プロローグ
そこはどこだったか。君達のどちらかの部屋か、あるいはカフェ、オープンしたてのアイスクリーム屋か。ともかく、腰を落ち着けて話が出来る場所だ。
二人でティータイムを楽しんでいて、ふと君はさっき、A.R.O.A.で見たウィンクルムを思い出した。
彼らは契約したばかりのウィンクルムだった。何故それが分かったかといえば、二人はとてもぎこちなくて、さらに言えば精霊が難しい顔で「これで良かったのかな……やっぱりあっちのジョブの方が良かったかも……」なんて言っていたから。新米ウィンクルム特有の悩みだ。
精霊のジョブは契約の時に、本人の意向で決まる。選ぶ基準は人それぞれ。性に合うだとか、カッコいいからだとか、本職がそのジョブに近いだとか、あみだくじで決めただとか。十人十色。
さっき見た精霊が何を基準にジョブを決めたのか定かではないが、決めてから不安になったのだろう。今後を大きく左右することなのだから、それも当然だ。
そう言えば。
君はパートナーに視線を向けた。彼は何故、このジョブを選んだのだろうか。
浮かんだ疑問。考えても推測の域を出ない。
いい機会かもしれない。君はパートナーに直接、聞いてみることにした。
さて、どう問いかけてみようか。
解説
●参加費
お茶代 300jr
●すること
神人はどういう風に、精霊にジョブを選んだ理由を聞くのか。
精霊はどうしてそのジョブに決めたのか、話してください。
ここでいうジョブはテンペストダンサーやロイヤルナイトなどの、ウィンクルムとしての精霊の戦闘ジョブです。
自由設定上の職業ではありません。
●その他
場所はどちらかのプランに必ず入れてください。
こだわりがあれば飲み物、軽食やお菓子の指定もどうぞ。
ゲームマスターより
あまいものがたべたい
エピソードジャンルに意味はないよ!
リザルトノベル
◆アクション・プラン
手屋 笹(カガヤ・アクショア)
【メニュー】 カフェモカ、ショートケーキ 【行動】 ジョブで悩んでいる方も居るのですね… カガヤは何故今のジョブを選んだのですか? カガヤは当初さっさと決めていたようなと思いまして。 ハードブレイカーになりたかった理由でもあったのかと 気になりました。 ふむふむ (従兄弟…以前、カガヤの家で見た写真の方…でしょうか?) 憧れならテンペストダンサーを志しそうですが そうではなかったのですか? 隣に立ちたかった… 何だかその従兄弟の方が羨ましくなってしまいそうです。 カガヤにそう想われているなんて。 いつかお兄さんと一緒に戦えると良いですね… …結局カガヤ基準の格好良さに帰結するんですね… それでもカガヤらしい選択だと思います。 |
エリー・アッシェン(ラダ・ブッチャー)
行動 アイス屋さんでカシス味のアイスを注文。 なぜ今のジョブを選んだのか質問。 なるほど。 しかし接近戦のジョブなら、ハードブレイカーやテンペストダンサーもありますよね。 争いごとを好まないラダさんの性格なら、守りのロイヤルナイトも。 悪役……。 たしかに悪魔の力を借りた技もありますね。 納得してポンと手を叩く。 不良っぽい人がたまに良いことをすると、普通の人より多くの好感度が得られるというアレですね! (向上ということは、現状ではまだ低いと感じているということでしょうか) 慰めるつもりで。 不特定多数からの漠然とした評価がそこまで重要なものだとは、私には思えません。 しっかりとした反論がきて、会話に手応えを感じます。 |
ドミティラ(レオカディオ・クルス)
精霊宅のリビング 紅茶、クッキーを差し入れに さっきのウィンクルム、同じ新米の人達よね 決めた後も随分悩んでたみたいだけど あ、ねえ。レオカさん。あなたは? 即決だったから気になって あるでしょ? いろいろと え? 私? 音楽家に憧れて…特にハープに心惹かれた。それだけよ…? 自分に向いてないって思ったけどね。私、音楽の才能ないし 師匠も、あまりの才能のなさに愕然としてたけど へえ…そうなの 本当にざっくりしてるわね… まあ私も似たような理由で音楽家に弟子入りしたし、どっちもどっちね |
