【バレンタイン】Lovers Night(木乃 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

『Lovers Night、開催のお知らせ』

掲示板にミラクル・トラベル・カンパニーからイベント開催の掲示がされていた。
内容はというと……

***

『来るバレンタインにいつもと違う自分になってみませんか?』

会場はタブロス市内の旧市街地にある、『豪商の邸宅跡を貸し切り!』
邸宅跡のダンスホールを中世ヨーロッパの舞踏会風に改装しており、
オーケストラの生演奏を聞きながらダンスを行うことができます。
また、ビュッフェ形式の食事もご用意しますのでダンスが苦手な方でも歓談を楽しむことができます。
(シャンパンなどの酒類もご用意しておりますが、未成年の方にはお渡し出来ません!)

ダンスホールに面した中庭は豪華な噴水を中心とした庭園が広がっており、
二人きりでしっとり落ち着いたムードを楽しみたい方にはうってつけでしょう。
ライトアップされた噴水がロマンティックな雰囲気を盛り上げてくれます!

当日はドレスコードを用意させていただいております。
女性:イブニングドレスやカクテルドレスなどのパーティドレス
男性:タキシード、スーツ

お持ちでない方は、ドレスやスーツの貸し出しをさせて頂きます。
一通りご用意させて頂きますので、お気軽にお申し付けください!

※なお、女性の方にはヘアセットやメイクアップのお手伝いもさせて頂きます。
いつもと違う自分の姿に、パートナーを驚かせちゃいましょう。

参加費用は1000Jrとなります。
開催日時はシークレットパーティの雰囲気を味わっていただきたいため
参加者の皆様にだけお伝えします。

ウィンクルムの紳士淑女の皆様、ご参加を心よりお待ち申し上げます。
ミラクル・トラベル・カンパニー 企画担当
***

これを見たウィンクルムはパーティの用意をすべくあれこれと相談を始めた。

当日はバレンタイン、この日付を見てそれぞれ想いを抱えていた。
……精霊たちは期待を、神人たちは緊張を抱えながら。

解説

『本シナリオは19時以降のナイトタイムでの行動となります』
以下の場所で行動を行うことができます、

※ただし2ヶ所以上でプランを組まれた場合はどちらかの描写しか
出来なくなりますので、予め1ヶ所に絞ってプランを組んでください。

ダンスホール:
オーケストラの生演奏をBGMにダンスを行うことができます。
また、ビュッフェも用意されているので、
ダンスが苦手な方も立食パーティとして楽しむことができます。
(20歳未満の神人、精霊の飲酒・喫煙のプランがあった場合はお受けできません)

中庭:
噴水を中心に置いた中世のヨーロッパ風の庭園が出来ています。
庭園も改装されたもので、ベンチなども設置されています。
また、噴水はライトアップされており落ち着いた雰囲気となっています。

■ドレスコードについて
神人:
イブニングドレス、カクテルドレスなどデザインを指定してください。
またヘアアレンジやメイクも希望がありましたらプランに入れてください。

精霊:
こちらもタキシードやスーツのデザインを指定してください。
スーツの種類もある程度知っているのでお気軽に専門用語を盛り込んでください!

■本シナリオはバレンタインイベントになります■
精霊にチョコを渡すことが出来たら精霊からご褒美が?

!注意!
神人と精霊はまだ関係性は深くないです。
神人のアプローチに対して精霊が照れて失敗する場合もあるので
その辺りを考慮してプランを組んでみてください。

ゲームマスターより

今作品よりゲームマスターとして参加することになりました木乃(きの)と申します。
皆様のキャラクターの持ち味を活かしたエピソードを執筆していこうと思います。
プレイヤーの皆様、何卒宜しくお願いします。

プランの書き方が解らない!という方のアドバイスとしてこの3点をお願いしたいです。
・目標(あなたのキャラはなにを達成したいですか?)
・心情(あなたのキャラはなにを思って行動していますか?)
・行動(あなたのキャラはいつ、どこで、なにを、なぜ、どうしたいですか?(5W1H))
(キャラクターの喋り方で書くとイメージしやすいかと思います)

