花が教えてくれる彼(森静流 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 あなたは大輪の園を訪れている。
 季節の色とりどりの花が咲き誇る花園。
 最近、相方と言葉のすれ違いをしてしまい、気まずい日々が続いていた。
 あなたは自分の心と相方の言動について落ち着いて考えたくて、大輪の園を訪れたのだった。
(あいつにとっては些細な事かもしれないけど、でも、俺は……)
(……俺もちゃんと向き合っていたかな?)
 そんなことを考えながら花園を歩き回り、あなたは疲れてしまってベンチに座った。
 秋の花々が風にそよぐ光景を見つめながら、ため息をつく。
 爽やかな秋晴れで、風も心地よいというのに、何で心ばかりは晴れないのだろう。
 あなたは鰯雲を見上げながら、ぼんやり考え込んでいた。

 夢を見た。
 相方が泣いている夢だった。
 幼い時に、大好きな両親を失った夢。
 それから周りの大人に引き取られても、心を開く事が出来なかった。
 素直に感情を表現出来る事なんてなかった。
 今やっと、相方を得て、心に光が差し込んで来たのに。
 でも、何で?
 でも、何で、うまくいかない……。

 そんなメッセージのこもった夢だった。
「今の、何……?」
 あなたは、思わず声に出してしまう。
 ただの夢と言うには、あまりにリアルで、あまりに切ない感情がこもっている夢だったのだ。
「今のは、花が教えてくれたんでさあ」
 そこに、ユーズトハットを目深に被った青年が現れた。青年は肩からクーラーボックスを背負っていた。
「大輪の園の花達は、ウィンクルムの愛を見守ってくれているんでさあ。今のは、紛れもない、あなたの大切な相方の記憶、思い出、夢、本心……。それらが混じりあったものでさあ」
「そんなことが……」
「信じる信じないは勝手です。ですが、このお茶を飲めば、相方の思い出や相方の心をもっとはっきり見極める事が出来るんでさあ」
 青年はクーラーボックスの中からよく冷えたガラスの小瓶を取り出した。中には薄緑色のお茶が入っている。
「好きな花の近くに行って飲めばいいんでさあ。……そうしたら、相方の思い出や心を花が夢で教えてくれます。……どうしますか? お代は300jrになります」
 こんな事をしたと知ったら、相方は怒るだろうか。
 だが、気まずい相方との関係を見直すためには、相方の事をもっとよく知りたい。
 あなたはそういう思いから、青年にjrを払い、お茶を手にしたのだった。

解説

 大輪の園の花や植物たちが、相方の思い出や本心、心、記憶の一部などを教えてくれます。
 相方に関しては、精霊→神人 でも 神人→精霊 でも構いません。
 プランには夢を見た方に 見 と記入してください。
 どんな夢を見るか、夢を見た後お互いにどんな行動を取るかを書いてください。

花はこちらになります。()は花言葉です。その花言葉にまつわる夢を見る事が出来ます。
プランにはアルファベットを記入してください。
Aネリネ(「また会う日を楽しみに」「忍耐」「箱入り娘」「幸せな思い出」「輝き」「繊細でしなやか」「麗しい微笑み」)
Bイチョウ( 「荘厳」「長寿」「鎮魂」「しとやか」「詩的な愛」)
Cカエデ(「大切な思い出」「美しい変化」「遠慮」「調和」「隠栖」「約束」「自制」「非凡な才能」「確保」)
Dシクラメン(「遠慮」「気後れ」「内気」「はにかみ」「遠慮がちな期待」「疑いを持つ」「きずな」)
Eヒイラギ(「用心深さ」「先見の明」「保護」「歓迎」「用心」「剛直」)
Fプルメリア(「気品」「恵まれた人」「日だまり」「内気な乙女」「美」「魅力」「上品」「風刺」「情熱」)
Gマリーゴールド(「悲しみ」「嫉妬」「勇者」「絶望」「友情」「予言」「悪を挫く」「可憐な愛情」「濃厚な愛情」「別れの悲しみ」「生きる」)
Hリンドウ(「正義」「貞節」「誠実」「淋しい愛情」「的確」「苦悩」「勝利」「貞淑」「愛らしい」「固有の価値」「あなたの悲しみに寄りそう」「悲しんでいるあなたを愛する」「悲しんでいるあなたを慰めたい」)
Iアイビー(「永遠の愛」「破錠のない結婚」「不滅」「不死」「友情」「死んでも離れない」「誠実」)
Jバラ(「情熱」「愛情」「あなたを愛します」「貞節」「美」「模範的」「熱烈な恋」「私を射止めて」「愛」「内気な恥ずかしさ」「輝かしい」「愛嬌」「新鮮」「斬新」「無邪気」「爽やか」「恋」「幸福」)

