プロローグ
6月に入り、数日が経ちました。
ウィンクルム達は何月であれ、毎月毎月忙しく過ごしています。
ですが、毎月毎月、愛を育むことも忘れません。
休日に、仕事終わりの時間に、ちょっとした日常の時間に、彼女達は交流して語り合い、お互いの距離を縮めていきます。
――つまり、毎月毎月、戦闘以外に『デート』をしているのです。
☆☆☆☆
「6月のデート……ですか?」
「はい! ウィンクルムさん達は6月にどんなデートをするのかなって、さんこうにしたいんです」
A.R.O.Aの受付を訪れた8歳くらいの少女は、瞳をキラキラと輝かせて受付職員の男性に言ってきます。背が小さいから、カウンターに両手を載せて背伸びをして、少し身を乗り出しています。
「ウィンクルムのみなさんはここで出会って、毎月デートして、恋人同士になったんですよね!」
「え、いや、あのね……」
少女は何か勘違いしているようだ、と受付職員は思いました。
「ここは出会い系のお店とか合コン支援の場所とかじゃないから……」
8歳の子供に出会い系だの合コンだの言って理解できるかどうかは知りませんが、とりあえずツッコまずにはいられません。
「わたし、好きな男の子がいるんです! 彼とデートして、コイビトになりたいんです! だから、さんこうに教えてほしいんです!」
この少女が本気と書いてマジであることはわかりました。
受付職員は、困惑しながらつ彼女に言ってしまいます。
「あー……確かに、ウィンクルムはデート『も』してるけどね……」
「ここにはリア充さんしかいないんですよね! 受付職員さんにも彼女がいるんですよね!」
「いねえよ! ぼっちだよ!」
受付職員は大人げなく声を荒げました。
☆☆☆☆
と、こんな感じで勘違いした子供が来るくらい、ウィンクルム達の生活は殺伐としているだけではなく、愛にも満ち溢れています。たぶん。
今日もオーガ討伐任務のないウィンクルム達は、どこかでデートをしているのでしょう。
それは6月らしいデートかもしれないし、いつも通りのデートかもしれません。
解説
デートをしましょう。6月のデートを。
シチュエーションは問いません。が、6月をイメージしたデートをしていただけると、主にマスターが喜びます。
梅雨であったり、紫陽花であったり、湿気で頭ボンバーだったり、さくらんぼ狩りだったり、さくらんぼスイーツを食べに行くだったり、6月の花婿だったり(誤字にあらず)、色々あると思います。
そしてデート代として、500Jrをいただきます。
ゲームマスターより
大変お久しぶりです。
皆さんの愛を見せつけてください。
愛が世界を救うかもしれない。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
ミサ・フルール(エミリオ・シュトルツ)
恋人同士だし、これからもずっと一緒にいたいと思うけれど…彼もそう思ってくれているのかな。 自分と一緒にいると不幸にしてしまうかもしれないって、普段積極的にみえてこういうことには消極的な人だから実はちょっとびっくりしているの。 いつもより彼を意識してしまって落ち着かないよ。 彼にどんなドレスが好みか聞かれ悩みます。 やっぱり白は女の子の憧れだよね。 精霊に絶対に似合うよと言われはにかみます。 あのね、エミリオ。 ここに連れてきてくれたのは、つまり…そういうこと? エミリオはっきりと言葉にはしてくれなかったけれど、彼の顔は私と同じくらい真っ赤で、それが嬉しくて。 ぎゅっと握りしめてくる手を私も同じように握り返した。 |
ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)