あなたのキャラクターも今、この瞬間も『生きて』います。
ぜひキャラクターに感情移入して書いてみてください。
それでは、ご参加を楽しみにお待ちしております!!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

セリス(三ツ矢 光)

 


セリス(三ツ矢 光)
 


セリス(三ツ矢 光)
 


セリス(三ツ矢 光)
 


セリス(三ツ矢 光)
 


◆カボチャの馬車はないけれど
タブロス市・旧市街地。
ここにはかつて隆盛を極めた建物がかつての姿を保ち建ち並ぶ。
その内の一つにとある豪商の邸宅跡地があった。
衰退と共に持ち主の手を離れたものの、幸運にも取り壊されることなく
時代の移ろいを見守っていたこの邸宅跡に再び光が溢れる。

今宵は一夜城となり、甘い語らいを見守る。

◆彩る5人のお姫様
邸宅跡のダンスホールは今日のために改装されていた。
眩い光を放つ豪華なシャンデリアの下には、ダンスを興じる為のスペースと
壁際にビュッフェの並んだテーブル、休憩用に置かれたベルベットの椅子もある。
ダンスホール全体に美しい花々が飾られ、上座にはダンスの為の演奏を務めるオーケストラ。
下座には噴水を中心とした庭園が見えて星空の下で静けさを保っていた。
ビュッフェに用意された料理はワインビネガーで味付けされたローストビーフ、
鮮やかな赤や黄色で彩られたサラダにオードブル、
香ばしい香りの漂うガーリックトーストなど取り分けやすい料理の他に
木苺が乗ったフランボワーズタルト、オレンジピールの添えられた濃厚なチーズケーキ、
カラフルな色合いのマカロンなど可愛らしいデザートも用意されていた。
飲み物もシャンパンやワインにブドウジュースを給仕が来賓に手渡していく。

***

「どどど……どうしよう、どうやって渡せばええねん……」
そんな華やかな会場内で、河上夏樹がぶつぶつと呟きながらシャンパンをあおる。
今日は深紅のミニドレスと、ミディアムヘアの黒髪にブラックシルバーの髪飾りで着飾っている。
緑のメッシュも相まって、さながら深紅のバラのよう。
本人は隠しているが企業令嬢ということもあってか、派手な装いを違和感なく着こなす。
彼女が悶々としている理由は……ハンドバッグに忍ばせた『箱』に理由がありそうだ。
「あの、どうかされたのですか」
「夏樹さん、顔が赤いけど大丈夫?」

そこへやってきたのは八神伊万里とアイリ・ミトラスだ。
伊万里は母親から借りてきたパールピンクのドレスにストールとアンティーク調のバレッタで髪をまとめている、ナチュラルメイクを施した控えめながら上品な出で立ちだ。
だが……ハイヒールに慣れていないせいか、歩きづらそうにしている。
一方のアイリはレモンイエローの爽やかな色合いのドレスを着ていた。
ショートカットの青みがかった黒髪にはいつもの白いリボンではなく、白い花を添えた青いリボンを。
バルーン状のスカートがアイリの活発さにお姫様のような愛らしさを加えて魅力的に引き立てている。
「え、えっと……なんでもないよ……あ、このシャンパン美味しいなぁって!」
照れ隠しに夏樹は悟られないようにごまかそうとする。
「はぁ……その、飲み過ぎないようにして下さいね?」
伊万里はなんとなく察したが、夏樹の心境も解るので胸にしまっておくことにした。
アイリは「うんうん、他の料理も美味しそうだよね!」と明るい笑顔を見せて気づいていない様子だった。
夏樹としては好都合である。そこへさらに
「うわぁ……皆さん、とても綺麗、ですね」
「私、ドレスなんて滅多に着ませんのでドキドキしますわ」

