【薫/祝祭】甘い香りを身につけて(森静流 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 バレンタインデーが終わるとホワイトデーです。
 仕事帰り、駅前のデパートの中をぶらついていたあなたは、ホワイトデーの催事場コーナーに通りかかりました。
 今日の用事の買い物はすませてしまったのですが、様々な雑貨やスイーツの類が並べられており、面白そうだったので立ち寄る事にしました。
 キラキラ光るアクセサリーや、箱いっぱいに薔薇の花を詰められたスイーツ、ぬいぐるみ、いかにも女性が好きそうな雑貨の数々……。
(こういうの、あいつは喜ぶかなあ……)
 あなたは、一つか二つ箱を手にとっては返しながら、自然と相方の顔を思い浮かべていました。
 やがて、あなたは一つのコーナーの前で足を止めました。
 流麗なアルファベットでショコランド製と書かれた札のついているガラスの小瓶です。
「これは?」
 問いかけると、係の女性がにっこりと笑って会釈しながら近づいてきました。
「こちらはショコランド製のちょっと珍しい香水です。ふんわりとチョコレートやキャンディの匂いがするんですよ」
「チョコレートの香水……へえ……」
「チョコレートというと甘過ぎかもしれませんが、ふわっとしていてそれほどきつい香りじゃないところが魅力なんです。勿論、こちらには定番のフレグランスも置いてあります。どうです? 大切な人のために香水を買ってあげては」
「そうだねえ……」
「ホワイトデーでバレンタインへのお返しという事もありますが、日頃感謝している大切な人のために気持ちを表すというのはいかがでしょう。こちらにはメッセージカードのサービスもあります」
「日頃の感謝か……そうだな、そうだよ……」
 ちらちらと浮かぶ”あいつ”の顔を振り払いながら、あなたはショコランド製の香水の瓶をいくつか手に取り、係の女性に断って匂いを確かめ始めました。
(喜ぶところ……見たいかも……)

解説

 ショコランド製のちょっと変わった香水をホワイトデーのお返しにいかがでしょう。

置いてある香水は以下の香りがあります。

チョコレート
キャンディ
クッキー
シトラス
フローラル
オリエンタル

お好きなものを選んでください。
また、店ではメッセージカードのサービスも行っています。
特に一言書き加えない場合は、テンプレートの文章を添えますが、日頃の感謝の気持ちをカードに書き添える事も出来ます。
是非サービスもご利用ください。
香水の代金として1000Jrいただきます。


ゲームマスターより

ホワイトデーのお返し+ショコランド、どうぞ!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

桜倉 歌菜(月成 羽純)

  今日も一日お疲れ様
おじいちゃんのお弁当屋さんで仕事を終えて、店を出たら…羽純くん?
突然の訪問に心臓はドキドキ
でも、会えて嬉しいな
羽純くん、今日バーは?そっか、お休みなんだね…(お休みの日にわざわざ来てくれたんだ…)

羽純くんが手を出してくれたからぎゅっと握って
日の暮れた道を二人で歩くだけで…凄く幸せ
公園で少し休憩していくのかな?と彼を見上げたら、真剣な眼差しとぶつかって、ドキッ
え?プレゼント…?(カードを読んで何度も瞬き)
嬉し過ぎて、何だか泣けてきちゃった…
嬉しくて泣くなんて変だよね…でも本当に幸せ過ぎて…
いい香り…甘いチョコレートの香りだね
羽純くんらしい…
有難う、また宝物が増えちゃった
…大好き


瀬谷 瑞希(フェルン・ミュラー)
  フェルンさんが家に遊びに来て下さったので、紅茶でおもてなし。
最近少し上手に紅茶を淹れられるようになったので。

フェルンさんからプレゼントを頂いちゃいました。
定番のお菓子は焼き菓子色々、とても美味しそうです。
そして、香水まで頂いちゃいました!
ありがとうございます。
予想外だったので、とても嬉しいです。
ラッピングもとても可愛い。これもショコランド製なのですね。
「開けても良いですか?」と少し上眼づかいに聞きました。
穏やかな声で「どうぞ」と言って下さるフェルンさんの笑顔が素敵です。
カードが中に入っていて、メッセージに心温まりました。
一緒に沢山の笑顔を重ねていきたいです。
瓶を少し開けて。
とても良い香り。





