紅葉の湖の公園(森静流 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 童謡の「もみじ」がすぐに思い出された光景だ。
 朱色や黄色、中にはまだうっすらと緑が残ったものまで、素晴らしい紅葉が広がっているエルビス水上公園。
 冒険家エルビス卿(東方海域の地図を作った)の孫が、東方の植物を植えた四つの島と記念館のある島、計五つの人口島が浮かぶ湖の公園である。
 どの島でも目を見張るばかりの美しい紅葉が広がり、それが湖の波に映し出されて幻想のように美しい。
 あなたは精霊が漕いでくれるボートに座り込んで、その波の上の紅葉を見つめている。手を伸ばしたら掬えるのではないかと思うほど、映し出された紅葉はくっきりしていた。
「こんなんでいいのかなあ」
 あなたは一応、自分らしく決めたデートスタイルで不安そうに言う。
「A.R.O.A.がいいって言うからいいんじゃないか?」
 精霊の方は、大して気にしていないようだった。
 A.R.O.A.が今回、ウィンクルム達に依頼したのは、エルビス水上公園とその隣の寿司バー「かどまつ」で一日デートをしてくること。
 デートをしたら、その後、報告のレポートを書かなくてはならない。
 それが何の意味があるのかというと、ウィンクルムの日頃の生活調査や意識調査に関わってきてナントカなそうだ。どうやら碑文の影響で仲が不安定になったウィンクルムがいるのではないかと気にしているらしい。
 遊び回ったらそれなりにお金がかかるのじゃないかと思うが、A.R.O.A.が色々負担してくれて参加費は移動もこみで300Jrである。
「こういうのんびりした任務って久しぶりだね」
「碑文の影響で色々大変だったからな」
「あんたがあんなこと考えているなんて知らなかった」
「ばっか、……今言うなよ」
「誰も聞いてないよ、ここ、ボートの上だもの」
 ゆらゆらと波に揺られながら、あなたは笑い出してしまう。碑文の件では、本当に様々な事があった。自分も知らないうちに本音を吐露してしまった。ああいう緊張感はなかなかない。
「こういうまったりした気持ちで、日がな一日紅葉と湖だけ眺めてるっていうのもいいものだね」
「……天気もいいしな。今日はのんびりまったりしよう」
 ボートで波に揺られながら、あなたは、気になっていた童謡をゆっくりと歌い始めた。夕日が眺められるまで、今日は自然の美しさに親しもうか。普段通りの二人で。

解説

 紅葉の美しい秋のエルビス水上公園でデートです。天気は良好ですが、平日ですので人はそれほどいません。
 大きな湖の公園で、東方の植物なら何でも植えてある四つの人口島と、記念館がある島計5つの島があります。
 ボートは貸し切りで三時間利用することが出来ます。
 水上バスも出ています。
 公園内に食事処はありませんが、隣に寿司バー「かどまつ」があり、寿司セットや和風料理コースを頼む事が出来ます。
 移動もあわせ、全部こみで300Jrになります。
 そのかわり、デートの詳細をレポートで提出しなければなりません。
 
 プランには、エルビス水上公園で相方とどんな会話をしたか、どんな行動を取ったかなどを書いてください。
 また、一行でいいのでA.R.O.A.へのレポートを書いてください。

ゲームマスターより

紅葉を眺めながら相方とのんびりお食事!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

桜倉 歌菜(月成 羽純)

  湖の公園で見る紅葉、本当に綺麗♪
羽純くんとボートを借りて、のんびりと湖を進みます

思わずレポートの事を忘れそうになりそう
メモに取りながら行こうかな

水面に漂う紅葉が雅…とても静か
ボートを漕ぐ羽純くんの姿が素敵で、思わずニヤニヤします
…って、これじゃ私の日記状態かも

えっ?
べ、別に風景が綺麗だって事を書いただけで…わ!
駄目だよ、見せられないからっ
う…そう言われたらもう動けない
羽純くんの手がメモ帳をとって…
ペン?はい、どうぞ…

返されたメモ帳を見て、にやけちゃう
羽純くんって、私を幸せにする天才

寿司バーで寿司セットを楽しみます
見た目も美しくて凄く美味しい
ふふ、今日は得しちゃったな

羽純くんとレポートを書き提出


ミサ・フルール(エリオス・シュトルツ)
  ☆『かどまつ』にて
どうして分かったんですか!?
(恥ずかしそうに頬を染め)私、思ってることが顔に出やすいのかな。
あのその事件のことで相談したいことが!?(顔の近さにドキリ)
わ、分かりました(寿司をぱくり)
おいしい!(微笑む)