午後からさくらんぼ狩りの予定だったんですが 急にどしゃぶりになって中止です… はぁ、一緒に行きたかった… と、私が落ち込んでいるのにディエゴさんはテレビを見て 自室に戻ってしまいました もうちょっと何か声をかけてくれても良いんじゃないのかと残念と怒りの感情が半分です そうやって拗ねてソファで寝転がっていたら ディエゴさんがいつの間にかそばにたっていて、出かけようと誘われました…こんな雨の中 で、ついた所はAROA まさか…こんな日に依頼受けるつもりですか… と思ったのですが何をするでもなくずっと外を眺めているだけ 不意に彼が屋上に行こうと言いだしました よくわからないままついていくと、目の前にあったのは虹でした |
リーヴェ・アレクシア(銀雪・レクアイア)
「今日は一緒に外出しようか。サクランボのケーキを食べ比べに行きたくてな。食べ比べに1人は味気ないし、別の意見も聞きたい」 それに、1人だと店内で女の子にナンパされ易いし が、まずは歯医者だ※49で銀雪虫歯判明 「AROAからまた連絡来たぞ 歯医者に行ってないらしいな さっさと治療されろ 治療しないなら、食べ比べは取り止める 行く? いい子だ、行って来い」 悲鳴聞こえるが治療終了まで待つ 受付に飲食禁止時間も確認 公園をゆっくり歩いて飲食禁止時間潰して店へ 「サクランボだけでも種類豊富だな クラフティなら今度作ってやる ただし、歯磨きが条件だ」 歯磨きを忘れないよう言い含める 手間が掛かる子だ 素直で可愛い事は可愛いんだが弟だな |
シルキア・スー(クラウス)
夏服買に 機能的なデザインのを数着選びこれでよし!会計行ってくる 勧められたのは 淡いエメラルドグリーン生地、首や裾回りに黄色の花と緑色の葉と蔦模様が鮮やかなレースが施されて胸下にリボン付で絞りがあるフェミニンなシルエットのチュニック 見てたの気付いてた? ダメダメ、私動き回るからすぐ汚してダメにしちゃうしそれに…(こんな可愛いの恥かしいし… それはダメ! なら買う自分で買う 奪い取り会計ダッシュ 彼のあって声が聞こえるけど 受取り 違うの、その…普段着ないから躊躇しちゃうのよね…似合うって言ってくれてありがと クラウスは何か買ったの? 陶器が猫の顔で何だか笑ってしまう お誘いに瞬き 照れ 水羊羹持ってくね 紫陽花眺め |
水田 茉莉花(聖)
あーあ、お休みなのに雨降ってる…洗濯物は部屋干しかなぁ? ふぇ?ひーくんどうしたの藪から棒に そっか…それはひーくんにとっては死活問題よね よっし、今からタブロスモールで買い出しして公園に行こう! 濡れてもいい準備したからね さて、公園に着きました 着いたらみずたまりを探して下さい! うぐっ、小学校以来に聞いたなぁ、そのセリフ みずたまりに傘をひっくり返して…水をすくって、投げる! きゃーっ投げろ投げろ! 次は砂場で水遊びよ 山と川を作って、水を流すの 雨降ってるからよ、近くからいくらでも汲めるでしょ? こんな風に遊べば大丈夫よ 楽しいでしょ、雨が降ってるだけで…っぷしょん! うぅ、確かにちょっと冷えたかも、そうしよっか? |
1 次に繋げる幸福のチュニック
夏服を買いに、シルキア・スーとクラウスはデパートを訪れていた。クラウスには特に買いたいものはなかったのだが、付き添いは本望であり、苦ではない。
シルキアは楽しそうに服を選んでいて、彼女の腕にはシンプルで機能的なデザインの服が何着か掛かっている。
「よし! 会計行ってくる」
やがて満足が行ったのか、シルキアはレジに向かおうとする。だが、クラウスはそれを呼び止めた。
「ちょっと待て」
振り返った彼女に、彼は1着の服を選んで差し出した。
「これはいいのか?」
それは、淡いエメラルドグリーン生地のフェミニンなシルエットのチュニックだった。首や裾回りに黄色の花と緑色の葉、蔦模様が鮮やかなレースが施され、胸元にはリボンがついていて絞りがある。
服を選んでいる時のシルキアの様子から、クラウスはこの色が好きなのだろうと思っていた。しかし、彼女はバツの悪そうな顔になった。
「……見てたの気付いてた?」
「ああ、気付いていた。似合うと思うが? 欲しいのだろう」
「ダメダメ! 私、動き回るからすぐ汚してダメにしちゃうし、それに……」
――(こんな可愛いの、恥ずかしいし……)
(何か遠慮でもあるのだろうか)
