チャイルド・パニック(弓原 響 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ


あなたと精霊は、とある遊園地に来ていました。
アトラクションに乗ったり、広場で休んだり、楽しく午前を過ごし、また昼食を食べて遊びに行こう、と話していた矢先、子供の泣き声が耳に入ります。

「うあーん! うあーーん!!」

見たところ、子供は三~四歳くらいの男の子で、周りに保護者らしき人もいません。
放っておくことも出来ないので、あなたはその子に話しかけました。

「僕、そんなに泣いてどうしたの? お母さんとはぐれちゃったかな?」
「うっく、ひっく……、ま……ま……!」
「うん、ママとはぐれちゃったのね」

あなたがその子の頭を撫でようとした時、その子は勢いよくあなたに抱き着いてきました。

「ママ! ママー!」
「え!? わ、私のこと!?」

戸惑うあなたを助けるべくやってきた精霊に、男の子はさらに驚くべきことを言いました。

「パパぁ!」

突然の事に、あなたも精霊も驚いて顔を見合わせます。
どうやら、男の子はあなたたち二人を両親だと勘違いしてしまっているようです。
どうしたものか悩みましたが、このまま男の子を連れ回す訳にも行かず、あなたたちは男の子を連れて迷子センターへ行きました。


「わざわざありがとうございます。後はこちらで本当のご両親をお探ししますので、お任せください」
「分かりました、よろしくお願いします」

そしてあなたたちが離れようとすると、男の子はあなたの服の裾を引っ張って泣き出してしまいました。

「ママ、パパぁ! またどっか行っちゃうの? 嫌だ嫌だ!!」
「君、この人たちは君のご両親じゃないのよ?」
「そんなことないもん! ねえ、もうどこにも行かないで! 僕を一人にしないで!」

あんまりにも男の子が泣くものですから、このまま帰る訳にも行きません。
その時に、職員さんがこんな提案をしました。

「本当のご両親はこちらで探します。見つけたらすぐにお知らせしますので、それまでの間だけ、この子と遊んであげてはくれませんか?」

これ以上断るのも事態がややこしくなると判断したあなたは、その提案を了承して、ほんのひとときだけ、精霊と男の子と疑似家族になることになりました。

解説

迷子の男の子に両親だと勘違いされてしまったあなたと精霊。
男の子の本当の両親が見つかるまで、三人で園内を回ることになりました。

今回の目的は二つあります。
・男の子の両親が見つかったと言うアナウンスが流れるまで、本当の家族のように仲良くすること
・疑似家族を演じている時に、パートナーの新たな魅力を見つけること
です。

子供好きなパートナーなら男の子の信頼を得ることが出来るでしょうし、苦手な場合でも苦手なりに精一杯子供に接する姿には胸を打たれるものがあると思います。
また、あなたが男の子に優しくしたり、時に厳しく接する姿を見て、パートナーはあなたと本当の家族になった時のことをイメージしてくれるかもしれません。

園内での過ごし方は自由です。
たくさんアトラクションに乗って楽しんでも良し、おいしい昼食を三人で食べたり、広場で穏やかな時を過ごしたり……。
気を付けて頂きたいのは、男の子はお化け屋敷が大の苦手であり、また、身長が足りないので絶叫系のアトラクションには乗ることが出来ないと言う点です。
現在、男の子が乗れそうなアトラクションは
・メリーゴーランド
・コーヒーカップ
・観覧車
・ゴーカート
になっています。
この中から好きなアトラクションで楽しんで下さい。

頑張って男の子を楽しませたら、パートナーからキスのご褒美が待っている場合も!?

