【祝祭】桃の節句のスイーツコンクール(山内ヤト マスター) 【難易度:普通】

プロローグ

 ショコランドの大きな街で、このたび春のスイーツコンクールが開かれる。
 小人や妖精の菓子職人が大勢集まっており、このコンクールでその腕を競い合うのだ。テーマは、桃の節句。

 あなたは審査員を兼ねたお客さんとして、コンクールに参加する。
 規定の参加費を払えば、一人一票の投票チケットが渡されて、会場内で振る舞われているお菓子を自由に食べ比べることができる。一番気に入ったお菓子に投票してみよう。
 あなたやパートナーの意見が、コンクールの優勝者を左右することになる。

 会場は大きなホールで、人間の背丈でも少しも窮屈な思いをせずに動ける規模だ。客の数は多いが、会場が大きいので混雑には感じない。座るスペースも多めに用意されている。

 出店している店のうちの中で、特に盛況なのは次の三つ。
 全てのお菓子を食べても良いが、投票できるのは一人につき一つだけ。

 和菓子の老舗。
 一口サイズの大福に、雛人形のお内裏様とお雛様に見立てた衣を着せている。この衣は薄く伸ばされたどら焼きの生地だ。植物の色素で着色されている。
 お雛様の大福は甘酸っぱいイチゴと生クリームが、お内裏様には大粒のマスカットと白餡入り。
 伝統的な和菓子の技術を守りつつ、洋風の素材を取り入れたりと、革新的な部分もある。

 洋菓子で評判の店。
 ピーチタルトが売り物だ。つややかな桃のコンポートが丁寧に薄切りにされ、桜の花弁のように並べられている。桃ではなく、桜の花だ。タルトの大きさは一人分。
 そして雛祭りの橘から着想を得て、フィリングにはほんのりとミカンの味付けをしてある。
 食べれば、あっさりとした優しい甘味が広がることだろう。

 ショコランドといえばチョコレート。チョコレートの有名店も参戦している。
 菱餅の形をしたチョコケーキは、上からストロベリー、ホワイトチョコ、抹茶味のチョコスポンジだ。これも大きさは一人分サイズ。
 しっかりとした濃厚な甘さで、スポンジ生地には良質のチョコがたっぷりと贅沢に使われている。

 コンクール会場には、ショコランドの記者も来ているようだ。
 もしかしたら、妖精の記者があなたに会場のお菓子に関するインタビューをしにくるかもしれない。

解説

・必須費用
参加費:1組400jr



・投票について
投票チケットは、一人一票です。チケットは、神人の分と精霊の分があります。
二人で別々の投票先に票を入れても構いません。
A:雛人形の果物大福
B:桃のコンポートタルト
C:菱餅カラーのチョコケーキ
プランには、ABCの中から選んで記入してください。
参加したウィンクルムの投票結果によって、コンクールの優勝者が決まります。
投票は全員参加でお願いします。



・インタビューについて
会場では、ショコランドの妖精の記者から「お菓子についてのコメント」を求められることがあります。
インタビューに応じるかは、任意です。



・デートコーデの小ネタ
連合軍制服「青の旅団」
金時計「グローリア」
手袋「ロイヤル・レット」
手袋「ロイヤル・チェック」
エンシェントクラウン
など、バレンタイン地方での功績を示すアイテムをPCが装備していると、NPCから敬意を払われます。
直接的な利益は特にありません

ゲームマスターより

山内ヤトです!

お菓子食べ放題の会場で、一番美味しいと思ったお店に投票できます。
パートナーとお菓子を食べたり、味の感想を言い合いながら、ショコランドのコンクールをぜひ盛り上げてください!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ミサ・フルール(エミリオ・シュトルツ)

  インタビューに応じる

素敵なスイーツがたくさん!幸せだよ~(はにゃーん)
ありがと…(はにかみながらぎゅっと精霊の手を握る)

できるだけ多くの種類のスイーツを食べられるよう、精霊と半分に分け合って食べます
彼の口元にクリームがついているのを見て指ですくって舐めます
赤面する精霊の顔を見て、自分が無意識にとった大胆な行動にドキドキ

【A:雛人形の果物大福】に投票
まず一口サイズなのが女性的に嬉しいなって
うんうん、ちょこんとした感じがとても可愛いよね!
もちもちした食感に、甘酸っぱい果実と生クリームがすごくマッチしてて…どうしよう、また食べたくなっちゃった
エミリオ…ふふ、そうだね(精霊の方に視線を向け微笑みあう)