※お茶代として300Jrいただきます。

ゲームマスターより

相方の本音をそっと知りたい。そんなウィンクルムへ。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

セラフィム・ロイス(火山 タイガ)

  見 G「生きる」

前日にボロボロに足掻くタイガの夢をみて
依頼でタイガが足を痛めて、自分の体のこと考えてほしかった
怒鳴って出てきてしまったけど。駄目だよね…タイガの優しさは知ってるのに

ついつい買ってしまったけど…商売上手だなぁ
苦笑いしつつテラスで飲む


源を知れた気がする。タイガをもっと


!?タイガ何でこんな所に(くすっ
手。貸してくれる?

荒れた力強い手)
…この手が僕や皆を守ってくれる
でも、タイガほどじゃなくても僕も守りたい。大切な人が危険な目にあったら不安なんだ
右腕になれなくても、自分の身や助け合える力はあるよ
何時までも隣にいてほしいから

ねぇ、お母さんのこと聞かせて?タイガや家族の事
聞き入って手に頬ずり


セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
  色々な花に見とれてたら、ラキアの姿を見失った。
園内を少し歩いてさがしたら、ラキアが木の下でうたた寝してるのを発見。
ラキアの事だ、樹や花に話しかけてうっかり寝ちゃったパターンか(笑。
そーっと横に座って、暫くラキアの寝顔を眺めてた。
色々疲れさせたのかな…とか考えてたら、ラキアが目を覚ましてビックリだ。
ラキアも何かヘンな顔してるし。
そのままオレの頭ナデナデしてくるし。
首をかしげ「何かあった?」と聞いてみた。
「何もないけど」と言いつつ、ラキアが頭ナデナデを続行するのはナゼだ。
お返しにラキアの頭もわしゃわしゃと撫でてやるぜ。
「オレはいつもラキアの事すごく頼りにしてるからな」と笑顔で。じゃれあうの楽しい。


蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)
  切欠は些細な事だったんだ
フィンが勝手に俺の通学鞄を開けて中身を見た
弁当箱を直ぐに出さなかった俺が悪いし、別に見られて困る物もない筈だけど…一瞬、驚いて「何勝手に開けてるんだよ」と責めるように言ってしまった
そこからは売り言葉に買い言葉
一言、俺が素直にごめんと有難うが言えていたら良かったのに、気まずいまま翌日を迎え、フィンは仕事に出掛けてしまった

一人で居たら、フィンへの申し訳なさが湧き上がって来て、居ても立っても居られなくなり、フィンを探しに

フィンを見付けたら、直ぐにごめんと謝ろう
…怒ってないのか?
いつも通りのフィンの笑顔に安堵
やっと周囲を確認する余裕が出来て
花、綺麗だなと言い、有難うとそっと囁く


ヴァレリアーノ・アレンスキー(イサーク)
 
G

サーシャ=アレク

サーシャとは大輪の園に一緒に行けてボクとは行けないノ!と駄々を捏ねられ仕方なく
連れ回され疲れて休む

花園にまた向日葵があれば今度は手に取る
幼少の記憶は薄れてよく思い出せないが確かにイーサと一緒に居た
イーサの夢を見てサーシャが出てきた事に驚く
今と雰囲気が違う
夢の後は少し蒼白気味
イーサの憎しみの原因の疑惑が確信へと変化

