【祝祭】贈り物は甘くて(叶エイジャ マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

 ショコランド中心付近に存在する、ブランチ山脈。
 その頂上付近には、古くから女神ジェンマ祀るフラーム神殿がある。
 対イヌティリ・ボッカ戦勝一周年ということで、今は祝祭が行われていた。神殿の屋根からお菓子を撒くイベントや、近隣の村でウィンクルムをもてなすイベントが開かれているのだ。
 女神ジェンマの加護は金平糖の形となって降り注ぎ、神殿の周囲に『祝福の金平糖』として散らばっている。

「――と、そんなショコランド近郊に、この時期の結婚を風習とする村がありまして」
 A.R.O.A.職員の説明ではその昔、2月と3月に贈り物をし合った男女が結ばれたエピソードにちなんでとか。
 毎年、ウィンクルムを招待して祝福してもらうのが慣例らしい。
「ウィンクルムの関係は愛情の象徴ともみなされてますので、たくさん祝福されるほど末永く過ごせる……と言われているようです」

 ウィンクルムが行うのは、新郎新婦と同じくタキシードと花嫁衣装(ウェディングドレス)を着てもらって、結婚する二人に声をかけてあげること。
 途中、精霊が神人に贈り物を渡すというイベントシーンが設けられているのだが、これはお菓子であったり、花であったり、はたまた指輪であったり(!)と、さまざまである。
「イベントを盛り上げる部分なので、何か考えておいてくださいね」
 それと、と職員は続けた。
「神人さんは新婦と一緒に、ブーケを投げるそうですよ」
 けっこう人気らしい。

 ※※※
 そして式、当日。
「本当に僕が彼女と結婚して、いいんだろうか……」
 新郎であるフレイルは、部屋の中を行ったり来たり。
「いや、僕が気弱でどうする……でも、もし彼女が一時の気の迷いで僕を選んだだけだったりしたら……」
 本番を直前に心の余裕をなくしていくフレイル。
 どうやら、背中を押してあげる必要がありそうだ。

 一方の花嫁は。
「えっ、彼に言ってないの? 子どもの頃からずっと好きだったこと」
 友人に言われて、花嫁は気まずげに目をそらした。
「だって、改めて言うのも恥ずかしくて」
「そんなだから、付き合ってもない人との噂ばっかりたつんじゃないの? はっきり言う時は言わないと」
「う~……でも、言わなくっても彼ならきっと分かってくれるはず」
 こちらはこちらで、何かあるらしい。

 彼らに関わるも関わらないも、ウィンクルムの手に委ねられている。

解説

 精霊の神人への贈り物、500ジェール。
 神人から精霊に贈り物がある場合は、追加で300ジェール。

【やれること】
・自分の衣装についての言及や、精霊の贈り物の予想あるいは贈られた時の神人のリアクション想像など

・新郎や新婦との会話(励まし&アドバイス。今のパートナーとの関係を鑑みて、アドバイスという名の心情暴露でも可)。

・式本番、精霊から神人へのプレゼントシーン(とそれに関する会話)。
 あなたは、何を相手に渡しますか?
 ※なお、精霊がウェディングドレス姿、神人がタキシードというバージョンも可とします。

・式終了後、二人で会話など。

【そのほかNPCについて】
 フレイル:19歳。花嫁(フィア)が好きだったが中々言い出せず、爆死覚悟で告白したらあっさりうけてもらえて、逆に不安になってる。そんな気弱な青年。

 花嫁:名前はフィア、18歳。幼い頃からフレイルが好きだったが、妙なところで引っ込み思案。何故かほかの男性との浮いた話ばかりもちあがる。でも一途。何年もまともに話してなかったフレイルが道端で突然告白してきても、嬉しすぎて即答するくらいに想っていた。
 愛があれば色々伝わると思っている。
 でも言葉にしてくれないと伝わらないわ!(と思っている)
 ウィンクルムはテレパシーでなんでも以心伝心してると思っている。
 なのでウィンクルムの関係に憧れている。

 そんな二人に関わるも、じっと見守るも自由です!

