プロローグ
節分。
それは、「鬼は外、福は内」の掛け声とともに豆を撒き鬼――邪気を祓う行事だ。
現代では忘れられがちだが、無病息災を願う大切な行事のひとつである。
その年の恵方に向かって無言で恵方を食べると願い事が叶うなど、一年を平穏無事に過ごすためにかなり重要な行事と言えるだろう。
「ねぇ、あんた本当にこんなことする気なの?」
研究室の机に鎮座している恵方巻きと豆を眺めながら、少女がおかしなものでも見るような視線を奥に居る青年に向ける。
視線を向けられた青年は、張り付いたような笑みを浮かべながらデスクトップパソコンから顔を上げた。
「いつも言ってるけど、僕はウィンクルムの愛が見たい。ウィンクルムが大好きなんだ」
「あんたのやることはいっつも頭おかしいけど、今回はまた違うベクトルで頭おかしいよ?」
「でもさ、ここからウィンクルムが進展して未来につながるかもしれないでしょ?」
「……まぁ、それは確かにそうだけどさ」
少女は不服そうながらも首肯し、「はぁ」とひとつため息を吐いて恵方巻きを手に取った。
「正直これセクハラだと思うんだけど」
「君が嫌なら僕が食べるけど」
「酷い絵面になるからやめなさいよね。本ッ当にウィンクルム以外の好感度気にしないのねあんた」
片手をポケットに突っ込みながら、少女が恵方巻きを食べる。
すると、少女の着ていた服が、鬼のパンツを思わせる虎柄のビキニに変形した。
「ったく、これ知らないで食べたら絶対パニックになるわ」
少女は面倒臭そうに豆を手に取り、かぶるように自分に当てた。
瞬間、少女の服が元に戻り豆がパラパラとこぼれる。
「ほら、ちゃんと機能してるからこれでいいでしょ」
髪に乗ったりポケットに入り込んだ豆を払いつつ、じとっとした視線で青年を睨む。
青年はその視線を受けても笑みを絶やさずに、
「準備万端だね。じゃあ、あとは頼むよ」
「えーまたあたしがやんの?」
「人間にウケやすい顔してるんだから、使わないともったいないでしょ」
溜息を吐き、心底面倒臭そうな表情で両手をポケットに突っ込みつつ、少女は街中へと歩みを進めたのだった。
「どうも、こんにちは! 節分用の恵方巻きに豆を販売しています~☆」
木陰から少女を見守っていた青年は、あまりの変わりように苦笑を浮かべた。
アイドル並みの笑顔が輝いている少女の姿は、先程の仏頂面の少女と同一人物とは思えない。
ウィンクルムも、数名集まっている。
青年は楽しそうな笑顔を浮かべて、行く末を見つめた。
解説
・お持ち帰りができるので、恵方巻きを食べるのはどこでもOKです。
・恵方巻きを食べると、神人か精霊の服が虎柄のビキニになってしまい、途轍もなく相手に甘えたくなってしまいます。抱きつくしすり寄るし、キスするし、といった形です。
豆をぶつけると服が元に戻り、甘える状態からも脱します。
豆をぶつけずに時間が経つと、服がもとに戻らないまま正気に戻ります。
・恵方巻き、豆代金として500Jrいただきます。
ゲームマスターより
おはこんばんにちは~東雲柚葉です!
バレンタインにはまだ早いなぁ、ということで忘れられがちな節分ネタですよ!
本当は、細い棒のチョコを食べ合うゲームのように恵方巻を食べるとかいいなぁなんて思ってたのですが、
そういうエピソードにはならなかったですね。
全然プランに書いてくださってもいいですけどね!
では、参加お待ちしております!
