プロローグ
「あー……疲れた」
相方が段ボールの間に座り込んでそう呟いている。
「もう休憩にしようぜえ。今日はもう無理に決まっているよ」
「ダメ、片付けるの」
あなたは冷たくそう言って段ボールを開き、中身を取り出し始める。
「なんでそんなに真面目なんだよ……」
「だって、このままじゃ俺たちの寝る場所ないじゃないか。いいからお前も働けよ」
「だって重かったんだぞ。俺はこの間の出張の疲れもとれてないんだからな」
「俺だってその出張は行ったよ! ウィンクルムの仕事なんだから!いいから働け!!」
あなたに散々怒鳴られて、相方はしぶしぶ引っ越し荷物に取りかかった。
それから二時間ぐらい、あなたはあなたの荷物を部屋に、相方は相方の荷物を部屋に運び込み続けた。
そうしているうちに日も暮れてきたので、慌ててリビングに電気をつける。椅子の上にヨロヨロと相方が立ち、あなたがその椅子を支える。
「あー……腹すいたな」
「そうだねえ。カップラーメンでも食べる?」
椅子から降りて呟く相方。それにあなたはそう答える。
「カップラーメン~~??」
「すぐ出来るのなんて他にないよ。今日は引っ越しなんだから」
「そうだけど、もう少し手料理っぽいの食べたいな」
「じゃ、お前が作れよ。俺はまだ部屋の手が離せない」
「なんでそんなに冷たいんだよ!」
「仕方ないじゃん。人手は二人しかいないし、荷物は多いし、このままじゃ今夜寝られないし」
現実をつきつけるあなた。
「うう……こんなはずじゃなかった……」
「どんなはずだと思ってたの」
「だって! 同棲なんだぞ!! 同棲!!」
急に、あなたの相方は近隣住民に聞こえそうな声を響き渡らせた。
「今日から、俺とお前が! 一緒に同棲! 今まで以上にもっとラブラブに! もっともっと甘く! そうなるはずなのに、なんで初日から--」
「うるさい黙れ」
あなたは相方の割れ目にチョップを入れた。
「でかい声でわめくな。このあたりは春から新生活で引っ越してきた人達も多いはずだ。これからの人間関係に障害が出来たらどうする。行儀よくしろ」
「…………」
殴られて涙目になっている相方。ちょっとかわいそう。
仕方ないのであなたは相方の頬にさっとキスをした。
「頼りにしてるんだから、困らせないでくれよ。明日はお前の好きなチャーハン作ってやるよ」
「本当か!」
ちょろい事に、相方は尻尾振りそうな勢いで飛びついてきた。やれやれと思いながら背中に手を回してぽんぽん叩いてやる。
今日から新しい生活なんだけど、先が思いやられるな--。でも、こいつとだったら、何やったって楽しそう。
「あ、そうだ。新生活のお祝いに、今夜はカップラーメンじゃなくてラーメン食べに行こうよ」
あなたが誘うと、相方は快くOKの返事をした。
解説
文中では同棲を始めたウィンクルムですが、新生活っぽいものなら何でも受け付けます。
・進級
・進学
・昇進
・転勤
・転職
・引っ越し
その他諸々、春から環境が変わったものなら何でも。あるいは、この春から二人で新しい趣味、新しい習慣を始めた、などというものでもかまいません。どんなことでもプランに書いてください。
★二人で新生活のお祝いにラーメンを食べに行きましたので、300Jrいただきます。プランにラーメンを入れるかどうかは自由です。
ゲームマスターより
新生活をはじめた方々もいらっしゃると思います。応援してます!
