温泉プールを楽しみ尽くせ!(木乃 マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

ウィンクルム感謝祭~湯けむり恋気分!~

テルラ温泉郷がミラクル・トラベル・カンパニーとの協賛で開催するビッグイベントだ。
このお祭りに乗じて盛り上がろうとする一件の銭湯があった。
「銭湯って言うなー!温泉プールになったんだからっ!」

ミラクル・トラベル・カンパニーの職員の元に一人の女性がやってきた。
「この私が、ウィンクルでも混浴が楽しめるような企画持ってきたんだからね!?」
彼女はアンジュ、若くして女社長を務めている。
テルラ温泉郷ではまだまだひよっこ扱いだが、かわり種の企画を用意しては
当たり外れが多いと同業者から言われている。
「日々の疲れを癒しつつ、エンジョイできる温泉……それが温泉プールよっ!!
 誰もが一度はやりたくなる、泳げるお風呂がコンセプトなのよ?」

彼女の会社で経営する『SPA☆Relaxia(スパ・リラクシア)』が
今回のビッグイベントに参加する。
このスパのコンセプトは彼女の言う通り「泳げるお風呂」である。

万が一飲んでしまっても、人体に影響がない素材を選びつつ
泳いでもよし、浸かってもよしの温泉が数種類あり
プール感覚で満喫できるエンターテイメント系温泉なのだ。
(飲むのを推奨している訳ではない)

「今回はどどーんとローズ、シーソルト、フルーツ、ミント、麹の5種類を用意するわ。
 ウィンクルムって若い子も多いんでしょ?」
ワインとか米酒とか飲んじゃったら大変だものね、とアンジュは続ける。
アンジュなりに配慮するところは配慮しているようだ。

「そ・れ・に、水着で一緒に入れば恥ずかしくないでしょ?
 流石に水着は置いてないから、しっかり用意させてちょうだいね!
 なかったら上下ツナギのシマシマ水着着せちゃうから」
(さ、流石にそれはどうだろうか?)と職員は引き気味だが、
ウィンクルム達が忘れないようにしっかり告知しようと決意した。

「温度はプールにしてはあったかめで、お風呂にしてはぬるめだから
 熱々なのが苦手な子にオススメかな?
 ちゃんと美肌とか冷え性に効果が出やすいとか考えてるからね」
ふふんと自慢げにアンジュは鼻を鳴らす。
「プールは基本的に50mはあるの、遊具を持ち込んできゃっきゃうふふしても問題ないし、
それぞれのルームで特徴的な内装にしてあるから気に入った所を使って欲しいわ」


ミラクル・トラベル・カンパニーと協同開催するこの企画。
当たり企画の予感を感じながら、職員はA.R.O.A.本部に公開する用意を進めた。

解説

※『ウィンクルム感謝祭~湯けむり恋気分!~』の幕間エピソードです。
複数の場所で楽しむプランだと描写が減ってしまいます
楽しんでいるシーンを一ヶ所に絞ってプランを練って下さい
(行動の内容が一番大事です)

・必要なもの
水着(忘れてしまうとシマシマの上下繋がった袖付きのダサい水着を着せられます)

タオルやアメニティの類は備品として置いてあり、無料で貸出してくれます。
体を洗う場合は更衣室のシャワールームのみしか使えません。
『温泉を使ったプール』のイメージでご利用下さい。

以下の場所を利用出来ます。
▼ローズプール
薔薇の花が香る、薔薇を用いたプール
湯色は薔薇色で薔薇園がイメージされた内装
効能は美白、リラックス効果など
▼シーソルトバス
海のイメージで少し波立っている、海塩を用いたプール
湯色はターコイズブルーで、常夏の砂浜をイメージした内装
効能は肩こり、冷え性予防など
▼フルーツバス
オレンジやレモン、グレープフルーツの柑橘系のプール
湯色はオレンジ色で、密林をイメージした内装
効能はデトックス、ストレス緩和など
▼ミントバス
ミントの爽やかな香りが漂う、ハーブを使ったプール
湯色は若草色で、森林をイメージした内装
効能は疲労回復、精神安定など
▼麹風呂
トロッとした肌触りの、麹を用いたプール
湯色は不透明な乳白色で、唯一ここだけ屋外が見られる内装
効能は保湿、肌荒れ予防など