なお、遊園地の入場料として300jr頂きます。


ゲームマスターより

初めまして、弓原響と申します。
遊園地デートというのは憧れます。
それが例え今回のエピソードのようなハプニングがあったとしても……。

皆さんに楽しいひとときを過ごして頂けるよう、誠心誠意頑張りますので、どうぞよろしくお願いします!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

リチェルカーレ(シリウス)

  まだ小さいもの 不安なんだろうな
シリウスを見上げ 内緒のポーズ
今はこの子を安心させてあげましょう?
スキル:子ども好き使用

大丈夫よ 一緒にいるから泣かないで?
膝をついて視線を合わせる
ハンカチで涙を拭いて にっこり笑顔

泣き止んだら名前を聞き呼びかけ
お母さん 冷たいものが食べたいな
ソフトクリーム買いに行きましょう
シリウスが抱き上げるのを見て目を瞬く
男の子の顔と 柔らかい表情の彼に自分もぱっと笑顔
好きなソフトを買い 広場で食べる
頬や手についたら笑いながら拭い他愛ない会話
疲れていそうなら抱っこして子守歌

親がきたらほっと笑顔 良かったねと頭を撫でる

シリウスのお父さんぶりも見れて楽しかったわ
あなたは優しいお父さんになるわね 


ニーナ・ルアルディ(グレン・カーヴェル)
  さて、ご両親が見つかるまでしっかり私達が面倒を見てあげないとですっ!
またはぐれたりしないようにしっかり手を繋いでおきましょうねっ

どこで遊びましょうか…あの人だかりですか?
手品をやってるんですね…もっと近くで?
うーん、困ったことに人が多くて前に行けそうにないです…

肩車、私も昔やってもらったことがあります、
…何だか今のグレンすっごくお父さんっぽいですね!
お、お父さんじゃなくて恋人、ですね…

終わったらアイス食べに連れて行ってあげましょう。
グレンも食べますよね?

グレン、色々言いつつしっかりこの子のこと
しっかり見てくれてましたし、小さい子の相手得意だったんですね。
そういえば今日は一日優しい顔してたなぁ…


ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)
  ママ…ママですか
なんだか気恥ずかしいですが、本当のご両親が見つかるまで頑張ります!
と、いってもどうしたら良いんでしょう?
男の子に何に乗りたいか聞きますか
どうせだったら全部乗っていっぱい食べましょう
いつもと違う日ですし

なるほど
乗れないアトラクションもあるんでしたね…
じゃあ、乗れるアトラクションを全力で楽しみましょう

私からはゴーカートを推します!
二人乗りがあるなら、パパとママと一回ずつ乗ってどっちが速かったか勝負しましょうねー。

勝負が終わったらアイスでも食べましょう
三人で手をつなぎますか!はぐれないように
……もしも、本当に家庭を持つことになったら
こうやって楽しみを共有できるようになりたいですね


クロス(オルクス)
  ☆スキル 保育・子供好き

「(泣いてる子供の頭を撫でる
よしよし、一人にさせてごめんね?
ほらほら、お目目擦らないの(ハンカチで抑える
これじゃ泣き虫うさちゃんになっちゃうかな(クス
ふふっ泣き止んだね、偉い偉い(ぽふぽふ」

☆ゴーカート
「パパと勝負、負けちゃダメよ?
ママが応援するから頑張ってね(目線同じで微笑みながら頭撫でる」
・勝ったらうんと褒める

☆観覧車
「ふふっ怖くないなんて流石ね(微笑
えぇ勿論、あなたが楽しいとママ達は嬉しいのよ(優しく頬に手を添え
さぁ少しお休みなさい、疲れたでしょう?
大丈夫、私達は此処にいるから…(抱っこし背中をぽんぽん
そうだな…
オルクって絶対良いパパになるな
有難う…(微笑額合わせ」


桜倉 歌菜(月成 羽純)
  ママって呼ばれ、ほわわんと幸せ気分
羽純くんと夫婦みたいで…
男の子もとっても可愛いし…この不思議な縁を楽しまないと損だよね!
ゴーカートに乗らない?
真ん中に男の子、羽純くんがハンドルを握ってくれて、私がナビ役です
風を切って気持ち良い♪
男の子が身を乗り出そうとしたら、優しく諭します
危ないという事、怪我しちゃったらママもパパも悲しい事を説明して、理解して貰いたいのです
分かったと頷いてくれて、気持ちが伝わったら、ぎゅっと抱き締めて褒めます
良い子だね♪

