プロローグ
「ムーンアンバー号に現れたオーガの概要、その一部だ」
職員の男性がバサリと卓上へ紙束を投げ置く。
その顔は曇っていて、世辞にも戦況が明るいとは言えない。
「偵察も兼ねて先行してもらったウィンクルムが負傷して帰還、及び一名のウィンクルムが運転席に取り残された。
どうやら、高スケールオーガの存在も認められるようだ。加えて、車内は現実とは異なる奇怪な空間が広がっている、との事」
資料にあった内部の写真には、外観からは予想の付かない奇妙な光景が広がる。
足元の自由を奪う大きなベルトコンベア、巨大な歯車は宙に浮かび取り付いたオーガでひしめき返る。
機械的な、と言うよりは、その幻想はまるでスチームパンクの世界を思わせた。
「ここは中心に近い車両の様だが――行く先々で多種多様のオーガが存在する。どいつも機関車のパーツをその身に宿し、
倒さなければムーンアンバー号の部品を取り戻しようもなく、何よりオーガの存在がある以上、取り残された者にも迂闊に手出し出来ない」
今回のオーガ退治にはもう一つ問題がある。パーツを必要以上に破壊する事無くオーガのみを倒さなければならない、という点だ。
高火力を与えてしまえば最悪パーツや内部を破壊する事態になりかねないし、謎を解く鍵ともなり得るムーンアンバー号を、必要以上に破壊してしまうのは避けたいところだ。
「極力、内部や部品を破壊しないよう。取り残された者を救出の上、今回は記載にあるオーガ一体を退治してもらえたらそれで構わない。人命救助が最優先だ」
よろしく頼む。そう告げて、職員の男性は人数分の資料を手渡した。
解説
・オーガ概要
『メダ・サテナ』…一体
Cスケール・植物型オーガ。車両の一室にて確認。
高さ三メートルほどの大きな花。無数に伸びる蔦の触手を備える。
蔦は範囲20M四方まで伸び、一度に20人までと同時戦闘が可能。
花の下にある筒状の胴体は消化液で満たされており、飲み込まれると生命力を吸われ、ランダムに体力を再生する。
また、二回連続で蔦に当たると防具補正無効の締め上げ攻撃を受ける。
蔦のいくつかに歯車や大きな釘などを装備しているため、そちらにも注意。
・取り残されたウィンクルム
負傷しているため、オーガが確認されたのと同じ車両に身を潜めている。
ゲームマスターより
お世話になります、梅都です。
Cスケールとはいえ一体なので、チームで協力すれば難しくない相手かなということでビギナーに設定しております。
よければお気軽にご参加ください。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
現場に着いたらトランス。 取り残された人の名前と「助けに来たぞ」と叫び安心させる。 「ドコに居る?」と居場所を聞きつつ、メダ・サテナの近くへ。 ベルトコンベアの動きに注意し、変な所へ連れて行かれないようにする。敵への距離を一気に詰める為に利用する。 「大丈夫、皆で倒せる」と鼓舞。 コンベアの振動に紛れ移動し、敵の知覚を撹乱。 誰か触手に捕まったら即近くに走り、敵触手を切断して救出。 ラキアのMP不足時はディスペンサ。 触手に捕まらないようにしながら敵胴体へ近づき切りつける。 敵胴体近くでゼノアスさんへチューニングシンフォニア使用。 オレも敵胴体を切り、体内消化液を敵にまき散らす。 短時間で敵を仕留めて皆で帰ろうぜ。 |
瑪瑙 瑠璃(瑪瑙 珊瑚)
(出来れば、自分達が救助に来るまで無事でいてほしい) ウサミミでセイリューさん達と連絡 少しでも手がかりがあれば、追跡だ。 ●取り残されたウィンクルム 発見次第、ウサミミでセイリューさん達に知らせる。 発見時メダ・サテナと遭遇していない場合、優先して避難。 怪我の有無や具合が悪い場合、珊瑚から公方を借りて応急処置。 ●メダ・サテナ 遭遇次第、または取り残されたウィンクルムがいた場合は、 避難させてから珊瑚とトランスし、ハイトランス・ジェミニも発動。 自分はこまめに動きながら、 メダ・サテナの死角を狙って胴体を射る。 だども、誰かが締め上げ攻撃されている場合は、その蔦を狙って射る。 討伐と救出後は、A.R.O.Aに報告。 |
