非公式! サバイバル調理部!(真崎 華凪 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

「非公式サバイバル調理部です!」

 見慣れないウィンクルムが調理場を勝手に借り切って、サバイバル料理の調理を始めると言う。
 作業台には数組分のカレー一式セット。
 ただ、数を数えると少し材料が人数に足りない気がする。

「サバイバルですから、わたし達の材料は用意していません。ですので、材料を分けてください!」

 そもそも、サバイバルでなぜ材料を分けなければならないのかというツッコミをしたくないわけではない。

「わたしたちはみなさんからいただいた材料でカレーになる様に頑張りたいと思います!」
「食器しか借りられなかったら分けてもらいに行くと言う心算です。もうオレら絶対生き残れないフラグです」

 精霊が半ば自棄を起こしそうな雰囲気だ。

「平たく言えば、わたしたちのサバイバル訓練に付き合ってください! です!」

 そのあたりにあるもので作れなければ意味を成さない気がする。
 が、この見慣れない神人がやたら張り切っていることだけは確かだ。

「ではみなさん、頑張って美味しいカレーを作りましょうね! ちなみにわたしたちは料理できません!」

 もはや嫌な予感しかしない。

「あ、一応、シチューの素、なるものもあります。米をこれで食えるかは分かんないですけど」

解説

思考の残念なNPCウィンクルムに材料を少しだけ分けてあげた上で、カレー(シチュー)を作ってください。

材料は以下のうちのいずれかを神人さん、精霊さん各1つずつ選んでください。
(番号指定でOKです)

1.ニンジン
2.玉ねぎ
3.ジャガイモ
4.肉
5.カレーの素(シチューの素)
6.水
7.米(ごはん)
8.皿
9.スプーン
10.ナイフ(材料を切るためのものなら、それ以外でも)

被りなく揃うと、美味しいカレーがNPCも作れるはずです。たぶん。
番号だけ書いておいていただければ、NPCがそっと拝借していきますので、
特に会話をする必要も、絡む必要もありません。
(絡んでいただいても大丈夫ですがスルーでOKです)


皆様には普通にパートナーさんとカレーを作っていただければいいかなと思います。
ささっと作ってお出かけして頂いてもいいですし、
料理は初めてかもしれませんので、四苦八苦しつつ作って頂いても大丈夫です。
くれぐれも怪我には気を付けてくださいね。

場所は、イメージとしては調理実習室です。
A.R.O.A.本部近辺ですので、外は普通にタブロス市です。

コンビニにありそうなものなら材料を持ち込んで、足して頂いても大丈夫です。
出来上がったものを食べる、食べないはご自由で結構です。
が、食べないからと言って大福餅を大量投入とかはちょっと、色々とアレなので。

また、カレーではなくシチューを作って頂いても大丈夫です。
シチューの素なるものがありますのでご自由に変更してください。

描写は個別を想定していますが、皆さんで作って頂いても大丈夫です。
エプロンは持参していただいて構いません。
お貸しすることもできますが、選ぶことはできません。
クマさんエプロンとか、カエルさんエプロンとかでも泣かない方に限ります。


※手伝うはずなのに、なぜか材料費300Jrを徴収されました。

ゲームマスターより

何回打ち込んでも「しつーのもと」と打ち込んでしまいます。
そのうち「しーつのもと」になりそうで怖いです。寝具だって作れるサバイバル調理部です。

参考までに、以前ご協力を頂いた、「かわいいぬいぐるみ」のような感じです。
多分ですが、渡す材料は相談なしのほうが、NPCはカオスな状況になって楽しいかもしれません。
最後にちょっとだけ、彼らの結果描写が入りますのでご了承くださいませ。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

リヴィエラ(ロジェ)

 

※殺人級に料理が下手

リヴィエラ:

ロジェには『お前は台所に立つな』と言われていますが、
私だってウィンクルムです! か、カレーだって作ります!

