春の風にひらり舞う(木口アキノ マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

 今日は快晴。
 長い冬が終わりを告げ、暖かな春の陽光。
 冬の間にはできなかったことがしたくなる。
 そう、洗濯物を外に干し、洗い立ての衣類に存分に陽の光を浴びせたい。太陽の持つパワーすらも取り入れるように!
 久々に外で干した衣類はどんなに気持ちがいいことだろう。
 あなたは春の陽気に誘われるように、洗濯を終えたばかりの衣類を外に干し始めた。

 一方、あなたの精霊は用あって外出した先で、あなたが好みそうな菓子を見つけていた。
 買って持っていけば、神人は喜ぶだろう。
 そう思って精霊は菓子を買い、あなたの家へと向かうのであった。

 すっかり暖かくなったとはいえ、時折、強い風が吹く。
 その日も快晴ではあったが、そんな日であった。

 ぴゅるり、一陣の風が吹き。
 洗濯物を攫っていった。
「きゃあ、大変!」
 あなたは急いで洗濯物を追うべく外へ出る。

 ぴゅるり、一陣の風が吹き。
 あなたの家の傍まで来ていた精霊の元へ、ある物を運ぶ。
 ぱさり。
 目の前に落ちたそれを、精霊は何の気なしに拾う。
 あなたは息せき切ってその場へたどり着く。
 精霊と目が合う。
 彼が手にしていたのは、あなたの洗濯物―――洗い立てのぱんつ、だった。

 2人の間に、気まずい沈黙。
 そして………どうなる?

解説

 さて、その後の2人にはどんなやりとりが?
 とりあえず、ずっと精霊が神人のぱんつ握りしめているのもアレですので、ぱんつは取り返しておきましょうか。
 その後は、精霊が買って来てくれたお菓子を2人で食べて、気まずくなった空気を追い払いましょう。
 気まずくなる(2人の性格・関係によってはあまり気まずくならないペアもいるかもしれませんが)→気まずさを追い払いいつも通りの仲に戻る、までがミッションです。
 お菓子代として【300ジェール】いただきます。
 ぱんつの形状をプランで指定していただけるとより楽しめるかもしれません。
 お菓子も希望があれば指定してください。

ゲームマスターより

 こともあろうにぱんつです。
 困ったハプニングです。
 昭和の少年向けラブコメのようなシチュエーションを楽しんでいただければ、と思います。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

月野 輝(アルベルト)

  待って、ちょっと待って!
どうしてよりによってこのタイミング!?

あまりの事に固まってたらアルの一言でハッ!
そして、バチン!!思いっきりひっぱたいてたわ
そしてソレを奪い取って猛ダッシュで部屋に駆け込み扉を閉めたの
もうっ!
……でもアルの好みって大胆な物なのかしら

思わずドアの前で考え込んでたらアルの声
確かに、他の人に拾われるよりは…だけど恥ずかしい…
でも考えてみれば、アルは落ちた洗濯物を拾ってくれただけなのよね
そう思い始めたら謝罪の言葉
少しだけドアを開けて
私もひっぱたいてごめんなさい…

目の前に差し出された箱に目を瞠る
アル様子に思わず笑って
「お茶にしましょうか」

そうね、一緒に暮らすんだもの
慣れないとよね


夢路 希望(スノー・ラビット)
  下着:
ピンクでフリルの清楚系


…あ、あの…それ…
私のですとは言えずに赤面
そっと手を出し返してアピール

とりあえず家の中へ(下着はとりあえず別室へ
…どうしよう
恥ずかしさと気まずさで顔を見れません
俯いているとお菓子につられ視線が合う
思わず逸らたけれど、服の袖を掴み
…ありがとうございます
飲み物、入れてきますね
…何がいいですか?

トレーに頂いたお菓子とカップを乗せ
お待たせしました
謝られたら慌てて
いえ…拾っていただいたのにすみません
ありがとうございました

見られた恥ずかしさは残ってるけど気まずさは薄れ
一緒に、食べましょう?

