色とりどりのジューン・ブライド(弓原 響 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

「そこの方、どうか私共を助けて下さいませんか?」

貴女と精霊が街を歩いていると、レンタルドレスのお店から慌てた様子の店員がやってきて、貴女に頭を下げました。
あまりにも困った店員の様子をただごとでないと判断した貴女たち二人は、一度店に入って詳しく話を聞いてみることにしました。

「新作ドレスの発表会に出るはずだったモデルと、急に連絡がつかなくなったのです」

この時期は結婚をするカップルが多く、そのために新しいドレスもたくさん作られます。
今日は六月最後の新作ドレス発表会で、店としても意気込んでいたのですが、そのドレスを着るはずだったモデルと連絡が取れなくなり、代わりのモデルを今から頼むことも出来ず、困り果てていたのです。

「そこで、店の前を通る貴女を見つけたのです。貴女は綺麗だし、体型も来る予定だったモデルと似ています。どうか、発表会に出て頂きたい。私たちを助けると思って!」

貴女と精霊は顔を見合わせます。
発表会はほんの数十分で、特に喋らなくていいし、その後は一日ドレスを無料で貸し出してもいいと言われました。

「せっかくだから、着てみたら?」

「でも……」

「きっと似合うよ」

精霊に言われ、貴女は渋々頷いたのでした。

解説

急にウエディングドレスの新作発表会に出ることになった貴女。
お話はその発表会の後から始まります。
二つのウエディングドレスから好きな方を選んで頂き、その選んだドレスによって話の展開が変わります。
ドレスは以下の二つです。

・ピンク色の可愛らしいドレス
その可愛らしいドレスを着た貴女を見て、取材に来た男性が一目惚れしてしまいます。
言い寄られても貴女は断るのですが、精霊は嫉妬をしてしまいます。
嫉妬した精霊と貴女はどう過ごすのか、ご自由にお考え下さい。

・白色の華やかなドレス
裾の長いドレスを着て歩きづらそうにしている貴女を、精霊が優しくエスコートしてくれます。
近くの海まで歩く際、精霊は時に表から、時に影から貴女が困らないように気遣ってくれます。
いつも通り、またはいつも以上に優しい精霊と貴女の間に、穏やかでちょっと特別な時間が訪れます。

どちらのドレスを着て、どんな時を過ごしたいのか、貴女の素敵なプランをお待ちしております。
なお、レンタルドレス店に来る前に町で食事をしたため、皆さま一律300ジェールを頂きます。

ゲームマスターより

もう六月も後半なのに……。
どうしてもウエディングドレスの話は書きたかったので書いてしまいました。
ウエディングドレスは女性の憧れですよね!
皆さまのご参加お待ちしております!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

出石 香奈(レムレース・エーヴィヒカイト)

  白のドレス

普段はライダースーツだから歩きづらい
それに裾を持って歩くなんてお姫様みたいで似合わないかも
堂々としたエスコートに驚きつつも素直に体を預ける
海まで散歩しましょうか
浜辺のウェディングっていうのも素敵

ヒールで歩きづらくて砂に足を取られてしまう
裾も汚れるしどうしようと思案していたら
レムの行動に驚き、でも嬉しくてしっかり捕まる

レムの告白には嬉しさ半分、戸惑い半分に答える
あたしもレムが好き…でもやっぱりまだ少し怖い
この恋もいつか終わってしまうんじゃないかと不安になる
だから信じさせてほしい
レムは今までの男とは違う
一生続く愛もあるんだって
こんな面倒な女でも本当にいいの?
こちらも同じく真剣に見つめ返す


アオイ・リクア(キミヒデ・カーマ)
  白の華やかなドレスを着ている自分に上機嫌。
改めて眺めると、裾の長さはどこまであるのか確かめる。

最初こそ一人で歩けるから大丈夫と気負うが、
あまりの歩き慣れなさに、履いているヒールごと転倒する。
見るに見かねたカーマから手を差し出され、渋々手を取って歩く。

しばらく歩いていると、カーマから話を切り出される。
見えてきた海を眺め、間延びしながら答えた。
式は挙げなくても、写真は撮ってもらうかも、と。

その理由に、オーガ達が引き起こした災害により、
両親と離れ離れになり、孤児となった自分は、
顔を覚えておらず、行方さえわからない事を話す。

いつかの両親に向けて、出来る事の一つに自分の成長した姿を納めたい。
そう呟いた。


ユラ(ハイネ・ハリス)
 