水田 茉莉花(聖)
場所:街角のカフェ 神人:クラブハウスサンドとブラックコーヒー 精霊:ホイップいっぱいのパンケーキとミルク 多分そうだと思う、ひーくん …そういえばひーくん、どうしてブレストガンナーになったの? その身体で銃を扱うのって大変なんじゃない? 【あれっ、ひーくんちょっと足震えてる?】 確かひーくんって…あっ、お父さんとお母さんのこと、思い出したの? (頭を撫でる)ひーくん、そんなに気負わなくても大丈夫よ あたしは、依頼に出る先輩なんだから、いざという時は自分の身くらい守れるわ それに、危険な任務は先輩精霊の「彼」に任せても良いんじゃないかしら? あはは、ひーくんがやりたいのね …うん、その日を楽しみにしてる(食事を再開) |
ひろの(ケネス・リード)
仲良くって、どうするんだっけ。(人見知り発動で警戒中 注文:抹茶のロールケーキ、紅茶 真ん中に粒あんで。周りに抹茶のクリーム。 生地も抹茶入りかな。おいしい。 (ふとジョブの話を思い出し、動きを止める 仲良く、は。わからないけど。何も話さないよりは。 「ケネス、さん。あの」 (思わぬ発言に、ピシっと数秒停止後に再起動 言いやすい、呼び方……?(思案 「……ケーネ、さん」 「ケーネ?」 「……私も」(言っても良いか、内心不安 「私も。ひろので、いい。『ちゃん』は、いらない」 えと。(一瞬ど忘れ 「なんで、シンクロサモナーにしたのかなって」思って。 ハードブレイカーでも、いいような。(首傾げ かっこいい、のかな。(よくわからない |
●ガン・アサルト
水田 茉莉花はコーヒーカップをソーサーの上に戻した。具材がたっぷり挟まれたクラブハウスサンドは届いたばかり。
今日は天気も良い。暑くもなく寒くもない気温だから、街角にあるオープンテラスのカフェでのんびりランチするのに打ってつけだった。
茉莉花の正面で、やはり届いたばかりのパンケーキを口に運ぶ聖。ホイップクリームは一口ごとに目いっぱい付けなければ残ってしまいそうなほどに乗せられている。
咀嚼していたものを嚥下し、聖は口の端についたクリームを舐めた。
「さっきのお兄さんも、ぼくみたいにウィンクルムなりたてなのかな、ママ」
「多分そうだと思う、ひーくん」
さっきA.R.O.A.で見かけたウィンクルムを聖も覚えていたらしい。
それなら丁度いい。茉莉花は疑問を率直にぶつけることにした。
「……そういえばひーくん、どうしてプレストガンナーになったの? その身体で銃を扱うのって大変なんじゃない?」
身長が120cmを少し超えたくらいの背丈では、発砲の反動を殺すのも一苦労だろう。
剣も振り回されてしまうだろうが、杖や本を獲物とするエンドウィザードやトリックスター、ライフビショップという選択肢もあったのではと、茉莉花は思うのだ。
「えっ? ぼくがこのジョブをえらんだりゆうですか?」
「うん。知りたいなと思って」
「んーっと……じゅうならば大人と同じようにママのことを守れると思ったからです」
言葉だけなら、背伸びをしたい年頃だからと思えたかもしれない。しかし、テーブルの隙間から見える聖の足が震え始めたことに茉莉花は気づいた。
刹那、口ごもった聖だが濁すことなく言葉を口にする。
「ウィンクルムって、きけんなにんむで死んじゃうことがあるって聞きました」
だから。
「だから、ママのこと、ぜったい守れるように、ママがぜったいぜったいケガしないように遠くからこうげきできるプレストガンナーになったんです」
膝を震わせながらも、聖はまっすぐに茉莉花を見つめたまま言い切った。
この歳にして聖は『死』を明確に意識していることを茉莉花は感じ取った。もしかして――。
「お父さんとお母さんのこと、思い出したの?」
聖はハッとして、頭を振った。
「りょう親がウィンクルムかどうかはわかりません。でも、何かがげんいんで死んじゃったんだろうって思ってます、だから……」
