【祭祀】君色の花(森静流 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●君色の花

 今日、あなたは、紅月ノ神社のお祭りに来ています。
 屋台がたくさん出る事を知っていたため、午後には神社について、様々な屋台を見て回りました。
 それから二人は大輪の園に移動します。
 大輪の園は美しい夏の花々が色とりどりに咲き乱れる空間です。
 気持ちのいい風を受けながら揺れる花々。その花壇の間にも、屋台が点々と出ていました。
 あなたは、精霊を誘って、また屋台を見て回りました。
 すると、大輪の園の外れにぽつんと小さな屋台が出ているのを見つけました。おばあさんが一人で切り盛りしているようです。品物はよく見えませんが、なんだかキラキラと日射しを反射しているのが見えます。
「行ってみようよ」
 あなたは精霊を誘ってその屋台の前に行きました。
 屋台には紫色の布の上に、ガラスで作られた睡蓮の花がたくさん並べられていました。
 大小様々ありますが、大きくても掌ぐらいのサイズです。
「おばあさん、これはなんですか?」
 あなたは素直にそれを聞いてみました。
「これは君色花だよ」
 おばあさんは睡蓮のガラスを一つ取り上げて言いました。歳取ってベールを被ったおばあさんはまるで魔女のような雰囲気です。
「君色花?」
 聞き慣れない名前に精霊が不思議そうな顔をします。
「これはね、ガラスだけれど花で、花だけれどガラスなんだ。この花を咲かせるには人間の心のエネルギーが必要だ。人間の心のエネルギーを受けると、この透明な花の色は次第に変化していく。あるいは赤に、あるいは青に、あるいは白に、あるいは黒に……」
「黒一色に?」
 あなたは驚いてそう訊ねます。
「一色とは限らない。一色に染める人間もいるが、虹のように何色もの色合いの花を咲かせる人間も多くいる。その人間の持つ心の色次第で、花の色も変わるんだよ」
「へえ……」
 精霊は興味深そうに小さな睡蓮を一つつまみあげます。
「私の住んでいる地方ではね、この君色花を育てて、相方と交換すると、心を受け入れ合う儀式になって、永遠に結ばれるという言い伝えがあるのさ」
「……素敵ですね」
 それは確かに、お互いの心の色を全て認めて受け入れ合ったという意味にもなるかもしれない。
「君色花は普通は育てるのには一週間から一ヶ月かかるんだが、今は碑文の影響もあるから、一時間ぐらい掌の上に乗せていれば綺麗な色に育つだろう……。どうするね?」
 魔女のおばあさんは、あなたたちが君色花を買うかどうかうかがっています。

解説

【解説】
 男性向けにも出した「君色花」をこちらにも書き下ろしました。
 特殊なガラスの花を自分色に育てるエピソードです。
 やり方は一時間程度、自分の掌の中に睡蓮型のガラスを持っている事です。それによりあなたの念が吸収され、あなただけの色合いのガラスの花になります。
 それを相方と交換すると、お互いの心を受け入れ合って永遠に結ばれる、という言い伝えがあるそうです。
※あなたと相方の君色花はどんな色合いに育ったか、それはどんな意味か
※それを交換するかどうか
※育てたり、交換したりする間、どんな会話をしたか
 などなどをプランに書いてください。

※お代として300Jrいただきます。
※君色花は一週間程度で散ってガラスの破片になります。コーディネートアイテムとして入手することは出来ません


ゲームマスターより

自分色の綺麗な花を相方と交換してみませんか?

リザルトノベル

◆アクション・プラン

リチェルカーレ(シリウス)

  とても素敵な言い伝えですね
綺麗な花、と 並んでいる花にそっと触れ

やってみない? 
彼の言葉にきょとんと首を傾げる
…どうして?

