
●雅な夜に
汗ばむ季節に差し掛かり、川岸では花火の用意が着々と進められている。
タブロス市街近くの川岸へと赴いていたあなたは一つの張り紙に目が止まる。
『花魁に扮して花火大会を雅に彩ろう』
と大きく書かれた張り紙。
一緒に歩いていたパートナーの精霊もその張り紙を見ると「ふむ」と一つ考える。
神人が花魁の格好をしたら……なんて。
張り紙には更にこう書いてある。
『花魁に扮していただいた方には花火観覧の特等席と美味しいお菓子を進呈します。
参加費は1組500Jr』
と。
その張り紙を見ている神人の瞳は憧れのような、そして花火大会をパートナーと、という想いが溢れている。
そんな様子の神人に精霊は「いくか?」と声を掛けると「はい!」と嬉しそうな声が返って来る。
そしてあなたたちは参加のために張り紙に書いてある受付場所に赴くと申し込みを済ませた。
申し込みの際に受付の者から一つだけ決まりがあることを告げられる。
「花魁の衣装を着ていただいた方には、花魁道中をしていただくことを約束していただいております」
その言葉を聞くと神人は恥ずかしそうに少し困った顔をして精霊を見上げる。
花魁道中、それはただ歩くだけではない、歩き方や仕草、履いている靴もいつもとは違う。
そんなことを考えると不安でしょうがない神人。
「一緒に参加されるパートナーの方にも隣で補助などをしていただきながら、ご一緒していただけますよ!」
そう言われ、パートナーの精霊の顔を見る。
神人の心内を察したのか精霊は一緒に歩くことを快諾する。
不安が消えた神人はその約束ごとを受け入れ、本番に挑むこととなった。
【できること】
神人は花魁の衣装に身を包み道中を精霊と行い特等席にて花火大会を楽しめます。
【時間帯と特等席について】
暗くなりかけた夕方に花魁道中、夜8時過ぎから花火大会。
特等席は個室と相室とございます。参加されている方々と交流(2組、3組、全体など)しながらの観覧も可能です。
ご希望をお書きください。
【お代】
衣装代とお菓子代で500Jrいただきます。
【衣装】
花魁道中をする際の神人の花魁衣装と精霊の衣装デザインや色の指定がございましたらお書きください。
記載が無い場合はこちらで決めさせていただきます。
【プラン記載必須】
花魁道中と花火観覧時にどのような会話や心情、行動など行ないたいことがございましたらご自由にお書きください。
【お菓子と飲み物】
◆お菓子
カキ氷(シロップやトッピングは自由)、水羊羹、栗饅頭、シャーベット(季節のフルーツ)、フルーツプティング
◆飲み物
紅茶(アイス/ホット)、緑茶(アイス/ホット)、抹茶(アイス/ホット)、コーヒー(アイス/ホット)
上記からお一人様、お菓子から1点と飲み物から1点選びくださいませ。
(神人と精霊合わせて合計4点になります)
【注意】
アドリブが入る場合がございます。ご注意ください。
不可な方はプランに×とお書きください。
草壁 楓です。ご閲覧誠にありがとうございます!
花魁って綺麗だなぁ~なんて考えていたら思いついたエピソード。
夏を感じつつ雅な夜はいかかでしょうか?
ご参加お待ちしております!