言い淀み、俯いてしまったシルキアを見て、クラウスはそんな勘違いをした。服を気に入ったかどうかはすぐに見抜いたのに、彼女の抵抗の理由は分からなかったようだ。
「ならば、俺が贈ろう」
彼はチュニックをレジに持っていこうとした。すると、シルキアは慌ててそれを奪い取る。
「あっ」
「それはダメ! なら買う、自分で買う」
呆気に取られているクラウスを置いて、彼女は脱兎の如くレジに走っていった。
∞
帰り道に紫陽花の咲く公園の前を通りかかり、クラウスはシルキアに声を掛けた。
「ここで一休みしていかないか」
「あ、うん、いいよ」
公園の中に入ると、ピンクと白の縦縞模様の庇がついた売店が出ていた。
「シルキアはベンチで待っていてくれ」
クラウスは売店でソフトクリームとアイスコーヒーを買うと、先に座って待っていたシルキアにソフトクリームを渡した。
「気分を害したならすまない」
「……? ああ、チュニックのこと?」
何のことを言っているのか分からなかったのかきょとんとしていたシルキアは、アイスをぺろりと舐めてから気が付いたようだ。
彼女はちょっと顔を赤らめて、クラウスから目を逸らして言った。
「違うの、その……普段着ないから躊躇しちゃうのよね……似合うって言ってくれてありがと」
「……そうだったか」
はにかんだ横顔を見て、安堵する。
(着る機会か……成程)
そのことについて思案していると、シルキアが尋ねてくる。
「クラウスは何か買ったの?」
「ああ、これだ」
紙袋から、クラウスは箱を取り出す。それは、蚊取り線香を縦に引っ掛ける陶器の受け皿だった。
「猫の顔なんだ、可愛いね」
思わずというように笑うシルキアに、彼はつられて笑いながら購入理由を説明した。
「先日、猫と化した依頼があった。その時のお前にそっくりだと思ってな」
それから、ふと思いつく。
「縁側で使う。涼みにでも……その服を着けての訪問を待っている」
自分でもどんな気持ちから誘ったのか自覚しないまま、彼女にチュニックを着る機会を与えてあげようと彼は言った。
シルキアは目を瞬かせて驚いているようだ。
それが、照れた表情に変わる。
「……水羊羹持ってくね」
「楽しみにしている」
いい笑顔で相槌を打ち、彼は紫陽花を眺めはじめたシルキアと一緒に紫や青、ピンクの花を眺めてコーヒーを飲んだ。
2 手を握り、伝える心
「……ここ?」
「そうだよ、さあ入ろう」
目を丸くしているミサ・フルールの手を取って、エミリオ・シュトルツはためらうことなくウェディングドレスの店に入った。余裕を見せてはいたけれど、彼の中には小さな不安があった。
――まだはっきりと言葉にはできないけれど、この先もずっと彼女と一緒にいたい。
その望みが叶うかどうかの確証が欲しくてミサをドレスの店に連れてきたけれど――
(ミサは、どう思っているのかな……)
ピンクにブルー、グリーン、そして純白と、綺麗なドレスが店内に並んでいる。その美しさに目を奪われながら、ミサはエミリオのことを考えていた。彼は、自分と一緒にいるとミサを不幸にしてしまうかもしれないと、普段積極的に見えてこういうことには消極的な人だから今回のことにはちょっと驚いていた。
(恋人同士だし、これからもずっと一緒にいたいと思うけれど……彼もそう思ってくれているのかな)
いつもより彼を意識してしまって落ち着かない。でも、ドレスは綺麗でやっぱりどきめいてしまう。
目を輝かせていたら、エミリオが微笑みながら尋ねてくる。
「ミサはどんなドレスが好みなの?」
「え? そうだねー……」
色とりどりのドレスを前に、ミサは悩んだ。
「……やっぱり、白は女の子の憧れだよね」
「白か……」
エミリオは、白いドレスの中からプリンセスラインの可憐で美しいドレスを選んで、ミサにあててくれた。
「ミサなら絶対に似合うよ、俺が保証する」
「そ、そうかな……」
ミサは嬉しくなって、はにかんだ。
「……あのね、エミリオ」
そして勇気を出して――ドキドキしながら、顔が赤くなるのを自覚しながら、恥ずかしさと同時に期待を込めて聞いてみる。
