君の肌に触れたくて(草壁楓 マスター) 【難易度:普通】

プロローグ

●熱い視線
 7月の梅雨時、今日は生憎の天気のため当初予定していたデートをあたなは精霊とのお家デートに変更した。
 一緒にお菓子を作ってみたり、今後の活動について話し合ったりとさまざまに過ごす。
 外も暗くなり、夕飯を楽しんだ後、今は映画鑑賞をしていた。
 梅雨の湿気と気だるい暑さのため、いつもよりは軽装な服に身を包んでいたあなた。
 たまになんだか精霊の視線を感じはするものの、気のせいだと安心してそのまま鑑賞を続ける。
 とても冷えたアイスティーを机に持ってきてくれた精霊に礼を言う。
 たまに他愛ない会話はしお菓子を摘んだりと、それはいつもと変わらない2人。
 映画鑑賞も終わりそろそろ、とあなたは立ち上がろうとすると突然精霊に抱き締められる。
 カランッとアイスティーの氷が鳴った。
 そしてそのまま押し倒された。
 あなたの背中は床に付き、彼の手があなたの耳の横にある。
 彼の瞳は熱を帯びていて、先程までの彼とはちょっと違う。
 愛おしい者を見るように、切ない表情をして。
 この状態は危ういと思いながら彼を見た。
 どうしようか……。
 あまり考えている猶予はない。
 彼の顔が少しずつ近付いてくる。
 
 さぁあなたはこれからどうしますか?
 彼の気持ちに答える?
 それとも……。

解説

押し倒されちゃった……どうしようか……。
 というお話です。

 突き飛ばしちゃってもいいですし、家から飛び出しちゃってもいいです。
 甘い雰囲気になってもいいですが、全年齢対象ですのでピーな感じはご遠慮ください。
 もし不適切なものがあった場合は採用できかねます。(ギリギリまでは採用予定です)

 プロローグは一例ですので、場所や状況などは自由で大丈夫です!

【できるなら書いていただきたいもの】
 ◆神人の心情や行動、言動
 ◆精霊の心情や行動、言動

 上記以外は自由ですのでプランにお書きください。

【注意】
 アドリブやアレンジが入る場合あります。ご容赦くださいませ!!

 一緒に夕食を食べたので300ジェールいただきます。

ゲームマスターより

 草壁 楓です。
ご閲覧ありがとうございます。

 とある曲に酔いしれていたら思いついたエピソードです。
皆さんが精霊に迫られたらどうするかなぁなんて、今から楽しみです。
ご参加お待ちしております!!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ミサ・フルール(エミリオ・シュトルツ)

  活動拠点にしている宿屋。
エミリオに話があるって言われて彼の部屋に行ったら、いきなり押し倒されちゃった。
血のように赤い瞳がどこか鈍く光っているように見えて危険な美しさにゾクリと身が震える。

エミリオ?
どうしたの・・・大丈夫?
そう聞いてみたけれど彼は微笑むばかりで。
するとエミリオのディアボロの尻尾が私の頬を撫でてきて、くすぐったさに思わず笑ってしまいます。
きゃ、エミリオ、くすぐったいよっ

(質問に)
そ、それは・・・。
私ね、エリオスさんの事、エミリオが言うような悪い人には見えないの、だから・・・っ!?
ううん、大丈夫だよ。
エミリオ・・・。
彼の力強い抱擁を受けながら、どこか壊れそうな彼をぎゅっと抱きしめた。


ニーナ・ルアルディ(グレン・カーヴェル)
  急に手を引かれたと思ったらどうしてこんな体勢に…
やっぱり寝心地がいいですよねこのソファ…じゃなくて!
ちちち近いですものすごく顔が近いですっ
どうしましょうこういう時ってやっぱり目を瞑った方がいいんでしょうか…
いやでも今回もやっぱり心の準備が…っ
グレン、ま、待って下さいっ!
ああやっぱり片手じゃ押し返せそうにないです…

額が当たった、だけ?
あ、どうしよう行っちゃいます…待って下さい!
拒絶して嫌われたりしてないでしょうか…
急いで手を伸ばせばどうにか手は掴めるはずっ

嫌ではないんです、つい驚いてしまっただけなんですっ
だから私…グレンにもっと撫でてもらったり、触れて欲しいです
心の準備…は、はい、頑張ります…


ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)
  えええぇ!?
頭の中が混乱してます
普段詰め寄るのは私からで彼からそういう行動をとられたことがないので、どう対応したものか!?

