【糖華】あの人への贈り物(山内ヤト マスター) 【難易度:普通】

プロローグ

 あなたと精霊は、バレンタイン城下町に遊びにきていた。
 不思議とお菓子のメルヘン異空間ショコランドとは違い、バレンタイン地方はタブロスと同じくミットランドにある地域だ。

 城下町からは立派なバレンタイン城がよく見える。でも今回は特にお城の内部に用事はなくて、城下町でのショッピングが目的だ。
 バレンタインデーのシーズンを迎えて、城下町ではチョコレートを取り扱った店が賑わいを見せていた。

 高級チョコレート専門店では、ショコラティエが腕をふるった絶品チョコを買うことができる。見た目も工夫がこらされている。高級感のある包装と宝石のように収められたチョコレートは、きっと特別な贈り物になるだろう。

 もう少し気軽なチョコも売られている。
 高級店のものほど豪華ではないが、あまり大げさにならずにさらりと渡せそうなところが特徴だ。

 チョコにあふれたバレンタイン城下町ではちょっと異質なコーヒーのお店もある。コーヒー豆の他に、コーヒー味のシフォンケーキやマフィンといったお菓子も売られている。
 甘いものが苦手な相手への贈り物を探すには、重宝するのではないだろうか。

 城下町で買い物をするのは、あなた一人でも、精霊と一緒でも、どちらでも構わない。

 プレゼントを渡す場所は、バレンタイン城下町の公園。単独で買い物をした場合、ここが精霊との待ち合わせ場所にもなる。

 好みでメッセージカードや一輪の花を添えて、精霊にプレゼントを渡そう。

解説

・必須費用
交通費:1組200jr
高級チョコ:600jr(どれか一つを選択)
お気軽チョコ:100jr(どれか一つを選択)
コーヒー菓子:200jr(どれか一つを選択)
コーヒー豆:100jr(どれか一つを選択)

・プラン次第のオプション費用
メッセージカード:50jr
花一輪:50jr

調理場所が確保できないため、今回のエピソードでは手作りチョコは渡せません。

生チョコ、ウィスキーボンボン、ホワイトチョコなど、プレゼントの内容をプランで指定することも可能です。



・デートコーデの小ネタ
連合軍制服「青の旅団」
金時計「グローリア」
手袋「ロイヤル・レット」
手袋「ロイヤル・チェック」
エンシェントクラウン
など、バレンタイン地方での功績を示すアイテムをPCが装備していると、NPCから敬意を払われます。
安く買い物できたり……といった直接的な利益は特にありません。

ゲームマスターより

山内ヤトです。

バレンタインシーズンのチョコレート売り場は大盛況ですね。
甘いものが苦手な精霊さんは、コーヒーをどうぞ。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)

  ディエゴさんと一緒にバレンタインのチョコレートを買いにきました
彼の好みに合わせて、甘味の少ないもので
コーヒー味で、ハート形が良いですね

ディエゴさんは気にしなくていいんですよ
このイベントは女性から大切な男性に贈るものですから
私の好みは考えなくていいんです

ディエゴさんが私のコーヒーチョコと、彼が買ってきたホワイトチョコレートを
二つに割って、右がコーヒーチョコで左がホワイトチョコのハートをくれました
彼の言いたいこと。気持ちはよくわかりました。
ありがとうございます…ハートのチョコ、食べましょうね。
二人一緒で。

コーヒー菓子:(ハート形コーヒーチョコ)
花:勿忘草


シルキア・スー(クラウス)
  購入したのはビターのお気軽チョコ
重すぎず軽すぎず渡しやすそうなものを考えて選択
一口サイズ4個入りの内1つはハート型
メッセージカード添え
『クラウスへ
いつも側にいてくれてありがとう。感謝をこめて!
シルキア』

真面目には渡しづらいから狼耳ヘアバンドつけイベント感覚で渡そう
テイルスになったみたい
彼発見
勢い付けて渡すのよ、私
「これ!バ…バレンタインの、あげる」
メッセージカードに気付いた恥ずかしい
「買物し忘れ思い出した!5分で戻るから
その場から逃げ公園の木か何かの物陰に隠れる
読んでるの確認
心臓ばくばく
(あ、チョコ食べてくれた嬉しい
彼がこっち見たの気付き顔引込める

側に来た
彼の言葉に、気持ちが通じた喜び


桜倉 歌菜(月成 羽純)
  羽純くんと一緒に買い物
羽純くんに贈るチョコを彼と一緒に買いに行くって…少し恥ずかしいけど
羽純くんの好みのものを確実に選べるし
何より一緒に買い物出来るのが嬉しいなって