月野 輝(アルベルト)
  すごーい、スイーツの山よ!
こんなにたくさんあると、どれから食べたらいいのか迷っちゃうわね
思わず歓声を上げてからハッとする
アルがもの凄く”楽しそうに”笑ってるから顔が熱くなって…色んな意味で
恥ずかしいのとその笑顔が嬉しいのと

誤魔化すようにお菓子を見回して、どれにしようか迷うフリ
…って、ほんとに迷っちゃう
どれもとても可愛くて綺麗で食べるのが勿体ないんだもの

雛人形を押し込まれてビックリ
た、食べさせられた…!?思わず真っ赤
あ、でも、これ美味しい
果物と和風の味付けがとても合ってて

タルトは爽やかな甘さが
チョコケーキは蕩けるような甘さがとても美味しかったのだけど
雛人形を食べた時の甘さが頭に残ってて
投票はAに


夢路 希望(スノー・ラビット)
  スイーツへの興味と彼のお誕生日祝いのアイディアを得られればと参加

どこも美味しそうで…でも全部食べて回るのはカロリーが…
スノーくんは気になるお店ありました?
ふふ…じゃあ、そこに行ってみましょう

A
小さくて可愛いです
こっちがお雛様で、こっちがお内裏様でしょうか
差し出されたら少し恥ずかしいけど口を開く
あの、じゃあ、私も…あーん…
B
綺麗な飾り付け…勉強になります
崩してしまうのが少し勿体ないです
C
色で味が違うんですね
それぞれチョコの味がしっかりとしていて…

どれも美味しいです
彼の幸せそうな笑顔にはつい見惚れ
(私もスノーくんを笑顔にできるものを作れたらいいな)


投票はAに
雛祭りらしさと和と洋の調和に感動しました


ひろの(ルシエロ=ザガン)
  すごく人、いっぱい。(ルシェの服を掴もうとして止める
あ。(見上げる
どこ……。そんなに食べれないし。(色んな店に視線を向ける
「いいの? ルシェは、そんなに甘い物食べて。平気?」
結構、律儀。
……手、あったかい。(口元が少し緩む

大福?
「……苺の方が、好きかも」(1個で止める

え。(ルシェとフォークを見比べ、おずおずと食べる
甘い、けど。スポンジおいしい。

「桜だ。……桃?」
桃は苦手、だけど。(羞恥と併せて葛藤
あ。(少し残念に思え、自分で戸惑う
ルシェの好きな甘さ?
「ルシェ、一口食べたい」(甘さが気になり、裾をそっと引く

B
桃苦手だけど。少し、食べれた。
(インタビューは首を振って断り、ルシェの後ろに隠れ気味になる


シルキア・スー(クラウス)
  投票A

甘味大好き
並ぶスイーツに瞳輝かせ
「みんな食べてもいいなんて天国!


チョコは食べておかねば!
3色スポンジかわいい!


色合いがファンシー!
はぁぁ、優しい味わい

(もぐもぐ口抑えつつ
「おいひくて、どうしよう幸せすぎる、完成度!

Aお雛様
「人形に見立ててるのね、かわいい
食べる前に色んな角度から観察
彼が和食好なので和菓子はちょっと特別視
テンション落ち着けて

「お内裏様一口いい?
あーんを食べる※前に経験しこうする人だと知ってる
「白餡…上品で安心する甘さ

「お返し
ちょっと照れつつ一口分あーん返し

お茶飲みまったり
「甲乙つけがたい!でも和の奥深さは探求心くすぐられるかも、誰かさんに感化されたかな
にっこり


●食べたい
 会場の音に『ひろの』はわずかに後ずさった。騒音というほどではないが、大勢の人が集まる場所だ。それなりに賑わいをみせている。
(すごく人、いっぱい)
 ひろのは救いを求めるようにその手を『ルシエロ=ザガン』の服へと伸ばし……つかもうとして、結局止める。
 下がるひろのの手をルシエロの方から自然に取ってくれた。
「あ」
 ひろのは視線を上げ、ルシエロの顔を見る。
「どこから行く」
 ルシエロは繋いだ手のことには触れない。わざわざ言葉に出さずとも、二人の手が繋がっているのは事実。
「どこ……。そんなに食べれないし」
 会場内の色んな店にひろのは視線を向ける。
「量が入らんのなら、オレの分から一口食べると良い」
 その提案に、ひろのはちょっと驚く。
「いいの? ルシェは、そんなに甘い物食べて。平気?」
「コンクールなんだ。ある程度食べずにどうする」
(結構、律儀)
 偉そうな性格のわりに、意外とルシエロはこういうことにマメなようだ。
 二人は近くの店から回っていくことにした。
 ルシエロは、ひろのの歩調に合わせる。
 二人の手は繋いだまま。
(……手、あったかい)
 ひろのの口元が少しだけ緩んだ。

