ミスター美少女コンテスト!(森静流 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

「さあ、みなさまお待ちかね--ッ!」
 祭で盛り上がる紅月ノ神社境内。
 そこにひときわ大きな司会の声が響き渡る。
「ミスター美少女コンテスト--っ!!」
 何事かと振り返る客。
 あらかじめ席を取っている客。
 ステージの上はずらりと若い男女が並んでいる。否、男女に見えるだけだ。
 そこに楚々たる美少女も、そこの華麗なマダムも、あるいはとびきりぶっ飛んだコスプレをしているギャルも。
 その子達、全員--実は”ついてます”!!
「さあ~、今年もやってきました、ミスター美女コン。これまでは、会場の皆様と審査員による投票と厳正な審査において、今年の一番素敵な男の娘は誰か! ということだけで決めていただきましたが、今年からルールが変わります!」
 おおっ、と、会場全体がどよめいた。
「今年からは、綺麗に可愛く装った女装の彼を素敵にリードするもう一人の彼!! というシチュエーションに変わりました。要するに、女装した男の子ともう一人の男の子のペアによる参加になります。男の娘は彼のエスコートでステージに登場し、観客の前でキスしてください!!」
 おおおおっ、と更にどよめく会場。どこからか黄色い悲鳴まで聞こえてくる。
「その他、様々な方法で男の娘のかわいらしさをアピールしたり、ときめく萌えをアピールしてくださって構いません! 制限時間は15分!! その中から厳正な審査により、今年のMVPを決めたいと思います!」
 そういう訳である。
 どうやら祭を盛り上げる一環であるらしい。飛び入り参加もOKだ。さて、あなたたちウィンクルムはどうするだろうか!?

解説

●女装男子コンテストです。
●ルールはちょっと変わっていて、ウィンクルムの片方が女装し、片方は男装のままのペアでの参加になります。どちらが女装をするか、どんな格好になるか明記してください。
(女装役→女、 男装役→男 とプランの上に記入)
●各ウィンクルムごとにステージ上に登った後、可愛らしさのアピールをしたり仲の良さのアピールをして、キスをしてください。制限時間は15分です。15分全部使い切らなくてもOKです。
●衣装は各種コスプレも含めて無料で貸し出します。ウェディングドレス、水着、メイド、ナース、アイドル、小物つきでなんでもあり。勿論、普通のドレスやワンピース、スカートも小物コミであります。
●仲の良さアピールはキスやハグまでです。皆が見るコンテストですので公序良俗を守ってください。
●参加費として300Jrいただきます。


ゲームマスターより

萌え萌えな衣装を着たウィンクルムが見たいです。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)

 
フィンに女装させるよりは俺が…と思った
(フィン、女装無駄に似合いそうでモテたりしたら困る)
いつものステージで格好だけ違うと思えばいい…役になりきるんだ、俺…!(自己暗示)

テーマは、ゴスロリ×ロック
クールに格好良く
黒基調
ショートパンツにレッグウォーマー(絶対領域見せ)に、プリーツスカートカバー。ショートブーツ
トップスは、レース沢山なコルセット風(後ろ編み上げ)で臍出し
前下がりボブの鬘
ミニハット(薔薇飾りにリボンと鎖、レースふんだん)
眼帯着用で、ギターを持つ

フィンのエスコートでステージに出たら、ギターをかき鳴らし
足上げからのターンで決めポーズ
ギター銃でハートを撃ち抜くという仕草

…今回だけだからな


瑞樹(共夜)
 
盛り上がってる所は飛び込んでみなきゃ!
それできょーちゃんどれが着たい?
僕、やらないからね。それにきょーちゃんの可愛いとこ見てみたい…ダメ?
どうにか説得して着てもらえた

慣れないだろうから僕がしっかりエスコートしなきゃ!
不思議と体が動いた

しっかり者なのに時々抜けてる共夜の可愛い所アピール。
地図逆さま事件や寝癖気づかずドヤ顔して笑われた話をする。
でも一番は笑顔!いつものは明るくて元気になるし、悪戯っぽいのも可愛い
共夜、優しくって可愛くて大好きだよ!

