【桜吹雪】桜の咲く元で踊りましょう(春夏秋冬 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

「仮装ダンスパーティに参加するデートはどうですか?」
 落ち着いた口調で、A.R.O.A.職員が、アナタ達にデートプランを提案してきました。
 なぜそんな提案をしてきたかと言えば、城下町『サクラウズキ』で起っている事件のせいです。
 ギルティ『ヴェロニカ』により城下町『サクラウズキ』では、昼の世界『サクラウズキ』と、夜の世界『サクラヨミツキ』が新たに発生しています。
 そのまま放置すれば、世界に歪みすら起こしかねません。
 それを防ぐ為に、ウィンクルム達に昼の世界『サクラウズキ』でデートをして貰い、発生している瘴気を浄化して貰う必要があるのです。
「仮装ダンスパーティですが、明るい昼中では街中の散策を、夜になれば仮装したまま、ヨミツキに囲まれた広場でダンスパーティが行われるそうです」
 そこまで言うと、詳細の書かれたパンフレットを渡してくる。
「仮装に使う衣装は、自前の物を持って来られても良いですし、パンフレットに書いてあります協賛店に訪れれば、仮装ダンスパーティに参加される方達に限り、無料で貸し出してくれるそうです。お互い衣装を選び合うというのも、デートとして楽しいかもしれませんね。どうでしょう、参加してみませんか?」
 言葉は丁寧だが、結構な勢いでお勧めしてくる職員にアナタ達は――?

解説

 詳細

 サクラウズキで、仮装ダンスパーティに参加するデートをして下さい。

 日中は、街の散策や衣装探しなどに関わるデートを、夜になればサクラウズキの名物である桜、ヨミツキに囲まれた広場での野外ダンスパーティに参加する事になります。

 衣装に関しては、自前の物を持って来ても良いですし、協賛店で選んでみても、どちらでも好きな方を選んでください。
 よっぽど極端な物でなければ、どのような衣装でも自由ですし、用意されます。
 イロモノ系から落ち着いたドレス姿まで、自由に選んじゃって下さい。

 街の散策に関しては、カフェやブティックや小物店などを巡る事が出来ます。
 その際、仮装する衣装を着て散策しても良いですし、ダンスパーティまでは着ずに散策する事も可能です。

 そういったお店で売っているであろう商品でしたら、自由に購入できます。

 購入費用に関しては、参加費用500Jrを支払って頂ければ、それ以上の費用に関しては、瘴気の浄化依頼ですので経費として出ますので、500Jrを超える事はありません。

 ただし、あまりにも極端に高額な物を買われるプランを出された場合、金額が下がる商品に変わります。

 例 数カラットのダイヤの指輪→シルバーのペアリング

 とはいえ、あくまでも極端な物に限りますので、それほど気にされなくても大丈夫です。

 ダンスパーティに関してですが、社交ダンスのような物からフォークダンス、あるいは盆踊りのような感じの物まで行われます。
 例に挙げた物以外でも、プランに書いて頂ければ、それに沿った描写になります。
 ダンスの種類に合わせ、広場で演奏される曲調が変わりますので、それに乗って踊る事になります。
 踊らない時は、食事や飲み物が振る舞われたりします。
 大抵の物が用意されているので、自由に注文できます。

 以上です。
 それでは、楽しいデートをして頂ければ幸いです。

ゲームマスターより

 日中は、お店を回ったりするデートを楽しんで頂きつつ、夜には、妖しいほどの美しさを見せる桜『ヨミツキ』が咲き誇る中で野外ダンスパーティを楽しんで貰う。

 そういう楽しんで頂ける物になると良いなと思いつつ、判定にリザルトノベルに頑張ります。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

リチェルカーレ(シリウス)

  昼 
衣装探し
桜をイメージした服がいいな
ありがとう だけどシリウスも着てね?
目を見開くのに笑って
お祭りだもの わたしに選ばせて
大丈夫よ ピンクの服を選んだりしないから
久しぶりに見る 自然な彼の表情に笑顔