 まず訪れたのは和菓子の老舗。
「大福?」
「手頃な大きさだな」
「……苺の方が、好きかも」
 二種類あったが、ひろのは一つだけ食べて止める。
 ルシエロは雛人形を模した大福に巻かれた衣に注目した。薄い生地が大福の中身とよく合っている。

 菱餅カラーのチョコケーキを見て、ルシエロはあることを思いついた。
「口を開けろ」
 一口分のケーキをフォークでひろのの口元に寄せながら、そう言った。
「え」
 人目のある場所で奥手なペアが大胆なモーションを実行するのは、ハードルが高い。
 しかし、これまでに二人が築いてきた絆は深い。そしてルシエロはコーデのポケットに幸運のホークを忍ばせるなど、少しでも物事が上手くいくように準備し、ハードルを乗り越える工夫をしてきた。
 ひろのはルシエロとフォークを交互に見比べていたが、やがておずおずとチョコケーキを口にする。
(甘い、けど。スポンジおいしい)
 チョコケーキを食べたルシエロは微妙な表情。濃い甘さは苦手だ。

 次にむかった店で、ひろのは果物のタルトをしげしげと見つめた。
「桜だ。……桃?」
「桃が花弁か。面白い」
 桃のコンポートを薄切りにして、桜の花をかたどっている。
「ほら」
 と、またしてもルシエロがタルトをひろのに寄せる。
(桃は苦手、だけど)
 ひろのはうつむいて、羞恥と併せて葛藤する。
 その様子を見て、ルシエロはやり過ぎたかと感じた。ピーチタルトをそっと引っ込めて、自分で食べる。
(あ……)
 桃は苦手なはずなのに、少し残念に思えた。その心境に、ひろの自身も戸惑う。
 タルトを口にしたルシエロは満足そうに頷いた。
「オレ好みの甘さだ」
(ルシェの好きな甘さ?)
 その言葉が気になって。
「ルシェ、一口食べたい」
 ルシエロの服の裾をひろのがそっと引く。
「……」
 その仕草に、ルシエロの胸にある衝動が込み上げた。

(オレがオマエを食べたい)

 激しい思いは、口には出さない。
 ひろのを怖がらせないように。

 ルシエロはタルトをひろのの口元まで持っていく。
 ひろのは桃のタルトを少しだけ食べた。

 二人共、桃のコンポートタルトに票を入れた。
 妖精の記者がインタビューにやってくると、ひろのは首を横に振って断り、そそくさとルシエロの背後に隠れる。
 妖精記者は、ひろのの金時計「グローリア」を見て目を輝かせた。
 が、ひろのが明らかに他者との交流を避けたがっている態度だったので、記者はあえて話題に出さず、そっとしておくことにした。
 人見知りなひろのの様子に微笑んでから、ルシエロは堂々とインタビューに応じた。
「タルトの見目も良いが、あっさりとした甘さが口に合った」

●楽しくて
「すごーい、スイーツの山よ!」
 会場の賑わいに極上の笑顔になる『月野 輝』。大人びた見た目をしている輝だが、今日は無邪気にはしゃいでいる。その手には、手袋「ロイヤル・レット」。ヘイドリック王子隊として作戦に参加したことを示す刺繍が縫い込まれている。
 パートナー精霊の『アルベルト』は、連合軍制服「青の旅団」を威風堂々と着こなしていた。軍服姿でいることが多いためか、連合軍の制服もよく似合う。爽やかな青色と洗練されたデザインで、軍の制服といっても武骨な威圧感などはなく上品な印象だ。
 バレンタイン地方とショコランドの窮地を救ったウィンクルムの輝とアルベルトに、会場に集まった人々から温かな敬意の視線が向けられていた。