 ウィンクルムたちも気分は結婚式!(?)
 しかも料理も振る舞われるので招待客気分も味わえます。 

ゲームマスターより

お久しぶりです。
こんにちは、あるいは初めまして。叶エイジャと申します。

おそらく、個別描写になると思われます。
皆様の参加とプラン、楽しみにお待ちしています。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

リチェルカーレ(シリウス)

  エンパイアドレス
髪はアップにして小花を飾って

大好きな人とこの格好というのは照れる

フィアにお祝いを言いに

恥ずかしいって気持ちわかります
でも言葉や行動でしか伝わらないこともあるから
…彼は普段あんまり笑わないけど 「大好き」って言ったらすごくきれいに笑ってくれたの
あんな風に笑ってくれるのなら たまには勇気を出してもいいかなって

照れたように笑って 頑張ってと

薔薇の花をもらい目を丸く

赤い薔薇の花言葉って…知ってる?

返ってきた言葉に真っ赤に
嬉しいのに泣き笑いの表情

ううん。ありがとう…すごく嬉しい! 

お礼の気持ちと嬉しさを伝えたくて
袖を引いて 彼が少しかがんだ時に頬にキス
驚いた表情に 赤い頬のまま満面の笑みを 


ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)
  【ウェディングドレス】
エンパイアライン
勿忘草の髪飾り
【精霊へのプレゼント】
シンプルなチェーンネックレス

【新婦へのアドバイス】
愛情を言葉や行動に移せない人だとしても信じてあげましょう
・・・不安になる気持ちもわかりますが
どうすれば私達が喜んでくれるのか考えすぎて行動までが遅いだけなんですよ
結婚おめでとうございます
【プレゼント交換】
派手なものは好まないでしょうから、シンプルでかっこいいアクセサリーをプレゼントします

【式終了後】
薔薇の包装を解いてみて驚愕
嬉しさのあまりディエゴさんに抱き付く
答えは考えるまでもなく「はい」

今度同じ指輪を買いに行ってそれをネックレスに通せば仕事中でも安心じゃないですかね?




八神 伊万里(蒼龍・シンフェーア)
  白のウェディングドレスに薄紫ヴェール

フィアさんに挨拶とお祝いの言葉
これがウィンクルムの祝福になるのか分かりませんが、私の両親のお話を聞いてくれませんか?
二人は昔AROAに勤めていて、色んなウィンクルムを見て来たそうです
誰もが最初から固い絆で結ばれてるわけではなくて
喧嘩したりすれ違ったりとかの人達もいたとか
せっかくの結婚式ですから、思い切って言葉で伝えてみてはどうでしょう
きっと喜んでもらえますよ

星の形の花なんて素敵
そういえばそーちゃんの名字、シンフェーアって『銀河』って意味があるのよね
部屋に飾ったら、そーちゃんが見守ってくれてるみたい

式を見ているそーちゃんが何故か悲しそうに見えた
何かあったのかな


マーベリィ・ハートベル(ユリシアン・クロスタッド)
  呪文の様に言聞かせ「これもウィンクルム活動の一環…
ドレス姿の自分と息を呑む佇まいの彼を見ては全然落ち着けない
それでも新郎新婦の為にきちんと努め上げなければ
精一杯気を引締め

新婦へ恐縮しつつ
「そのお言葉、お伝えになったら愛するお方の曇りない真実の笑顔を見られるのではないでしょうか?それだけでもお伝えになる価値がある様に思います
(羨ましい…伝える事が許される関係…

贈物は花と予想していた
頂いたのは花型のパーツで形作られた指輪
デザイン可愛い
「もったいないお言葉です…その…私だけでは叶わない良い経験をさせて頂けて感謝しております
(白バラの花言葉…尊敬)
嬉しく泣きそうなのぐっと堪える

感謝と祝福込めブーケ投げ


ルイーゼ・ラーシェリマ(オリヴァー・エリッド)
  どんな結婚式になるのかとっても楽しみね
それにしても祝福するほど末永く…責任重大ね!精一杯祝福しなくっちゃ

結婚式だけあってみんな綺麗な格好よね
オリヴァーくんもぴしっと着こなしているし、私もドレスに負けないようにしないと!
ぐっと拳を握る

新郎新婦には末永くお幸せに!と笑顔で挨拶
お二人の未来に沢山の幸せが訪れるよう、一杯祝福していくわね
心の機微に疎い為、様子が変でも特に気づかず

贈り物は笑顔で受け取る
わあ、可愛い!食べるのが勿体ないわ
ありがとう、オリヴァーくん
私こういう可愛いお菓子とか大好きなの
よくわかったわね?

素敵な結婚式だったわね
私もいつかは素敵な花嫁さんに…!
あれ、そういえばフィアさんて同い年…?



