【薫/祝祭】シュガーフラワー(森静流 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 きらきら、きらきら……。
 天から何かが降り注いできます。
 そう、それは女神ジェンマ様が降り注ぐ慈愛、祝福の金平糖。
 ブランチ山脈にあるフラーム神殿の周囲には、祝福の金平糖がまるで霰のように降り注いで散らばっているのです。
 ブランチ山脈の奥深く。
 フラーム神殿より少し奥に進んだところ。
 そこに、澄んだラムネの湖があります。
 ラムネの湖には色とりどりの無数の祝福の金平糖が沈み、波にたゆたい、美しい光景です。
 そのラムネの湖の周囲には芥子のような砂糖の華が咲き乱れています。
 高さは1メートルから2メートルほどの乾いた砂糖でだけ出来た華。
 その足下には50㎝程度の、雛芥子のような華が、風に揺れてゆったりとした時間を感じさせます。色は、赤、白、青、黄、桃……etc。
 砂糖華と言うそうです。
 湖の周囲には焼き菓子の屋根が連なる、小さな店と家屋。
 あまり人の気配がしない小さな村です。
 村にはカフェレストランが一つだけあって、テラスにテーブルと椅子を出しています。
 カフェに飲み物を頼んで、テーブルに座っていると、ショコランドの妖精達が手に手に如雨露を持って飛んできました。笑いながら砂糖華の群生に向かって行きます。
「それはなあに?」
 あなたが声をかけると、妖精達は振り向きました。
「妖精のフラワーエッセンス。砂糖華にかけると、一週間ぐらいいい匂いがするんだ」
「砂糖華に影響はないの」
「魔法だから、華には無害だし何の副作用もないよ。エッセンスをかけてそのまま食べる事だって出来る」
「へえ……」
「あなたもやってごらんよ」
 そう言って、妖精達は笑いさざめきながら砂糖華の方へ飛んで行ってしまいまいた。
「どうしようかな……」
 ショコランドでゆったりとした時間を楽しんでいたあなたは、同じくテーブルで暇そうにしている相方を振り返りました。

解説

●ブランチ山脈の奥にある湖でデート
●砂糖華に匂いをつける以外、縛りなし。バレンタインのお返しOK、バレンタインの返事OK、誕生日OK、二人の記念日OK(依頼履歴を読ませてください)ただのデートOK、ただの観光OK、etc……。何でもありです。
●砂糖華につけられる匂いは指定出来ます。フローラル、フルーツ、オリエンタル……魔法ですので何でもOK。特に指定がない場合はこちらがアドリブで書きます。
●ラムネの湖には入る事が出来ますが、必ず水着を着用してください。湖の水温は”ぬるい”程度です。
●砂糖華はこの場では食べる事が出来ます。
●砂糖華は、ショコランドから持ち出すと溶けて普通の砂糖になってしまいます。
●移動費で300Jrいただきます。プレゼントを贈る場合は、その分別にJrをいただきます。
●カフェレストランでは、普通の喫茶店に出るような料理は一通り出ます。そちらの分もJrは別途いただきます。(100~300程度)


ゲームマスターより

色々なプランが読みたいです。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

羽瀬川 千代(ラセルタ=ブラドッツ)

  ラムネの湖と砂糖華が咲く綺麗な景色を見ようとお誘い
本当は二人きりできちんと話がしたくて
俺の覚悟と返事を聞いて貰う為に
緊張から、つい早足になりながら景色の良い畔に腰を据える

妖精のフラワーエッセンスを振り掛けて小さく願う
(どうか彼の好きな匂いになりますように
匂いが付いた砂糖華を摘み、こっそりと花の指輪を編み込み始める

「…この間の依頼の後、ずっと考えていたのだけれど。
もう、俺は大丈夫だから。心配しないで欲しいんだ。
俺は逃げずに戦い続けたい…その為に覚悟を決めたから」

「?違うよ、俺はもうラセルタさんを不安にさせたくなくて――」

初めて向けられる表情。それでも、誤解は解かないと
遠退く背中に慌てて腕を伸ばす


柳 大樹(クラウディオ)
  注文:カフェラテ、チョコチップスコーン

へえ、魔法。
一息入れ終わったらやってみようかなあ。
「で、クロちゃんはそれだけでいいの?」
ああ、そう。

如雨露とエッセンスを借りて、砂糖華のところに移動。
エッセンスをかける前に匂いを嗅いで、かけてからもう一度嗅ぐ。
元々匂いの無い花なのかね。
「ほんとだ。いい匂いになった」
クロちゃんも嗅いでみなよ。(手招き