視線に気付き小首傾げ
スノーくん?
似合う、って、え
…あまり見つめられると恥ずかしいです…


エリー・アッシェン(ラダ・ブッチャー)
  洗濯していた下着
冷え性対策の健康赤パンツ

自宅
鬱蒼とした林に囲まれた古い洋館
日なたの庭に洗濯物を干していた

心情
うふふ。温かい季節の洗濯物は心が晴れやかになりますね。

行動
きひょええぇっ!?(パニックで奇声)
そんなこと解説しないでください!

返してもらい気まずそうに視線を泳がせる。
どうも……。
ええと、今日はなんのご用でしょう?

いえ。ラダさんが来てくれて嬉しいです。
お菓子も楽しみです。
予想外のハプニングはありましたが……。(ボソッ)
お茶を用意しますね。

あら……、でも大丈夫!
多少見た目が変わっても美味しいはずですよ。

ペチッと軽く精霊の額を叩く。
もうっ!
おバカなこと言ってないでケーキをいただくとしましょう。


桜倉 歌菜(月成 羽純)
  わ、私のぱん……羽純くんが!!(大混乱
ち、違うの!それはぱんつじゃなくて、えとそのあの…こ、小物入れ!小物入れなの(混乱が極まって、何を言ってるか分からなくなる

あ、ありがとう(受け取ったぱんつは服のポケットに入れ隠す)
どうぞ上がっていって(自分の部屋に通す
今、お茶入れるね

お茶の用意をしながら深呼吸
何でよりにもよって、羽純くんなの…
お気に入りのショーツだけど…子供っぽいと思われなかったかな?

羽純くん、お待たせ
紅茶で良かったかな?
ミルク多めで砂糖は抜きだよね
美味しそうなチョコレート
うん、美味しい♪
あ、手が汚れちゃうから何か拭くものを…
ポケットからまたアレが…!
こ、子供っぽいよね…(恥
え?…よかった


藤城 月織(イリオン ダーク)
  先日の作戦での詫びだと、数日前にわざわざ家に来て渡されたプレゼント
開けたら黒で紐の透け透けれぇす(絹)?!
穿くかぁッ!と投げて追い返したものの
物は良さそう、高そう、シルクは着心地が良いらしい
何かの時のための備え(意味深)にしようと、後で拾ってこっそり洗った矢先の事故

取り返そうとするも取り返せず
な…なんっ…ッ!
赤面
肩で息

っぐ、ぜっ全部ですっ!

(…ぱんつくらいじゃ顔色一つ変えず、しかもよりによって拾われたのが例のぱんつだなんてっ!