アデリア・ルーツ(シギ)
  本部まで、なんて。
思ってたより、ウィンクルムの活動に熱心な子なのかしら。
熱心なのはいいけど。家の手伝いもあるからあんまり活動できないのよね。
一度認識合わせに、話合いかな。

「あ、いたいた。先に来てたのね。待たせてごめんね」
うーん、やっぱり熱心には見えないかな。
「早速依頼の確認? それなら、その前にちょっと話合いがしたいんだけ、ど……?」
受け取れば良いのかしら。

「ホワイトデー?」(瞬き
「あなたにあげてないわよ?」なあにそれ。(くすくす笑う
嬉しいけど。「高かったんじゃない?」

立ち話もあれだし、座りましょ。
「なら来年のバレンタインは渡さないとね」(微笑
可愛い反応ね。
そうそう、「ありがとう」大事に使うわ。


風架(テレンス)
  あれ、テレンス遅かったじゃん。おかえりー
…ん? どーかした? 黙って立ってるのはいつものことだけどさ

差し出された包みを受け取る
……あたしに?
へえ、香水…
あのさ、テレンス。テレンスのそういうところ、良いと思うよ
あたしだったらそこまで気回らないし
これ…なんの香り? なんか嗅いだことあるような気がするけど
フローラル。ふんふん。なるほど
…あ、そういやまだ言ってなかったね?
ありがとう
メッセージカードがあることに気づいた
あー、それね
あたしはテレンスだから契約相手に選んだんじゃない
ただ、信用できるパートナーがほしかっただけだよ
さあね。ご想像にお任せしまーす


オルタンシア・ダニール(セルジュ)
  そんなに気を使わなくていいのに
だって私は何も贈ってないよ?
でも…ありがとう
(香水のビンを見て少し顔を曇らせる
(普段使わないし、使おうとも思わない品なので
面白いな、チョコレートの香りだ
(ぱっと笑顔になる
(それから、どのチョコに似た匂いか脳内で検索