嗅ぎ終わったのを見て、匂いのする砂糖華を一つ摘む。
「クロちゃん動かないでね」(クラウの耳の上に砂糖華を差し込む
「やっぱ似合わないなあ」(へらりと笑う
飾ったところで、何が変わる訳でもないか。

眼帯に触りかけた自分の左手に気づき、溜息。
左手で砂糖華を一つ摘んで食べる。


咲祈(サフィニア)
  フローラル
…ふむ、なるほど……
散歩にぴったりだ。ね、サフィニア
…それにしても興味深い…
景色なんて、普段意識することなんてなかった
だけどたまにはこういうのも悪くないかもしれない
君だからそう思うのか、なんなのかは分からないけど

サフィニア、あれなんだい?
移ろいやすい咲祈の興味。キョロキョロ
分かってる。お母さ、……サフィニア

これが砂糖華? へえ……
フローラル? だったかな。なかなか面白い
ショコランドって、見ていて飽きないものが多くて楽しい
サフィニア、君もそう思わない?


カイエル・シェナー(エルディス・シュア)
  砂糖華か、一本手折ってテーブルに戻り付ける香りを相談するか
『では、特になければ、チョコクッキーの香りを……』(素)

砂糖華を美味しく頂いた後
言われるままに利き手右手首を差し出す……今、利き手を預ける位には、信じるに足ると、思っている事が伝われば良いのだが

そう言えば砂糖華を手に戻った際に、ふと柑橘系の香りが届いた
ふと気になり
向かい合うテーブルに、片手をついて乗り出し、エルディスの首筋、耳元へ触れ合わないぎりぎりに顔を寄せて──

ベルガモットの香りがする──呟いて、心地良い香りにしばらくそのままでいると、エルディスから珍しく動揺した声

端と我に返れば、近い…!
慌てて離れるが、恥ずかしくて言葉が…出ない…


シムレス(ロックリーン)
  依頼終わり休息&観光

ラムネ湖
炭酸感堪能
「ここで二酸化炭素中毒等、考えるだけ無駄だな
掬って(どんな仕組みで維持されているのか…
好奇心かき立てる環境は楽しい※無表情

テラスで食事
カルボナーラ
当然砂糖華に興味持つ


砂糖華へ
エッセンス選ぶと言うので任せてた

砂糖芥子の光景を記憶に焼き付ける様に静観
指を差された先に視線
(これが砂糖華
かける前に素の香り確認※香についてアドリブ期待

嗅いで(俺のイメージ?セクシー?
「スパイシーには心当たりがある※塩対応の自覚有

美人に「美形種族はそっちだ…甘いは?

金平糖に得心
(湖で拾っていたのか
「先月か、いい思い出だったという事か?