僕、男の子アピールに呼び捨てしてみたら可愛い反応。
もしかして主導権握られたら弱いタイプ?
可愛くて抱き着いたら押し倒しちゃった。
…おでこにキスで誤魔化そう



西園寺優純絆(十六夜和翔)
 

☆衣装
・桃色のチャイナドレス スリット有
・二つ団子 中国扇子

☆心情
「美少女コンテスト? 楽しそう!
ねぇカズちゃん出てみようよ!
やったぁありがとうカズちゃん!」

☆衣装選び
「ねぇカズちゃん、どれが良いかなぁ?
わぁ可愛い! ならカズちゃんもお揃いで着よ♪」

☆ステージ
・手を繋いで登場
・常に笑顔
・無表情な精霊の頬を引っ張る
・お返しと言わんばかりに精霊も神人の頬を引っ張り面白くなりお互いに笑い合う
・姫だきされ精霊から口スレスレにキスに驚き恥ずかしくなり真っ赤な顔を隠す様に精霊の肩に埋める

☆終了後
「(うぅ、顔が熱いっ…
なんでドキドキするのっ
はぅっ! だ、大丈夫っ!(かっ顔が近い…っ
ふぇ!?覚悟って何カズちゃん!?」


咲祈(ティミラ)
 
メイド服、黒のツーサイドアップ(長さは胸下)
体型が元々華奢でどちらかと言えば女顔なので、メイド服着用し、ウィッグ被ってもあまり不自然ではないかと

短い……
膝上10センチの丈を不満げに見つめ
…ティミラ、見つめないでくれるかい。なんか怖い
ばか。…嬉しくない
…分かってる
帰りたい…

可愛らしさアピールは猫のポーズ
猫ポーズしている間に兄にハグされ微妙に目を見開く(お互いに何をするかの相談なし)
離れたかと思うと、兄に手を引かれ手の甲に口付けされ驚く
この後は何事もなかったかのように振る舞った