これなら、自分がつけても違和感がないのかもしれないと思う

スイーツ食べ歩きのデートの中
最後のデザートに

香りを身につけて

これでお腹一杯かな

自然とセルジュのことは信じられるように感じている
可愛がってもらった叔父に似ているというだけでなくて
他にも理由があるのかもしれない

うん、これからよろしく

嬉しい気持ちがあるが
自分ではちゃんと気付けていない


神人精霊アレンジ大歓迎


アデリア・ルーツ(シギ)編

 ホワイトデーの時期、アデリア・ルーツの精霊シギは、彼女のためにショコランド製の香水を買う事にしました。
(滅多に見かけないなら、珍しい物の方が良いか)
 そう思ったので、デパートの売り場でキャンディの香水を買いました。
 メッセージカードも添えて、
「HAPPY WHITEDAY.これからよろしく」
 そう記載します。
 それから、シギはアデリアとA.R.O.A.で待ち合わせをすることにしました。
(本部まで、なんて。思ってたより、ウィンクルムの活動に熱心な子なのかしら。熱心なのはいいけど。家の手伝いもあるからあんまり活動できないのよね。一度認識合わせに、話合いかな)
 そんなことを思いながら、アデリアは待ち合わせの場所に向かいました。
 シギは、アデリアと出会ったばかりなので、どこかに一緒に出かけるような仲でもないと気を回したのですが。
「あ、いたいた。先に来てたのね。待たせてごめんね」
 シギを見つけて、アデリアは手を振りながら早足に近づきました。
(うーん、やっぱり熱心には見えないかな)
 猫っ毛のミディアムヘアと瑠璃色の瞳を見上げながらそう思います。
「別に」
 シギはそっけない様子でそう言いました。
(よく喋るやつ)
 アデリアの事をそう思っています。
「早速依頼の確認? それなら、その前にちょっと話合いがしたいんだけ、ど……?」
(先に渡した方が拗れないか)
 アデリアの前にシギはすっとラッピングされた香水を渡しました。
「やる」
 アデリアは目をぱちくりさせます。
(受け取ればいいのかしら)
 A.R.O.A.に仕事のつもりで来たので戸惑ってしまいます。
 アデリアはなんだろうと思いながらラッピングを開いてみました。中からキャンディの香水が出てきます。
 不思議そうにするアデリアに
「ん」
 シギはメッセージカードを指さしてみせました。
「ホワイトデー?」
 アデリアはまたぱちくりと目を瞬きます。
「あなたにバレンタインのプレゼント、あげてないわよ?」
 なあにそれ--アデリアはくすくす笑いました。
(貰ってないからな)
 シギは肩をすくめました。
「契約祝い、というか挨拶代わりだ」
 笑うアデリアにシギはそう答えました。
「ショコランド製の、この辺じゃ珍しい香水らしい」
 シギがそう言うと、アデリアはちょっと困った顔をします。
(嬉しいけど……)
 なんだかシギが一方的に負担をしているように感じたのです。シギはまだ大学生なのに。
「高かったんじゃない?」
「素直に受け取れよ」
 シギはつんつんしながらそう答えました。
(値段なんざ聞くな!)
 立ち話をいつまでもしていると通路の人に邪魔なので、アデリアは小脇のベンチに座りました。シギもさりげなく隣に座りました。
「なら来年のバレンタインは渡さないとね」
 アデリアは楽しげに微笑みながらそう言いました。
 ちょうどホワイトデーだったから贈ってみたシギはぷいと横を向きました。
「別に、お返し目当てに渡した訳じゃない」
 顔を逸らすシギを見ながらアデリアはまたくすりと笑います。
(可愛い反応ね)
 そう思うのです。
「ありがとう、大事に使うわ」
 アデリアが感謝を伝えると、シギは彼女の方を振り返ってくれました。そのあと、二人はA.R.O.A.の依頼の話や、アデリアの家の手伝いの話などを小一時間ほどして、認識を深め合いました。そのあと自然に別れましたが、お互いに悪くない調子を感じていました。 これから活動を始めるウィンクルム。まず打ち解け合う第一歩として成功だったようです。
 A.R.O.A.も、他のウィンクルムたちも、ウィンクルムを支援する人たちも、皆アデリアとシギの活躍を待ってます!

風架(テレンス)編

 風架の精霊テレンスは、自分がまだ相方である神人のことをよく知らない事に気がつきました。
 風架の事をよく知るためにも何かプレゼントをしてみようと思い、デパートに来てみるとショコランド製の香水が販売されていました。
 ちょうどいいと思いましたが、”慎重に選ばねばならぬ”そんな心の声が聞こえてきます。何しろ安くないですからね。
 風架から甘い物が好きと聞いた事はなかったため、テレンスは無難にフローラルの香りを選びました。
 カードには「これからも宜しく頼む」と記入します。
 喜んでもらえるといいのだが--そう思いながらテレンスは帰路につきました。