うすーく笑い
「明日は土産を見る

ラムネ湖二人で眺め


咲祈(サフィニア)編

 今日、咲祈と彼の精霊サフィニアはショコランドのラムネの湖に観光に来ました。たまの休日ののんびりする予定です。
「……ふむ、なるほど……」
 初めて見るショコランドの風景に、咲祈は首を傾げ、それから時々頷いています。
「散歩にぴったりだ。ね、サフィニア」
 咲祈が振り返ってそう言うと、サフィニアは微笑んで答えました。
「のんびりできるし、本当散歩にぴったりな雰囲気だよね」
 二人はショコランドののどかな村を、ゆっくりと散策しています。まるで童話に出てくるようなお菓子の国にも、さんさんと春のあたたかな日射しは降り注いでいました。
「……それにしても興味深い……」
 咲祈は初めて見る風物の一つ一つにじっくりと観察の視線を投げて、考え深げな様子です。サフィニアはそれを微笑んで見守っています。
「景色なんて、普段意識することなんてなかった。だけどたまにはこういうのも悪くないかもしれない。君だからそう思うのか、なんなのかは分からないけど」
 咲祈は顔を上げてサフィニアを振り返りながら言いました。自分が異国の散歩を楽しめるのは、サフィニアとだからなのかもしれない……と。
「俺もあまり意識することなかったかも。たまには良いよねぇ…」
 サフィニアはその言葉の意味に気がついているのかいないのか、彼もまたほのぼの、のんびりした調子でそう答えたのでした。ショコランドの珍しい景色を眺めながら、二人はゆっくりと散歩を続けます。
「サフィニア、あれなんだい?」
 咲祈の興味はとても移ろいやすいです。あっちを見たかと思えばこっちを見。こっちにいたかと思ったらそっちを覗いていて。
「あ、ちょっと咲祈、あんまりキョロキョロしながら歩いたら危ないよ」
 慌ててサフィニアはそう声をかけました。咲祈は興味を持つ対象の方にふらふらと近づいていきます。
「分かってる。お母さ、……サフィニア」
 咲祈は明らかにおかあさんと言いかけて、サフィニアを呼び直しました。
最近言われないから油断してたサフィニアは、いたたまれなさを感じながらも叱りつけます。
「……お母さん言わないのっ」
 お母さんという言葉は、咲祈と契約して間もない頃を思い出します。
 やがて二人は、砂糖華の咲くラムネの湖にたどり着きました。
「これが砂糖華? へえ……」
 咲祈はすっかり感心して、言葉も出てこない様子です。
「うん……綺麗だね」
 芥子のように揺れる砂糖の花を見つめながら、サフィニアも感嘆の声を上げました。
「咲祈、フラワーエッセンス、やってみて」
 ラムネの湖の畔で、サフィニアは香りをすすめました。妖精たちから、既に如雨露と目当てのフラワーエッセンスは借りてきていたのでした。
「フローラル? だったかな。なかなか面白い」
 咲祈は匂いを確かめながら、近くの砂糖華にそっとフラワーエッセンスを注ぎ込みました。ふんわりと花のよい香りが広がります。
「おお、良い感じ!」
 美しい光景に咲祈の手でフローラルの香りが広がって、サフィニアは歓声を上げました。
「ショコランドって、見ていて飽きないものが多くて楽しい。サフィニア、君もそう思わない?」
 珍しく表情豊かに笑いながら咲祈はサフィニアにそう言いました。
「……。そうだね、俺もそう思うよ」
 楽しそうな咲祈の笑顔に、サフィニアはしみじみと幸せをかみしめます。お母さん、なんて言われるのは恥ずかしいような困るような不思議な感じだけれど、こんなのんびりした優しい日が、ずっと、自分たちの人生に続くといいと思うのでした。
 咲祈とサフィニアのウィンクルムは、ショコランドで静かな幸せの一日を過ごしました。