春の桜姫 淡い桜色のシフォンドレス
髪はアップに ドレスより濃いピンクのリボンを編み込み
いつもと違ったシリウスの姿に息を飲んで

シリウスは目の色が鮮やかだから空の色も似合うね
…とってもすてき

聴こえてきたワルツに緊張の面持ちで
…踊ってくれる?
返ってきた答えに頬を染めて はにかんだ笑顔

気分転換になった?
無理に平気なふりをしないで
心が壊れてしまうから
眠れないならわたしを呼んで
あなたが眠るまで いつまででも子守歌を歌うから


クロス(オルクス)
  ☆借衣装(ダンスパーティーのみ
・ヘブンリーブルーのプリンセスドレス 月と桜の刺繍
・薄い青色で桜柄のショール

☆心情
・オルクスと別れて暫く経ってはいるが少し気不味い
(俺から別れを切り出したからなんとなく気不味い…
けど普通にしとかないと…)

☆日中
・ブティック等をまわる
・雑貨屋で好みの奴を見付けるが似合わ無いと思い買わず

☆夜
・社交ダンス
・慣れてないがオルクに合わせて踊る

「わぁ、夜桜の場所で踊るのか!
風情があって良いなぁ!
オルク、とても似合ってるぞ(微笑
なっ何言ってんだ!(照
~~っ!(手の甲にキスされ頬が赤く染まる
俺、踊った事ないぞ!?」

☆ダンス後
「あ、これ…
良いのか?
ふふっ流石オルクだ、有難う(微笑」


桜倉 歌菜(月成 羽純)
  仮装パーティなんてワクワク♪

昼間、羽純くんと一緒に仮装する衣装を探す
自分の着る服もですけど…やっぱり羽純くんの仮装を張り切って選びたいんです(メラメラ)
羽純くんを格好良くプロデュース!…なんちゃって

わ、このマタドールの衣装素敵…!
羽純くん、これにしない?絶対似合うから

うふふ、私はジプシーの踊り子な衣装にしよう♪
ちょっと胸元開いてて恥ずかしいけど…仮装だし!(気合

ダンスパーティに参加
羽純くんと踊るのは社交ダンス
闘牛士さんを誘惑する可愛い牛ですよ♪…なんちゃって

何も言わなくても息が合って…楽しい
羽純くんと手を繋げば、それだけで幸せなの

踊ったら疲れちゃったね
デザート食べるでしょ?羽純くん
はい、どうぞ


八神 伊万里(蒼龍・シンフェーア)
  散策しながら衣装選び
淡いピンクのイブニングドレス
そーちゃんが選んでくれてすごく可愛い、けど…うさ耳!?
恥ずかしいけど…そーちゃんのお願いなら、いいよ
昼も仮装で過ごす

ダンスはワルツ
踊りながらふと相手の顔を見て
何だか難しい顔してる…?
月に思い入れがあったみたいなのに今は消えちゃってるから、へこんでるのかも
瘴気の浄化、頑張らないと
意気込みと慣れないダンスとで緊張気味になり足がもつれる

すごい、どうして考えてたこと分かったんだろう
…でもね、私、任務だからそーちゃんと一緒にいるわけじゃないよ
もちろん任務は大切だけど
またあの月を二人で見たいから頑張ってるの
月が元に戻った時はまた攫ってくれる?なんてね…えっ?


ミサ・フルール(エリオス・シュトルツ)
  ☆心情
彼は『毎晩隣の部屋から聞こえてくるすすり泣きが鬱陶しいだけだ』というけれど
私を元気づける為に今もこうやって外に連れ出してくれる
シュトルツさんは本当は優しい良い人なんじゃないかな

☆街の散策
(団体客にぶつかり転びそうになったところを精霊に助けられ)ご、ごめんなさい、眼鏡が・・・っ、(恋人にそっくりな素顔に口を両手で覆う)・・・私は大丈夫ですから・・・助けてくださって有り難うございます
(力強い手に懐かしさを感じ)・・・お父さん(涙ぐみ、小声で)