●咲祈(ティミラ)編

 その日、咲祈は精霊のティミラと紅月ノ神社のお祭りで、美少女コンテストに出場することになりました。
 コンテストに参加する際、咲祈が着たのはメイド服。ウィッグは胸の下までの長さのツーサイドアップです。咲祈は元々、体型が華奢ですので、メイド服やウィッグの着用に不自然さはありませんでした。
 メイド服は黒地のミニスカワンピースで胸の部分が白い三角の切り替えになっています。白い部分はレースとフリル。腰の周りにも白のふりふりのエプロンをつけていて、足は白のオーバーニーを白のレースのガーターベルトで吊しています。靴は黒のエナメル。
 ツーサイドアップのウィッグの方は、元の髪と同じ金色がかった茶色です。高く結い上げた髪は花のついたリボンでくくり上げ、さらさらと胸の下まで流れ落ちています。
 確かに、咲祈は無表情ではありますが、可愛らしい萌えメイドに見えるのでした。
 しかし、一つ問題が。
「短い……」
 咲祈はぼそりと呟きます。
 メイド服のスカートの丈が、膝上10㎝なのです。咲祈の太もも丸出しです。
(膝上10センチはちょっと短すぎ? いやでも可愛らしさを演出するならそれくらいは……)
 隣に立つティミラは、メイド姿の咲祈を凝視しながら、口の中でぶつぶつ何か言っています。
「……ティミラ、見つめないでくれるかい。なんか怖い」
 そんな色々とアレな兄な対して、咲祈は冷ややかながらも困惑の感じられる口ぶりでそう言いました。
「えっ? オレそんなに見つめてたか? それは良いとして、ね? ツバキすっごく可愛い! さすがオレの弟、いや。今は妹か!?」
 ティミラはなにやら一人で盛り上がっています。
 弟を溺愛してはいつも少しズレた方に行くティミラなのですが、今回は随分と大幅にズレた方へと溺れるような愛を注いでいる模様。
 女装の弟に冷たい目で見られても、全く屈していないのです。
 そんな兄に向け、咲祈はますます、視線の温度を下げていきます。
「ばか。……嬉しくない」
 迷惑そうに言う咲祈。今回の美少女コンテストへの参加も、ティミラが強引に無理矢理すすめたものなのでしょう。
 しかしティミラの方はにこにこするばかりで、全く堪えていないのでした。
「ところでツバキ、次だよ」
 そうこうしているうちに、咲祈のステージが近づいてきます。
 既にステージの方では、先に登場した女装男子のカップル達に向かって盛大な声援が飛んでいます。女装した男の子に向かって「可愛いー!」だの「萌えー!」だの叫ぶ声が聞こえてきて、咲祈は嫌そうになりました。
「……分かってる。帰りたい……」
「あはは、帰れません!」
 にっこり笑ってティミラは言い切りました。弟も負けていませんが、兄も全く負けていません。
 仕方なく、咲祈は名前をマイクで呼ばれた後、大勢の見守るステージ上に歩いて行きました。
 ここで可愛さのアピールです。
 咲祈は、ティミラに教わった通り、両手を頭の位置まで挙げて、手首を傾げさせて、「ニャン♪」のポーズ。
 顔は相変わらずの無表情なのですが、確かに猫のポーズを取りました。ティミラは本当は腰を突き出して両腕をくねらせて猫のしなやかさを全身で表すポーズを取って欲しかったのですが、流石にそれは咲祈の方が全力で拒否したのです。それで一応、冷め切った無表情の顔の横で手首だけで「ニャン♪」のポーズ。
 ティミラがかっと目を見開きます。
(メイド服とツーサイドアップ、そして猫ポーズに確かな萌えを感じた!)
 いつもなら、ティミラは咲祈の方へと「おいで!」と両腕を広げるのです。
 ちなみにその「おいで!」が成功した事は今のところ、ありません。
 エアコンが壊れた時にも、氷の迷路を歩いた時にも、ティミラは「おいで!」と咲祈に腕を広げているが、いずれも冷ややかな対応を受けています。どちらの時もアイスを食べていましたが、アイスクリームと咲祈の態度ではどっちの方が冷たいかと比べられそうな対応ばかりを受けてきたのです。
 それで学習したのでしょうか。
 今回、ティミラは--咲祈を隣から、力一杯、ハグをしたのでした。ぎゅうっと咲祈を抱き締めたのです。
 咲祈が微妙に目を見開きます。
 流石に、ティミラがステージ上、大勢の観客の前で、自分を抱き締めるとは思わなかったのです。微かな動揺が咲祈の表情に浮かびます。
 ティミラは可愛い可愛いメイド弟を力強く抱擁。呆気に取られた咲祈が固まっているのをいいことに愛をこめて抱擁。
 激しいラブシーンに観客席からは黄色い声が上がりっぱなしです。
 咲祈は抵抗しませんでした。驚いたというのもありますが、もしかしたら、ティミラに反応を返すのが面倒くさかったのかもしれません。
 ひとしきり咲祈を抱き締めるとティミラはようやく離れました。
 そしてその場に片膝を突きます。
 彼は、恭しく咲祈の手を取りました。きちんと磨いてネイルオイルをつけた咲祈の手。それを頭の上に掲げるようなポーズを取った後、自分の口元を持っていって、そっと彼の手の甲にくちづけました。
 咲祈は動じない無表情でしたが、内心で何を考えていたかは分かりません。
 可愛いメイドさんに跪いてキスをする王子様。
 観客からまた歓声が上がります。
 ティミラの王子様ルックも、咲祈の無表情なメイド姿も、観客達にはかなりツボにはまったようです。
 ティミラは手の甲から唇を外すと、跪いた格好のまま溢れるような眩しい笑顔を咲祈に向けます。もう咲祈が可愛くて仕方ないのでしょう。
 対する咲祈はいつも通りに冷ややかな表情でさっと手を引っ込めました。視線は氷よりも冷たいレベルに。
 そして、咲祈は全く何事もなかったように、スタスタと舞台の袖の方へ歩き去っていきました。ティミラを一人、置いてきぼりにして。
 ティミラの「おいで!」やハグは咲祈に冷たい塩対応を受けるところまでがルーティンのようですね。
 冷たいメイドさんに観客達は萌えを感じ、残されたティミラに声援を送っています。
「王子様、負けないでー!」
 ……ええ、ティミラは負けません。きっと今後も、溢れる笑顔で抱擁するような愛を咲祈に送り続ける事でしょう。