シムレス(ロックリーン)編

 今日、シムレスとその精霊のロックリーンは、依頼が終わったので休息と観光にショコランドの小さな村を訪れていました。
 二人は早速ラムネの湖で炭酸の感触を楽しむ事にしました。靴を脱いで、足先だけをラムネの湖に入れてみます。
「ここで二酸化炭素中毒等、考えるだけ無駄だな」
 シムレスは、足先を入れるだけではなく、ラムネの湖水を手にすくいとってみました。指先からシュワーっとラムネが落ちていきます。
(どんな仕組みで維持されているのか……)
 好奇心をかきたてる状況はとても楽しいです。ですが、顔は無表情なのでした。
「炭酸抜け切ったりしないのかな、本当不思議な所」
 ロックリーンも不思議がっています。ちらりと横を見ると、シムレスの真剣な顔。
(考えてる顔? いや楽しんでる顔かな……)
 彼のそういう顔を見るのは嫌いではありません。
 その後、二人は村のカフェレストランに行き、テラスで食事を取る事にしました。
 村で一軒だけあるレストランは、ランチから少し時間がズレているせいか、他に客はいなくて貸し切り状態でした。二人きりなのでリラックス出来ます。
 シムレスはカルボナーラ、ロックリーンはナポリタンを頼みました。そこに如雨露を持った妖精たちが通りかかり、二人は砂糖華の話に興味を持ったのでした。
「行ってみないとだね!」
 ロックリーンは張り切っています。
 夜になると二人は、ラムネの湖の畔、砂糖華の花畑にやってきました。
 ロックリーンは灯りを持っています。彼は既に、昼の妖精たちから如雨露を借りて、フラワーエッセンスも持ってきています。
 ロックリーンは、夜更けに手元の灯りの下、風に揺れる芥子のような砂糖華たちの光景に感嘆の声を上げました。
 シムレスも記憶に焼き付けるように静観しています。
「幻想的だ…あ、足元のが砂糖華だね」
 ロックリーンの言葉に、シムレスは足下の砂糖華に顔を寄せました。芥子のような砂糖華の他に、雛芥子のような小さな砂糖華もあるのです。
(これが砂糖華)
匂いを確かめると甘い砂糖の匂いがしました。その姿のままに、乾ききった砂糖の溶けそうに甘ったるい香りです。
「かけるよ」
 ロックリーンはシムレスの頷く合図を見てから、フラワーエッセンスを小さな如雨露で注ぎ込みました。
「これ、僕のシムさんのイメージなんだ。セクシーで甘くてスパイシーなオリエンタルの香り……どうかな?」
 シムレスはロックリーンの選んだエッセンスの匂いを感じ取ります。精霊が自分のために選んでくれたというのは、彼でも少し気恥ずかしい気がしました。
「スパイシーには心当たりがある」
 そっけないという自覚を持ちながらも、シムレスはそう答えました。
「シムさんは美人さんだなって思ってる」
 照れたようにそっと顔を背けながらロックリーンは小声で囁きました。
「美形種族はそっちだ……甘いは?」
 彼が何故そんな事を言ったのか気になって、シムレスはそう問いかけました。
(僕美形認定されてるらしい、ふふ)
 ロックリーンは心の中でちょっと得意になりました。
 彼はラムネの湖から拾い上げた祝福の金平糖をシムレスに見せました。
「甘いは、初めて遠出同行した時の想い出の味」
 シムレスは納得が出来ました。
(湖で拾っていたのか……)
「先月か、いい思い出だったという事か?」
 ロックリーンは照れて笑います。
「もちろん」
 シムレスは薄く笑いました。とても薄かったのですが、それは笑顔でした。
「明日は土産を見る」
「ソドにだね」
 それから二人は夜の月を映す、ラムネの湖と、沈む祝福の金平糖を眺めていました。風が吹くたびに、砂糖の華が揺れます。それはとても不思議な時間でした。不思議な、幸せの時間でした。