▽共通
プールサイドには休憩用のベンチがあり、お湯から上がって休むことも可能。
さらにプールサイドにはシャワーと自動販売機もある。
更衣室ももちろん完備、こちらにもシャワーと自動販売機があり
シャワー室にシャンプーやボディーソープなどの石鹸類が置かれている。

・自動販売機の内容
炭酸ジュース、アイスティー、ミネラルウォーター、ミックス・オレ
(アンジュの計らいで神人と精霊で各ワンコイン無料で用意されています、
 どちらかが2本目を飲むと20Jr必要です)

ゲームマスターより

木乃です、いよいよビッグイベントがやってきました。
今回はみんなの憧れ、泳げるお風呂でのイベントです!

プール施設なのでプール遊具は持ち込んでも構いません。

台詞やキャラ口調のプランですと
よりキャラクターの個性が反映しやすいかと思われます。
文字数が余ったり、余裕があるときはぜひ盛り込んでみてください。

それでは、皆様のご参加をお待ちしております。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

田口 伊津美(ナハト)

  【心情】
ナハトが行きたい行きたい煩いし、タダならいいかな…ということで結寿音に変装して参加
日頃の疲れを癒やしたーい
…これからカラオケ待ってるし

【行動】
黒基調のサロペット水着
フルーツバスでストレスを解消かな…
そして次のカラオケ12時間のための英気を養うしかない

だだっ広いしせっかくだからナハトとはらわって話すか
なんで記憶喪失なのか目星もないの?
取り戻したいと思うことはあるのかな

鈍くさくてバカで役に立たない精霊だけど、一応相棒なんだもんね
あんだけ色々言われてもめげずに付いてくるし、ナハトって本当に変だよ…い、いい意味で

これからもこき使うけどさ、なんだったら記憶探しぐらいは手伝ってあげなくもないよ?



アガサ(ヘルゲ)
  前に付き合って貰ったから行くのは構わないけど
銭湯巡りとか案外ジジ臭いわねあなた…でもそうね、たまには悪くないわね
水着とか最後に着たのいつかしら

いろんなプールがあるのね、薔薇も捨て難いけど
色が綺麗だからシーソルトバスにしようかしら 青が好きだし
私こういう所に殆ど来ないから、どう楽しめばいいのかしら
温泉なら一人でゆったり入るけどここは温泉プールでしょう?
プールに来てはしゃぐような歳でもないし、ねぇ
見てるだけならいいけどこういう所はどうにも向いてないわね
でも今日は付き合うって決めたから、ヘルがしたい事に
なるべく付き合うわよ。

水着:セパレートの青い水着 下はデニム地の短パン




クロス(オルクス)
  (アドリブOK)

温泉プール楽しみだな(微笑
この日の為に水着も用意したし…
オルク、なんて言うかな…

真新しい水着に着替えた事だし、早速入るとするか
(オルクスに水着姿が可愛い似合ってると言われ頬が赤く染まる)
何言ってんだ!隠れてるが背中に傷あるのに…
良いからミントバスに行くぞ!
暫くしたら麹風呂だからな!
(自然に手を繋ぐ)

(ミントバス、麹風呂に入り会話を楽しみながら
オルクの体中の傷の訳を聞き自分も背中の傷を糧に精進しよう決意する
オルクに他の女性からの熱視線があり少し嫉妬
逆上せる前にあがり少しベンチで休憩
オルクが買って来たアイスティーを飲みながら)

水着:朱金のスリットが入ったワンピース水着で髪をまとめる




エルザ(ジョシュア)
  泳ぐのは得意ではないですがぼーっと浮かぶのは好きです
お互い楽しめるといいですね

水着:青のAラインワンピース
少し可愛いのを選びすぎたでしょうか
似合ってるかな…

…サイズはぴったりですが
地面がよく見える体系なのは元からです
自主性に任せたら碌な事言わなそうなので似合っているか否かの2択でお願いします

行先:ミントバス
目にも優しい色ですし癒されますね
私は浮き輪持ってきたので適当に浮かんでます
ジョシュアさんもご自由に
え、引っ張ってくれるんですか?