●西園寺優純絆(十六夜和翔)編

 西園寺優純絆は、紅月ノ神社のお祭りにおけるミスター美少女コンテストのチラシを見つけ、精霊の十六夜和翔を誘いました。
「美少女コンテスト? 楽しそう! ねぇカズちゃん出てみようよ!」
「はぁ? 美少女コンだぁ? しょうがねぇなぁ、出てやるよ」
 和翔は面倒くさそうに言いますが、内心では、
(ユズとキス、出来るなら……っ)
 そういう気持ちでいます。
 何かと好きな子をいじめてしまう和翔ですが、そういう恋する心もしっかり持っているのです。
「やったぁありがとうカズちゃん!」
 天真爛漫な笑顔を見せて、優純絆は喜びを表現しました。そんな優純絆を和翔は眩しそうに見ています。
 それで二人は早速、衣装部屋に入っていき、ステージで着る衣装を選び始めました。
「ねぇカズちゃん、どれが良いかなぁ?」
 優純絆は楽しそうな笑顔で和翔を振り返りました。
「あー、そうだなぁ……偶にはこっちのチャイナドレスとか、どうだ……?」
 面倒そうな調子を装いつつ、和翔は一着のドレスを指差しました。
 それは、子供用の小さなものでしたが、ちゃんとスリットの入った桃色のチャイナドレスでした。
 和翔は本当は自分が見て一番着て欲しいと思ったものを指差しています。そうして、出来るなら、それを着た優純絆は自分が独り占めしたいのですけれど。これは美少女コンテストですからそうはいきません。それで複雑な気持ちになり、好きな子に素直になれない気持ちもあって、ちょっと仏頂面で面倒そうに言うのです。
「わぁ可愛い! ならカズちゃんもお揃いで着よ♪」
 一方、そんな和翔の心理など分からない優純絆は、やはり嬉しそうな笑顔を見せて、それから和翔の分のチャイナ服を見つけて押しつけてきました。
「まぁ、良いけど」
 優純絆とおそろい、というのは、和翔にとっても悪い話ではありません。あっさりそれを受け取りました。
 和翔の方は新緑色のスリットの入ったチャイナ服です。下にはズボンを穿きます。
 そして優純絆は髪の毛を二つのお団子に結び、中国風の扇子を小物で持ちました。
 和翔の小物は暗い色の番傘です。
 二人はコンテストに参加の手続きを取り、着替えを終えて控え室で順番を待ちました。その後、ナンバーが呼ばれて、ステージへ登場です。
 明るいライトを浴びながら、二人は手を繋いでステージの中央まで歩いて行きました。
 優純絆は司会の人に話しかけられても、観客から声を浴びても、常に笑顔です。
 一方、和翔の方は、可愛い優純絆を見ている会場全体に嫉妬です。
 そのため、ステージで本番だというのに、怒ったような無表情になってしまいます。
 優純絆はそんな和翔を振り返りました。
 そして、急ににゅっと手を伸ばすと、和翔のほっぺをむにーっと引っ張りました。
 ステージの上なのににこりともしない和翔の表情を動かそうと思ったのです。
 ガキ大将の和翔は黙っていません。
 反射的に優純絆のほっぺに手を伸ばすと、むににいっと引っ張りました。
 そのままお互い、両手を使ってお互いのほっぺを引っ張り合います。
 ぽかんとしてしまう司会。
 大爆笑の会場。
 優純絆と和翔は、むにーっと横に広がったお互いの顔を見合わせて、思わず噴き出し、二人で大きな声で笑い出しました。
 いきなり笑い出した二人に対して、会場の方も和やかな笑いが広がっていきます。
 大笑いしてしまってすっきりした和翔は、優純絆から手を離すと、途端に彼の背中と足に手をやりました。
 突然の和翔の行動に、優純絆はついていけません。彼にされるがままです。
 和翔はお姫様だっこで思い切り胸に抱き上げます。
 それから、優純絆の口すれすれのところにキス。
 わあっと歓声が沸き上がる会場。
 会場からは、和翔が本当に優純絆の口にキスをしているように見えました。和翔は、会場に対して、優純絆は俺のものだという主張はしたかったのですが、ぎりぎりのところで本当にキスする勇気はなかったようです。
 優純絆はびっくりして目をまんまるに見開いてしまいます。それから真っ赤になり、顔を隠すように和翔の肩に顔を埋めます。
 和翔はそのまま、優純絆を抱いてステージから退場していきました。
(うぅ、顔が熱いっ……なんでドキドキするのっ)
 舞台の袖の中に入っていって、和翔に下ろしてもらってから、優純絆はまだ熱い頬を両手で押さえています。あんな大勢の前でキスをされたら、誰だって顔が真っ赤になって、なかなか元には戻らないでしょう。ですが、優純絆が顔を隠し続けるのは、どうやら他の気持ちもあるようです。和翔を意識してしまって止まらないのかもしれません。
「ユズ、大丈夫か?」
 そこに突然、和翔が声をかけました。心配そうに優純絆の顔をのぞき込みます。
「はぅっ! だ、大丈夫っ!」
 近くにある和翔の顔に、優純絆は思わず声を裏返らせました。心臓がバクバクしてきます。和翔のキスの事を思い出してしまいます。
「ホント、だろうな……?」
 優純絆の赤い顔を、和翔はさらにのぞき込んできます。
 優純絆は頭をぶんぶん振って頷きます。それ以上、和翔に接近されたら、心臓が口から飛び出てくるかもしれません。
「なら、いいけどよ……」
 和翔はなんだかふてくされたような様子です。
 やっぱり、優純絆のチャイナドレス姿を自分が独り占め出来なかったのは不満なのです。優純絆の可愛さを知っているのは自分だけでいいのです。
(俺様は、ユズの事が大好きだ)
 和翔は自分の気持ちへの確信を高めます。それは幼い恋心ではあったのだけれど、幼くても何でも、恋する気持ちは本物なのです。独占欲だってあるし、守りたいという気持ちだってあるのです。二人はウィンクルムなのですから。
「これからは覚悟しとけ」
 それで、和翔はそう言い切りました。
「ふぇ!? 覚悟って何カズちゃん!?」
 至近距離から真顔でそんな事を言われて面白いようにうろたえる優純絆。
 和翔は何も言ってくれません。それでも優純絆のそばでじっと、彼の顔を見つめているのです。
 あたふたする優純絆。そんな幼い二人の様子を、周囲のスタッフ達はほほえましく見守ります。丸わかりの和翔の気持ちが優純絆に届くのは、そう遠くない将来のようですね。