別れの時は寂しい気持ちが込み上げるけど
本当のパパとママが見つかってよかったね
またね!と笑顔で別れます

な、泣いてないよ
寂しいけど…これが永遠のお別れじゃないし



「うあーん! ママぁ! パパぁ! 行っちゃやだぁ!」

リチェルカーレの服の裾を掴みながら泣き喚く男の子に、リチェルカーレとシリウスは顔を見合わせる。
シリウスが戸惑っているのを感じたリチェルカーレは、人差し指をぴっと唇に当てて、小声で言った。

「今は、この子を安心させてあげましょう?」

シリウスはやれやれと諦めたような顔をしてから、男の子のふんわりした髪を不器用にくしゃりと撫でた。
男の子はふとシリウスの顔を見るために顔を上げる。
目線が合ったシリウスは微かな笑みを浮かべていた。

「ごめんね、どこにも行かないわ。大丈夫、一緒にいるから泣かないで?」

男の子が視線をずらすと、リチェルカーレが膝を折り、視線を合わせてからハンカチで優しく涙を拭ってくれている。
綺麗な笑みで自分を慰めてくれるリチェルカーレに、男の子は心から安堵を覚えた。
そうして二人に慰められているうちに、男の子の目からはすっかり涙が消えていた。

「ねぇ? お母さん、冷たいものが食べたいな。一緒に食べましょう?」
「うん! 食べる!」
「……なら、行くか」

すると、シリウスがひょいっと男の子を抱え上げた。
思わぬ行動に、リチェルカーレは目を見開いた。

「あはは! パパすごーい! 高ーい!」
「こら、あんまりはしゃぐと落ちるぞ」

楽しそうな男の子と、優しく柔らかな表情のシリウス。
幸せな光景に、リチェルカーレは自然と顔が明るくなって、二人を誘うように一歩前に出て、

「早く早く!」

と手招いた。
シリウスはきゃっきゃと笑う男の子にこう言った。

「……遠くまで見えるだろう? あいつが迷子にならないよう、そこから見てやってくれ」
「うん! 僕、ママをずっと見てる!」
「も、もう! シリウスったら!」

リチェルカーレは顔を真っ赤にしながらも、とても楽しそうに笑う。
それを見て、シリウスもますます笑みを深くするのだった。

「はい、バニラソフトクリーム。頂きますしてから食べてね」
「頂きまーす!」

広場についてから、ソフトクリームを買ってリチェルカーレと男の子は食べながら休むことにした。
シリウスは放送を聞き逃さないよう少し離れたところから二人を優しく見守っている。

「ママのはピンク色だね!」
「私のは苺味のソフトクリームよ。食べる?」
「うん! 僕のもあげる!!」

リチェルカーレがソフトクリームを傾けると、男の子は大きく口を開けて頬張る。
再び顔を上げた男の子の口はソフトクリームがべったりついていた。
リチェルカーレはふふ、と笑いながらその口周りをそっと拭った。

「おいしい?」
「うん! ママもどうぞ!」
「あーん。……うん、おいしいわ、ありがとう」
「えへへ!」

男の子は食べかけのソフトクリームをしばらく見つめると、急に駆けだした。
そしてシリウスの前に来て、ソフトクリームを差し出す。

「パパも、食べていいよ!」
「……ありがとう。……うん、おいしいな。御馳走さま」

シリウスは男の子の頭をくしゃくしゃに撫でた。
微笑ましい様子に、リチェルカーレも絶えず笑みがこぼれる。
戻って来た男の子とおままごとをしたりしているうちに、男の子の瞼は重くなりだした。