遅れてやってきたのは夢路希望と結城早耶だ。
希望は髪をハーフアップにまとめて、淡いピンクのAラインドレス。
元々身嗜みには無頓着だった希望だが、今日は思い切ってスタッフにメイクを頼んでみた。
ゴールドのアイシャドウにローズピンクのチークと同色のグロスが可愛らしくも大人っぽさを演出していた。
周りに気後れして俯いてしまっているが、彼女も充分魅力的である。
早耶はいつもの着物ではなく、薄紅色のイブニングドレスをチョイス。
ティアードスカートの重なる裾にはフリルと花が散りばめられていて胸元には珍しい梅のコサージュ、
髪にも梅のバレッタをつけて和洋折衷といった感じだ。
心なしか緊張しているのか、辺りをキョロキョロと見回していた。

さぁ、5人のお姫様が絢爛なる社交場に揃った。
彼女達の『王子様』も一人、一人と現れる。

◆白兎の王子様と恥ずかしがりやなお姫様
最初に迎えに来たのは希望のパートナーであるスノー・ラビットだった。
4人の話を傍らで聞いていた希望のもとにスノーは駆け寄っていく。
「ノゾミさん、おまたせ」
「あ、ユキ……い、今来たので、大丈夫です」
スノーは珍しいオークルのタキシードを着ていた、白い髪とウサギの耳も相まって彼の柔らかな雰囲気によく似合う。
希望も一瞬見惚れていたが、恥ずかしがってすぐに目線を下に向けてしまった。
「……?ノゾミさん、顔をよく見せてもらえます?」
スノーは希望の顔を覗き込む、不思議に思い希望も少しだけ顔を上げる。
「やっぱり!ノゾミさん、お化粧してるね……ドレスも似合ってるし、すごく綺麗」
「!!?」
スノーは無邪気に笑顔を浮かべて希望を見つめる。
それを聞いた希望の顔が一瞬にして紅潮し、耳まで真っ赤に染め上がる。
スノーからの感想は希望が今日はどうしても聞きたかった言葉だった。
(……頑張って、オシャレして良かったです……)
希望は心の中で喜びを噛み締めた。
「……?ジュースもらおうか」
スノーは不思議そうに希望の様子を見つめつつ、通りがかった給仕に2人分のブドウジュースをもらう。
金色に輝く液体がシャンパングラスの中で光を帯びてきらめく。
「ありが、とう……ございます」
「思ったことを言っただけだよ、ジュースも美味しいね」
希望はスノーから受け取ったブドウジュースを見つめ、意を決したように一気に飲み干す。
「……ユ、ユキ」
「なぁに、ノゾミさん?」
「……あ、の。エスコート、して、もらえますか……?」
希望は躊躇いがちにスノーに手を差し伸べる、勇気を振り絞ったダンスの申し出だ。
「もちろん!僕と一曲、踊ってください」
スノーは嬉しそうに希望の手をとる、上品な立ち居振る舞いはどこか王子様を彷彿とさせた。
グラスを置いて希望とスノーはダンススペースへと進む。
ちょうどオーケストラも用意が整い、一曲目の曲が演奏されようとしていた。