僅かに陰った翡翠の目を見て ふわりと笑う
黒も赤も素敵な花が沢山あるのよ
今度一緒に見に行きましょう?
それにね わたしはあなたの花はもっと違う色だと思うの
空の色じゃないかしら?
冬の澄んだ空の色 空の天辺で青く輝くお星さま

ううん 違うわ
星の名前で あなたの名前

「二つくださいな」と 君色花を自分と彼の手のひらに 

花は 淡い桜色から青紫の重ね いつか見た薄花桜のような
自分の花を嬉しそうに見た後 彼の花を見て笑みを深める
ね やっぱり空の色だったでしょう?
交換した彼の花を愛おしそうに胸に抱く
柔らかな笑顔にどきりと


夢路 希望(スノー・ラビット)
  ロマンチックな言い伝え…
気になるけどなかなか言い出す勇気が出せない
お花をじっと見つめていると彼から提案されて、こくこくと頷く

「どんな色に育つでしょうか」
楽しみですが、変な色にならないかと少し不安
視線を感じて顔を上げると笑顔に赤面
「あの、えっと…が、頑張ってみます」
照れるあまり自分でも意味不明な返事をしつつ視線を落とす
(その優しい笑顔が、好き…大好き)
本当はもっと寄り添いたい
触れたいし、触れられたい
そんなことを思っていたら、お花はいつしかピンク色に
…これが、私の…

恥ずかしいけど、勇気を出して、尋ねてみる
「お花…交換して、もらえますか?」
…私…スノーくんと、ずっと一緒にいたい、です…


瀬谷 瑞希(フェルン・ミュラー)
  ・育った君色花を交換する

・君色花の色
濃青色の花びらの中に時々緑色の花びらが紛れ混んでいる。
全体的ないん仕様は青色一色に近い。
冷静さが色彩に現れているのかも、と冷静に分析。
理知的・冷静・分析的の意味でしょうか。

・育つのを待つ間はフェルンさんとお喋りして過ごす。
どんな色がつくのか楽しみです、と。
多分、自分の花には寒色系が現れてくるだろうと考えている。
予想通りだったのでちょっと嬉しい。
でも緑色の意味が判りません。
スマフォで色彩心理のサイトを調べて分析を。
青色はほぼ考えている通り。内向的で保守的な意味もあるのですね。
緑は協調性・穏やかで争い事を好まず穏やかな日常を願う、と。
フェルンさんのも調べますね。


アラノア(ガルヴァン・ヴァールンガルド)
  本当に不思議…このままでも綺麗だね

そうだねぇ
角度を変えて眺め
落しかけ
あっ
ご、ごめん…ありがとう…

反省しつつもドキドキ


君色花
花弁の外側の色が内側の色を包むようなグラデーション
全体的にシミのような斑点

外 水色=半ば諦めている気持ち
内 桜色=恋心
斑点 紫=劣等感、不安


斑点を見
自分の汚い部分が浮き彫りになったような恥ずかしさが

え…?

そ…それってどういう…
こ、交換しちゃったら永遠に結ばれちゃうらしいよ…?

あ…

でも…私なんかがガルヴァンさんと絆を結んでもいいの…?

…どうしてそんなに優しいの?

私が契約者だからって事、なのかな…でも
ありがとう…ガルヴァンさん


濃く強い色彩
確かな存在感にらしいなと思う
綺麗…
大事にするね


鬼灯・千翡露(スマラグド)
  凄い、こんな花見た事ない!
咲いたら散る前にデッサンしなくちゃ

あはは、その前に育てないとね
さて、何色になるかなあ

(先端が緑掛かった白い花)
わ、本当に色が変わった!
綺麗だねー、不思議な色合いだけど、爽やかな感じ
えー清純?
私が?(苦笑)
……って、今日はやけに褒めてくるね?
まあ一言余計だけどね!(微苦笑)

で、そう言うラグ君は……あれ?
橙……いや東雲……違うな
曙色?
てっきりエメラルドグリーンが入るかと……

うん?
ラグ君どうしたの?
なんか独りで納得してるけど……

えっ何が今はなの
ねーラグ君、ねーってばー……

……

ラグ君、いつになく穏やかな顔してる
そう言えばラグ君、背が伸びた?