「おいで、抱っこしてあげる」

素直にやって来た男の子を抱えたリチェルカーレは子守歌を歌った。
男の子は優しい音色と暖かい腕の中で、あっという間に眠りにつく。

『お知らせします、迷子の男の子の両親が見つかりました』

放送を聞いてシリウスがやってくると、リチェルカーレは少しだけ寂しそうな顔をした。
そして、眠ったままの男の子を両親に引き渡すと、リチェルカーレは笑顔で言った。

「シリウスのお父さんぶりは素敵だったわ。きっと優しいお父さんになるわね」
「……からかうな」

そして顔を見合わせ、笑いあう。
いつかそう遠くない未来に、本当の家族になる日を思い描きながら。


男の子は大きな声でクロスとオルクスを引き留めようと泣き続けた。
クロスはそんな男の子の頭を優しく撫でながら語り掛ける。

「よしよし、一人にさせてごめんね? ほらほら、おめめ擦らないの。これじゃ泣き虫うさちゃんになっちゃうかな?」

ふふ、と笑いながら言うクロスを、男の子はしゃくりあげながら見つめる。
すると、オルクスが男の子を高く抱え上げた。

「あー、泣くな泣くな。泣き過ぎると目が真っ赤なうさちゃんになっちまうぞ? いいのかなぁ? 泣き虫うさちゃんって言われても」
「い、嫌だ! 僕男の子だもん!」
「だよな? ならなんて呼ばれたい?」

オルクスは男の子の名前を聞いて、にっかりと笑った。
男の子は二人にあやされて、涙が引っ込んでいた。

「泣き止んだな、偉いぞ」
「ふふっ、偉い偉い」
「うんっ、僕、偉い!」
「男なら、大事な人を守れるくらい強くならないとな。んじゃあ、アトラクションにでも行こうか」

オルクスは男の子を下すと、大きな手で男の子の小さい手を握った。
そして、クロスと並んで、男の子の速度に合わせてゆっくりと歩き出した。

「よし、今からゴーカートでパパと勝負だ! 勝ったらなんでも言うことを聞いてやるぞ!」
「本当!? パパ、絶対約束だよ! なんでもだよ!」
「ああ、パパは嘘は吐かないさ」
「パパとの勝負、負けちゃダメよ? ママが応援するから頑張ってね」

クロスは男の子と同じ目線になるようにしゃがんで、頭を撫でた。
男の子は大好きなママの激励を受けて、意気揚々とゴーカートに向かった。

「ほらほら、早くしないとパパがゴールしちまうぞ?」
「うっ、か、勝つもん! まだこれからだもん!」
「頑張れー! まだそんなに差はないわよー!」

オルクスは男の子の少し前をとろとろと走った。
しかし、男の子はそれでもオルクスを抜かすことが出来ずに、もたもたとしている。
クロスは手を振って声を掛け続ける。

「きっと勝てるわ! だって、私の可愛い息子だもの!」
「ぼ、僕は……、ママの子……! 頑張る!!」
「あ、あれ? おっかしいな? 故障か? 全然動かないぞ!」

オルクスはゴールの少し手前でゴーカートをぴたりと止め、ああでもないこうでもないとハンドルを叩いてみる。
そうしてオルクスのゴーカートが身動きも取れなくなっている隙に、男の子はゆっくりと追い上げ、ゴールした。

「やったぁ!」
「あちゃー、負けちまったな」
「すごいじゃない! やっぱり貴方は私の自慢の息子よ!」
「えへへ! 僕ね、ママが応援してくれたから頑張ったんだよ!」
「まあ、本当に偉いわ。よしよし、いい子ねぇ」