リザルトノベル
◆アクション・プラン
ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)
【虎柄ビキニ適用側】 恵方巻き買ってきました こういう行事はきちんとやらなきゃです 今年の恵方は南南東でしたっけ では食べましょう、喋らずに なんだかディエゴさんに無性にじゃれつきなってきました、今は家なんだから良いじゃないですか 何やらいつの間にか鬼のような格好をしていたようですね 鬼は外なんかに行かないですよ、ディエゴさんにくっついて回ります 豆をぶつけられるものならぶつけてみてくださいよ はー節分のイベントに追っかけっこが追加されるとは思ってませんでしたね、楽しかったです …ところで、服はどうしましょう 着替えるのは良いとして、着ていた服は 水着を買う手間がなくなった、って このビキニ着て海にいくつもりないですよ |
リヴィエラ(ロジェ)
リヴィエラ: ロジェ、恵方巻とは何ですか? (恵方巻の説明を聞き)まぁっ! 素敵な風習ですね。私、食べてみても良いですか? (自宅に持ち帰り) 南南東を向いて、喋らずに一気に食べるのですね。 …はぐっ!? (恵方巻を食べると急に変化が。 ロジェの膝に座り、首に手を回して甘える) うぅ~ん…ロジェ、私、ロジェと一緒の部屋だけなんて嫌ですぅ… ロジェ、私と一緒にお風呂に入ってください…♪(上目遣いで) (豆をかけられ、正気に) …はっ!? 私ったら何て事を…も、申し訳…(涙目であたふた) でも、ロジェのお陰で、またひとつ新しい体験ができました。 改めて、外の世界へ連れ出してくださってありがとうございます、ロジェ。 |
エリー・アッシェン(ラダ・ブッチャー)
行動 突如虎柄ビキニを装着した精霊を見て、愕然。 場所は公園。 非常にまっずーい。このままではラダさんが社会的に死んでしまいます。 私がなんとかしなくては! ラダさんを正気に戻そうと呼びかけますが、効果がありません。 哲学5。彫刻の考える人のポーズで思考。 こんな狂気の沙汰が、人間社会において調和し受容されるとしたら……。 ギャグの舞台! との結論に至り、コントを成り立たせることで、窮地を凌ごうとします。 精霊の、うちでゴロゴロ発言で。 「鬼は外!」 豆をシュバババッとぶつける。 もし観客がいたら。 「ありがとうございましたー」 と締めくくりのご挨拶。 まーっ、大胆! ラダさんはあの状態で人目のない場所にいきたかったのですね! |
シルキア・スー(クラウス)
(…これ夢?ふわふわしてる…うん夢だ抱き付いちゃえ 彼に抱き付きすりすり (ふわー逞しい胸…いっぱい触ろ さわさわ 顔背けられたけど 「オオカミさんのお耳がお留守だよ チュ (私大胆、ホントにしたら嫌われちゃうかな、夢でよかった 彼が険しい顔なので不安 「…嫌だった? (慌ててる、可愛い 「じゃあもっと? お顔にすりすりしたい 手を添え近づいたらばたーん 豆が当り正気になったらクラウス見下ろしてた 状況呑み込めず 「何かした?私 押し倒した様な体勢に気付き退こうとしたら抱しめられた 「ひええっ何!? 何かとんでもない事したような気もするが思い出せない 「私もしかして寝てた?楽しい夢見てた気がする (でも、確か恵方巻き食べてた気が… |
瀬谷 瑞希(フェルン・ミュラー)
家に持って帰って食べましょう。 フェルンさんもお茶を飲んで行って下さいね。 恵方巻き、知らないのですか? 縁起のいい方向を向いて、願い事を思いつつ黙って食べると良いとか。 でも小さい頃に「食べている姿がみっともない」と曽祖母が言うので、家ではあまりしませんでしたね。 切らずにそのまま丸かぶりするんですよ。 もぐもぐもぐ。(と彼の前で実演) え。 フェルンさん、寒いです、暖めて下さい。 とすり寄ります。 (何だかヘンですね? 色々とぐるぐる考えて) はっ。 この胸の小ささは厄が付いているせいなんです! 私の胸、こんなに小さくないもん!(←酷い言掛り) フェルンさん、その豆で私の厄をはらって下さい! と豆をぶつけて貰います。 |