中々いいですねこれ
楽です
スピードはそのままでいいです
速さは求めていませんので、本当に

…落ちた訳ではないので気にしないで下さい
あと恥ずかしいのでこっち見ないで下さい



Elly Schwarz(Curt)
  【心情】
温泉と聞いて参加したんですが、プール感覚の温泉ですか……ふむ。
温泉は素敵ですがプールにはカナヅチなので近づきません。(震え声)
純粋に温泉を楽しみたいです。

【行動】
髪は1つに纏めておいた方が良さそうですね。
いろんなお風呂を堪能したいですが
クルトさんの意見も聞きつつ決めたいです。
え?ローズプールはプールなので近づきませんよ、クルトさん?
僕の手を引っ張らないで下さいね?僕はミントバスに行くんです!

水着はタンキニを着用。
ビキニ?絶対あり得ません!
僕にその類いを求めないで下さいね。

【所持品】
水着:青系統のタンキニ
浮き輪

【自動販売機】
ミネラルウォーター×2、クルトさんの分も含めて購入。

アドリブ可。



◆おいでませ、SPA☆Rilaxia
「よく来たわね!今日はじゃんじゃん遊んで行きなさいっ」
女社長のアンジュはやってきた大勢のウィンクルム達に目を輝かせて笑みを浮かべる。
多くの人に楽しんでもらいたい、彼女の純粋な気持ちが現れているのだろう。
ウィンクルム達は、それぞれ別れて更衣室へと向かった。

◆浮き輪は添えるだけ
エルザとジョシュアはミントバスに来ていた。
ミントバスは森の中をイメージしているのか、新緑の葉の装飾が天井に広がりシャワーの周りや壁際には
ウサギやリスの陶器の置き物が置かれていた、タイルも白と茶色の目に優しいオーガニックカラーだ。
プールの中心にはプールに脚を浸け水瓶を背負った女神が鎮座しており、水瓶から若草色の湯が流れ出ていた。

(少し可愛い過ぎるデザインでしょうか)
水着に青いAラインのワンピースタイプを選んだエルザは自分の水着姿を見下ろして眉を寄せる。
サイズはぴったりなのだが、凹凸が控えめというかフラットボディが目立つのが少し気になるお年頃。
裾が軽く広がった形が可愛らしく気に入ったので持ってきたものの、いささか不安である。

「どうした?」
紺色のサーフパンツを身につけたジョシュアが怪訝そうにエルザの様子を見つめる。
誘った時に『水着なんてなんでもいいだろう』と言うジョシュアに、
流石に並んで歩くのにシマシマの囚人服のような水着は避けてもらうべく用意してもらった。
プールに落としては大変なので、今日はメガネを外している。

「ジョシュアさん、あの……この水着どう思います?」
エルザは恥ずかしながらも、上目遣いでじーっとジョシュアを見つめる。
ジョシュアも水着姿のエルザを見つめ返して考え込むように顎に手を添える。
「ふむ、綺麗な色だな」
エルザが聞きたかったのは似合っているかどうかなのだが、ジョシュアも嫌いではない様子だ。
「もう、先にプールに入りますね」
そうじゃないのに、と内心拗ねるエルザは用意した浮き輪を肩にかけてミントバスへと向かう。
ジョシュアもエルザの不貞腐れた様子に首を傾げながら後ろをついていった。

***
「温水プールのような感じなのですね」
「そこまで熱くないし長湯してしまいそうだな」
浮き輪でぷかぷかと浮かんでいるエルザの横でジョシュアも気持ちよさそうに水面から顔を上げて泳ぐ。
水深はおよそ1.5mくらいだろうか、足を滑らせない限りは溺れたりしないだろう。