男の子はクロスに褒められてとても誇らしそうに笑う。
その後、男の子はご褒美にオルクスの肩車をねだったので、オルクスはひょいと軽く男の子を肩車する。

「わぁ! 高いー! パパすごい!」
「はは、じゃあこのままもっと高いところに連れてってやるぞ!」
「本当!?」

そして、三人は観覧車へと向かった。

「結構高いな……怖くないか、大丈夫か?」
「うん! 全然平気! へっちゃらだよ!」
「お、そうか! さすが俺の子だな!」
「ふふ、怖くないなんてさすがね」

オルクスに頭を撫でられ、二人にいっぱい褒められて男の子は満足そうに笑う。

「お前が楽しいならパパもママも嬉しいからな」
「本当?」
「勿論、貴方が楽しいとママたちは嬉しいのよ」

クロスは優しく男の子のふにふにとした頬に手を添えた。

「さあ、少しおやすみなさい、疲れたでしょう? 大丈夫、私たちはここにいるから……」

クロスが抱っこして背中をぽんぽんとすると、男の子はすぐに寝てしまった。

「寝ちまったな」
「そうだな……オルクって、絶対いいパパになるな」
「何、クーも良いママさ」
「ありがとう」

二人は観覧車の中で額を合わせて微笑み合った。
降りた頃にちょうど両親が見つかったとアナウンスが入ったので、起こさないようそっと引き渡し、温かい気持ちを抱えて二人は帰路に着いたのだった。


「さて、じゃあお母さんたちと遊びに行きましょうか!」
「うん!」

ニーナ・ルアルディがふんわりと笑いかけると、男の子はもう機嫌が良くなったらしくにっこりと笑った。
ニーナは男の子の小さい手をきゅっと握り締める。

「もうはぐれないように、ね?」
「うん! ママもパパもいなくなっちゃダメだよ!」
「おいおい、迷子は俺らかよ」

グレン・カーヴェルは苦笑しているが、悪い気はしていないらしい。
そうして三人で歩いていると、広場に人だかりが出来ているのが目に入った。

「なんであんなに人がいるんでしょう?」
「どうやら手品をしているらしい」
「僕、見たい! 前に行こう!」
「うーん、でも……人が多すぎてこれ以上前に行くのは……」

ニーナがあちこちに視線をやってなんとか前に進めないか見ているけれど、右も左も人が多すぎた。
それを見かねたグレンが、急に男の子を肩車した。

「ここなら、肩車しても問題ないだろ。ほら、見えるか?」
「わーい! 高い高い! いっぱい見えるよ!」
「あ、こら! はしゃいで落っこちるなよ! ニーナかお前は!」
「そ、それどういう意味ですか!」

ニーナは頬を膨らませているが、男の子は目の前の手品に夢中になっていた。
しっかりと男の子を肩車しているグレンを見たニーナは、突然ふふ、と笑う。

「なんだか、今のグレンってすっごくお父さんっぽいですね!」
「そりゃどーも。……ただな、お前の中でも俺は父親か?」
「お、お父さんじゃなくて恋人、ですね……」
「良く出来ました」

手品も終わり、人が去って行くと、ニーナの目にアイスクリームの屋台が目に入った。

「アイスは好き?」
「大好き!」
「じゃあ食べましょう。グレンも食べますよね?」
「ああ」

三人はそれぞれ好きな味のアイスクリームを買い、柔らかな芝生の上で食べる事にした。

「おいしい?」
「おいしいよ! ママは?」
「とってもおいしいです。あら? ふふ、ほっぺにアイスがついちゃってる」

ニーナが持っていたハンカチで優しく頬を拭うと、男の子は満面の笑みを見せた。
グレンはその様子を微笑ましく見つめながら冷たいアイスを舐めた。

『お知らせします、迷子の男の子の両親が見つかりました』
「おっと、時間が来たようだ」

グレンが立ち上がると、ニーナは男の子を見て少し寂しそうな顔をした。
けれどすぐに明るい笑顔を取り戻し、男の子の手を引いた。

「男の子、行っちゃいましたね」
「ああ、両親がいっぱいいて驚いてたな」

男の子と別れた後、再び広場に戻った二人は少ししんみりしていた。
正確に言うとグレンはいつも通りであったが。

「でも、グレンは色々言いつつあの子のこと、しっかり見てくれましたし、案外小さい子の相手をするの得意だったんですね」
「おい、案外ってのは余計だ」
「ごめんなさい……」
「ふう……ちょっとこっち来い」