☆ダンスパーティー
(白色のプリンセスラインのドレスに身を包んで)・・・似合いますか?(はにかむ)
シュトルツさん・・・?
お言葉に甘えてリードお願いしますね



●ダンスの前にも楽しもう

 夜桜に囲まれる中、仮装ダンスを楽しもう。
 そんな、瘴気を払う為のデート依頼を受けたウィンクルム達は、夜が訪れる前もそれぞれ楽しんでいた。


 仮装ダンスパーティの衣装選びに、桜倉 歌菜と月成 羽純は協賛店がひしめく商店街に訪れていた。
 しばし巡り選んだのは、豊富な品ぞろえと広々とした店内のお店。
 そこで2人は和気藹々と衣装を選んでいく。
「わ、このマタドールの衣装素敵……! 羽純くん、これにしない?」
 黒基調の紅いマントのマタドール衣装を見つけた歌菜は、羽純の元へ持って行く。
(少し派手な気もするが……そんなキラキラした目で見られたら、断れないな)
 苦笑するように笑みを浮かべ衣装を受け取った羽純は、早速お着替え。その姿に、
「良かった! やっぱり似合うよ!」
 羽純くんを格好良くプロデュース! と意気込んでいた歌菜は喜んだ。
 喜んでくれる歌菜に、羽純は嬉しさを感じながら問い掛ける。
「歌菜はどうするんだ?」
「うふふ、私はジプシーの踊り子な衣装にするね♪」
 そう言って、華やかな衣装が集められた場所に行く。歌菜が選ぶのを手伝うように、一緒に見ていた羽純は、
「踊り子なら……じゃあ、あの紅いドレスはどうだ?」
 自分が着ている衣装の色合いと引き立てあうようなドレスを見つけ勧める。
「これが良いの?」
 歌菜が手に取ったドレスは、よく見れば胸元が開いた艶やかな物。少しばかり着るには勇気が要りそうではあったが、
「ちょっと胸元開いてて恥ずかしいけど……仮装だし!」
 羽純が選んでくれた物だからと、それを着る事を決意する。
 そして衣装を選んだものの、まだ時間はあったので、他の衣装も試したり、空いた時間に商店街を仲良く散策する二人だった。


 ミサ・フルールは、エリオス・シュトルツに連れられて城下町を散策していた。
 咲き誇る桜並木を、いま2人は歩いている。
 そうして共に歩きながらミサは、
(シュトルツさんは本当は優しい良い人なんじゃないかな)
 そう思っていた。
(だって『毎晩隣の部屋から聞こえてくるすすり泣きが鬱陶しいだけだ』というけれど、私を元気づける為に今もこうやって外に連れ出してくれるのだから)
 その思いが、ミサの表情を柔らかくする。
 苦しい想いを抱える彼女は、どこかかげりを見せていたが、けれど今この時、エリオスのお蔭でそれが軽くなっているのは事実だった。
 そんな彼女を気付かれないように見詰めていたエリオスは思う。
(ようやく少しずつではあるが笑顔を見せるようになったな。だがまだこの娘の精神は不安定だ、保護者の俺が導いてやらねばな)
 それはお互いを思いながらも、触れ合う事の無いような想い。
 けれどそれは、少し壊される。
「ご、ごめんなさい、眼鏡が……っ」
 いつの間にか進路の重なった団体客にぶつかりそうになったミサは、エリオスに引き寄せられ助けられたが、その時受け止めたエリオスは眼鏡を落し、誤って踏み壊してしまう。
「眼鏡など心配せんでいい。それより怪我はないか?」
 そう言って自分を見詰めるエリオスに、ミサは驚き口を両手で覆う。
 それはエリオスに、恋人の面影を見てしまったから。愛おしくも、同時に心掻き乱す彼の面影に、息をすることも出来ない。
 けれどすぐに、心配させないよう無理に笑顔を浮かべ返す。
「私は大丈夫ですから……助けてくださって有り難うございます」
 どこか迷い子のような不安を見せる彼女をエリオスは、
「息子はこの私に似たからな、私の素顔を見るのは辛いか?」
 そう言うと、応えを返せないでいるミサの手を力強く取り、
「また転ばれては面倒だ、手を引いてやる」
 支え導くように、共に歩く。導かれる力強い手に懐かしさを感じながら、
「……お父さん」
 誰にも聞かれないほど小さく、涙ぐみながらミサは呟くのだった。