◆アクション・プラン
かのん(天藍)
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お菓子(天藍も同じ):水羊羹、抹茶/温 特等席:個室 こんなに豪奢な衣装を纏える機会は滅多にないですし、花火の特等席にも惹かれてお話受けてしまいましたけれど… 指先を包み込むようにしっかりと握られた手 はいの返事と共に微笑み真っ直ぐに前を見る …緊張しました 抹茶と水羊羹頂きながら大きく息をつく 膝、ですか? ごろりと転がる天藍に 私は構いませんけれど、天藍花火見えます? 返事に頬が染まる 膝枕中の天藍の手が上がりかのんの頬を撫でる 道中の思いを聞いて嬉しそうに頬を撫でる手を自分の手で包む 反対の手は天藍の目にかかりそうな前髪を避け頭を撫でる 天藍が傍にいてくれたので心強かったです 1人だったら足がすくんでしまっていたかも |
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【着物】 色は白基調、さし色は赤 裾はお引きずり、うなじは出すが肩は出さない 帯は前締め、無地のもの 黒に大柄な花模様の打掛け 髪はまとめて、つまみ細工を飾る 和傘 ちょっと本格的に大人っぽくしてもらいました ディエゴさん驚いてくれるといいな… 【花魁道中】 小耳に挟んだのですが、これって女優がレッドカーペットの上を歩くような… 自らの格式高さを示すようなものらしいです 上品に静かに精霊と並んで歩きます 【花火:個室】 相好を少し崩してくつろぎます シャーベットと紅茶(アイス)をお願いします 道中はつんとしてた訳じゃあなくて、はしゃぎたい気持ちはありましたが ディエゴさんに相応しい、大人の女性に近づけるかと思って |
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●花魁道中 この服装、とても素敵なんですけど……慣れません。 差し出された翡翠さんの手を素直に取り、1歩ずつ転ばないよう踏み出す。 言葉一つで何かを察する。 そんな事もありました。 ……ですが、今日は、過去の事とは分けて考えています。 それに本当の花魁って、和歌、三味線、書道、茶道……。 様々な分野に触れ、それを修得してるそうですし。 本当は中々お目にかかれない存在だなぁと思います。 悔しいですけど、才色兼備。 私にはとても真似出来ませんから。 ●花火大会 シャーベットと温かい紅茶を注文、時々口をつけて鑑賞。 この花火を見ながら、また、私達は夏を迎えますね。 あの!出来ればもう少しこのままで。 花火が……終わるまで……。 |
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☆月と夜桜をイメージ 紅桜の髪飾り ☆レモンかき氷 ホットミルクティー ☆心情 「花魁はテレビで見た事はある 一度はこんな着物着てみたいって思ってたのがまさか叶うなんてなぁ…」 ☆花魁道中 ・高下駄で転ばないよう気を付けオルクスの肩に手を置きながら歩く 「うん… 気を付けたいが転びそうでちょっと怖いかな…(苦笑 オルクありがとう、少し楽になったよ(微笑 (こうすると本当に軍人に守られてる花魁だなぁ…」 ☆花火 ・かき氷を食べながら見る 「あぁそうd… って、きゅっ急に何を言い出すんだっ!(頬真っ赤 まっまぁ褒められて嬉しいけどよ…(照俯く ……月夜桜大夫? ふふっ俺が大夫なんて恐れ多いがありがと(微笑 あー…うん、考えとく…(遠目」 |
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青系打掛、まな板帯、横兵庫 褒められ複雑そうに微笑む ありがとうございます、エヴァンの男衆姿も様になっておりますわ けれど、わたくしが花魁でエヴァンが男衆ならば… 言いかけ …後にいたしましょう、ショータイム、ですわ 堂のいった外八文字 気後れせず前を見据え 無事に終わって安心いたしましたわ …覚えていらっしゃったの? 本来、花魁道中とは客を迎えに行く道行の事ですのよ そしてこの豪奢な衣装は、花魁にとってひと夜限りの花嫁衣裳、という訳ですわ 精霊の言葉に許婚の件が浮かび胸が痛む (扮装上も現実も結ばれぬ運命とは、皮肉なものですわね そっと精霊に凭れ 許婚の件を知らない筈の彼の言葉に喜びと憂いが綯交ぜ 潤む視界に花火が滲む |