苦しそうにパンケーキへと視線を移した聖の頭を、茉莉花はふわりと撫でる。優しい手つきで何度も、何度もだ。
「ひーくん、そんなに気負わなくても大丈夫よ」
茉莉花の声音は優しい。ほんの少し細められた目には慈しみの色。
「あたしは、依頼に出る先輩なんだから、いざという時は自分の身くらい守れるわ。それに、危険な任務は先輩精霊の『彼』に任せても良いんじゃないかしら?」
聖は小刻みに頭を振った。
それはそれで正しいのだと聖も理解している。『彼』は聖と比べると戦闘経験も充分にある。しかし、問題はそこではないのだ。
「……だからパパじゃなくて『ぼくが』ママを守りたいんですよぅ」
ぷくっと膨らませた頬は、聖が今日見せた中で最も年相応の表情で。
茉莉花は思わず笑い声を零した。
「あはは、ひーくんがやりたいのね」
「そうです」
「……うん、その日を楽しみにしてる」
じゃ、食べよっか。そう言って茉莉花は食事の再開を促した。
素直にナイフとフォークを動かし始めた聖を、茉莉花はちらと盗み見た。小さな膝はもう震えてはいなかった。
●タイガークロー
ひろのは見るからに緊張していた。カチコチと、凍り付いたような擬音が聞こえそうなほどである。
彼女がいるのはケーキが売りのカフェだ。ケネス・リードが最近贔屓にしている店だ。
契約したばかりなので、まずは親睦を深めようとケネスが誘ったのだ。
人見知が発動したひろのは店員に注文する時ですらたどたどしく、うつむき気味。ケーキが運ばれて来てからは、他にどうすればいいか分からないといった様子でケーキを凝視していた。
ひろののチョイスは渋い、というのがケネスの感想。ひろのが頼んだのは抹茶のロールケーキ。中心には粒あん、周りを抹茶のクリームでコーティングしたものだ。生地も抹茶入りのようで、濃い緑色をしている。お供は紅茶だ。
かくいうケネスが頼んだのはガトーショコラとアイス珈琲。
か細い声で頂きますと言ったひろのは、硬い手つきでケーキを切り分け、口へ運ぶ。クリームも粒あんも甘いが、抹茶の苦みはきちんと残っていて美味しい。
二口目――と行こうとして、A.R.O.A.で見たウィンクルムのことを思い出して、そっと手を止める。仲良くなれるかは分からないが、ケネスとの会話の切欠に出来そうだ。
そんなひろのに視線を向けたケネスの二つ目の感想はずばり『勿体無い』。目も大きくてかわいいのだから、女の子の格好をさせたいというジュエリーデザイナーらしい考えだ。
「ケネス、さん。あの
「ちょっと待って」
「え」
「その『ケネスさん』て、やめない? 言いやすい呼び方でいいから」
思わぬ発言にピシリとひろのが凍り付く。
言いやすい呼び方と言われても、いきなり敬称を外すことなんてとてもじゃないが出来ない。もう一人の契約精霊なんてまともに名前を呼ぶことにすら多少の時間を必要としたくらいだ。
考えて、導き出した妥協点は――。
「……ケーネ、さん」
「『さん』も、いらないかな」
ひろのが考えた精一杯の妥協点は、にっこり笑ったケネスが却下。
となると、残された答えは一つだけ。
「ケーネ?」
「そうそう。それで、どうしたの?」
満足げに微笑んで頷いたケネスは、そのまま珈琲を一口。
その様子を見て、恐る恐るといった様子でひろのも歩み寄ることにした。
「……私も」
「ん?」
「私も。ひろので、いい。『ちゃん』は、いらない」
「ひろのね。わかったわ」
返事に胸を撫で下ろしたひろのはティーカップに指をかけたところで、ケネスの問いかけの色を含んだ眼差しに気づく。
それでひろのは何を聞こうとしていたか思い出した。
「えと。なんで、シンクロサモナーにしたのかなって」
「思いっきり武器振り回せて、ストレス発散に良さそうだったからよ」
にっこり笑って言うケネス。それならハードブレイカーでもいいのでは、と小首を傾げるひろの。
「後は、憑依させて力を使うって格好良いじゃない?」
添えられたもう一つの理由は、ひろのには理解できなかった。男の子の夢というものだろうか。