リザルトノベル
◆アクション・プラン
アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
◆転機 春からランスも大学生、俺の後輩 学部は違っても、学食とかでは会えるわけだし、朝だって一緒に行ける ◆で今日は サークルの新規勧誘が花盛りなキャンパス ランスと一緒に回る 実は俺はノンサークル 思ったとおり運動系ばかり立ち寄るなあ(苦笑 判例研究会とかどうだろうか? あ、やっぱり?(仕方ないなあ 飛行機部…自動車部…オーガ研究会…??! え?お試しで打ってみろって? 渡されたのはラケットと柔らかいボール 鬼の姿した部員に当てるゲーム…遊園地のアレか… こういうのは楽しいな(打つ 雪崩のような勧誘に気がついたらサインしていたw してやられたなあ ゲームを取っ掛かりにそのままかあ… でも、ま、そうだな テニス… ここにしよう(にこ |
セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
ユキシロが子猫を保護した? そう言えば猫達を保護したのも5月の雨の日だったな…なんて感慨にふけっている場合じゃない。 クロとトラは別室に隔離、ケージと毛布を子猫を運び込んだ部屋へ持って行ったけど。 ユキシロがぴったり子猫にくっついてて、ケージに入れられない。 「これは困った」とラキアを見たら仕方ない顔。 よし、ユキシロが暫く湯たんぽ代わりだな。 [春は家族が増える季節だな」って言ったらラキアがぷっと吹き出した。 ミルクあげるラキアって天使みたいだなぁ(見とれる。 このこの名前どうしようか? タキシード柄の子猫だから「バロン」でどうだ? 「ユキシロ、弟が欲しかったのか?見つけてくれてありがとうな」 と頭撫でて褒める。 |
瑞樹(共夜)
きょーちゃんに拾われてからしばらく経つし、ウィンクルムとしての活動も あるからってきょーちゃんパパが離れに部屋くれたよ。 僕今あんまり物持ってないからあっという間に全部配置し終わったよ。 全部忘れる前の僕はどうだったんだろうなぁ…。うん、部屋汚そう♪ ぼーっとしてたらきょーちゃんに内装買いに行くぞって連れ出された。 お店見て回って、気に入ったのいっぱい見つかったけどお店の人達に散々 「お嬢ちゃん」って言われた…。 僕、男の子だもん…。 ちょっとムッとしたけど引っ越し祝いにきょーちゃんが一つ自腹で 買ってくれるっていうから色違いのお揃いで録音機能付きの目覚ましおねだり。 あとできょーちゃんに声吹き込んでもらおっと♪ |
カイエル・シェナー(エルディス・シュア)
精霊の言葉の元、同じマンションの同じ階に住む事になった それはいいのだが… 『今住んでいる邸宅の方が、職場にも近いし、何より広い』 …頭部に拳骨を受けた… 事実なのに…釈然としない… しかし、問題は山積みだ 少し覚えた事がある これを言えば精霊は怒るだろう しばしそれを悩んでから、告げる 「俺は、家事炊事洗濯、人生において一度もやったことが無……」 『知ってた』 ……あまりの即答に、不安だった瞳をを見開いてこちらが驚く。 話した事は無いはずだが… 『生活臭がしない』? ああ、そういう理由か。 まあ一切自炊出来なくとも、職場に泊まれば支障は無── 強く、こちらの腕を引き、目を覗き込んで言われた言葉に 驚きながらも「…ああ」と頷き |
シムレス(ロックリーン)
そういえば近所に住んでいるの思い出し興味が湧いた ソドリーンの部屋での生活で庶民の部屋のイメージはあるので 「…何もないな 「天井が高い (成程向うでよく頭をぶつけている 「…嫌いじゃない コンクリの内装 天井は配管むき出し 家具は奥に見えるベッドくらい 段ボールに衣服が入ったまま 彼の世話焼きイメージと簡素空間のギャップが新鮮 「これまで見たものを気の向いた時描き出してる 「…凄いか? 「アトリエ?ここで描くのか?(イメージ巡らし …使わせてもらおう、集中はできそうだ 「大げさだ 「3分で出来るファストフードか 「ほう?いいだろう 自分の世界が広がっていく 精霊とは得難い存在…そんな意識が芽生えた様な 桜舞う夜道二人で歩きながら |