で、でもまあこんな事、滅ッッ多にない…突き放すのは勿体無い
抱き返して背中をポンポン叩きます
それにディエゴさんに甘えられるのは本当にうれしいですし、彼の体温や少し香ってくる硝煙の匂いで安心できるんです。

どれだけの時間が経ったでしょうか
彼はいきなり起き上がって真っ赤になって謝罪してきました。
ちょっと寂しい気持ちにさせられたのでお返しに、主にくすぐりの為に懐に入ってじゃれつきます。

お互い頭を冷やすために薄まったアイスティーを飲むときに私の本当気持ちを呟きます

私は、良いですからね。




水田 茉莉花(八月一日 智)
  …いくら今日が休みだからって
いい加減起きないとまずいんじゃないのかな?
もうすぐお昼だし、作ったご飯も冷め切っちゃうし
あたしだけ先に食べるわけにもいかないからなー…やっぱり起こしてくるか

ほづみさーん、いい加減起きてくださーい、ご飯冷めちゃいます…うっきゃあ!

押し倒し…じゃなくて、どっちかというと腰にタックル?
ああでもものすごく密着しているのにはかわりないしほづみさん幸せそうだしあたしはちょっと熱い…子ども並みの発熱体だし、ほづみさん!

え?…ちょっと待って、ずりずりと上にあがって来…
そこお腹じゃない、む、む、む…!

「き、キャアアアアアアア!!」(枕引っ付かんで頭乱打)

ほづみさん、もう、知りません!


鬼灯・千翡露(スマラグド)
  ▼心情

???
……ラグ君、私にそういう感情はなかったよね?
(理由がある筈だと冷静に観察し、顔が赤いのに気付く)


▼行動

(自分じゃない名前が出た事で半ば確信)
ラグ君、ちょっとごめんね(額に額をぺたり)
……!
凄い熱だ
そう言えば食事中も今も飲み物に殆ど手つけてないし
そりゃあ脱水症状にもなるよ
肩貸すからベッドまで歩ける?

(ベッドに運んでお粥作ったり水枕持ってきたり
薬を持ってきたり色々と世話を焼く)

……落ち着いた?
私の名前言える?

ねえ、うわ言を言っていたよ
……リュロって、誰かの名前?

そっか、ごめんね
もう何も聞かないから(苦笑し)

……『私』と間違えるくらいだし、女の子だろうな
大事な子なのかも
(あくまで冷静に)


●それはタックル

 水田 茉莉花は自宅のキッチンにいた。
 そろそろお昼時だとランチを用意し終ったところだ。
 もちろん同居している八月一日 智の分もそこにある。
「……いくら今日が休みだからって」
 智が忙しく朝方まで智の部屋から物音が聞こえていたため、仕事をしていたのは知ってはいるが、そろそろお昼。
「いい加減起きないとまずいんじゃないのかな?」
 時計を見ながら、このままではせっかく作ったランチも冷めてしまうと一つ息を吐くと、
「あたしだけ先に食べるわけにもいかないからなー」
 用意したランチを眺めつつ――
「……やっぱり起こしてくるか」
 エプロンを脱ぎ近くにあった椅子に掛けると智の部屋へと足向けた。