●艶やかな花魁達
陽が傾き始めた頃、開始の合図の太鼓の音が鳴り響く。
心臓に響く音と共に花魁道中が始まるのだ。
「この服装、とても素敵なんですけど……慣れません」
七草・シエテ・イルゴはそう言いながら自身が着ている花魁衣装を見る。
打掛けは少し透ける素材を使用した黒を基調に紫色のスカエボラが咲き誇る。
襟、袖、裾を見るとスカエボラと同じ色の紫、そして前に結んだ帯は白く星空をイメージした銀色の刺繍が施されている。
髪を伊達兵庫に結い上げ、中央に銀色の櫛を2枚、つまみ細工の白と紫の簪を挿し初々しさが漂う花魁。
唇には少し青みのあるピンクの紅、アイラインにはピンク色のアイラインを目尻から跳ね上げている。
「洋服と着物じゃあ、動き回れる範囲が違うからね、無理もないよ」
言いながら手を差し出したのは彼女の精霊の翡翠・フェイツィ。
シエテは花魁の格好をしているので靴も高下駄を履いている。
そのまま歩くのではなく、係員に教わった外八文字の歩き方である。
「俺の手をお取り下さい、花魁様?」
翡翠はその場に馴染むようにと男衆になるような紺色の着物を着ていた。
差し出された手にそっとシエテは自分の手に重ねると歩み出した。
「花魁……さながら大人の世界を彷彿とさせるよね」
翡翠のその言葉が耳に入ると察したようにシエテは歩みを止めてしまうと彼を見る。
「そんな事もありました……ですが、今日は、過去の事とは分けて考えています」
再び外八文字に歩みを進めるシエテはスッと前を見るとそのまま口を開く。
「それに本当の花魁って、和歌、三味線、書道、茶道……様々な分野に触れ、それを修得してるそうですし」
シャランと簪を鳴らしながら歩む。
「本当は中々お目にかかれない存在だなぁと思います」
「芸は身を助ける、だったね……だとしたら、シエの芸もそれなりの」
「悔しいですけど」
シエテをみて翡翠は「そんなことはない」と言うように口元に微笑を浮かべたが、シエテに遮られるように口を閉ざす。
首を横に少し振り、またシャランと簪が鳴る。
「才色兼備。私にはとても真似出来ませんから」
少し寂しそうな表情を浮かべたシエテはそのまま前を見ながら花魁道中を続けた。
次に現れたのはクロス。
月と夜桜をイメージした花魁衣装で、足元は黒、徐々に襟元までの青色へと変化し肩から胸にかけて月が輝く。
桜舞う艶やかな衣装には前に垂れた桜色の帯があり、そこにも桜吹雪が舞う。
高下駄は濃い桜をイメージした色。
青い髪は文金高島田に結い上げると金色の3枚の櫛を中央に、左右対称的に耳かき型の簪を10本挿す。
紅桜を模ったつまみ細工の簪を耳上の髪に挿すと歩くたびにキラキラ揺れ、後頭部には桜舞う絹製のリボンも同時に揺れている。
化粧は赤いラインを目尻から跳ね上げ、眉もキリリとしている。
桜色の紅は艶やかだ。
(花魁はテレビで見た事はある……一度はこんな着物着てみたいって思ってたのがまさか叶うなんてなぁ……)
クロスは今自分が思い描いていた花魁になれたことに喜んでいる。
クロスを笑顔と少しの驚きを見せながら精霊のオルクスも凝視していた。
(絶対に他の男共が黙ってねぇな……こりゃいつも通り軍人としての任務で考えねぇといけなさそうだ)
その美しさにオルクスは身を引き締める思いでいる。
「クー、大丈夫か?」
歩きだすのを少し戸惑っていることに気付いたオルクス。
彼は宛ら大正時代の黒い軍服姿に胸元には金色装飾品を付けている。
マントを棚引かせ、腰には模造刀を帯刀している。
「うん……」
高下駄を見つつやはり不安を抱えていたクロス。
「慣れない高下駄で転ばないよう気を付けろよ?」
「気を付けたいが転びそうでちょっと怖いかな……」
苦笑を浮かべ思案するクロス。
「ほらオレの肩に手を置いて歩け、多少は歩きやすいだろ?」
隣へと並ぶようにオルクスは移動すると、その肩にそっと手を置くクロス。
「オルクありがとう、少し楽になったよ」
そのオルクスの肩から感じる体温、高下駄への不安は消えていく。