「あれ、テレンス遅かったじゃん。おかえりー」
 探偵事務所に帰宅すると風架が出迎えました。仕事が終わったところなのか、ラフな格好になって片手にホットコーヒーのマグカップを持っています。
「……ん? どーかした? 黙って立ってるのはいつものことだけどさ」
 玄関に立ち尽くしたまま動かないテレンスは風架にそっと香水の入った包みを渡しました。
「……あたしに?」
 風架は差し出された包みを受け取り、中身を確かめました。なんだかおっかなびっくりしています。  
「へえ、香水……」
 出てきたのは可愛らしい香水の小瓶でした。風架はしげしげとラッピングから出てきたショコランドの香水を見つめます。
「あのさ、テレンス。テレンスのそういうところ、良いと思うよ。あたしだったらそこまで気回らないし」
 やはり嬉しそうに笑顔になりながら、風架はそう言いました。
『菓子の香りより風架にはそれがよく似合うと思った』
 その好反応を見て、ほっとしたテレンスはスケッチブックにそう文字を書き付けました。
「これ…なんの香り? なんか嗅いだことあるような気がするけど」
 風架は手首に香水をシュっと吹き付けながらテレンスに尋ねます。風架はあまり女の子女の子したものには詳しくないのかもしれません。
『フローラル』
 テレンスは店員の説明通りにそう答えました。
「フローラル。ふんふん。なるほど」
 風架は自分の手首のいい臭いを嗅ぎながら頷きました。
「……あ、そういやまだ言ってなかったね? ありがとう」
 はにかんだように笑いながら風架はそうお礼を言います。そこで香水の瓶の首にメッセージカードがくくられていることに気がつき、目を通しました。テレンスらしい無骨な言葉だと思いました。
『風架は、契約相手が自分で良かったのか』
 風架がカードを読んでいるのを注意深く見守りながら、テレンスがスケッチブックの字で尋ねてきました。
「あー、それね。あたしはテレンスだから契約相手に選んだんじゃない。ただ、信用できるパートナーがほしかっただけだよ」
 風架はわざとらしいほどぞんざいな調子でそう告げて、香水を持ったまま体をテレンスに対して横にしてしまいました。
 テレンスは迷います。どう受け取ったらよいのでしょう。
『それは自分のことを信用していると、そう思って良いのか』
 テレンスは、スケッチブックに思い切って、でも慎重な面持ちでそう書き付けました。
「さあね。ご想像にお任せしまーす」
 そう言って、風架は香水を持ったままテレンスに背を向け、自分の部屋の方へ歩き去ってしまいました。
(……やはり、風架はよく分からない……)
 残されたテレンスは彼女の気持ちがつかめずに困惑してしまいます。ウィンクルムなんですから、自分も彼女を信じたいし、彼女にも自分を信じてもらいたいのです。
 風架の気持ちを掴み損ねながらも、テレンスは彼女の受け継いだ事務所の中に入っていきました。自分の新しい居場所へと、受け入れられていったのでした。

