アウトドアの秋!(巴めろ マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●例えば、2人(?)のアウトドアな秋
「ふぅん、外ってこんなふうになっているのね」
「マリエンヌ、あまりきょろきょろしないでくれたら嬉しいな」
 タブロスの街を歩きながら、美しい青年の姿を模したオートマタ――綺羅は、深く被ったフードの向こう、腕の中のお姫様みたいな人形へと潜めた声で話し掛けた。マリエンヌと呼ばれたその小さな姫君は、「あら?」と態と驚いたような声を零してみせる。
「綺羅、私、やっと目が直ったのよ。ちょっとくらいはしゃぎたくなるのが『人情』ってものだわ」
「『人情』って……僕達はヒトではないだろう? どこまで行っても人形だ」
「わかってるわよ。私を直した白衣の女の、ただの受け売り」
 ふん、とマリエンヌは不機嫌に鼻を鳴らした――ような声を出した。綺羅が、少し笑う。
「まあ、だけど……人形でも、少しくらいはヒトの役に立ちたいね」
「なら、もっとしゃんとして急いだらいかが? データ収集とやらの一環なんでしょ、これ」
 そうだねと応じて、綺羅は来た道を振り返った。その相手がどこにいるのか綺羅にはわからないけれど、データ収集、それから念の為の護衛として、自分たちの様子を窺っている人間がいるはずなのだった。確かめられているのは、綺羅が自分の意思で、どこへ行くのか。綺羅は、今はA.R.O.A.に保護されているその人形は、前を向き直った。
「行こうか、マリエンヌ。僕は、『秋』というものを見てみたいんだ」
「あら、お馬鹿な綺羅。それなら――ほら、街中に溢れているじゃないの」
 あなたはもう少しきょろきょろするべきだわ、と、マリエンヌはくすくすと笑った。

解説

●概要
ウィンクルムのお二人のアウトドアな秋の時間を描くエピソードとなっております。
カフェ、公園、遊園地、雑貨店、図書館……などなど、外出先はお好みの場所をご指定くださいませ。
お出掛け先でしたら、室外だけでなく室内で過ごされるひと時もお待ちしております。
本エピソードは、自由度が高くなっております。
『どこで』『何をする』のかを、必ずプランにご記入くださいませ。
また、特にご希望がございましたら、時間帯も添えていただければと思います。

●消費ジェールについて
その日のお出掛け代として300ジェール消費させていただきます。

●プランについて
公序良俗に反するプランは描写いたしかねますのでご注意ください。
また、白紙プランは描写が極端に薄くなりますので、お気を付けくださいませ。

ゲームマスターより

お世話になっております、巴めろです。
このページを開いてくださり、ありがとうございます!

タイトルには『秋』と付いていますが、秋らしいことをしなくてもOKです!
どうぞお心のままに、パートナーさんとのお出掛けをお楽しみくださいませ。
ほのぼの、甘々、シリアス、コミカル……どんな2人の時間も大歓迎でございます。
また、ガイドに登場する2人は女性側NPCですが、今回はガイドのみの登場となります。
皆さまに楽しんでいただけるよう力を尽くしますので、ご縁がありましたらよろしくお願いいたします!

また、余談ですがGMページにちょっとした近況を載せております。
こちらもよろしくお願いいたします。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ニーナ・ルアルディ(グレン・カーヴェル)

  夕方頃、働いているパン屋までグレンがお迎えに来てくれたので
一緒に町を歩いて帰ります。

突然のことでびっくりしました…
嫌じゃないです、とっても嬉しいです!
そっとこちらから手を繋ぎます。
色々言いつつ優しく握り返してくれるとこ、好きだなって思います。

やっぱりお昼時だからですよね!
お話しする機会が増えてから沢山買ってくださるようになる方も多くて
とっても助かってます。

今日はあのお店に寄りたいですっ!
さっきヘイゼルさんからいい葡萄が入ったって教えていただいたんですっ
あ、あと林檎も今の時期ならおいしいはずです!

お仕事中ずっと、何を作ったらグレンが喜んでくれるかなって考えてたんです、
楽しみにしててくださいねっ!