「エルザは泳がないのか?」
「泳ぐのは得意ではないので、こうやってぽーっと浮かぶだけで充分ですよ」
若草色の湯にぷかぷかと浮かんでのんびりするエルザ、ふにゃっと浮き輪に寄りかかる姿にジョシュアはふと思いつく。
「せっかくだからもっと広く使おう、泳げるお風呂だしな」
そう言ってジョシュアはエルザの浮き輪の周りについていたロープを引っ張る。

「え、引っ張ってくれるのですか?」
「これならエルザも労力を使わないだろう?存分に浮かんでいると良い」
ジョシュアは他の利用者にぶつからないように、すいっすいっと器用にエルザの浮き輪を操作する。
右へ左へ、揺れ動く浮き輪はさながら緩やかな小川を流れる小舟のようにも見える。
「……なかなかいいですね、これ」
ジョシュアに引かれるまま浮かんでいるエルザは浮力で起きる独特の浮遊感とちゃぷちゃぷ動く浮き輪を楽しんでいた。
思わぬ遊び方に笑みがこぼれる。

「楽しそうだな、なんならもう少しスピードを出すが」
「いえ、このままでお願いします……はぁ」
ジョシュアはエルザの様子にもう少し速度を出そうかと考えたが、エルザはすいすいと緩やかに流れる動きの方が好みのようだ。
いつもと違って楽しそうな様子のエルザに、ジョシュアも満足げな笑みを浮かべた。

◆不器用なりの緩和法
アガサとヘルゲはシーソルトバスへやってきた。
以前、アガサが花見へ一緒に行ってもらったので今日はヘルゲの好きな所へ行こうと決めていたのだ。
それが『温泉』だったとは流石に予想外だったらしい。

「意外とジジ臭いわね、貴方」
「いいじゃねぇーか。ていうか、風呂ぐらいメガネとったらどうだ」
「取ると前が見えないのよ……まあ、そうね、たまには悪くないわね」
アガサはセパレートの水着にデニムの短パンを穿いていた、水着のブラはキャミソール状で少し裾がある。
比較的長身なためデニムの短パンから伸びる素脚も脚線美が栄える。
ヘルゲはシンプルな黒いサーフパンツを着てきた、細く引き締まった体にはそれでも充分見栄えする。
片手になにか持っているようだがアガサの位置からでは見えない。

「こっちも色が綺麗だし貴方の雰囲気も考えると正解だったわ」
シーソルトバスは天井に鮮やかな青空の絵が描かれており、
シャワー周辺や壁際にも南国の花々や鮮やかな彩りで着色された鳥の置き物が置かれていた。
プールの中心には人魚がピンクイルカに座っており、イルカの口からターコイズブルーの湯が流れていた。

「プールに来て、はしゃぐような歳じゃ……ね」
「たまにはいいだろ、休日はひきこもり気味なんだし。肩コリにもいいって書いてあるぞ」
周りで楽しむ利用客を見て渋い表情を浮かべるアガサ、ヘルゲはそんなの気にすんなよと誘う。
「……はしゃぐのは私のガラじゃないわ。足だけ浸かってるから遊んでらっしゃい」
ヘルゲの一言にアガサは考えてみたものの、やはり自分のイメージではないと首を横に振る。
アガサはプールサイドまで足を運ぶと縁に座り鮮やかな青い湯へとふくらはぎまで浸ける。
涼しげな色と裏腹に心地よい暖かさを感じる。

「じゃあ、俺はおもいっきり堪能させてもらうぞ」
ヘルゲはアガサの素っ気ない様子を見て、助走をつけてプールに飛び込む。
盛大に水しぶきが跳ねて係員が「危険です!飛び込まないで下さい!」と注意を呼びかける。
「……近くにいた私が注意されたみたいじゃない」
周囲の注目が一気に集まり、アガサは頬を赤らめて水面を睨みつける。
ブクブクと泡が浮かんでくるものの、ヘルゲは浮かび上がってこない。