●瑞樹(共夜)編
新たなる神人の瑞樹とその精霊の共夜は新生活を始める事になりました。
瑞樹は明るく元気ですが、記憶喪失の13歳の少年です。現在、共夜の家に住んでいます。
瑞樹には共夜に出会う少し前からの記憶がないのでした。自分を知っている人間がいないか尋ねて回っていたところをナンパされ、困っていたところで共夜が助けに入ったのです。
共夜に助けられた瑞樹は安心して気絶してしまい、共夜を押しつぶしてしまいました。起きてみれば記憶喪失です。それで共夜は瑞樹を自宅に連れ帰ったのです。瑞樹はペンダントと腕輪など以外、手がかりらしいものを持っていません。首のロケットに刻まれていたハナミズキから、とりあえず「瑞樹」という名前はつけられました。
怒濤の展開ですが、共夜は全くめげていません。実は一番驚いたのは、女の子にしか見えない瑞樹が男の子だった事だったりします。でも瑞樹は女の子と間違えられると拗ねます。そんな彼の事を、共夜は「目の離せない妹」のように思っています。
そうして、なんやかやで二人はウィンクルムであると発覚したのです。
ウィンクルムとしての活動もあるから、ということで、共夜の父が離れに部屋をくれました。
早速瑞樹は、自分の荷物を離れに運び込みます。瑞樹はあまり荷物を持っていないため、あっという間に配置が終わりました。
(全部忘れる前の僕はどうだったんだろうなぁ……)
物のない部屋を見回しながら、瑞樹は考え込みました。考えても、全然、思い出せないのですが。
(うん、部屋汚そう♪)
ぼーっとしながら可愛い顔で彼はそんなことを思いついます。
「みずきち!」
そこに、共夜が飛び込んで来ました。瑞樹がぼーっとしているのを落ち込んでいるのと勘違いしたのです。だって記憶はないし、持ち物は少ないし。
それで、母親から軍資金をもらって飛んできたのでした。
「どうしたの、きょうちゃん」
「みずきち、母さんからお金もらってきたぞ。部屋の荷物を買いに行こう! 飾りとか、棚とか!」
「え、いいの!?」
ぱっと顔を輝かせる瑞樹。
そうして二人は買い物に出かける事にしました。お店に向かいながらも、二人は仲良く話します。その途中で、共夜は自分の勘違いに気がつきました。瑞樹は別に落ち込んでいません。元々の元気なままです。
(言わなくってよかったぁ! もし口に出してたら俺かっこ悪かったじゃん!)
共夜は内心ほっとします。
お店を見て回ると、瑞樹は素敵な気に入ったものを沢山見つけました。
しかし、瑞樹は行く先々で店員さんに「お嬢ちゃん」と呼ばれてしまいます。
「僕、男の子だもん……」
むっとする瑞樹。
それを共夜がなだめます。
(やっぱりな)
とは、思うのですが、落ち込む瑞樹を放ってはおけません。アイスクリーム屋に連れて行ったり、駅前で鳩を追いかけたりしながら、瑞樹に気分転換をさせてやります。
「そうだ! みずきち! 引越祝いに、俺、一つだけ何でも、自腹で買ってやるよ!!」
気っぷ良く共夜がそう言いました。
瑞樹は嬉しそうな笑顔になります。
「本当? それじゃあね、きょうちゃん……」
瑞樹が選んだのは共夜とおそろいの目覚まし時計でした。共夜のものと色違いで、録音機能のついたものです。
「きょうちゃん、これ、お願い!」
あざとい上目遣いでおねだりをする瑞樹。もう本当に女の子にしか見えません。共夜は、一瞬、赤くなりながら、やや早口で言います。
「お前から言い出したんだからちゃんと愛用しろよ。途中で恥ずかしいからやめたは無しだぞ!」
「もちろんだよ、きょうちゃん、ありがとうね!」
にっこりと無邪気な天使の笑みを見せる瑞樹。二人のウィンクルムの力関係は既に決まってしまっているような……。なんにせよ、末永く仲良くやっていきましょう!