☆ボートの上で
過去にウィンクルムが受けた依頼のデータ一つ一つを探っていたら7年前の資料を見つけたんですけど、私が知っている内容と全然違うんです。
あの日、確かに私はエミリオが両親を刺すのを見ました。
それなのに資料にはオーガが両親を殺害したって書かれていて・・・まるで誰かが嘘で上書きしたみたい・・・怖い・・・っ(急に吐き気に襲われ)
エリオスさ・・・(縋りつくように精霊に抱きつく)


アラノア(ガルヴァン・ヴァールンガルド)
  ボートの上

ホントだね…
あのお祭りの喧騒が嘘みたい…
秋風を感じ
吸い込む
こんなに穏やかな空気が懐かしく思えるなんて不思議

…それはこっちのセリフだよ…
あの時拘束されていた手首に手を添え
…まだ痛む?

苦しそうに歪む顔
見てると自分も苦しくて
何とかしたくて、インスパイアスペルを唱えて抱きしめる
勿論スキルは発動しないけど、それでも…

ガルヴァンさん
お祭りの時に一回言ったけど、もう一度言うよ
私は…強くなりたい
あなたの重荷になりたくない…
だからあなたの為に強くなって、役に立ちたいの


今はまだだけど
もっと仲良くなれたら
もっと自分に自信が持てたら
玉砕覚悟で告白…してみようかな


レポート
静かな湖の上で悩みを整理共有できました


●アラノア(ガルヴァン・ヴァールンガルド)

 今日、アラノアと精霊のガルヴァン・ヴァールンガルドはエルビス水上公園にA.R.O.A.の依頼でデートに来ています。お祭りの時期とは打って変わった静かで穏やかな雰囲気が二人を包んでいます。
 二人は湖の上にボートで漕ぎ出しました。
「静かだな……」
 オールでボートを漕ぎながら、ガルヴァンが言いました。
「ホントだね……あのお祭りの喧噪が嘘みたい……」
 湖の上を渡る秋の風を感じて、アラノアは深く息を吸い込みます。秋の穏やかな日光が水の上を照り返し、あたりは輝かしく、それでいてとても静かで、心に安息が広がっていくのでした。そして、それが酷く懐かしいのです。アラノアはそれが不思議でした。
「……怪我、もう大丈夫か」
 ガルヴァンが心配そうに言いました。
 ムーンアンバー号の事件の際に、アラノアはサクリファイスでガルヴァンの傷を我が身に移しました。ガルヴァンはそれを気にして、アラノアの顔に手を添えます。
「……それはこっちのセリフだよ……」
 アラノアはあのとき、ガルヴァンがしっかりと拘束されていた手首に自分の手で触れていきます。
「……まだ痛む?」
「俺は平気だ。だが……」
 ガルヴァンは、語尾を途切れさせ、そのまま声をひそめてしまいました。
 アラノアは心配しているように、困ったように、ガルヴァンの方を見ています。
(心から守りたいと思った矢先にこのざまだ。拘束され、相手に弄ばれ、何もできずに助けられた。己が不甲斐無さ過ぎて情けない。もっと力があれば……もっと強ければ……もっと……)
 ガルヴァンは不甲斐ない自分を心の中で罵り、さらなる力を求めて苦悩しています。根底には、アラノアを己の力で守りたいという強い渇望がありました。優しくて控えめで、怒る事のない神人。自分こそが守ってやりたいし、その立場なのです。なのに……。
 アラノアはその苦しそうに歪む顔をどうしようもなく見ています。
 見ていると、自分までが苦しくなってくるのでした。胸がぎゅっと締め付けられます。
 何とかしたくて、アラノアはインスパイアスペルを唱え、ガルヴァンの事を抱き締めました。
 勿論、スキルは発動しません。でも、そうしたかったのです。
 ガルヴァンは抱き締められて、空転をしていた思考が止まり、我に返りました。
「アラノア……?」
「ガルヴァンさん。お祭りの時に一回言ったけど、もう一度言うよ。私は……強くなりたい。あなたの重荷になりたくない……だからあなたの為に強くなって、役に立ちたいの」
 アラノアは本音を告げました。
「俺のために……?」
 見つめると、真っ直ぐな目に出会います。
 アラノアは強くなりたいと願っていました。
 ただの足手まといの女ではいたくない。守られるだけの女ではいたくない。
 それでは、ガルヴァンが一方的に傷つく立場になってしまう。ガルヴァンの重荷になってしまう。
 そんな事は、嫌なのです。
 アラノアは自分が守られるために神人になったのだと思ってはいません。
 違います。守るために。
 この世界を、自分の腕を広げられる範囲を、オーガの魔手から守るために、その力を授けられたのだと、思いたいのです。
(……ガルヴァンさん。私は、顕現したからには誰かを守りたい。勿論ガルヴァンさんも守りたい。おこがましい願いだと分かってるけど、それでも守りたいの)
 神社で浴衣を着たガルヴァンに、アラノアがそう告げた時の事を思い出します。あのときと同じ目をしていました。
「お前は本当に……」
 ガルヴァンはまた声を途切れさせました。胸の中で認めます。
(優しい、そして段々と強くなっている……)
 息を吐いて、ガルヴァンは思考を切り替えます。
(碑文の影響はもうない。ならば、うじうじとした考えは、最早、無意味だ)
 ガルヴァンはアラノアを抱き締め返しました。
「ああ……俺もお前も、これから強くなろう」
 アラノアはガルヴァンの腕の中で、微かに頷きました。
(今はまだだけど、もっと仲良くなれたら、もっと自分に自信が持てたら、玉砕覚悟で告白……してみようかな)
 ガルヴァンはアラノアの体温をほんのりと感じながら、胸のうちで呟きます。
(まだこの気持ちを告白するには早い。距離を縮めるにはどうしたら……)
 わかり合っているようで、まだ本当にはわかり合うことの出来ない、二人の距離感でした。互いを信頼しあい、互いの力を認めて、前を向こうとしているのに。信じる事が出来ないのは、自分の力。自分の心。
 澄み渡った湖の上を波が広がり、映される紅葉が歪んで揺れて、その上を浮かび上がった本物の紅葉が流れていきます。涼やかな風、差し込む光、胸が苦しくなるような青空に、高く飛んでいく渡り鳥の群れ。
 季節は確実に過ぎていき、夏の喧噪と動揺を越えて、二人は静かに自分の心と向き合う時期に来たのでしょう。
 レポ-トの方にはアラノアが、”静かな湖の上で悩みを整理共有できました”と書きました。