チョコ好きの彼の為に高級チョコレート専門店へ
うわあ…目移りするね
一粒一粒が華やかで、見てるだけで楽しい♪
最高級のミルクと生クリームを使った、濃厚な甘さのミルクチョコレートを選びます
形は愛を込めたハート型
メッセージカードと花(薔薇)一輪を付けて

店員さんにお願いして、羽純くんに隠れてカードを書けたら
『you are very special to me.』(貴方は私にとって特別な人)

公園で羽純くんにチョコを手渡し
羽純くん、ハッピーバレンタインデー


ニーナ・ルアルディ(カイ・ラドフォード)
  一人でコーヒー菓子(ロールケーキ)購入

この時期のお店は見て回るだけでも楽しいですよね
自分用に買いたいところですけど…今日は我慢です。
カイ君、クリスマスに少し様子がおかしかったから元気かどうか心配なんですよね…

ハッピーバレンタインですっ!
ちゃんと甘さ控えめの選んできたんですよっ!
えーっと…あれ、たぶん聞いたことあるんじゃ…?

せっかくだし色々お話しましょう!
美味しい喫茶店が出来たこと?
バイト先で褒められたこと?
失くし物が見つかったこと?
…あ、すみません私ばっかり…

ただ頷いて、相槌を打ってくれてるだけだけど
こうしてカイ君が静かに話を聞いてくれてることが
受け入れて貰えたような気がして何だか嬉しいです。


かのん(朽葉)
  お気軽チョコ+花(かすみ草(花言葉:感謝))

1人で遠出するわけにもいかないのでと理由をつけて、朽葉に付き合って貰う

子供の頃、会う度にお菓子を渡してくれていたのは、おじ様が甘党だからでは無く私を慰めようとしてでしたけど…
甘い物、苦手というわけではなさそうですし、感謝の気持ちとして渡しても大丈夫ですよね…
少し離れた所で暇そうな様子で待つ朽葉の姿をこそっり見つつビターチョコを選ぶ

公園にて朽葉にチョコ差し出す
今日はありがとうございました
バレンタインには少し早いですけれど、日頃のお礼も込めましたので

そんなあからさまに言わなくても
苦笑しながら返事
楽しそうな表情から迷惑にはなっていなさそうだと思いほっとする


●かすみ草とビターチョコ
 チョコを買いたいという『かのん』の頼みに付き合う『朽葉』。
「ありがとうございます、朽葉おじ様。私一人で遠出するわけにもいかないので」
 神人はその特性からオーガに狙われやすく、適合する精霊がいる場合は基本的にペアでの行動が推奨されている。
 という神人の安全上の事情もあるが、朽葉は別の理由についても考えていた。
(バレンタインに天藍へ贈る物を買うのなら、奴を連れて行くわけにもいかんのじゃろうな)
 と、一人納得してかのんの買い物に同行した。

「ふーむ……」
 バレンタイン城下町はなかなかに賑わっていたが、朽葉自身が何か買うわけではないので正直に言うと少し暇だった。
「我は少しばかり離れておる」
「そうですか。わかりました」
 他の人の邪魔にならないような場所を探して、朽葉はそこでかのんを見守ることにする。
 買い物客に紛れたかのんの姿を目で追いながら、回想するのは昔のこと。両親とは早くに死別したかのんが健気に頑張り、時に涙する姿を朽葉は覚えていた。
(昔は寂しさからか悲しげな表情を浮かべていたかのんが、楽しそうにチョコを選んでいる様子を見るのは悪くないんじゃが……)
 思案げに山羊髭を撫で下ろす。
(彼女の恋人へのプレゼント選びに付き合わされているというのは、なんとも複雑なものではあるの)