☆リヴィエラ ロジェ ペア☆
調子良く接客をしている少女を眺めて、リヴィエラは聞き慣れない単語に首を傾げ、ロジェに問う。
「ロジェ、恵方巻とは何ですか?」
「七色の具材が入ってる、何というか……そうだな。おにぎりの具を多くして、横長にして丸めたような食べ物だ」
七色の具材が使用されているのは、七福神を見立てることによって運気を向上させるためだ。
「恵方を向いて食べることで、一年の無病息災とお願い事を叶えてもらうんだ」
ロジェが簡単に恵方巻きについて一通り説明すると、リヴィエラは手を打ってキラキラとした視線を恵方巻きに向ける。
「まぁっ! 素敵な風習ですね。私、食べてみても良いですか?」
「ああ、一つ買っていこう」
ロジェは少女から恵方巻きを一つ買い、リヴィエラと共に自宅への帰路についた。
「ロジェ、その、エホウ? というのはどちらにあるのでしょう?」
「今年の縁起が良い方向は、南南東だそうだ」
ロジェは、南南東の方角を指さしてリヴィエラに伝える。
「途中で喋ると運気が逃げるから、一気に食べるんだぞ?」
「南南東を向いて、喋らずに一気に食べるのですね」
リヴィエラは恐る恐るといった調子で恵方巻きを口に運び、できる限り大きく開いた口で一口齧った。
「……はぐっ!?」
「!?」
ロジェは声にならない声を上げて、耳まで顔を真っ赤に染め上げた。
突如としてリヴィエラの衣服面積が一気に80%ほど消失し、虎柄のビキニとなってしまっている。
それだけでも驚愕として十二分なものなのだが、リヴィエラはその服装のままゆっくりとロジェの膝に座り、首に手を回して艶やかに微笑む。
「うぅ~ん……ロジェ、私、ロジェと一緒の部屋だけなんて嫌ですぅ……」
「なっ……ど、どうしたんだ、急に!?」
ロジェが顔を赤くしたまま目を剥いて問うが、リヴィエラは微睡んだ表情をしつつ上目使いで微笑みながら、
「ロジェ、私と一緒にお風呂に入ってください……♪」
突然の発言に噎せ返り身体をややうつ伏せにして目を開けると、眼前にリヴィエラの胸元が目いっぱい広がり、慌てて顔を上げる。
「い……ぞ……」
「なぁに?」
「べ、別に一緒に風呂に入るくらい、良いって言ってるだろっ!」
ロジェの一言を聞いて、リヴィエラは嬉しそうに微笑んで、ロジェの頬に両手を添えた。
「ありがとうございます、ロジェ」
リヴィエラが優しくロジェの唇に唇を重ね、甘い吐息を漏らす。
口付けをされ、理性が遥か彼方へと吹き飛びかけたが、ロジェは辛うじて理性を保ちつつ思考を巡らせる。
(これは……あの男の仕業だなああ!?)
脳内に浮かんだ薄ら笑いを浮かべる青年の表情を思い浮かべて、恵方巻きとともに手渡された豆の存在を思い出す。
手が届く範囲にあったので、豆を手に取りリヴィエラが膝から落ちないようにを抱き寄せる。
「仕方のないお嬢様だな……ほら、福は内」
ロジェが豆をリヴィエラにかけると、途端にリヴィエラの服装が元に戻り、
「……はっ!? 私ったら何て事を……も、申し訳……」
正気を取り戻したリヴィエラがあたふたと涙目になりながらロジェに謝罪する。
「い、いや戻ったならいいんだ」
膝の上で暴れるリヴィエラに赤くなった顔を見られないようそっぽを向いてロジェが答え、怒っていないことがわかったリヴィエラは、気を取り直して向き直る。
「でも、ロジェのお陰で、またひとつ新しい体験ができました」
リヴィエラは先程までとはまた別種の笑みで微笑み、感謝を述べる。
「改めて、外の世界へ連れ出してくださってありがとうございます、ロジェ」
目を合わせることが出来ないまま、ロジェは照れ隠しに言い放つ。
「き、君を攫ったのは、ウィンクルムとして適応するからで……」
ロジェは今まで耐えてきたことによる反動か、
「べ、別に一目惚れだとか、そんなんじゃないんだからなっ!」
典型的なツンデレのような台詞を言い放ち、ロジェはこれ以上にないほど顔を真っ赤に染め上げたのだった。
☆シルキア・スー クラウス ペア☆
(なぜこの様な事になった?)