(こうすると本当に軍人に守られてる花魁だなぁ……)
クロスは前を見据えて内八文字でしゃなりと歩き出す。
毅然とした立ち姿で現れたのはハロルド。
目の前には ディエゴ・ルナ・クィンテロが金色の瞳を見開き息を呑んでいた。
(なんというか…いつもと違うな、全く違う)
「ちょっと本格的に大人っぽくしてもらいました」
白を基調とし、さし色に赤。打掛けには黒に大柄な赤い牡丹の花模様。
裾をお引きずりにし、参加者の子供がそれを持っている。
うなじは出しているものの肩は出さずに上品で大人の雰囲気が漂っていた。
髪を伊達兵庫に結い上げると、衣装と同じ牡丹のつまみ細工を両耳の上へと飾ると少し動けばふわりと揺れた。
耳かき型簪を合計12本挿し、頭部には金色の櫛を3枚。
後頭部には赤のリボンも飾ってあった。
「雰囲気が……」
ディエゴの言葉に赤い紅を引いた唇が微笑し、赤いアイラインは控えめに上げその目は薄っすらと細められる。
(ディエゴさん驚いてくれるといいな……)
「あ、ああ、勿論綺麗だ」
ディエゴはというと、銀鼠色の墨染着物に黒の長羽織で全体の印象を締め、白檀の香る持扇を持っている。
ハロルドは目論見通りにディエゴを驚かせているのは確かだった。
歩く準備としてハロルドは朱色の和傘を開こうとしてた。
歩きながら持とうとしているようだがなかなか開かない。
ディエゴがスッと和傘をハロルドの手から取ると開く。
「あのな、こういうのは本来花魁側が持つものじゃあないんだよ」
いつもとは歩き方、服装においても違うのだ。
「……それに大変だろ、任せておけ」
ディエゴの口元には笑みが浮んでいた。
係員に出番だと告げられるとハロルドは背筋を伸ばし、内八文字を描き歩き出す。
(……ずいぶんと素直で静かだ……)
先ほどの和傘の件で素直にハロルドは「ありがとうございます」と応えたこと、そしていつもの元気な彼女はしなやかに八文字を刻みながら歩いている。
隣ではディエゴが和傘を広げて彼女が映えるようにと斜め後ろに差す。
「小耳に挟んだのですが、これって女優がレッドカーペットの上を歩くような……」
今自分がこの界隈では一番の女であると胸を張って。
「自らの格式高さを示すようなものらしいです」
よく知っているなとディエゴは頷くとハロルドが転ばぬようにと一緒にその格式高き道を歩んでいった。
「こんなに豪奢な衣装を纏える機会は滅多にないですし、花火の特等席にも惹かれてお話受けてしまいましたけれど……」
花魁衣装とメイクが終ったかのんは慣れないことから聊か不安な表情で天藍のもとへと戻ってくると道中を見る。
その視線を辿ってみると天藍は一つ息を吐いた。
(無理もない……)
その先には一夜限りの花魁道中を見ようと老若男女の人だかり。
かのんに視線を戻すとその美しさから心を奪われる。
髪はつぶし島田に結い上げ、12本の耳かき型簪に青く装飾された櫛を中央に3枚。
青い薔薇を模したつまみ細工の簪が両耳の上でシャララと揺れ、藍色のリボンも共に揺れている。
転ばぬようにと少しずつ天藍に近付くかのんはまだ不安を滲ませている。
その不安顔が憂いでいるようにみえる衣装……
それは藍色の薔薇を咲かせた白を基調とした内掛けに裾と襟元にはチラリと銀色が見える。
前に結ばれた帯には藍色の薔薇の花びらが舞い散っている。
「かのん、道中は俺が先導するから凜として前を見てゆっくり進むだけでいい」
かのんの前へと進み出ながら天藍はスッと手を差し伸べると
「傍にいるから安心して欲しい」
そう言って微笑む。
天藍はかのんの衣装の邪魔にならないようにと夕闇色の着流しと白い羽織を着用している。
その姿はかのんの良い人という出で立ち。
「はい」
指先を包み込むようにしっかりと天藍に握られた手はその優しさを感じている。
そしてかのんは前を見据えて今までの不安が消えたように優美に微笑む。
その唇にはブルーピンクの紅、アイラインには青みの効いたピンクが目尻から跳ね上げるように引かれていた。
掴んだ手に天藍が力を込めると同時にかのんの花魁道中が始まった。
外八文字に歩み進めると観客から歓声が上がった。
少し天藍は眉間に皺を寄せているが、かのんはそれを雰囲気で感じつつすっと前を見て歩み進めていった。