李月(ゼノアス・グールン)
申請 救急箱 可能なら本部に救助対象の位置確認 皆と情報共有 サテナいる現場直前トランス 位置不明なら呼び掛ける「救助に来ました 相棒と共に救助対象のいる場所へ移動する 敵がこちらを感知する迄は極力隠密行動 ベルトコンベアの先を見て相棒に声掛け乗り換えスムーズに 蔦は切断か回避で対処 救助対象への対応 重傷なら応急手当(医学2)を早急に済ませ 蔦圏外20m以上サンライズ恩恵範囲30m内に退避させ守りにつく 敵が移動する可能性考え警戒 蔦は切断で対処 部品装備の蔦は部品避けて切断したい 蔦の動き注視 気付いていないか不意の危険な動きをする蔦は仲間に方向を知らせ注意喚起 戦後 必要なら怪我人手当 相棒大怪我ならサクリファイス |
スコール(ネロ)
インカムを事前要請 ウィンクルムの、えーと… あんたのパートナー、つっていいのかな ちゃんと帰ってきたことを出来りゃあまず報告したい 聞けたら名前も聞いておき、注意喚起や気つけに呼びかけ出来るように トランスは潜入時に済ませる 触手の気を引くことで攻撃手と救出を支援 攻撃への反応の違い、回復を急く動きなども見て敵の脆そうな部分を探り もし観察できたら皆に伝える 養分にされねえように声を掛け合いネロと交互に対応 攻撃の機にはコンフェイト・ドライブでネロを後押し 頭がたけーっつってんだよ 最初に声を掛けた時自然と浮かんだ自分がパートナーだったらという考えを振り返り戸惑い パートナーか…んん… 力の籠もる相手ではあるんすけど… |
「ここがムーン・アンバー号か」
すっげぇなぁ~! 手をかざして大きな車体を見詰め、思わず惚けたような溜息を漏らすのは精霊、瑪瑙 珊瑚。
隣に並び、サイバースノーヘッド『ウサミミ』の調子を確認していた瑪瑙 瑠璃もまた、内部がオーガでひしめくであろう車体を見遣り、自分達が救助するまで無事で居てほしい、と、取り残された者の安否を祈った。
一方でインカムを事前申請した神人、スコールと、救急箱の申請及び本部に救助対象の位置確認を要請していたのは同じく神人である李月。
「連絡が取れました。救助対象はおそらく、メダ・サテナと同じ車両に身を潜めているのでは、との事です」
李月の報告を聞き届け、一行は再びムーン・アンバー号へと視線を向ける。
「短時間で敵を仕留めて、皆で帰ろう!」
神人、セイリュー・グラシアの激励を合図に、一行はムーン・アンバー号への突入を開始した。
「……気味の悪い空間だな」
ぽつりと呟き、どこかに救助者の手掛かりがないかと目を凝らす瑠璃。
内部は報告にあった通りいびつに歪んでいて、機関車の中だとはおおよそ思えない様相を呈していた。
あちこちに見える余計なオーガには目もくれず、しかし極めて慎重に、報告にあった場所へと急ぐ。
「この車両の筈だけれど……」
やがて蔦が他に比べ一層複雑に絡む部屋へと到着し、内部を慎重に見渡す精霊、ラキア・ジェイドバイン。
確かに報告にあった車両である筈だが、未だオーガも要救助者も姿を見せない。
「……聞こえますか、貴方を助けにきました」
インカムを使い李月が呼びかけるが返事はない。事前に本部へ申請していたから、通じては居るはずだ。
息を潜めている為だろうか……? 見守っていた精霊ネロも同じ様にインカムを使用し「おい」と語りかけるが返事は返らない。
「そんなんで解るかよ。貸せっ」
精霊の無骨な語りかけを見かねたスコールが、ネロからインカムを奪い取り、やんわりとマイクに向かい呼びかけた。
「ウィンクルムの。えーと……あんたのパートナー、つっていいのかな? ちゃんと帰ってこれた事を、まず報告したい」
『……だ、誰だ?』