柳 大樹(クラウディオ)編

 今日、柳大樹とその精霊のクラウディオはショコランドにある小さな村に来ています。二人は村に一軒だけあるカフェレストランに入りました。
 大樹はカフェラテとチョコチップスコーン、クラウディオは紅茶を注文しました。
 そこにフラワーエッセンスを入れた如雨露を持った妖精たちの群れが通りかかり、大樹たちに砂糖華と香りの話をしていきました。
「へえ、魔法。一息入れたらやってみようかなあ」
 やる気があるようなないような平淡な声で大樹がそう言います。
 クラウディオの方は無反応でした。
「で、クロちゃんはそれだけでいいの?」
 そう聞かれてクラウディオはテラスから見えるラムネの湖畔の方に目をやりました。
 群生する砂糖華を確認しても、障害になるようなものや危険は見当たりません。天候も悪くありません。いい天気です。
「問題無い」
「ああ、そう」
 やる気のあるような、ないような、棒読みのような……大樹はそんな声で頷いています。
 大樹は妖精たちから如雨露とフラワーエッセンスを借りました。クラウディオを連れてラムネの湖の畔、砂糖華の咲く場所まで行きます。
 エッセンスをかける前に大樹は砂糖華に顔を近づけてその匂いを嗅いでみました。ただ乾いた砂糖の甘ったるい匂いだけがしました。それから、如雨露でそっとフラワーエッセンスを花に注ぎます。それからまた匂いを嗅ぎました。大樹の求めた、シトラスの匂いがあたりに満ちました。
「ほんとだ。いい匂いになった」
 それから大樹は連れてきたクラウディオを振り返って手招きました。
「クロちゃんも嗅いでみなよ」
 クラウディオは大樹の様子をじっと見つめていました。大樹の表情に大きな変化は見られませんでした。ですが、口元が緩んでいるところを見ると、機嫌は良いのでしょう。
 周囲に危険がないかさっと視線を走らせますが、異常はありませんでした。クラウディオは大樹の隣に腰を下ろし、砂糖華の匂いを嗅ぎました。
「これが良い匂いか」
 そっけない調子で言います。
(確かに不快ではない……)
 クラウディオが匂いを嗅ぎ終わったのを見て、大樹は砂糖華を一本つまみました。
「クロちゃん動かないでね」
 そう言われたので、クラウディオは動きを止めます。
 大樹はクラウディオの耳に砂糖華を差し込みました。
「やっぱ似合わないなあ」
 へらっと笑いながら、そんなことを言う大樹。
(何がしたいのだろうか)
 クラウディオは疑問に思いますが、大樹が笑っているので何も言いませんでした。
(大樹が楽しそうならそれでいい)
 クラウディオはずっと、大樹のためを思っています。
(飾ったところで、何が変わる訳でもないか)
 大樹はそんなことを考えています。
(未だ精神が不安定な面がある。この状態を維持出来れば良いのだが)
 クラウディオは目の前の不思議な若者の事を考えています。彼の精神の事、体の事--守ってやることを、義務のように感じているのです。
 やがて大樹は眼帯に触りかけた自分の左手に気がつきます。眼帯に触れると、ため息がこぼれるのでした。
 それから、まるで誤魔化すように、振り切るように、左手で砂糖華をつまんで食べました。甘ったるい華の味が口いっぱいに広がっていきます。その甘い味が、奇妙な苛立たしさを誘いました。ふっと目に険が宿り顔を顰めると、華よりも鮮烈な色香が大樹から放たれました。クラウディオは何事もなかったようにそれを見つめています。花を食べる大樹の危うい精神を、ただ、黙って、守るという使命に殉じて--見つめているのでした。自己の感情にも鈍感な二人が、お菓子の国のお菓子の花畑の中、心を震わせているのです。