 チョコを見つめながらかのんが考えていたのは、恋人のことではなく恩人の朽葉のことだった。
(子供の頃、会う度にお菓子を渡してくれていたのは、おじ様が甘党だからでは無く私を慰めようとしてでしたけど……。甘い物、苦手というわけではなさそうですし、感謝の気持ちとして渡しても大丈夫ですよね……)
 少し離れた場所で、暇を持て余した様子で待つ朽葉。かのんはこっそりと視線を向ける。
 明るくて大衆的なお菓子売り場で、気軽に贈れるビターチョコを朽葉のために選んだ。かすみ草も添える。「感謝」の花言葉を持つ、控えめな印象が愛らしい花だ。
 バレンタイン城下町の若い女性店員が、ハッとかのんの手袋に目を留めた。
 かのんの手袋「ロイヤル・レット」には、手の甲にヘイドリック王子隊として参戦したことを示す文字が縫い込まれている。最も難易度の高い冒険へ、かのんが仲間と共に挑んでいったことの証だ。
「え? それはもしかして!? きゃーっ、凄い! 去年、ヘイドリック王子隊で勇敢に戦ってくれたウィンクルムさんなんですね!」
 驚きと喜びのあまり、くだけた接客になってしまっているが、店員がかのんに感謝しているのは間違いない。
「わぁ、ありがとうございます! いつでもご来店歓迎いたしまーす!」
 ミーハーな女性店員はとてもにこやかに、買い物を終えたかのんを見送った。

 城下町の公園で。
「ここで一休みといったところかの」
 ベンチに腰かけようとした朽葉に、かのんが話しかける。
「今日はありがとうございました」
 振り向いた朽葉は、長い眉毛の下にあるその目を丸くした。
 かのんは朽葉にチョコを差し出していた。感謝の気持ちと、かすみ草も一緒に。
「バレンタインには少し早いですけれど、日頃のお礼も込めましたので」
「これはつまり義理チョコというわけじゃな」
「そんなあからさまに言わなくても」
 苦笑するかのん。
 朽葉は、よもや自分のチョコが渡されるとは思っておらず、ついお礼の言葉の前にそんな軽口が飛び出したのだ。
 本音ではもちろん嬉しい。
 朽葉は柔和な笑みを浮かべて、かのんからの贈り物を受け取る。
「では、有り難く頂いておこうかの」
 その楽しそうな表情から、どうやら朽葉の迷惑にはなっていなさそうだと、ホッとするかのん。
 恋愛要素はなく年齢も大きく離れた二人だが、かのんのプレゼントは朽葉の心をしんみりとした喜びで包んだ。

●コーヒーロールケーキ
(この時期のお店は見て回るだけでも楽しいですよね)
 『ニーナ・ルアルディ』はバレンタイン城下町で品物を見て回る。たくさんのチョコやお菓子に囲まれていると、つい自分用に買いたくなってくるところだが……。
 ニーナはぐっと手を握りしめる。
(……今日は我慢です)
 そして思うのは、精霊『カイ・ラドフォード』のこと。
(カイ君、クリスマスに少し様子がおかしかったから元気かどうか心配なんですよね……)
 チョコだらけの中、コーヒーの香りがニーナに届いた。コーヒーを取り扱っている店だ。
 そこの店で、コーヒー味のロールケーキを購入。
「お買い上げありがとうございます……おや?」
 コーヒーショップのマスターが、ニーナの手元を見つめる。正確には、彼女の手袋を見ている。
 ニーナは手袋「ロイヤル・チェック」をつけていた。手の甲には、ショコランド三王国の紋章が刺繍されている。ニーナがかつてショコランドの危機に立ち向かった時の功績を示すものだ。
 紋章に気づいたマスターは自分の胸に手を当てて、礼儀正しくニーナにお辞儀する。
「今のバレンタイン地方に平和があるのは、あの時オーガと戦ってくれたウィンクルムの皆さんのおかげです」
 ニーナはマスターに温かく見送られ、カイとの待ち合わせ場所の公園へと向かった。

 公園で、カイの姿を見つけたニーナ。
 迷いを振り切るように、ニーナは勢い良く一生懸命にプレゼントを渡す。綺麗にラッピングされたコーヒーロールをカイに差し出す。
「ハッピーバレンタインですっ! ちゃんと甘さ控えめの選んできたんですよっ!」
「……俺に? 相手間違えてない?」
「う……、嬉しくなかったですか?」
 カイの静かな反応に、感情が表に出やすいニーナはちょっと不安な顔になる。
「あ、いや、嬉しくないとかじゃなくて……」
 落ち込みそうなニーナに、カイがフォローの言葉をかける。
「貰えると思ってなかったっていうか、そういったイベントがあるのを忘れてたっていうか……」
 ふとカイはプレゼントを改めて眺める。甘さ控えめのコーヒーロール。チョコではない。
「ところで俺、甘い物苦手って話したことあったっけ?」
「えーっと……あれ、たぶん聞いたことあるんじゃ……?」
 ニーナも不思議そうに首を傾げる。
「……まあいいか、立ち話も何だしその辺にでも座る?」
 ベンチに二人で腰かける。
「せっかくだし色々お話しましょう!」
 カイはニーナとの交流に躊躇したが、思い直す。
(いい加減怖がって、突き放して、逃げてばかりでもいられないよな……)
 そう思ったから、今日の呼び出しにも応じたのだ。
 きちんとコミュニケーションをとろう。そう考えて、ニーナの話に付き合うことにした。