 その頃智はというと……
「えーと?」
 微睡みと布団の中で今の状況を整理しているところ。
「確か今朝にアプリのデバッグ終わって、無理くり今日休み入れて……
 それからシャワー浴びたら沈没したんだっけか?」
 独り言を呟きながらも今の自分がどのような状況なのかは理解した。
 部屋の外からは良い香りが漂ってくる。
 茉莉花が食事を用意してくれていることが容易にわかる。
 しかし朝方まで仕事をしていたためにどうも体がダル重という状況。
 布団の中でもぞもぞと『起きる』か、『寝る』かなんて考えてみる。
「ほづみさーん」
 ドアの外側から優しい声がする。
「いい加減起きてくださーい」
 と言いながら茉莉花がノックを済ませるとドアを開けて部屋の中へと入ってくる。
(うん、多分新婚さんだったらこんな感じにおれを起こしてくれるんだろうな……)
 ぐだぐだしつつなんだかにやけている智を一瞥すると、また一つ息を吐き、
「ご飯冷めちゃいます……」
 そう智に告げようとした時、彼の体が茉莉花に突進(?)をしてくる。
(そうこんな風にまりかって呼び捨てして、ぎゅーって抱っことかするんだろうなー)
「うっきゃあ!!」
 抱っこではない、それはタックル……。
 いきなりタックルをされた茉莉花は驚きと共に大きな声を上げ押し倒される。
 智は智で茉莉花を抱きかかえている、つもり。
(押し倒し……じゃなくて、どっちかというと腰にタックル?)
 そうそれ!
(ああでも、ものすごく密着しているのにはかわりないし)
 押し倒されているのは変わりない……茉莉花に智の香りがふわりと近付いてくる。
(うへー、あったかいー、やわらかいー、あたまぐりぐりしたいー)
 『したい』ではないしているよ。
(ほづみさん幸せそうだしあたしはちょっと熱い…子ども並みの発熱体だし)
 そう智の顔はとても幸せそうな夢心地の微笑み、押し倒されている茉莉花の顔は紅潮し全身に熱が回る。
「ほづみさん!」
 正気に戻ってもらおうと声を掛けるが智はまだ現実と夢の狭間をさ迷っている。
(え?……ちょっと待って、ずりずりと上にあがって来……)
 お腹部分にあった智の顔が徐々に茉莉花の体を這うように上へ上へと登ってくる。
(そこお腹じゃない、む、む、む……!)
 上へと登ってきた智、ある一定の箇所で止まる。
 もちろん柔らかな膨らみの箇所。
「さわったことないけど、まりかの胸ってこんな風にやらかいと思うー♪」
 手をワキワキとその膨らみに伸びるように伸ばす智の行動に、茉莉花は咄嗟に近くにあった枕に手を伸ばすと掴み取る。
「き、キャアアアアアアア!!」
 その悲鳴と同時に枕で何度も何度も頭を叩かれる智。
「へ?は?いだいいだいナニすんだよでかっちょ!」
 ここにきてやっと狭間から抜け出した智。
 瞬時に状況把握をすると、茉莉花の体からタックルした体とワキワキしていた手も離す。
 智の顔は引きつりつつ、青ざめる。
「いや、その!?」
 茉莉花は立ち上がると正反対の烈火の如くの怒りの表情になっている。
「みずたまり……」
 どうしていいかわからない智。
「ほづみさん、もう、知りません!」
 部屋のドアを思いっきり閉めると茉莉花が出て行く。
 これは、と智は、
「うゎ、ゴメン、マジすんません!」
 言いながらドアを勢いよく開けると茉莉花を追いかけた。
 まだ少しの茉莉花の体の柔らかさを覚えつつも。

●その名は?