サーシャの告白(森の住人を惨殺)に続きイーサの思い出の一部が繋がる
オーガにより目の前で両親が死んだ光景を思い出し一瞬目の前が真っ暗に


台詞
お前がサーシャを恨む理由は、大事な人を殺されたから…なのか(俺と境遇が…
サーシャが持つ十字架は俺の母の親友が持っていた物を拾ったと


●セラフィム・ロイス(火山タイガ)編

 セラフィム・ロイスは精霊の火山タイガと喧嘩して、大輪の園に来ています。タイガは今、依頼で怪我をして入院しています。A.R.O.A.の依頼を受けたタイガは功を焦って単独先行し、無事にオーガを討伐出来たのですが、足をひねって脱水症状で倒れ、数日入院することになったのでした。
 おかげでセラフィムは、昨夜、タイガがオーガにボロボロにされながらも足掻く夢を見てしまいました。タイガを心配するあまりでしょう。
 お見舞いに行ったセラフィムは、松葉杖をついたタイガが脱走しようとしているところに出くわしました。人の気も知らないで。そう思ったセラフィムは、思わず怒鳴りつけて出てきてしまったのでした。
(駄目だよね……タイガの優しさは知ってるのに)
 セラフィムはそんな自分に自己嫌悪です。
 その後、セラフィムはベンチで不思議な夢を見て、ユーズドハットの青年からお茶を買い取りました。
(ついつい買ってしまったけど……商売上手だなあ)
 セラフィムは苦笑いしながら、テラスのマリーゴールドの花のそばで、お茶を飲み干しました。
 心地よい眠気が訪れて、意識が飛んで、セラフィムはタイガの記憶を夢に見ます。

……どこかの家屋。タイガの実家でしょうか? その裏手に、お墓があります。タイガがお参りしているようです。
「……今日こそ親父を負かすぞ! 母ちゃん!」
 そう誓いを立てて、タイガは正面の庭にいる父親へと向かって行きました。
 父親に手合わせを申し込みます。
 がむしゃらに父に向かって行くタイガ。
『甘いわ! そんなへっぴり腰で何時まで経ってもワシに勝てんぞ』
 タイガのどんな攻撃も父親の前には歯が立ちません。
『地形や弱点を探れ! 一人で解決しようと思うな!』
『うるせぇ! 守るんだ! 誰より強くなって全部から俺がっ!』
 やがて山野を駆け巡りながら戦う親子。
 必死に父親に立ち向かいながらも、最後はタイガは地面の上に倒れ伏してしまいました。
『半人前が』

……
 セラフィムは目を覚ましました。タイガや彼の父の息づかいさえも感じられるような、リアルで生々しい夢でした。それは、タイガの心の中の世界。
(タイガの源を知れた気がする。タイガの事をもっと知りたい……)
 自然とセラフィムの中にそんな感情が生まれてきます。
「……セラ?」
 そのとき背中から声をかけられて、セラフィムは振り返りました。
「!? タイガ、なんでこんなところに!?」
 驚きましたが、セラフィムはくすっと笑ってしまいました。
「手、貸してくれる?」
 セラフィムが怒っているのではないかと思ったのでしょう。タイガはおずおずと松葉杖から手を離して彼の方に伸ばします。
 セラフィムはその荒れた力強い手を握りしめました。
(……この手が僕や皆を守ってくれる。でも、タイガほどじゃなくても僕も守りたい。大切な人が危険な目にあったら不安なんだ。右腕になれなくても、自分の身や助け合える力はあるよ。何時までも隣にいてほしいから)
 そう思いながらセラフィムはタイガに話しかけました。
「ねぇ、お母さんのこと聞かせて? タイガや家族の事」
 タイガはちょっと目を見開きましたが話し始めました。
「親父にお似合いの肝っ玉母ちゃんだった。山に行った俺らを見送って家ごと土砂崩れにあって。亡くなるなんて思わなくてさ。助けれる命は救いたくて。セラは儚げで時々心配で溜まらなくて。強くなってオーガから守らねぇと、って最近特に思ってた」
 セラフィムは聞きながらタイガの手にほおずりします。
「……セラもなんだな。俺、戻るよ」
 触れた皮膚の先からセラフィムの想いがタイガに通じたのでしょう。タイガは反省した様子で、病院に戻る事にしたのでした。何故急に、母の話を聞きたがったのだろう、と思いながら。ですが、母の事を知って貰えたのは、嬉しいのです。

●蒼崎海十(フィン・ブラーシュ)編

 蒼崎海十とフィン・ブラーシュは珍しく喧嘩中です。
 きっかけは些細な事でした。
 フィンが勝手に海十の通学鞄を開けて中身を見たのです。弁当箱をすぐに出さなかったのは海十が悪いです。弁当を作る係はフィンですから、つい開けてしまったのでしょう。
海十も、別に、フィンに見られて困る物も入れていません。
 ですが、一瞬、驚いてしまって
「何勝手に開けてるんだよ」
 そう、責めるように言ってしまったのでした。
 そこからは売り言葉に買い言葉です。
 一言、海十が素直にごめんとかありがとうとかが言えていたら良かったのですが、気まずいまま次の日を迎え、フィンは仕事に出かけてしまいました。
 海十はどうしようと思いながらも、なかなか自分から折れる事は出来ませんでした。