ラグ君、少しずつ大人になってるんだな


●アラノア(ガルヴァン・ヴァールンガルド)編

 今日、アラノアと精霊のガルヴァン・ヴァールンガルドは、紅月ノ神社の納涼花火大会に来ています。
 そこの神社の屋台で、二人は君色花という不思議な花を見つけました。
 二人はセットで君色花を購入し、近くのベンチに座って掌の花を眺めました。
「生きているガラスとは……興味深い」
 ガルヴァンは少しずつ成長するガラスの花弁を見つめています。
「本当に不思議……このままでも綺麗だね」
 アラノアもため息をついて君色花を見守ります。
「育つと自分の心の色に染まる……か。気になるな」
 ガルヴァンはそっとアラノアの君色花の方を見ました。
「そうだねぇ」
 アラノアは手の中でくるりと君色花を回し、角度を変えて眺めようとしました。
 ところが、そこで手を滑らせてしまいます。
「あっ」
 慌てるアラノア。君色花を落としかけたのですが、ガルヴァンが咄嗟に手を伸ばしました。
 ガルヴァンがアラノアの君色花を空中でキャッチし、彼女の方へ手渡します。
「……気をつけろ」
「ご、ごめん……ありがとう……」
 謝りながらもアラノアは頬を染めてしまいます。ガルヴァンの仕草に勝手に鼓動が高鳴ってしまうのでした。
 そうして、一時間ぐらい経つと、君色花が成長してすっかり色を変えたのでした。
 ガルヴァンの君色花は上下のグラデーションでした。
 ガラスの睡蓮の花弁の上の方は、桃色で、純粋な恋愛感情を示しているようです。真ん中あたりは、赤。仕事に対する情熱でしょう。この真ん中が大きな割合を盗っています。下の方は黒。アラノアへの独占欲です。
 その黒から赤、桃色への華やかで美しい変化を表している君色花でした。
 アラノアの君色花はパステルカラーでした。
 花弁の外側が水色で、内側の桜色を包み込んでいるような、外側から内側への淡い優しいグラデーションです。そして全体に紫のシミのような反転が浮いていました。
 水色は半ば諦めている気持ち、桜色は恋心、紫の斑点は劣等感や不安です。
 アラノアは斑点を見た時、くっと喉を震わせました。自分の汚い部分が浮き彫りになったような恥ずかしさがあったのです。
 ですが、ガルヴァンは、アラノアの手に咲く君色花を見てぽつりと言いました。
「……欲しい」
 本音が吐露されたのでした。
「……交換、しないか」
 普段は覆い隠しているような気持ちも、今は碑文の影響で出してしまいます。
「え……?」
 アラノアは顔を引きつらせてしまいます。
「そ……それってどういう……? こ、交換しちゃったら永遠に結ばれちゃうらしいよ……?」
「……別に恋人として結ばれるとは言っていなかっただろう」
「あ……」
「俺はお前ともっと強い絆で結ばれたいと思っている」
「でも……私なんかがガルヴァンさんと絆を結んでもいいの……?」
 不安の滲む声でアラノアが訊ねます。
「……前にも言っただろう。俺はお前を拒まないと」
 ガルヴァンは断言するのでした。
 アラノアは息をひそめながらガルヴァンの面をうかがいます。
「……どうしてそんなに優しいの?」
 そのことが、知りたいのでした。
「相手がお前だからだ」
 ガルヴァンは即答しました。本当にそう思っています。アラノア以外にこんなことが言えるとは思いません。
(私が契約者だからって事、なのかな……でも)
 アラノアは俯いて視線を震わせ、それからガルヴァンに向き直りました。
「ありがとう……ガルヴァンさん」
 二人は君色花を交換しました。アラノアはガルヴァンの花の濃く強い色彩の確かな存在感にらしいなと思います。
「綺麗……大事にするね」
 ガルヴァンはアラノアの花の淡く優しい色彩の温もりに顔を綻ばせます。そうして、自分の花の根底にある黒を見ます。
「綺麗……か」
 先程の欲しいという強い衝動を考えてしまうのでした。会話は花を手に入れるための屁理屈です。
(……認めざるを得ないのか。おれもまた、魔性族の典型にはまっているという事を……)
 