「こんなにたくさんあると、どれから食べたらいいのか迷っちゃうわね」
 と歓声を上げたところで、アルベルトと視線が合い、輝はハッとする。
 スイーツに喜ぶ輝を見ていると、アルベルトは色んな意味で楽しかった。実に嬉しそうだと言わんばかりに、からかいを含んだ表情で彼は笑っている。
 アルベルトがもの凄く、楽しそうに笑っているので、輝の顔が熱くなる。こちらもまた、色んな意味で。
 恥ずかしい気持ちと、アルベルトの笑顔が嬉しい思いと。
「今更じゃないか」
 そんな輝の恥じらう姿を見て、アルベルトはまた笑う。

 以前と比べると、輝はずいぶんと素直にはしゃいでいるところを見せるようになった。それなのに、こうしてたまに思い出したように恥ずかしがる。
 そこがなんとも、可愛らしい。
 アルベルトはそう思っていたのだが、あえて言わないでおく。
 もっとも、言葉に出さなくても、表情に気持ちが出ている気もするが。

「……」
 輝はごまかすように会場のお菓子を見回し、どれにしようかと迷うフリをした。
(……って、ほんとに迷っちゃう)
 どのお菓子も可愛くて綺麗で、なんだか食べるのがもったいなく感じた。

 輝が迷っている間に、アルベルトは一時的に別行動。とりあえず和菓子屋へ向かう。すぐに用事を済ませて、輝のところに戻る。
 そしてアルベルトは和菓子店のコーナーから持ってきた、雛人形を模したフルーツ大福を……。
「アル……? んむぅ!?」
 輝の口へと押し込む。
(た、食べさせられた……!?)
 ビックリすると同時に真っ赤になる輝。
「これぐらい普通だろう?」
 今はもう、それぐらい親しいのだから。
 アルベルトは余裕たっぷりの笑み。
(……あ、でも、これ美味しい)
 ちょっと赤面を残しつつ輝は平常心を取り戻し、もぐもぐとお菓子を食べる。果物と和風の味付けが、反発することなく調和していた。

 会場の店を嬉々とした様子で、輝がまわっていく。
 それを見て、満足そうに頷くアルベルト。
(一口食べてしまえば次々行くだろうと思った通り、幸せそうな顔で食べているな)

 投票チケットを手にして、輝は悩んだ。
 桃のタルトは爽やかな甘さ。
 菱餅の色をしたチョコケーキはとろけるような甘さ。
 どちらもとても美味しかったが、一番輝の印象に残っているのは……。
 アルベルトに食べさせられた、雛人形のフルーツ大福の甘さ。
「……もう、アルったら」
 思い出して頬をポッと染めながら、輝は投票チケットを大切に握りしめて、雛人形の大福に一票入れた。

 アルベルトは腕組みをして考え込む。
 今のところ、候補はフルーツ大福かピーチタルトのどちらかだ。甘いものが特に好きでなくても、食べやすそうなところがアルベルトは気に入っている。
 チョコケーキはカカオが特産のショコランドらしいが、味が濃くて甘すぎた。
「アル。悩んでるようね」
 輝が笑顔で話しかける。
 その笑顔が、決め手になった。
 アルベルトは、雛人形をかたどった大福に投票する。理由は、輝のイメージに合っているから。

●感化
 『シルキア・スー』は甘味が大好きだ。辛いものはあまり好きではなく、苦いものは苦手。
 会場にずらりと並んだ豪華なスイーツにキラキラと瞳を輝かせて良い笑顔。
「みんな食べてもいいなんて天国!」
「甘味が好物だったな」
 シルキアの幸せそうな表情に、『クラウス』の顔にも自然と穏やかな笑みが浮かぶ。
 ちょっと冗談めかして、ライフビショップのクラウスはこんなことを言った。
「腹を崩しても回復してやれるが、程々にな」
「あはは。はーい!」
 明るく笑って、シルキアが頷いた。

「チョコは食べておかねば!」
 やはりショコランドといえばチョコ。シルキアとクラウスは、チョコの店へとむかった。
「三色スポンジかわいい!」
 濃厚なチョコの甘味を堪能するシルキア。
「あ、そうだ。はい! クラウスも甘いもの食べるよね?」
 友達のように打ち解けた調子で、一口分のチョコケーキをシェアする。
 クラウスとは、恋人ではなくベストパートナーであればいい。今のところ、シルキアはそう思っている。
 だからだろうか。恥じらいや緊張で戸惑うことなく、かえって彼と自然に接することができていた。