月野 輝(アルベルト)
  今日はショッピングモールでお買い物
同居するのはいいんだけど、アルは今まで一人暮らしだったから足りない物も多くて
それに、どうせなら新生活用に色々新調したいなって思ったし
私用に貰った部屋のカーテンとか
お揃いの食器とか…
し、新婚って
え、間違ってはいないのかもだけど、え、え…(真っ赤
またからかってるでしょ、もうっ!
ほんとそこは変わらないわよねっ(くすくす笑って

随分たくさん買っちゃったわね
少し休憩してお茶にする?
確かこの辺にカフェがあった気がするんだけど

お店に入ったら知った顔
大好きな二人を見かけて手を振って
ご一緒してもいい?お邪魔じゃない?

私達はお部屋の雑貨を買いに
ええ、婚約したし一緒に暮らす事にしたの


スティレッタ・オンブラ(バルダー・アーテル)
  別にデートじゃないから安心なさい
ショッピングモールで服買うのよ
『私に相応しくない』っていう理由で恋人になってくれないなら、相応しい格好にしてあげる
髭は後で顎ヒゲだけ残すとして、髪は下ろしましょ
前髪だけ後ろでまとめればいいじゃない

どうせならゴシックパンクにする?貴方が趣味で集めてるシルバーアクセサリに合うわよ
若さなんて気合いでどうにでもなるわ

うん、似合う似合う
他に何着か買ってお茶しましょ

あくまで仲間、ねぇ
ふふ、友達でもお茶するじゃない
その感覚でいいの

いつか恋人になってくれればいいわ

あら、輝ちゃんに眼鏡君
二人は婚約かー
早いものね
ふふ、私達恋人に見える?ありがと
もっとお似合いになれるといいんだけど


水田 茉莉花(聖)
  喜んで貰えて光栄です
栗拾い体験なんてやった事ないかなーと思ってね、つれてきたの
さてと、早速拾い始めますか!
…手袋してるからって手で採っちゃ危ないからね、ひーくん

こうやって栗のいがを足で踏んで、火ばさみで中の栗を取るの
慣れるまでは難しいかな?あたしが踏んでおくから、ひーくんが取ってみて

【こんな風にはしゃいでいると普通の男の子なんだよなー】


ひろの(ケネス・リード)
  「どこ行くの」
下見?(嫌な気がして指を避ける
「……恋人がいるの?」(悩んで結局聞く
嬉しそう。本当に好きな人なんだろうな。
……私と契約して、よかったのかな。(視線が下がる

「恋人さんが、歩き慣れてないなら。山よりは……」たぶん。
色づくの、2、3週間は後かな。(紅葉(植物学
「へ?」(ビクッとするも、そのまま引きずられる

「ケーネは、男の人、だよね」(漕ぐのを休憩
「なんで、女物の服、なのかなって」(段々声が小さくなる
(思わずケーネを見上げる

「あ、うん。すごく」
私の契約する精霊ってなんか。自信たっぷり。(眉を少し下げ、仕方なさそうに小さく笑みを浮かべる
「? わかった」(頷く
つまり、恋人は女の人ってことかな。