まずはこの人参を切って…痛っ!(指先を包丁で切る)
そ、そんな、ロジェっ! そんな所…汚いですよ…(涙目で顔真っ赤にされるがまま)
あ、あの…ありがとうございます、ロジェ…

(ロジェが作ったカレーを食べ)
まぁっ! とっても美味しいです!
ふふ、実はこの夏の暑さで、少々疲れやすかったのですが
暑いからこそ辛い物が美味しく食べられるのですね。

それと…ロジェ、そのエプロン、とてもお似合いだと思います!


メイリ・ヴィヴィアーニ(チハヤ・クロニカ)
 
熱いの水なかったら大変よね
ちー君と一緒に料理なんて初めてじゃないかな。
いっつも危ないから俺に任せろって触らせてくれないんだもん。
今日私だってお料理くらいできるって見せてあげるんだから!

こうやって二人並んで野菜切ってると新婚さんみたいね
考えてたこと口に出してたみたいでちー君が照れて指切ったよ。
全く…指切った人は大人しく私が全部切るまで待ってるの

カレー煮込みつつさっきの想像について考える。
つまりちー君と恋人になって愛を深めて…。
今以上の関係を望んだらきっと神様に怒られちゃう。
ずっと一緒にいたいなら我慢。

考えに夢中で危うく焦がしそうになるもギリギリセーフ。
一緒に作ったカレーはいつもよりおいしい。


ユラ(ハイネ・ハリス)
 
ハイネさん、世の中にはツッコんだら負けって言葉があるんだよ
水があれば米も炊けるはず…!がんばって!

料理の腕は普通
あ、私、辛いの苦手だから甘口にしてもいい?
ふふっ…なんか、懐かしいなぁって
前にね、走る野菜を退治する依頼を受けたことがあって…
最後にみんなでカレー作って食べたの
美味しかったなぁ
いやいや、そっちを食べたわけじゃないよ?!

わー美味しそう!じゃあさっそく、いただきまーす!
暫し沈黙)………ハイネさん…これ何入れたの…?
私、辛いの苦手だって言ったよね?!(涙目
うぅ…もしかして無理やりカエルさんにしたの怒ってる…?
ごめんね、次はクマさんにするからっ…いっった!!
可愛いのになぁ…カエルさん…


ひろの(ケネス・リード)
  「楽しそうだね」(首を傾ぐ
あの精霊さんは、楽しいどころじゃなさそうだけど。「お皿にする」
慈悲なんだ……。(楽しそうに材料を分けに行くのを目で追う

料理って知ってたら、エプロン持って来たのに。(借りたエプロンを着用
「料理は、できるの?」(手を洗う
普段、料理しないんだ。(頷く
「カレーなら、作れる。それと。その……爪」

「野菜、洗って欲しい」
「水で」お米を研いで、炊飯器にセット。

ピーラー欲しかったけど。(包丁での皮むきが苦手
「取らないと、おいしくなくなるから」
なんとかできた、かな。
うん。普通にできた。(一口食べた感想
「お菓子なら」ときどき。

まだよくわからないけど。
いつか、慣れるといいな。(自分がケーネに


秋野 空(カルヴァドス)
  5.カレーの素
カルヴァドスはこんな事を言う人だったろうかと訝しく思いながら
…では私はカレーの素を
本当にあのカルヴァドスなのかと思いつつ
水とカレーの素だけあれば、ひとまずカレーっぽくなるでしょうから…ご飯がないのが厳しいですけれど