●カイエル・シェナー(エルディス・シュア)編
「お前、神人だろうが! タブロスの中央地区住んでたって、お前に何かあってからじゃ遅いんだ!」
カイエル・シェナーの精霊エルディス・シュアは強くそう主張しました。
半ば怒鳴りつけるように、同居は無理でもせめて同じマンションには住むようにと告げたのでした。
それに対してカイエルはこう返しました。
「今住んでいる邸宅の方が、職場にも近いし、何より広い」
それに対して、エルディスは拳骨を落としました。
(事実なのに……釈然としない……)
エルディスはエルディスで苛々とします。
(妙な所で頑固だから、心から納得しない事にはこいつは同意しない。最近になって少しずつ分かってきた)
それでも、エルディスの意志が伝わったのか、カイエルはマンションに荷物を持ってきました。どうやら同意した模様です。
しかし、とカイエルは思います。
問題は山積みなのです。
少しは覚えた事があります。ですが、これを言えば精霊は絶対に怒るでしょう。
しばらく悩んでから、カイエルはそれをエルディスに告げました。
「俺は、家事炊事洗濯、人生において一度もやったことが無……」
「知ってた」
全部言い終える前に、エルディスははっきりと告げました。
あまりの即答に、カイエルは不安だった瞳を大きく見開いて驚きます。話した事なんてなかったはずなのに。
「だってお前、食器洗ったり料理作ったりする様な生活臭が全くしない」
エルディスはきっぱりと言い切ります。
(ああ、そういう理由か)
カイエルは納得しました。
「まあ一切自炊出来なくとも、職場に泊まれば支障は無──」
自炊出来なくとも、の言葉にエルディスはむかっと来ます。
カイエルの腕をつかんで引き寄せ、その青い瞳をのぞき込みます。
カイエルの瞳の中に映る、エルディスの黒い瞳。
(だから、どうしてお前は全部自分で抱え込もうとするかな!)
--自分たちはウィンクルム。
お前の相棒は目の前にいる--
そう言葉に出して伝えてしまいたいのですけれど、そうは出来ない常識人。そういうことを口に出して言ってしまったら、大切にしていた何かが壊れそう。
「朝夕の飯位作ってやる! だから、毎日、必ず、帰って来い! いいな!」
はっきりきっぱり言い切るエルディス。
「……ああ」
驚きながらもカイエルは頷きました。
エルディスの思い入れにびっくりして、同意はしているものの、まだ何か意志が疎通出来ていない様子。エルディスは軽い頭痛を感じながらも、カイエルのそういう世間知らずで天然ぼけたところは自分が面倒を見るのだと決心を固めています……。
ボンボンならボンボンらしく、人に任せて当然ぐらいに開き直ればいいものを、カイエルは何故か、何でも自分でやってしまおうとするのです。責任感が強いのか、自立することが誇りと思っているのか?? それで本当に何でも隙を見せずにきっちりやり遂げてくれるなら、エルディスも手出しはしないのですが、そうではないのだから、彼が面倒を見てやらなければなりません。それを厭うようなエルディスではないのに、カイエルはそうした事を嫌います。嫌うというよりも、エルディスに任せて頼るという発想自体が最初からないようなのです。
(信用されてないんだろうか……? いや、違うな……。何だろう、この微妙な距離感……?)