入れたら返してくれるんですね
あとまだ穿いてませんからね!(謎の主張

(まさか好きなもの、覚えててくれたなんて…(感動
潔い詫びと好物満載の手土産に、あっという間に絆される



 イリオン ダークは、目の前にふわっと落ちた黒い何かを拾い上げた。
 見覚えのある物に似ていると思ったからだ。
 それは、布、正確に言えば衣料品であった。
 そして案の定、見覚えのあるあれであった。
 話は数日前に遡る。
「先日の詫びだ」
 藤城 月織の家を訪れたイリオンは、彼女に贈り物の包みを渡す。
 月織に思い当たるのは、依頼先でイリオンのせいで「オトーフ」なるものに縞パンを見られたうえに、「もう少し色気のあるヤツはなかったのか」と暴言を吐かれたこと。
 あのときは「絶赦!」と怒り心頭であったが、わざわざ家まで詫びの品を持ってきてくれたのだ。
「そんな、気を使わなくっても……でも、ありが……と……?」
 包みを開けて月織は固まる。
 そこにあったのは黒で紐で透け透けれぇす、しかもシルク製のぱんつであった。
『そう言うなら黒のれぇすとか買ってください、今回の報酬で!』
『わかった、黒で紐で透け透けれぇすな』
 そう言えば売り言葉に買い言葉でそんなやり取りがあったっけ。
 だからと言って、本当に買って来るとは……。
(絶赦!)
「穿くかぁッ!」
 月織はれぇすのぱんつを丸めてイリオンに投げつけ、彼を追い返したのであった。
 そして今、イリオンの手中にあるのはまさにそのぱんつ。
 投げつけられたからといって持ち帰るのも憚られたので、そのまま神人のもとに置いてきたぱんつなのだが。
(どうしてここに?)
 イリオンがぱんつをまじまじと見つめていると、慌てたように近づいてくる足音が。
 顔を上げると、そこにいたのは月織。
「な…なんっ…ッ!」
 イリオンと彼が持つぱんつとを交互に見て状況を理解したようだ。
 何か言いたげに口をぱくぱくさせている。
 言葉が出てこないようなので、イリオンが先回りしてやる。
「何でいるんですか、何で持ってるんですか、何しに来たんですか、何で返さないんですか……のどれだ?」
 冷静に淡々と言われると、月織1人で焦っているのが滑稽に思えてくる。
(……ぱんつくらいじゃ顔色一つ変えず、しかもよりによって拾われたのが例のぱんつだなんてっ!)
 悔しさと羞恥が月織を襲う。
「っぐ、ぜっ全部ですっ!」
 イリオンはなるほど、と頷くと、全てに答えてくれた。
「お前の家に向かっていたからここにいる、落ちてきたから拾った、用があってきた、だから家に入れろ、そしたら返す」
 無表情を崩さないイリオンにぐぬぬとなりつつ、月織は怒鳴る。
「入れたら返してくれるんですね、あとまだ穿いてませんからね!」
 まだ穿いてないからなんだと言われればそれまでの謎の主張である。
 一度は投げつけたぱんつではあるものの、物は良さそうだし、高そうだし、シルクは着心地が良いらしいし、ということで、何かの時のための備えにしようと、後で拾ってこっそり洗った矢先にこんなことになるなんて。
 月織はぎりりと唇を噛み締めながらイリオンを家に迎え入れた。
 何かの時のための備えってなんなんだ?と思うかもしれないが、そこは深く追求しないでおく。
 家にあがるとイリオンは約束通りぱんつを返してくれた。月織はそれを引っ手繰るように受け取った。
 イリオンから差し出されたのはぱんつだけではなかった。
 近所でちょっと名の知れた菓子店のロゴが入った紙袋。
「先日は悪かった。別に悪気はなかった」
 イリオンの口から潔く詫びの言葉が出たこと、そして、予想外の手土産に月織は先程までの怒りを忘れ、素直に紙袋を受け取った。
 中身は粉状ナッツ入りのナッツフィナンシェとマロウブルーのハーブティー。
(まさか好きなもの、覚えててくれたなんて……)
 いつも無表情で月織に対しても興味なさそうな彼が。それって、なんだか……。
(感動……)
「イリオンさん」
 月織が顔を上げるとイリオンはまさに帰ろうとしているところ。
「一緒に、お茶しましょう」
 月織は笑顔でプレゼントされたばかりの紙袋を持ち上げ、誘う。
 鼻歌を歌わんばかりの上機嫌でお茶の用意を始める月織。
 少し前まで、あんなに怒りを露わにしていたのに、こんな簡単に絆されるとは。
(……こりゃ俺がしっかりしてねぇと拙いな、単純すぎて悪い奴に付け込まれないか心配だ)
 イリオンは無表情ながら胸に一抹の不安が生じたのであった。