女としては、一度着てみたかったんだよねぇ
どう、似合う?
酷いなぁ(精霊の物言いには慣れてるので、笑って流す

正直……とても動き辛い
世の花嫁さんはこんなの着て過ごしてるのか
そうだねぇ、その時はちょっと考えようかな
(結婚かぁ…あんまり考えたことないけど、できるのかな
私もそうだけど、この人も

手を取りつつ、ふと思いつく)
ハイネさんと結婚したら、ちょっとお得だよね
だって新郎と神父さん、一人二役できるじゃない
ボロいけど教会もあるし、費用的に大助かりじゃない!?

でも私が結婚するときは神父役やってね
だって見えない神様に誓うより、ハイネさんに見張られてた方が
背筋が伸びるでしょ
え、うーん……じゃあやっぱり一人二役で


シェリー・アトリール(柳楽 源)
  白のドレス

ウェディングドレスは初めて着ましたが、綺麗なものですね
次に着る機会があるかもわかりませんし堪能しておきましょう

けど、歩きにくいですね。裾を踏んでしまいそう
いいんですか?それではお言葉に甘えて
素直に手を預けエスコートを受ける

ああ、そうだ
着たからには定番の事を聞かなくては
似合いますか?
ドレス摘まんで微笑み

ありがとうございます
至れり尽くせり、その言葉に尽きますね
お姫様にでもなった気分です
大抵の花嫁さんが幸せそうな笑顔な意味、私にも理解できたかもしれません
綺麗なドレスに傍にいてくれるパートナー
これで笑顔にならない要因はないですね

お互い?柳楽もいい事ありました?
なんでしょう。どういたしまして?


マユリ(ザシャ)
  ピンクドレス
ザシャくん、フォローありがとうございました
諦めてもらえたようで良かったです…
え…!? いや、そんな言い方はさすがに…
僕にはちょっと、ハードル高いです…

ザシャくん? どうしました?
なんだか浮かない顔をしている精霊の顔を覗く
あ…そう、ですか?
え、でも…
…ザシャ
ううん、やっぱりザシャくんで…!
しっくり来なかったので、呼び名を戻そうとして止められた
…慣れるように頑張り、ます……
(でも、なんでいきなり? …まあ、いっか)
そういえば、ザシャく、…ザシャ。聞き損なってたんですけど、
似合います? このドレス
…なんか、引っかかる言い方だなぁ…
でも、似合ってるなら良かったですっ



発表会も終わり、無事に仕事をこなしたアオイ・リクアに店の人々は手厚く礼を述べた。
そして、大した礼にはなりませんが、どうぞ今着ているドレスで特別な一日を過ごしてくださいとのことで、アオイは純白の華やかなドレスの裾を摘まんでひらひらと遊ばせる。

「このドレス、裾長いよねぇ。どこまであるんだろう」

長い裾を踏みそうになりながらもきゃっきゃと遊ぶのを止めないアオイを眺めながら、キミヒデ・カーマはぽつりと

「その……女性にこんなこと言っていいのか分からないけど、そのドレスは腕も剥き出しだし、膨張色の白だし……太って見えるの気にならない?」

と聞くと、アオイは別に不快に思うでもなく、

「んー? そう? それより、綺麗って言う感情が勝ってるから、そうでもないよ」

と答えた。
本人が気にしていないので、二人は海まで散歩をすることにした。

「ねえ、みんな見てるよ! やっぱりウエディングドレスで街を歩くって目立つんだね」

「そりゃあ、そうだね。ねえ、危なっかしいよ、せめて俺の手を取って」

「大丈夫! さっきより歩けるようになったから!」

もたつきながら歩くアオイの姿に気が気でないカーマだが、アオイはそんなことはお構いなくずんずんと歩き進めていく。
しかし、カーマの心配が現実のものとなり、アオイはヒールの高い靴でつまずき、そのまま盛大に転んでしまった。