 美味しい喫茶店が出来たこと。
 バイト先のパン屋で褒められたこと。
 失くし物が見つかったこと。

 どれも何気ない話題だったが、ニーナがすごく楽しく毎日を過ごしているのが伝わってきた。
 カイは安心したが、一つだけ不満な点が。
(……頻繁にあいつの名前が出てくるのは気に食わないけど)
「……あ、すみません私ばっかり……」
 自分ばかりがしゃべりすぎたかと思い、ニーナは慌てて口元に手を当てた。
 だが、カイはもっとニーナの話を聞きたいようだ。
「俺は別に構わないよ。ニーナがそうやって笑って話してるの見てるの嫌いじゃないし」
 カイは聞き手に回っていて、あまり自分のことは話さない。
 頷いて相槌をうつ。静かに話に耳を傾ける。
 ただそれだけでも……。
(こうしてカイ君が静かに話を聞いてくれてることが受け入れて貰えたような気がして、何だか嬉しいです)
 ニーナの心が、ほんわかと温かくなる。
「……うん、泣いてるのよりずっといい」
 聞こえるか聞こえないかの小さな声で、カイがポツリとそう言った。

●狼耳と一つのハート
 『クラウス』は、待ち合わせ場所の公園のベンチで本を読んでいた。ライフビショップである彼は、熱心に魔導書の学習に勤しむ。
 パートナー神人である『シルキア・スー』との別行動は、クラウスにとって不本意なものだった。
 が、シルキアも自力で身を守れる力をつけてきた。それに、男性がいつも付き添って行動することにシルキアが息苦しい思いをしているかもしれない。と、考えて今は別行動をしている。
 それでも万が一神聖な彼女の身に何かあったら……という不安がよぎる。クラウスは、読書に集中することで不安な待ち時間を耐えた。

 バレンタイン城下町で買い物中のシルキアは、気軽に渡せそうなチョコが並べられている売り場にいた。
(重すぎず軽すぎず渡しやすそうなものが良いよね)
 クラウスへの贈り物をよく考えて選ぶ。
 吟味した結果、購入したのはビターチョコ。一口サイズのチョコが四個入っており、その中の一つだけハート型をしている。
 プレゼントに添えるメッセージカードに、シルキアは思いを込めながら丁寧に字を書いた。
 これでプレゼントの準備は整ったが、真面目に渡すのはちょっと緊張してしまう。
「そうだ」
 ヴェアヴォルフ。狼耳のついたヘアバンドを装着。シルキアの癖毛の金髪に、黒いふさふさの狼耳は、色のメリハリがきいてよく目立つ。
「テイルスになったみたい」
 動物の耳のヘアバンドをつけたら、緊張もほぐれてウキウキとした気分になってきた。これなら、遊園地やパーティーのようなイベント感覚でプレゼントを渡せそうだ。

 待ち合わせ場所の公園にシルキアが向かうと、ベンチで読書中のクラウスを発見した。
 クラウスの方もシルキアに気づいたようで、読んでいた本から視線を上げ、安堵の表情で迎えてくれる。
 狼のテイルスであるクラウスには、空色をした耳と尻尾が生えている。シルキアが狼耳のヘアバンドをつけていることに、彼は親近感と好印象を抱いたようだ。
(勢い付けて渡すのよ、私)
 イベント気分が消えてしまわない内に、包みをクラウスへ渡す。
「これ! バ……バレンタインの、あげる」
 クラウスは穏やかな笑みで、プレゼントを受け取った。
「ありがとう、開けていいか?」
 ふと、彼の手がとまる。どうやらメッセージカードに気づいたようだ。
 恥ずかしさと照れくささで、シルキアは慌てる。
「買物し忘れ思い出した! 5分で戻るから」
 ぴゅーっとその場から立ち去る……フリをして、公園の木に隠れる。心臓をばくばくさせながら、クラウスをこっそり確認。
「……?」
 慌てた様子で急にいなくなってしまったシルキアのことを怪訝に思いつつ、クラウスはじっくりとメッセージカードを読んでみた。