●瑞樹(共夜)編

 紅月ノ神社のお祭りに遊びに来た瑞樹と精霊の共夜は、ミスター美少女コンテストのチラシを見つけました。
「盛り上がってる所は飛び込んでみなきゃ!」
 瑞樹はそう言って共夜を引っ張っていき、参加の手続きをすませてしまいました。そして衣装部屋に案内されて入っていきます。
「それできょーちゃんどれが着たい?」
 瑞樹はわくわくとした顔で共夜の顔を見つめます。
 しかし、瑞樹の前に並んでいるのは可愛らしいワンピースやドレス。男物ではありません。
(?)
 共夜は不思議そうな表情をしてしまいます。それを見て、瑞樹が言いました。
「僕、やらないからね。それにきょーちゃんの可愛いとこ見てみたい…ダメ?」
 瑞樹は両手を目の前に合わせながらそう言いました。
 共夜はびっくり仰天します。
 言い出した瑞樹が女装するのかと思ったら、まさかの自分。
 そういえば瑞樹は元々、物凄い女顔なのに、女の子に間違えられると拗ねます。そういう部分から考えると、参加するにしても、共夜に女装させたがるのは納得かもしれません。
 その瑞樹が可愛い顔でじっと共夜を見つめています。
(上目遣いのその顔に弱いの知ってるのか?)
 あざというぐらいの目つきで共夜に頼み込む瑞樹。共夜は釈然としないながらも、自分が女装してコンテストに参加することを承諾しました。女装なんて、したことがないんですけど。
 それでも共夜が選んだのはこんな格好です。
 花飾りのついたカチューシャ、フリフリのワンピース、ヒールのあるサンダル
小物でウサギのぬいぐるみ。
 それに、まだ変声期の来ていない共夜は、中性的な声をしています。
 彼はこっそりラジオ番組を一つ持っているのですが、その性別不詳のキャラにしても、大方の予想では女の子と思われているぐらいなのでした。
 こうして、共夜は灰色の髪に水色の瞳の中学生ぐらいの美少女に大変身することが出来たのでした。
 鏡の前で自分を見て、なんだかもぞもぞと落ち着きなく動いてしまいます。見た目は瑞樹と同じように女の子にしか見えませんが、自分だと思うと変な感じなのです。
 一方瑞樹も、子供用のタキシードに着替えました。
 瑞樹は瑞樹で、黒髪に緑の瞳の、中性的な小さな紳士に大変身です。そういう格好をすれば瑞樹だって充分、イケメンになってしまうことに、共夜はひそかにびっくりしています。
 お互いに変身した相手にドキドキしてしまいながら、控え室の中に入っていきます。
「きょうちゃん、とても可愛いよ」
「瑞樹だって……。バカ、可愛いなんて言うなよ」
 そうして二人で控え室で待っているとやがて順番で呼ばれました。
(慣れないだろうから僕がしっかりエスコートしなきゃ!)
 慣れないヒールで苦戦している共夜に対して、瑞樹はさっと手をさしのべ、優雅に腕を組んで彼に合わせながらゆっくり歩き始めました。不思議と体が動いたのです。
 共夜は、エスコート慣れしている瑞樹にびっくりしていまいます。ですが、ありがたいので彼の手を取って歩きました。今まで共夜にとって、瑞樹は目の離せない妹のような存在だったのですが、意外な一面です。
 瑞樹はステージ上でも堂々としています。共夜をエスコートすることに慣れている事などは、ひょっとしたら、瑞樹の失われた記憶に関係があるのかもしれません。
 明るくポジティブな瑞樹ですが、本当は人生の大半の記憶を喪失しているのです。現在も瑞樹は身元も何もはっきりしていません。手がかりはハナミズキのロケットだけです。そのロケットは、今もタキシードとともに身につけています。
 ステージの中央に出ると、共夜は瑞樹の真似をして上目遣いをしながら、ちょこちょことウサギのぬいぐるみを動かして見せます。彼の中の可愛い女の子のイメージです。
 それに対して観客はほほえましい目を向けています。
「きょうちゃんって、しっかり者なのに、とても可愛いんですよ~!」
 ステージ上なので敬語になりながら、瑞樹は共夜のアピールを始めます。
 共夜はウサギのぬいぐるみを抱えてちょっと赤くなりながら黙っています。
 瑞樹は楽しそうに笑いながら、共夜の地図が『逆さま事件』や、『寝癖に気づかずどや顔』事件を話し続けます。共夜は本当に恥ずかしそうです。
 そして瑞樹は自分がいい笑顔で言い切ります。
「でも一番は笑顔! いつものは明るくて元気になるし、悪戯っぽいのも可愛い共夜、優しくって可愛くて大好きだよ!」
 男の子の格好でも、女の子の格好でも、瑞樹の笑顔の威力は変わりません。
 共夜はドキンとして瑞樹のお日様のような笑顔を見つめます。
(きょ、共夜って……)
 それに、瑞樹は男の子アピールで、初めて共夜の事を呼び捨てにしたのでした。それで何故か胸がドキドキしてくるのです。
 さらに、共夜はなんだかムズムズしてしまいます。
 褒め殺しが恥ずかしくて照れてしまい、思わずウサギのぬいぐるみで顔を隠しました。
(もしかして、主導権握られると弱いタイプ?)
 瑞樹はそう思いました。
 その可愛い反応にたまらず、瑞樹は共夜に飛びついて抱きついてしまいました。そうしたら、勢い余って押し倒してしまいました。
 会場がわあっと沸き返ります。
(み、瑞樹が本当に男の子に見える!)
 共夜は動揺します。
 本当も、何も、瑞樹は男の子なんですけれど……。でも、共夜の中では女の子のように分類されていたようですね。
 瑞樹はそんな共夜のおでこにちゅっと可愛らしいキスをしました。
 観客は勿論大盛況。
 その歓声に紛れながら、共夜は押し倒されたまま、じっと瑞樹を見つめました。
「俺も一緒にいられて幸せだし大好きだ、瑞樹」
 その声は小さくてマイクには拾われなかったのですが、瑞樹にははっきりと聞こえて、彼は感激のあまり共夜のおでこやほっぺに次々とキスをしてしまいました。
 可愛らしいカップルに観客も司会も大喜びです。
 瑞樹と共夜は、ステージの上で祝福され、今までの短い人生で感じた事のない幸福感に包まれました。
 記憶があってもなくても。男の子でも女の子でも。お互いに。お互いが。
”一緒にいられるのが幸せ、大好き……!”
 この気持ちを大事に育てて、もっともっと幸せになれますように。

●蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)編

 蒼崎海十と精霊のフィン・ブラーシュは一緒に紅月ノ神社のお祭りに出かけ、美少女コンテストのチラシを見つけました。
「折角のお祭りだし、参加しようよ」
 フィンがそう誘います。
 海十はびっくりしましたが、フィンが乗り気になっているので一度ぐらいいいかと思いました。
 フィンがどんどん引っ張っていって参加の手続きもすませてしまい、衣装部屋の中に入っていきます。
「フィン、女装は俺がする」
 フィンがドレスを見ていると、突然海十がそう言いました。
「えっ、海十が!? それは、嬉しいよ!」
 フィンは単純に喜んでいますが、海十の心境は複雑なものでした。
(フィンに女装させるよりは俺が……フィン、女装無駄に似合いそうでモテたりしたら困る!)
 そういう事なのです。フィンの周囲の女性達に可愛い嫉妬をしているのです。
 そういう訳で、海十は自分が着る女装の衣装を選び始めました。
 海十が選んだのは以下の衣装です。
 絶対領域を見せたショートパンツにレッグウォーマー。
 プリーツスカートカバー。ショートブーツ。
 トップスは、レース沢山なコルセット風で臍出し。後ろで編み上げです。
 前下がりボブの鬘。
 薔薇飾りにリボンと鎖、レースがふんだんのミニハット。
 眼帯着用。
 それでギターを持っています。
 クールで格好いい、完璧なゴスロリ×ロックのファッションです。
(いつものステージで格好だけ違うと思えばいい……役になりきるんだ、俺……!)
 衣装を着替えながら、海十は必死に自己暗示をかけています。
 それに対するフィンは、ゴシックファッションのダークプリンスです。
 黒と白が基調です。
 フリルタイ付白ブラウスに、ゴシック系黒ジャケット、黒パンツ、革靴。
 それに海十とおそろいのミニハットです。
 可憐にも妖しい魅力の海十に、金髪の闇の王子のようなフィンは絵に描いたようにとてもお似合いでした。
 海十はフィンのエスコートでステージ上に出ました。
 観客に一礼すると即座にギターをかき鳴らし始めます。
 何しろ、海十はインディーズバンドのボーカルとギター担当。
 こうした舞台はプロ並みに慣れているのです。
 演奏した曲はやはりロックで、インディーズバンドで何度も弾いた事のある曲です。軽快なアップテンポなのに、クールさの感じられる派手な曲。歌詞は逃げていく女性を追いかけるアグレッシブな男性の恋心です。多少エロチックな歌詞も混じるのですが、海十は気にせずあくまでクールに歌い上げます。
 その演奏に会場は釘付け。
 拍手をするものもいますが、息を飲んで海十を見つめている女性達も多くいます。
 それに対してフィンはジェラシーを感じていた……でしょうね。多分。
(海十は俺のもの……って教えてやらないと)
 そんなことを考えています。
 ひとしきりギターを弾くと、海十は足を高く振り上げます。
 絶対領域がライトを受けて眩しいほどです。
 それから、ターン! と床を踏みしめてギターの先端を観客に向けて突き出します。
 ギター銃で観客のハートを撃ち抜く! という決めポーズ。
 ゴスロリの美少女の完璧な見せ場です。伊逹にインディーズバンドを三足わらじでこなしていません。
 それが決まった瞬間、会場からは嵐のような拍手が寄せられました。