◆シニカルな王子様と元気娘なお姫様
「どこに行ったかと思ったらここにいたのか」
次にやってきたのはアイリのパートナー、オセ・オーガスタだ。
遅れてやってきたオセの右手にはすでに中身の減っているシャンパンのグラスが握られていた。
適当に目に留まった茶色のタキシードを選んだのか、少しサイズが小さかったようでオセの細くも鍛えられたボディラインがうっすらと浮かび上がる。
「へー……女って変わるもんだな」
「えへへ、可愛い?」
「中身は変わってねぇけど」
「なにそれ!?」
意地悪そうな笑みを浮かべるオセにアイリは頬を膨らませる。
「さぁな……んー、悪くねぇ。いい酒だ」
憤慨するアイリを尻目にシャンパンを飲むオセ、出されたシャンパンが気に入ったのか珍しく上機嫌なのが伺える。
「むー……それにしてもすごいよね、貸し切りでオーケストラにビュッフェとか……私、初めてだよ」
腑に落ちないアイリだったが気を取り直してビュッフェからタルトをひとつ取り、会場内を見渡す。
邸宅の跡地を貸し切って行われているパーティに驚きを隠せない様子だ。
「……ダンスパーティ、ねぇ。オレは興味ねぇがお前はありそうだな」
オセは何かを思い出したのか渋い表情を浮かべる、あまりいい思い出ではないようだ。
「オセはダンスしたことあるの?」
「付き合いでちょっとな……お前は食ってるだけか?」
アイリはフランボワーズのタルトを食べていた。
オセは興味津々なのにビュッフェのテーブルか動かないアイリを不思議に思った。
「踊ったことないし……次のために、今日は雰囲気を味わうの」
木苺の甘酸っぱさが心情を表してるようでアイリはちょっと切なくなった。
気が緩んだせいか、アイリが抱えていたポーチが滑り落ちる。
ポーチのチャックが開いていたようで中から小さな青いリボンの箱が出てくる。
「……あ、それは!」
アイリは拾おうとするが寸でのところでオセが先に手に取る。
「なーに慌ててんだよ、おもしれぇな」
そしてオセはその箱に書かれている文字に気づく。
「……『オセへ』?」

◆ひねくれ者な王子様と真面目なお姫様
伊万里はパートナーのアスカ・ベルウィレッジと庭園に出ていた。
アスカは黒のブリティッシュスタイルのスーツを身に着けていた。
少年らしいあどけなさの残る顔立ちながらピンストライプの入ったスーツを着た姿は大人っぽく凛々しい。
が、窮屈に感じたのか……すでに着崩していてネクタイは緩めて、胸元がくつろいでいる。
伊万里が庭園に連れ出したのは、アスカがなんとなく不機嫌そうだったからだ。
(ホントは、一緒に踊りたかったんだけど……)
誘えなかったことに内心ため息をつきつつ、噴水の傍までアスカと歩いていく。
噴水は大理石で造られていて、円状に象られている。中央から噴き出す水を三段重ねの受け皿が受け止めて段々に水が流れている様子がライトアップされている。
「……ねぇ、そこ座ろうさ?」
唐突にアスカが伊万里に話しかけ、傍らのベンチを指差す。
「どうしたのですか、アスカ君?」
「いいから、座ろ」
アスカはベンチに座り込み、伊万里も遅れてアスカの隣に座る。
目の前には満点の星空が広がり、遠くからオーケストラの奏でる優美なクラシックが聞こえた。
何を話そうかと悩んでいる伊万里とアスカの間に気まずい沈黙が流れる。
アスカからも話を切り出す気配も感じられず、一緒に遠くで輝く星を眺める。
「……アンタさ、なんで履き慣れない靴なんか履いてるのさ」
「!」
唐突なアスカの呟きに伊万里は驚いて目を向けるが、アスカはそっぽを向いていた。
アスカは伊万里が普段は履かないハイヒールで歩きにくそうにしているに気が付き、
気遣ってベンチに座らせたのだ。
伊万里もようやく気づいた、『アスカなりの気遣い』だったのだと。
「ありがとう、ございます」
「……意味わかんないし」
伊万里はお礼を言うがアスカはそっぽを向いたままつんけんと返答する。
……心なしか、耳を赤くして。
すこしだけ、二人の間を心地よく沈黙が流れる。
そして伊万里は、意を決してカカオの精霊からもらったチョコを取り出す。