「これもウィンクルム活動の一環。これもウィンクルム活動の一環……」
 マーベリィ・ハートベルは、呪文の様に自らに言い聞かせていた。丸眼鏡の下の目は落ち着か無げに動き、顔は赤く染まりっぱなしである。
「大丈夫。落ち着いて、マリィ」
「は、はいぃ……」
 半分は、堂々としているユリシアン・クロスタッドのせいなどとは、さすがに言えない。
 元々、メイドとして彼に奉公する身だったわけであるから、ドレス姿なんて、落ち着くはずがないのだ。
 だというのに、ユリシアンは変わらず堂々としていて、しかも礼装はマーベリィが息を呑むほど様になっている。
 そんな彼に控えて接するのではなく、相手役として振る舞うというのは、すでにマーベリィのキャパシティをはるかに超えてしまっていた。
「し、新郎新婦の為、きちんと努め上げてみせます……!」
「うん。ぼくのためにも頑張って、花嫁様」
「ユ、ユリアン様~……」
 とたんに不安な表情になる神人に、精霊は柔らかく微笑んだ。
 マーベリィは生地に花刺繍のあるレースで素肌の露出を抑え、全体的に控え目な印象のドレス姿だ。それでいて、品を感じさせる。
 彼女の性格をよく表してもいるし、何より今日は主役ではないのだから、良い選択だとユリシアンは思った。
 風習に感謝だね。
 ドレス姿の彼女をデレ気味に眺めつつ、ユリシアンは落ち着くまで見守ることにした。メイド服以外の服にも慣れてもらえたらなと、思いながら。
「素晴しいよマリィ。だから自信をもって」

 いつも一緒だからこそ、時折はっとすることもある。
 エンパイアドレスを着たリチェルカーレに、シリウスは一瞬固まった。
「変な所、ない?」
 それをどう思ったのか、神人は後ろ姿なども見せてくれる。髪はアップにして小花を飾ってあって、水色の髪に花の色が映えていた。大丈夫だと、シリウスは短く伝える。
「シリウスも、似合ってるよ」
 白のタキシード姿の彼へと無防備に見せてくれる、信頼と笑顔。
 それが好ましく思ったのは、いつごろからだったか。
「新郎と新婦のところへ行くか」
「うん」
 二人で並んで歩く。場所と服のせいか、妙な沈黙が続いて、二人分の足音がとても大きく感じられた。
「ちょっと恥ずかしいね」
 照れたように笑うリチェルカーレに頷く。
 ――大好きな人とこの格好でいるのは。
 彼女がそんな枕詞を心中に忍ばせていたとは、シリウスは気づくこともなかった。

「ディエゴさんって、どんな式をあげたいとか、考えたことありますか」
 唐突に、淡々と問われ、ディエゴ・ルナ・クィンテロはハロルドを見た。
 ハロルドはエンパイアラインのウェディングドレスを着ていた。窓からの光が、勿忘草の髪飾りを煌めかせている。
「どんな式、か?」
 彼女の意図を図りかねて、ぎこちない返事になる。ハロルドはそんな彼に、青と金の目を興味深げに細めた。
「あるんですね」
「ああ、いや、まあ」
「あるんだ」
 いつも以上にうろたえるディエゴに、ハロルドは微かな笑みを浮かべて歩き出した。
「新婦のところへ行きます――今度、聞かせてくださいね」
 ハロルドが去るまで、精霊は呆然としていたが、やがて苦笑とともに黒のタキシードを整えた。
「ある意味、とてつもないプレッシャーだな」
 さて俺も新郎に会いに行こうか、とディエゴも歩き出した。

「どんな結婚式になるのかとっても楽しみね」
  開式前の式場をそっとうかがいつつ、ルイーゼ・ラーシェリマは拳をぎゅ、と握った。
「祝福するほど末永くなるのだから……責任重大ね! 精一杯祝福しなくっちゃ」
「そうですね」
 オリヴァー・エリッドは、そんなやる気満々の神人に相槌を打ちながらも、空回りして何かしでかさないか少し心配もしていた。
 ――そのあたりは、俺が注意して見ておかないと……。
 一生懸命なところは、微笑ましくはあるのだが。
「日射し、大丈夫?」
「うん。ちょっとくらいは」
 北国出身というルイーゼの色素は薄めで、普段は何かしら頭に被せている。今日は晴れの席なので、胸まで伸びた銀の髪をまとめて、ホイップとイチゴを模したヘアピンで留めていた。
 女神ジェンマが気に入っているショコランド産のショートケーキをモチーフにしたもので、ジェンマの加護があればと思ってつけたものだ。
「結婚式だけあってみんな綺麗な格好よね……オリヴァーくんもぴしっと着こなしているし」
「そう言ってもらえると嬉しいかな」
 私もドレスに負けないようにしないと、と意気込む神人に微笑みつつ「そろそろ新郎新婦に挨拶しに行こうか」とその場を後にした。