●桜倉 歌菜(月成 羽純)編

 今日、桜倉歌菜と精霊の月成羽純はエルビス水上公園にA.R.O.A.の依頼でデートに来ています。
 デートの経費はほとんどA.R.O.A.が持ってくれるのですが、かわりに簡単なレポートを提出しなくてはなりません。
 二人は水上公園に着くと、ボートに乗る事にしました。
 まずは羽純がボートを漕ぎました。
 疲れたら交代すると歌菜が言いましたが、羽純は笑って「これぐらいで疲れたりはしないさ」と返しました。
 歌菜はボートの上から色鮮やかな紅葉をじっと見つめています。風に木々が揺れる様子が美しくて思わず魅入ってしまうのです。羽純はそんな歌菜を微笑ましく見つめています。
 舞い落ちる紅葉に手を伸ばす歌菜は、秋の日射しの中、キラキラと輝いて……羽純は胸の中、「綺麗だ」とため息をつきました。
(湖の公園で見る紅葉、本当に綺麗♪)
 歌菜はそれほどおしゃべりではありませんでしたが、水上公園の素晴らしい眺めにすっかり満足でした。美しい自然を見る事で、顔全体が輝いて、生気が漲っている様子です。
 羽純とともにのんびりと湖を進んで行きます。
(思わずレポートの事を忘れそうになりそう。メモに取りながら行こうかな)
 歌菜はバッグの中からメモ帳とペンを取り出して、おもむろにレポートの下書きを始めました。