オルタンシア・ダニール(セルジュ)編

 ホワイトデーの時期に、オルタンシア・ダニールの精霊セルジュは、デパート売り場で彼女のために香水を買いました。
 それを彼女と待ち合わせの場所で手渡します。
「そんなに気を使わなくていいのに。だって私は何も贈ってないよ? でも…ありがとう」
 眼鏡美人のオルタンシアはそう言ってはにかんだように笑います。
「ご挨拶の品代わりですよ。契約した時、甘い香りを漂わせていたでしょう?」
 一見好青年のセルジュは余裕のある態度で微笑んでいます。
 オルタンシアは香水の瓶を見て少し顔を曇らせました。彼女は普段は香水を使いませんし、使おうとも思った事がないのです。
 そっと蓋を開けてみると、予想外の香りが匂い立ちました。
「面白いな、チョコレートの香りだ」
 そこでオルタンシアはぱっと笑顔になりました。
 それからどのチョコレートに似た匂いなのか考え込みます。セルジュは彼女の表情を読んで、予想が当たって満足です。
 オルタンシアはコスメや香水に強い興味を持つタイプではありません。ですが、食道楽ですからショコランド製のチョコレートやキャンディの匂いには興味を示すだろうと思ったのです。その予想の通り、オルタンシアはチョコレートの香りに喜んでいます。
 オルタンシアをイメージする香りなら……オリエンタルの香りでしょうか。しかし、女性として意識しながら似合う香りをプレゼントするというのは、なんだかセクシーな意味に取られてしまうかもしれないので、控えたのでした。
 ですが、チョコレートの香りというのも、”可愛らしい、甘くて舐めたくなる香りですね”というふうにもとらえられるかもしれません。
 それからオルタンシアとセルジュはスイーツを食べ歩くデートに出かけました。
 十歳差の二人ですが、大人のセルジュがオルタンシアの知らないような店にまで彼女を連れて行って一緒に甘いものを食べてくれます。男の人は甘いものが苦手な事が多いようですが、セルジュはそれを感じさせません。気軽につきあってくれます。
 甘くておいしいものを食べているオルタンシアはごく普通の十六歳の少女で、とても可愛らしく他愛ない感じです。
(可愛いけれど、初めて出会った時のような、強く惹きつけられる印象がない……あれは俺の勘違いだったんだろうか……)
 それなりに楽しみながらも、セルジュはそんなことを考えています。本当は一目惚れなんですけれどね。
 そうこうしているうちに、スイーツの素敵な店を何軒もめぐって、オルタンシアはすっかり満腹になりました。
「最後のデザートに……」
 オルタンシアはセルジュから貰ったチョコレートの香水をシュっと手首に吹き付け、優雅な仕草で耳の裏にも忍ばせます。
「これでお腹いっぱいかな」
 そう言ってにっこりと笑うオルタンシア。セルジュも満足そうに目を細めて彼女を見ています。
 オルタンシアは、自然にセルジュの事を信じています。可愛がってくれていた叔父に似ているという事もあるかもしれません。それだけではなく、他に理由があるかもしれません。
「うん、これからもよろしく」
 そう言ってオルタンシアは店を出たところで、セルジュと腕を組みました。セルジュはオルタンシアをエスコートするように歩き出します。
 セルジュはオルタンシアへの気持ちにまだ気がついていません。そうしてオルタンシアも、彼といてとても嬉しいのだという自分の気持ちを自覚していません。もどかしい二人ですが、甘い香りに包まれて、とても幸せそうです。二人でいることが本当に幸せだということに気がつくのは、そんなに遠くはない先のことなのかもしれませんね。

桜倉 歌菜(月成 羽純)