花魁道中最後の出番となったのはオンディーヌ・ブルースノウである。
「しかしなんとも豪華絢爛、といった衣装ですな……良くお似合いであります」
オンディーヌが姿を現すと精霊のエヴァンジェリスタ・ウォルフ感銘の声を上げた。
横兵庫に結い上げた水色の髪には耳かき型の12本の簪に頭部には銀色に櫛が3枚に白い細かな花のつまみ細工の簪が左側、右側には銀色のシャラとなる簪が挿してある。
後頭部には青いリボンが結んであり、背中の真ん中あたりまでの長さがある。
衣装はというと、青を基調とし白と銀色の雪の結晶が舞っている打掛けに、前で結んである帯には白を基調に青いダリアが咲き誇っていた。
裾と襟元にはチラリと銀色が見え、肩を出した衣装である。
オンディーヌは艶やかでありつつ少し妖艶さも感じさせる。
エヴァンジェリスタの褒め称える言葉に複雑な面持ちを出しながら微笑むオンディーヌ。
メイクは衣装とは反対的に赤い紅に赤いアイライン。目尻の跳ね上げは彼女の瞳を際立たせている。
「ありがとうございます、エヴァンの男衆姿も様になっておりますわ」
エヴァンジェリスタは銀色に青い火のような模様の入った男衆の着物を着ている。
「けれど、わたくしが花魁でエヴァンが男衆ならば……」
オンディーヌは話し始めたが、一つ微笑みをまた浮かべると途中で言いよどむ。
「……後にいたしましょう、ショータイム、ですわ」
いい掛けの言葉がエヴァンジェリスタは気になったものの、聞き返す間も無くオンディーヌが出発地点へと背筋を伸ばし立つ。
エヴァンジェリスタはその横に立つとオンディーヌに肩をかした。
堂のいった外八文字で歩みだす。
それは威風堂々としており気後れせず前を見据えた振る舞い。
観客から感銘の声と羨望の眼差しが注がれる。
オンディーヌの風格と観客の感嘆の声に、誇らしい気持ちになるエヴァンジェリスタがいた。
●花火の明かりの下で
無事に花魁道中を終え個室へと案内されたシエテと翡翠。
係員にシャーベットと温かい紅茶を注文すると、シエテはフーッと息を吐く。
「さすがに疲れました……」
しかし花魁の衣装が崩れないようにとそっと畳の上に腰を置く。
個室はそんなには広くはなく4畳程、翡翠もそっとシエテの隣へと腰を落ち着かせる。
今の花魁シエテは翡翠だけのもの。
花火大会が始まる少し前に係員が季節のシャーベット(マンゴー)2つと暖かい紅茶を運んでくれる。
シエテはそっと障子窓から外を眺める。
ヒュ~という音と共に花火が上がると大輪の花が空を彩る。
息抜きも出来、シャーベットを口に運ぶとヒンヤリとした甘さが口内に広がる。
「また、私達は夏を迎えますね」
そっと花火をみながら翡翠に言うと「あぁ」という声が返ってくる。
「綺麗……」
少し前のめり気味に窓を窺おうと体を動かすとシャランと簪が鳴る。
翡翠はその音に反応してシエテの横顔を見ると優美な横顔に少しドキリとさせられる。
そして彼は自然と彼女の肩を抱く。
少し経つと翡翠は自分が何も考えずに肩を抱いていたことに気付き、花魁の衣装では聊か無理な体勢なのではと離そうとする。
「あの!出来ればもう少しこのままで」
それに気付いたシエテは見上げながら翡翠に告げる。
少し切なげな表情に翡翠はまたドキリとしたが、シエテに微笑みを向けると頷き肩を抱く。
「花火が……終わるまで……」
二人を彩るように大輪の花はまだ咲き続けている。
係員に通された部屋では運ばれてきたレモンかき氷とホットミルクティーを楽しみながらクロスは花魁道中を終えた安堵感と共に憧れの衣装をまじまじと見ている。
オルクスも一緒にいちご練乳かき氷とホットコーヒーを楽しんでいる。
空には彩色が広がり夜空を煌々と照らしている。
互いのかき氷を口に運びあいをしつつオルクスがクロスに満面の笑みを浮かべる。
「はい、あーん……」
パクッとオルクスがレモン味を食べれば「うまいな」っとまた笑い合う2人。
これでは2人の熱で氷もすぐに溶けてしまう。
「おー、綺麗だなぁ」
飛び切り大きな花火が打ちあがるとオルクスはそう呟く。
「あぁそうd……」
花火に目をやるとオルクスがこちらを見ている事に気付く。
「花火も勿論だがオレが言ってるのはクーの事だぞ」
顔を近づけながらオルクスは口角を上げ言うとクロスの頬は真っ赤に染まる。