●2人で辿る帰り道
(……確かそろそろ上がりの時間だったはずだしな)
 空が、街が、黄昏の色に染まる頃。偶々近くに来たついでにと、グレン・カーヴェルは、ニーナ・ルアルディがアルバイトをしているパン屋へと立ち寄った。……の、だが。
(って、何だアレ、露骨にあいつ狙いの男ばっかり来てるじゃねーか!)
 店内は、随分と盛況だった。ニーナが忙しく立ち働いているのも致し方がないこと、懸命に仕事に励む彼女の姿は客の男達の注目を集めるだけでは済まず、時折、「お勧めのパンは?」という具合に声が掛かりさえしていて。
「えっと、これなんてどうでしょうか? 私も好きで……って、グレン!?」
 グレンの姿に気付いたニーナが、煌めく青の目を丸くする。自身が推したパンが端から売れていくのにも気付かない様子で、渋い顔で目前まで歩み出たグレンへとニーナは問いを投げた。
「グレン、どうしたんですか? あっ、もしかして、お迎えに来てくれたとか!」
「わかってるならとっとと終わらせろ」
 手早く帰りの約束だけ取り付けて、グレンはさっさと踵を返し店を出る。
(他の奴等への牽制にはなっただろ)
 背中を追う多くの視線(ニーナ目当ての客のものだ)に、そんなことを思いながら。やがて、店の前でニーナの仕事が終わるのを待つグレンの耳に、ぱたぱたと愛らしい足音が届いた。音の主へと眼差しを遣れば、子犬よろしく嬉しそうに駆けてくるニーナの姿。
「お待たせしましたっ! もう、突然のことでびっくりしました……」
「嫌だったのかよ」
「嫌じゃないです、とっても嬉しいです!」
 どこまでも素直にそう応じて、ニーナはそっとグレンの大きな手を握る。
「ったく……」
 とは言いながら、グレンは繋がれた手を優しく握り返し、
(グレンのこういうとこ、好きだなって思います)
 その手の温度に、ニーナは密か、ふんわりと笑み零した。2人で家路を辿る途中、グレンが口を開く。
「店じゃ、随分人気者だな」
「あ、やっぱりお昼時なんかは特に! お話する機会が増えてから沢山買ってくださるようになる方も多くて」
 とっても助かってます! と屈託のない笑顔で言い放つニーナの様子に、
(いや、パン狙いじゃねーのは一目瞭然だろ。時間帯もさして問題じゃねぇだろうが)
 と、グレンは軽く脱力した。実際、夕暮れ時にだってニーナは注目の的だったのだから。
(……でもまあ、こいつにそれを言っても分かる訳ねぇか)
 グレンが胸中に嘆息するその傍ら、ニーナが「あっ!」と無邪気に声を上げる。
「グレン! 今日はあのお店に寄りたいですっ!」
「あ? 別に構わねーが……」
「さっきヘイゼルさんから、いい葡萄が入ったって教えていただいたんですっ」
 あ、あと林檎も今の時期ならおいしいはずです! と声を弾ませるニーナの隣で、
(つーかあいつまだ来てんのかよ懲りねぇな!)
 と、グレンはニーナに片想いしている厄介な旧友へと心の中でつっこみを入れた。きっと今日も、頬を緩ませてニーナに話し掛けたのだろう。そのことを考えると苛立ちが俄かに胸を掠めたが、
「お仕事中ずっと、何を作ったらグレンが喜んでくれるかなって考えてたんです!」
 楽しみにしててくださいねっ! なんて花綻ぶような笑みを向けられれば、言ってやりたかった諸々のことも口に出せなくなってしまう。
(自分のことを考えてたなんて、この笑顔で言われたらな……)
 そのことが何だか悔しくて、グレンはニーナの肩をぐいと抱き寄せた。
「きゃっ!?」
 なんて、ニーナが慌てたような声を出したことも、それなりに人通りのある道を歩いているということだってお構いなしだ。
(……人前でこうされるのには慣れてないらしいしな)
 真っ赤に頬を熟れさせ視線を泳がせるニーナの様子に、グレンはくっと口の端を上げた。

●貴方に近づくこの一歩
「どこ行くの、ケーネ」
 躑躅色の髪を揺らしながら、機嫌良く前を行くケネス・リード。その背中を追いながら、ひろのは訥々と声を投げた。振り向いたケネスが、ふふりと笑う。
「公園よ。デートの下見に付き合ってちょーだい」
「下見?」
 予想外の答えにひろのが焦げ茶の双眸を瞬かせれば、
(ふふ、きょとんとして可愛い)
 なんて、ケネスはひろのの鼻を軽く突いてやろうと人差し指を伸ばした。嫌な予感に、すぅっとその一撃(?)を避けるひろの。その反応に、今度はケネスが瞳をぱちぱちとさせる番となり――じきに、未だ警戒モードのひろのの前で彼はくすりと音を漏らした。
「ほら、そろそろ紅葉の季節じゃない? だから、何時が見頃か下見」
 付け足された説明に、ひろのは表情を曇らせる。ケネスの言葉が重ねられるほどに、ある事実がぽっかりと浮かび上がっていくのが分かったから。
「……恋人がいるの?」
 悩んだ末に、ひろのは結局その問いを口にした。言ってなかった? と、ひろのの懊悩を余所に、さらりと応じるケネス。
「いるわよー。おっちょこちょいだけど可愛いんだから」
 にっこりと向けられた幸せ色の笑顔に、
(嬉しそう。本当に好きな人なんだろうな)
 と、ひろのは彼が恋人に抱く想いのほどを垣間見る。だからこそ、
(……私と契約して、よかったのかな)
 湧いて止まない詮無い想いに、ひろのは知らず、視線をそっと下げたのだった。