しかし、ケネスのことは少し分かった気がする。上手くやっていけるかどうかは、やっぱり分からないけれど。
●フロントアタック
ティーカップから立ち上る湯気がほのかな甘みを含んだ香りを運ぶ。テーブルの中央にはクッキーの皿。
レオカディオ・クルスの自宅はドミティラにとって馴染みのない場所だが、緊張した様子はない。失礼にならない程度に室内を窺いはするけれど。
蜂蜜の入ったクッキーをひとかじりしたドミティラは、ふいにさっきのことを思い出した。
差し入れのクッキーを買う前に立ち寄ったA.R.O.A.で見たウィンクルムはとてもぎこちなかった。彼らはドミティラとレオカディオ同様、契約したばかりなのだろう。
「さっきのウィンクルム、同じ新米の人達よね」
「ああ」
「決めた後も随分悩んでたみたいだけど」
「そうだな……敵と戦うために重要な決め事だしな。迷うのも仕方ない」
「あ、ねえ。レオカさん。あなたは?」
「俺か?」
仕方ないと言ったレオカディオは即決だった。迷う素振りすら見せなかった。
だから、気になった。何故レオカディオが迷いもせずにハードブレカーとなったのか。
「あるでしょ? いろいろと」
「……逆に、あんたは? あんただって音楽家になるのに迷わなかった。そんなわけないんだろう?」
ティーカップをソーサーの上に戻したレオカディオは、答えるよりも先に問うた。
予想外の反撃にドミティラはわずかに目を見開いた。二、三回、眼を瞬かせると、躊躇う様子もなく答える。
「音楽家に憧れて……特にハープに心惹かれた。それだけよ……?」
ドミティラが小首を傾げると、青みを帯びた銀の髪がさらりと揺れた。
「自分に向いてないって思ったけどね。私、音楽の才能ないし。師匠も、あまりの才能のなさに愕然としてたけど」
まだまだ半人前。道が険しいものだとはこれまでの経験から知っているし、予想もしている。それでも、あの音色がドミティラの目指す場所なのだ。
なるほど、とレオカディオは既視感を覚えた。ふっと笑みを零す。
「じゃあ、俺も同じだ」
「同じ?」
「ああ。俺にハードブレイカーは向いていない。それでもやりたいって、思った。憧れでな」
「へえ……そうなの」
確かに同じ。
ドミティラにとっての『師匠』がレオカディオにもいたのかもしれない。そして、ドミティラが音に導かれたように、レオカディオは誰かの背中を見ているのかもしれない。
「もうひとつ、ざっくり言ってしまえば、あれだ」
再びドミティラは小首を傾げた。
レオカディオはティーカップを持ち上げ、口元まで導く。
「大剣を振り回したかった」
「本当にざっくりしてるわね……。まあ私も似たような理由で音楽家に弟子入りしたし、どっちもどっちね」
くすり、ドミティラは小さく笑った。
レオカディオは目を閉じてティーカップに口をつけてしまっていて、何を考えているかは窺えない。
ドミティラがレオカディオと契約してからというもの、若干翻弄されているものの。予想外に似た者同士なのかもしれないと思えば悪い気はしなかった。
まだ暖かい紅茶を口にする。優しく、爽やかな香りが口内に広がったのであった。
●ブラッディ・ローズ
春も終わり。夏の足音が聞こえてくる昨今。
暖かな日差しというには強すぎて、暑いというには風がひんやりとしている。
そんな陽気だから、アイスクリームがとても食べやすい。
エリー・アッシェンが買ったのは鮮やかな赤が目立つカシス味のアイスクリーム。アイス屋の外にあるパラソルがついたテーブルの下なら、急いで食べなくともすぐに溶けることは無い。
アイスをスタンドに乗せたままゆっくり食べるエリーに対し、ラダ・ブッチャーがパクパクと食べているのは好物だからである。食べ物の中でもとりわけ甘味が好きなのだ。食べる様子からラダのテンションが上がっているのがよく分かる。
クッキークリーム味とトロピカルフルーツ味の二段重ね。テイストこそ違うものの、どちらも濃厚な甘さがウリだ。
「ラダさん」
「アヒャ?」
「何故、ハードブレイカーに?」