◆黒狐の王子様と梅の花咲くお姫様
早耶もパートナーであるキイ・カムイを連れて庭園に来ていた。
夜を彷彿とする青色の燕尾服を着た少年は着慣れていないせいか、どこかぎこちない。
「んー……夜風が気持ちいいぜぇ」
「ふふ」
早耶はキイが人目の多い賑やかなところは苦手だろうと思い、誘ってみた。
気持ちよさそうに体を伸ばすキイの姿を見て笑みをこぼす。
「噴水キレイですね、もうすこし近くで見てみましょう」
「あ、馬鹿、走るんじゃねぇ!」
内心、パーティの雰囲気に気持ちが盛り上がっていた早耶は駆け足で噴水に近づいていく。
しかし慣れないドレスとパンプスに足を取られる。
「……きゃぁっ!?」
「危ねぇっ」
危うく体が傾くところでキイが抱き留め、早耶の助けに入る。
早耶の後ろに居たキイがすかさず助けに入れたのは人間の数倍以上の身体能力をもつ精霊の成せる業と言えよう。
「……馬鹿、慣れねぇ格好してるってぇのにはしゃいでんじゃねぇ!」
「うう、ごめんなさい……」
キイは強引に早耶を立たせると叱りつける、早耶も反省してしょんぼりする。
「……幻想的ですね。噴水が光を浴びてキラキラして、星空もこぼれ落ちそうなほど」
「夜だからじゃねぇかい。暗けりゃ電気も付けるし、お天道さんが引っ込みゃあ星が出るってぇもんさ」
早耶の呟きにキイはひねくれた返答を返す……己の言葉にキイが内心嫌気がさしていることを、早耶はまだ知らない。
「キイ、折角ですのでよかったら一緒に踊りませんか?」
早耶はダンスホールから微かに聞こえる演奏でキイにダンスを申し込む。
申し出にキイは眉をひそめる。
「これでも練習したのですから大丈夫ですよ……それとも、嫌ですか?」
「ば、馬鹿!誰も嫌とは言ってねぇさ」
悲しげな表情を浮かべる早耶にキイが慌てて申し出を受ける。
早耶がそっと差し出す手を、キイがためらいがちに取る。
星空の下で、二人きりの舞踏会が始まる。

◆似た者同士の王子様とお姫様
夏樹のパートナーであるソル=デザストルは上機嫌であった。
今日は深紅のスーツに黒の細いタイ、ブラックシルバーのラベルピンで決めていた。
かなり着こなせる人種が限られたチョイスだが、ソルは難なく着こなしていた。
「さすが、俺だね……」
ソルが上機嫌な理由は、両手で抱えているチョコレートの詰まった箱である。
モテる男のステータスとも言える箱を両腕で抱えるほどの数をダンスホール内だけで得たのだ。
「パーティだけあって綺麗な子も多いし、まさに眼福……ん?」
ソルはビュッフェテーブルの近くに『気になる姿』を見つける。
「……いや、まさかね。そんなまさか」
ソルは近くを通りがかった給仕に受け取った箱を預けて、『気になる姿』に近寄っていく。

***

「こうなったら当たって砕けろや。う、うちに出来へんことはない!」
夏樹はあれから一人でシャンパンを飲みながら延々とソルにチョコを渡す方法を考え続けていた。
しかし考えども良策・妙案が浮かび上がることはなく、こうなったらと『出たとこ勝負』に決めた。
夏樹は気合のシャンパンを飲み干してソルを探しに行こうと決めた、その時。
「げっ!?」
ソルがやって来た、ソルは遠目で見つけた時から嫌な予感を感じていたが的中してしまった。
「え?……ちょ、また同じ……!?」
気づいた夏樹とソルは同時に多大な精神的ダメージを負った。

(あれ?俺のファッションセンス、ありきたりすぎ……?)
(またかぶってるとか気持ち悪いんやけど……)

互いに打ちひしがれている所に、演奏していたオーケストラの曲調が変わっていく。
終演へ向けての最後の一曲のようだ。
「……夏樹のことだからビュッフェでずっと食べてたんだろ?最後くらい俺がダンスの相手してやるよ」
気を取り直したソルが夏希に手を差し伸べる。
「なんやそれ!?パートナーほったらかしてた分際で……やったろうやないの!」
ほろ酔い状態で気が大きくなった夏樹は、何故か喧嘩腰でソルの申し出を受ける。
夏樹はふらつく足取りを気合で押さえ込み、ソルのエスコートを受けてダンススペースに立つ。