(俺の失態だ……)
 一方、フィンはフィンで仕事をしながらも、海十の事が気になって仕方ありません。
(海十だって俺に見られたくない物はあるだろう。つい当たり前のように許されると思ってしまったけど……そうじゃないんだ……その事が寂しくて。俺はまだまだ海十の事がわかってないんだな)
 そう思いながら、フィンは一人になって心の整理をするために、大輪の園を訪れました。そこで夢を見て、ユーズドハットの青年からお茶を買いました。
 フィンは薔薇の側でお茶を飲み干しました。すると、意識が遠のいていき、心地よくぼんやりした気持ちで、夢を見ました。
……学校での海十が見えます。
 同級生と楽しそうに話しています。フィンの心がちくりと痛みます。
 そのとき、同級生が言いました。
「海十は変わった。前はもっと俺達と一線を引いていて、心がない感じだったよ」
 海十はちょっと考えこんで答えました。
「それはきっと……ある人のおかげだと思う」
 柔らかい笑顔を見せて、海十は心の中で呟きます。
 その呟く声が、心と心で伝わって、フィンの中に響きました。

(フィンのおかげだ)

 一方、学校から帰ってきた海十は一人でいると、フィンへの申し訳なさがわき上がってきて、いてもたってもいられなくなりました。フィンを探しに出かけます。
 色々と心当たりを当たって、海十はやがて大輪の園にたどり着きました。ベンチでフィンが目を閉じています。海十が駆け寄って行くと、タイミングよくフィンが目を見開きました。
「ごめん、フィン、俺……」
 たどたどしい口調で海十はフィンに謝りました。
 フィンは愛しさがこみあがってきて思わず立ち上がると海十を抱き締めました。幸い、周囲に人影はありません。
 海十は戸惑いながらフィンに訊ねました。
「……怒ってないのか?」
「全然」
 フィンは即答します。そして、海十を抱く腕に力をこめながら言いました。
「気がついたよ。俺は、俺のいない海十の世界に嫉妬していたんだ」
「フィン……」
「だけど、海十はちゃんと俺の方を見てくれている。それが分かったから」
 いつも通りのフィンの笑顔に海十はやっと安堵の息をつく事が出来ました。フィンの背中を抱き返しながら、今までの不安を埋めるようにフィンの肩口に顔を埋めます。
 ふと、海十は、フィンの匂いとともに薔薇の甘く優しい匂いをかぎとって、その花の方を見上げました。
「ありがとう」
 フィンに起こった不思議な出来事を海十が知っている訳ではありません。だけど、何故か、分かったのです。フィンが幸福な愛の夢を見た事を。そして、ウィンクルムの二人はいつだって愛の夢の中にいる事を。
 薔薇はウィンクルムの愛を祝福するように風に揺れ、甘やかな匂いで二人を包み込んでくれました。いつまでも、いつまでも、幸せに。どんな小さな諍いも、全ては愛と理解に繋がりますように。

●セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)編

 今日、セイリュー・グラシアは精霊のラキア・ジェイドバインと大輪の園に遊びに来ていました。
 セイリューが色々な花に見とれているうちに、ラキアを見失ってしまいました。
 ラキアはセイリューを探して歩き回るうちに疲れてベンチで一休みをしたら、不思議な夢を見ました。そこにユーズドハットの青年が現れて、ラキアはお茶を買い、ヒイラギの木陰でそれを飲み干しました。
 ラキアが見たのは、デミ・ギルティのディナスと戦った際のセイリューの心でした。
 セイリューの視点で、セイリューの気持ちで、ラキアはあの戦いをもう一度たどったのでした。
 仲間とともに攻撃を繰り返すセイリュー。
 歯が立たない相手にも向かって行く勇気と正義感。
 ウィンクルムとしての使命感。
 彼の仲間を守りたいという熱い想い。
 届かない苦しさ。
 そういうものを全て、直接に感じ取ったのです。
(敵のオーラを消失させても、今のウィンクルムにはAスケールを倒す手立てがない。
敵がまた襲って来てもそれを退ける手段がない。自分達の強さはまだまだ足りないのだ。
更なる高みを目指し、更に研鑽を積まねば……)
 そんな歯ぎしりするような悔しさと、今までの自分を叱咤する想いが、ラキアの心にそのまま伝わってきたのでした。
 夢の中で想いを噛みしめながら、ラキアはセイリューへの理解を深めていきました。
 やがて、そのラキアに、園内を歩き回っていたセイリューが近づいてきました。セイリューにはラキアがヒイラギの下でうたた寝しているようにしか見えません。
 ヒイラギの幹にもたれているラキアは、赤い長髪がほっそりした体を覆っているようで、目を閉じてよく眠っている事も相まって、なんだか花園に住んでいる童話の中の精霊かお姫様のようにも見えました。
 それで思わずくすっと笑ってしまいます。セイリューの相棒はなかなかの美人なのです。
(ラキアの事だ、樹や花に話しかけてうっかり寝ちゃったパターンか)
 それを想像してセイリューはまた苦笑いをしながら眠っているラキアに近づいて行きました。
 そっとラキアの横に座って、しばらくラキアの寝顔を眺めていました。
(色々疲れさせたのかな……)
 そんなことを考えていると、突然、ラキアが目をぱっちりと開きました。
 セイリューはびっくりしてしまいます。
 ラキアもまた、なんだかヘンな顔をしていました。緑色の瞳でセイリューの顔をまじまじと見つめています。セイリューは紫の瞳を瞬きます。ラキアの様子が、ヘン。
 そうして、ラキアはセイリューの頭をナデナデとなでつけてくれたのです。
 セイリューは黒い短髪の頭を傾けました。
「何かあった?」
 そう聞いても、ラキアは曖昧に笑うだけでした。
「何もないけど」
 そう言いながら、ラキアはセイリューの頭をナデナデ続行。
(セイリューは結構責任感あるし、任務ではいつも仲間達が傷つかないようにって、色々と考えて、行動してる。理屈で、というより経験則と勘に近い閃きが元だけど。周りを勇気づける言動も、きっと自分自身をも奮い立たせるため)
 そう思ったら、ついついセイリューの頭を撫でてしまうのでした。
 お返しにセイリューも、ラキアの頭をわしゃわしゃと撫でてあげました。ラキアの綺麗な赤い髪の毛が大変なことに。
「オレはいつもラキアの事すごく頼りにしてるからな」
 そういうセイリューはいい笑顔です。
 いつだってラキアとじゃれ合うのはとても楽しい事なのです。ラキアがセイリューの頭をわしゃわしゃして、セイリューがラキアの頭をわしゃわしゃして、そのまま声を立てて笑いながらヒイラギの下の芝生に倒れて、ごろごろ転がりながら頭を撫で合う二人。戦いなんか忘れて、楽しいひとときを過ごしました。

●ヴァレリアーノ・アレンスキー(イサーク)編

 ヴァレリアーノ・アレンスキーは精霊のイサークとともに、大輪の園に来ていた。
(サーシャとは大輪の園に一緒に行けてボクとは行けないノ!)
 そうイサークが駄々をこねるので仕方なくである。ヴァレリアーノは秋の静寂を感じさせる花園を散々連れ回され、疲れてベンチで休む事にした。イサークの方はまだはしゃいでいて、花の迷路の中に一人で遊びに行ってしまった。
 ヴァレリアーノは枯れた向日葵に手を触れる。生命を感じさせない枯れた花はそれだけでアートだ。
 ふとヴァレリアーノは幼少の頃を思い出した。薄れた記憶の中、確かに、自分はイサークと一緒にいたはずだ。何故に記憶がはっきりしないのだろう。忘却の過去の中に、残忍な残り香を感じ取る。
 そこにユーズドハットの不可解な青年が現れて、ヴァレリアーノはお茶を買い取り、マリーゴールドの花の側で一息に飲み干した。

……失われた夏。太陽に焦がれる向日葵が揺れる教会。
 神の名の下に立てられた教会は、イサークにとっては地獄だった。彼は、教会の無慈悲で無邪気な子供達によって迫害を受けていた。
 そこに現れた無垢の神人……ヴァレリアーノ。
 彼によって、イサークは救われ、それから心を許して友達になった。

 やがて時が経ち、様々な事情の上で、イサークはとある女性とともに教会を出ることになる。
 夢の記憶の中、ヴァレリアーノにはその女性の顔は見る事が出来なかった。まるで闇に切り取られたように、女性の顔は真っ黒に塗りつぶされていた。夢の記憶の中ですらかきけされたような女性の顔。それはイサークの故意なのか。もぎ取られた感情を想起させる。