「やっぱり自然公園が無難?」
「恋人さんが、歩き慣れてないなら。山よりは……」
 ケネスの問いに応じて、ひろのは胸の内に、たぶん、と小さく付け足した。女郎花色の眼差しが、辿り着いた自然公園をぐるりと見回す。
(ちょっと色がついたぐらいか。まだまだ早いっぽいな……)
 なんて思考を巡らせるケネスの耳に、
「色づくの、2、3週間は後かな」
 というひろのの小さな呟きが届いた。丁度ケネスが考えていたのと同じ、紅葉の話だ。
「ひろの、そういうのに詳しいの?」
「えっと。植物学を、少しだけ」
 ぽつぽつと返る声に、ならば先ほどのひろのの見立てを胸に留めておかなくてはとケネスは胸中に頷いた。紅葉の見頃が何となくわかったなら、次は別のポイントの下調べである。
「あ、ここってボートにも乗れるのね。ひろの、乗るわよ」
「へ?」
 ケネスの手が、がしっ! と有無を言わせずひろのの手を握り込む。びくりと肩を跳ねさせたひろのだったが、そのまま、成す術もなくボート乗り場まで引きずられていった。

「ケーネは、男の人、だよね」
 緩やかに揺れるボートの上、オールを漕ぐ手を休めて、ひろのは俯いたままで言った。なかなか進まないなあ、なんてボートのことを考えていたケネスが、ひろのを見遣る。
「? 男よ」
 それがどうかした? と、その声音が問うていた。だからひろのは、段々と小さくなっていくばかりの声で、けれど確かに言葉を続ける。
「その……なんで、女物の服、なのかなって」
「似合うからだけど」
 けろりとした答えが返れば、思わず、ひろのの視線はケネスの顔へと。
「え、似合うでしょ?」
「あ、うん。すごく」
 ひろのの返事を受け、自信満々、当然だと言わんばかりにケネスは笑みを零し、
(私の契約する精霊ってなんか。自信たっぷり)
 なんて思いながら、ひろのは眉を少し下げて、仕方ないようなふうで小さく微笑を返した。
「ちなみにあたし、心も男のままよ。そこは間違えないでね」
「? わかった」
 念押しのように手渡された宣言に、ひろのはこくと頷く。
(……つまり、恋人は女の人ってことかな)
 という具合に、頭の中、その言葉が含む意味について想いを馳せながら。

●貴方を染める/新しい毎日の為に
「昨夜から来たがってたのはここかよ……」
 金の双眸で辺りの様子を見渡して、バルダー・アーテルは疲れたような息を漏らした。ショッピングモールの只中で、スティレッタ・オンブラが口元に妖艶な華を咲かせる。
「別にデートじゃないから安心なさい。服を買うだけよ」
「は?」
 思わず音を漏らし、僅か目を瞠るバルダー。その反応に、スティレッタは益々笑みを深くした。服を買うだけ、と言ってしまえば簡単なものだが、スティレッタに連れられてバルダーがやってきたのは、ショッピングセンターの中でも主にメンズファッションを扱う通りである。
「『私に相応しくない』っていう理由で恋人になってくれないなら、相応しい格好にしてあげる」
 赤い眼差しが、値定めをするようにバルダーの身体をなぞる。知らず、バルダーは軽く身を引いた。
「ふ、相応しいってどういう格好だ?」
「先ず、髭は後で顎ヒゲだけ残すとして、髪は下ろしましょ。前髪だけ後ろでまとめればいいじゃない」
「髪と髭もか!?」
 服装だけではなかったのかとバルダーが驚きの声を上げても、「ああ、そうだわ」なんてひとりごちるスティレッタは微塵も動じる気配がない。そしてその声音は、至極楽しそうに弾んでいる。
「どうせならゴシックパンクにする? 貴方が趣味で集めてるシルバーアクセサリに合うわよ」
「ちょっと待て! ご、ゴシックパンクって若い男のファッションじゃないか?」
「あら、若さなんて気合いでどうにでもなるわ」
 慌てるバルダーを軽くいなして、スティレッタは手近の店先に飾られていたロングコートを手に取った。先の宣言通り、ゴシックパンクな一品である。更に、
「しかもこれ黒ベースの赤って……色の選択からしてお前の趣味入ってるよな?」
「そう? いいからホラ、一回着てみましょ」
 のらりくらりと、スティレッタはバルダーの手に見定めた服を押し付ける。
「試着? ……分かったよ」
 再びのため息を零したバルダーが素直に(?)試着室へと消えるのを、スティレッタはそのかんばせに満足げな笑みを湛えて見送った。やがて、普段とはテイストの異なる衣服に身を包んだバルダーが、スティレッタの元へと戻ってくる。ロングコートというチョイスは今までの格好に近いとはいえ、その面持ちはどこか気恥ずかしげだ。
「似合うか?」
「うん、似合う似合う。他にも何着か買ってお茶しましょ」
 似合う、と言われるのは嬉しい。嬉しいのだが、
「……これ着たままでか?」
「勿論。さ、行くわよ。あ、次はあの服なんてどうかしら?」
 会計を済ませたなら、さあ、2人でショッピングの続きを。