「はい、どうぞ入ってください」
 ノックした控室から返事が来て、八神 伊万里は中へと入った。
 ――わ、綺麗。
 花嫁のフィアはほとんどの準備を終えていた。室内は家族か友人がさきほどまでいた様子があるが、どうやら今は彼女一人のようだ。
「あの、私、フィアさんに挨拶とお祝いの言葉を贈ろうと……」
「あ――ああ! 神人さん!」
 伊万里が誰か気づいた新婦が、嬉しそうに微笑んだ。
「私たちの結婚式に来ていただいて、光栄です! わぁ、綺麗……」
 相手も伊万里と同じことを思っていたらしい。白のウェディングドレスに薄紫ヴェールをつけた伊万里を、目を潤ませて見つめる。
 式当日に、花嫁から綺麗と言われるのも妙な感覚である。
「私、子どもの頃から、ウィンクルムの始まりの物語が大好きで……神人になりたい夢は叶わなかったけど」
「そうだったんですか……あれ、でもお相手の方って」
「ええ、精霊ではありません。人間。でも、私が神人になったら精霊になって守ってあげるって、彼だけが言ってくれたんです」
「それで、もしかしてずっと?」
「はい、彼が好きでした。でもさりげなく彼に聞いたら、どうも覚えてないみたい。友人は言った方がいいって言ってくれるのですが、彼は今の私が好きで、私が今の彼が好きなら、それでいいのかなって……」
 憧れてたウィンクルムだからだろう。静かに心情を話してくれる。伊万里は何と声をかけようか迷って、ふと以前に聞いた話を思い出した。
「フィアさん。これがウィンクルムの祝福になるのか分かりませんが、私の両親のお話を聞いてくれませんか?」


 同じころ、伊万里の精霊である蒼龍・シンフェーアは新郎のフレイルと会っていた。どこか思いつめた彼に聞こえるよう、壁をノックして知らせる。
「あ……こ、これは失礼しました。精霊の方ですね」
「やあ。今日はおめでとうと言いに来たんだけど、もしかしてマリッジブルー?」
 軽い調子で空いた椅子に腰かけた蒼龍に、新郎はうなだれる。
「お恥ずかしい限りです」
「これからのこと考えると不安になるのは分かるよ。未来はどうなるか分からないからね」
「はい……彼女に、村の男たちは憧れていたんです。僕よりずっと頭のいい友人や、人気者が彼女にアプローチして。実際、何人かとは付き合っていたのだと思います」
「聞かなかったの?」
「聞けませんよ。昔のことを気にする男だなんて思われたくない……たまたま、付き合ってた人と別れたって噂を聞いて、そしたらちょうど道で会って……思い切って気持ちを伝えたんです」
 心の中で唸る蒼龍。
 行き当たりばったりの告白。自分なら絶対に避けたい状況だ。
「そしたら、付き合うことになって」
「……世の中って不思議だよね」
「はい。全く」
 そこで、ユリシアンが入ってきた。彼も一連の話を聞くと、フレイルに続きを促した。
「その時は嬉しかったのですが、それって、僕が彼女の心の隙につけこんだだけじゃないかって」
 つまり、真実の愛でないか不安なのだ。
「でも、せっかくOKしてもらえたんだしさ」
 蒼龍は言った。
「彼女が離れていくかどうかはここからの君次第だと思うんだよ」
「そうだな、貰ったチャンスを生かすだけだ」
 ユリシアンも力強く、同意した。
「愛する人を幸せに導く努力をする、それだけだ」
 ぼくも努力中だよ、とユリシアンは励ます笑みを添える。
「好きなんでしょ?」
 うなずくフレイル。蒼龍がその肩をたたいた。
「本気で好きなら、離しちゃだめだよ」
 フレイルの顔が変わる。しかしまだ少し、自信がなさそうだ。