「???」
 鬼灯・千翡露はスマラグドと同居している家の居間のソファーで押し倒されている。
 外は生憎の雨で外出を取り止め、さっきまでお茶したり今後について話したりと極普通だったはず。
 そんな2人におかしな空気は一切流れていなかった。
 ソファーに座って気になる映画がテレビでやっていた。並んで見ていた。
 スマラグドの頭がなんだかコテンと千翡露の肩に乗って、どうしたのかと彼の顔見た。
 その時突如だった……押し倒されたのは。
「好き、好きだ……ずっと好きだったんだ」
 スマラグドはそんなことを口に出している。
「……ラグ君、私にそういう感情はなかったよね?」
 この2人には恋愛感情はない。それは千翡露も、もちろん今思いもよらない行動をしているスマラグドだって。
「……でも、もう良いよ、嫌われても良い……あなたに選ばれなかった俺を慰めてよ」
 何か理由が、この状況になった理由があるはずだ、と千翡露はじっとスマラグドを冷静に観察し始める。
「ねえ、良いでしょう?」
 少しずつ千翡露の顔へとスマラグドの顔が近付いてくる。
 おかしい、こんなことを私にするはずがない、何かあるはずだよ!と更に観察を続ける。
「『リュロ』」
 聞いた事のない名を呼ばれ、それは確信へと変わる。
(今私じゃない人を……)
 よくよく観察をした千翡露は一つ気付く、彼の顔は明らかに赤い色をしていることを。
「ラグ君、ちょっとごめんね」
 彼女はそう言うと、自分の額とスマラグドの額をくっ付ける。
「……!」
 スマラグドの額は高温になっている。
 今考えるとスマラグドは明らかに水分補給を怠っていた。
 外は雨、そしてなかなかの猛暑……その中での水分補給を怠っていたことでどうやら脱水症状を起こしたようだった。
「そりゃあ脱水症状にもなるよ……肩貸すからベッドまで歩ける?」
 額をつけたことでスマラグドは少し正気に戻ったのか、一つ頷くと立ち上がる。
 千翡露に視線を送るとそこには『リュロ』の面影は無くなっている。
「僕は……」
「ホラ、肩に手回してね」
 千翡露はそう優しく告げると肩を貸してベッドまでどうにかスマラグドを運んだ。

 それから千翡露は献身的にスマラグドを看病する。
 お粥作り食べれそうなら食べさせ、水枕持ってきてはどうにか体を冷やす。
 気分も悪いだろうと食後に薬を飲ませたりもした。
 ベッドに運ばれてからも暫く朦朧とした意識でいたスマラグドだったが、千翡露の看病の甲斐もあり今は随分と落ち着いていた。
「……落ち着いた?」
 静かにスマラグドの顔を覗き込む。
「私の名前言える?」
「――『ちひろ』?」
 少し上ずった声ではあったが、今は『ちひろ』だと認識できていることに安堵する。
「……酷い気分だ」
 そう言いながら少し体を起こしたスマラグドに白湯を渡す千翡露。
「これからは水分ちゃんと摂らないとな……」
 一口白湯を飲むと自嘲気味に笑みを零した。
 そんな様子のスマラグドに更に安心した千翡露はさっき口に出していた『名』について気になり問い掛ける。
「ねえ、うわ言を言っていたよ」
「?」
 少しずつ白湯を口に運んでいた手が止まり、千翡露の顔をベッドの上から見上げる。
「……リュロって、誰かの名前?」
「っ!」
 その名に過剰に反応すると白湯の入っていたマグカップを乱暴に置き。
「教えるわけないじゃん、放っといて!」
 そう言い放った。
「そっか、ごめんね……もう何も聞かないから」
 少し残念そうな顔をした千翡露は苦笑を浮べながら、「水分取ってね」と付け加えると部屋から出る。
「……謝るのは僕の方なのに」
 静かに閉まるドアを見たままスマラグドはそう呟く。
 脱水症状で朦朧としてたとはいえ千翡露を押し倒してしまったことは微かに覚えている。
 しかも他の名を呼びながら。
「……『私』と間違えるくらいだし」
 静かに閉まったドアの外で千翡露もまた呟く。
「何で出来ないんだろう」
 部屋の中でスマラグドが素直に謝ることができない自分に拳を強く握る。
「大事な子なのかも」
 外で冷静にそう考えながらスマラグドの部屋から離れていった。
 2人の距離が縮まるのはまだまだこれから……。