 クラウスへ
 いつも側にいてくれてありがとう。感謝をこめて!
 シルキア

 メッセージカードには、そうしたためられていた。
 クラウスの心に、シルキアのぬくもりが伝わる。自分のこれまでを受け入れてくれている。クラウスはそう感じた。喜び、自信、感謝が込み上げてくる。
 四個入りのチョコレート。その中でもハート型のチョコが目にとまり、クラウスはそれを口に入れた。
(あ、チョコ食べてくれた嬉しい)
 こっそりクラウスを見つめていたシルキアは、ホッとして微笑んだ。
「……」
 クラウスはいなくなったシルキアの姿を探している。周囲を見渡すと、大きな木の幹から狼の耳がちらちら見え隠れしているのに気づく。ベンチから立ち上がり、そちらへ向かう。
(こっち見た)
 顔を引っ込めるシルキアだが、クラウスはもう近くまできていた。
 同じ木に寄り掛り、クラウスが言う。
「確かに受け取った」
 優しく真っ直ぐなクラウスの言葉。
 チョコとカードに託した気持ちは、ちゃんとクラウスに通じたようだ。

●勿忘草と半分こ
 連合軍制服「青の旅団」をまとった『ディエゴ・ルナ・クィンテロ』。彼がボッカ討伐隊に参戦したウィンクルムであることが一目でわかる。
 『ハロルド』の手袋「ロイヤル・チェック」には、ショコランド三王国の紋章が縫い付けられている。功績を称え、三王子から贈られた感謝の印だ。
 城下町で買い物をする二人の姿は注目を浴びている。
「あの制服と、手袋の紋章は……!」
「ボッカの脅威に立ち向かってくれたウィンクルムの方ですね。本当に、なんとお礼を言えば良いか」
 城下町の住人から、感謝の言葉をかけられる。
 二人にサインをせがもうとする大胆な子供は、さすがに母親がとめていた。せっかくの休暇を邪魔しないようにしつつ、城下町の人々はハロルドとディエゴを歓迎した。

 ディエゴのために、チョコレートを買いにきたハロルド。
「ディエゴさんの好みに合わせて、甘味の少ないもので。コーヒー味で、ハート形が良いですね」
 コーヒーを扱う店にいき、ディエゴの好みに合いそうなものを探す。
(エクレールは俺の為に、俺の好みに合うような菓子を探してくれるようだ)
 だが、ディエゴには少々思うところがあるようだ。
「……俺の好みだけを考えているのが気になるな」
 腑に落ちない様子でつぶやく。
「ディエゴさんは気にしなくていいんですよ。このイベントは女性から大切な男性に贈るものですから。私の好みは考えなくていいんです」
 そうバレンタインイベントを説明するハロルドだが、ディエゴはあまり納得がいかないようだ。
 ハートの形をしたコーヒーチョコの会計をするハロルドのことを見つめながら、ディエゴはこう思っていた。
(こういうものを食べるなら、二人で食べたい)
 コーヒーの店を出た後、ディエゴは城下町を歩きながらハロルドに渡すチョコを探していた。
 城下町には様々なチョコが売られていたが、どれでも良いわけではない。探しているのは、先ほどハロルドが買ったコーヒー味のチョコと同じ形と大きさのホワイトチョコレートだ。
 ディエゴは目当ての品を見つけると、女性陣で賑わうバレンタインのチョコ売り場に迷うことなく近づいていき、買い物を済ませた。

 バレンタイン城下町の公園。
 二人共同じ勿忘草を添えて、これから贈り物を交換しようという時に……。
 ディエゴはおもむろにハートのホワイトチョコをペキッと二つに割った。それから、ハロルドが用意したコーヒーチョコも手に取ると、同じようにペキッと左右半分にする。
 一瞬あっけにとられたハロルドだが、深い絆で結ばれている彼女はすぐにディエゴの行動の真意がわかった。
「俺のチョコレートとエクレールのチョコレート。二つを真ん中で切って、それぞれくっつけるんだ」
 それを二人で一緒に食べようと、ディエゴはそう言っている。一方的にプレゼントをもらうより、彼はこうして分け合う方が性に合っているらしい。
「本来このイベントは女性から男性にではなく、性別は関係なく大事な人への贈り物をするイベントだと思う」
 バレンタインデーの風習について、ディエゴは言及する。愛情や好きな者同士の結婚を尊重した、とある聖人の殉教に関わる行事だ。
「だから受け取って、一緒にチョコを食べてくれ」
「ディエゴさん……」
「それが俺の気持ちだ」
 蜂蜜色の眼差しで見つめられれば、ハロルドの心にディエゴの温かな思いが伝わってきた。ディエゴの深い優しさ、人としての器の深さ、ひたむきな愛情。
「ありがとうございます……ハートのチョコ、食べましょうね。二人一緒で」
 右がコーヒーで左がホワイトチョコになっているハートを受け取るハロルド。片方はほろ苦くて、もう片方は優しい甘さ。
 公園のベンチに並んで座り、二人で仲良く、半分こにしたハートを味わった。