『水面に漂う紅葉が雅…とても静か
ボートを漕ぐ羽純くんの姿が素敵で、思わずニヤニヤします』

 ナチュラルにそんな文章を書いてしまったのですが、書いてから歌菜は客観的に読み直して、苦笑します。
(……って、これじゃ私の日記状態かも)
 羽純は歌菜の笑っている様子を見て、自分も幸せな気持ちで微笑みました。羽純は歌菜の笑顔が大好物です。
「歌菜、何を書いているんだ」
 話しかけると歌菜はびっくりして肩を跳ね上がらせました。
「えっ? べ、別に風景が綺麗だって事を書いただけで……わ! 駄目だよ、見せられないからっ」
 羽純が歌菜のメモ帳に手を伸ばしてきたので、歌菜は慌ててボートの奥の方に腰をずり上がらせました。
 そういう反応をされると、羽純としては見ない訳にはいかなくなります。オールから手を離して歌菜の方に身を乗り出します。歌菜はわたわたと慌てながら羽純から逃げようとボートの奥へずりずりと移動。
 逃げる歌菜に、羽純は真顔で言いました。
「暴れると湖に落ちるぞ」
 本当の事なのですが、そう言えば歌菜が止まる事を知っているのです。
(う……そう言われたらもう動けない)
 羽純は歌菜の扱い方を心得ています。実際、歌菜は大きく動くのをやめました。大人しくなった歌菜の手から、羽純はぱっとメモ帳を取り上げました。
 中を見ると--
(……参った。なんて可愛い事を書いてくれるんだ……)
 羽純は内心、悶えてしまいます。危険じゃなかったのなら、ボートをバンバン叩いていたところでした。
 そういうことは出来ないので、羽純は歌菜に思いの丈を見せる事にしました。
「歌菜、ペンを貸してくれ」
「ペン? はい、どうぞ……」
 歌菜は素直にペンを差し出しました。
 羽純はペンを取り、歌菜のメモにさらさらと付け加えました。

『紅葉が舞い落ちる中、瞳を輝かせる歌菜は……とても綺麗だ』

 それから歌菜の方にメモ帳を返します。不思議そうにしていた歌菜ですが、羽純のメモ書きを見て、驚きました。顔が勝手ににやけていきます。見上げると羽純は、穏やかに笑いながら、歌菜の反応をじっと待っているのでした。
(羽純くんって、私を幸せにする天才……!)
 思わず、ボートに立ってバンザイしたくなる歌菜でしたが、それは思いとどまり、メモ帳に鼻を押し当てて、にやけまくってしまう顔を隠しました。メモ帳の影から羽純を見ると、歌菜の仕草を見てくしゃっと笑っています。
 爽やかな秋風の吹きすぎていく湖の上、歌菜と羽純は互いに笑顔をかわしあいながら、ずっとボートの上で日光浴をしていました。輝かしい陽光が、二人の将来を約束してくれているようでした。
 それから二人で寿司バーかどまつに移動しました。
 二人で寿司セットを注文して楽しみます。
 寿司は見た目も美しく、味も非常に美味でした。中とろ、まぐろ、はまち、サーモン、ほたて、赤海老、etc……どれも新鮮な素材ばかりで、米の方もしっかりしたものを使っています。明るく清潔な店内で向かい合って座りながら、二人は寿司をゆっくり食べました。
「ふふ、今日は得しちゃったな」
 A.R.O.A.の依頼ということで、お金はそれほどかからないのに、ボートで紅葉を楽しむ事が出来、美味しい寿司セットも食べられて、おまけに羽純から本当に幸せな言葉を貰えたのですから。
「締まりのない顔になってるぞ」
 羽純は照れ隠しに歌菜の額を小突きました。
 その後、二人は一緒にレポートを書いて提出しました。

”二人で穏やかな時をのんびりと過ごせました”

●ミサ・フルール(エリオス・シュトルツ)編

 今日、ミサ・フルールは精霊のエリオス・シュトルツとエルビス水上公園にA.R.O.A.の依頼でデートに来ています。経費はほとんどA.R.O.A.が持ってくれますが、後でレポートを提出しなければなりません。
 ミサは来るなり、かどまつにこもって調べ物を始めました。
 ミサを心配してエリオスが話しかけます。
「浮かない顔をしてどうした? 7年前の事件を調べているのか?」
 エリオスに訊ねられてミサは驚きました。
「どうして分かったんですか!?」
「お前の事ならよく分かるさ。何せお前は嘘をつくことが苦手なようだからな」
 そう言ってエリオスはミサの頬をつつきました。
 ミサは恥ずかしそうに頬を染めます。
「私、思ってることが顔に出やすいのかな」
 口の中でそう呟いた後、ミサはエリオスに向き直りました。
「あのその事件のことで相談したいことが!?」
 ミサが思わず早口になりながら言うと、エリオスがすっと顔を近づけてきました。ミサは思わずどきりとします。
「ここでは誰に聞かれるか分からない、その話は後でしよう」
 エリオスは小声でミサの耳に囁きました。
 そのあと、ミサから離れて普通の位置から普通の声で言います。
「今はただ料理を楽しめ」
 ミサはドキドキしながらも、なんとか胸を落ち着かせました。
 あらかじめ頼んでおいた寿司に手を伸ばします。
「わ、分かりました!」
 それから寿司をぱくりと頬張ります。
「おいしい!」
 思わず微笑むミサ。
「そうだ、それでいい」
 その笑顔を見て、エリオスは満足げに頷くのでした。ミサには天真爛漫で快活な笑顔が何より似合うに決まっているのです。