精霊の行動に驚き
とっ、とにかく始めましょう!
逃げて調理へ

白エプロン

精霊に指示するが、宣言以上に酷い
材料を洗う→適当、肉まで洗いかけ
材料を切る→『斬る』危うくまな板まで
分量を量る→適当過ぎ、危険

ありがとうございます、もうここからは私だけで大丈夫ですから

精霊の言動に翻弄され、指を切る
言葉や行動など、彼じゃない気がするのに
こういう咄嗟の優しさを感じると時々わからなくなる…



「サバイバルっていうか……ただの調理実習だよね、コレ」
 ハイネ・ハリスが何とも言えない顔で、ユラに無理やり押し付けられた貸出用のエプロン付けながら言う。
「せめて屋外でするとか、ないの?」
「ハイネさん、世の中にはツッコんだら負けって言葉があるんだよ」
 ツッコみたい気持ちは誰しも同じだろう。
「水があれば米も炊けるはず……! がんばって!」
 勝手にサバイバル気分を楽しんでいる見慣れないウィンクルムに米と水を分け、やたら嬉しそうに帰っていく背中を見送ったあと。
「あ、私、辛いの苦手だから甘口にしてもいい?」
 ユラが甘口カレーの素を手に取る。
「別になんでもいいよ。むしろ面倒だから全部任せ……」
 言いかけて、思い留まったように言葉を止める。
「……少しは手伝うよ」
 米を洗って火にかけ、材料を洗って、切り分けて、下準備をしていると、ユラが小さく笑った。
「ふふっ……」
「なに笑ってるの」
「なんか、懐かしいなぁって」
 思い出すようなユラに、ハイネがちらりと目を向ける。
「懐かしい?」
「前にね、走る野菜を退治する依頼を受けたことがあって……」
「へぇ……」
 走る野菜。
 そんなものもいるかもしれないと、気にも留めずにハイネは調理を進めるユラを手伝う。
「最後にみんなでカレーを作って食べたの。美味しかったなぁ」
 すると、ハイネの手がぴたりと止まった。それどころか2,3歩後退った。
「え、走る野菜を食べたの……?」
 今の流れではどう聞いても走る野菜を捕まえてカレーを作ったようだった。
 ハイネが、見てはいけないものを見るような、あからさまな引き加減でユラを見つめる。
「いやいや、そっちを食べたわけじゃないよ?!」
「あぁそう、よかった。そんなことしてたら、さすがに見る目が変わるところだったよ」
 すでにだいぶ変わっていた気がしないでもないが、ユラは気にせず煮上がる鍋にカレーの素を入れる。
 しばらく煮込んだあと、火を止め、ユラが皿に盛りつけてハイネが並べる。
 もう一つ、ユラが盛り付けている隙に、ユラの皿にチリペッパーを涼し気な顔で大量にぶち込み、そ知らぬ顔でハイネが席に着く。
「わー、美味しそう! じゃあさっそく、いただきまーす!」
 ぱくりとカレーを口に運んだユラが、少しして動きを止める。
「……………………ハイネさん……、これ、何入れたの……?」
「なにって、『これ』だけど」
 先程ぶち込んだチリペッパーを、ハイネがしたり顔で差し出す。
「私、辛い物苦手だって言ったよね?!」
「俺は辛いほうが好きだから」
 涙目になっているユラに、清々しいほどの笑顔を向ける。
「うぅ……もしかして、無理やりカエルさんにしたの怒ってる……?」
 貸出用エプロンがカエルだったことをひそかに怒っているのかもしれない。
「ごめんね、次はクマさんにするからっ」
「そういうことじゃない」
「いっった!!」
 ハイネは容赦なく揺らの額にデコピンを見舞う。
「やれやれ……」
 ユラの皿を取り上げ、自分の皿と交換するハイネに首を傾げる。
「辛いの苦手なんだろ。そっちには入れてないから大丈夫だよ」
「可愛いのになぁ……カエルさん……」
「そっちにも入れようか?」
 チリペッパーを手にするハイネの笑顔から、ユラは必死でカレーを守った。


