【祭祀】この声にのせて(草壁楓 マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

●想いよ届け

 大輪の園……多くの花々が咲き乱れ、そこにはカップルや家族連れが多く散策をしている。
 屋台から少し離れた場所にあり、花火を見るには絶好の場所だった。
 まだ花火が打ち上がるまでには時間がある18時……その園の一角にはステージが設けられている。
 ステージはこじんまりとしており、派手さはないものの、花々と溶け込むような雰囲気がある。
 その上にはバンドマンが待機をしており、たまにギターの音や、ドラムやピアノの音が聞えてくる。

 多くのカップルや家族、そして友人同士でその一角は賑わっていた。
 これから即興でパートナー或いは、家族、友人に今の心にある気持ちを歌へと変換し届けることが出来るイベント。
 少しの照れを見せる者、何だか力んでいる者、戸惑いを隠せない者。
 その様子は人それぞれだ。

 その人々の中にはもちろん『紅月ノ神社・納涼花火大会!』を楽しもうとしているウィンクルムの姿も見受けられる。
 今心にある胸の内を吐露しようと作詞に勤しんでいるようだ。
 碑文の影響により、普段より感じていることが吐露しやすいようでそのウィンクルムの作詞はなかなかに情熱的なようだ。
 作曲は自分達でも行なえるようだが、このウィンクルムはイベント主催者側に頼んだようだ。
 リクエストはしっとりと歌えるようにとバラード。

 ウィンクルムの告白はパートナーに心から伝えられることを願う。

解説

【できること】
 ・作詞(+作曲等)を行いパートナーもしくはお互いの気持ちを伝えることができます。

【作詞・作曲等について】
 ・告白、願い、困っていること、尋ねたいこと、なんでも構いません。(全年齢対象ですので過激なものは描写できかねますのでご了承くださいませ)
 ・作曲については自分で即興で作ることも可能ですが、主催者側に依頼することもできます。
 ・作曲依頼をする場合は曲調のリクエストをお願いします。
 ・1人で歌うことも出来ますが2人で歌うことも可能です。掛け合いのように歌うのもありです。
 ・即興ですので衣装等はございません。
 ・演奏は生バンドとなります。

【プランにお書きいただくもの】
 ・作詞の内容(雰囲気やフレーズ、大事なフレーズを書いていただけますとこちらで作詞も可能です)
 ・曲の自作か依頼、曲調
 ・どのように歌うか。
 ・歌を聞いての感想(歌い合っての感想)、その後の行動

【注意】
 ・極端に作詞が少ない場合などはアドリブにて草壁が作詞する場合があります。
 ・曲調指定がない場合は作詞の雰囲気を考え独断で決めてしまいますのでご了承くださいませ。
 ・アドリブが入る場合がございますのでご了承くださいませ。
 ・過激な発言や行動があった場合描写できかねますのでご注意ください。
 ・参加費として300ジェールいただきます。

ゲームマスターより

 草壁 楓です。
ご訪問ありがとうございます。

 最近カラオケに行った際、喉を嗄らしてきました……耐久カラオケは厳しい年頃です(汗
皆さんの心にある想いを心を込めて歌ってみませんか?
音痴だとかそんなこたぁどうでも良いのです!心がこもっていればその心は通じ合います!

 それでは皆さんのご参加お待ちしております。
宜しくお願いいたします。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

かのん(天藍)

  長く時間を取らないから、少しだけ待ってて欲しいと言われ
えっと、天藍が参加するんですか?
はい、じゃぁここで待っていますね

天藍がステージに上がるのを待つ間
…まるで自分の事のようにどきどきします
天藍が歌うのを聞くのは初めてです
あまり人前でこういう事するのを見たことがなかったので、出番が終わるまで待っていて言われた時は驚きましたけれど…
どんな風に歌うのか楽しみです

…びっくりしました
他の方の視線受けて居たたまれなかったです…
あの、でも、恥ずかしいのもありましたけれど、やっぱり嬉しかったです

9日は天藍のお誕生日ですから今度は私が天藍のために歌いますね
…恥ずかしいので、天藍だけが聞ける場所でで良いでしょう?