シルキア・スーの精霊であるクラウスは、虎柄のビキニ姿で自分の身体に抱き着いているシルキアに困惑していた。
クラウスが様子を見るためにされるがままにされていると、シルキアがすりすりと頬を撫でつけてくる。
(ふわー逞しい胸……いっぱい触ろ)
夢心地のふわふわとした感覚に包まれつつ、シルキアはクラウスの鍛えられた胸板をぺたぺたと触りはじめた。
体温を求める猫のように甘えきりのシルキアに、クラウスはいつからこうなったのだったかと記憶を辿ってみるが、恵方巻きを食べるのに茶を入れて振り返ったらすでにこの状態だった気がする。
クラウスが思慮を巡らせていると、シルキアがはたと顔を上げる。
「どうした具合でも悪いのか」
心配になってクラウスがシルキアの顔を覗くと、半眼の扇情的な顔を向けられドキリと鼓動が跳ね上がった。
そのままゆっくりと顔が近づいてくるので、クラウスはたまらず顔を逸らす。
「オオカミさんのお耳がお留守だよ」
チュッ、という音と共にシルキアがクラウスの耳元にキスをした。
クラウスは雷が奔ったかのような感覚に襲われ、思わずシルキアに目を剥いた視線を向ける。
(私大胆、ホントにしたら嫌われちゃうかな、夢でよかった)
自分自身の御しがたい感情に促されるままになりつつも、シルキアは心の中で客観的にそう考えていた。
クラウスは自分の耳にキスをしたシルキアの顔を眺めて、制御し難い鼓動に混乱する。
ちらりとクラウスの表情を確認したシルキアは、その険しい表情に強い不安を覚えて、思わず困ったような表情で、
「……嫌だった?」
「え!? 違う……良かった! いやそうではなく……」
ほとんど反射的に否定し、ややこぼれた本音に似た言葉にたどたどしい言葉の紡ぎ方を繰り返していると、シルキアがそれを見て楽しそうに微笑んだ。
「じゃあもっと?」
もっと? という一言にクラウスの胸中がざわりと掻き立てられる。
「それはならない、これ以上は俺が……」
シルキアがクラウスの顎に指を置き、ゆっくりと伝うように頬に手を添えた。
もう一度、シルキアの顔が近づいてくる。
先程耳にキスされた感覚が生々しく思い起こされ、クラウスは近づいてくるシルキアの顔から少しずつ身体をのけぞらせるものの、ついに耐え切れなくなり後方にひっくり返った。
「きゃあっ」
ばたーんと音を立ててクラウスが床に仰向けに倒れ、その上にシルキアの身体がのしかかる。クラウスの身体にすっぽりと収まったシルキアの柔らかな身体の感触がクラウスの身体に伝わってきた。
その感触に、クラウスが顔を一挙に赤く染め上げると、
ひっくり返った座卓によって巻き上げられた豆が雨のように降り注ぎ、シルキアの背中にばらばらと当たった。
豆が当たったシルキアが正気に戻り、服が一瞬の間に元に戻る。
(戻ったのか?)
クラウスがシルキアの状態が普段のものに治ったことを確認し、ふぅ、と安堵の吐息を漏らした。
「えっと……何かした? 私」
シルキアは状況が呑み込めないながらも、クラウスを押し倒した体勢に気が付いて起き上がろうとするも、クラウスがぎゅっとシルキアを仰向けの体勢のまま抱きとめたので、起き上がれずもう一度クラウスの身体の上にシルキアが倒れこむ。
「ひええっ何!?」
状況を掴めずに混乱しつつも、ふと何かとんでもない事していたような記憶が思い起こされる。
「私もしかして寝てた? なんだか、楽しい夢を見てた気がする」
記憶が飛ぶ前に、何か恵方巻きを食べていたような懸念が頭を過ぎるが、その考えを見透かしたようにクラウスがシルキアの耳元で強めの語調で呟く。
「夢だ、夢でいい」
シルキアを固く抱きしめて、クラウスは思う。
彼女が本気を出せば自分はこんなにも脆いのか――、と。
困惑しつつもシルキアがクラウスの首後ろに腕を回し、二人はしばらくの間そのまま抱きしめ合っていた。
☆エリー・アッシェン ラダ・ブッチャー ペア☆
「お腹空いたねぇ」
ラダ・ブッチャーが露店販売していた恵方巻きの袋を手に提げて、ぐうとひとつお腹を鳴らす。
「うふふ、そうですね。天気もいいですし、公園でご飯にしましょうか」
エリー・アッシェンはラダの主張に首肯し、公園のベンチで昼食を摂ることにした。
ベンチに腰を掛けたラダはよほどお腹がすいていたのか、さっそく恵方巻きを取り出して大きく口をあける。
「いただきまぁす!」
そうして、ガブリ! と一口恵方巻きを口に含んだ瞬間。
――ラダの服が瞬時にしてほとんど消失し、虎柄の水着へと姿を変えた。
「え」
エリーは辺りをきょろきょろと見渡しながら、色白い頬に汗を伝わせる。
このいい天気の中、昼時のこの時間に、場所は公園。
非常にまずい。もしかすると、オーガに囲まれている状況よりも現在のこの状況のほうがピンチかもしれない。
(このままではラダさんが社会的に死んでしまいます)
冗談ではなく、本気で職務質問からの補導対象となってしまうだろう。
(私がなんとかしなくては!)