 気不味さを少し感じながら、クロスはオルクスと共にブティックや雑貨屋を見て回っていた。
 瘴気を払う為のデート依頼とはいえ、別れて暫く経った相手とデートしているのは気が引ける。
(俺から別れを切り出したからなんとなく気不味い……けど普通にしとかないと……)
 そう思い、出来る限り平静を装う彼女にオルクスは、
「クー、あまり考えるな。最初の関係に戻ったと考えれば気が楽だろ?」
 とでも言いたげに、クロスとのデートを楽しむ。別れても気にせず再アタック中な、彼らしい前向きさだった。
 そして2人で巡っていると、一つの雑貨店に差し掛かる。そこは女性物の小物が充実しているお店。
 思わず手に取ってしまいそうになる可愛らしいアクセサリーなどが種類豊富に置かれている。
 気を引かれたクロスに、オルクスは共に店に入った。
 店内は混雑しているというほどではないが、活気があり賑わっている。
 そんな中、クロスは商品を品定め。幾つもの商品を手に取り見て回っていると、目を惹かれる物が。
 藍色の桜カチューシャに、十字架ヘアピン。
 デザインの良いそれを、クロスは手に取るものの、
(似合わない、かな……)
 気が引けたのか、商品棚に戻してしまう。
 それにオルクスは気付くと、クロスが他の商品を見て回っている間に手に取り購入する。
 店内がほど良く賑わって居る事もあり、クロスはその事に気付かない。
 プレゼント用に包装して貰うと、外からは中身が見えないように、貰った紙袋に入れる。
「なにか良い物があったのか?」
 店を出る際に聞いて来るクロスに、
「ああ、良い物を見つけたんだ。それより、そろそろ衣装を探しに行こう」
 オルクスは話を逸らすと、クロスを誘うように連れ立って行くのだった。


 城下町を散策していた八神 伊万里と蒼龍・シンフェーアは、衣装選びに良いブティックを見つけ選んでいた。
「うん、良く似合っているよ」
 自分が選んであげた淡いピンクのイブニングドレスを着る伊万里に、蒼龍は称賛の言葉を贈る。
 それに伊万里は、嬉しそうに笑顔を浮かべ返す。
「ありがとう。そーちゃんは、どんなのを着るつもりなの?」
「僕は白のタキシードにシルクハットとモノクルだね。怪盗のイメージだよ」
 そう言うと、次いで茶目っ気のある笑みを浮かべながら、
「ウサギの令嬢を今夜頂きに参りました……ってね。というわけではい、このうさ耳カチューシャもつけてね」
 いつの間にか用意していた、うさ耳カチューシャを差し出す。それに伊万里は、
「そーちゃんが選んでくれてすごく可愛い、けど……うさ耳も!?」
 少しだけ驚くような様子を見せたが、
「恥ずかしいけど……そーちゃんのお願いなら、いいよ」
 はにかんだ笑みを浮かべ照れながらも手に取り付ける。
「かわいいよ、凄く」
 すかさず褒める蒼龍。そして彼もお着替え。
 連れ立って歩くことを考え、色合いが合うように店員が用意したそれは、2人で一つの一枚の絵のようにピッタリと似合っていた。それもあってか、
「せっかくだから夜までこの格好でいようよ」
 蒼龍の申し出に伊万里は頷き、夜まで城下町巡りデートをするのだった。


 協賛店のお店の一つで、楽しげに衣装を選ぶリチェルカーレを、シリウスは目を眇めて見つめていた。
「良さそうな物は見つかったか?」
 シリウスの問い掛けに、お店が用意していた椅子に座りながら衣装のパンフレットを見ていたリチェルカーレは朗らかに返す。
「桜をイメージした服がいいな、と思って。ピンクの色合いの物を探しているの」
「いいんじゃないか? 似合うと思う」
 ポツリと返すシリウスに、リチェルカーレは嬉しそうに無邪気な笑顔を向ける。
 それに誘われるようにシリウスも笑みを返したが、
「ありがとう。だけどシリウスも着てね?」
 リチェルカーレが続けた言葉に動きを止め、目を見開くようにして、次いで眉を寄せる。
 そんな彼にリチェルカーレは笑いながら、
「大丈夫よ。ピンクの服を選んだりしないから」
 安心させるように言うと、
「お祭りだもの、わたしに選ばせて」
 楽しそうな笑顔を浮かべながら言った。
 ころころと笑うリチェルカーレを見て、やれやれとシリウスは苦笑する。その笑顔は優しげで、心から自然に零れるような笑顔だった。
 久しぶりに見るシリウスの自然な表情に、リチェルカーレは笑顔を浮かべる。
 そんな彼を見ているだけで、リチェルカーレは嬉しかった。
 喜びに包まれながら、衣装を選ぶ2人だった。