カイエル・シェナー(エルディス・シュア)編

 今日、カイエル・シェナーは精霊のエルディス・シュアとショコランドの小さな村を訪れていました。
 村には祝福の金平糖が沈んでいるラムネの湖があり、周囲には砂糖華という砂糖で出来た芥子のような花が咲き乱れています。カフェレストランで休んでいた二人は、通りかかった妖精に砂糖華とフラワーエッセンスの香りの事を教わりました。
 カイエルは一本手折ってカフェのテーブルに戻り、そこでつける匂いを決める事にしました。ラムネの湖はカフェレストランから出てすぐです。カイエルはエルディスに席で荷物を見ていてもらい、砂糖華を取って急いで戻って来ました。
 妖精たちはまだエルディスの周囲を飛んで、彼からショコランドの外の世界の話を聞いていました。
「では、特になければ、チョコクッキーの香りを……」
 カイエルは素で如雨露を持っている妖精に頼みました。
「お前、絶対に洗濯した時の事、根に持ってるだろう」
 エルディスは少し引きつった笑いを見せています。
 妖精たちが魔法のフラワーエッセンスを如雨露から注いで、砂糖華にチョコクッキーの匂いをつけてくれました。
 エルディスは少し安心しています。砂糖で出来た植物である砂糖華は、チョコクッキーの匂いがしても不協和音はありません。
 二人は仲良く砂糖華を半分ずつ食べました。それを見届けて妖精たちは全員、自分たちもラムネの湖に遊びに行きました。
(そう言えば任務の達成時に香水をもらっていたんだっけ)
 エルディスはそのことを思い出しました。恐らくカイエルも香水をつけている事でしょう。気になります。
「カイエル、手首よこせ--」
 エルディスに言われて、カイエルはすっと手首を差し出しました。それぐらいには彼の事を信用しているのです。
(これで理由も聞かずに、相手に自分の利き手を差し出してくる辺り、ほんの少しでも信用されていると思っていいんだろうかね)
 エルディスは少し照れ、少し嬉しいようです。
 エルディスはカイエルの手首の匂いを嗅ぎました。
(さっきのがフルーティとウッディで、今はムスク……シトラス系が似合うものだとばかり思っていた。やばい、首筋にも同じ香りが付いていると思うと嗅ぎたくな──)
 エルディスの中に衝動が産まれます。香水は手首と首筋につけるものですから。
(そう言えば砂糖華を手に戻った際に、ふと柑橘系の香りが届いた)
 カイエルはカイエルでエルディスの香りを思い出します。
 ふと気になったカイエルは、向かい合うテーブルに片手をついて乗り出し、エルディスの首筋、耳元へ触れ合わないぎりぎりに顔を寄せていきました。
「ベルガモットの香りがする」
 そう呟いて、カイエルは心地よい香りを感じながらそのままでいます。
 すると珍しくエルディスが動揺した声を上げました。自分は衝動をおさえているのにカイエルと来たら、本能的と言うぐらい衝動のままに行動しているのですから。
「ば、バカ! 少しは躊躇えっ!こっち位には恥ずかしがれ!」
 エルディスは顔を真っ赤にしてそう言ったのでした。
 カイエルは目をぱちくりさせて自分の席に戻りました。エルディスが何をそんなに怒っているのかよく分かりません。エルディスは怒っているのではなく、恥ずかしがっているのですがね。不思議そうにしているカイエルの前で、エルディスは疲れたように額に手を当てました。ショコランドにはもうしばらくいるけれど、カイエルはその間もずっとエルディスに対して無防備でいるのでしょうか。それは嬉しいけれど、なんだか困る--。
 そんな悩みを抱いたカイエルにラムネの湖の底から祝福の金平糖が輝きながらささやいています。
(それでいいんだよ。ウィンクルムの愛は偉大だよ--)、と。