「ちょっと、ヘルゲ?」
膝下を揺らしながらアガサはプールの中を覗き込む、湯は半透明で凝視すれば水中もうっすらと見える。
じーっと覗き込んでいると水面からなにかが顔を覗かせた。
それは水口からプールの水を勢いよく吹き出してきた、大型の水鉄砲だったのだ。
アガサは水鉄砲を避け、続けてヘルゲがザバァッと勢いよく水面に現れる。
ヘルゲの不意打ちにアガサは眉間にシワを寄せて無言で睨みつける。

「……風呂入ってると割と色んな事がどうでもよくなるし」
ヘルゲが改まってアガサの前へ移動して顔を見つめる、目線は同じくらいの高さ。
伝えたい言葉が上手くまとまらないヘルゲはしかめっ面を浮かべる。
「つまり?」
「お前、カリカリしすぎなんだよ。たまにはさっぱりしてもいいだろ」
ヘルゲは照れ臭そうに頭をポリポリと掻く、髪から水滴がポタポタと水面へ向かって落ちる。

「そう……それ、貸してもらえるかしら」
「おう」
アガサの申し出に何の疑いもなくヘルゲは水鉄砲を差し出した。
すると水鉄砲のタンクに入っていた湯がヘルゲの顔に向かって撃ち放たれる。
「ぎゃぁぁ!?」
「あら、思ったより威力があるのね」
そう呟いたアガサがプールの中に降りる、水口はヘルゲに向いたままだ。

「そんなに言うなら堪能させてもらうわ」
「ちょっと待て、やっぱ返し」
言葉を待たずにアガサがもう一発当てる、海塩の濃度が濃くかなり塩辛い。
水鉄砲から逃げるヘルゲに水鉄砲で追うアガサ、意外なもので盛り上がる二人であった。

◆後悔、先に立たず
Elly SchwarzとCurtはミントバスに来たものの、ここで大きな問題があった。
「全部プールだなんて、僕は聞いてないです」
「いや、ちゃんと来る前にカンパニーの職員も言ってたし。アンジュって女社長も説明してただろ」
Ellyは青いタンキニで体型を隠し浮き輪を用意してきていた……が、全てプールだと知って近づく気力がなくなっていた。
Curtも黒いサーフパンツを身につけてきた、不躾にEllyの水着姿を眺めていたことがバレて
片方の頬に真っ赤なモミジ……もとい、Ellyにビンタされた跡。

カナヅチのEllyはどうしてもプールに近寄りたくなかった、だからローズプールと銘打たれていた
薔薇のプールに一直線だったCurtを慌てて引き止めてミントバスへとやってきたが、
その実態はハーブ由来の湯を使った『プール』だったことにその場に着いてから気付き
そんなものは聞いていないと先程から駄々をこねている。
カンパニーの社員はちゃんと説明していた……『温泉を使った、プール』だと。
説明をちゃんと聞いておくべきだったと心底後悔するEllyだったが、後の祭りである。

「カナヅチったって水に慣れる事も学んだ方が良いんじゃねーのか?」
「ここ、僕の背より深いから足も付かないですし溺れたら元も子もないです」
Curtは呆れたようにEllyの様子を見つめていた、ベンチで体育座りしているだけで
これでは遊びに来た意味がなくなってしまう。
「じゃあ、超初心者向けの指導してやる。これもできないって言うんなら中止だ、帰るぞ」
「え、なにもしてないのに帰るんですか!?」
Curtの宣言にEllyは慌てて顔を上げる。Curtは明らかに苛立った様子だが、
なんとか慣れさせようと妥協に妥協を重ねた案を考え出した。

「プールサイドに座って足を突っ込め、いわゆる足湯だ。これでも溺れるとは言わせねぇぞ」
足湯とは老廃物の溜まりやすい足元を温めることで血液の流れを良くする入浴法である。
膝から下を入れるだけで充分なので決して溺れることはない。
「むぅ……それなら、出来そう?」
プールの水深は1.5m、Ellyの背よりも深いため入ることは躊躇われるが足だけならいけるかもしれない。
「じゃあ、それでやってみます」
Ellyは頑張ってプールサイドまで近づこうとするが……
『足が滑ってプールに落ちたらどうしよう』
『後ろから押されてプールに落ちたらどうしよう』
『水中から出てきた人に驚いてプールに落ちたらどうしよう』
そんな事を考えている内に行ったり来たりとなってしまい、辿りついた頃には1時間は経過していた。