「知っての通り、さほど広い家ではないから程々にな」
「ええ、わかってるわ。でも、どうせなら新生活用に色々新調したいな、なんて……」
 アルベルトと月野 輝もまた、買い物に勤しんでいた。同居を決めたはいいものの、輝を迎え入れるアルベルトの家には、2人で暮らすとなれば足りないものも多い。元が一人暮らしとなればそれも当然のことで、故に、2人は新しい生活の為にショッピングモールを訪れたのだった。口では「程々に」などと言っているアルベルトだって、
(二人で暮らすとなれば、輝の趣味も反映させてしかるべきだと思う)
 と、輝の気持ちを十二分に尊重するつもりでいる。彼女の欲しいものに口を出す気は毛頭なかった。
(同居を決意してくれた、それだけで充分嬉しい)
 共に生活を送る為の礎を今2人で築いている、その事実が、アルベルトの胸をどこまでもあたためる。金の眼差しで愛しい人の横顔をそっと見遣れば、品物を手に取って確かめる輝もまた、嬉しそうにその表情を輝かせていた。
「欲しい物、必要な物……私用に貰った部屋のカーテンとか、お揃いの食器とか……」
 幾らも並ぶ商品の中に、自分の心にぴたりと填まる一品を探す輝。楽しげなその様子を眺めるうちに、アルベルトの胸の内、彼の『悪い癖』がむくむくと頭をもたげた。
「……新婚生活だからな、好きな物を揃えるといい」
 アルベルトの口からとび出したあまりにも甘やかな単語に、輝が弾かれたように顔を上げる。
「し、新婚って……」
「間違ってはいないだろう? 先日結婚の儀を行ったのだし」
「え、間違ってはいないのかもだけど、え、え……」
 とびきりの良い笑顔でさらりと告げたなら、真っ赤に染まる輝のかんばせ。愛らしい反応にくつと音を漏らして笑み零せば、
「あっ! またからかってるでしょ、もうっ!」
 と、輝が声を上げる。けれど、「ほんとそこは変わらないわよねっ」と続ける彼女も、いつの間にかくすくすと笑っていて。そんなふうにして仲睦まじく買い物を続けるうちに、ふと気付けば、荷物はかなりの量になっていた。
「随分たくさん買っちゃったわね……少し休憩してお茶にする?」
「そうだな、少し休憩しようか」
 確かこの辺にカフェがあった気がするんだけど……と記憶を手繰る輝の隣、一つ頷いたアルベルトは、考え考え歩く彼女の歩調に合わせてゆるりと足を進めるのだった。