●俺の宝物

 ミサ・フルールは拠点としている宿屋にいた。
 話があるとパートナーで婚約者でもある精霊エミリオ・シュトルツ の部屋の前にいた。
 軽くノックをするとエミリオの優しい声が奥から聞こえる。
「エミリオ?」
 中に入ると彼らしい微笑を浮かべて中に招き入れられる。
 ベッドの横を通り過ぎようとした時だった……そのままミサはエミリオに押し倒される。
 一瞬何が起きたか分からないとミサはキョトンとエミリオを見上げる。
 ミサの瞳には、血のように赤い瞳がどこか鈍く光っているように見えて危険な美しさをもつエミリオにゾクリと身震いを覚える。
「どうしたの……大丈夫?」
 急に押し倒されたというのにミサはエミリオの突然の行動に心配する。
 また彼に何かあったのではと。
 しかしエミリオは微笑んでいる。
(ああ、愛しい)
 少し驚いているミサを安心させるように微笑んでいるが、その心の中には激情にも似た愛情を滲ませる。
 自分だけの大事な大事な宝物。
(彼女は俺だけのものだ)
 そっとエミリオは自分のディアボロの尻尾を使い、優しくミサの頬を撫でる。
 その優しく宝物を扱う触り方にミサは擽ったそうに身を捩る。
「きゃ、エミリオ、くすぐったいよっ」
 そのミサの行動がエミリオの瞳には堪らないほどの愛情を増幅させていく。
「ミサ……かわいい」
 更に頬を撫でる尻尾。
 くすぐったさの中に時折熱を帯びた吐息がミサの口から漏れ出す。
 可愛らしいミサの笑顔と吐息にエミリオの顔にも微笑から愛おしい瞳の色が浮んでくる。
(誰にも渡さない、傷つけさせない)
 そんな可愛く愛しいミサを何者を渡すことなく、そして傷付けさせはしないとまた違う炎がエミリオの中に渦巻きだす。
(特にアイツにだけは――)
 そう、『アイツ』……ミサのもう一人の精霊であり、エミリオの父エリオス。
 差し違えてでもこの世から消したい相手、『アイツ』がもしミサに何かをしたら、と考えるだけで憎しみが増す。
 微笑みを浮かべていたエミリオの顔に憎しみの色が濃くなってくるのをミサは見逃さなかった。
「エミリオ?」
 心配そうに見つめてくるミサを見てエミリオはハッとするものの、一つの質問をする。
「……ねぇ、ミサ」
 その表情に微笑みはあまりなかった。
「最近アイツとよく出掛けるよね……どうして?」
 ずっと聞かなくてはと思っていたことだった。
 最近よくエリオスと出かけていく姿を見ていたエミリオ……その度に彼の心には心配心と憎悪が首を擡げる。
「そ、それは……」
 今のエミリオに何と言えば、と考えはするもののここは正直に感じていることを伝えるべきだとミサは判断する。
「私ね、エリオスさんの事、エミリオが言うような悪い人には見えないの、だから……っ!?」
「お前にアイツの何が分かる!!!」
 ミサが言い終わる前より早くエミリオは怒声を放っていた。
 そこには嫉妬、激情、エリオスに対する憎しみの全てが込められているかのようだ。
 驚いて目を丸くしつつ体を硬直させているミサを見て、エミリオは我に返るとそっとミサの頭を撫でる。
「ああ、いきなり怒鳴ってごめんね、驚いたよね、ごめんね」
 エミリオがそう苦笑を浮かべつつミサの優しく茶色に光る瞳を覗き込む。
「ううん、大丈夫だよ」
 いつもの優しいミサの微笑みに救われたように、エミリオも優しい笑みを返す。
「ミサはあの男の恐さを知らないんだ」
 ミサの頬に手をやるとそっと撫で、軽く頬にキスを落とす。
「ミサは俺が守るから」
 自分の肩に顔を埋めるエミリオの背中にそっと手を回す。
「だから俺から離れないで……」
 エミリオの腕がミサの肩に回り力強く抱き締めてくる。
「エミリオ……」
 ミサもそれに答えるようにエミリオに負けない力で抱き締め返した。
 2人がこのまま離れないように、永久に一緒に居られるようにと……。