***
「お前、どんだけビビってんだよ」
「で、溺死を舐めちゃダメですよ。普通のお風呂でも起きるんですから!」

先にプールへ入りながら待っていたCurtが「浮き輪付けとけば落ちても大丈夫だろ」と、
呆れを通り越した生温い視線を向けながらEllyが用意していた『浮き輪を初めから付けてプールに来い』と言った。
そういえばと思い出したEllyはプールサイドで浮き輪をつけたまま足湯をしている。
若草色の湯から香るミントのすぅーっとする香りが鼻腔を通って爽やかな空気を感じさせる。
遠目にプールで水のかけ合いをしているカップルが視界に入り、楽しげな様子が無性に羨ましく感じた。

「なんだ、羨ましいのか?」
「違います!」
プールサイドに寄りかかりイヤラらしい笑みを浮かべるCurtにEllyはピシャリと言葉を跳ね除ける。
「へいへい、今度は泳げない良い子ちゃんも遊べる所に行こうなー」
「……この下衆野郎、です」

やや物足りなさを感じるひとときとなったが、
改めてお互いが楽しめる場所へ行こうと新たな計画を考えるEllyであった。

◆秘めた男の勲章
クロスは各プール場を繋ぐ廊下で壁に背を預けてオルクスを待っていた。
道行く人々の中に腕をつないで歩く恋人達が通るたびに視線が一緒に動いてしまう。
朱金のスリットが入ったワンピースの水着から伸びる細く長い四肢が女性らしい色気を感じさせる。
壁にぴったりとくっついているのには複雑な理由があるが、それはまた後ほど。

「済まない、待たせたな」
「……あ」
駆け寄ってきたオルクスの声を聞いてクロスも目を向ける。
オルクスは金の狼が刺繍された黒いショートタイプの水着を着ていたが、それ以上に目を引いたのは体にある無数の傷跡だった。
オルクスは気にしていない様子だが、その傷跡は痛々しく目立つような部位にも残っていた。
クロスも驚きのあまり傷跡に一瞬目が釘付けになる。
「今日は髪型も変えたんだな、そういうのも可愛らしくていいと思うぞ」
「な、何を言ってるんだ!?」
いつものポニーテールではなくお団子状に髪をまとめていることに気づいたオルクスがクスリと微笑みながら褒める。
小さな変化でも気づいてもらえたことに嬉しくも恥ずかしくもあるクロスは頬を染めて顔を逸らす。

「じゃあミントバスに」
「……いや、ミントバスはやめて風呂に行こう」
クロスは不思議そうに首を傾げると、オルクスはクロスの手を取ると麹風呂の方へと向かい始めた。
「ど、どうしたんだ」
「周りを見てみろ」
クロスは言われて同じ廊下を歩く人を横目で見てみた。

そこには、オルクスを見るなり好奇の目を向け少し距離を置く人が……
生々しい傷跡に驚かれていることに、オルクス自身が気づいて透明感のありそうなミントバスを止めたのだろう。
「そういうことだ、タオルか上着でも羽織っておけばよかったな」
苦笑いを浮かべるオルクスは足早に歩を進めるのだった。

***
麹風呂は極楽浄土をイメージした内装となっていて、壁や天井には雲海が描かれており
唯一展望できる窓の外には初夏の陽気を感じさせる新緑と大きな川が流れていた。
プールの中心には羽衣をつけた天女の像が立っており、持っている水桶から不透明な乳白色の湯が溢れてほんのり甘い香りが漂う。