◆5人のお姫様と王子様に祝福を
希望とスノーはホール内の端に置かれたベルベットの椅子に並んで座っていた。
「ノゾミさん、ダンスとっても楽しかったね」
「う、うん……」
スノーは嬉しそうに先ほどのダンスを思い返していた。
希望は必死のあまり、ほとんど覚えていなかったのが悔やまれる。
「また一緒に踊ろうね、ノゾミさん」
「……ユキ……あの、渡したい物が、あるんです」
希望はハンドバッグからドレスと同じ淡いピンクの箱を取り出した。
「チョコレート、なんですけど……私、あまり男の人と接したことがなくて……」
ぽつりぽつりと言葉を紡いでいく希望に、スノーは穏やかな表情で耳を傾ける。
「わ、私からも……歩み寄れるように、頑張るので……これからも、よろしくお願いします」
希望は今伝えられる、精一杯の気持ちを込めてスノーに箱を差し出す。
「えへへ、ノゾミさんからのチョコ、ずっと待ってた。……僕からも、よろしくね」
「……はい……」
喜んで受け取るスノーの満面の笑顔に希望は照れて俯いてしまう、
そう遠くない日にスノーは希望の笑みを見られるかもしれない。

***

「あ、あの!」
中庭で星空を眺めていた伊万里とアスカだったが、伊万里が会話を切り出す。
「アスカ君は……私のこと、どう思ってる?」
伊万里の問いにアスカは怪訝そうな表情で視線を向ける。
「……なに、急にさ?」
「私は……もっとアスカ君に、信頼して欲しいのです」
突き放した言葉をぶつけてくるアスカに伊万里は自分の想いを伝えようとする。
伊万里の強い意志を秘めた瞳がアスカを見つめ、アスカも応じて見つめ返す。
「せっかく縁があって契約したんですもの……私も一緒に、頑張らせて下さい」
伊万里は想いを伝えるとカカオの精霊からもらったチョコを差し出す。
「……あのさ」
「は、はい?」
「アンタ、化粧すると印象変わるね……嫌いじゃない」
アスカはそういうや伊万里の手から素早くチョコを取り上げて食べ始める。
「え、化粧?……っ!!」
言葉の真意に気づいた伊万里は赤面するのであった……そう。
アスカが伊万里の『ナチュラルメイク』に気づいていたという事実に。

***

「おい、アイリ……この『オセへ』って箱はなんだ?」
「はう……そ、それは」
オセはその『箱』の意味を理解しつつ意地悪く問いかける。
アイリは想定外の事態にあわあわと動揺する。
「なんだぁ、言えねぇのか?」
くくく、とオセは可笑しそうに笑みを浮かべアイリを見つめる。
「そ、それは……これからも、仲良くやっていこうってこと」
「あ?」
「喫茶店の試作品!せっかくだしオセに食べて欲しくて、用意したんだよ」
観念したアイリは目を逸らしながらもオセに自分の気持ちを伝えていく。
「ふーん……どれどれ」
オセは小さな青いリボンの付いた箱を開ける、中にはトリュフが入っていた。
その内の一つをつまみ上げて、オセは口の中に放り込む。
「……オレには甘ったるいがな、悪くねぇんじゃねぇの?」
不安げに見つめていたアイリの顔がパッと明るくなる。
「あは……これからも、よろしくね!」
「……しょうがねぇな」

***

「ステップが滅茶苦茶だよ……酒臭いし」
「そ、そんなことないわ!ソルのリードの仕方が悪いねん」
ダンスホールでは夏樹がソルにリードされてダンスをしているが、ソルの的確なリードに対して夏樹の千鳥足では追いつけなかった。
「……仕方ない……あっちで休もうか」
これ以上は危ないと判断したソルがさりげなくホール端の椅子に夏樹を誘導しようとする。
……パサッ。
「ん?」
「……あ、アカン!」
何かが落ちた音に気づきソルが目を向ける、一瞬遅れて夏樹は落ちたものが自分の用意したチョコだと気づき急いで拾う。
「今のって、チョコ?」
「……そ、そやで。ソルの為にわざわざ用意したんよ!……受け取って、くれる?」
酔って赤くなっていた顔をさらに真っ赤にしてゆでダコ状態になった夏樹が、ソルに箱を差し出す。
ソルは初めて見る夏樹の表情に驚きと、胸に響く『何か』を感じた。
「……ありがとう、自分の為に用意してもらったって聞くと……なんか嬉しいね」
ソルはチョコを受け取ると、今日一番の笑顔を見せた。
夏希もその笑顔につられて、照れ笑いを浮かべる。