「いたたー……」

「アオイ!! 大丈夫かい? もう、だから言わんこっちゃない……。ほら、もう嫌とは言わせないよ、俺の手を掴んで」

「……はぁい」

アオイは渋々カーマの手を取り、再び海へ向かうことにした。

「アオイ、そこにベンチがあるけど、ちょっと休んでいかない?」

「大丈夫! だってもうすぐそこが海だよ? 潮の匂いが濃くなった」

「けど……」

「ゴンちゃんが隣で支えてくれるから、全然疲れてないよ」

「……そういうのは、反則だよ」

照れくさそうにするカーマを見て、アオイはちょっと得意になって笑う。
そうしてカーマに手を引いてもらっているうちに、紺碧の海が姿を見せた。
穏やかな波が寄せては返すのを遠くに見ながら、カーマがさりげなく口を開く。

「アオイ、将来結婚したら……したらだよ? 挙式はあげるの?」

アオイは何故そんな突拍子もないことを、と考えてから、今自分がウエディングドレスを身に纏っているからかと思い直し、少し唸る。

「そうだな……式は挙げなくてもー、写真は撮るかな」

「やっぱり綺麗な姿はいつまでも取っておきたいもの?」

「うーうん、そうじゃないよ。いつか、両親に会えた時に、私の成長した姿を見せたいから」

「ご両親と、長く会ってないの?」

アオイが初めて口にした両親のことが、カーマはとても引っかかった。
初めて聞いたからと言うより、話すアオイの顔が切なく憂いを帯びていたからだろう。

「うん。私ね、両親とは幼い頃に離れ離れになってるんだ。オーガが引き起こした災害のせいでね。顔も覚えてないくらい前のことだよ。大人になってから必死で探したけど、今も行方は分かってない」

「……そう、なんだ」

どう答えるべきか分からず、カーマはおざなりな相槌を打った。
カーマの複雑な心情を知ってか知らずか、アオイはその後話題を変え、様々な話題を振った。
そのたびにカーマは適当に相槌を返したり、海を見て答えをはぐらかした。
しばらくしてアオイがもう一度だけ、両親に話を戻した。

「いつか、この綺麗な格好を見せてあげたいな」

カーマは先ほどとは違い明るい笑顔で言うアオイの姿を目に焼き付けてからそっと瞼を閉じ、

「その願い、叶うといいね」

と心からの思いを零した。


白の華やかなドレスを身に纏ったシェリー・アトリールは初めて着るウエディングドレスを興味深そうに見つめ、その場で動いて回り着心地も確かめた。

「やはりウエディングドレスと言うのは綺麗なものですね。けれど、動きづらい……」

「大丈夫? 良ければ俺の手を掴んで」

柳楽源が自然に手を差し出して、穏やかに微笑む。

「いいんですか? それじゃあ……」

シェリーは素直に差し出された手を握り、源に導かれるまま、近くの海へと歩いていくことにした。

「アトリールさん、足痛くないかな? 何かあれば、すぐに言ってね」

「ありがとうございます。……あ、そうだ」

「ん、どうしたの?」

何かを思い立ったシェリーは、手を繋いだまま、自身の姿が源に良く見えるように一歩下がる。

「月並みなことを聞くようですが、似合いますか?」

ドレスの裾を摘まんで笑顔で聞くシェリーを、源は頭の先から足の先まで眺める。

「それは勿論、似合っているよ。えーと、うん。すごく綺麗」

「本当にそう思ってます?」

「思ってるよ。服装一つでこうも印象が変わるんだなって驚いていたんだ」

「ありがとうございます」

シェリーは首を傾げて疑り深く見つめた後、ぱっと破顔した。
自分の気持ちが疑われていないことにほっとした源は、改めて綺麗だと伝えた。
そんな話をしているうちに、海へと着いた。