 洋菓子店のピーチタルトを見て、シルキアのテンションが上がる。
「色合いがファンシー!」
 桜の花弁に見立てたピーチコンポート。優しい甘さと見た目の工夫から、来場者からけっこう好評のスイーツだ。
「はぁぁ、優しい味わい」
 見た目だけでなく、味もなかなかのもの。
 もぐもぐと口を押さえるが、それでも抑えきれないお口の幸せ!
「おいひくて、どうしよう幸せすぎる、完成度!」
 クラウスは静かにタルトを味わっていたが、シルキアの幸福ぶりについ視線が吸いつけられてしまう。
 見ているだけで、クラウスの心もほっこりと幸せな気持ちになった。
「それ程までに好物だったか……いや、この菓子の完成度の高さゆえともいえるな」
 ぱく、とクラウスが桃のタルトを口にする。凛とした佇まいで硬派な印象の彼だが、特に甘味が苦手ということはなく、普通に食べられる。

 苦手な味のないクラウスだが、特に和食が好きだ。
 和菓子の店には期待が高まる。
「人形に見立ててるのね、かわいい」
「和菓子ならではの意匠だな」
 男雛と女雛を模した一口サイズの大福をシルキアは色んな角度から観察する。
 じっくり丹念に和菓子を観察するシルキアを、クラウスが微笑ましい気持ちで観察中。
 クラウスが和食好きということから、シルキアも和菓子を特別なものに感じた。テンションを落ち着ける。
 大福は二種類あった。シルキアはお雛様、クラウスはお内裏様を食べることにした。
「お内裏様一口いい?」
「少々待ってくれ。切り分ける」
 大福に添えられていた黒文字を使い、小さく切り分けてひょいとシルキアへ差し出す。この行動に他意はない。
 シルキアも動じることなく、差し出された大福をいたってナチュラルに食べる。
「白餡……上品で安心する甘さ」
 クラウスにも、生クリームとイチゴの大福をわけたくなった。
「お返し」
 シルキアはわずかに照れつつ、お返しを。
 照れる素振りすら見せず、クラウスは自然体でお返しをいただく。
「洋のクリームとの相乗、面白い」
 あーんと食べさせ合うことをごく普通の行為と認識しているので、特別なトキメキはない。しかし互いにフォローし合う関係を感じて、それがクラウスには嬉しかった。

 会場の一角で、お茶を飲んでまったりタイム。
「甲乙つけがたい! でも和の奥深さは探求心くすぐられるかも、誰かさんに感化されたかな」
 にっこりと笑うシルキア。
「感化……か」
 クラウスは目を閉じて静かに笑む。
 シルキアに自分が影響を与えた。そう思うと、悪い気はしない。
 二人共、雛人形の果物大福に票を投じた。

●三月三日
 『夢路 希望』がこの催しに参加した理由はスイーツへの興味だけでなく、パートナー精霊『スノー・ラビット』の誕生日祝いのアイディアを得られないかと思ったからだ。
 スノーの誕生日は三月三日。桃の節句と同じ日だ。
 希望は手袋「ロイヤル・レット」、スノーは手袋「ロイヤル・チェック」をはめていた。希望とスノーがショコランドで功績を残したウィンクルムであることが一目でわかる。
 会場ですれ違う小人や妖精からは、温かな眼差しとたくさんの感謝の言葉が向けられた。
 継承に関わるダンジョン探索ではアーサー王子に協力したが、城の奪還とボッカ戦ではジャック王子隊として活動していたことを希望は振り返る。
 ウィンクルムファンの妖精の子供に手を振った後、二人ははたと考え込む。会場のスイーツのことでだ。
「どこのも美味しそうで迷っちゃうね」
 スノーの言葉に、希望も静かに首肯する。
(でも全部食べて回るのはカロリーが……)
 甘いものは好きだが、カロリーは怖い……。
「ノゾミさん、気になるお店あった?」
「スノーくんは気になるお店ありました?」
「僕? ……実は」
 スノーがチラッと視線を向けたのは、一番盛況な店だった。
「ふふ……じゃあ、そこに行ってみましょう」
 賑わっている店をまわり、スイーツは席でゆっくり食べることにした。