 これは、なんだろう。
 スノー・ラビットは飛んできた綺麗な布切れを広げて確かめてみる。
「……!!」
 清楚ながらもフリルで飾られたピンクのそれは、まごうことなきぱんつ。
 大変なものを拾ってしまった。
 一体、誰の……いや、これどうしよう。
 思案していると、控えめな足音と、聞き慣れた声。
「……あ、あの……それ……」
「ノ……ノゾミさん!」
 女性用ぱんつを広げているところに好きな子が登場!なんて最悪なタイミングなのか。
 スノーは必死で弁明の言葉を考える。
 そんな彼に、真っ赤になって手を差し出す夢路 希望。
 その様子を見れば、皆まで言わずともこの清楚ぱんつの持ち主が誰であるかわかる。
「……」
 スノーも真っ赤になり、無言でそっと希望の手にぱんつを返した。
 2人の視線は微妙に合わず、無言の中に気まずい空気が流れる。
(恥ずかしい思いさせたよね)
 スノーは希望に謝りたかったが、この気まずさに耐えられない。
 まずは、空気を変えよう!
 スノーの会話術をもってすれば、2人の意識をぱんつから僅かでも遠ざけることはできるだろう。
「あのね、これ…ノゾミさん好きかな、って」
 菓子店のギフトボックスを持ち上げて見せれば、俯いていた希望の顔も一緒に上がる。
 目が合ったのでスノーは微笑むが、すぐに視線を外されてしまう。
 一瞬、まずい、このくらいじゃ許されなかったか、と思った。
 だが、
「……ありがとうございます」
 と希望がそっとスノーの服の袖を引き家の方向へと誘ってくれたので、スノーはほっと安堵の息を漏らした。
 家に入り、スノーが手土産を渡すと希望は
「飲み物、入れてきますね」
 と、微笑んでくれはしたが、視線は合わせてくれない。
「……何がいいですか?」
「あ…じゃあ、紅茶をお願いしてもいいかな?」
 こくんと頷くと、希望はキッチンへと引っ込む。
 スノーは椅子に座り希望を待つが、手持ち無沙汰な時間というのは、どうしても余計なことを考えてしまう。
 スノーの脳裏に清楚なピンク色の布が舞う。
(ああいうのも履くんだ……)
 って、何を想像してるんだろう!
 スノーは慌ててぶんぶん頭を振り脳内からいけない想像を追い出す。
「お待たせしました」
「……あ、ありがとう」
 紅茶と動物デコのマカロンが乗ったトレイを持った希望が現れるまでに、なんとか想像を打ち消すことができた。と思う。
 いただきます、と一口良い香りの紅茶を口に含むと、幾分心が落ち着いた。
「……さっきは、ごめんね」
 自然に、謝罪の言葉が出てくる。
 希望は慌てて顔を上げる。
「いえ…拾っていただいたのにすみません。ありがとうございました」
 ほんのり頬を染めながらもにこりと笑う。
 それにつられてスノーも照れ笑い。
 見られた、見てしまった恥ずかしさは残るけれども、微笑み合えばいつもの2人。
「一緒に、食べましょう?」
 希望が小皿に乗ったスノーの手土産である可愛らしい動物マカロンを1つ手に取る。
「うん」
 スノーはウサギの絵がついた苺マカロンに手を伸ばした。
 ウサギ……。
 何かが思い出された。
(初めて偶然だけど見ちゃった時のは可愛い兎さんだったのに)
 せっかく追い出したいけない想像、再び。
(アレは専門店とかで見る系の可愛いデザインだよね)
 頭の中にぱんつを思い浮かべながら、つい希望を見つめる。
 視線に気付き希望は小首を傾げる。
「スノーくん?」
「……似合うだろうな」
「似合う、って、え?」
「あ、ううん、何でもない」
 スノーは慌てて首を振るが、その笑顔には締まりがない。
 そんなスノーの想像に気付いているのかいないのか。
「……あまり見つめられると恥ずかしいです……」
 マカロンを齧りながら、希望はまた俯いてしまうのだった。