●瀬谷 瑞希(フェルン・ミュラー)編

 今日、瀬谷瑞希と精霊のフェルン・ミュラーは、紅月ノ神社の納涼花火大会に来ています。屋台巡りをしていた二人は君色花を見つけて購入することにしました。
 ガラスの睡蓮の花を持って、二人は近くのベンチに座って一時間待つ事にします。
「どんな色に育つのか楽しみです」
 瑞希はフェルンとおしゃべりをしながら、自分の花には寒色系が現れてくるだろうと想像していました。
 今日の瑞希は浴衣を着て頭には手ぬぐいを被っています。足下は下駄。胸元にうちわを差し込み、手には水風船とリンゴ飴、金魚袋。昔ながらの夏祭の華やかで楽しい女性になりきっています。
 まっすぐな黒髪のポニーテールと相まって、瑞希はしっとりとして純和風の愛らしい娘に見えました。
「可愛く育つといいね」
 フェルンも君色花に念を送るのを楽しんでいるようです。
 フェルンの方も浴衣に下駄の姿をしていました。手にはうちわを持っています。また、SAKURAナイトという和風の香水も香らせていて、彼も和風の装いを楽しんでいるようです。
 一時間が経過して、二人の君色花は育ちきりました。
「明るい感じに育ったよ」
 フェルンは自分の君色花を見てそう言いました。早速二人は君色花を交換しました。
 瑞希の君色花は、濃青色の花びらの中に時々緑色の花びらが紛れ込んでいます。全体的な印象は青色一色に近いようです。
(冷静さが色彩に現れているのかも)
 瑞希は自分の性格と花の関係をクールに受け止めています。
「理知的・冷静・分析的の意味でしょうか……」
 そう言って、瑞希はスマフォを取り出して、色彩心理のサイトを検索し、緑色の意味を分析し始めました。
「青色はほぼ考えている通り。内向的で保守的な意味もあるのですね。緑は協調性・穏やかで争い事を好まず穏やかな日常を願う、と」
 フェルンは、瑞希が色彩心理学と絡めて意味を解こうとするのを見て、とても彼女らしいと感心しています。
 フェルンの君色花は、オレンジ色でした。花の中央にピンクの部分が少しだけあります。
 それを見て、フェルンは明るい感じだと思ったのです。
「フェルンさんのも調べてみますね」
 瑞希はスマフォを操作して色彩心理のサイトの中を見て回りました。
 オレンジ色はオレンジ色は明るく社交的な性格、前向きで人生に対し意欲的。人が集まる場所では注目を集める、などの意味合いです。
 中央部のピンクは心の奥底にデリケートで傷つきやすい部分を持っているということ。それを意味するようです。
「そんな意味があるのか……」
 フェルンはさらに感心しました。理路整然としている瑞希の思考を頼りにしているし尊敬もしているのです。瑞希はそんな自分の性質を特に気にとめてはいないようですが、フェルンにとってはその知性とクールさが魅力的なのです。
「思ってもいなかった意味も出てきて、面白いし。お互いを補い合っているみたいだね」
 フェルンは微笑んでそう言いました。
「そうですね。私も、フェルンさんには助けられています。フェルンさんもそう思っていてくれるといいのだけれど」
「もちろんさ!」
 明るく社交的なフェルンと冷静で内向的な瑞希ではちょうどよくバランスの取れるウィンクルムなのでしょう。二人はその後もスマフォの操作をして様々な色の意味を知り、楽しい時間を過ごしたのでした。
 