「俺達はあくまで仲間だって話だよな?」
 落ち着いた雰囲気のカフェの中、テーブル席でスティレッタと向かい合ってバルダーは言う。「あくまで仲間、ねぇ」と漏らして、スティレッタがカップに口を付けた。
「こんなの知り合いに見られたら……」
「ふふ、友達でもお茶するじゃない。その感覚でいいの」
 色香を纏った唇が、囁くように音を紡ぐ。
「いつか恋人になってくれればいいわ」
「っ……!」
 バルダーが声を失った、その時だ。
「おや、中尉殿にスティレッタさん。奇遇ですね」
 耳に馴染んだ声に名を呼ばれて、バルダーはその声の持ち主との相性を思ってがばりと、スティレッタはゆったりと面白がるように、それぞれに声のした方へと顔を向けた。
「スティレッタさんにバルダーさん、こんにちは」
 そこに立っていたのは、大好きな知り人に遭遇した幸いを前にして、いかにも嬉しげに小さく手を振る輝。そして先に声を投げた、今は大荷物を友にしているアルベルトだ。
「あら、輝ちゃんに眼鏡君」
「げ。ドク……輝も一緒か」
 可愛い妹分へとスティレッタが手を振り返す一方で、バルダーは苦い顔をする。荷の嵩を感じさせない涼しい様子のアルベルトの顔に、からかうような笑みが乗った。
「おや、素敵な御召し物ですね中尉殿。もしかして彼女のお見立てですか?」
「これはついでだ。俺は買い物に付き合っただけで……」
「つまり、やはりスティレッタさんが。仲睦まじいですね、ええ、本当に」
「ふふ、ありがと眼鏡君。恋人に見えるかしら? もっとお似合いになれるといいんだけど」
 自分のことを置き去りにして会話が進んでいくのに、バルダーは内心で頭を抱える。2対1の状況に梃子を入れたのは、輝だった。くい、とアルベルトの服の裾を引いて曰く。
「ええっと……ご一緒してもいい? お邪魔じゃない?」
 にっこりとして別の話題を振れば、「輝ちゃん達なら勿論」とスティレッタが微笑する。スティレッタの隣に輝が、細く息を吐くバルダーの隣にアルベルトが腰を下ろした。
「私達はお部屋の雑貨を買いにきたの。婚約したし、一緒に暮らす事にして」
「二人は婚約かー。早いものね」
 神人2人が話に花を咲かせるのを半分ぼんやりとして眺めながら、
(……恋人、か。二人はもう結婚だってのに……)
 と、バルダーは我が身のことを思う。そんなバルダーの傍ら、アルベルトが口を開いた。
「……私達の事はともかく」
 それは、女性陣の耳には届かないほどの、小さな声。
「中尉殿、少し正直になった方がいいですよ?」
 何もかもを見通したようなその言葉に、バルダーは言葉を失くすや、隣でメニューを開く男の顔を驚いたように見つめ、当のアルベルトはそんな彼の反応に薄く微笑を向けてみせた。
「……何? アル、どうかしたの?」
「いや、何でもない。ですよね、中尉殿」
 姉のような友人との会話に夢中になっていた輝が、2人の様子を見留めて瞳を瞬かせる。アルベルトの言葉に、バルダーは呟くようにして、「ああ」と曖昧に応じた。
(……う。ドクの奴……正直になんて……)
 例えば、もしも、秘密を抱えなかったのなら。
(俺は、もっと素直になれただろうか……?)
 胸の内の問いに、答えをくれる相手はいない。何を注文するのかと婚約者に問うアルベルトの声が、弾むような輝の返事が。バルダーの耳には、どこか遠く遠くから聞こえるのだった。