「手づかみで食べさせるのも可哀想だし」
「熱いのに水なかったら大変よね」
 そう言って見慣れないウィンクルムのために水とスプーンを脇に避けて、メイリ・ヴィヴィアーニとチハヤ・クロニカは調理に取り掛かった。
(ちー君と一緒に料理なんて初めてじゃないかな)
 いつも危ないからと、チハヤはメイリに触らせることはしない。
(私だってお料理くらいできるってみせてあげるんだから!)
 しっかりとした手つきで、きちんと材料を下準備していくメイリに、チハヤは父親か兄のような気分を味わっていた。
 ――なんか、割としっかりしてる……。
 それはそれで複雑なのだけれど。
 並んで野菜の下準備にかかる。丁寧に切りながら、メイリがぽつりと漏らした。
「こうやって二人並んで野菜切ってると新婚さんみたいね」
 唐突な言葉に、思わずチハヤの手元が狂った。
「――っ!? 痛っ!?」
「ちー君? なにやってるの?」
「指切った……」
 見事にざっくりと指を切ってしまい、慌てて手当てをする。
 ――本当に俺は何やってるんだ。
「まったく……指切った人は大人しく私が全部切るまで待ってるの」
 ニンジンでも玉ねぎでもなく自分の指を切った挙句、メイリにまな板から遠ざけられてしまった。
 しかも。
 ――新婚生活ってことは、朝起きたらメイがいて、あ……、ってだから俺は何やってるんだ……!
 待っている間に、新婚生活の妄想を軽くしてしまい、チハヤは再び落ち込んだ。
 メイリが材料を切り終えると、鍋に入れて煮込む。
 この間はほぼ無心に、焦げ付かないようにかき混ぜるだけだ。だからこそ、メイリは先ほどの言葉を思い出して、つい考え込んでしまう。
(新婚さんになると言うことは、つまりちー君と恋人になって愛を深めて……)
 今よりまだ先にある関係を思い描いて、思考を止めた。
(今以上の関係を望んだら、きっと神様に怒られちゃう)
 今のままで十分だ。
 一緒にいるためにも、それ以上は我慢をしなくては。
「焦げるぞ」
 考えに没頭して手の止まったメイリの代わりにチハヤが鍋をかき混ぜる。
「あ、焦げ……てないから大丈夫なの」
 かなりぎりぎりだったが、カレーは無事なようだ。
 チハヤが隠し味にとチョコレートを入れ、味見をして種類の違うカレーの素を混ぜる。
 ――少し辛めだが……大丈夫か。
 皿に取り分けて、席に着く。
 先にメイリがカレーを掬って口に運ぶ。
「いつもよりおいしい気がするの」
 続いてチハヤが口をつけて、「ああ、確かに」と呟きながら。
 ――色々考えて疲れたから美味いんだ、きっとそうだ。
 保護者のような目で見守ったり、新婚へ妄想を掻き立てられたり。
 実際、メイリと新婚で――と想像すると、やはり、何をやっているんだと、ふと冷静になって落ち込んでしまう。
 ――今日のカレーがいつもよりおいしいのは小さかった妹が初めて作ってくれたっていう感動でだ。
 ちらりと目を向けると、美味しそうにカレーを食べるメイリと目が合った。
 思わず目を逸らしたものの。
 ――けして気になる子の手料理だからじゃない……じゃないと信じたい。
 チハヤの気持ちはさらに複雑になったが、やはりカレーは美味しかった。