決意を固め、どうすればラダを助けられるかと思考を巡らせる。
すると、なんということか、ラダはさらに地獄絵図を加速させるかのようにエリーの周りでうろうろとしながら甘え始めたのだ。
「ラダさーん、ラダさんお気を確かに!」
エリーが声を抑えつつ語りかけるも、その努力虚しくラダは動きを止めない。
顔に深い影を浮かばせて、エリーが考える人のポーズで思考を巡らせる。
(こんな狂気の沙汰が、人間社会において調和し受容されるとしたら……)
そんなことが許されることと言ったら、一つしかない。
(ギャグの舞台!)
カッとエリーが目を見開いて結論に至り、コントを成り立たせることで窮地を脱することを決める。
ラダがエリーに人懐こい猛獣のごとく背中や肩にすり寄ってくる。その姿は、本能に溺れた虎のようだ。
「大虎の登場です!」
ワアア、と近くに集まってしまっていた観客がまばらながらも歓声を上げる。
「ボク、すごく甘えたい気分になっちゃって……エリーの手料理が食べたいなぁ」
べたべたと甘えながら伸ばしてくる手を熟練のツッコミ役のように捌き、
「さっき恵方巻き食べたばかりでしょう。鬼ぃさんや」
「ついでに掃除と洗濯と肩揉みもしてほしいなぁ」
「鬼ですね」
間髪を入れない即答で、ほとんど真顔でエリーがツッコミを入れた。
しかし、特異な状態となっているラダはめげずに、満面の笑みで叫ぶ。
「ボクはうちでゴロゴロしてるから!」
その発言をした刹那、恐ろしい速度で豆を取り出したエリーが、ラダに向かってシュバババッと豆を投げつけた。
「鬼は外!」
散弾さながらの弾幕で投げられた豆がラダに直撃し、ラダは、
「ウヒャァアアアァァァァ!」
と悪役が倒される時のような断末魔を叫び、水着から先程までの服に戻った。
観客はそのエンターテイメントに歓声を上げ、
「ありがとうございましたー」
とエリーは締めくくりの言葉で切って、ラダの社会的な死を回避しきった。
ラダが正気に戻り、帰路についている間、エリーが事の顛末を事細かにラダに伝えた。
「そういう発想だったんだ。ありがとう」
社会的に死亡通知を告げられる状況から助けてくれたエリーに感謝しつつ、
「でも、公園でコントなんてしたら余計目立つじゃん! 人目のない場所で様子を見るとか、もっと別の対応も……」
「まーっ、大胆! ラダさんはあの状態で人目のない場所にいきたかったのですね!」
口元を手で多い、片手で肩を抱きながら、エリーはラダに切り返す。
エリーにこれでもかというほどにベタベタしていたあの状況で人目のない場所に行くというのは、確かにさらに大変なことになっていたかもしれない。
エリーのその反応に、ラダはどっと、汗を浮かべて反論する。
「そういう意味じゃないからねぇ!?」
そうして、一日限りの名漫才師達は、夕暮れの街の雑踏へと消えていったのだった。
☆ハロルド ディエゴ・ルナ・クィンテロ ペア☆
ハロルドとディエゴ・ルナ・クィンテロは、露店で販売していた恵方巻きを一つ買い、自宅で節分の準備を進めていた。
「豆も買ってきたし普通に節分を過ごそうか」
ディエゴが恵方巻きを購入する際に一緒に購入した豆を升に移し替え、テーブルに置く。
「部屋に豆をまくのは良いんだが、後片付けが一手間なんだよな……」
「そうなんですよね。でも、こういう行事はきちんとやらなきゃです」
ハロルドが頷きながらそう言って、恵方巻きをパックから皿に取り分ける。
「さて、準備も終わったし恵方巻きでも食べるか……」
「今年の恵方は南南東でしたっけ」
ハロルドは方角を確認して「向くのはあっちですね」と恵方の方を向き、ディエゴにもそちらを向くよう促す。
「では食べましょう、喋らずに」
二人は黙々と恵方巻きを咀嚼し、ゆっくりと食べ進めて行く。
先に食べ終えたディエゴが、ふとハロルドの方を見やると、なんとハロルドの服の大部分が変形し、虎柄の水着へと姿を変えていた。
「なんだその格好……いつの間に。……お前、俺が恵方巻き食べてる間に何処かに行ってたのか?」
「何やらいつの間にか鬼のような格好をしていたようですね」
ハロルドは自分の身体を見渡して、対して驚くような素振りも見せずにそう呟いた。それから、自分の肢体へ向けていた視線をぐるりとディエゴに向ける。