「両親は昔AROAに勤めていて、色んなウィンクルムを見て来たそうです」
 伊万里の言葉に、フィアが真剣に耳を傾けている。
「誰もが最初から固い絆で結ばれてるわけではなくて、喧嘩したりすれ違ったりとかの人達もいたとか」
「ウィンクルムでもそんなことが……?」
「ええ。普通の人と同じなんです。言葉にしなくてお互いの心が分からず、結果後悔した方だっている……さっき聞いた話は、とても素敵な話だと思います。せっかくの結婚式ですから、思い切って言葉で伝えてみてはどうでしょう?」
 きっと喜んでもらえますよ、と伊万里は微笑んだ。
 途中で同席となったマーベリィも、新婦へ恐縮しつつ言った。
「私も、同感です。今のお話、お伝えになったら愛する方の笑顔を見られるのではないでしょうか?」
「笑顔、ですか……?」
「はい、曇りない真実の笑顔です。それだけでも、お伝えになる価値がある様に思います」
 伝える事が許される関係。とても羨ましいことだとマーベリィは思う。
「で、でも、今さら恥ずかしくて……言えるのかしら」

「『自信がない』という部分は、少し共感できる」
 無表情のまま、シリウスはフレイルに言った。
「マキナのあなたでも、ですか?――あ、すみません」
「いい。見た目は『そんな風』に見えるだろうしな」
 だけど、冷静に扱おうとしてもできないものはある。
 だから彼の気持ちも分かるのだ。
 あの笑顔の隣にいてもいいのかと、不安になる自分がいるから――。
「……掴んだ手を離さないように。守りきるしかないんじゃないのか」
 ぽつりぽつりと、しかし決意に満ちた言葉をシリウスは紡ぐ。
「誰かによこせと言われたって無理だろう?」
「と、当然ですよ!」
 返事に苦笑に似た微笑をして、シリウスはしゃんとしろと彼の背中を叩いてやった。

「恥ずかしいって気持ち、わかります」
 リチェルカーレも自らを思い返して、少し赤くなった。
「でも、言葉や行動でしか伝わらないこともあるから……彼は普段あんまり笑わないけど『大好き』って言ったらすごくきれいに笑ってくれたの」
「一緒にいた、黒髪のマキナさんですか?」
 伝わったのか、フィアが優しく聞いてくる。
 リチェルカーレがもっと赤くなって、うなずいた。
「あんな風に笑ってくれるのなら たまには勇気を出してもいいかなって、思うんです……」
 花嫁の手がリチェルカーレに触れた。それで二人には十分伝わった。
「頑張って」
 はたして励ましているのか励まされたのか。照れたように笑って言って、リチェルカーレは部屋を後にした。

「俺自身、自分の気持ちを素直に伝えることは得意じゃあない。お互いの気持ちはなんとなくわかる……が」
 来た時に見た顔より、顔に精悍さが生まれている。
 フレイルにそんな印象をもちながら、ディエゴはもうひと押しをすべくアドバイスをした。
「何も上手く、きれいに伝える必要はない。ただありのまま、気持ちを真摯に伝えることだ。それを相手が望むなら」
「相手が、望むなら……」
 自分なりに言葉をかみ砕こうとする青年に、ディエゴは笑いかけた。
「結婚おめでとう」

「不安になる気持ち、わかります」
 愛情を言葉や行動に移せない人だとしても、それは行動までが遅いだけなんだと、信じてあげてほしいと、ハロルドは告げた。
「きっと、どうすれば私達が喜んでくれるのか考えすぎていて、そのこと自体は嬉しいのですけど――」
「とても、もどかしく思う時がある」
 花嫁がその先を取り次いだ。ハロルドが微笑んだ。
 この場にいるのは、結婚しようとする年上の女性だ。ハロルドの目には、彼女の衣装が先ほどよりも輝きを増したように見えた。
 もう、言葉は多くいらない。
 言うべき言葉はただ一つ。
「結婚、おめでとうございます」


 式が始まった。
 ウィンクルムを代表して、ルイーゼとオリヴァーが二人の前に出る。
「新郎新婦には末永くお幸せに!」
 ルイーゼが笑顔で挨拶した。
「お二人の未来に沢山の幸せが訪れるよう、いっぱい祝福していくわね」
「この度はご結婚おめでとうございます」
 オリヴァーも丁寧に祝辞を述べる。
「ありがとうございます」
「皆さんが来てくれて、本当に良かった」
 フレイルとフィアが笑顔を浮かべる。
 式の直前、二人でなにか話をしたらしい。
 晴れやかな顔は、それが二人にとって良い結果をもたらしたと十分に分かるものだった。