 ホワイトデーの季節。桜倉歌菜の精霊、月成羽純はふらりと立ち寄ったデパートの催事場でショコランド製の香水を見つけました。タブロスのデパートの催事場では世界中の様々な商品が取り扱われているので、面白いものが見られる事が多いのです。
(ホワイトデーのお返しは既にしているが……歌菜の喜ぶ顔は何度でも見たい。それに、俺が選んだ香水を纏う歌菜を想像してみると……とても幸せな気持ちになる)
 そういう訳で、羽純は歌菜のために店員に聞いたり匂いを確かめたりしながら、香水選びを始めました。
(歌菜に似合うのは甘い香り。ふわっと抱きしめたくなるような……)
 羽純が歌菜のために選んだのはチョコレートの香りでした。
(甘党な俺らしいチョイスだと、歌菜は笑うだろうか)
 そう考えて、思わずくすっと笑ってしまいます。
 カードには
『ホワイトデーとは別口で、これは日頃の感謝の証だ。付けてくれると嬉しい』
 そう記入します。
 それから歌菜の弁当屋の仕事が終わるのを待ち伏せしました。歌菜は、ウィンクルムの仕事以外、普段は祖父母の経営する弁当屋の看板娘なのです。
 今日は羽純の家のカクテルバーは定休日です。
「今日も一日お疲れ様」
 一日働き終えた歌菜は裏口から出てきます。
「……羽純くん?」
 彼の姿をみとめて、歌菜は目を丸くします。
「近くまで来たから、寄ってみた。少し散歩しないか?」
 突然の訪問に心臓をドキドキさせる歌菜。
(でも、会えて嬉しいな)
「羽純くん、今日バーは?」
「休み」
「そっか、お休みなんだね……」
(お休みの日にわざわざ来てくれたんだ…)
 日暮れの道を二人で散歩します。羽純がさりげなく手をさしのべたので、ぎゅっと彼の手を握りしめる歌菜。
(日の暮れた道を二人で歩くだけで……凄く幸せ)
 赤くなってうつむきながら、歌菜はそんな事を考えています。
「歌菜」
 やがて公園の中に入っていって、羽純は彼女の名を呼びます。
(公園で少し休憩していくのかな?)
 そう思いながら彼の顔を見上げると、真剣な眼差しとぶつかってしまい、ドキっとします。
「これ」
 羽純はプレゼントを差し出しました。
「え? プレゼント……?」
 歌菜は差し出されたプレゼントを受け取り、包みを開けて中身を確かめます。香水とカードが出てきました。歌菜はゆっくりとそれを読みます。
「書いてある通り、これは俺の感謝の気持ちだ」
 その言葉を聞いて、カードを読み返して、不思議な事に歌菜の頬を涙が伝い落ちていきました。
「嬉し過ぎて、何だか泣けてきちゃった……嬉しくて泣くなんて変だよね……でも本当に幸せ過ぎて……」
 えへへと笑いながら歌菜は香水を握りしめてそう言います。
 羽純が歌菜の頬を伝う涙を指ですくい取ります。
 歌菜はそっと香水の蓋を開けて自分の手首に向けてシュっと噴射しました。
「いい香り……甘いチョコレートの香りだね。羽純くんらしい……ありがとう、また宝物が増えちゃった。……大好き」
 甘い香りの中、幸せに酔いしれた瞳で歌菜が囁くように言います。
 大好きの言葉にこらえきれず、羽純は歌菜を抱き締めました。
 自分の選んだ甘い香りを放つ歌菜。チョコレートの匂いがまるで食べたくなるような愛しい思いをかき立てていきます。
 すると羽純の頬を歌菜のエスティアイヤリングがかすめます。ホワイトデーと春の季節を思わせる女の子のアクセサリー。余計に甘い恋心をかき立てるよう。
「俺も、歌菜が……大好きだ」
 焦がれるような声で羽純はそう告げました。歌菜は目を閉じて彼の声に聞き入っています。
 バレンタインやホワイトデーを越えて、ただ感謝の気持ちと恋の気持ちを伝え合う二人。チョコレートの甘い香りに包まれながら、二人は夕暮れの公園の日常の中で、世界の誰よりも幸せな気持ちをかみしめているのでした。