「アトリールさん、あそこに大きなベンチがあるよ。休みながら海を眺めるといい」

「あら、ありがとうございます」

まるで、本物のお姫様にするように、源は恭しくシェリーをベンチに座らせた。
シェリーは涼しい海風に髪を泳がせ、エスコートの上手な源へ満足げに微笑んだ。

「私、なんだかお姫様になったみたいです」

「そこまで喜んでもらえたなら何よりだよ」

「後、世の花嫁さんが幸せそうに笑う理由が分かった気がします」

「聞かせて?」

源が促すと、シェリー自身も花嫁になったように満面の笑みを浮かべた。

「だって、こんな風に綺麗なドレスに、傍には大切なパートナーがいる。笑顔にならない要因はないですよ」

「……そっか、その通りだね」

源も、シェリーの笑顔が伝染したように顔をほころばせる。
そうしてしばらくシェリーを見つめていた源だったが、ふっと海に視線を向ける。

「最初発表会って聞いた時は、正直ちょっと不安もあったけどさ。結果的にお互い収穫があって良かった」

「お互い? 私はこの綺麗なウエディングドレスが着られたことが収穫ですけど……。柳楽は何があったんです?」

「うん、ちょっと。アトリールさんのおかげでね」

答えにならない、思わせぶりな答えにシェリーは首を傾げたが、これ以上追及しても意味が無さそうだったので、源と同じように真っ青な海を見つめる。

「一応、言っておきますね。どういたしまして」

「ふふ。……まだ時間はある。もうちょっと、ここでゆっくりしていきませんか?」

シェリーは、返事を言わない代わりに、目を瞑って海風の感触を味わう。
源は美しい花嫁を隣に見ながら、日常よりも一層ゆるやかに流れる二人の時間を愛おしく思った。


ピンク色の可愛らしいドレスを選んだマユリは、発表会の後、一人の記者から猛烈なアプローチを受けていた。

「貴女は本当に美しい! ぜひ、僕とお食事に行ってくれませんか!?」

「す、すみません……! 僕は、その……!」

「初対面ですし、そんなにお時間頂きませんから! 少し、お互いを知る時間が欲しいのです!」

あまりにも強引な記者に困り果てたマユリだったが、気づけば隣にザシャがいて、マユリの手を引いた。

「ざ、ザシャくん……!」

「なんだ君は! 今彼女と話しているのは僕だぞ!」

「……こいつは、オレのだ!」

「……!!」

ザシャのあまりの剣幕に慄いた記者は、マユリに軽く会釈をして去って行った。
マユリはほっとしてザシャに微笑む。

「ザシャくん、ありがとうございました。諦めてもらえたようで何よりです……」

「別に……。もっと、ばしっと断れば良かっただろ」

「ばしっと、って?」

「オマエには興味ない失せろ、とか」

あまりに乱暴な物言いに、マユリは困惑してしまう。

「いや、そんな言い方はさすがに……僕にはハードル高いです……」

「なんで? わざわざ取材に来たヤツと街中でばったりーとかそうそうありはしないんだし。……まあ、いいけど……オレが追い払うから」

照れくさそうに言うザシャの、乱暴な言葉とは裏腹な優しさが伝わって、マユリはくすっと笑ってから礼を言った。
しかし、しばらくして眉を顰めだしたザシャの顔色を不審に思ったマユリがその顔を覗く。

「オマエさ……やっぱ、なんでもない」

「そう、ですか? でも……」

どう見てもなんでもない風ではないザシャが気にはなるけれど、あまり深追いしても悪いのかとマユリは戸惑ってしまう。
それを見かねたザシャが、はあっとわざとらしくため息を吐いてから言った。

「なんで俺の事、『くん』づけなんだよ」

「……え?」

「今更って思うだろうけど、その呼び方、ムカつくんだよ。子供扱いされてるみたいで。呼び捨てでいいよ」

「で、でも……」

「いいから」

強く言われると一層断りづらく感じてしまうマユリは、動揺に目をあちらこちらに泳がせてから、意を決したように大きく息を吸って

「ざ、ザシャ」

と小さな声で言った。
しかしすぐ次の瞬間には

「ううん、やっぱりザシャくんで!」

と戻してしまう。
ザシャは一瞬顔をほころばせたものの、すぐにさっきの難しい顔に戻して

「戻すな。今からずっと呼び捨てだ。人前でも」

と決定してしまった。
これにはマユリも焦って反論しようとしたが、ザシャの強い瞳に見つめられて、唸る。

「……慣れるように、頑張ります」

(それにしても、なんでいきなり? ……まあ、いっか)