ようやっと、反応が返った。
控える仲間たちにスコールはひとつ頷いて見せると、再び慎重に救助者へと呼びかける。
「要請を受けて救助に来た。出来れば名前を聞かせてくれないか? 気付けや呼びかけに使いたい」
『そうか……あいつが無事なら良かった。俺はイデという。居場所を伝えたいが空間が歪んでいてよくわからん』
「周りには? オーガは居ますか、それと怪我の具合も」
続いたのは李月だ。少し間があって、再度インカムから声が流れる。
『疲労が濃い以外の事は特別何もないが、オーガの気配はある。周囲に蔦が絡まっていて身動きが取れないんだ。おそらく、座席のどこかだと……』
「!」
ぴよ! と不意に遠くでひよこが鳴いた。
珊瑚が走らせていたオ・トーリ・デコイに、敵が上手く掛かってくれたようだった。
頭を上げてひよこを確認すると、ズルズルとその巨体を現したメダ・サテナがデコイを取り込んでいる。
同時に、急ぎ珊瑚はイデへと呼びかけた。
「聞こえっか? サテナが近くに居る可能性あんなら、そこから動かないでくれ。今、俺たちが行くから!」
呼びかけと同時に珊瑚はトランス――ハイトランス・ジェミニまで――を素早く済ませ、同じく現場到着時にトランスを済ませていたセイリューと共に、不意をつかれたサテナへ向かい駆け出した。
「座席っつってもこう多くちゃ……イデ、ドコに居る!?」
セイリューが叫ぶ。言葉はメダ・サテナに通じない為、一刻も早く救助者に声を届けたかった。
車両の内部は完全に異空間だ。とはいえ最初から備え付けてあった座席や窓ガラスなどは、あるものは宙に浮いていたり、またあるものはおかしな場所へ張り付いていたりと、通常の感覚ではまるで予測が付かない。
「――グオォッ!」
二人の存在に気付いたメダ・サテナが蔦を飛ばす。
予めラキアからセイリューに掛けられていたスキル『シャイニングスピア』の光輪がいくつかを弾き、珊瑚はスキル『レクイエム』を踊る様に繰り出し胴体にヒットさせる。
この攻撃は相手の聴力をも鈍らせる。要救助者への、これ以上の被害を出させない策だ。
「珊瑚! あまり出すぎるなっ!」
「やしが、どこ居るか早く見つけられねぇと、って……うわ!」
瑠璃の呼びかけに振り向いた一瞬を突いて、蔦が珊瑚の足を捉えた。
そのまま宙高く放り上げられる、その刹那。
(! あれは……!)
丁度、サテナの後ろ側――、一行が構えていたのとは全く逆方向にあった座席。
一際がんじがらめに蔦が絡まったそこに、身を潜めていたウィンクルムらしき人物と、珊瑚の視線がばちりと絡み合った。
「……っ珊瑚!」
宙に浮かぶ歯車にあわや叩きつけられる、という寸でのところで、瑠璃の射た攻撃が見事に蔦を切り裂いた。
「うわ、っと!」
宙に放りだされるも持ち前の運動神経でかろうじて態勢を整え、歯車を足場にトン、トトンと軽快に着地を決める。
すかさずインカムと、地声のどちらもを駆使しパーティーへと呼びかけた。
「救助者はあっちだ、サテナの向こう! 攻撃をかいくぐっていくしかねぇ!」
メダ・サテナは進路を塞ぐ様に巨体を置いている。移動速度はそう早くないが、周囲に位置し不規則に流れるベルトコンベアに乗られでもしたら厄介だ。
「そうと決まりゃあ……行くぜ!」
「ああ!」
再び駆け出したのはセイリュー、そして同じくシャイニングスピアの恩恵を受ける精霊、ゼノアス・グールンだ。
双方ともトランスは突入時に済ませてある。前方へと移動するコンベアに左右から飛び乗り加速を着け、一気にサテナの触手網を潜り抜けた。
標的が二体脇をすり抜けた事で、すかさず花は蔦を追わせるが、その注意を引く様に動き回り攻撃を加えていく瑠璃とラキア。
「セイリュー達は追わせないよ!」
間髪居れずラギアが発動したシャインスパークの効果で一際強い光がサテナの視界を塞ぐ。
蔦の動きが覚束なくなりその巨体を刹那狼狽させた隙に、セイリューとゼノアスが無事、救助者――イデの元へ辿り着いた!