 そして拍手の中、六人の男性から、六人の花嫁たちへとプレゼントが渡される。
 まずは、オリヴァーからルイーゼへのプレゼント。
「わあ、可愛い!」
 プレゼントは色とりどりのマカロンだ。可愛らしくラッピングしたものを手に取って、ルイーゼの瞳がキラキラと輝く。
「食べるのが勿体ないわ。ありがとう、オリヴァーくん!」
「ルイーゼさん、そんなにはしゃいだら危ないよ」
「あ、ごめんなさい。嬉しくてつい」
 お淑やかなレディを意識していたのか、恥ずかしげな表情をしてから、小声で言った。
「ありがとう、私こういう可愛いお菓子とか大好きなの」
「それは良かった」
 普段の直球な素行から判断して、きっと好きだろうと考え選んだのだ。
 想像以上に喜ばれて、オリヴァーとしても嬉しくなる。
「それにしても、よくわかったわね?」
「うん、まあね。タネは秘密……かな」
「そう言われると気になるんだけど」
 ルイーゼが小首をかしげるが、さすがに言うわけにもいかず、オリヴァーは苦笑をこらえつつぼかすのだった。

 伊万里へと蒼龍が渡したのは、ハナニラの花束だ。
「星の形の花なんて素敵」
「悪い意味の花言葉が多い花だけど、『星に願いを』っていう意味もあるんだよ」
「そうだったんだ……」
 花の色と香りと味わって、ふと伊万里が微笑む。
「そういえば、そーちゃんの名字ってシンフェーアって言うでしょ」
「うん」
「それって『銀河』って意味があるのよね。この花を部屋に飾ったら、そーちゃんが見守ってくれてるみたい」
 笑顔とともにそんな言葉を投げてくるものだから、不意を打たれて蒼龍も一瞬、言葉に詰まった。目が泳ぐ。
「……そう言われるとちょっと、照れるね」
 実は、すごく、だったけれど。
 しかし、ここで白旗を上げてばかりはいけない。
 好きなら、離しちゃだめ――さっき言った言葉を思い返す。
「それなら、この花を見るたびに僕のこと考えてくれたらもっと嬉しいな」
 そう言って、蒼龍は伊万里との距離を更に縮めた。

 ハロルドは、精霊へのプレゼントも用意していたらしい。
 ディエゴの渡した一本の薔薇と交換するように、シルバーアクセサリーを渡す。
「派手なものは好まないでしょうから、シンプルでかっこいいものをと」
「心遣いに感謝する。ハルのセンスなら間違いないな」
 大人びた二人のやり取りに、しみじみと拍手が送られた。

 そして――
「え……」
 マーベリィは、贈物が花だと予想していた。
 確かにそれは花と、花に見えるものだった。
 白バラと、花型のパーツで形作られた指輪である。
「最近突飛な依頼を受けてはきみに無理をさせているからね」
 本格的な物は恐縮されると思って、ユリシアンの考えた苦肉の策だ。
「それでもしっかり努め上げてくれるきみを尊敬しているよ。特別報奨だと思って受け取って欲しい」
 こうでも言わないと彼女は受け取ってくれない。ユリシアンとしては、それがもどかしい。
 だが確かに、気持ちは伝わったようだ。
「もったいないお言葉です……その、私だけでは叶わない良い経験をさせて頂けて、感謝しております」
 白バラの花言葉は、尊敬。
 マーベリィにとって、これほどうれしい贈り物はない。
 嬉しく泣きそうなのぐっと堪える彼女を、花嫁が肩を抱いて祝福した。

 リチェルカーレも、薔薇の花をもらい目を丸くしていた。
「赤い薔薇の花言葉って……知ってる?」
 問われ、シリウスは目を逸らして告げた。
「知っていて渡している」
 その言葉に真っ赤になって、リチェルカーレの目が潤む。感極まって花嫁を見る。
「良かったわね、おめでとう」
「あの、すみません、私」
「いいから。ほら、彼に」
 泣き笑いの表情が後押しされて、シリウスの前に進み出る。潤む瞳に、彼は目を見開いていた。
「……まさか、気に障ることだったのか?」
「ううん。違うの」
 シリウスの袖を引いて 彼が少しかがんだ時に頬にキスをする。
 驚いた表情に 赤い頬のまま満面の笑みを見せた。 
「ありがとう、すごく嬉しい!」 
 キスに硬直していたシリウスがその笑顔につられたように軽く笑って、彼女を抱き寄せる。
 拍手と歓声がひときわ大きくなった。