 和菓子店の大福を見て、微笑んで顔を見合わせる二人。
「小さくて可愛いです」
「本当だ、可愛いね」
「こっちがお雛様で、こっちがお内裏様でしょうか」
 雛人形のデザインの大福は男雛と女雛の二種類あった。
「……」
 希望と大福を交互に見つめ、スノーは何やら考え込んでいる。
(一口サイズのお雛様。ノゾミさんにあーんって食べさせたい……けど……)
 奥手な関係の二人。人目のある場所でそんなことをしたら、希望を困らせてしまわないかとスノーは悩む。
 逡巡の末、スノーは思い切って行動に移すことにした。これまでに希望と築いてきた絆がスノーに勇気を与えたようだ。
「ノゾミさん。はい、あーん」
 さっきまでの葛藤を少しも感じさせない笑顔で、お雛様の大福をつまんで希望の口元へ。
 大福を差し出された希望は、少し恥ずかしがりながらも、口を開いてくれた。もぐもぐと、イチゴと生クリームの大福を味わう。
「あの、じゃあ、私も……あーん……」
 スノーは待ってましたとばかりに笑顔で口を開け、希望の手からお内裏様をぱくりといただく。白餡とマスカットの組み合わせは初めてだが、美味しく感じられた。

 お次は洋菓子店のタルト。
「綺麗な飾り付け……勉強になります」
 桜の花弁の盛り付けに目を引かれた。
「春らしくて好きだな」
「崩してしまうのが少し勿体ないです」
 名残惜しみつつ、フォークでタルトを切り分ける。
 口に含めば、桃とほんのり蜜柑の香り。優しい甘味にホッと和む。

 菱餅の色をしたチョコケーキ。
「カラフルでいいね」
「色で味が違うんですね」
 ストロベリー、ホワイト、抹茶。三種類のフレーバーが重なっている。
「それぞれチョコの味がしっかりとしていて……」
「三つの味が楽しめるのも贅沢気分」

 好きな人と好きなものを食べられる幸せに、スノーはしみじみと笑顔になる。
 彼の表情に、希望はつい見惚れた。
(私もスノーくんを笑顔にできるものを作れたらいいな)

 幸せな空気に包まれた二人に、妖精の記者がインタビューを求める。
 礼法や会話術の技能を持つスノーが、敬語で応対する。
「洋菓子店に投票しました。春らしさと優しい甘味、果物がポイントです」
 希望も、スノーの振る舞いにつられてインタビューに応じていた。
「私は、和菓子の方に……。雛祭りらしさと和と洋の調和に感動しました」
 最後に、スノーが笑顔でこう締めくくる。
「どれもファンタスティックな味わいでした」

●甘いのは
 どんなスイーツがあるのかと『エミリオ・シュトルツ』は楽しみにしていた。クールな印象だけれど、実は大の甘いもの好きだ。
 コンクール会場では『ミサ・フルール』が、はにゃーんと喜びに浸っていた。
「素敵なスイーツがたくさん! 幸せだよ~」
「はぐれないように手を繋ごうか」
 来場者の多さを見て、エミリオがミサに手を差し伸べる。
 はぐれないように。それは単なる口実にすぎなくて、本当はミサと手を繋いでいたいから。それがエミリオの本音だった。
「うん」
 ミサははにかみながら、ぎゅっとエミリオの手を握る。
 そこで予期せぬ小さなアクシデントが発生。よそ見をしていた他の来場者と、ぶつかりそうになってしまった。
 ぐい、とミサの体がエミリオの方へ力強く、でも優しく引き寄せられる。人にぶつからないように、抱き寄せて守ってくれたようだ。
「ありがと……」
 エミリオは気さくに微笑み、イタズラっぽくつぶやく。
「ミサは良い香りがするね」
 お互いの香りがわかるほどの至近距離だった。

 そのままミサをエスコートして、エミリオは会場をまわる。
「わー! チョコケーキにフルーツタルトに和菓子まで! スイーツがいっぱいで嬉しくなっちゃうね」
 大好きなスイーツを前にはしゃぐミサ。
 エミリオの心に愛おしさが込み上げてくる。ミサの肩に腕を回し、耳元で甘く切なくささやく。
「あまり可愛い顔みせないで、お前を食べたくなる……ふふ、冗談だよ」
「エ、エミリオ! からかわないでよ」
 そう反論するけれど、ミサも笑顔だ。仲の良い恋人らしいやりとりをかわす。