「ここに連れてきてくれたのは、つまり……そういうこと?」
尋ねてくるミサの葛藤や気持ちが伝わってきて、その、なんと愛しいことか。
――言わなくてもわかるでしょ、そういうことだよ。
……なんて、偉そうなこと言えなくて。
エミリオは顔に熱が集まるのを感じながら、ミサの手をぎゅっと握りしめる。彼女は自分を見上げ、嬉しそうな顔をしていた。
(言葉で応えられなかったけど……伝わったのかな。
ミサが強く自分の手を握り返してくるのを感じて、エミリオはそう思った。
3 無事に歯が治りました
天気の良い、気分爽快とも言える日に、銀雪・レクアイアはリーヴェ・アレクシアにケーキを食べに行こうと誘われた。
「今日は一緒に外出しようか。サクランボのケーキを食べ比べに行きたくてな。食べ比べに1人は味気ないし、別の意見も聞きたい」
「うん! 行く行く!」
リーヴェとしては銀雪はただのナンパ除けなのだが(1人だと店内で女の子にナンパされ易い)、彼は天にも昇る気持ちで、街へ出掛けた。
(これはデー……)
だが、歩いているうちに銀雪は気が付いた。
このルートは、ケーキ屋への道ではない。
「リーヴェ、この道って、もしかして……」
「そう、歯医者だ」
「…………!!」
予想が当たり、銀雪は愕然とした。歯医者の看板はもうすぐそこにある。硬直してしまった彼に、リーヴェは言う。
「A.R.O.A.からまた連絡来たぞ。歯医者に行ってないらしいな。さっさと治療されろ」
慈悲はない。彼に突き付けられた選択肢は最早「今すぐ行きますか?」か「悪あがきしてから行きますか?」のどちらかしかない。
(もうさ、大学もA.R.O.A.も、リーヴェにお願い止めよう……?)
銀雪は、涙目になりながら「悪あがきしてから行きますか?」を選んだ。
「歯医者は怖いんだよ悪魔の巣窟なんだよ俺死んじゃうかもしれないじゃないやだまだ死にたくない」
句読点を一切入れない必死の説得だったが、リーヴェの感情はひとかけらも揺さぶられなかったようだ。うん、知ってた。
「治療しないなら、食べ比べは取り止める」
「……う」
完全に逃げ道を塞がれ、銀雪は陥落した。
「取り止め嫌だから、俺頑張ってくる……」
「行く? いい子だ、行って来い」
とぼとぼと歯医者に向かう彼を、リーヴェは笑みと共に見送った。
∞
「うあああ」
「リーヴェ助けわあああ」
診察室から、銀雪の悲鳴が聞こえてくる。それに関しては全く気にせず、リーヴェは受付に声を掛ける。治療後の飲食禁止時間を確認するためだ。
「30分ですね」
笑顔で答えが返ってきた頃、銀雪が診察室から帰還してきた。涙目どころではなく完全に泣いている。
「うぅ、歯を沢山削られた……ぐすぐす」
物理的ダメージと精神的ダメージ両方を受けた銀雪を連れて、リーヴェは次に公園に向かった。
∞
銀雪の飲食禁止時間を消化するために立ち寄った公園には、たくさんの紫陽花が咲いていた。薄紫、青、ピンクに白の花が自己主張しすぎずに咲いている。
「綺麗だな」
紫陽花を眺めているリーヴェの姿は綺麗でかっこよく、銀雪は目を細めて幸せに浸った。
(……頑張ったご褒美だよね)
――ケーキ店のテーブルには、サクランボのタルトとケーキ、それに飲み物が置かれている。
(リーヴェはやっぱりブラックコーヒーか。カッコイイな)
ロイヤルミルクティを飲みながら、銀雪はコーヒーを口につけるリーヴェに見惚れていた。
「サクランボだけでも種類豊富だな」
彼女はカップを置くとフォークを取り、サクランボのケーキを一口食べる。
「うん、美味しい。そうだ、クラフティなら今度作ってやる」
「えっ、作ってくれるの!?」
「ただし、歯磨きが条件だ」
パッと明るい顔をした銀雪に、リーヴェはにべもなく言う。
「毎日欠かさず、歯磨きを忘れないようにな」
銀雪はあっという間にしゅんとする。それから身を縮めて反省の表情を見せて、「ハイ」と返事をした。
「寝落ち前に歯磨きするね……」
年齢より幼い印象を抱くその仕草に、リーヴェはつい笑みをもらす。