まあその距離も、同居で消えて行くと思いますが。
二人暮らしを始める事により、また一歩仲が深まるであろうウィンクルム。
この先どんな騒動に巻き込まれる事やら。
それでも、カイエルにはエルディスが、エルディスにはカイエルがついていれば、どんな苦難も乗り越えられる事でしょう。
●シムレス(ロックリーン)編
ある春の日、シムレスは精霊のロックリーンについて興味が湧きました。彼は近所に住んでいるので部屋を見たいと思ったのです。
シムレスは元々は裕福な家の三男で、神人のためか幽閉に近い生活を強いられていたのでした。ですが、ウィンクルムとして契約をした際に実家とは絶縁しています。だから今は自由にロックリーンの家も訪問出来る訳です。
ロックリーンはシムレスが部屋を見たいと言ったので、早速招待しました。
(僕の事に興味を持ってくれるのは嬉しいな)
素直にそう思います。
シムレスは日を改めてロックリーンの部屋を訪れました。以前に、ソドリーンの部屋に行った事があり、庶民の家のイメージはあります。
「……何もないな」
ロックリーンの部屋を観察して、シムレスはそう言いました。
「家電はソドん家にあるから必要ないんだよね」
「天井が高い」
「これぐらい高さないとタンコブだらけになるから」
ロックリーンは笑っています。
何しろ彼は身長が192㎝もあるマッチョ体型なのです。
(成程向うでよく頭をぶつけている)
シムレスは無表情のまま納得しました。
「……つまんなくない?」
ロックリーンは不安になり、シムレスより20㎝近い上方から上目遣いのような表情になりました。
「嫌いじゃない」
あっさりとシムレスはそう答えました。
コンクリートの壁が剥き出しの内装。
天井は配管が丸見え。
家具は奥に見えるベッドくらい。
段ボールに衣服が入ったまま。
部屋の主の世話焼きなイメージと簡素な空間のギャップが新鮮なのです。
ロックリーンはどこからかクッションを持ってきてシムレスを座らせました。それから持ち込んだお茶を用意して、歓談タイムに入ります。
「シムさんって絵を描くんだね、知らなかったよ」
以前に知る機会があったのです。
「これまで見たものを気の向いた時描き出してる」
「記憶だけで? 凄いね」
ロックリーンは素直に驚きました。
でも、そういえば、シムレスはやたらに記憶力がいいのです。
「……凄いか?」
シムレス自身は普通の事だと思っている様子です。
そこでロックリーンは閃きました。
「ここアトリエに使ってみる気ない? 使うの寝るくらいなんだよね」
ロックリーンは笑顔で身を乗り出しながら言いました。
「アトリエ? ここで描くのか?」
シムレスはイメージを巡らせます。
「……使わせてもらおう、集中はできそうだ」
物がないことがかえって都合がいいのです。
「やった! アーティスト活動応援するよ!」
「……大げさだ」
喜色満面ではしゃいでいるロックリーンにシムレスは呆れているようでした。
善は急げと言います。
「合鍵作りに行こう、帰りはラーメンでも食べようか」
ロックリーンは立ち上がって出かける準備を始めました。
「3分で出来るファストフードか」
すると世間知らずのシムレスは無表情に面白い事を言います。
「それソドの手抜きご飯! ちゃんと料理人さんが作ってくれるやつだから」
ファーコートを肩に引っかけながら、ロックリーンは苦笑いします。
「ほう? いいだろう」
シムレスも早速興味を持ちました。
(シムさんがウチに来る理由が出来た)
ロックリーンはもうそれだけで嬉し過ぎです。
シムレスと一緒に家を出て、軽い足取りで日暮れの道を歩いて行きます。はしゃいで、次々にシムレスに話しかけてきます。
それに答えながら、シムレスは初めての感覚を覚えました。自分の世界が果てしなく広がっていく感覚です。
(精霊とは得難い存在……)
そんな意識さえも芽生えます。
桜の舞う夜道を二人で歩きながら、楽しい会話はつきませんでした。
●アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)編
アキ・セイジと精霊のヴェルトール・ランスは春から新生活が始まります。
ランスがこの春から大学生になり、セイジの後輩になるのです。
(学部は違っても、学食とかでは会えるわけだし、朝だって一緒に行ける)
セイジはそう思うと胸が沸き立って毎日が楽しく感じられます。
一方、ランスは
(セイジはホストから離れて欲しがってたんだけど……ごめんな、我侭言って)