「って、きゅっ急に何を言い出すんだっ!」
恥ずかしそうに両手を上げ振りながら彼女の顔は更に赤くなっていく。
「月と夜桜が凄く素敵だったぜ」
クロスの姿を目に焼き付けておこうというように微笑を浮べながらオルクスは彼女を見続ける。
「まっまぁ褒められて嬉しいけどよ……」
オルクスの視線から少し熱を感じてクロスは照れながら俯いた。
「名前付けるなら月夜桜(ツキヨザクラ)大夫って感じか……」
大夫という言葉にオルクスに視線を戻すと少しの驚きと共に彼を見る。
「……月夜桜大夫?」
クロスの衣装には夜桜舞う中月がそれを照らすかのような衣装。
「ふふっ俺が大夫なんて恐れ多いが、ありがと」
口に手を当てながら控えめに笑うと謝辞を述べた。
「クーの姿写メってディオに送るか」
ポケットから携帯電話を取り出しながらクロスのもう1人の精霊ディオスに送る準備をする。
「今度生で月夜桜大夫が見たいって返信来るぜ」
満面の笑みを浮かべつつ写真を撮りだすオルクスにクロスは、
「あー……うん、考えとく……」
遠い目をしながら、この衣装は綺麗だがちょっと疲れるんだぜ、という言葉を飲みこむ。
楽しく、笑い声が絶えない特等席の一幕だった。
「シャーベットとアイスの紅茶をお願いします」
「…俺は栗饅頭と暖かい緑茶を頼む」
特等席に通されて係員にそう注文すると、すぐに頼んだ物が運び込まれた。
もうこの空間には2人きりだと安堵しハロルドは肌蹴ないほどに着崩し始める。
「少々疲れました」
着崩し終わると、部屋の中に置いてあった肘掛に少し寄りかかる。
いつもの態度に戻ったハロルドを見て一寸呆気にとられるが、安堵の息も漏らすディエゴ。
少しでも楽になるようにとディエゴは着ていた黒の長羽織をハロルドの膝へと掛けてやる。
「ありがとうございます」
ディエゴの安心した様子にハロルドは察したのか花火が始まる前に口を開いた。
「道中はつんとしてた訳じゃあなくて、はしゃぎたい気持ちはありましたが……」
花魁の豪華な衣装に身を包み、子供のようにはしゃぎたい気持ちがもちろんあったこと、しかしディエゴの雰囲気に合わせると決めた今回は気持ちを抑えていた。
「ディエゴさんに相応しい、大人の女性に近づけるかと思って……」
ハロルドの言葉に目を大きく開くとディエゴは笑みを浮かべる。
「俺に相応しいように、か……気持ちは嬉しいけどな」
ハロルドに近付くと頭を数回軽くポンポンと叩く。
今のハロルドはディエゴしかいないことに安堵しつつ、いつもの笑顔を浮かべている。
「でもそうやって安心してくれてる姿の方が一番しっくりくるし……お前らしいよ」
ハロルドの顔を覗き込めば彼女の頬に微かな紅色がさしている事に気付く。
「……はは、流石に熱いだろそれ、扇いでやるよ」
ディエゴはそう言うと持っていた持扇を使い扇ぐ。
白檀の香り漂う風にハロルドは瞳を閉じる。
「エクレール……シャーベット溶けてしまうぞ」
マンゴー味のシャーベットが少し溶けかけてきた頃バンッと大きな音が当たりに轟いた。
「始まりましたね!」
少女のような笑顔を見せるとマンゴーシャーベットを口に入れる。
熱かった体にそのヒンヤリとした感触が染みる。
2人の笑みが絶えず、雅な香り漂う束の間の大人の時間を過ごした2人だった。
「……緊張しました」
運ばれてきた抹茶を飲み水羊羹を摘み大きなため息を付くかのん。
その横には同じく水羊羹を食べながらほっとした様子のかのんに微笑みを浮かべている天藍。
空が花火で彩り始めた頃、天藍はかのんを見ると彼女に話しかける。
「かのん、良ければ少し膝を貸してくれないか?」
「膝、ですか?」
唐突な天藍にかのんはきょとんと見るが、天藍はごろんと有無も聞かずに寝転がると膝枕が開始される。
「私は構いませんけれど、天藍花火見えます?」
「かのんのことも花火も見える特等席だな」
それはとても贅沢なことだというように彼の口元には笑みが浮んでいる。
一方かのんはその言葉に赤面する。
さらっとそんなことを言う天藍の様子がまた少し変わる。
「道中ずっとかのんのことを見つめる男共から隠したくて、足を速めたり抱き上げて」
すっと手を伸ばしかのんの頬へと手を添えると真剣な眼差しでそう告げる。