(手間が掛かる子だ。素直で可愛い事は可愛いんだが、弟だな)
――銀雪の恋が実るのはいつのことか――
「銀雪、そのタルトちょっともらっていいか?」
「いいよ! どんどん食べて!」
――もしかしたら永遠に来ないかもしれない――
4 雨の日の遊び
空を覆う灰色の雲から、間断なく雨粒が落ちている。水田 茉莉花は窓の外を見て、残念な気持ちになる。
「あーあ、お休みなのに雨降ってる……洗濯物は部屋干しかなぁ?」
「ママ……雨の日の外あそびって、何をするんですか?」
部屋干しだと匂いがつくんだよなあと思っていると、腰のあたりから聖の声がした。
「ふぇ? ひーくんどうしたの藪から棒に」
聖は、ノートを持って困ったような顔をしている。
「……学校で、じゅぎょうで、そういうの、やるんだそうです。でも……ぼく、何したらいいかわかりません、ママ、しってますか?」
学校の授業で、雨の中で遊んでいる子供達の中で何をしたらいいか分からずに立っている聖を想像して、茉莉花は彼と目を合わせて微笑んだ。
「そっか……それはひーくんにとっては死活問題よね」
「うん……」
しょんぼりとして頷く彼の頭を撫でながら、茉莉花は決めた。
「よっし、今からタブロスモールで買い出しして公園に行こう!」
∞
(カッパきてるのに、かささして、おすなばセットももって……なんだか頭がこんがらがってきましたよぅ)
買い出しを終えて公園に来た聖は、少し途方に暮れたような気持ちになっていた。彼とは対照的に、茉莉花は生き生きとした顔をしている。
「濡れてもいい準備したからね。さて、公園につきました。さあみずたまりを探してください!」
「みずたまり? ママをさがすの?」
きょとんとして見上げてくる聖の言葉に、みずたまりかは「うぐっ」と痛いところを突かれたような顔をした。
「……小学校以来に聞いたなぁ、そのセリフ」
苦笑してから、彼女は自分で見本を見せることにした。
「みずたまりに傘をひっくり返して……水をすくって、投げる!」
掬われた水がかかり、聖は咄嗟に腕で盾を作りながらも楽しそうに笑顔を浮かべた。
「うわぁ! ママつめたい! ……よーし、ぼくだって!」
聖も傘で水を掬って、飛ばし始めた。
「水合せんだ、いっぱいなげろー! なげろなげろ!」
「きゃーっ投げろ投げろ!」
2人は傘をぶんぶんと振って、水を投げ合って夢中で遊んだ。
「次は砂場で水遊びよ。山と川を作って、水を流すの」
「川? 雨ふってるのに、ですか?」
不思議そうな聖に、茉莉花は説明する。
「雨降ってるからよ。近くからいくらでも汲めるでしょ?」
砂場の中に聖を誘い、一緒に砂山を作っていく。
「へぇ……あ、雨でぬれてるからすぐ山になる!」
濡れた砂は、さらさらと崩れることなく固まり、山になっていく。
「水もかってにながれる、みずたまりから水もふやせる!」
「こんな風に遊べば大丈夫よ」
「うわぁ、うわぁ! ママ、楽しいです、すっごく楽しいです!」
「楽しいでしょ、雨が降ってるだけで……っぷしょん!」
茉莉花がくしゃみをして、聖はどうしたんだろうと考えて、気が付いた。夢中になっていたから分からなかったが、雨に濡れながら遊んでいて、体が冷えてしまっている。
聖は、茉莉花を温めないとと思った。
「ママ、かえり道で、コーヒーやさんによりませんか?」
「ん?」
砂山をぺたぺたと叩いていた手を止めて言うと、目を合わせてきた茉莉花はその意味を理解したようだ。
「うぅ、確かにちょっと冷えたかも、そうしよっか?」
ニコッと笑った彼女と、聖は砂場を出てカフェに向かった。
5 サクランボの代わりにサプライズを
午前中の快晴が嘘のように、激しい雨が降っている。
家の中でその様子を見ていたハロルドは、小さく溜息を吐いた。午後からディエゴ・ルナ・クィンテロと2人でサクランボ狩りに行く予定だったのだが、このどしゃぶりでは中止だ。
(はぁ、一緒に行きたかった……)
ディエゴはテレビを見て、何も言わずに自室に戻ってしまった。
(もうちょっと、何か声をかけてくれてもいいんじゃないでしょうか……)