 こうして皆が衣装を選び、城下町を散策する内に、夜のとばりは降りていき、やがて仮装ダンスパーティの時はやって来た。

●夜桜の元、踊りましょう

 月明かりが入り混じる夜の薄闇。その彩りに化粧した桜、ヨミツキは妖しいほどの美しさを見せていた。
 仮装ダンスパーティは、そんなヨミツキに囲まれた広場で行われる。
 夜の薄闇とヨミツキの美しさを壊してしまわないよう調整された灯りの中、ダンスに合わせ音楽は流れ、ウィンクルム達はパートナーの手を取った。


 羽純は、自分を待ってくれている歌菜に、寄り添うように近付く。
「闘牛士さんを誘惑する可愛い牛ですよ♪ ……なんちゃって」
 照れを隠すように言いながら笑みを浮かべる歌菜を、羽純は見詰める。
 彼女の着ているドレスは、昼の明かりの元では色合いや装いが強すぎたが、いま夜の薄闇が滲むこの場では融け込んで、彼女の魅力を映えさせる。とはいえ、
(歌菜に勧めておいてアレだが……思ったより色っぽい衣装だったな……目のやり場に困る)
 歌菜の魅力が強すぎて、少しばかり羽純は心が跳ねる。
 けれど同時に、素直な気持ちも湧き上がり、
「よく似合ってる」
 想いを彼女に告げた。歌菜は嬉しそうに笑顔を浮かべ、
「羽純くんも似合ってるよ」
 嬉しそうに言った。事実、似合っている。羽純の服装も、昼の明かりの元よりも、今の薄闇が融け込むこの場所の方が引き立っていた。
 お互いがお互いに心を躍らせながら、2人はダンスに誘われる。
「一曲踊って貰えますか?」
 羽純は手を差し伸べ、歌菜を誘う。
「喜んで」
 言葉を交わし、手を取り引き寄せると、2人は踊り始める。
 手を繋ぎ、社交ダンスを。
 流れる曲は何処か情熱的で、それでいて軽やかだった。
 曲に合わせ2人は踊る。言葉無くとも想いを重ね、息の合った足取りで。
 お互いを見詰めながら、繋ぐ手に喜びを。ダンスに合わせ重なる気持ちに楽しさと、何よりも幸せを感じとる。
 それは見ているだけで心地良い、心重ねるようなダンスだった。
 やがて曲の終わりと共にダンスは終わる。けれど喜びと楽しさ、そして幸福は消えずに残る。
 ダンスの余韻に包まれながら2人は、
「踊ったら疲れちゃったね。デザート食べるでしょ? 羽純くん」
「ありがとう。だが、歌菜も食べろ。俺一人で食べても味気ない」
 甘い甘いデザートを、
「はい、どうぞ」
「ほら、口を開けろ」
 食べさせ合う、ごちそうさまな二人だった。


「……・似合いますか?」
 夜の薄闇が滲む中、白色のプリンセスラインのドレスに身を包み、はにかむように言うミサを、改めて意識して見詰めたエリオスは、
「……サリア」
 思わず息を呑み、小さく呟いた。
 ミサの姿に重なるようにして、エリオスは心に浮かんだ誰かを思い出してしまったからだ。
「シュトルツさん……?」
 気遣うような響きを滲ませるミサの声に、
「いや、なんでもない。気にするな」
 エリオスは安心させるように返すと、
「それよりも、踊るとしよう」
 誘うように手を差し出す。するとミサは手を重ねながら、僅かに不安な表情を見せる。
「どうした、社交ダンスは不慣れか?」
 エリオスの問い掛けに、即座に返せないでいるミサに、
「安心しろ、リードしてやる」
 力強く言うと引き寄せる。ミサは身を任せるように引き寄せられると、
「お言葉に甘えてリードお願いしますね」
 エリオスに自分をゆだねるようにダンスに足を踏み出す。
 桜の花びらが舞う中、2人は踊る。
 白のタキシードを身につけたエリオスは堂々たる気品すら感じさせ、常にミサをリードする。
 手を重ね踊りながら、時折2人は視線を交わす。
 けれどその眼差しは相手を見詰めながら、どこか違う誰かを見詰めているようだった。
 それでいて、お互いがお互いを確かめ合うように。
 2人は踊り続けるのだった。


