それからネカットの頬に押しつけるようにしてリンゴの実を並べた。
「……何か似てると思ったら、ネカのほっぺか」
確かに赤みを帯びてすべすべしているネカットの頬には似ていたかもしれない。
「ふふふ、紅顔の美少年ならぬ美青年です?」
ネカットは楽しげに笑っていた。
リンゴ園だけではなく、梨、栗、ぶどう園なども巡って、ウィンクルム達は自分達の食べる分を調達した。
ネカットと俊は農園の食堂を借りて、もぎたてを楽しんだ。
その頃、ユズリノはエリックの奥さんにもぎたてフルーツでのタルト作りを教わっていた。
「うん……出来るよ。こうするんだね!」
菓子スキルを活かして四種類、色とりどりのフルーツタルトを作り上げるユズリノだった。
そのユズリノの脇でシャーマインは焼き栗を作るために栗のトゲトゲに苦戦。
やがて、ユズリノと奥さんはフルーツタルトを焼き上げて食堂に持ってきた。
「どうぞ、皆さん、食べてください!」
「ありがとう!」
もぎたてフルーツで焼きたてタルトを貰えたセツカは実に嬉しそうである。
嬉しそうなセツカを見て、マオはもっと嬉しそうである。
シャーマインの方はフレッシュジュースを人数分作って、テーブルの上に並べた。
ネカットと俊も、ユズリノがキッチンを借りる事は知っていたのでもぎたては半分ほどしか食べていなかった。
「ありがとうございます。菓子作りが得意なんですか? 素敵ですね」
紳士的な笑顔でユズリノを褒めるネカット。ネカットも菓子スキルは持っているので、ユズリノの腕前がどんなものかは分かる。
「俺はコーヒーや紅茶なら結構分かるんだけどな……」
俊はタルトやジュースを見ながら感心のため息をついている。
「まずは乾杯!」
シャーマインがジュースを掲げて音頭を取った。
そんな訳で、任務を無事成功させたウィンクルム達は、農園の食堂で、もぎたてフルーツを使ったスイーツで祝勝会を開いたのだった。
四種類のタルトとジュースに舌鼓を打ちながら歓談し、楽しい時を過ごした。
季節のフルーツを味わいながら、お互いの無事を喜び合い、冗談を言い合い、お互いの事を知り合う。最近ウィンクルムになった者も、既に年数を積んだものも関係なく、ただの果物好きな若者同士として交流を深めたのだった。
ウィンクルムは今日もオーガの魔の手から人々を守った。名声はまた一つ高まり、平和に一歩近づいたのだった。
依頼結果:大成功
MVP:
名前:セツカ=ノートン 呼び名:セツカ |
名前:マオ・ローリゼン 呼び名:マオ |
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 森静流 |
エピソードの種類 | アドベンチャーエピソード |
男性用or女性用 | 男性のみ |
エピソードジャンル | 日常 |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ビギナー |
シンパシー | 使用可 |
難易度 | 簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 3 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 10月06日 |
出発日 | 10月12日 00:00 |
予定納品日 | 10月22日 |
参加者
会議室
-
2016/10/11-23:51
プラン提出してます。
上手くいきますように!
相談お疲れ様でした。 -
2016/10/11-22:28
>誘導
あ、すみません、アプローチを開けた場所で使用する にすればいいのですね
ではそのように描いておきます -
2016/10/11-22:25
シャーマイン:
意見感謝。
>誘導
俺の方はネカットさんの言ったような感じでの誘導にしておいた。
何にしても被害を防げるといいな。 -
2016/10/11-20:43
こんばんわ。
射程に入らないように移動しますね
・出入り場所
あ、なるほど…では、僕が木の陰に隠れて大声で知らせますね
・戦闘場所
誘導できたら、広めの場所に誘導する、程度にしています
-
2016/10/11-20:15
ネカット:
どうも、こんばんは。
時間がかなり迫ってきましたが私の行動も簡単に書きますね。
私は後衛に位置して、木陰に隠れて恋心Ⅱで攻撃します。
一度撃ったら場所を移動して、どこから撃っているのか分かりにくくします。
あ、撃つ前には声を上げてお知らせしますね。
>出入り場所
農園の入り口から入ってこなくて、どこから来るのか分からない場合は
シュンにオーガ・ナノーカを偵察に出してもらって敵を探してみます。
携帯は農園内で使えるかどうか分からないので、
見つけたら…うーん、他の組の所へ向かいつつ声を上げて知らせる方が確実かもしれません。
>戦闘場所
あ、私も特に誘導を意識せずその場でという認識でした。
私たちが敵を見つける前にリンゴの木にたどりついてたら木の近くでの戦闘になりますから
その場合は、木を傷つけないように気をつけないといけませんね。
ただ、アプローチにかかってくれれば、RKさんの方に向かうと思いますので
木から離れたところから使っていただければ、わりとひらけた場所で戦闘ができるのではないでしょうか。 -
2016/10/11-19:40
ユズリノさん、お久しぶりです、宜しくお願い致しますっ
・出入り
場所がない場合……連絡を取り合うのは携帯とかで大丈夫でしょうか
その場合は、マオに攻撃に回って貰い、僕は木の陰に隠れて皆様に連絡、という形にしようと思います
・アプローチ
とても、心強いです…!
マオだけだと、ちょっとだけ、心配で。
マオには皆と声をかけあって連携をとってもらうようにして貰いますね
・戦闘場所
そうですね…広い場所に誘導したいところです
・取り放題
片付け皆で、了解です
わかりました、個別ですね!