「なんだかディエゴさんに無性にじゃれつきなってきました、今は家なんだから良いじゃないですか」
自己完結した発言とともに、ハロルドはじりじりとディエゴににじり寄る。
「鬼は他の服に着替えて外に行け」
「鬼は外なんかに行かないですよ、ディエゴさんにくっついて回ります」
「じゃれつくのは良いが、お前が鬼役を買って出たってことで豆ぶつけさせてもらうぞ」
「豆をぶつけられるものならぶつけてみてくださいよ」
煽られたディエゴは、升に手を伸ばし掴める分だけの豆を手に取り、ハロルドを狙って豆を投げつける。
けれど、その動きをハロルドは簡単に読んでいたようで、ハロルドはそれを簡単に回避する。
「おま……、なんで避けるんだよ」
華麗に豆を回避するハロルドに、ディエゴも少しずつ本気になって投げ続ける。ドタバタと盛大に音を立てながら、水着の女性と豆を撒き散らす男性が家で走り回っている姿はなかなかにシュールだ。
ディエゴも全力投球こそしてはいないが、手を抜いているわけでもないのにハロルドが豆を避け続けるので、ディエゴはついにふぅ、と一息ついた。
そして、家を見渡すと、
「家の中豆だらけだ、全部拾うのか……」
「はー節分のイベントに追っかけっこが追加されるとは思ってませんでしたね、楽しかったです。さて、私は本でも読みますね」
豆を一瞥した後、他人事のようにつぶやくハロルドにディエゴは、
「エクレール、お前もやるんだよ」
露骨に面倒くさそうな表情をした後、自分の格好を思い出してハロルドが呟いた。
「……ところで、服はどうしましょう。着替えるのは良いとして、着ていた服は……」
「その格好自分で着替えたんじゃないのか」
「違いますよ、なんですかこのセンス」
虎柄のビキニに、ハロルドはあり得ないという表情で言い放った。
「そうか……まあ、今年の水着買いに行く手間が省けて良かったな」
「いや、このビキニ着て海にいくつもりないですよ」
ないない、と首と手を横に振りながら、真顔でハロルドに、ディエゴは苦笑を漏らした後、
「海はまだ先だしな。……とりあえずは目先の問題だ」
散乱した豆を見て、そう呟くディエゴとは対照的に、ハロルドは後片付けから逃げるようにしてそそくさとその場を退散しようとする。
「どこに行く、エクレール」
「……なんですかディエゴさん。豆なんか握って。豆を投げても当たらなければどうということはないんですよ」
掃除をするために、またも徹底抗戦を開始させた二人は、さらに部屋中を豆だらけにしてしまうのだった。
☆瀬谷 瑞希 フェルン・ミュラー ペア☆
瀬谷 瑞希は、露店販売で購入した恵方巻きを二人で食べるために、精霊であるフェルン・ミュラーを自宅に招いていた。
オマケでもらった豆も大量にあるので、節分の準備は完璧だ。
「フェルンさんもお茶を飲んで行って下さいね」
暖かいお茶を入れてフェルンに差出し、受け取ったフェルンは「ありがとう」と一口すする。
ほう、と一息つくと、フェルンは「そういえば」と一つ区切って瑞希に問う。
「恵方巻きって、何?」
「恵方巻き、知らないのですか?」
瑞希はやや得意げではあるが、優しく丁寧にフェルンに説明する。
「縁起のいい方向を向いて、願い事を思いつつ黙って食べると良いとか」
瑞希の説明に、フェルンはなるほどと頷き、素直に驚いた表情を形作る。
「そんな風習があるの? 知らなかったな」
瑞希の話を聞いて、フェルンはくすりと面白そうに微笑む。
意外な事実もそうだが、瑞希の説明している姿が微笑ましくて、ふと零れてしまったという次第だ。
「でも小さい頃に食べている姿がみっともないと曽祖母が言うので、家ではあまりしませんでしたね」
「どうして?」
頭の上にクエスチョンマークを浮かべて、フェルンが問うと、瑞希は買ってきた恵方巻きを持ってきて自分の口元近くにあてがった。
「切らずにそのまま丸かぶりするんですよ」
瑞希はあーんと口を開けているが、その小さな口に大きな恵方巻きは入りそうもないように見える。
「太巻きにかぶりつくのは確かにワイルドだね。女の子は食べるのも大変だ」
「そんなことないですよ、私もこれくらいならイケます」