 二人は、湖のボートに来ています。
 エリオスがオールで漕ぎながらミサに訊ねました。
「7年前のあの事件をお前はどこまで調べたんだ?」
 ミサは落ち着いて話し始めました。確かにここならば、誰にも聞かれる事がありません。
「過去にウィンクルムが受けた依頼のデータ一つ一つを探っていたら7年前の資料を見つけたんですけど、私が知っている内容と全然違うんです」
 それが、ミサにとっては疑問で、とても不気味に思える出来事でした。七年前の事件には何か謎がある。きっとミサには思いも寄らないような謎が……。
 それが身近な人間の事ならば、自分のルーツを闇の中に隠されてしまったような恐怖と不気味さを感じてしまうのです。
「だろうな、どんなに探ろうとも同じ結果が出るだろうよ」
 エリオスは辛そうに唇を噛みしめながら言いました。エリオスは何かを知っているようです。
「あの日、確かに私はエミリオが両親を刺すのを見ました。それなのに資料にはオーガが両親を殺害したって書かれていて……まるで誰かが嘘で上書きしたみたい……怖い……っ」
 誰かが、両親の殺害の記録を書き換えたのです。
 事実を嘘で塗り替えたのです。
 それは加害者も被害者も、ミサにとっては身近な、大事な人達なのです。
 自分のルーツ、自分の根源に関する事で、こんな書き換えを行われた恐怖。不気味さ。
 ミサは急に吐き気に襲われ、ボートの上に突っ伏しました。
 エリオスはオールを置いて、怯えるミサをそっと抱き締め、子供をあやすように背中を撫でました。
 ミサはボートの上でがくがくと震え続けています。
 両親が殺された記憶を思い出すのも辛い事ですが、その両親の死の真実が、誰かによって隠蔽されているという事も、耐えがたい事です。ですが、何よりも--例え、許すと決め、受け入れると覚悟を決めたことであっても、そのときの事を思い出せば、衝撃を受けてしまう事実。
 エミリオが両親を殺したという事実。
 何故に、エミリオはそんなことをしなければならなかったのか--
 ミサはいずれその事件についての真実を知り、その事を、より具体的に現実の出来事として受容しなければならないのです。
 大切な精霊が、大切な両親を殺したという出来事。それを、ミサは、逃げずに受け止める強さを持たなければならないのです。
「……大丈夫だ、俺が側にいる。父親として、お前を守ろう」
「エリオスさ……」
 ミサはまるで縋り付くように、エリオスへと抱きついていきました。
 湖の上に頼りなく揺れるボートの上、ミサは落ち着くまで、エリオスの腕の中に抱えられていました。
 それが実の両親と大切な精霊のことならば、何よりも、真実を知りたい。だけれど、見えない誰かがミサの行く手を阻み、ミサに本当の事を何も知られないように仕組んでいる……それは一体、何が目的なのでしょうか。
 なにもかもが分からないから、ミサは不安で頼りない気持ちで、ただ、両親の親友だったというエリオスを信じるしかないのです。
 二人を乗せたボートはゆらゆらと揺れながらも、明るい湖畔の上を静かに流れていきました。穏やかな陽光、紅葉の上を吹きすぎる秋風、全てが見えない敵と戦うエリオスとミサを包み込み、優しく慰めているようでした。まるで失われたミサの両親が、未だに彼らの事を見守り、愛を注いでくれているかのように……。

 A.R.O.A.へのレポートはエリオスが書きました。
”お互いの存在の大切さを再確認した1日だった”



依頼結果:大成功
MVP
名前:アラノア
呼び名:アラノア
  名前:ガルヴァン・ヴァールンガルド
呼び名:ガルヴァンさん

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 森静流
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ロマンス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ビギナー
シンパシー 使用可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 3 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 09月23日
出発日 09月29日 00:00
予定納品日 10月09日

参加者

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