 振り返ると、隣でフィンが、確実にハートを撃ち抜かれたとばかりに胸を押さえて屈んでいます。
 演技もあったのでしょうが、半分以上は本気でしょう。
(海十には、いつだって、ハートを射抜かれっぱなしだよ……。いや、こんな表現はライターとしてはダサイだろうか? でも、本当にそうなんだ)
 そのままフィンは、海十の前に跪きます。
 その手を取り、王子様の優雅な仕草で海十の手の甲にキス。
 海十は黙ってそのキスを受け取っています。
(ここはステージなんだ。役になりきらなきゃ)
 そこまでは、海十は打ち合わせで聞いていたのでした。
 その直後、フィンは海十の体を両手で抱き上げてしまいました。
 海十の片方しか見えていない目が点になります。
 手の甲にキスまでは、聞いていました。それぐらいなら、ステージ上なら許せると思っていたのです。まさか口にキスとかそれ以上の事とかを、する訳ではないんですから。
 しかし、今、確実に、自分はフィンにお姫様だっこで抱え上げられているのです。
「…………」
 咄嗟に暴れる事も出来ない海十。
 フィンはそのまま走り出します。
 女子達のキャー! キャー! という黄色い悲鳴を背中に、そのまま海十を攫って、舞台の袖に走って行ってしまったのです。
 司会は困惑した様子。司会も打ち合わせは聞いていたんですが、そんな話はなかったのです。
 フィンはその場の思いつきで突発で強行してしまった模様です。
 会場からはどういう訳かアンコールの声。コンテストでアンコールなんて出来る訳がないんですが……。
 海十のバンドのステージでならあったかもしれませんね。
 しかし、肝心の海十は今はそれどころではありません。
 大勢の前から両手で抱え上げて退場なんて、知らなかったんですから。
「フィン! 聞いていない!」
 袖に入ってしまってから、顔を真っ赤にしてジタバタ暴れながら叫ぶ海十。フィンが離してくれないためにまだ彼の腕の中にいます。それでも抗議を続ける海十。
 王子様にさらわれてしまうなんて、お姫様じゃないんですから。恥ずかしいし、男としてのプライドが許せません。
「だって、海十が素敵だったから仕方ないよ。俺のだって、主張しておかないと」
 全く悪びれていない笑顔でフィンはそう言うのでした。
 フィンの方も、海十を誰かに取られてしまうのではと、嫉妬を感じていたのです。
 あんなクールで可愛くて、それなのにかっこいい海十は自分だけのものにしておきたい。でも、そうはいかないのなら、せめてさらうぐらいはしてしまいたい。--嫉妬と独占欲です。
「……今回だけだからな」
 自分だって嫉妬していたので、海十は許すしかありません。
 何よりも、フィンに愛されている事が嬉しいのです。こういう嫉妬って、愛情の裏返しなのですから。
(海十……大好きだよ)
 許してくれる海十がいとおしくて、フィンは見えない位置で海十の頬に軽くキスをしました。
 海十は表情は怒ってそっぽを向いているのですが、頬を赤らめて、本当は嬉しいのを我慢している様子。
 もうしばらく時間をかけてフィンがなだめれば、いつもの笑顔を見せてくれるのでしょうね。海十だっていつまでも、フィンに対して突っ張るなんて事が出来る訳がないのですから。
 二人はお互いにお互いへの愛情をいつだってためらわずに表現出来る、素敵な人達なんですから。
 いつも、いつでも、いつだってお互いへと純粋な愛を注ぐウィンクルムに幸いあれ!