 月成 羽純は降ってきたそれを冷静に検分していた。
 パステルカラーにレースの……サイドのリボンも愛らしい。
(ハンカチか何かと思って拾ってしまったが……)
 どうやらこれは、ぱんつだ。
「わ、私のぱん……っ!!」
 そこへ、大慌てでやってきた桜倉 歌菜と鉢合わせる。
(羽純くんが!!)
 歌菜はびしっと固まると、見る見るうちに赤面する。
 なるほど、このぱんつは歌菜のものか、と羽純は納得した。
 歌菜は、羽純が自分のぱんつを拾い上げているという事実に思考がオーバーヒート。
「ち、違うの!それはぱんつじゃなくて、えとそのあの…こ、小物入れ!小物入れなの!」
 混乱極まり、自分でも何を言っているかわからない。
 小物入れなわけあるか。
 なんて、突っ込む余裕は羽純にもなかった。
 ぱんつなど、布切れにすぎない。しかし、それが歌菜のものとなれば話は別だ。
 長時間の所持は危険である。羽純の理性が。
 混乱のあまり硬直している歌菜に、
「お前のか?気を付けろよ」
 と、さも、ぱんつに興味なんてありません、というような顔でそれを渡した。
「あ、ありがとう」
 歌菜は受け取った小物入れ、もといぱんつをスカートのポケットにそそくさと押し込んだ。
「どうぞ上がっていって」
 歌菜は赤い頬のまま、羽純を家に招き入れ、自分の部屋に通す。
「ああ、お邪魔するよ」
 羽純の方は、先程あったことなど無かったような振る舞い。
だが。
「今、お茶入れるね」
 歌菜が部屋から出て行くと、はーっと大きな息を吐き頭を抱える。
 あんなにバッチリ見てしまったものが記憶から消えるわけがない。
 歌菜が席を外している今の内に落ち着こう。
 歌菜も歌菜で、お茶の用意をしながら深呼吸を繰り返していた。
(何でよりにもよって、羽純くんなの……)
 羽純に拾われたことも問題だが。
(お気に入りのショーツだけど……子供っぽいと思われなかったかな?)
 こっちの方が大問題だったりするのだ。
「羽純くん、お待たせ。紅茶で良かったかな?」
 悩みを抱えつつ紅茶を運ぶ歌菜。
「サンキュ。紅茶で問題ない」
 羽純は目を細め礼を言う。
「ミルク多めで砂糖は抜きだよね」
 羽純の好みはもう把握している歌菜である。
 紅茶のお供に、と羽純は手土産のチョコレートの箱を差し出した。
「美味しそうなチョコレート」
 歌菜の瞳が輝いた。
「限定品のチョコでな、歌菜と一緒に食べたかったんだ」
 歌菜と羽純はひとかけずつチョコレートを口に入れる。
「うん、美味しい♪」
 歌菜の顔がほころび、羽純も笑顔を見せる。
 和やかな雰囲気が2人を包む。
「あ、手が汚れちゃうから何か拭くものを……」
 歌菜は咄嗟にポケットからハンカチを取り出した。いや、ハンカチのつもりだった。
「!?」
(またアレが!)
 2人同時に硬直し、仲良く真っ赤になる。
「こ、子供っぽいよね……」
 しばしの沈黙を破ったのは恥じらう歌菜の言葉。
 羽純は瞳を瞬かせる。
見られたことより、そっちの方を気にしていたのか、と。
 こほん、と軽く咳払いしてから、羽純は口を開く。
「いや……子供っぽくなんてない」
 視線を彷徨わせ、「寧ろ」と続ける。
「寧ろ……色っぽくて困るくらいだ。お世辞じゃなく……」
「え……」
 羽純は歌菜の手を取り引き寄せ、自分の胸に当てる。
「ほら、俺の心臓、ドキドキしてるだろう?」
 羽純の鼓動が歌菜の手に伝わる。
「……よかった」
 歌菜が照れ笑いを浮かべる。
「俺の方こそ、歌菜が嫌がっているんじゃなくてよかった」
 2人は安堵しつつも、触れ合っている緊張からか胸の高鳴りはしばらく収まらなかった。


 鬱蒼とした林に囲まれた古い洋館の日なたの庭で、はためく冷え性対策の健康赤パンツ。
「うふふ。温かい季節の洗濯物は心が晴れやかになりますね」
 エリー・アッシェンは干し終わった健康肌着たちを眺め、満足そうな笑顔。
 そこに、強い風が吹いた……。