「そのまま人混みを抜けたくなるのを堪えるのが大変だった」
道中に一瞬天藍の雰囲気が変わった時があった……それはこの想いだったのだとかのんは察する。
頬を撫でている天藍の手にかのんは自分の手を重ねると、空いている右手で天藍の目に掛かりそうになっている前髪を避け頭を撫でる。
「天藍が傍にいてくれたので心強かったです」
天藍は心地が良いのか少し目を細める。
「1人だったら足がすくんでしまっていたかも」
クスっと笑うと天藍を愛おしい目で見つめるかのん。
そんなかのんを見ると頭を梳いていた手をそっと取り指先にキスをする天藍。
「あっ」
「今日もかのんは綺麗だ」
2人の穏やかな時がこれからもずっと続くことだろう。
個室の特等席には緑茶のアイスと水羊羹がそれぞれ2つずつ運ばれてきた。
妖艶な花魁を演じていたオンディーヌは係員に一つ笑顔を向け、礼をいう。
「無事に終わって安心いたしましたわ」
外には観衆が集まり始め、緑茶に口を付けると花火が空を彩り始める。
暫し花火を2人で楽しんでいるとエヴァンジェリスタがオンディーヌに視線を向けて話す。
「先ほどの花魁と男衆であれば、とはどのような意味でありましたか」
「……覚えていらっしゃったの?」
オンディーヌは口に運ぼうとしていた水羊羹を皿に戻すと微笑みを微かに浮べる。
「本来、花魁道中とは客を迎えに行く道行の事ですのよ」
その応えに納得するようにエヴァンジェリスタは数回頷く。
「なるほど、花魁道中とはそういうものでしたか……」
関心したようにしている彼に更に続けて花魁について話し出す。
「そしてこの豪奢な衣装は、花魁にとってひと夜限りの花嫁衣裳、という訳ですわ」
エヴァンジェリスタの顔に少し不満気味な色が見えてくる。
「貴女が花魁ではなくホッとしております……他の男の元へ嫁ぎ行く手助けするなど、とても平静ではいられませんな」
苦笑しつつ胸の辺りを少し強く掴むとまた面白くないであります、と笑う。
彼の言葉にオンディーヌは許婚の件が浮かび胸が痛むと顔を背けつつも彼に凭れ掛かる。
勝手に決められたテイルスの許婚……この心にある想いをエヴァンジェリスタに伝えることは――
(扮装上も現実も結ばれぬ運命とは、皮肉なものですわね)
少しの憂いを帯びている表情をしているオンディーヌをエヴァンジェリスタは抱き締める。
夜空には大きな大輪の花が咲いている。
「……もしそうであったとしても、誰にも渡しはしません……決して」
男衆と花魁が結ばれぬ運命であることを察したエヴァンジェリスタは強い語尾と共に腕に力を込める。
花火の音で掻き消えそうなその呟きを聞きつつ、オンディーヌは花火を見上げる。
滲む景色に、エヴァンジェリスタの体温を感じる体。
許婚のことを知るはずもない彼の言葉に喜びと憂いが綯い交ざるのを感じる。
彼もまた『時雨の愛唄』でのデート以降、初めて湧いた感情に少し戸惑いつつも彼女を抱き締め続けた。
名前:かのん 呼び名:かのん |
名前:天藍 呼び名:天藍 |
名前:オンディーヌ・ブルースノウ 呼び名:貴女、ディーナ |
名前:エヴァンジェリスタ・ウォルフ 呼び名:エヴァン |
エピソード情報 |
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---|---|
マスター | 草壁楓 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | ロマンス |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 07月10日 |
出発日 | 07月16日 00:00 |
予定納品日 | 07月26日 |
2016/07/15-21:54
失礼いたします、オンディーヌと申しますわ
パートナーのエヴァンジェリスタと共に参加させていただきます
どうぞ宜しくお願い致します
少し早くありますが、先ほどプランは提出を完了いたしました
皆様にとって素晴らしく、忘れられぬ夜となりますよう、お祈りいたしております
2016/07/15-12:30
2016/07/14-22:02
2016/07/14-21:45
2016/07/13-21:21