***

「もうすぐ終わりなんですね……名残惜しいです」
ひとときのダンスを楽しんだ早耶とキイは噴水を眺めていた。
夜も更けて、月がかなり高い位置で見守っている。
「早耶、風邪引いちまうから中に戻ろうさ……馬鹿は風邪ひかねぇんだろうけど」
キイは冷たい風を感じて早耶をダンスホールに戻るよう促す。
「あ、待ってくださ……きゃ!」
「……!」
早耶が追いかけようとした瞬間、再び足がもつれる。
背を向けていたキイは早耶の声に気づくが一瞬反応が遅れる。

『……ちゅっ』
ドサッ。

瞬間、早耶の唇がキイの唇に触れる。

早耶はそのままキイの上に倒れこみ、気まずい沈黙が流れる。
「あ……あの」
早耶は先に切り出してポーチの中からチョコを取り出す。
「いつも、ありがとう……これからもよろしくお願いします」
用意していた手作りのチョコをキイに差し出す、キイはあっけにとられチョコを見つめる。
「……馬鹿!オマエみたいな危なっかしい奴、ほっとけるか」
キイはチョコを乱暴に受け取ると、早耶を押しのけて背を向ける。
……彼の尻尾は嬉しそうに左右に揺れていた。
気づいた早耶はこっそり笑みを浮かべる。一瞬触れあった『唇の感触』に、戸惑いを感じながら……


***
こうして『恋人達の夜』は無事に終わりを告げた。
しかし今宵の魔法は解けない。

彼女達の未来への『絆』に必ず変わるのだから。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 木乃
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 02月16日
出発日 02月27日 00:00
予定納品日 03月09日

参加者

会議室

  • [7]八神 伊万里

    2014/02/26-20:37 

    今日が締め切りですね。
    字数オーバーで何度も書き直してしまいました……

    私は中庭を歩いていると思います。
    もし会うことがあったらよろしくお願いしますね。

  • [6]アイリ・ミトラス

    2014/02/22-15:45 

    私はダンスホールにしたよ
    チョコの箱抱えてだけど・・・
    ちょびっとだけど人にあったら挨拶とも書いたから
    誰かにできてるといいなぁ

  • [5]夢路 希望

    2014/02/21-21:01 

    えっと、その、初めまして。
    どう過ごすかはまだ考え中ですが…
    宜しくお願いします。

  • [4]八神 伊万里

    2014/02/19-21:05 

    初めまして、よろしくお願いします。
    ダンスパーティー、楽しみだけどやっぱり緊張しますね。
    でも静かな庭園でゆっくりするのもいいかも……
    そういえば、バレンタインのイベントなんですよね。
    チョコレートはどうしましょう……う~ん。

  • [3]河上 夏樹

    2014/02/19-16:04 

    初めまして、河上夏樹です。気軽に夏樹ってよんでね!
    美味しいお酒でも飲みながら楽しくいきたいなぁ。
    どこかで会ったら、よろしくね!

  • [2]アイリ・ミトラス

    2014/02/19-00:53 

    アイリです。はじめまして
    ダンスパーティはじめてでドギマギしてる
    まだメインはどっちに行くか決まってないけど
    どっちも捨てがたいよねぇ。会ったらよろしくお願いします!

  • [1]結城 早耶

    2014/02/19-00:05 

    皆様初めまして。よろしくお願いします。
    バレンタインのダンスパーティだなんて少々緊張してしまいますが、
    めいっぱい楽しめたらと思います……!


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