ニーナが近寄ると、グレンはニーナをすっぽりと胸に収めてしまった。
ニーナは顔を真っ赤にしたが、グレンは心から安心したように息を吐く。

「あ、あああの、グレン!?」
「今日一日お前を取られてたんだ。その分取り戻させろ」
「……はい、好きなだけどうぞ」

ニーナはもう恥ずかしがることなく、自分からグレンの背中に腕を回したのだった。


「さあ、泣き止んだならアトラクションに行きましょう。何に乗りたい?」

ハロルドが頭を撫でながら聞くと、男の子は考えた後笑顔で言った。

「あれ!」
「あれって、ジェットコースター?」
「うん! それ!」

けれど、男の子はまだ小さく、まだジェットコースターに乗ることは出来ない。
ハロルドが困っていると、ディエゴ・ルナ・クィンテロがしゃがんで男の子と目線を合わせてから言った。

「残念だが、あれはお前にはまだ無理だ」
「ええー!?」
「だが、後少し背が伸びたら乗れる。その時まで楽しみは取っておけ」
「……うん!」
「いい子だ」

そしてディエゴは男の子と手を繋いで、ハロルドと一緒にゴーカートに向かった。

「ママー! 頑張れー!」
「は、はい! あら、上手く進まない……!」

ゴーカートが二人乗りだったので、ハロルドとディエゴはそれぞれ男の子を交代で助手席に乗せ、どちらの運転の方が早いかと比べることにした。
ディエゴがスムーズにスピードを出してゴールしたのに比べ、ハロルドは少し苦戦してゴールした。
しかし、男の子は楽しそうに笑っている。

「ゴール! ママ頑張ったね!」
「ふふ、ありがとう。でも、パパより遅くなってしまいましたね」
「ふっ、それでもハルも頑張っていたぞ」

ゴールで待っていたディエゴが出迎えて、ハロルドは顔を赤くした。
すると、男の子は二人の手を掴んで、

「どっちも早かったよ! だから、引き分け!」

と言った。
二人は顔を見合わせて微笑み合った。

その後、広場で三人、アイスを食べた。
それぞれ違う味のアイスを買って、男の子に少し分ける。

「パパのチョコ味もおいしい!」
「私のもどうぞ」
「ママのブルーベリー味もおいしい!」
「良かったです」

ハロルドがにこにこして男の子を見ていると、急にディエゴが自分の持っていたチョコ味のアイスクリームをハロルドに差し出した。

「ハルも、一口どうだ?」
「私は……」
「いいから」

ハロルドは顔を少し赤くしながらも、アイスクリームを一口食べた。
仲睦まじい二人の様子を、男の子は満面の笑みで見ている。

「さて、アイスも食べ終わったし、次は観覧車に行こうか」
「うん!」
「それでは、手を繋ぎましょう」

ハロルドとディエゴは男の子を真ん中に挟み、それぞれ手を繋いで歩いた。

「すごーい! 下の人たちがちっちゃくなっちゃった!」
「結構いい眺めだな。ここからお前の家は見えるか?」

ディエゴに言われて、男の子は家を探した。
しばらくして、首を振る。

「分かんないや」
「まあ、結構高いところまで来たしな。よし、俺も一緒に探してやる」

ディエゴと男の子が窓に張り付いて一生懸命下を見つめているのを、ハロルドは優しく微笑みながら見守った。
それらしい屋根を見つけたのか、嬉しそうな二人に「良かったですね」と声を掛けるのを忘れずに。