「分ける義理もありませんから、ここは『水』でいいですよね」
 さらりと言ったカルヴァドスの言葉に、秋野 空の手が止まった。
「……では私はカレーの素を」
「一緒に『水』でいいのでは?」
 空が分けようとした材料に、彼は不満げだ。
(カルヴァドスさんはこんな人だったでしょうか……)
 空の記憶にいるカルヴァドスなら、材料をすべて分けてあげそうな人だったように思っていたのだが。
「水とカレーの素だけあれば、一先ずカレーっぽくなるでしょうから……ご飯がないと厳しいですけれど」
 どこか、違和感を覚える。
 怪訝に思っていると、カルヴァドスは柔らかく微笑んだ。
「俺の空さんは、本当に優しいですね!」
 そのまま、そっと手を伸ばして頬を撫でる。
「そういうところも、実に魅力的です」
「……っ!?」
 驚いて、空は咄嗟に顔を背けた。
「とっ、とにかく始めましょう!」
 逃げるように調理場へ向かい、白いエプロンを付ける。
 カルヴァドスもくすりと小さく笑って、黒いエプロンを付けると、にこりと笑顔を作ったまま、
「俺、料理したことありません」
 と告げる。
 例えカルヴァドスが致命的な料理下手であっても、空自身が料理を作れるのだから特には困らないのだが、棒立ちになってもまずい。
「では、材料を洗って頂けますか」
「材料を洗うんですね、分かりました」
 そう言って驚くほどの速さで野菜を洗った挙句、肉まで洗いかけようとするから焦った。
「っっ!? カルヴァドスさん、やっぱり材料を切って頂けますか」
「ああ、斬ればいいんですね。刃物を使うのは得意です」
 と材料を切ってもらおうと思えば、明らかに剣術の構えで、まな板を真っ二つにしかけた。
「あ、あ、やっぱりこの分量を量っていただ……」
「こうですか?」
「一掴みじゃないです……っ!」
 だめだ。ある程度予想はしていたが、宣言された、更にその上を行き過ぎている。
「ありがとうございます、もうここからは私だけで大丈夫ですから」
「そうですか? 言ってくださればなんでもやりますよ」
 ならば座っていてほしい――。
 とはいえず、材料や道具をそろえてもらうことにする。
「空さんが料理をする姿、やっぱり素敵ですね」
「えっ!?」
「何をやっても魅力的ですが、家庭的で俺は好きです」
「あ、ありがとうございます」
 反応を楽しむように、カルヴァドスは空を覗き込んで、声音を一段落とした。
「今、その目に映っているのが俺じゃないことが残念ですが」
「――ッ!」
 空の知っているカルヴァドスとは思えないような台詞に、さすがに動揺が隠せず、うっかり指を切ってしまった。
「空さん!?」
「あ、大丈、夫……」
 カルヴァドスはほとんど反射的に手を取って指先に唇を寄せた。
「すみません、俺のせいです」
 そう言って、丁寧に手当てをしてくれる。
 言動は、とても記憶のカルヴァドスだとは思えない。けれど、ふいに見せる優しさに記憶が朧げになっていく。
(本当に、カルヴァドスさん……?)
 今も信じられない現実と、彼の姿に疑問符は飲み込んだけれど。
 向けられた笑顔に、ざわりと胸が波立つのを感じた。