●心の準備

 ニーナ・ルアルディは飲み物を入れなおそうとソファーから立ち上がろうとした。
 その隣に居たグレン・カーヴェルはその行動を制止するように、彼女の左手を引き寄せるとそのままソファーへと押し倒す。
(どうしてこんな体勢に……)
 先程掴んだ左手をニーナの頭上へ右手で押さえるとニーナの顔を覗き込む。
(こっからどうしてやるか……)
 グレンはニーナが簡単には逃れられなくなっているのを確認しつつ心の中でそう呟く。
「やっぱり寝心地がいいですよねこのソファ……じゃなくて!」
 どういう考えでグレンが今こうしているのかを考えつつも誤魔化そうとするが、この体勢はまぎれも無い現実。
(完全に服従されるよりも少し抵抗されるぐらいが一番いいよな)
 ニーナの困惑している表情を眺めるグレンの口元には微かな微笑が漏れる。
 そしてそのままニーナの顔へと少しずつ自分の顔を近付けると、
「ちちち近いです!ものすごく顔が近いですっ!!」
 更に困惑したような表情を浮かべているニーナ。
 グレンは何も言葉を発さない。
(どうしましょうこういう時ってやっぱり目を瞑った方がいいんでしょうか……)
 今ここで抵抗するか否か、ニーナに迷いの色が見え始める。
(いやでも今回もやっぱり心の準備が……っ)
 心の準備が出来ておらず、いきなりのこともあってなんて考えていると、グレンは空いていたもう片方の左手でニーナの右耳にそっと触れる。
 すると、ニーナの口から艶っぽい吐息が漏れる。
(耳に触れると面白いくらい反応するんだなこいつ、覚えておこう)
 このままではグレンに……しかしニーナは弱い耳を触れられるたび軽く身を捩らせる。
「グレン、ま、待って下さいっ!」
 そう言いながら軽い抵抗を試みるが、
(ああやっぱり片手じゃ押し返せそうにないです……)
 男性の力には敵うはずも無い、その抵抗は無意味になる。
 
 それから数分グレンはニーナの反応を見ながら楽しみつつ自分の額とニーナの額を軽く当てる。
「……さて、と」
「額が当たった、だけ?」
「完全に強張った反応してるし悪ふざけはここまでだな」
 押さえていたニーナの手を開放するとグレンは彼女から体を離す。
「俺のこと信用しすぎっていつか忠告しただろ?それを忘れたお前が悪い」
 額に軽くデコピンをしつつ笑みを浮かべているグレンにニーナは押し倒されたままの状態で呆然としている。
「薄着でくっついてくるわ見上げてくるわ……」
 男というものを理解してくれと言わんばかりの口調でニーナから瞳を逸らす。
「そんな強張った反応してなきゃそのまま食ってやるとこだ、嫌なら危機感持てよ?」
 食ってやる一歩手前で押し止めた自分を褒めたいもんだと、髪を掻き揚げつつソファーから立ち上がるグレン。
(あ、どうしよう行っちゃいます……)
 その場を立ち去ろうとするグレンを見て起き上がる。
「待って下さい!」
 拒絶して嫌われたりしてないでしょうか……と心に靄がかったものを感じたニーナは急いでグレンの手を掴む。
「嫌ではないんです、つい驚いてしまっただけなんですっ」
 少し顔を赤らめているニーナはグレンに嫌われたのではと早い口調で話す。
「だから私……グレンにもっと撫でてもらったり、触れて欲しいです」
 自分の率直な今の気持ちを伝え終わるとグレンは目線をニーナに向け少し見開くと笑みを零す。
 もっと触れて、彼の体温を感じたいとニーナも同じなのだと。
「あー、分かった分かった、それごときで嫌うかよ……焦んなくたってこれからずっと一緒にいるんだろ?」
 ニーナの気持ちを察したグレンは覗き込むようにニーナに顔を近付ける。
「この調子ならどうせまたすぐにまたチャンスは来るしな、その時までにきちんと心の準備しとけよな」
 次のチャンスこれが最後ではないのだ、まだまだこれから先も2人は一緒にいる。
「心の準備……は、はい、頑張ります……」
 力を込め拳を握るニーナにグレンは「力むことじゃないだろ」なんて笑い、彼女もそれに答えるように笑顔を浮かべた。
 次の時までにグレンを受け入れる準備をしておこうと心に決めながら。