「楽しかった! ねえ、今度はどこ行くー!?」
「そうですね、なら次は……」
『お知らせします、迷子の男の子の両親が見つかりました』

訪れた、別れの時。
ディエゴはハロルドの悲しそうな顔を見て、苦笑するしかなかった。

「寂しくなっちゃいましたね」
「まあ、仕方ないさ。元から期限は決まっていた」
「そうですけど……」

ハロルドは俯いていたが、やがて顔を上げ、ふんわりと笑った。

「いつか、私たちが本当の家庭を持つことになったら、こうやって楽しみを共有出来るようになりたいですね」

その言葉で、ディエゴはいつか来るかもしれないその未来を脳裏に思い描いて、自然と笑っていた。

「ああ、そうだな。きっと出来るさ、俺と、エクレールなら」

二人の心には、遠からず来るであろう未来が確かに根付いていた。


「ねぇ、ママ、パパ! どこ行くの?」

男の子が期待の目で見上げると、桜倉 歌菜はにっこり微笑んだ。

「そうねぇ、じゃあゴーカートに行きましょうか!」
「わーい! 早く行こう!」

飛び回って喜ぶ男の子の手を、月成 羽純が掴んだ。

「こら、あんまりはしゃぐとまた迷子になるぞ?」
「……はぁい、もう二人とも迷子になっちゃダメだもんね。僕がしっかりしなきゃ!」
「そうだ、いい子だな」

胸を張る男の子を優しく見つめる羽純を見て、歌菜の心は温かくなった。

「パパー! 風が気持ちいいねー!」
「そうだな、今日は空気が程よく冷えているしな」
「あ、見て二人とも! あっちでキャストさんが手を振ってくれてるわ!」

ゴーカートは補助席がついていたので、運転席に羽純、助手席に歌菜、補助席に男の子を乗せ、三人で楽しむことが出来た。
羽純が安全運転を心がけているおかげで危なげなく進み、歌菜も安心していたのだが、男の子は他のゴーカートに抜かされることにやきもきしだした。

「パパぁ、もっと早く出来ないの?」
「これが最高速度だ、今でも楽しいだろう?」
「でも、みんな僕たちを抜かしてるよ!」
「あ、こら! 危ないだろ!」

男の子がたまらず立ち上がり身を乗り出してしまうと、羽純は運転どころではなくなってしまう。
見かねた歌菜が男の子を座らせた。

「ダメよ、身を乗り出したら危ないわ」
「ママ……」
「ママもパパもね、貴方が怪我をしたりするのが一番嫌なの。そんなの、悲しいわ」
「……やだっ、ママたちが悲しくなるの嫌だ!」
「じゃあ、きちんと座っていられる?」
「うん! 僕、ママとパパのためなら座っていられるよ!」
「いい子だね。貴方は自慢の息子よ!」

歌菜が男の子をぎゅっと抱きしめると、男の子は幸せそうに笑う。
その様子を見ていた羽純が、一瞬だけ左手を離して歌菜の頭をぽんぽんと撫でた。

「羽純くん……」
「良いお母さん、だな」

歌菜も、幸せそうに微笑んだ。

ゴーカートから降りて、次は広場にでも行こうか、とまた手を繋ごうとした時、

『お知らせします、迷子の男の子の両親が見つかりました』

男の子はなんのことだか分からなかったが、歌菜と羽純は目を見合わせる。
歌菜は少し目を伏せた。

「あれ? ママとパパがいっぱい……」

男の子は驚きで目をきょろきょろとさせていたが、本当の両親が男の子を抱え上げ、歌菜と羽純に何度も頭を下げながら去って行く。
歌菜は手を振ってその様子を見届けていたが、やがてその姿が見えなくなるとはぁ、とため息を吐いた。
羽純はからかうように言う。

「歌菜、泣いてるのか?」
「な、泣いてないよ!」

思わず大きな声で否定した後、

「寂しいけど……これが永遠のお別れじゃないし」

と、呟いた。
羽純は先ほどのように歌菜の頭をぽんぽんと撫でてから、

「今日の歌菜は、本当に立派な母親だった」

と褒める。
歌菜が羽純の目を見ると、その目は歌菜への慈しみに満ちていた。

「正直、感心した。この分なら、将来は良い奥さんになれるな?」

羽純の、将来の自分たちを見据えたような発言に、歌菜は途端に顔を赤くした。
そして嬉しそうに、

「ありがとう。いつか、本当の家族になった時も、またここに来ようね!」

と羽純に花のように笑って言ったのだった。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 弓原 響
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ビギナー
シンパシー 使用可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 06月04日
出発日 06月09日 00:00
予定納品日 06月19日

参加者

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