言うが早いか、瑞希は恵方巻きを咥える。
「もぐもぐもぐ」
ごくり、と一口瑞希が恵方巻きを飲み込んだ途端、瑞希の容姿が一変した。
一瞬にして、瑞希の服が虎柄の水着に変貌したのだ。
「君が虎柄ビキニになるのも、ご利益なのかい…?」
フェルンが困惑の苦笑を浮かべて瑞希を見やると、瑞希は紅潮した頬に片手をあてがいながら、フェルンに擦り寄る。
「フェルンさん、寒いです、暖めて下さい」
猫のように甘えてくる瑞希に、フェルンは困惑していたあの頃が遥か彼方に飛んでいくのを感じた。甘えられて、役得だ。
フェルンは甘えてくる瑞希を軽く抱きしめて、安心させるために優しく頭を撫でてあげる。
(いくら暖房が利いた室内でも、意味無く女性のビキニ姿ってのはマズいよね)
とりあえず、とフェルンが自分の上着を瑞希にかけてあげると、なんということかフェルンの上着までもが消失した。
(絶対おかしいと思うけど)
苦笑を色濃く表情に貼り付けながら、フェルンは瑞希の水着をマジマジと見つめる。
見つめられている瑞希はというと、なんだかヘンですね、と頭の中でぐるぐると考え、ある一つの答えに行き着いた。
「はっ! この胸の小ささは厄が付いているせいなんです! 私の胸、こんなに小さくないもん!」
ぺたぺたと自分のバストに手を当てて、真剣な表情で瑞希はフェルンに言い放つ。
フェルンは目線をやや明後日の方向に向けつつ、「いや、君のバストサイズは大体その位――」という事実をそっと胸にしまった。
しかし、胸囲の無さは厄の所為説を提唱し続ける瑞希は、そんなことではへこたれない。
「フェルンさん、その豆で私の厄をはらって下さい!」
両手を広げて豆をせがむ瑞希に、フェルンは駄目もとでも言うとおりに豆をぶつけてみようと決意。
「鬼は~外」
ぱらぱらと豆が瑞希の頭上にかけられ、豆がぶつかった瞬間瑞希の服は元に戻り、フェルンの上着も出現した。
「戻った?」
「駄目です……」
「え?」
わなわなと肩を震わせて、自分のバストを抑えつつ瑞希が叫ぶ。
「厄が払えていません!!!!」
――いや、君のバストサイズは大体それくらいだから!
……というツッコミはやはりフェルンの口からは出て行かず。
結局その日は、瑞希が満足するまで、一日中豆まきをする羽目になった。
依頼結果:大成功
MVP:
名前:エリー・アッシェン 呼び名:エリー |
名前:ラダ・ブッチャー 呼び名:ラダさん |
名前:シルキア・スー 呼び名:シルキア |
名前:クラウス 呼び名:クラウス |
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 東雲柚葉 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | コメディ |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | とても簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 01月27日 |
出発日 | 02月01日 00:00 |
予定納品日 | 02月11日 |
参加者
会議室
-
2016/01/31-12:26
こんにちは、瀬谷瑞希です。
パートナーはファータのフェルンさんです。
皆さま、よろしくお願いいたします。
ふむふむ。
今年の恵方は南南東ですか。
-
2016/01/31-08:30
シルキアとクラウスです
よろしくお願いします
えーと今年は南南東?
いただきまーす! -
2016/01/30-21:43
リヴィエラと申します、皆さま宜しくお願いします。
ええと、恵方巻きというものを食べるのは
初めてなので、今から楽しみです…!
美味しい食べ物だったら嬉しいな(ドキドキ) -
2016/01/30-21:00
エリー・アッシェンと、ラダさんでの参加です。
どうぞよろしくお願いします。
エピソードのジャンルがコメディということで、プランは笑いの方向に突き進みました。
虎柄ビキニを着るのは、ラダさんです! -
2016/01/30-09:50