単刀直入。
しかし、唐突だとラダが思うことは無かった。さっき、A.R.O.A.で見た新米ウィンクルムをラダも覚えていたからである。
少しだけ食べる速度を落としてラダは答えた。
「魔法系や遠距離系はボクには難しそうでパス。ていうわけで近接職にしたんだよぉ」
なるほど、とつぶやくエリー。しかし、それで納得しきった訳ではない。
「しかし接近戦のジョブなら、ハードブレイカーやテンペストダンサーもありますよね。争いごとを好まないラダさんの性格なら、守りのロイヤルナイトも」
控えめに言って『尖った』、濁さずに言えば『悪党』な外見をしているラダだが、エリーが言ったように争いを好む性格ではない。
むしろ叶うのであれば穏便に済ませることを望むタイプなのだ。
ラダは完全に手を止め、意識を完全にエリーへと向けた。
「けっこう突っ込んで聞いてくるねぇ」
「気になったので。不快でしたか?」
「ううん。秘密にすることでもないし、エリーには話しておこうかな」
シンクロサモナーを選んだことにはラダなりの理由がある。
(親しい人物から見た限りでは)悪戯っぽく笑みをラダは浮かべた。しかし、瞳は真実を語る人のそれだ。
「他の生命を憑依させるのって、ちょっとダーク路線で悪役っぽくない?」
「悪役……。たしかに悪魔の力を借りた技もありますね。」
「でしょ? だからこそ、この力で人助けしたらインパクトがありそうだなって」
納得したようにエリーはぽんっと手を叩いた。
「不良っぽい人がたまに良いことをすると、普通の人より多くの好感度が得られるというアレですね!」
「そうそう。ボクの野望はブチハイエナの好感度向上!」
ぐっと空いている手を握る。握った拳の硬さは、ささやかでありながら壮大な野望に込められた決意の表れだ。
平然とラダは語った。だらかこそ、エリーには引っかかるものがあった。
「不特定多数からの漠然とした評価がそこまで重要なものだとは、私には思えません」
「漠然とした? それは違うねぇ」
エリーからの慰めをラダは笑って一蹴した。
「依頼を通してボクが会ってきた人達は、不特定多数の誰かなんかじゃないよ」
そう答えたラダの瞳に一瞬暗いものが過ったのをエリーは見逃さなかった。
エリーは静かにアイスへプラスチックのスプーンを突き刺す。少し柔らかくなったアイスだが、エリーは確かな手ごたえを感じた。
特に気にする素振りもなく、またパクパクとアイスを食べ始めるラダ。その根元にあるものを、垣間見れたのだから。
●グランドクラッシャー
日当たりのいいカフェの一角で、手屋 笹はほうっと息をついた。
店内の程よい空調、心地よい日差し。景色がいいからと、あえてカガヤ・アクショアと並んで座ったのだが予想以上にいい席だった。
しかもホイップクリームをトッピングされたカフェモカと、クリームのくどさを控えにした代わりに苺の甘さを強調したショートケーキのどちらも美味しいのだから満足である。
「ジョブで悩んでいる方も居るのですね……」
「そうみたいだねー」
笹の呟きに相槌を打つカガヤは、ココアとショートケーキ。ぺたんと伏せられた耳は、笹と同じようにリラックスしている証拠だ。
「カガヤは?」
「へ?」
「カガヤは何故今のジョブを選んだのですか?」
「俺がハードブレイカーを選んだ理由?」
「ええ。カガヤは当初さっさと決めていたようなと思いまして」
ハードブレイカーになりたかった理由でもあったのかと気になったので、と笹が添える。
「えーとまず……」
カガヤはココアで口内のクリームを胃へと送り込んだ。しっかり話すなら口の中に食べ物を入れたままというのはいただけない。
少し苦めのココアだったから、クリームと合わさると程よい甘さになった。
「俺、従兄弟の兄ちゃんがテンペストダンサーなんだ。戦ってる様が格好良くて憧れだよ」
カガヤがそう言うと、笹は記憶をたどった。
以前、カガヤの家で見た写真に、それらしき姿が写っていた。彼がそうなのだろうか。
「憧れならテンペストダンサーを志しそうですが、そうではなかったのですか?」