●リチェルカーレ(シリウス)編

 今日は紅月ノ神社の納涼花火大会です。リチェルカーレルと精霊のシリウスは一緒に境内に訪れました。境内ではたくさんの屋台が出ています。その中の一つに、君色花という不思議なガラスの花が売られていました。
 その日はリチェルカーレは浴衣を重ね着して、足下も下駄にしていました。華やかで美しいうちわも持っています。浴衣は少女めいたリチェルカーレを色香漂う大人に変身させていました。片方の浴衣からは袖を振るたびに星屑が散り、とても幻想的で美しいのです。
 さらにリチェルカーレはアスピラスィオンという若々しい沈丁花の香水をまとい、瑞々しい和風美人になりきっていました。
 一方、シリウスの方も浴衣に袴の姿です。浴衣はあやめの縫い取りですが、模造刀が似合いそうな武士のような印象があります。それに熱気漂う袴を穿き、足下はエンプロイイーシューズという軽くて丈夫な洋物です。全体的に和風なのにサイバーパンクを思わせる出で立ちです。そして青いうちわを持ち、清爽というその名の通り爽やかな香水をまとっています。寡黙で凜々しく雄々しい現代の若武者を思わせます。
「とても素敵な言い伝えですね」
 リチェルカーレは屋台のおばあさんにそう声をかけます。
「綺麗な花……」
 並んでいるガラスの睡蓮の花にそっと触れ、リチェルカーレはシリウスを振り返りました。
「やってみない?」
 シリウスはリチェルカーレの弾む声と笑顔にごく僅かに表情を緩めていました。
 花弁を撫でる指先を見つめていると、リチェルカーレが散歩をねだる子犬のような眼差しで誘ってきます。
 シリウスはわずかに苦笑し、もう一度花を見ました。
「……構わないが、俺のものが鑑賞に堪えうるものと思えない」
 リチェルカーレはきょとんと首を傾げました。
「……どうして?」
「黒とか、赤とか、ろくな色にならない気がする。闇の色、……血の色。そんな花はいらないんじゃないだろうかと」
 微かに陰りを見せた翡翠の目を見て、リチェルカーレルはふわりと笑います。
「黒も赤も素敵な花がたくさんあるのよ。今度一緒に見に行きましょう? それにね、私はあなたの花はもっと違う色だと思うの。空の色じゃないかしら? 冬の澄んだ空の色。空のてっぺんで青く輝くお星様」
 シリウスは重ねられた言葉に一瞬声を失いました。
 リチェルカーレの包み込むような笑顔を見つめて、答えます。
「天狼星(シリウス)は星の名前だ。俺の名じゃない」
「ううん、違うわ。星の名前で--あなたの名前」
 そう告げてから、リチェルカーレは屋台のおばあさんに声をかけました。
「二つくださいな」
 そうして君色花を自分と彼の掌にそっと置きます。
 シリウスはリチェルカーレの確信に満ちた言葉に、目の縁が僅かに赤くなりました。促されるままに、君色花が育っていくのを待ちます。
 二人は、屋台から離れたベンチに座り、一時間、静かに言葉をかわしていました。
 やがて、リチェルカーレの花は淡い桜色から青紫の重ねになります。いつか見た薄花桜のような鮮やかさでした。
 自分の花を嬉しそうに見た後、リチェルカーレはシリウスの花を見て、さらに静かに笑いました。
 シリウスの掌に斉田のは雪の結晶のような透明に近いアイスブルーの花でした。シリウスは密かに戸惑っているようでした。
「ね、やっぱり空の花だったでしょう?」
 そう言って、リチェルカーレは彼と君色花を交換してしまいます。
 シリウスは渡されたリチェルカーレの花を見つめた後、柔らかく微笑みました。
「……春の色だな。お前の色だ」
 リチェルカーレはそんな彼の笑みに、胸が高鳴るのを止められませんでした。
 君色花を交換し、相手の心を全て受け入れた二人は、きっと永遠に結ばれる事でしょう。過去も未来も全て、あなたとともに。