●薔薇と極上ミルクチョコレート
 連合軍制服「青の旅団」をまとい、ポケットには金時計「グローリア」。手袋「ロイヤル・レット」にはジャック王子隊として参加したことが刺繍されている。そして可愛らしく頭に乗ったエンシェントクラウン。『桜倉 歌菜』のこの出で立ちは、バレンタイン城下町の人々の視線を釘付けにし、どこにいっても歓迎の声で迎えられた。
 精霊の『月成 羽純』も、さり気なく手袋「ロイヤル・チェック」をはめている。
 羽純へ贈るチョコを買うために、二人は城下町に来ている。
 バレンタインのプレゼントを渡す本人と同行して買い物をするのは、ちょっと恥ずかしいけれど良いところもある。
(羽純くんの好みのものを確実に選べるし、何より一緒に買い物出来るのが嬉しいな)
(俺の為のチョコか)
 羽純の方も、照れと嬉しさを感じていた。

 歌菜は、羽純がチョコ好きなことを知っている。なので、バレンタイン城下町でも高級なチョコを扱う専門店へと足を運んだ。
 店内には、チョコレートの香りが漂っている。
「チョコの香りが心地良い」
 リラックスした表情で羽純がつぶやく。
 シックな内装。上品なデザインの制服を着た店員。ここで売られているチョコは、まるで宝石のようだった。
「うわあ……目移りするね」
「ああ、目移りするな……」
 歌菜の言葉に、羽純もにこやかに同意する。それは心がワクワクするような、贅沢で素敵な悩みだ。
 ゆったりと、二人で店内を回る。
「生チョコレート、トリュフ、ボンボンショコラ、オランジェット、ガナッシュ……どれも美味そうで」
「一粒一粒が華やかで、見てるだけで楽しい♪」
 和やかに会話しながら、店内の様々なチョコを見る。
 楽しく迷いながら最終的に歌菜が選んだのは、羽純への愛を込めたハート型のミルクチョコレート。詰め合わせになっている。
 専門店のスタッフが丁寧に説明する。
「こちらのチョコは、最高級のミルクと生クリームを使用しております。濃厚な甘さととろける口どけが美味しいと好評です」
「やっぱり俺はシンプルなミルクチョコレートが好きだ。優しい甘さ、食べると幸せな気持ちになれる」
 歌菜が選んでくれたミルクチョコレートの詰め合わせに、羽純の胸が躍る。
 喜んでいる羽純の声に、歌菜の心も温かくなる。
(この間に別の店員さんにお願いして、花とメッセージカードを用意しよう)
 羽純が商品の詳細な説明を聞いている間に、歌菜は別の店員に話しかける。プレゼントに添える薔薇の花を一輪手に入れ、羽純に見つからないようにこっそりとメッセージを書いた。
 これで準備は整った。
 二人は、専門店のスタッフから丁重にもてなされた。
「お買い上げ、ありがとうございます。当店のチョコが、ショコランドを救ったウィンクルムの方に食べてもらえるとは、光栄です」

 バレンタイン城下町の公園で、歌菜は羽純にチョコを手渡した。メッセージカードと薔薇を添えて。
「羽純くん、ハッピーバレンタインデー」
 プレゼントはチョコだけだと思っていた羽純は、薔薇とカードが付いているのに驚く。カードに書かれていたのは……。

 you are very special to me.

 意味は、貴方は私にとって特別な人。
「ありがとう」
 羽純は歌菜を抱き寄せ、ふわりと優しく抱擁する。
「俺にとっても、歌菜は特別な……たった一人の愛する女性だ」
 真摯な眼差しでそう告げる。
 それから、羽純の方からこう提案してきた。
「このチョコ、よかったら一緒に食べないか? チョコに合うノンアルコールのカクテルを用意するよ」
 羽純の優しくてロマンチックな誘いに、歌菜は照れ混じりの笑顔を見せた。
 最高級のミルクチョコを食べながら二人で過ごす時間は、きっと幸せなものになるだろう。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 山内ヤト
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 普通
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 01月29日
出発日 02月03日 00:00
予定納品日 02月13日

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