 リヴィエラのやる気に水を注してはいけない。
 わかってはいるのだが。
 ――否定的な言葉を言ってやる気をそぐのもマズイ……いや、だが……。
 台所には立つなと再三言われているリヴィエラが、今日もくじけずに包丁を持っている。
 不安しかない。
「私だってウィンクルムです! か、カレーだって作ります!」
 頼むから、台所には立たないでくれ――。
 祈るような気持でリヴィエラを見つめる。
「まずはこの人参を切って……痛っ!」
「リヴィー!?」
「切ってしま……」
 慌ててその手を取り、口に含んで止血する。
「そ、そんな、ロジェっ! そんなところ……汚いですよ……」
「バカ! そんなこと言ってる場合じゃないだろう!」
 涙を溜めながら真っ赤になっているリヴィエラに、思わず怒鳴ってしまった。
 これだから、台所に立ってほしくないのに。
「ほら、包帯を巻いてやる」
 言いながら、手早く手当てをする。
「あ、あの……ありがとうございます、ロジェ……」
 料理が下手だからとか、そういう理由で止めたいわけではない。
 いや、それも理由ではないわけではないが、一番はそれではない。
 怪我をしたら。
 火傷をしたら。
 リヴィエラが痛い思いをするかと思うだけで心配なのだ。それなのに、リヴィエラときたら――。
「カレーは俺が作る」
「……はい」
 しょんぼりと肩を落とすリヴィエラの頭を撫でて、笑いかける。
「リヴィーはここで見てろ」
「! はい!」
 ぱっと表情を明るくする彼女に、少し顔が熱くなる。
 手早く材料を切って鍋に入れて火をかける。
「ロジェ、それはなんですか?」
「にんにくだ。隠し味に使うと食欲が進むカレーになるんだ」
「はわわ、詳しいのですね」
「あと、牛乳を入れるとまろやかになる」
 出来上がったカレーを取り分けて並べる。
 リヴィエラがいただきます、とカレーを口に運ぶと、目をキラキラとさせている。
「まぁっ! とっても美味しいです!」
「それはよかった」
「ふふ、実はこの夏の暑さで、少々疲れやすかったのですが、暑いからこそ辛いものがおいしく食べられるのですね」
「汗が出れば涼しくもなるしな」
 自分も一口食べて、リヴィエラの疲れが取れそうな料理を今度は作ってみようと考えていると、リヴィエラがじっとこちらを見つめている。
「それと……ロジェ、そのエプロン、とてもお似合いだと思います!」
「え? あ、……ああ、うん」
 まさか兎のエプロンを渡されるとは思わなかった。しかもそれを褒められれば、さすがに顔を覆った。
「耳が、ちょっと邪魔なんだ……」
「まあ、ふふっ、可愛らしいです」
 せめて犬とかはなかったのだろうか。
 リヴィエラはフリルたっぷりで可愛いのに、なぜよりにもよって兎だったのか。
 気恥ずかしさから黙々と平らげて後片付けをしていると、リヴィエラがそっと近づいてきた。
「リヴィー?」
「ロジェ、その、ごちそうさまでした」
 ちゅ、と頬にキスをされる。
「ッッ!?」
 思わず皿を落としそうになったが、何とか踏み止まる。
 ただ、片付けはしばらく中断を余儀なくされるほど、盛大に照れて蹲ってしまった。


 ケネス・リードが楽しそうに材料を吟味する。
「ねえ、分ける材料はどうしよっか?」
「楽しそうだね」
 首を傾げて言ったひろのに、ケネスは先ほどよりも楽し気に頷いた。
「結果が楽しみだからね」
 何を分けてもらえるかは運任せだ。ひろのも材料を眺める。
「お皿にする」
「ふーん。なら、慈悲でジャガイモにしてあげる」
「慈悲なんだ……」
「皿と芋があれば食べれはするでしょ」
 変わらず楽し気に、ケネスは材料を見慣れないウィンクルムへと材料を分けに行く姿をひろのは目で追った。
 何やら芋を喜んでいるらしいから、とりあえず慈悲にはなったようだけれど。
 戻ってきたケネスは借り物のエプロンを、何の抵抗もなくつける。やけにポップな猫だが、気にはならないらしい。
「料理って知ってたら、エプロン持ってきたのに」
 ひろのはなぜか顔だけ全面プリントの、あひるエプロンを渡され、やや不満げだ。
 エプロンを付けて手を洗いながら、そういえばとひろのはケネスに目を向ける。
「料理は、できるの?」
「あたし? 調理実習ぐらいね」
「普段、料理しないんだ」
 納得したように頷く。
「そういうひろのは?」
「カレーなら、作れる。それと。その……爪」
 ケネスの指先には、手入れされて飾られた、長く伸びた爪。さすがにこれで料理はまずいだろうとひろのが指摘をする。
「ああ、ネイルチップよ」
 そう言ってケネスはネイルチップを外して手を洗う。
「なにすればいい?」
「野菜、洗ってほしい」
「洗う……、水よね?」
「水で」
 ケネスが洗っている間に、ひろのは米を研いで炊飯器にセットする。
 さらに、ケネスから野菜を受け取って、辺りを一度見回す。
「ピーラー欲しかったけど」
 包丁で皮をむくのは苦手だが、ピーラーがない以上は仕方ない。丁寧に皮を剥き、ケネスに渡す。
 段取りよくケネスが野菜と肉を切って、油で炒めて煮る。
 ぐつぐつと煮えてくると、ケネスはしっかりと浮く灰汁を見つめる。
「灰汁って取らなきゃだめ?」
「取らないと、おいしくなくなるから」
 ひろのの言葉に、面倒だと思いながらも灰汁を掬う。
「調理実習もこんな手順だった気がする」
 ほとんど虚ろな記憶だ。
 カレーの素を入れて、しばらく煮込んで火を止める。
「なんとかできた、かな」
「料理って結構手間ね」
 取り分けたあと、一口食べて。
「うん。普通にできた」
 ケネスも口に運び、思い出したように口を開いた。
「そういえば、ルシエロに料理とか作ってるの?」
「お菓子なら、ときどき」
「あら、あたしが先にて料理食べちゃったの。ルシエロが不機嫌にならなきゃいいけど」
 ひろのは特に何か言うでもなく、黙々とカレーを食べている。
 ――警戒されてるのか。大人しい子ね。
 一方でひろのはお菓子と料理ではやはり違うかな、と思いながら、ケネスを見遣る。
(いつか、慣れるといいな)
 ひろのがケネスに慣れるには、もう少し時間がかかりそうだ。