「助けに来たぜ。よく頑張ったな!」
「あ、ああ……ありがとう」
絡む蔦を二人で切り裂き、手早く救助者を引き上げる。
長い事耐えていた為か体力を消耗しており、その体にも小さな傷が絶えず、弱っているようだった。
「肩を貸す。ラキアのトコまで避難させるから、ゼノアスさんはメダ・サテナを頼むよ」
「おう、任せろ!」
調律剣シンフォニアの効果をゼノアスに付与させると、イデを抱えたセイリューは戻りのコンベアに飛び乗る。
「だ、大丈夫なのか? 気付かれるんじゃ……」
「ああ。だから、ラキア達とゼノアスさんが引き付けてくれてる内にコンベアを使うんだ。振動に紛れれば地面からの知覚を錯乱出来るかなと思ってさ」
「なるほど……」
セイリューがイデの救助に成功した一方で、数十にも及ぶ蔦の猛攻を前線で防いでいたのはラキアとスコール、ネロだ。
後衛からは瑠璃の鉱弓が蔦を射るがなにぶん動きが難解で当て辛い。矢の一本が触手の持つ歯車に弾かれ異空間に消えた。
「ネロ、こっち」
「なんだ」
呼ぶ声に振り向きもせず一言答えれば、不意にスコールがネロの頭をぐりぐりと頭上から押さえつけた。
トランスはこちらも潜入時にさっさと済ませてきた。どういう意図だろうか……と、ネロが図りかねていると。
「頭がたけーっつってんだよ。これでちっとは戦いやすくなるだろ」
「……そうか」
コンフェイト・ドライブを施されたのだと気付き、屈めという意図だったのか、と気付くがどうにも意思が噛み合わなかった様で、ちらりと神人を見た時には不機嫌そうに前線へと駆け出していた。
飛んできた蔦の一つが歯車を絡め取っているのを見て、部品を壊さないようにという指示を思い出す寸でで防御するが、攻撃が掠めて僅かにネロは負傷する。
「触手に物騒な物をぶら下げている。スコール、頭上にも注意しないと」
「見えてるっつーの! わざわざ言わなくったって……ってか、ネロさんが気をつけろよ!」
「そうか、それはすまなかった」
「喧嘩売ってる!? って、やっべ……!」
そりの合わない相方との会話に気を取られた一瞬、スコールの足元が蔦に絡め取られる。
今度こそ飲み込まんと高く体を振り上げられ、胴体に咲く歪な花がグパァッ! と大きく開かれた。
飲み込まれる……! と覚悟した瞬間、ギャアアッと悲鳴を上げ本体が大きく揺れた。
は、と下を見れば胴体に深々と突き刺さるのはゼノアスが発動した『タイガークローⅡ』の大爪だ。
「スコールさん!」
間も無く駆けつけたラキアが骨削で蔦を切断しスコールの体を解放する。
放り出されるもかろうじて無事着地し、すぐさま態勢を整えた。
「消化液ぶちまけろ! でりゃあっ!」
「ギイイッ!」
刺した大爪をゼノアスが横薙ぎに振り抜けばびちゃびちゃと液体が飛散し花自身の蔦までも溶かした。
カウンターの様に放たれた蔦の一つがゼノアスを襲うが構わず再びその巨躯へと爪を突き刺す。
ゼノアスの攻撃が決まったのとほぼ同時に、セイリューが担いだ救助者が無事後衛へと送り届けられた。
「大丈夫ですか、今手当てしますから」
「す、すまない……助かる」
持ち前の医療スキルで事前申請していた救急箱を使い、てきぱきと治療を施す李月を含めた範囲に、更にラキアのスキル『サンライズ』が施された。
小さな太陽の穏やかな光に、イデの傷口がみるみる癒されていく。
「加勢するよ、速攻で倒そう!」
「おう!」
李月が無事イデの守りに入り、サンライズの範囲内に置かれた事でラキアも駆け出し、一斉に攻撃を開始した。
メダ・サテナの動きは鈍いが常に足元を動くコンベアに運ばれいつイデと李月が標的になるか解らない。早々に片を付けたかった。
「おいで、こっちだよ!」
蔦の動きを集中させる様にちょこまかとラキアが動き回れば、宙に浮く歯車に絡まり噛まれ、触手は動きを鈍らせた。
その隙に骨削を使い数本一気に叩き斬る。一方では珊瑚が『オスティナート』を舞い高速で胴体諸共蔦を斬りつける。
襲い来る蔦の数本は後衛から瑠璃がその半数を射抜き、セイリューも胴体を切り付け消化液を敵本体へと撒き散らし、確実にダメージを与えていった。
「グオオオッッ……!」
ダメージを大きく持って行かれたところで突然メダ・サテナが大きく怒声を上げた。
じりじりと接近していたベルトコンベアに移動し救護者と李月の控える方向へと向かう。
「やっべ、そっちは……!」
意図に気付いたスコールがメダ・サテナの意識を引く様に花の前方へ飛び出せば、邪魔だといわんばかりの勢いでもって、蔦は一斉に彼へと襲い掛かった。
「リツキ!」
「スコールッ」
二人の精霊が叫び、同じコンベアを使って花の移動を阻止しようと胴体へ向かい駆けた。
すかさず触手が二人の足元を掬い上げ、胴体を締め上げようとその身に絡みつく。
遠方から狙いすませていたのは瑠璃だが、ふたりが捕らわれてしまった事と、不意に動きを変えたコンベアの動きに足を取られ攻撃に一瞬の隙が生まれた。
駆けつけたセイリューとラキアが根元から蔦を切断するも、ひと足早く高く放られた二人の体は絡まった蔦ごと、大きく開かれた花の中へどぼん! と派手に落下した。
「ゼノッ!」
「ネロ!」
二人の神人が呼びかけるのも花は満足げにその口を閉じてしまった。