●小悪魔の優しさ

 ドサッ!!
 そんな音が部屋の中に響いた。
(えええぇ!?)
 ハロルドの頭の中は混乱している。
 ディエゴ・ルナ・クィンテロに突如押し倒されたからだ。
「ディエゴ……さん?」
 普段詰め寄るのはハロルドでどう対応したものかと頭を巡らせる……ディエゴからこのような具体的な行動をあまりされたことがないからというのもある。
 またディエゴもディエゴで自分の現在の行動の『理由』を考える。
 彼の行動にはいつも必ず『理由』と『そこに至るまでの思考』があるのだが今はなぜこうしたのかと……。
 夏の暑さに薄着をしているハロルド、その肌に一筋の汗が流れた……それに気付いた時に彼は押し倒していた。
 いつもの理性が暑さのせいか吹っ飛んでしまったのか!!と内心感じつつ。
 押し倒したことで最初に思い浮かんだのは、ハロルドを怯えさせ傷つけてしまうのではないかと……。
 そんな感情をいだかれてしまうことがディエゴにとって最も怖いことだった。
 当のハロルドといえば――
(で、でもまあこんな事、滅ッッ多にない……)
 押し返し彼を押し返すのは勿体無いとディエゴを見上げている。
 しかしここで彼の理性が働く……気持ちを抑え彼女の肩に顔を埋めるとそっと抱き締めた。
 それに応えるように抱き返して背中をポンポンと数回叩くと、ディエゴのその恐怖や感情を沈め幾分か和らぎ彼の体から力が抜けていくのがわかる。
 その抱擁はディエゴに感情を抑えるためのものではなく安心感を齎すもの。
「ディエゴさんに甘えられるのは本当にうれしいです」
 ディエゴの背中をもう一度数回優しく叩きながらハロルドの優しい声音が耳元で聞こえてくる。
 ハロルドは彼の体温や少し香ってくる硝煙の匂いで安心できるのだとディエゴに告げる。
 その言葉にディエゴは顔を上げるとハロルドを見つめる。
 彼女は怖がっていないのだと、傷付いていないのだと確信する。
「エクレール」
 その表情はとても優しさに満ち溢れたもの、ディエゴには更なる安堵感を齎す表情である。

 それからどれぐらいたっただろう、見つめ合い、時にはもう一度抱き締めあいを繰り返し。
 ディエゴが素直に甘えてくれることにハロルドは幸福な想いで満たされている。
 少し落ち着いたのかディエゴはゆっくりとハロルドから体を離す。
 その体温を感じられなくなったことにハロルドは少し残念に思いながらもディエゴを見る。
「すまん……俺は」
 謝罪を述べるディエゴの顔を見ると真っ赤になっている。
 そんなところも可愛いなと思いながらハロルドは微笑する。
「少なくとも誠実でいたい、ずっと一緒にいる為に」
 顔を赤くしながらもそっとハロルドの手の上に自分の手を重ねる。
 ディエゴの言葉と体温からはハロルドを大事にしたいという想いが伝わってくる。
 しかしハロルドの心には少しの寂しさが滲んでいる。
 悪戯っ子のような笑みを浮かべるとディエゴの懐へと飛び込む。
「エクレール?」
 ディエゴの体を擽り、じゃれ付くハロルドの行動はディエゴを狼狽えさせる。
「ドキドキしちゃいました」
 それはいつもと変わらない2人。
「やめろ!!エクレール」
 今度は楽しげな声が部屋の中に響き渡る。
 一頻りディエゴとじゃれついたハロルドは頭を冷やすために、テーブルにある氷で薄まったアイスティーを口に含み飲み込むと呟く。
「私は、良いですからね」
 ディエゴの瞳が驚きの色を見せる。
「な!!??」
 赤いディエゴの顔は更に茹蛸状態になると、マキナの耳が熱くなっているのがわかり少し赤みを帯びているのがわかる。
 ハロルドの肌にアイスティーの入ったグラスから水滴が落ちると、またそれ見てディエゴは目を逸らす。
 そんなハロルドは小悪魔の笑みを浮かべていた。



依頼結果:大成功
MVP
名前:ニーナ・ルアルディ
呼び名:ニーナ
  名前:グレン・カーヴェル
呼び名:グレン

 

名前:ハロルド
呼び名:ハル、エクレール
  名前:ディエゴ・ルナ・クィンテロ
呼び名:ディエゴさん

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 草壁楓
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ロマンス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用可
難易度 普通
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 07月01日
出発日 07月08日 00:00
予定納品日 07月18日

参加者

会議室


PAGE TOP