アラノア(ガルヴァン・ヴァールンガルド)
  マイマイク、持ってますっ(シャキーン


マイクスタンド・ホライゾンのアップビート+バンドお任せ


いつも守ってくれてありがとう
いつも優しくしてくれてありがとう
私のパートナーでいてくれてありがとう

それでもふつりと湧く不安
私はあなたに相応しい人?
それとも内心邪魔な人?
あなたにはもっと相応しい人がいるのかな
私はこのままでいいのかな

不安を抱えて生きていく
それでも言いたい

私は…あなたの事が知りたいの


歌うというよりリズムに乗せて言葉を飛ばすような感じに


終了後
…今すぐ穴掘って埋まりたい(羞恥が追い付いた
黒歴史確定っぽい予感に頭抱える
心情的には地面を転げ回りたい位

何で参加したんだろう私…

ガルヴァンさん…
ありがとう…


●最も大事な日の歌を君に

 夕暮れ時の大輪の園。
 時折少し強い風が吹けば数枚の花弁が夕闇に消えていく。
 かのんと精霊の天藍はそんな中を花を観賞しつつ散歩をしている。
 その園の一角に少し大きめのステージと人だかりを見つける。
 何をやっているのかと2人はそのステージへと近付く。
 人それぞれギターをかき鳴らしたり、紙になにやら考えながら文字をしたためている。
「何をしているのでしょうか……」
 かのんは作業をしている人々を見ながら天藍と共にステージ近くまで進んでいく。
 するとステージ上に1人の男性が現れギターを弾きながら歌を披露し始める。
 どうやら愛する妻へのラブソングのようだ。
 その愛が込められた歌を聴き、かのんは暖かな微笑みを浮かべる。
「とても仲の良いご夫婦なんですね……」
 天藍は頷きながら、このステージで行なわれている趣旨を理解する。
「長く時間を取らないから」
 横にほんの少し視線をずらしながら天藍はかのんにのみ聞こえるように言う。
 そんな天藍にかのんも少し首を傾げつつ「なんでしょう?」というような表情を浮かべて天藍を見る。
「少しだけ待っていてくれないか?」
 照れくさいのか天藍は今度は少し視線を泳がせながらかのんに問う。
「えっと、天藍が参加するんですか?」
 1回コクンと頷く天藍。
「はい、じゃぁここで待っていますね」
 天藍の言葉に少し驚きながらも彼女らしい優しい微笑みを向けながらそう答える。
 少し足早に天藍はステージの裏へと消えていく。
 かのんはその後姿を見送りつつ近くにあったベンチに腰掛けた。
 周りには家族連れがおり、子供達の可愛い声が辺りを暖かく包み込む。
 そのかのんの胸はドキドキと鼓動を打っている。
 天藍はいつステージへと上がるのか、そう考えると自分の事のように心臓が早鐘を鳴らすのだ。
(天藍が歌うのを聞くのは初めてです)
 かのんと天藍はウィンクルムとして長い年月を共に過ごしてきた。
 そんな2人だが、天藍の歌声を聞くのは初めての事である。
 去り際に、
「出番が終わるまで待っていてくれ」
 と天藍が言っていた。
 その当初は彼が歌うとはととても驚いたのだが、今は天藍がどのように歌うのかが楽しみである。
 この胸の鼓動とともにかのんは彼の登場を待つ。

 その頃ステージ裏では作詞の作業を進めている天藍。
 少しの不安を胸に作詞を進めている。
(かのんはあまり目立つことが好きではないから、こういう事はあまり好きじゃないかもしれない)
 しかし天藍はかのんにどうしても伝えたかったのだ。
 1年に一度の大事な日。
 それはかのんの誕生日。
 彼女がこの世に産まれ、そして出会い、共に歩むことができていることにお祝いと感謝を歌に込めたいのだ。
(ただ1年の中の特別な1日だから、今日だけはと思うのは俺の我が儘だろうか)
 しかし、この胸の内にある想いをどうしても伝えたいのだ。
 我が儘かもしれない……でもどうしても、彼女ならいつも彼に向けてくれるあの微笑みをまた向けてくれるに違いない。
「……歌詞の中に名前は入れない方が良いか」
 かのんの性格を知っている天藍は彼女を想い名前の記載はやめる。
 そこから天藍はこの胸にある想いを詞に込めることに集中した。
 それから数分、どうやら想いを認めることができたようだ。
 このイベントのスタッフに作曲を頼む。
 あとは自分の順番が回ってくるのを待つだけである。