「材料を分けてもらいましたよ」
 精霊が、好意で分けてもらった材料を並べる。
「米、水、水、スプーンにカレーの素、水、皿、カレーの素! ジャガイモ、そして皿!」
 指差し確認をする神人に、精霊はほっと息をつく。
「カレーっぽくてよかったですね」
「とりあえず食べさせてあげようと言う皆さんの優しさを感じます!」
 しかも、水の分量多めでカレー汁、という事態も避けられそうだ。
「水を入れて全部ぶち込めば、とりあえずできそうですね」
「作れないわたしたちへのこの愛情! 感謝します!」
 ただし、その作り方で美味しいかは別の問題で、数十分後にはなにやら噴出して悲壮な顔をしている二人の姿があった。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 真崎 華凪
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ビギナー
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 08月08日
出発日 08月15日 00:00
予定納品日 08月25日

参加者

会議室

  • [6]ひろの

    2016/08/12-20:06 

    えと、ひろのです。よろしく、お願いします。(小さくお辞儀
    一緒に参加するのは、ケネス・リード、です。

    材料分けるのは、話し合い無しでも大丈夫です。
    ケーネ、も。そっちの方が面白いって……。

    そういえば、ケーネは料理、できるのかな。

  • [5]秋野 空

    2016/08/12-00:23 

    こんばんは、秋野空と、パートナーの……カルヴァドスさんです
    皆様、どうぞよろしくお願いします

    材料の件ですね
    私たちも特に話し合わずに決めていいと思っています
    どのようになるか、少し心配ではありますけれど……
    お二方なら何ともならなくとも、何とか乗り切られそうに感じましたし
    もちろん必要ならばお話し合いすることも可能です

    それにしても、カルヴァドスさん、お料理できるのでしょうか……

  • [4]リヴィエラ

    2016/08/11-23:02 

    リヴィエラと申します。パートナーはロジェです。
    どうぞ宜しくお願いします(ぺこり)
    えと、私も、相談無しだと面白いかな、なんて…
    話し合うなら、それでも大丈夫です。
    美味しいカレーが出来上がると良いですね。

  • メイリと相方のちーくんなの、よろしくね。

    私も面白そうだから相談なしでいいと思うの。
    話し合うならそれでもいいよ

  • [2]ユラ

    2016/08/11-17:08 

    どーも、ユラと相方のハイネさんです。よろしくね!

    渡す材料だけど…個人的には面白そうだし、相談なしでいいかなぁと思ってるんだけど、どうかな?
    被りたくない!って人がいたら、話し合うのは全然オッケーだよ。

  • [1]ひろの

    2016/08/11-13:23 


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