わ、梨のタルト食べたいです -
2016/10/11-19:35
シャーマイン:
ああ、すまない、考え直したんだが
広めの場所に引っ張りたいってのは考えず
その場から動かせず短期決戦を狙う方が良いかと思い直した。
その方向で問題ないだろうか?
ユズリノ:
僕は呪符で拘束狙ってみます。 -
2016/10/11-11:37
>出入りに使ってそうな場所を聞いておく
聞けた場合そこの周辺で待機
そういう場所が無ければそれぞれアタリを付けて待機、遭遇したら知らせる
という感じでしょうか?
シャーマイン:
失礼する。
>アプローチ
マオさんの方に集中攻撃が行かない様にこちらも使い
気を散らす感じになればと思う。
俺はプロテクションも使って防御ガチ上げするから壁に使ってくれても全然かまわない。
できれば、被害を抑える為に
戦場に向きそうな広めの場所が近場にあればそっちに引っ張りたい所だが
問題無ければ行動としては入れておきたいと思う。
マオさんの行動とも合わせていきたいな。
>取り放題
了解、基本個別という事で。
料理するなら、出来上がりをお裾分けする位か?
うちの神人は梨のタルト作りたいらしい。 -
2016/10/11-10:49
おお、前衛が増えた!
ユズリノ達はよろしくな。
人数が増えたからやれることも増えたな。
壁役・進路妨害は神人が入らなくても大丈夫そうになってきたから
俺の行動は、木の陰に隠れて死角から攻撃して、別方向からの敵の足止め
を担当しようと思う。
RKが引き付けてくれたところに上手く入れるようにやってみる。
>戦闘後
じゃあ片付けは皆で、取り放題は…相談期間もないし個別でもいいか? -
2016/10/11-01:54
ユズリノとRKのシャーマインです。
入りたいなと思って見ていたので滑り込みですが入らせて頂きました。
俊さんネカットさんは初めまして。
皆さんどうぞよろしくお願いします。
戦闘後は
片付け手伝います。
食べ放題は、個別でもご一緒でも拘りありません。
戦闘の方は皆さんの動き見てよく考えてきます。
取りあえずこの辺で。 -
2016/10/10-20:21
ブルックスさん、ネカさん、宜しくお願い致します!
出発確定ですね
・戦闘前
あ、そうですね、聞くの、とてもいいと思います…!
入口、使ってくれると楽ですけれど…一応知能はある程度ありますし、ひょっとしたら人間が多く出入りしてるところ
みたいな認識はあるかもしれませんね
・戦闘
もう少し、人が増えてくれたら心強いですね
分かりました、マオは敵の進路妨害で動いて貰おうと思います
!!
アドバイス、ありがとうございます
なるほど、敵の引きつけにアプローチですね
あ、盾とか防具かってきます。
言われなければ、装備しわすれるところでした…
・戦闘後
片付け、僕も手伝いますね。
マオなら多分、力仕事も大丈夫な、はず!
僕は皆様と取り放題ご一緒してもいいですし、個別でも勿論かまいません -
2016/10/10-15:15
飛び込み失礼するぜ。
俊・ブルックスとエンドウィザードのネカだ。よろしく頼む。
流れはセツカの提案の通りでいいと思う。
8時前には中で迎え撃つ準備をして、9時までにはかたをつけたいところだな。
>戦闘前
農園のを取るより、先に農家の人に商品にならない果物を貰っとくのに賛成だ。
あとは、敵がいつも出入りに使ってそうな場所を聞いておくとか?
リンゴ園の入り口から律儀に入ってくんのかな?
>戦闘
ネカは後衛で魔法を撃ってもらうとして、
この人数のまま出発なら前衛が心もとないな…俺もハイトランスで前に出る予定だ。
セツカ後ろから果物投げてくれるなら、俺はマオの支援して敵の進路妨害、
攻撃役のネカに以下付けさせないようにしようかと思う。
あ、動きのアドバイスは…そうだな、2レベルならアプローチが使えるようになってるから
敵を引き付ける時に使ってくれたら嬉しい。
あと、ジェールに余裕があればショップで防具を買っておくといいと思うぜ。
特にロイヤルナイトは盾を持ってないとアプローチが使えないからな。
>戦闘後
ここはまだあんまり考えてないな…希望があれば皆で、
なければウィンクルムごとに個別でって感じかな。
あ、それと戦闘で散らかってたら簡単にでもいいから農園の片付けもしたいな。 -
2016/10/09-19:05
セツカと、相棒のマオです。
今回、生れてはじめの戦闘依頼になりますので、皆様のお邪魔にならぬように行動させていただく予定です。
【時間】
これは問題がなければ8時ちょっと前には行き、此方に有利な布陣でも組めればいいかなって思います。
ただ、どこからくるかっていうのが分からないと布陣も組めないので…きいてみて、いつもくる場所が同じなら、でしょうか。
【ゴリラ】
結構ゴリラの知能って高い気がするんですが…。
とりあえず、果物を投げたりして興味はひけそうかな、と思っています。
【戦闘】
ロイヤルナイトなんですが…レベルが2なんです。
多分、僕たちよりレベルが高い人の方が防御力も高いのでは?な気がします。
そのため、僕たちの動きとしては、岩とか投げてきた際にマオに壁になってもらいつつ、僕が果物を投げて興味をひいてみる、という動きをしようかと思います。
ただ、ロイヤルナイトならこう動くといいよ!とかありましたら教えていただけたら幸いです…!
【農園の人】
僕は、果物を少し分けてもらおうかなと思っております。
長くなっちゃった…。
まずは、成立すると、いいな…!