オルクスは早々にプールの中に入っていきクロスも後をついて一緒に入っていく。
先ほどの視線を考慮してのことだろうという想像は容易だった。
「オルクス、さっきの事は気にしなくても」
「いや、俺ももう少し気をつけるべきだった。仕事柄、避けられないものであるし」
気まずそうに見つめるクロスにオルクスはなんでもないような顔をする。
しかしプールから出ている胸板や肩にも多数の傷跡があり目立つことこの上ない。
「……その傷跡って、やっぱり」
「なに、過去に仲間を守って出来たのがほとんどだ」
ウィンクルムとなる前から傭兵職を生業とするオルクスは『怪我はつきものだ』と言う。
軽傷から、生死に関わるような傷まで……全ては共に戦う仲間を守ったものなのだと。
「だが、後悔はしていない。自慢する訳ではないがこれも男の勲章というものだ」
過去を語るオルクスの顔は晴れやかで、文字通り自分にとって誇るべきものだと感じていることが伺える。

「そう、か」
クロスは小さく笑みを浮かべる。
自身の背中に刻まれた過去の傷、それは生涯忘れられない悲愴の爪痕。
水着で隠していながらも気になってしまい、背中を壁につけていたのもその為だった。
(俺も、まだまだだな……もっと心を強くしないと)
オルクスの話に勇気づけられたクロスは心中で新たな決意をする。
「だいぶ長湯してしまったな、サービスしてくれるそうだしなにか飲もうか」
オルクスは手がふやけ始めているのに気づいて、少し休もうかと提案する。
クロスもそんなに入っていたのかと思いプールサイドに一緒に上がりベンチでアイスティーを飲むことにした。

再び、オルクスの傷跡に驚く者や好奇の目を向ける者も居たがクロスもなんでもないように振舞う。
堂々とする彼の誇るべき『勲章』だと、彼女だけは知っているから。

◆意外な想い
田口 伊津美とナハトはフルーツバスにやってきた、ナハトが珍しいおねだりに伊津美も驚きはしたが
『日頃の疲れも癒したいし、たまにはいいか』と思って連れてきたのだ。

フルーツバスは密林をイメージしていて天井にはマングローブのような深い緑が生い茂っており、
シャワー周辺や壁際には極彩色の花や青い蝶蝶で彩られている。
プールの中心には女戦士の像が胡座をかいており、手に持つ聖杯からオレンジ色の湯が湧き出る。
プール内にもオレンジやレモンなどの柑橘類が浮かんでいて特有の甘酸っぱい香りが漂う。

「結構いい香りね」
今日も赤縁メガネでばっちり『結寿音』になっている伊津美は黒いサロペット風の水着姿。
ダボっとさせたデザインが可愛らしくも体型をカバーしており、ウエストマークの細い紐がワンポイントでオシャレ度ばっちり。
ナハトは事前に黒いハーフパンツを着せられて来た、『絶対コイツ忘れてくる』と予想した伊津美が穿かせてきたのだ。
しかし、ナハトが実は替えの下着を忘れて売店から一着もらうのはまた別のお話である。
すでに浮き輪を腰にかけて臨戦態勢だが、無表情なのも相まってシュールだ。

「ネジ外れないの、それ?」
「大丈夫」
シュールな光景に先程まで腹筋が引き攣るほど笑った伊津美はまだ直視できずナハトから目を逸らしていた、
ナハトが何故かどやぁと誇らしげなのは気のせいだろう。
「カラオケ大会もあるし、今の内に英気を養わないとね」
「ん」
伊津美はカラオケバー『あいあい傘』で開催される『12時間耐久カラオケ大会』にエントリーしていた。
伊津美としても『12時間耐久』という未知の領域へは好奇心がくすぐられた、万全に挑む為の英気を養うのも今日の目的である。

早速、伊津美とナハトがプールへ近づくとナハトは浮かんでいたオレンジを手に取る。そして口へ運ぼうと……
「って備品を食べようとするなー!?」
伊津美の鋭いツッコミがナハトの後頭部に炸裂し、ナハトはドボーンと盛大にプールの中へと落ちていった。
浮き輪のおかげで浮上してきたナハトは気にせずプールを漂う。
「全く、油断も隙ないわ」
伊津美もすぐにプールへと入る、柑橘系の爽やかな香りで少し落ち着けたように感じる。