● 夢路 希望(スノー・ラビット)編

 今日は紅月ノ神社の納涼花火大会です。夢路希望と精霊のスノー・ラビットは一緒に境内を訪れました。境内いっぱいに広がる屋台群の中で、二人は君色花という不思議な花を見つけました。
 二人は同じ、処暑という白地に朝顔の柄の浴衣を着ています。その昔、妖精が、ご主人様の暑さを和らげてあげようと仕立てた一枚が原案になっているそうで、夏の暑さを楽しめるように体温を調節出来るデザインなのです。涼しげな二人はお熱く見えるペアルックです。
 そうして、希望の方はカランコロン鳴る檜の下駄でオシャレをし、スノーはその名と同じスイートスノウという優しい甘いパフュームを粋に漂わせていました。
(ロマンチックな言い伝え……)
 希望は気になるのですが、なかなか言い出す勇気が出てきません。
(永遠に結ばれる……)
 スノーも言い伝えに惹かれて花を見つめています。そうして、希望も同じ気持ちでいるようなので、思い切って訊ねてみました。
「試してみない?」
 気恥ずかしさと少々の不安を抱きつつ、スノーは希望の表情をうかがいます。
 君色花をじっと見つめていた希望は思わずこくこくと頷きました。
 スノーは頬を染めながら頷いてくれた希望に安心します。
 二人は君色花を二つ買い、静かな場所のベンチに行ってそこで掌で覆って育てる事にしました。
「どんな色に育つでしょうか」
 希望は結果が楽しみですが、変な色にならないかと少し不安です。
「ノゾミさんなら、きっと綺麗な色に育つだろうね」
 そう言ってスノーは笑顔を見せます。希望はその笑顔に赤面してしまうのです。
「あの、えっと……が、頑張ってみます」
 照れるあまり自分でも意味不明な返事をしつつ、視線を地面の方に落としてしまうのでした。
(その優しい笑顔が、好き……大好き)
 なかなか口に出せない想いで胸がいっぱいになってしまいます。ただ顔を赤くして下を向いて、でも頭の中では好きという言葉が百万遍だって繰り返されているのです。
 希望の頭の中は分からないけれど、スノーはその反応に頬が緩みます。
(可愛いな)
 スノーは希望の事を本当に可愛いと思っています。あんまり可愛くて、自分だけのものにしてしまいたい。
 希望は君色花を掌に包んで緊張しながら考えます。
(本当はもっと寄り添いたい。触れたいし、触れられたい)
 そんな気持ちでいっぱいになっていたら、君色花はいつしかピンク色に変化していました。
(……これが、私の……)
 希望は自分の心の色に驚いています。
 一方、スノーもまた、考えていました。
(その照れた表情も、いつもの優しい笑顔も、温もりも……柔らかな唇も、全部僕のもの……誰にも渡さない)
 気がつくとスノーの君色花は黒く染まっていました。
 それを見て、スノーは罪悪感に暗くなってしまいます。まるで、自分の欲深さが表れているようで。
「お花……交換して、もらえますか?」
 そんなスノーに希望は自分からそう申し出ました。
(……私……スノーくんと、ずっと一緒にいたい、です……)
 スノーにとっても交換は願ってもないことです。それでも、一瞬、躊躇ってしまいます。
「僕も、ノゾミさんとずっと一緒にいたい。……こんな色の心の僕でも、受け入れてくれる……?」
 希望は即座にコクコクと頷いて真っ赤になってしまうのでした。一緒にいたい、永遠に結ばれたいという気持ちは、誰にもかなわないほど持っているのです。二人の一緒にいたいという気持ちは、ぴったり一致しているのです。