「なにこれ超イカス!」
 ラダ・ブッチャーはケーキショップのショーウィンドウにべたりと張り付いた。
 ガラスの向こう側には、モンスター風にデコレーションされたカップケーキ。
 チョコレート製の目玉と視線が合って一目惚れ。
「エリーの家に持っていこうっと」
 きっとエリーも気に入ってくれるに違いない。
 早速購入し意気揚々とエリー宅へ向かうラダの前に、ひらり、と飛んできた赤い物体。
 狩猟本能が働いたのか、これは何だ、と思う前に体が動いていた。
 その瞬間脳裏からは手に持ったケーキの箱の存在は綺麗さっぱりと消え、ジャンプして後方宙返りを決めつつ飛んできたそれをはっしと掴む。
 ケーキの箱の中でぐしゃっと音がしたが聞こえていない。
 ラダは捉えた物を確認する。
「ウヒャァ、赤い下着なんて意外とセクシー……、いや違うっ!」
 それはセクシーなものとは次元が違った。
「色は派手だけどデザイン的にお婆さんとかが愛用してるパンツだよぉ!」
 その健康パンツを追っていたエリー、パンツを眺めるラダを見つけて目を白黒させた。
「きひょええぇっ!?」
 パニックのあまり奇声を発しつつラダに駆け寄り、
「そんなこと解説しないでください!」
 と、真赤な顔で叫ぶ。
 その必死な形相から、この健康パンツの持ち主が誰か、ラダにもピンときた。
「あ、ごめーん……」
 きまり悪そうな顔でエリーに健康パンツを手渡す。
「どうも……」
 エリーは気まずそうに視線を泳がせながらも、
「ええと、今日はなんのご用でしょう?」
 と突然の訪問理由を訊ねる。
「お菓子持ってきたんだけど……。帰った方が良い?」
 先ほどのエリーの取り乱し方から、今は和やかにお菓子を楽しむ気分ではないかもしれない、とラダなりに気を使う。
「いえ。ラダさんが来てくれて嬉しいです。お菓子も楽しみです」
 エリーはぱっと顔を上げて答える。帰るだなんてとんでもない。
 視線を少しずらしてボソッと
「予想外のハプニングはありましたが……」
 と付け加えるがすぐに気を取り直す。
 ラダを家に招き入れ、
「お茶を用意しますね」
 と微笑む。
 いつものエリーに戻った、とラダは安心し、ケーキの箱を開ける。
「あーっ!?」
 しかしラダからは悲痛な声があがった。
「せっかくのケーキが大惨事だよぉ!」
 アクロバティックに健康パンツを捕まえた時に、ケーキが潰れてしまったのだ。
「あら……、でも大丈夫!」
 エリーも目をぱちくりさせるが、すぐに笑顔に戻った。
「多少見た目が変わっても美味しいはずですよ」
 ラダは箱を開ける時に指に付いてしまったクリームをぺろりと舐めた。確かに美味しい。
「うんうん。見た目は不格好でも中身で勝負ってわけだねぇ」
 ラダの返答にエリーは満足そうに頷く。
 そんなエリーの様子をチラッと伺い、ラダは
「……パンツもまたしかり……、というオチで一件落着だねぇ?」
 なんて冗談を言う。
 例え色気皆無の不恰好なパンツでも、履いている本人の資質で勝負、というわけだ。
 エリーはむむっと唇を結ぶと、ペチッと軽く精霊の額を叩く。
「もうっ!おバカなこと言ってないでケーキをいただくとしましょう」
 ラダは額を抑えて照れ笑い。
 そんな2人の様子を、崩れたカップケーキモンスターのチョコレート製の目玉がじっと見ていた。
 楽しいティータイムは始まったばかり……。