依頼結果:大成功
MVP
名前:瑞樹
呼び名:みずきち
  名前:共夜
呼び名:きょーちゃん

 

メモリアルピンナップ


( イラストレーター: 越智さゆり  )


エピソード情報

マスター 森静流
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ EX
エピソードモード ビギナー
シンパシー 使用可
難易度 とても簡単
参加費 1,500ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 08月05日
出発日 08月12日 00:00
予定納品日 08月22日

参加者

会議室

  • [9]蒼崎 海十

    2016/08/11-23:47 

  • [8]蒼崎 海十

    2016/08/11-23:46 

  • [7]西園寺優純絆

    2016/08/11-13:45 

  • [6]西園寺優純絆

    2016/08/11-13:45 

    優純絆:

    ユズとカズちゃんなのだよ!
    よろしくお願いしますですの♪

  • [5]西園寺優純絆

    2016/08/11-13:45 

    優純絆:

    ユズとカズちゃんなのだよ!
    よろしくお願いしますですの♪

  • [4]瑞樹

    2016/08/11-07:43 

    瑞樹です。
    よろしくお願いします!

    割といい感じになったと思うけどなー

  • [3]蒼崎 海十

    2016/08/11-00:21 

  • [2]蒼崎 海十

    2016/08/11-00:21 

    蒼崎海十です。
    パートナーはフィン。
    皆様、よろしくお願いいたします!

    ……どうしてこうなった(ぼそ

  • [1]咲祈

    2016/08/09-10:16 

    咲祈だ。
    ……(なんとも言えない表情
    よろしく、ね。


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