「それだけじゃなかったから」
背中を追いたかった気持ちもある、と言外に告げている。憧れの存在であることは今でも変わらないのだ。
「ジョブによって一長一短ってあるよね。時々テンペストダンサー故の苦戦の話も聞いた」
流れるように剣を振るうテンペストダンサーは素早さと手数で攻めていくが、その分一撃が軽い。それゆえに苦労することもあるのだ。
「俺は話を聞いて兄ちゃんの役に立ちたい……その隣に立って一緒に戦いたいって思ったんだ」
語るカガヤの瞳は常よりも幾分か大人びて見える。
しかし、そこには少年のころから抱いているであろう憧憬がきらりと輝いている。
「テンペストダンサーにならなかったのはそんな感じ」
カガヤの語る『従兄弟』が、笹は無性に羨ましくなった。『隣に立ちたい』とカガヤに望まれているのだから。
カガヤに貰った『言葉』ならあるが、笹は答えを返していない。そこに『隣に立ちたい』という想いがあるのかどうかなんて、笹には分からない。
でも、それとは別に分かることもある。
「いつかお兄さんと一緒に戦えると良いですね……」
「いつか……うん!」
嬉しそうに笑うカガヤ。だが、まだ疑問は解決していない。
「それで、何故ハードブレイカーに?」
「使える武器が大きくて格好良かったから!」
単純明快な答え。笹は呆気にとられた。
「シンクロサモナーもだけど、俺はハードブレイカーの方が合ってたかなって」
「……結局カガヤ基準の格好良さに帰結するんですね……」
言って、笹はクスリと笑みを零した。カガヤの答えを反芻すれば反芻するほど、実に『らしい』ものだと思えて微笑ましい。
「それでもカガヤらしい選択だと思います」
「えへへ、やっぱりそう思う?」
カガヤの言葉に笹はとうとう噴出した。クスクスと笑う笹につられ、カガヤも笑いだせば、笑い声が二重奏の様に流れていく。
春の終わり、穏やかなひと時のことであった。
依頼結果:大成功
MVP:
エピソード情報 |
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マスター | こーや |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | ロマンス |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | とても簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 05月09日 |
出発日 | 05月14日 00:00 |
予定納品日 | 05月24日 |
参加者
会議室
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2016/05/13-21:03
ひろの、です。
よろしく、お願いします。
何話せばいいか、わからないから。
ジョブの話は、丁度いいかも。 -
2016/05/13-18:25
水田茉莉花です、パートナーはひーくんです。
・・・そういえば、ひーくんちっちゃいのにこんな銃を振り回すジョブ選ぶなんて、大丈夫なのかしら?
心配しつつ聞いてみますね。 -
2016/05/13-17:43
うふふ……、エリー・アッシェンと精霊のラダさんで参加です!
どうぞよろしくお願いします!
ラダさんのジョブはシンクロサモナー。
せっかくの機会ですので、ぐいぐいと質問していきます。 -
2016/05/12-23:58
手屋 笹とハードブレイカーのカガヤです。
よろしくお願いします。
カガヤがハードブレイカーを選んだ理由ですか…
決定する時、割と即決だったように覚えています。
何か理由があったのでしょうか…聞いてみましょうか。 -
2016/05/12-10:11
初めまして。私、ドミティラっていいますよろしくね
パートナーがどうして今のジョブに決めたのか、気になるわよね
…どのタイミングで訊いてみようかしら