蓄積したダメージによりいくらかは減少していても、中には消化液がまだたっぷりと溜まっているはずだ。
おまけにメダ・サテナは獲物を飲み込む事で餌の生命力を吸い上げ己を回復する能力がある。
一行が急ぎ救出に向かおうとした瞬間――花が動きを変えた――というか、もがき苦しみ始めた。
「ガッ……グオオオッ!?」
「! 皆、胴体から離れて!」
胴体の中から放たれているエネルギーの気配に気付いた李月が振り返り一斉に背後へと呼びかけ、退避したのとほぼ同時。
消化液の溜まった胴体が内部から膨張し、ぶるぶる震えたかと思った次の瞬間、液体や花びらを撒き散らし、勢い良く暴発した。
「ギャアアアアッ……!」
攻撃の決め手になったのは、飲み込まれた二人のシンクロサモナーが内部から放ったジョブスキルだ。
ゼノアスがタイガークローの大爪を、ネロがスネイクヘッドによる大蛇の一噛みを双方とも全力で見舞った。
外部から何度も切りつけられたダメージも有り流石に効いた様で、メダ・サテナは間も無く動きを完全に停止した。
「っはぁ、は……! げほっ。あーっ、溺れるかと思ったぜ……!」
「ゼノ、大丈夫かっ?」
花から脱出した相棒へと慌てて駆け寄った李月に「こんなもんダメージにもはいらねぇよ」と歯を見せゼノアスは笑うが、憑依術中に減少した体力も相まって随分と消耗しているのが見た目に解る。
消化液塗れになった防具と衣類の一部を李月は急ぎ剥ぎ取ると、唐突にゼノアスの体を抱き締めた。
「り、リツキっ? なんだよいきなり、大胆な……っ!」
「かっ、勘違いするなよ!?」
――終わりなき栄光のロードを共に。インスパイアスペルが唱えられると共にゼノアスの傷が癒え、替わりに李月の体へと、ゼノアスから減少したダメージがどっと加わる。
サクリファイスを使ってくれたのだ、と気付くのと同時に、力の抜けた李月の体をゼノアスは抱き締めるように支えた。
「もう戦闘終わったんだから、無理しなくて良かったのに」
「お前にばっか、負担かけてらんないだろ……」
「リツキ……っ」
じぃん、と感動のままぎゅううと抱き締めたら痛い止めろと悪態が返った。
同じ様に憑依術を使い脱出と討伐を果たしたネロも、肩で息を整えつつ消化液に塗れた防具を払いながら、駆けつけたスコールを見遣る。
「養分にされねぇようにって言っておいたのに、まったく……」
「……中から裂いた方が早いかと思っただけだ」
「よく言うぜ。まあ、でも……」
「?」
大した怪我でなくて良かった、という一言はなんとなく出てこなくて、精霊の背中をトンと一つ景気付けるように叩き、スコールはそのまま精霊へと背を向けた。
「本当にありがとう。なんと礼を言えばいいのか……」
無事救出されたイデは一行に頭を下げ、心配して駆けつけていたパートナーと固く抱擁を交わした。
くる、と振り向き不意にスコールの元へイデが駆け寄る。
「最初に呼びかけてくれたあなた。スコールさん、だっただろうか?」
「ん? ああ、はい。オレっすけど……」
「パートナーの話を出されたとき。意識が、朦朧としていたんだが……引き戻されたよ。君たちも、いい関係を築けるといいな」
「……」
イデの言葉に、もし自分が残されたパートナーだったら……という考えがスコールの脳裏に浮かび、戸惑い交じりに口を噤む。
「パートナーか……んん……」
力の篭る相手ではあるんすけど……ぼそりと一言ぼやいて、今は離れた場所で装備を直している精霊を見遣る。
まだ知り合ってそう間もないし、顔を合わせれば悪態が尽きない。
難儀な性格上世話を焼いてしまうだけで、特別な感情なんてまだ何もありはしないけれど。
頭を下げ帰路に着いたイデとそのパートナーや、息の合ったプレーを見せる瑠璃と珊瑚。
戦いにも十二分に慣れたセイリューとラキアに、なんだかんだと言いつつ良いコンビの李月とゼノアス――。
頼もしい仲間達を見て思う。いつか、あんな風に自分達もなれるのだろうか、と。
今は答えの見えてこない自問を振り払って、彼らと共にスコールもまた、任務を終えた。
依頼結果:成功
MVP:
名前:セイリュー・グラシア 呼び名:セイリュー |
名前:ラキア・ジェイドバイン 呼び名:ラキア |
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 梅都鈴里 |
エピソードの種類 | アドベンチャーエピソード |
男性用or女性用 | 男性のみ |
エピソードジャンル | イベント |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ビギナー |
シンパシー | 使用可 |
難易度 | 簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 4 / 2 ~ 5 |
報酬 | 通常 |
リリース日 | 09月07日 |
出発日 | 09月14日 00:00 |
予定納品日 | 09月24日 |
参加者
- セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
- 瑪瑙 瑠璃(瑪瑙 珊瑚)
- 李月(ゼノアス・グールン)
- スコール(ネロ)
会議室
-
2016/09/14-00:00
オレ達も出した!