●秋色拾い
「うわぁ、クリだー! クリがいっぱいおちてます!」
 視界いっぱいに広がるは、緑の葉とまだ青い栗イガが目に鮮やかな栗の木の群れ。そして地面には、面白いほどにごろごろと転がっているイガ付きの栗、栗、栗。普段の生活の中では中々お目に掛かれない光景を前に、聖は大きな茶色の瞳をきらきらと輝かせる。そんな聖の様子に、
「喜んで貰えて光栄です」
 と、水田 茉莉花は手早く栗拾いの準備を整えながら声を零した。しゃがみ込んで栗と睨めっこをする聖の背中は、年相応に小さく、愛らしく見えて、自然、口元が緩む。
(栗拾い体験なんてやった事ないかなーと思ってつれてきたんだけど……うん、良かった)
 そんなことを胸に思う茉莉花の方を、聖が未だ興奮したふうで振り返った。
「本当にトゲトゲで、イガイガしてる、すごいですママ!」
「うんうん、そうね、ひーくん……さてと、早速拾い始めますか!」
 宣言して、ぽんっ! と合図よろしく景気良く手を叩けば、「はぁい!」と元気のいいお返事が気持ち良く辺りに響く。けれど聖には、イガ栗の扱い方まではわかりかねたようで。
「……これどうするのかな? トゲをもつのかな?」
 つんつん、と興味深げに栗のとげとげに触れてみる聖へと、
「……手袋してるからって手で採っちゃ危ないからね、ひーくん」
 茉莉花は、『ママ』の呼び名に相応しいような注意の言葉を口にした。「はぁいママ」とお利口さんの返事を再び耳に、茉莉花はよろしいとばかりに一つ頷くと、手近のイガ栗を前に、栗拾いのやり方を実演してみせる。
「こうやって、栗のいがを足で踏んで……」
 底のしっかりとした靴で刺々しい殻を注意深く踏み締めれば、艶やかな焦げ茶の実がひょっこりと顔を出した。わあ、と聖が晴れたような声を上げる。
「それから、火ばさみで中の栗を取るの。ひーくん、わかった?」
「わかりました、やってみます! 足でふんで……」
 茉莉花の真似をして、イガ栗を踏み踏みする聖。だけれども、
「ふんで、ふん……なんかクリまでふんじゃいます」
 どうにも、茉莉花がやってみせたようには上手くいかない。
「慣れるまでは難しいかな?」
 うむむ、と幼い顔に難しい色を乗せる聖を前に優しい苦笑を漏らして、茉莉花は提案を一つ。
「よし、あたしが踏んでおくから、ひーくんが取ってみて」
「はい! んじゃ、ママのとってみる!」
 先と同じように、イガ栗を足で挟む茉莉花。いい具合に顔を出した栗の実へと、聖は真剣な面持ちで火ばさみをそうっと伸ばした。
「あ……うわぁ、とれたー♪」
 火ばさみに挟まれて、陽の光の下、秋の味覚が誇らしげに煌めく。声を弾ませる聖の姿に、
(こんな風にはしゃいでいると普通の男の子なんだよなー)
 なんて思いながら、茉莉花は聖の為、次のイガを踏む作業に移った。初めて自分で収穫した栗を大事そうにカゴに放り込んだ聖が、次の仕事だととんできて、せっせと栗を拾い出す。
「わ、これ3つ入ってます! なかよしこよしだ、いいなー」
 どこまでも楽しそうな聖の声を耳に、茉莉花は快晴の空を仰ぎ見た。
(やっぱり今日、ひーくんとここに来て良かったな)
 それにこの調子なら、カゴいっぱいの栗を、もうひとりの精霊の待つ家に連れて帰れそうだ。
「今日のご飯は豪華になりそうね、ひーくん」
「ぼくがひろったクリ、たべるんですね!」
 ほくほくの栗料理が食卓に並ぶことを互いに思い浮かべて、2人は顔を見合わせると、ふわりと目元を和らげて笑みを零し合うのだった。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 巴めろ
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ビギナー
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 10月06日
出発日 10月13日 00:00
予定納品日 10月23日

参加者

会議室

  • スティレッタよ。よろしくね。
    ふふ。私もバルダー連れてお買い物なんだけど……ちょっと楽しみ。
    皆それぞれ楽しい休日を送れるといいわね。

  • [4]ニーナ・ルアルディ

    2016/10/12-22:09 

    ニーナ・ルアルディですっ!
    グレンが珍しくバイト先までお迎えに来てくれたみたいなので、
    お買い物もしつつ一緒にのんびり歩いて帰ろうかなと思いまーす!

  • [3]月野 輝

    2016/10/12-17:17 

  • [2]月野 輝

    2016/10/12-17:17 

    こんにちは、月野輝とアルベルトです。
    私達は、色々な雑貨を買いにショッピングの予定よ。
    途中でお茶したりの予定。
    もし他にもショッピングする人がいたら、会えたりするかもしれないわね。

    それでは皆さん……

  • [1]ひろの

    2016/10/10-20:21 

    ひろの、と。ケネス、です。
    よろしく、お願いします。

    なんかケーネがすごくノリ気で。
    どこ、行くんだろう……。


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