落ち込んでいたハロルドは残念と怒りが半々の感情を抱きながら拗ねてソファに寝転がった。
だが、ディエゴも何も思っていないわけではなかった。
(今日の予定が全て無しになってしまったな。午前までは晴れていたんだが……。そうだ)
テレビをつけたのは、思い出したことがあったからだ。
天気予報を見ると、雨は夕方くらいには止んで、晴れになるということだった。
「確か、この本に……」
自室に戻ったディエゴは、本棚から気象の本を出して「今日、虹が出る確率」を調べた。
「…………」
条件は満たしていた。
虹が出る確率は高いと言える。
「……今日は、虹を見に行こう」
そう決めて自室を出ると、ハロルドが窓の近くから移動していた。
(ソファに突っ伏す程、サクランボ狩りが楽しみだったのか……)
ディエゴは彼女の傍まで行き、声を掛ける。
「ハロルド、出かけよう」
「……?」
(これだけの雨の中、どこに行く気でしょうか……)
雨の勢いは収まらず、傘を差していても濡れるのを完全には防げない。そんな天候の中、ディエゴがハロルドを連れてきたのはA.R.O.A.だった。
(まさか……こんな日に依頼受けるつもりですか……)
だが、建物の中に入った彼は依頼を受けには行かずに廊下で立ち止まってずっと外を見ているだけだった。
(? 何をしに来たのでしょう)
ハロルドが内心で首を傾げているとは知らないまま、ディエゴは動かずに外を見続けていた。確率は高いとはいえ、雨が止む時間までは分からない。
――どれだけ時間が経っただろうか、やがて、雲の切れ間から日が射してくる。
「……止みましたね……」
ハロルドの声はどこか眠そうだった。ずっと同じ場所に居続けて退屈したのかもしれない。
「屋上に行こう」
その彼女を、ディエゴは目的を言わないままに屋上に誘った。後ろで、首を傾げる気配がする。
――虹が出る方向は、太陽の反対側。
そちらを見て、安心した彼は微笑み、ハロルドを促した。
「エクレール、あれを見ろ」
空を指さすと、つられて目線を移した彼女も今日初めての笑みを漏らした。全てを納得したらしい、透明な笑みを浮かべている。
「綺麗ですね……」
「今度はサクランボ狩りに行こう」
そう言うと、ハロルドは嬉しそうに頷いた。
依頼結果:大成功
MVP:
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 沢樹一海 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | ロマンス |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | とても簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 3 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 06月07日 |
出発日 | 06月14日 00:00 |
予定納品日 | 06月24日 |
参加者
- ミサ・フルール(エミリオ・シュトルツ)
- ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)
- リーヴェ・アレクシア(銀雪・レクアイア)
- シルキア・スー(クラウス)
- 水田 茉莉花(聖)
会議室
-
2016/06/11-20:00
-
2016/06/11-05:06
水田茉莉花です、パートナーはひーくんです。
ひーくんがしたことない事に、付き合ってきますね! -
2016/06/10-23:23
リーヴェだ。
パートナーは銀雪。
デート…まぁ、ある意味デートだな。
デートと言わないと銀雪が釣られそうになくてな(手に歯医者の診察券) -
2016/06/10-22:28
-
2016/06/10-20:48
-
2016/06/10-20:02
どうぞよろしくお願いします。