羽瀬川 千代(ラセルタ=ブラドッツ)編

 羽瀬川千代の精霊、ラセルタ=ブラドッツは不安を抱えていました。
 千代を殺してしまう悪夢を見てから、無自覚に千代を失ってしまう事への不安を増していったのでした。
 共に生きる事よりも、千代を生かす事を優先し、つなぎ止めようと行動します。ウィンクルムの前に現れる強敵との戦闘においても、千代を失ってしまう不安は増していくのでした。ラセルタは苦悩していました。
 そんなラセルタに千代の方から、ショコランドに行こうと誘いました。ラムネの湖と砂糖華の咲く綺麗な景色を見に行こう、と。
(本当は二人できちんと話がしたくて……俺の覚悟と返事を聞いて貰う為に……)
 ショコランドの小さな村につくと、千代は緊張から早足になりながらラムネの湖の畔に歩いて行きました。
 ラセルタは嬉しそうに湖を見る千代の顔を微笑ましく見守っています。千代の手をつかもうとすると、彼の手が空を切ってしまいました。
 千代は砂糖華に妖精のフラワーエッセンスをかけて願いました。
(どうか彼の好きな匂いになりますように……)
 ふわりとムスクかオリエンタルのような匂いが広がります。あまり女性的ではない、”強い雄”を感じさせるのに優雅な匂いです。
 千代は少し笑い、砂糖華を手折って花の指輪を作り始めました。
 ラセルタは千代の真っ直ぐに先を見据える瞳を見つめました。千代の意志が決して脆くはない事を知っています。だからこそ、思い悩む時には自分を頼って欲しいと言い続けてきました。--今、深く悩んでいるのは彼です。そうして、彼は、千代が。千代だって、思い悩んでいる時には頼って欲しいのだと思っている事に、気がついていなかったのかもしれませんでした。自分ばかりが頼られ、強くあることを誇りに思っていたのかもしれませんでした。
 やがて千代は話し始めました。
「……この間の依頼の後、ずっと考えていたのだけれど。もう、俺は大丈夫だから。心配しないで欲しいんだ。俺は逃げずに戦い続けたい……その為に覚悟を決めたから」
「その覚悟とやらで、結局お前は見知らぬ他人に命を捧げるのか?」
(傍に居る俺様を置いて……)
 その大事な一言を言えないところが、ラセルタの強さであり、弱さでもあったのかもしれません。置いていかないでくれと、素直に言えるほど、ラセルタは子供ではなかったのです。その大事な一言が届かなかったから、千代は彼の気持ちが分からなくて、続けてしまいます。
「? 違うよ、俺はもうラセルタさんを不安にさせたくなくて――」
 千代はラセルタの不安に気がついていました。
 だからちゃんと話そうとしていたのです。だけど、強い彼の繊細な一部については気がつかないままでした。
「……不安だと? この俺様が? 何を馬鹿な事を」
 突き放すようなラセルタの声。
 千代は思わず立ち上がりました。ラセルタが感情的になった事を感じ取ったのです。
「もう、いい」
 しかし、ラセルタは会話を打ち切ってしまいました。
 千代はラセルタから初めて向けられる表情に戸惑いました。怒りと拒絶。だけどなんだか、自分の事を悔しがっているような表情。
 慌てて手を伸ばします。
 しかし、ラセルタの遮った言葉は思いの外大きく響いていました。
 ラセルタは普段通り振る舞えない自分に、自嘲気味に笑いました。伸びてくる手を振り払います。
 そのまま彼は背中を向けて歩き出しました。
 追いすがる千代が彼の背中を叩きましたが、それも無視してしまいました。
 ラムネの湖の底では、祝福の金平糖が漂っています。水底を転がりながら輝いて、必死に女神の愛を訴えかけます。ウィンクルムの愛を高める事によって、二人のすれ違いを正そうとするように。愛のあるウィンクルム。お互いに大切に思うからこそすれ違うだなんて、悲しすぎるじゃありませんか。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 森静流
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 03月18日
出発日 03月29日 00:00
予定納品日 04月08日

参加者

会議室

  • [7]カイエル・シェナー

    2016/03/28-22:10 

    カイエル:

    最終確認だ…特に問題はなさそうだな。
    プランは提出完了だ。
    危うく1日忘れていた等というその様な事はな(ry)

    皆が楽しい時間を過ごせるように。

  • [6]シムレス

    2016/03/24-22:16 


    ロックリーン:

    出発まで長いとうっかり忘れそうでコワイ
    なのでプラン完成させて提出完了!
    これでうっかり忘れてもいい(←

  • [5]羽瀬川 千代

    2016/03/23-23:07 

    こんばんは、羽瀬川千代とパートナーのラセルタさんです。
    どんな匂いを砂糖華に付けるか迷いつつ、のんびり出来ればと思います。
    良い時間が過ごせますように。

  • [4]カイエル・シェナー

    2016/03/21-16:11 

    カイエル・シェナーだ。
    こちらは、テラス席で砂糖華を囲んで団欒といったところだろか。
    ……砂糖華を囲んで尚、会話のネタがきちんとあれば良いのだが。

    それでは、どうか宜しく頼む。

  • [3]咲祈

    2016/03/21-13:36 

    砂糖華……なるほど。興味深いね。
    よろしく咲祈だ。
    散歩がてらのんびりするのも悪くない。

  • [2]柳 大樹

    2016/03/21-11:09 

    柳大樹でーす。よろしく。

    こっちものんびりのつもり。
    此処んとこ忙しかったから息抜き、ってことになるのかな。

  • [1]シムレス

    2016/03/21-09:18 


    ロックリーン:
    よろしくお願いします

    僕等は観光
    のんびりまったり!


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