久々の討伐モンだからテンション上がってっけど、落ち着こうな!
瑠璃:お前が落ち着け。 -
2016/09/13-23:59
挨拶が間にあってねえ…!よろしくお願いします。足引っ張らねえよう頑張りますね。
最後に慌ただしくしてすんませんした、皆さん相談お疲れ様でした。 -
2016/09/13-23:56
-
2016/09/13-23:52
プラン書けたー!
スコールさんは初めましてだな。ヨロシク。皆で頑張ろう。
オレ達はほぼ敵対応に終始しているので
他の事は皆がうまく立ち回ってくれたと信じてる!
相談その他色々と皆さんお疲れさまでした。
良い結果になるって信じてる! -
2016/09/13-23:30
あっ…すんませんスキルはスネイクヘッドです。見直してよかった……。
文字数かぞえて書いたつもりだったんすけど貼り付けてみたら少し余裕があったので
・インカム事前申請
・可能なら残ったウィンクルムと連絡を取る
を入れてみました。
-
2016/09/13-23:30
スコールさん、初めまして。
どうぞよろしくお願いします。
うちの相棒に捕まった時と呑まれた時(自分or仲間)の
対処は備えとして一応入れてあります。
>彼の位置
可能ならとつけて事前行動に
本部に救助対象の位置確認を入れました 情報は皆さんと共有としています。
セイリューさん、発言がとても参考になりました。ありがとうございました。
プランは提出しています。 -
2016/09/13-23:14
お返事が遅れました。
確かに李月さんとは、初めてですね。改めてよろしくお願いします。
スコールさんは初めまして。
インカムを使うようでしたら、自分はサイバーヘッドを利用しますが、互換性があるのか……。
セイリューさんや他の皆さんと連絡しますので、よろしくお願いいたします。
また、ウィンクルムの救出とメダ・サテナの討伐に関してもA.R.O.Aに報告予定です。
メダ・サテナと今回の環境に関しては、セイリューさん、李月さんの発言と照らし合わせながら、
プランを書いています。
自分はメダ・サテナの死角から弓で射る予定です。
珊瑚は今回初となるレクイエムを使用し、主に攻撃と生命力の奪いを狙っています。
……と、シャイニングスピア、了解しました。
ラキアさんには、お手数おかけしますが、よろしくお願いします。
また、珊瑚は今回救出するウィンクルムだけでなく、怪我したウィンクルムにもと、
印籠「公方」を持っております。もし、必要でしたらどうぞ。 -
2016/09/13-23:14
インカムの件はちっと削ればオレの方で入れられると思うんすけど、もう誰か書いてますかね…?