●鬼灯・千翡露(スマラグド)編

 今日は紅月ノ神社の納涼花火大会です。鬼灯・千翡露とその精霊のスマラグドは、一緒に神社に訪れました。広い境内いっぱいに屋台が出ています。二人はその屋台の中で、君色花を見つけました。
 千翡露は金魚袋、スマラグドはうちわを持って夏祭の気分を盛り上げています。
「凄い、こんな花見た事ない! 咲いたら散る前にデッサンしなくちゃ!」
 買い取った千翡露はガラスの睡蓮の花を両手に持って興奮気味です。
「……本当に絵描くの好きだね。良いけど、育てない事には透明のままだよ?」
 スマラグドが呆れたように言いました。
「あはは、その前に育てないとね。さて、何色になるかなあ?」
 千翡露は笑っています。二人は近くのベンチに行って座り、掌で君色花を包み込みました。
 一時間後--
「わ、本当に色が変わった!」
 千翡露は驚きました。
 千翡露の君色花は先端が緑がかった白い花です。
 スマラグドの花は曙色になりました。
「ちひろ、何色になった?」
 スマラグドが千翡露の花をのぞき込みます。
「綺麗だねー。、不思議な色合いだけど、爽やかな感じ」
 千翡露は掌の花を胸の高さまで持ってきてじっくり見ています。
「睡蓮には白い花が多いから、清純って花言葉があるらしいけど。ま、何だかんだ清く正しく生きてるんじゃない?」
「えー清純? 私が?」
 千翡露は思わず苦笑いしてしまいます。
「アンタ、何考えてるか分かりづらいけど、根は真っ直ぐだし」
 スマラグドは微笑んで言いました。
「……って、今日はやけに褒めてくるね? まあ一言余計だけどね!」
 千翡露は微かに苦笑しました。
「で、そう言うラグくんは……あれ?」
 千翡露はスマラグドの花の明るい色に、目を凝らして眉根を寄せます。
「橙……いや東雲……違うな。曙色? てっきりエメラルドグリーンが入るかと……」
「……流石美術部員、細かいね」
 スマラグドは呆れて苦笑しています。
「そりゃあ僕にも意外だったけど……。……ああ、そうか」
 彼は納得しました。
「うん? ラグ君どうしたの? なんか独りで納得してるけど……」
「ま、今はこれで良いよ。今はね、今は」
 そう言ってラグはひょいと千翡露の掌から君色花を鳥、代わりに自分の花を乗せてしまいました。
「えっ、何が今はなの。ねーラグ君、ねーってばー……」
 千翡露はせっつきますが、ラグはあえて何も答えませんでした。
(……俺は多分、ちひろの事が好きだ。でも、それは恋愛感情じゃない。今のところは……)
 なんだかうるさくなってしまった千翡露を放っておいて、スマラグドはそんなことを考えています。
(花は散ってしまうけれど、この心の色が変わる日もきっと、そう遠くない)
 それは、恋の予感の色だったのです。
 情熱の赤や恋心のピンクではないけれど、明るく希望に満ちた、始まりの夜明けの色。スマラグドは自分の事ですから、その色を見つめた時に、そのことに気がついたのでした。ですが、それを本人である千翡露に言う事は出来ないでしょう。
 恋が始まってしまってからならともかく、『恋するかもしれない』『きっと恋をするだろう』……そんなあやふやな気持ちでは。
 普通の女の子にならともかく、特に千翡露は、なかなか考えが読めない少女です。それを知ったら、どんな反応が来るのかスマラグドにも分かりません。
 黙っているスマラグドを見ているうちに、千翡露は諦めて静かになりました。それから彼の事を観察し始めます。
(ラグ君、いつになく穏やかな顔してる。そう言えばラグ君、背が伸びた?)
 年下の精霊の成長のあとを見つめながら、千翡露はまた苦笑いをするのでした。
(ラグ君、少しずつ大人になってるんだな)
 千翡露も大人になっていく途中の女の子です。ほんの少し、スマラグドよりも先を歩いているけれど。スマラグドが千翡露の隣に立つ日は、いつか来るのかもしれません。そんな日が来るかどうかは、来てからのお楽しみです。
  



依頼結果:大成功
MVP
名前:リチェルカーレ
呼び名:リチェ
  名前:シリウス
呼び名:シリウス

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 森静流
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ビギナー
シンパシー 使用可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 08月31日
出発日 09月06日 00:00
予定納品日 09月16日

参加者

会議室

  • [5]瀬谷 瑞希

    2016/09/05-23:02 

    こんばんは、瀬谷瑞希です。
    パートナーはファータのフェルンさんです。
    皆さま、よろしくお願いいたします。

    どんな色になるのか、わくわくしますね。
    素敵な時間をすごせますように。

  • [4]鬼灯・千翡露

    2016/09/05-22:13 

  • [3]夢路 希望

    2016/09/05-22:11 

  • [2]アラノア

    2016/09/05-21:47 

    アラノアとガルヴァン・ヴァールンガルドです。
    よろしくお願いします。

    自分の心の色ですか…
    どんな色になるのか不安にもなりますが、神秘的で気になりますね。

  • [1]リチェルカーレ

    2016/09/05-21:16 


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