 かのんはずっとステージを見つめている。
 次々と恋人への愛、家族への愛などを歌っていく人々を見ながら少し心が暖かくなるのを感じつつ天藍の出番を待つ。
 少しステージが暗くなるとそこに天藍がスポットライトを浴びながら現れた。
 緊張しているのか、いつもより天藍の表情は固い。
「天藍……」
 そのいつもとは違う表情にかのんは心配そうに見つめながら、一番前の最前列へと席を移動する。
 ここならば天藍の表情の一つ一つが見て取れる。
 アコースティックギターがポロンと鳴ると天藍はマイクを口元へと持っていく。
 瞳を閉じると空気を一息吸い込む。
「俺にとって大切な人の誕生日なので……お祝いの歌を……」
 そう天藍がマイクごしに告げると穏やかなバラード調の曲が流れ出す。
 そしてその琥珀のような茶色の瞳にかのんを写すと、また静かに瞳を閉じる。
 天藍は想いが伝わるように優しい声音でそっと歌いだした。

 ”貴方と出会えたことの喜びを

  俺の全てで表したい
 
  貴方がこの世に生まれてきた特別な日に

  傍で祝える事が嬉しいと思う

  君のその笑顔が向けられれば

  俺の心が満たされて

  君を抱き締めたい衝動が抑えられない

  この想いは止まらない

  そんな君の傍で

  来年も次の年もその先も、誰よりも近い場所で

  大切な貴方の誕生日を祝えたら

  Happy Birthday to you”

 その歌声は愛しいかのんを想った伸びやかで、心地良い歌声。
 誰が聞いてもその声は彼女に捧げられるものだと分かる。
 かのんの瞳には天藍しか映らない。
 2人の心がシンクロしたように通い合っている。
 一通り歌い終わるとそっと天藍は瞳を開けかのんを見つめる。
 かのんは聞き入っていたのか少し目を見開きながら天藍を瞬きせずに見つめている。
 2人の瞳が合うと天藍は優しい微笑みを浮かべる。
 かのんはその表情にハッとすると彼女も彼に優しい微笑みを浮べ
 ”ありがとう”
 と口の動きで表す。
 そんなかのんを見た天藍は即座にステージから飛び降りる。
 かのんは立ち上がると駆け寄ってくる天藍に微笑みを向ける。
「……びっくりしました」
 天藍がかのんの下に辿り着くと、頬を更に緩めてそう言う。
「他の方の視線受けて居たたまれなかったです……」
 そう、天藍が歌っている間、その視線はずっとかのんに向けられていた。
 その視線はもちろん他に聞いていた人々は気付き、とても微笑ましく2人を交互に見ていたのだ。
 かのんは少し恥ずかしながらも、その天藍の想いが込められた歌に内心目が離せないのも事実であった。
「あの、でも、恥ずかしいのもありましたけれど、やっぱり嬉しかったです」
 少しはにかんだかのんの顔に天藍は更に愛しさが込み上げてくる。
「9日は天藍のお誕生日ですから今度は私が天藍のために歌いますね」
 頬を赤く染め、口元に両手を添えつつ視線のみ天藍に向ける。
「それは嬉しい」
 天藍の誕生日、かのんはもちろんそこに今回の彼のように心を込めて作詞するに違いない。
「……恥ずかしいので、天藍だけが聞ける場所でで良いでしょう?」
「独り占めできるな」
 そんな2人を周りで聞いていた人々が温かく見守っていたのは間違いないのだ。
 2人の周りには見えない温かいオーラと時折吹く風の中の花びらが2人を包む。
 
 天藍の誕生日……その日もまた2人の間には温かく、穏やかなオーラと風が舞っている事だろう。
 未来永劫、これからも2人は共に幾度もその最も大事な日を過ごすことだろう。