スキルは……迷うほど覚えられてないんすけど、狙いをつけやすそうな(イメージのある)スネイクショットの方を設定してます。 -
2016/09/13-23:04
めちゃくちゃギリになってすみません、はじめまして、スコールって言います。
攻撃手の人と救助の人が動きやすいよう20人相手取れるっつー触手のいくらかを引っ張れたらと思って参加させてもらいました。
敵の妨害の妨害ってカンジでメダ・サテナ中心で書いてます。オレとネロは下手すっと攻撃で与えられるダメージより回復剤にされた時の回復力のがデカそうなんで、養分にされねえよう気をつけます。 -
2016/09/13-21:53
>我々が到達するまでに残された彼は移動
成程、ありがとうございます。
安全圏への退避で行動しようと思います。
時間が無いな(汗)
プランがんばります。 -
2016/09/13-21:01
取り残されたウィンクルムの居場所
プロローグでは運転席となってるけど、
その下の解説では
「オーガが居たのと同じ車両で隠れている」とある。
『帰還したウィンクルムは残された人が運転席に居ると思っているが、
我々が到達するまでに残された彼は移動してオーガと同じ車両に居る』
という解釈でどうだろう。
敵と同じ車両に居る前提で行動してもいいんじゃないかな。
誰か文字数に余裕があれは本部から連絡用インカムなど借りて
取り残されたウィンクルムと連絡を取ってみてもいいかもしれない。
オレ達は車両に入ったら取り残された人の名前と共に「助けに来たぞ」と叫ぶつもり。
メダ・サテナはオレ達の言葉は判らなそうだから
助けに来たと知らせても大丈夫と思う。
-
2016/09/13-20:56
>シャイニングスピア
はい、それで大丈夫です。
回避上げたのでなんとかなると思います。
>調律剣
ありがとうございます。 -
2016/09/13-20:18
瑪瑙さん達、超久しぶりじゃーん!
参加してもらえて心強いぜ。
人数的に少し厳しいかもだけど、皆で力を合わせてガンバろう。
メダ・サテナを倒すには胴体部分に高ダメージを叩きんだ方がよさそうだ。
オレの攻撃力を+5するより、
高攻撃力なゼノアスさんの攻撃回数を1回増やしたほうが、敵が沈みそうだな。
という事でオレの武器を調律剣に変更する。
ゼノアスさんがメダ・サテナに近づいた所で、チューニングシンフォニアを使う予定。
攻撃回数が1回増えれば普通に殴っても結構ダメージ入るだろ。
李月さんが救助対象者へ付くならば、
シャイニングスピアは接敵・攻撃参加率が高そうな珊瑚さんへ使うように変更するぜ。 -
2016/09/13-20:05
何度も連投ですいません。
取り残された方は運転席にいるというのを今頃把握しました(汗)
ならば下手に移動せずそのままそこにいてもらい
運転席への侵入を防ぐ形でついている方がいいのかと思ったり。
この辺現在考えています。 -
2016/09/13-11:25
人が!ありがとうございます。
瑪瑙さん、どうぞよろしくお願いします。
アドでは初めまして。
人が増えてくれましたので僕は救助対象の彼に付いているのが
良いかと考えています。
ベルトコンベア使ってサテナが移動する可能性も
セイリューさんが言ってましたし。
触手が迫ってくる方向を皆さんへ注意喚起等しようかと。 -
2016/09/13-08:19
セイリューさんとは猫の件、
李月さんとは梅雨明けの日以来になりますね、お久しぶりです。
お二人の行動は、一通り把握していますが……。
自分に関しては、先にメダ・サテナと遭遇するか、
救出するウィンクルムを見つけるかによります。
今のところ、メダ・サテナに当たる予定でいます。
ギリギリの参加に加え、取り急ぎになりましたが、失礼しました。 -
2016/09/13-00:41
少し予定追加します。
万一避難できる安全圏が無かった場合、
僕は救護対象の守りに付こうと思います。 -
2016/09/12-15:50
すいません、表現が誤解を受けそうなので訂正を
>ペア毎に二手に分かれて
1組と1組が別々の方向からという意味です。
言い方難しい。 -
2016/09/12-12:07
流れありがとうございます。
この人数なら
取り残されたウィンクルムの彼には隠れて貰うで賛成です。
サンライズの回復があれば動けないという事も無いでしょうし。
僕等の予定は
現場着即トランス
ラキアさんのサンライズ後、救助の彼に接触して
重傷であった場合は状態を見て(医学2)避難を手伝いその後戦闘に加わる。
触手圏外20m以上、サンライズ圏内30mの位置に居て貰う感じですかね。
場所的にそんなに広さがあるのか不明ですが(汗)
動ける様なら自力避難してもらいそのまま戦闘に加わります。