マユリは心に湧いた疑問を引っ込めて、もう一つの質問をぶつけてみることにした。

「ザシャく……ザシャ。このドレス、似合ってますか?」

ザシャは、マユリのドレス姿をじっと見つめた。
何かを言いかけて、ぐっと飲み込んだ後、ふいっとそっぽを向いてしまう。

「白いのは、オマエには大人っぽかったから……それは似合ってる」

わあ嬉しい、と手放しで喜べる答えではなかったので、マユリは頬を膨らませた。

「なんか、引っかかる言い方だなぁ……」

「褒めてるだろ」

「でも、まあ、似合ってるなら良かったですっ」

にぱっと効果音がつきそうなほど、満面の笑み。
口ぶりは不器用だったが、結果としてマユリの笑顔を引き出せたザシャは、くしゃりと笑って乱暴にマユリの頭を撫で回したのだった。


ユラは、白く華やかなウエディングドレス着た自分を、改めて鏡で見ながら言った。

「綺麗なウエディングドレス……女としては、一度着て見たかったんだよねぇ」

そして、後ろで壁に寄りかかっているハイネ・ハリスに向き直った。

「どう? 似合う?」

「馬子にも衣裳だね、黙ってればそれなりだよ」

せっかく美しいウエディングドレスを着ても、ハイネの態度は相変わらずだった。
しかし、ユラはいつものことだと笑った。

「酷いなぁ」

「で、憧れの衣装を着て見た感想は?」

ユラは問われて、ドレスの裾を翻すようにターンしようとして……ドレスの重さに少し足踏みをして終わる。

「正直……とても動きづらい」

「だろうね」

「世の花嫁さんはこんなの着て過ごしてるのかぁ」

「まぁ、今回のは特に華やかさ重視だから、仕方ないだろう。これを参考に、本番は動きやすいのを選べばいい」

「そうだねぇ、その時はちょっと考えようかな」

そう答えては見たものの、ユラはあまり結婚というものを意識したこともなく、そもそも自分が結婚できるのか疑問でもあった。

(……この人も、結婚出来るのかな)

ユラがそんなことを考えながらまじまじとハイネを見ると、ハイネはユラを見た。

「何?」

「いやぁ、別に」

「とりあえず、近くにある海に行こう。……ああ、歩きづらいんだったか、ほら、僕の手を取って」

「ありがとう」

「転んで汚されたら面倒だからね」

ハイネが差し出した手を取り、ユラはゆっくりと歩き、海まで向かう。
その道すがら、ユラはあることを考えた。

「ハイネさんと結婚したら、ちょっとお得だよね」

「……は?」

ハイネが首を傾げるのも気にせず、ユラは続ける。

「だって新郎と神父さん、一人二役出来るじゃない。ボロいけど教会もあるし、費用的にも大助かりじゃない!?」

(またこの子は変なことを……)

ハイネはため息を吐いたが、いちいち否定をしても面倒だと考えてしばらく放置していた。
しかし、ユラがずっといかにハイネと結婚すると経済的かを説明してくるので、放置しておく方が厄介になると考えた。

「はぁ……。とりあえず、最初から金に困る様な結婚はやめておきなよ」

「うーん……」

聞いているのか分からない生返事をした後、ユラは見え始めた海に目を輝かせる。
ハイネは、ユラが海に気を取られて先ほどの意味の分からない話は終わったのかと思っていたが、ユラの中ではまだ現在進行形で話題は続いていたらしい。