●あなたを知りたくて

 大輪の園。
 花火が打ち上がるまでにはまだ時間がある夕暮れ時。
 微かな夕日がまだ空を照らしている。
 その夕日が白い花に反射するように輝く様をアラノアはそっと見つめていた。
 アラノアはふと顔を上げると目に何かのステージが止まる。
 彼女の精霊であるガルヴァン・ヴァールンガルドはふと足を止めた彼女に視線を送る。
「気になるのか?」
 彼女のステージを見つめる様子にガルヴァンはそう告げる。
 アラノアは一つ頷くと、彼に視線を合わせて歩き出す。
 そのステージへと近付けば多くの人々が作詞を手掛けていた。
 主催をしているスタッフに声を掛けられた2人は今行なわれているイベントについて説明される。
 大事な者を思いながら作詞をし歌を歌う。
 簡単に言えば、とスタッフは笑っている。
 スタッフは忙しいのか、よかったら参加してみてください、と2人に言い残しその場を去っていった。
「マイマイク、持ってますっ」
 アラノアはそう言うと鞄の中からマイマイクを取りだす。
 彼女には今考えがあるのかガルヴァンにそう告げるとスタッフが消えていった方向へと彼女は歩き出す。
 そんな彼女を見送りながらガルヴァンは驚きを隠せずにいた。
「……珍しい」
 言いながらステージが見える席へと歩みだす。
「普段は進んで目立ちたがるような性質ではないはずだが……」
 そういつもの彼女であればこのようなイベントに即座に参加するような行動は起こさない。
 歩きながらガルヴァンは不可思議だと唸りつつもアラノアが消えた方向にまた視線を送る。
「祭りの影響か?」
 この賑やかな、いつもとは違う雰囲気に当てられたのかと、違う思考も浮ぶ。
 あの物静かな彼女からあのように率先して足早に消えていくこと自体ガルヴァンにとって想像も付かなかったのだから。
「それとあのマイクを試したいという好奇心か」
 そういえば、と突如彼女が出してきたマイマイクの存在。
 あれを試す良い機会を得たからこそ、とそんな考えも……。
 いろいろと試行錯誤してみるものの、結局答えは彼には今は見つけることは出来ずにいたのだ。
 そうこうしているうちにステージが良く見えるベンチまで辿り着く。
 あとはアラノアが出てくるのを待つばかり。
 周りを見渡せば恋人同士や、同じウィンクルムの姿も見て取れる。
「あとは待つばかりだ」
 そっとガルヴァンはアラノアの登場をそのまま待っている。

 そんな頃、アラノアは今の自分の気持ちを表すために作詞を手掛けている。
 作曲はどうするかと尋ねられれば、だいたいの曲調を伝える。
 あとはバンドに任せます、とスタッフに言えばまた作詞に勤しむのだ。
 彼に伝えたい、今であればこの心に抱いている気持ちを渡せるかもしれないと。
 その他のことは特に考えていない。
 彼女はとても夢中だった。
 作詞が終ったのか、それをスタッフに伝えるといくつかの用意を頼む。
 もちろんマイマイクを持参して。
 ステージ袖には数人順番待ちをしている人々がいる。
 アラノアは緊張はしているが、今はこの作詞した自分の想いを伝えることしか念頭にないようだ。
 1人、また1人とステージへと上がっていく。
 この先ではガルヴァンが待っているだろうと、瞳を閉じて彼の姿を思い浮かべる。
 あと1人……。
 彼女はマイマイクを握り締めながらその最後の1人の背中を見送った。

 ガルヴァンは次々とステージに出てくる人々を見てはいたが、彼の待ち人はなかなか出てこないと頬杖を付いていた。
「まだか……」
 彼がそう呟いた時だった。
 アラノア……待ち人現る。
 ステージの真ん中にはマイクスタンドが置かれており、そこにマイマイクを差し込む。
 あの普段は物静かな彼女と、今の彼女はいつもとは違うようにガルヴァンには映っていた。
 ガルヴァンはそんな彼女から目を離さないようにと凝視する。
 アラノア自身もそんな彼に視線を送る。
 マイクスタンドに右手を置くと同時にエレキギターが鳴り始める。
 ホライゾンのアップビートな曲調が流れるとアラノアは作詞した詞を思い浮べながら息を吸いながら声を発する。

 ”いつも守ってくれてありがとう

  いつも優しくしてくれてありがとう

  私のパートナーでいてくれてありがとう”

 ガルヴァンの耳に彼女の歌声が木霊する。
(決して上手いとは言えない歌だ……しかし)
 その彼女の歌声は万人が上手いとは言いがたいもの……しかしガルヴァンの心に少しずつその詞の一つ一つが刻まれていく。

 ”それでもふつりと湧く不安

  私はあなたに相応しい人?

  それとも内心邪魔な人?