戦闘は、ペア毎に二手に分かれて胴体目指す感じでいいでしょうか。
胴体に近付けたらタイガークロー2入れます。
運が良ければ追加攻撃とハイクリティカルが入るかもしれません。
>消化液漏れ出し
相棒にそんな感じになる様に攻撃してもらいます。
>根の振動で感知
成程、そうだとすると物を投げて注意を逸らす事もできるのだろうか。
ネジでも落ちていれば試してみようかと。
と、こんな感じで考えています。
救助の彼への対応が被っている様でしたら
こちらが削っても大丈夫です。
その場合触手が行かない様触手対応しています。 -
2016/09/11-23:05
人数が増えるか微妙なので
今の面子でも何とかなりそうな方法を考えよう。
オレの主武器は呪符だ。でも調律剣とちょっと迷い中。
スキルはディスペンサ。
ラキアはシャイニングアローⅡでカウンター攻撃かな。
サンライズと他の人にSスピアを使うからラキアにも使うとMPが多分足りない。
高コストでスピア使っても敵が殴ってくれないとカウンター出来ないしさ。
カウンター攻撃に武器攻撃力が乗ってくれることを祈ろう。
負傷時はサンクチュアリⅠかシャインスパークで対処の予定。
敵がどうやってオレ達の動きが判るのか、を考えてみたんだけれど
植物系なので地面の振動を根で感知かなと思う。
これだとベルトコンベアに乗って動けば
敵はオレ達を見失ってくれないかと淡い期待をもつのだけど、どうだろう。
ベルトコンベアを巧く利用しつつ敵に接近、
触手を避けつつ本体にダメージを入れる方向で、と考えている。
取り残されたウィンクルムは神人か精霊かのどちらか1人なので
手伝ってもらう訳にもいかないよな。トランス切れてるだろうし。
彼を護るためチャーチを使うとラキアが攻撃参加できなくなるので、
HPを回復されたら触手の届かない距離で隠れてもらうのがよさげ?
早めに敵胴体へダメージ入れたら消化液漏れ出してくれないかなとか。
この辺考えるとオレの武器は調律剣の方がいいんだよな。
武器は何にするかもう少し考えるが、大まかな流れはこんな感じ? -
2016/09/11-00:45
セイリューさんよろしくお願いします。
>サンライズ
効果範囲的にも物凄く頼もしいスキルですね。
よろしくお願いします。
>ベルトコンベア
うまく利用したい所です。
宙に浮く歯車も足場に利用とか。
僕等は触手対応に二人共剣を装備予定です。
鈍器は衝撃で部品破壊しそうなので。
スキルはタイガークロー2とブラッティローズ。
高火力が部品壊す意味で仇になる様なので
触手はカウンターで対処よりも切断を優先の考えです。
シャイニングスピア掛けて貰えたら有難いですが
人、来てほしいですね。 -
2016/09/10-22:25
セイリュー・グラシアとLBのラキアだ。
このままだと人数的に厳しいけれど
きっと他に誰か来てくれると思っている。
来なかったとしてもガンバローぜ。李月さん。
今回は負傷したウィンクルムの救出がメインになるので
ラキアは現場に着いたら、まず回復スキルのサンライズを使うつもり。
まだワールドガイドに乗っていないけど、こんなスキルだ。
『効果時間4R。MP56
直径50cmほどの擬似的な太陽を頭上に作り出す技。
生命力にあふれた光が降り注ぎ、周囲30mを昼間のように明るく照らすことが出来る。
また、この光を浴びている者のHPを1R12点ずつ回復する。
使用中に術者移動可』
これなら、ドコかに隠れている負傷者を回復させられそうじゃん?
回復の光を浴びるように叫ぶつもりだし。
後は人数このままなら李月さんへもシャイニングスピアを使用予定。
心配なのはこっちの人数が少ない分
メダ・サテナからの攻撃回数が激しくなりそうだってトコ。
頭数で割っても1人につき同時に触手5本が来てもおかしくない訳じゃん?
それとメダ・サテナは元々移動しないタイプの敵だけど
ベルトコンベアで動いてくる可能性があるのと、
オレ達も動き方を気をつけないとコンベアでうまく近づけないかも。
(でも逆に触手から素早く逃れる手段に使えるか?)
敵の回復剤になりそうな生物が少ないのはラッキーだけど
オレ達が奴の回復剤にされるリスクは高くなっちまってる。
今回は調律剣を持っていかないので攻撃回数追加はない。ゴメンよ。
呪符だから敵の触手を爆ぜさせ、切断できるといいな。
いま考えているのはこのくらい。 -
2016/09/10-12:24
李月とシンサモのゼノアスです。
どうぞよろしくお願いします。
メダ・サテナは前に出現しているオーガですね。
報告書は確認しています。
今回、環境がちょっと曲者の様ですから注意したい所です。
人が増えてくれるといいですね。
ひとまずこの辺で。 -
2016/09/10-01:36