 その後は、互いの想いを真に通じ合った新郎新婦が結婚指輪を渡し合って、式は最高潮に盛り上がった。
 ウィンクルムも様々な人と話をし、握手を求められたりすした。
「それでは、投げますね!」
 その頃には、マーベリィも場に慣れてきたらしい。ぎこちなさが和らいだ様子でブーケを花嫁とともに投げる。感謝と祝福込めたブーケが変な所へ上がっては慌て、風に戻されキャッチされるのを見て安堵する彼女を、ユリシアンは拍手と微笑みを送った。
 伊万里は、フレイルとフィアを見ている蒼龍に気付いた。
 仲睦まじく知り合いと話している二人を見る目は、なぜか悲しそうに見える。
「そーちゃん、どうしたの?」
 何かあったのかなと思って聞くと、不思議そうな顔をされた。
「ん? そう見えた? ……たいしたことじゃないんだ」
 おめでたい席で話すことじゃないから、いずれ話す。
 そう言った彼の目にはもう先ほどまでの雰囲気はなかったが、伊万里には印象が強くて、後々思いだすことになるのだった。

 やがて式も終わりとなり、ウィンクルムたちも彼らに見送られてそれぞれの帰路につくことになった。
「素敵な結婚式だったわね」
 夕暮れの中、いつもの服装に戻ったルイーゼは、猫耳キャスケットの下で笑顔を見せていた。
「お料理もおいしかったし、無事祝福もできたし。プレゼント交換のあとの結婚指輪も盛り上がってたなぁ。ドレスも着れて良かったし」
「うん。似合ってたよ」
 オリヴァーが応じる。さすがに神人ほど元気は残っていない。
「ありがとうっ。思えば良い経験よね。私もいつかは素敵な花嫁さんに……!?」
 はぁ、と乙女らしくため息をついていたルイーゼが、不自然に言葉を切った。
「ルイーゼさん?」
「……オリヴァーくん。そういえばフィアさんて、私と同い年?」
「うん」
 同じ十八歳だ。
「うそ……大人っぽいなぁって思って忘れてたけど、そんな」
 とたんに焦りだす神人。オリヴァーにはそれが少し面白かった。

「ディエゴさん、理由聞いてもいいですか?」
 村から離れてやや時が流れ、ハロルドたちは女神ジェンマを祀るフラーム神殿へと来ていた。
「エクレール。今日、どんな式をあげたいかって聞いたよな」
 ハロルドがうなずく。当然覚えている。
 ディエゴは神殿に誰もいない事を確認してから、正面から彼女を見た。
「式で渡した薔薇を出してほしい」
 いま一つ要領を得なかったが、ハロルドは言われた通り薔薇を手に取ると、両手の上に乗せた。そこへ精霊の手が伸びる。
 薔薇の包装が解かれ、そこから出てきた物を見て神人が息を呑んだ。
「華やかな式でなくて申し訳ないが、俺はそういうのは苦手だ」
 現れた指輪を前に、精霊ディエゴ・ルナ・クィンテロは片膝をつく。
「だが、お前と永遠の約束をしたい――受け取ってくれるか?」
 神人は無言だった。しかしその表情から、返事は聞くまでもないことが明らかだった。ディエゴは静かに指輪を神人の薬指に通す。
「~~!」
 嬉しさのあまり声にならない声を上げ、ハロルドはディエゴに抱き付いた。
「っと……一応、言質もとっていいか?」
「――こういうの、ずるいと思います」
「エクレール」
「はい」
 女神が、二人の取り交わしの証人となった。



依頼結果:成功
MVP
名前:リチェルカーレ
呼び名:リチェ
  名前:シリウス
呼び名:シリウス

 

名前:ハロルド
呼び名:ハル、エクレール
  名前:ディエゴ・ルナ・クィンテロ
呼び名:ディエゴさん

 

名前:マーベリィ・ハートベル
呼び名:マリィ
  名前:ユリシアン・クロスタッド
呼び名:ユリアン様

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 叶エイジャ
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ロマンス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 03月09日
出発日 03月15日 00:00
予定納品日 03月25日

参加者

会議室


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