ホストのバイトの方は好きで続ける事にしたのですが、セイジにちょっぴり罪悪感を抱いているようですね。
大学に入るとすぐに、セイジはランスにキャンパス内を案内しました。キャンパスは部活やサークルの新入生勧誘でとても華やかです。
「そういえばセイジは何のサークル?」
「俺はノンサークル」
「あー、入ってないのか。どうりで全然話題でないと思ったよ。なら一緒に入ろうぜ!」
そう言ってランスは親指を立てました。
ですがセイジは渋ります。勉強や趣味の株取引の時間が少なくなってしまうと気になるのです。
そのセイジをランスはまず勧誘しました。あれこれと勧めて見て、トドメは「就職で有利」。これです。
真面目なセイジにとっては、サークルで遊ぶ事よりも、就職関係の方が効くのです。
「セイジは法曹界に入るんだと思ってたけど……一般就職狙い?」
「秘密だ」
「ちぇっ」
不敵に笑って秘密と言うセイジに、ランスは悔しそうです。
「俺達付き合ってから結構たつけど、まだまだ知らない事だらけだな」
「刺激の無い関係は壊れやすいだろ」
「へえへえ」
ランスはつまらなそうですが、内心、会話を楽しんでいます。
(セイジが俺達の関係をサラッと肯定するようになるなんて嬉しい変化だ)
最初はセイジは、顕現は不本意だし、男と愛を結べなどととんでもないと思っていたのです。そのことを考えると大きな成長です。
それから二人はサークルの勧誘を見て回りました。
(思ったとおり運動系ばかり立ち寄るなあ)
ランスの後をついてまわりながらセイジは苦笑します。
「判例研究会とかどうだろうか?」
「そんなものないよ!」
「あ、やっぱり?」
そんな会話をしながら見て回った先は、飛行機部……自動車部……オーガ研究会…??! 本当に大学のサークルというものは何でもありです。それならセイジ好みの判例研究会があってもよさそうなものですが。
似たようなものはないかとセイジが華やかな勧誘の間をうろうろしていると、テンションの高い運動部員に捕まりました。
「え? お試しで打ってみろって?」
ある運動部の勧誘で渡されたのはラケットと柔らかいボールです。
そして、コートの中の鬼の仮装をしている部員にボールを当てるゲームでした。
(遊園地のあれか?)
そう思いながらもセイジはラケットでボールを打っていきます。逃げる部員にうまくあてていきます。隣ではランスも同じゲームをしています。
(こういうのは楽しいな)
セイジ達の運動神経を見てやたらに褒めちぎってくるテンション高い運動部員。雪崩のような勧誘に、気がついていたら部活の書類にサインしていました。
(してやられたなあ。ゲームを取っ掛かりにそのままかあ……でも、ま、そうだな)
セイジは悪い気はしていません。隣で汗をかきながらいい笑顔のランスを見ます。
「テニス……ここにしよう」
セイジが言うと、ランスは大きく頷きました。
「帰りに用具を買ってかね?」
「もちろん」
「そう来なくっちゃな!」
春からランスは大学生でセイジの後輩。それをきっかけに、二人はテニス部に入り、キャンパスライフを謳歌することになりました。きっと輝くほどに楽しい新生活が待っている事でしょう。
●セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)編
セイリュー・グラシアと精霊のラキア・ジェイドバインは春から新しい生活を迎える事になりました。
ある午後、ラキアがレカーロのユキシロの姿が午前中から見えないと、探しに行くと、庭先の木の根元にじっとしているのを見つけたのです。
「ユキシロ? どうしたの? 怪我?」
不思議に思って、心配しながらラキアは近づいていきます。
「あっ……」
そして、驚きました。ユキシロは脇に小さな仔猫を抱え込んでいたのです。
手先足先が真っ白、胸~お腹も白だけと後は真っ黒な白手袋タキシード仔猫です。
夕べは強い雨が降っていました。そのせいか、仔猫は衰弱して体温が低くなっているようでした。
そのままにはしておけないので、ラキアは子猫とユキシロを家の中に入れました。
先住猫のクロとトラからは隔離して、別の部屋に入れます。
「仔猫用のミルクはこんな時用に常備してあるから……」
去年、クロ達の世話をしているので勝手は分かっています。ラキアはてきぱきと仔猫の面倒を見ます。
そうしてバタバタしているところに、出かけていたセイリューが帰ってきました。