***
伊津美はゆったりと浸かっていた、ナハトもぷかぷかと浮いて背中のゼンマイをキュルキュルと回す。
「あのさ……なんで記憶喪失か、心当たりないの?」
「心当たりはない」
ふと伊津美が疑問を問いかけるとナハトは淡々と答える。
「思い出したい?」
「……鏡に映る自分に、ワクワクしたんだ」
「ワクワク?」
「どこから来て、どんな親が居て、俺が何者なのか……考えると色んな俺がいて楽しい。
だから調べてみたい……俺自身の、答え合わせをしてみたい」

呟くナハトの目には『決意』が映っているように伊津美は感じた。
(なんだ、馬鹿ロボットなりに考えてるんじゃない)
今までナハトを単なる邪魔者と思っていたが、意外な事実を教えてくれた。
『ナハトなりに考えていることがあるのだ』と、伊津美はほんの少しだけナハトを見直した。

「……ホンットしょーもない精霊だけど、一応相棒なんだもんね」
「?」
伊津美の呟きを理解できずナハトは首をかしげる。
「ナハトって本当に変だよ…い、いい意味で」
語尾が聞き取れずナハトの頭上に疑問符が増えていく。
「だ、だから……記憶探しぐらいは手伝ってあげなくもないよ?」
それは不器用ながらも、伊津美がナハトに一歩歩み寄ろうとした瞬間だった。
ナハトは僅かに目を見開き伊津美を見つめる。

「……あ!そろそろ上がんないと、馬鹿ロボットも早く支度してよね!?」
伊津美は足早にプールから上がると更衣室へ行ってしまった、耳が赤くなってたような気がした。
ナハトは伊津美の背中が見えなくなった頃に、伊津美の言葉を思い出し小さく微笑んでいた。

◆またのご来店を
「皆、楽しんでもらえた?やっぱりフレーバー要素は大事よね!」
満足気な様子で出てきたウィンクルム達を見つけたアンジュが機嫌よく駆け寄ってくる。
「面白い企画が思いついたらまた招待してあげなくもないわ!まだまだお祭りは続いてるから楽しんでらっしゃいね」



感謝祭は始まったばかり、楽しい時間はまだまだ続く。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


( イラストレーター: 天羽  )


エピソード情報

マスター 木乃
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 04月22日
出発日 05月01日 00:00
予定納品日 05月11日

参加者

会議室

  • [6]エルザ

    2014/04/25-22:35 

    昨夜は色々あったようですね…。

    こんばんは、エルザと言います。
    パートナーはジョシュアさんです。
    今回はよろしくお願いします。

    効能も色々あるようですし楽しみですね。
    のんびりしてこようかと思います。

  • [5]アガサ

    2014/04/25-11:38 

    なんだか熾烈な争いがあったようね

    今回は温泉プールみたいだし、ゆっくりしましょ。
    よろしくね

  • [4]クロス

    2014/04/25-08:20 

    やっと決まったか…
    参加出来て良かったぜ!

    初めましての方もそうじゃ無い方も初めまして。
    俺はクロス、パートナーはテイルスでプラストガンナーのオルクスだ。
    宜しく頼む。

    前に温泉行ったが、又行きたいと考えていたんだ(微笑)
    水着ならまだ…平気だしな…
    どんなのが良いか迷うな…

  • ドキドキでしたが参加出来ててよかったです。

    初めまして、以前お会いした方は改めまして、僕はElly Schwarz、エリーと言います。
    パートナーはディアボロのCurt、クルトさんです。
    今回は温泉と聞いて参加させてもらいました。
    しかしプール感覚と言う事で、深くない事を祈るばかりです。(金槌)

    ……水着ですか。
    こう言う水着とプランに書けば持参した事になるのでしょうか……?
    ならば忘れず記入ですね。

  • [2]田口 伊津美

    2014/04/25-00:24 

    …6人に見えたが多分気のせいだったぜ!
    というか15分争い熾烈すぎる…

    結寿音です!(偽名を名乗っています)
    パートナーがどうしても行きたいと言って聞かないため付き合ってあげることにしたよ
    箱根○ネッサンを彷彿をしているとか(
    水着は絶対忘れないようにしなきゃね


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