「わぁ、夜桜の場所で踊るのか! 風情があって良いなぁ! 凄く綺麗だ!」
 夜桜に囲まれたダンス会場にクロスは、はしゃぐように声をあげる。そんな彼女にオルクスは、
「あぁ綺麗だ……夜桜もだが、クー……、キミの方が素敵だぞ」
 クロスを見詰め素直な気持ちを口にする。それにクロスは、
「ありがとう。そんなに服、似合ってるかな?」
 照れと共に嬉しそうに返した。
 彼女の選んだ衣装は、精緻な月と桜の刺繍の入ったヘブンリーブルーのプリンセスドレス。その上に、薄い青色で桜柄のショールを掛けていた。
「もちろん似合うとも」
 当然だと返すオルクスに、
「オルクも、とても似合ってるぞ」
 微笑を浮かべ、クロスも彼の衣装を見て褒める。
 オルクスの衣装は、白の立襟シャツの上に黒のベストとジャケット、そして下は上に合わせた色合いのズボン。要所要所に銀糸で入れられた狼の刺繍と、紅い蝶ネクタイがアクセントとなって装いを際立たせていた。
 オルクスは、自分に笑い掛けてくれるクロスを大事そうに見つめると、
「さぁ踊ろう、オレのお姫様」
 手を差出しダンスに誘う。
「なっ、何言ってんだ!」
 思わず照れたように返したクロスに、オルクスは跪き手の甲にキスをする。
「~~っ!」
 思わず声も出せず赤面するクロス。そんな彼女をオルクスは、立ち上がりながら引き寄せ、
「さあ、踊ろう。クー」
 ダンス会場へと導く。それに慌ててクロスは、
「俺、踊った事ないぞ!?」
「大丈夫、オレに合わせれば踊れるさ」
 オルクスは言葉通り、彼女をリードし2人は踊るのだった。
 そして踊りが終わり、オルクスはサプライズな贈り物を。
「クー、やるよ。どうせ似合わないと思ったから買わなかったんだろうからオレからのプレゼント」
 それは昼間買う事の無かった、藍色の桜カチューシャと十字架ヘアピン。
「あ、これ……良いのか? ふふっ流石オルクだ、有難う」
 微笑む彼女に、
「クーの事ならお見通しさ」
 笑みを浮かべ返すオルクスだった。


 テンポの良い舞曲に合わせ、伊万里と蒼龍はワルツを踊る。
 蒼龍は軽やかに、伊万里は少しぎこちない。
 伊万里がそうなっているのは、慣れないダンスと蒼龍と踊る緊張感から。
 そしてもう一つ、強い意気込みが理由だった。
(瘴気の浄化、頑張らないと)
 その意気込みは、蒼龍を想っての物でもある。
 踊りながら蒼龍の顔を見詰めた伊万里は思う。
(何だか難しい顔してる……? 月に思い入れがあったみたいなのに今は消えちゃってるから、へこんでるのかも)
 蒼龍の気持ちが少しでも晴れるよう、伊万里は頑張っていたのだ。
 とはいえ、頑張り過ぎる思いが踊りのぎこちなさに繋がり、足がもつれる。
 それを即座に支えるように抱き留める蒼龍。
「あ、ありがとう」
 恥ずかしさで、ほのかに頬を上気させる伊万里に蒼龍は、
「ねえ、このままで聞いてくれる?」
 抱きしめたまま、語り掛けるように言った。
「瘴気浄化の任務も大切だよ。でもね、任務だからとかそのためだけじゃなくて、僕といること自体をもっと楽しんで欲しいな」
 自分が思っていた事に気付いていた蒼龍に、伊万里は驚く。
(すごい、どうして考えてたこと分かったんだろう)
 驚きながら自分を見詰める伊万里に、蒼龍は柔らかな笑みを浮かべ続けて言った。
「確かに月が消えちゃったのは僕も嫌だし早く取り戻したいけど。それ以上にイマちゃんと一緒に過ごしてるこの時間を大切にしたいんだ。あんまり思いつめないで」
 相手を想い安心させるような言葉に、伊万里はじんわりと温かな気持ちが湧いていく。
 けれどそれと同じぐらい強い気持ちで、蒼龍を想い伊万里は返した。
「私、任務だからそーちゃんと一緒にいるわけじゃないよ。もちろん任務は大切だけど、またあの月を2人で見たいから頑張ってるの。だから――」
 抱きしめられていた伊万里は自分の足で立つように、それでいて繋がりを大切にするように手を重ねながら、蒼龍を見詰め言った。
「月が元に戻った時は、また攫ってくれる? なんてね」
 そしてはにかむように笑顔を浮かべる。その笑顔は蒼龍にとって、魅力的な笑顔だった。
 答えを聞いた蒼龍は嬉しそうに微笑み、伊万里の前で跪く。
「……え?」
 驚く声を上げる伊万里の手を取ると、
「仰せのままに、お嬢様」
 手の甲にキスをした。
 声も出せず赤面する伊万里。
 そんな彼女を引き寄せリードしながら、蒼龍は伊万里と共に踊り続けた。