  あなたにはもっと相応しい人がいるのかな

  私はこのままでいいのかな”

 徐々にその歌は歌うというよりリズムに乗せて言葉を飛ばすようなものになっていく。
 それはこの歌に込められた彼女の想いからなのだろう。
 ガルヴァンはそんな彼女の歌をそっと聞いているようにみえるが、少しずつそれは彼の心に更に深く刻まれる。
 不安からくる問いかけへと変わっていく歌詞や懸命に歌う声に心の奥が震えているのだ。
 彼女が近く、それでも遠いこの距離が今の彼には歯痒ささえ感じる。

 ”不安を抱えて生きていく

  それでも言いたい”

 彼女の発している言葉に今すぐにでも叫び答えたい、答えてやりたいと衝動に駆られているが今その言葉が頭に浮ばない。
 どう答えれば……彼女に今の自分自身の気持ちが届くだろうか。
 するとアラノアは左手をガルヴァンのいる方向へと伸ばす。

 ”私は……あなたの事が知りたいの”

 その手が伸ばされた時、ガルヴァンは自分の手を彼女に届くように伸ばす。
 しかしそれは届かない。
 その届かなかった手に軽く握ると悔しさが込み上げる。
 それで終ったのか一瞬アラノアはガルヴァンに視線を送るとステージ袖へと消えていった。
 届かなかった手を戻すとガルヴァンは悔しさの残ったその表情のままアラノアが消えた袖を見つめていた。

 
 ガルヴァンが座っていたベンチへとそっとアラノアは少しずつ近付いていく。
(……今すぐ穴掘って埋まりたい)
 全てが終ったアラノアはそんな気持ちを持ちつつガルヴァンの下に辿り着く。
 先ほどまでは自分の気持ちを伝えたいという想いが強く、羞恥心などは持ち合わせていなかった。
 全てが終わったここにきてその羞恥心が出てきたようだ。
 今回のことが黒歴史になるのではとの予感に頭を抱えているのが今の彼女の心情である。
 もうその場でゴロゴロと転がり回りたいぐらいに。
 そんな彼女の心情がわかるのかガルヴァンはアラノアのコロコロと変わる表情を見て口角を少し上げる。
「何で参加したんだろう私……」
 そっとその呟きが聞こえたガルヴァンは、実はそうツッコミたかったのだが、本人が自覚しているのも今の言葉で理解したのでゴックンと飲み込む。
「……場に流されただけだろう、恐らくは」
 ガルヴァンの口から出てきたのはそんな言葉である。
「……アラノア」
 すっとガルヴァンは瞳を一瞬閉じると先ほどの空気を一変させるように彼女の名前を呼ぶ。
 少し伏し目がちに瞳を横にずらすとアラノアにしか聞こえない声で話し出す。
「歌自体は上手いとは言えないが……心に響いた」
 そっと自分の胸に手を当てるとアラノアの朱殷の色の瞳を捕らえるように見つめる。
「お前はそのままでいい」
 そのガルヴァンの瞳は力強いものだ。
 アラノアが少し頬を赤らめる。
「そのままが……いい」
 それはガルヴァンの素直な気持ち。
 先ほど不安を吐露するように、その心の内を自分に向けて歌ってくれたアラノアへの返事だ。
 不安など持たなくていい、そのままのアラノアだからこそ今向き合い、隣にいる。
「ガルヴァンさん……」
 口角を上げてアラノアを見つめるガルヴァンの瞳には揺らぎがない。
「……俺も、お前の事が知りたい」
 歌の最後に伸ばしていた左手にそっと自分の右手を微かに重ねる。
 先ほどは届かなかった手は今は届く距離にある。
 少しの戸惑いを見せるアラノアだが、ほんの少しガルヴァンの手へと自分の手を近付かせる。
「ありがとう……」
 アラノアはそっと彼に優しい微笑みを向けたのだった。

 これから2人はその心を通わせる日がいつの日かくるだろう。
 届かなかった手をさらに伸ばし、お互いの体温を感じるほどにしっかりと繋ぎながら。
 それは近い未来なのか、遠い未来なのかは2人次第である。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 草壁楓
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 2 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 09月02日
出発日 09月08日 00:00
予定納品日 09月18日

参加者

会議室

  • [3]アラノア

    2016/09/07-18:11 

    アラノアとガルヴァンさんです。
    よろしくお願いします。

    マイクが私を呼んでいる気がした…
    というのは冗談で、私自身歌に自信ないのに何故か飛び込んでしまいました。(大体背後とトレジャーで出たマイクのせい)
    何とかなる事を祈ります…

  • [2]かのん

    2016/09/07-00:19 

  • [1]かのん

    2016/09/07-00:19 

    神人かのんとパートナーの天藍だ
    あんまり人前で歌ったりってのは得意じゃないんだが……
    少し思う所があって飛び込んだ
    歌唱の上手い下手については何とも言えないんで、適当に聞き流して貰えれば幸いかな


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