「でも、私が結婚する時は神父役やってね」

「まだその話続いてるの? って言うか、神父役なの?」

ユラは力強く頷いた。

「だって見えない神様に誓うより、ハイネさんに見張られてた方が背筋が伸びるでしょ?」

それは、ユラが神様よりハイネを信頼している確かな証だった。
しかし、神父ということは愛を誓うことは出来ない訳で、ハイネは少し眉を顰めて言った。

「じゃあ、仮に僕が新郎になるってなったらどうするのさ」

「え? うーん……」

聞かれて、ユラはハイネを新郎とした場合のことを真剣に考えた。
そして、手を叩いてぱっと顔を明るくして言う。

「なら、一人二役で! 結局それが一番いいよね!」

ハイネはユラに聞こえないようゆるゆるとため息を吐いた。

「結局、そうなっちゃうんだ」

「? 駄目?」

「いや……」

二人の距離は、なかなか縮まらない。
しかし、お互いを心から信頼していると言う点においては、二人はすでにかけがえのない存在になれていたのだった。


出石香奈は、白いウエディングドレスを選び、無事発表会を終えた。

「うーん、それにしても動きづらい……。普段ライダースーツだからかしらね」

「けど、良く似合っている。去年の撮影の時、自分に白は似合わないと言っていたが、綺麗だ」

レムレース・エーヴィヒカイトのまっすぐな褒め言葉に、香奈は少し照れくさそうに笑う。

「そう? ありがとう」

「せっかく綺麗になったんだ。少し歩こう。……さぁ、手を」

レムレースに手を差し出され、香奈はおずおずとそれを握る。
香奈も驚いてしまうくらい、レムレースのエスコートは自然で堂々としている。

「近くに海があるのよね? そこに行きたいわ」

「よし、では行こうか」

香奈は、言葉にはしなかったけれど、レムレースのことを心から頼もしく思った。
街を通って行く時に受けた、女性たちの羨望の眼差しがくすぐったくもある。

「綺麗な海……どこまでも透き通って青くて、砂浜も、ほら真っ白よ」

「そうだな……香奈!!」

「きゃっ!!」

高いヒールの先が砂浜に埋もれて、香奈は足をもつれさせてしまう。
慌ててレムレースが支えたが、ドレスの裾が少し汚れてしまった。

「どうしよう、ドレスが……。これじゃあ、もう歩けないわね」

「なら、こうすればいい」

香奈の視界が急に高くなった。
レムレースが香奈を横抱きに抱えたのだ。

「れ、レム……!」

「しっかり掴まっててくれ」

しばらく目を丸くしていた香奈だったが、レムレースの優しさが嬉しくなり、しっかりと手を回して掴まったのだった。
レムレースは、嬉しそうに微笑む香奈のドレス姿に、二人の明るい未来を想像せずにはいられなかった。
香奈がとても愛おしくなり、レムレースは一世一代とも言える大きな決意をした。
大きくて平べったく角の取れた、椅子代わりになる岩の上にそっと香奈を座らせると、レムレースはしゃがみ込んで香奈の目を真剣に見つめながら打ち明けた。

「香奈、今まで言っていなかったことがある。どうか、今伝えさせてくれ」

「い、いいけど……」

真剣なレムレースの瞳に、香奈は心を引き締め、背筋を伸ばした。

「いつかの香奈の告白、本当は聞こえていたんだ」

香奈は内心驚いていたが、じっとレムレースの話を聞く。

「本当はすぐにでも答えたかったが、今まで辛い恋を経験してきたお前をまた傷つけてしまうのではないかと思うと、言えなかった」

レムレースは香奈の手を取る。

「香奈の信頼に足る男になれるよう、これからも努力する。だから言わせて欲しい……――」

あんなに強かった海風も、その一瞬は鳴りを潜めた。

「お前が好きだ、香奈」

香奈は、湧き上がる嬉しさと、どうしても現れる戸惑いを隠せなかった。

「あたしもレムが好き……でもやっぱりまだ少し怖い」

「香奈……」

「この恋もいつか終わるんじゃないかと不安になる。だから、信じさせて欲しい。レムは今までの男とは違う、一生続く恋もあるんだって」

香奈は、レムレースの手を握り返した。

「こんな面倒な女でも、本当にいいの?」

とても真剣な香奈の瞳に、レムレースも同じく真剣な瞳で応えた。

「ああ、もちろんだ。俺はそういう香奈が好きなんだから」

香奈は潤んだ瞳を誤魔化すように、レムレースの胸の中へ飛び込んだ。
レムレースはしっかりとその細い体を受け止め、時間の許す限り香奈を抱きしめ続けたのだった。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 弓原 響
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ロマンス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 06月22日
出発日 06月27日 00:00
予定納品日 07月07日

参加者

会議室

  • [5]アオイ・リクア

    2016/06/26-22:03 

    アオイ・リクアだよ!よろしくお願いしまーす。
    発表会はびっくりしちゃったけど、楽しみ!
    プランは出してますよー。お互い良い一日を!

  • シェリー・アトリールです。
    よろしくお願いします。

  • [3]マユリ

    2016/06/26-14:31 

    初めまして。マユリといいます。
    発表会は……はい。なんとかなるでしょう。
    よろしくお願いしますね

  • [2]出石 香奈

    2016/06/26-11:48 

  • [1]ユラ

    2016/06/26-10:06 


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