 リチェルカーレがダンスの装いとして選んだのは、春の桜姫をイメージさせる淡い桜色のシフォンドレス。
 髪はアップにしてドレスより濃いピンクのリボンを編み込んでいる。
 それに対してシリウスの装いは、夜桜をイメージしたもの。
 藍色とアイスブルーの騎士服に、留め具に紫の石を付けたマントを纏っている。
 2人が並ぶと、リチェルカーレの装いをシリウスの装いが惹き立てながら、それでいて調和している。
 周囲で咲き誇る夜桜を背景に、2人は1枚の絵のように似合っていた。
「シリウスは目の色が鮮やかだから空の色も似合うね。……とってもすてき」
 いつもと違うシリウスの姿にリチェルカーレは息をのみ、想いを口にする。
 その表情には、晴れ渡る青空を思わせる春色の笑顔が溢れていた。
 見詰めるシリウスは、リチェルカーレの春色の笑顔に僅かに目元を赤くして、
「――お前の方が似合ってる」
 囁くように、聞こえるかどうかの声で呟いた。
 その言葉にリチェルカーレが何かを返すよりも早く、ワルツの調べに周囲は包まれる。
 ダンスの始まりを告げる舞踏曲に、リチェルカーレは緊張した面持ちで、
「……踊ってくれる?」
 そう言うと手を差し出そうとする。けれどそれよりも早く、
「……こういう時は、男から誘うものだろう?」
 シリウスは彼女の為に手を差し出した。
 言葉よりも、花開くような笑顔を返し、リチェルカーレはシリウスの手を取る。
 頬を染め、はにかんだ笑顔で見つめてくるリチェルカーレに、シリウスは微笑みで返し彼女を引き寄せた。
 軽やかにテンポ良く、ワルツの調べに合わせ2人は踊る。
 息を合わせ、お互いを見詰めながら、言葉無くとも想いが繋がるようにダンスを楽しんでいく。
 踊る毎に心も体も軽やかに、余分な物は消えていく。
 あとに残るのは素直な想い。相手を思いやる温かな気持ちを胸に、リチェルカーレは語り掛けるように言った。
「気分転換になった? 無理に平気なふりをしないで、心が壊れてしまうから」
 驚いたよう見詰めるシリウスを、
「眠れないならわたしを呼んで。あなたが眠るまで、いつまででも子守歌を歌うから」
 リチェルカーレは安心させるような微笑みを向けながら言うのだった。
(眠れない夜。繰り返される悪夢を見抜かれていたのか)
 シリウスは苦笑を浮かべ目を伏せる。そして、
(――かなわないな)
 想いを胸に、繋いだ指に力を入れるのだった。

 かくして夜桜の元、ダンスパーティは終わる。昼の行動と合わせて、瘴気が晴れていったに違いない、そう思わせてくれるウィンクルム達だった。



依頼結果:成功
MVP
名前:リチェルカーレ
呼び名:リチェ
  名前:シリウス
呼び名:シリウス

 

名前:八神 伊万里
呼び名:イマちゃん
  名前:蒼龍・シンフェーア
呼び名:蒼龍さん、そーちゃん

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 春夏秋冬
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ロマンス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 04月07日
出発日 04月16日 00:00
予定納品日 04月26日

参加者

会議室


PAGE TOP