瀬谷 瑞希(フェルン・ミュラー)編

 瀬谷瑞希へのホワイトデーの贈り物を探していた精霊のフェルン・ミュラーは、デパートの催事場でショコランド製の香水を見つけ、それをプレゼントする事に決めました。
(色々な香水があってどれにしようか迷ったのだけれど。ミズキにはシトラスの香りが良いかなと思ったよ。爽やかな印象が彼女にとても似合う。何か思い悩んだ時でも、シトラスの香りで気分や思考がリフレッシュされて、良い方向に新たな気付きが生まれるなら、それはとてもいいことだろう。それで彼女の笑顔がもっと増えて欲しいとの願いを込めて、この香水を贈ろう。カードには『沢山の笑顔を共に』と……)
 フェルンは店員に自分の選んだシトラスの香水をホワイトデー用に包装してくれるように、それからメッセージカードのサービスに自分の決めた文言を入れてくれるように頼みました。
 とどこおりなく買い物をすませると、瑞希の自宅へと向かいます。
 瑞希は、フェルンが訪れたので、早速、紅茶でおもてなしをしました。
 その日の瑞希はフルール・ソルシエールの上にマシュマロトレンチを着て、ホワイトディーレットを被っていました。小物は春見のメガネ、スワンシューペンダント、マカロンイヤリング、【ブレスレット】ティンクルキャンディー、愛の糸【指輪】、詩集「百葉集」vol.1、カカオクッキングと、春が来た事、ホワイトデーの季節である事が分かる出で立ちです。
 フェルンの方は、連合軍制服「青の旅団」の下にボトムス「マーブルストーム」を履いて頭にエクシーズクロスリボンを被っています。小物にアダルティック・チョーカー、エスティアイヤリング、運命の糸【指輪】、シューズ「マーブルデイズ」、怪奇小説「麗しの伯爵」、さわやかポケT、幸運のホーク。彼の方も、春とホワイトデーのイメージでのファッションでした。
(最近少し上手に紅茶を淹れられるようになったので……)
 てきぱきとした手つきで紅茶を入れる瑞希。
 それから客間のテーブルの方にお茶を持って行きます。
「ホワイトデーのお返しだよ」
 フェルンはやってきた瑞希に、先程買ったプレゼントを手渡しました。
 香水の他に、ショコランド製の焼き菓子の詰め合わせもつけています。
「ありがとうございます。予想外だったので、とても嬉しいです」
 冷静で冷徹な時すらある瑞希ですが、元々スイーツが好きな事もあり、これには手放しで喜びを伝えています。瑞希は、焼き菓子の包装を開いて紅茶の隣に並べました。それから香水のラッピングを手に取ります。
「開けても良いですか?」
 少し上目遣いになりながら、瑞希が聞きます。
「どうぞ」
 フェルンは穏やかな声でそう答えました。
 包装を解いて、中に入っていたカードを読んで瑞希は心があたたかくなるのを感じました。
「一緒に沢山の笑顔を重ねていきたいです」
 その言葉に、フェルンは目を細めて満足そうに頷きます。二人の口元にナチュラルな優しい笑顔が宿ります。
 瑞希はそっと香水の蓋を開けて、自分の手の甲に向けてシュっとしました。
「いい香り……」
 シトラスの香りを気に入ったようです。
「お菓子は食べちゃったら終わりだけれど、香水は長く楽しめるし。色々な香水、試してみたいよね」
 フェルンは瑞希の紅茶を楽しみながらそう言いました。
「そうですね。私はあまり香水は詳しくないんですが……」
「だったら気軽にこの香水を使ってくれ」
 そう申し出るフェルンに瑞希はほっとした笑みを見せました。
 それから二人は静かに楽しいお茶会を楽しみました。フェルンの買ってきたショコランドの焼き菓子と、瑞希の紅茶で。料理がそんなに得意ではない瑞希ですが、紅茶は確かに少し得意なようです。うららかな春の午後、ウィンクルムは穏やかな会話で絆を深めていったのでした。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 森静流
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 03月16日
出発日 03月25日 00:00
予定納品日 04月04日

参加者

会議室

  • [5]瀬谷 瑞希

    2016/03/24-23:51 

    こんばんは、瀬谷瑞希です。
    パートナーはファータのフェルンさんです。
    皆さま、よろしくお願いいたします。
    そして、素敵な時間がすごせますように。

  • [4]桜倉 歌菜

    2016/03/22-00:28 

  • [3]桜倉 歌菜

    2016/03/22-00:27 

    羽純:
    月成羽純です。パートナーは歌菜。
    皆様、宜しくお願いします。

    どんな香水が好きなのか、似合うのか…値は張るが、考えるのも楽しいものだ。

    よい一時となりますように。

  • [2]風架

    2016/03/21-08:40 

    (筆談中)
    『神人の名は風架。そして自分はテレンスという者。どうかよろしく頼む
     風架様がなにが好きなのか分かっていないのだが、今は何とかなることを願う

     香水とは、値の張る物なのだと認識した』(参加してから値段に気づく)

  • [1]アデリア・ルーツ

    2016/03/19-14:32 

    シギ:
    俺はシギだ。別に覚えなくて良い。
    契約したばかりで、あいつが何を好きかなんて知らないが。
    契約した神人だからな。
    プレゼントぐらいはしてやるさ。

    だが、流石に良い香水ってのは値段が高いな……。(陳列された香水を眺める


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