「ユキシロが仔猫を保護した?」
仔猫を育てるようになって以来、セイリューはラキアの家に同居をしています。だから彼も仔猫の事はよく分かっています。
(そう言えば猫達を保護したのも5月の雨の日だったな……)
まだ小さかったクロとトラの事を思い出し、セイリューは感慨に耽ります。でもそうしてもいられません。
ケージと毛布を仔猫を隔離した部屋に持ってきます。
それで仔猫を暖め、安全を確保しようとしました。
ですが、ユキシロが仔猫にくっついて離れず、ケージに入れる事が出来ません。
「これは困った」
そうしてラキアを見ると、彼も仕方なさそうな顔をしています。
「よし、しばらくユキシロが湯たんぽだな」
そう決めた時に、別の部屋でクロとトラが長い声で鳴いているのが聞こえました。自分たちの存在をアピールしているようです。
「春は家族が増える季節だな」
クロたちとの生活も去年始まったと思い、セイリューがそういうと、ラキアがぷっと吹き出しました。
「春は出会いの季節だものね」
ラキアもそう頷きます。
(新しい家族が増える事はとても嬉しい事だよ。気が付いたらもう大家族だよね。ふふ)
そうして、ラキアは仔猫にシリンジでミルクをあげました。
それを見てセイリューは見とれてしまいます。
(仔猫にミルクをあげるラキアは……天使みたいだ)
それからふと気になってラキアに尋ねました。
「仔猫の名前は決めた?」
「ううん、まだ」
「どうしようか」
「……どうしようね」
「タキシード柄の子猫だから”バロン”でどうだ?」
「バロン。良い名前だ。そうしよう」
それで決まりました。
セイリューは仔猫にくっついているユキシロの頭をゆっくりと撫でました。
「ユキシロ、弟が欲しかったのか? 見つけてくれてありがとうな」
褒められ、撫でられて、ユキシロはうっとりと目を細めています。
ラキアの腕の中の仔猫のバロンも、ミルクを一生懸命飲みながら、幸せそうな表情なのでした。
クロやトラがきっかけとなり、セイリューとラキアは同居を始めました。
レカーロのユキシロも家族に加わり、家の中はふわふわでもふもふ、ぬくぬくした幸せでいっぱいです。この子達は沢山の幸せと、愛の絆をセイリューとラキアに与えてくれました。
仔猫のバロンもきっと沢山の幸運、ぬくもりを運んできてくれる事でしょう。新しい命、新しい生き物の存在はいつだって暖かな光に満ちているのです。セイリュー達はそのことをよく知っています。だから、腕の中の小さな存在に感謝の念さえも覚え、これから始まる新しい生活に期待と希望を広げます。
「お前達もみんな……ありがとう、だ」
仔猫の眉間をこつんと小突いて、セイリューとラキアは幸せそのものに微笑んでいるのでした。
依頼結果:大成功
MVP:
名前:セイリュー・グラシア 呼び名:セイリュー |
名前:ラキア・ジェイドバイン 呼び名:ラキア |
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 森静流 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 男性のみ |
エピソードジャンル | コメディ |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 04月13日 |
出発日 | 04月21日 00:00 |
予定納品日 | 05月01日 |
参加者
- アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
- セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
- 瑞樹(共夜)
- カイエル・シェナー(エルディス・シュア)
- シムレス(ロックリーン)
会議室
-
2016/04/19-02:35
僕、瑞樹。それでこっちが精霊の共夜だよ。
よろしくねー
-
2016/04/18-15:35
カイエル・シェナーと精霊のエルディスだ。宜しく頼む。
「せめて同じ場所に住め!」と言われたは良いが、
そもそもこのマンションは絶対的な間取りが狭──(がつんと殴られた音とともに沈黙) -
2016/04/17-00:22
ロックリーン:
よろしくお願いします
(し…シムさんが僕の部屋を見たいだって!?)
ソワソワ -
2016/04/16-12:29
-
2016/04/16-11:04