 それほど遠くまで飛ばされていなくて助かった。
 視界に逃げたぱんつを捉えた月野 輝だったが、ぱんつの先にアルベルトの姿も発見する。
(待って、ちょっと待って!どうしてよりによってこのタイミング!?)
 輝の心の叫びも虚しく、アルベルトは足元に落ちているぱんつを拾う。
 拾われてしまった。
 あまりの出来事に輝は硬直する。
 一方アルベルトは平然とした顔でぱんつを手にしたまま輝に近づくと、一言。
「白のレース……清楚でいいが、もう少し大胆な物も似合うかもしれないな」
 アルベルトとしては、気遣いのつもりでそう言ったのだ。硬直してしまっている輝の気持ちを解きほぐそうとして。
 だが。
 バチン!
 反射的に輝の体が動き、アルベルトの頬を引っ叩いていた。
 そしてソレをアルベルトの手から奪い取ると、猛ダッシュで部屋に駆け込み扉を閉める。
「しまった、怒らせたか」
 輝は扉に背を預け、怒りと羞恥で顔を真赤にしていた。
「もうっ」
 もう少し、こっそり渡してくれるとか、他の方法はなかったのかと思う。
 しかも、あんな事を言うなんて。
(……でもアルの好みって大胆な物なのかしら)
 アルベルトの言葉を思い返し、輝は考え込んでしまう。
 好きな人がどんなぱんつを好むのか。気になってしまうのもまた乙女心。
 そこへ、扉が外側からノックされる。
「輝」
 向こう側から、アルベルトの声。
 輝の気持ちを慮ってか、扉を開けることはしなかった。
「私としては拾ったのが私でむしろ良かったと思ったのだがな。他の通行人に拾われてたら目も当てられなかった気がするんだが」
 落ち着いた声でそう告げられる。
 確かに、アルベルトの言うことももっともだ。もし他の男性に拾われていたら、どうなっていただろう。
(……だけど恥ずかしい……)
 拾ったのがアルベルトだからこそ、の恥ずかしさもある。
 しかし、時間の経過とアルベルトの言葉が輝を冷静にさせた。
(でも考えてみれば、アルは落ちた洗濯物を拾ってくれただけなのよね)
「怒らせたことは、悪かった」
「……」
 いつも輝をからかって、時にはわざと怒らせるようなことも言うアルベルトが素直に謝ってくれている。
 輝は意地を張るのをやめた。
 少しだけ扉を開け、半分だけ顔を見せる。
「私もひっぱたいてごめんなさい……」
 おずおずと謝ると、扉の隙間の向こうにケーキの箱が掲げられ、輝は目を瞠る。
「お詫びに苺のケーキはどうだろか」
 ケーキの箱につられ扉をもう少し大きく開けると、左頬に輝の手形を残したままでいつものように微笑むアルベルトが見えた。
 輝は思わず笑ってしまう。
「お茶にしましょうか」
 そしてアルベルトを部屋に招き入れた。

 湯気を昇らせ良い香りを放つ紅茶と苺のケーキに幸せそうな表情を見せる輝。
「どうやら機嫌は直ったか」
 アルベルトに問われ素直に頷く。
「一緒に暮らす事になるんだから、こう言う事にもう少し慣れてくれると嬉しいんだが」
 アルベルトは柔らかく苦笑した。
 一緒に暮らす。何気なく言われたその言葉に、この先訪れるであろうアルベルトとの生活を想像し、輝の胸は高鳴った。
(そうね、一緒に暮らすんだもの。慣れないとよね)
 恋人同士から、さらに近しい存在へ。
 その階段を、こうして少しずつ登っていくのだ。これからも、2人で。



依頼結果:成功
MVP
名前:月野 輝
呼び名:輝
  名前:アルベルト
呼び名:アル

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 木口アキノ
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 03月27日
出発日 04月02日 00:00
予定納品日 04月12日

参加者

会議室

  • [8]桜倉 歌菜

    2016/04/01-23:57 

  • [7]桜倉 歌菜

    2016/04/01-23:56 

  • [6]エリー・アッシェン

    2016/04/01-19:12 

    いけないっ! ご挨拶がすっかり遅れてしまいました!
    皆さん、どうぞよろしくお願いします。

    それにしても……、なんということでしょう……。
    風にパンツを飛ばされるなんて……。とほほです。

  • [5]藤城 月織

    2016/03/31-23:08 

    神人の藤城月織と……パートナーのイリオン・ダークさん、です
    皆様どうぞよろしくお願いします……(どよーん

    あぁほんとなんなんだろう
    私何か悪いことしちゃったのかな
    その罰なのかな
    よりによって……くぅぅっ(思い出して悶える

    ……もう消えたい……消えてなくなりたいっ(頭抱え

  • [4]桜倉 歌菜

    2016/03/31-01:33 

  • [3]桜倉 歌菜

    2016/03/31-01:33 

    桜倉歌菜と申します。
    パートナーは羽純くんです。
    皆様、宜しくお願い致します♪

    よ、よりにもよって、どうして羽純くんのところに飛んでいったんだろう…!
    うう、何とかこの空気変えなきゃ!

    頑張りましょうねっ

  • [2]月野 輝

    2016/03/30-18:46 

  • [1]夢路 希望

    2016/03/30-00:23 


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