 できるだけたくさんの種類を食べられるようにと、ミサはスイーツをエミリオと半分にわけることにしていた。
「うん、美味しい」
「ねー!」
 仲良くスイーツを食べる二人。
 ふと、ミサはエミリオの口元にクリームがちょっぴりついていることに気づいた。
「エミリオ」
 そう呼び止めて、ほぼ無意識に彼の口元のクリームを指ですくう。そのまま可愛らしく指をぺろりと舐めていた。
「あ……ミサ」
「……え? あ、あれ!? 私、今……」
 エミリオが赤面しているのを見て、ミサも先ほどの自分の行為の大胆さを意識する。
「ミサもなかなか積極的だね」
「もう! ドキドキしちゃうから、そういうこと言わないで!」
「ふふ……ミサは可愛いね」
 こんな風に人前で大胆なことをしても、二人の間の空気がぎこちなくなることはない。ミサとエミリオは気さくな関係にある親密なカップルで、お互いを最愛の人だと認識している。

 二人共、雛人形の果物大福に票を入れた。
 ミサとエミリオはその魅力的な雰囲気と仲の良さから、会場内で良い意味で目立っていた。妖精の記者が美男美女の二人のコメントをもらいにやってくる。
 二人は快くインタビューに応じた。投票したフルーツ大福のコメントをする。
「まず一口サイズなのが女性的に嬉しいなって」
「食べやすい大きさだね、いくらでも食べられそうだ」
 ミサの言葉に、エミリオが頷く。
「雛人形に見立ててあるのが良いと思う、これなら小さな子供にも桃の節句を連想しやすい」
「うんうん、ちょこんとした感じがとても可愛いよね! もちもちした食感に、甘酸っぱい果実と生クリームがすごくマッチしてて……どうしよう、また食べたくなっちゃった」
 エミリオはそんなミサに優しい視線を向ける。
「見た目がとても可愛らしいから女性に人気が出ると思うし、恋人同士で買って2人で分けて食べてもいいんじゃないかな」
「エミリオ……ふふ、そうだね」
 視線が合って、二人で微笑み合う。
 パティシエになる勉強をしているミサと、甘いものが好きなエミリオ。二人のコメントは、店側にとっても参考になるような意見だった。

●投票結果発表
 桃の節句のスイーツコンクール。
 はたして一番人気のスイーツは?

 一位の座を獲得したのは、和菓子の老舗。雛人形の果物大福を作った店だ。雛祭りのお菓子であることがパッと見てわかりやすいことや、和菓子という個性が勝因のようだ。

 二位は桃のコンポートタルトを作った洋菓子店。盛り付けの春らしさや、甘さが控えめで食べやすいことが評価されていた。

 それぞれの思い出を胸に、ウィンクルム達はスイーツコンテストの会場を後にした。



依頼結果:大成功
MVP
名前:ミサ・フルール
呼び名:ミサ
  名前:エミリオ・シュトルツ
呼び名:エミリオ

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 山内ヤト
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 普通
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 02月27日
出発日 03月03日 00:00
予定納品日 03月13日

参加者

会議室

  • [6]ミサ・フルール

    2016/03/02-21:15 

  • [5]ミサ・フルール

    2016/03/02-21:15 

    ミサ:
    ふふー♪ 私この日をまだかまだかと楽しみにしてたんだー♪
    あ、挨拶遅れました、ミサ・フルールです、パートナーのエミリオと一緒に参加します(ぺこり)
    こんなにたくさんの素敵なスイーツが食べ放題だなんて、ここは天国なのかな、かなっ!?

    エミリオ:
    …ミサ、はしゃぎすぎ(苦笑)

    ミサ:
    だって幸せすぎるんだもの!(目キラキラ)
    皆がどのお菓子に投票するかとても楽しみにしてるねっ

  • [4]夢路 希望

    2016/03/01-21:58 

  • [3]ひろの

    2016/03/01-21:24 

    ひろの、です。
    よろしく、お願いします。

    人がいっぱい。
    お菓子も、全部すごい……。

  • [2]シルキア・スー

    2016/03/01-09:48 

    よろしくおねがいします

    インタビューにはやはり「ファンタスティック!」と
    答えるべきかな…(考えている
    (あ、このネタ知らない方もいそうだな

  • [1]月野 輝

    2016/03/01-00:23 


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