 その前後。イサークが森の中で、アレクサンドルと会っていた。アレクサンドルの様子に夢のことながらヴァレリアーノは息を飲む。アレクサンドルは全身に歪な狂気を孕み、本能的な危険を感じさせていた。

 やがて場面が変わり、突如、森が襲撃された。
 水くみに行っていたイサークは無事だった。
 生き残ったイサークは、横たわる女性の側で泣き崩れていた。顔が闇に切り取られた女性。それがどんな存在だったのか。だが、いつも飄々としているイサークが、身も世もなく号泣するような存在である事は間違いない。謎を秘めた女性。

マモレナカッタ
ボクにとって唯一無二のヒトを殺した奴の後ろ姿を偶然見た
それが……

 血の滲むようなイサークの心の声がヴァレリアーノの心に鳴り響く。
 それに魘されそうになりながら、ヴァレリアーノは紫紺の瞳を見開く。
 イサークの夢にアレクサンドルが現れた事は驚愕だった。今とは雰囲気が違う。夢を見た事により、ヴァレリアーノの顔は血の気を失っていた。陶器の人形めいた白さで冷や汗を流しながら、疑惑を確信へと変える。
 イサークの憎悪の原因。それは……。
 アレクサンドルは森の住人を惨殺したと告白した。それが、イサークの記憶(おもいで)の一部に繋がる。ならば、イサークの憎悪は理由のない事ではない。
 ヴァレリアーノは、オーガにより目の前で両親を永遠に失った瞬間を思い出す。その瞬間が目前を暗闇に変え、息が止まりそうな感情に襲われた。
「坊や? どうしたノかネ?」
 やがて花の迷路で遊び疲れたイサークが現れ、蒼白のヴァレリアーノに話しかけた。ヴァレリアーノは我に返り、思ったままの事を告げた。
「お前がサーシャを恨む理由は、大事な人を殺されたから……なのか」
 かすれた声でそう言った。
(俺と境遇が……)
 そんな想いが歪んだ声に重なる。そして謎が記憶の中で点と線になり繋がりかける。
(サーシャが持つ十字架は俺の母の親友が持っていた物を拾ったと。ならばその母の親友とは……?)
 イサークは自分の記憶の一部が漏れた事に焦燥を感じる。自分を支配するために大きく呼吸を繰り返す。
 簪を取り、結わえていた髪を下ろすと、諦念の瞳をヴァレリアーノに向けた。
 知られてしまったものをどうしよう? 今更何が出来る?
 ただイサークは、手の内で可憐なマリーゴールドの花を握りつぶす。潰された花は甘く濃い匂いを放ち、二人の罪の意識を甲高く奏でた。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 森静流
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ビギナー
シンパシー 使用可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 09月28日
出発日 10月04日 00:00
予定納品日 10月14日

参加者

会議室

  • [8]蒼崎 海十

    2016/10/03-23:52 

  • [7]蒼崎 海十

    2016/10/03-23:52 

  • [6]蒼崎 海十

    2016/10/03-01:18 

    海十:
    あらためまして、蒼崎海十です。
    パートナーはフィン。
    皆様よろしくお願いいたします!

    フィン:
    今回は俺が海十の心を見ちゃうよ。
    花の香りにも酔っちゃいそう…本当に綺麗だよね。

    よい一時になるといいね♪

  • [4]セラフィム・ロイス

    2016/10/02-18:33 

    花園綺麗だね。気分転換にきてお茶も手に入れたし正解かもしれない
    どうも僕セラフィムだ
    今日はちょっと喧嘩かな。してしまった。タイガも考えてくれるといいけれど・・・
    無茶が取り得のタイガだから、なぁ

    ともかく皆のよい時が過ごせることを願っているよ

  • イサーク:

    軽く自己紹介しておこうかナ~。ボクはイサーク。パートナーは坊ちゃん。
    前々から大輪の園に来てみたかったんだよネー。
    今回はどうやらボクの思い出が坊やに見られちゃう!らしいヨ。
    まぁ今更坊やのコト好きーってバレても怖いものなんてないしー?
    アイタアイタッ!坊やが殴るのでこの辺で。
    海斗君達の方もどんな夢見るのか楽しみにしてるネー(手ひらひら

  • [1]蒼崎 海十

    2016/10/02-01:36 


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