【糖華】星降る夜に(寿ゆかり マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

 バレンタイン城を訪れた二人。
 今年は、30年に一度の大流星群の大当たり年なのだと聞いて、はやる気持ちが抑えられない。
 パートナーと共に訪れたのは、城下町の一番広い公園。
 夜も更けたバレンタインの公園の、粉砂糖がふわりとかかる芝生に腰を下ろし、夜空を見上げると
 そこには零れ落ちそうな星々が。
「綺麗だね」
 じっと眺めていると、一筋の流れ星。
「あっ」
 今見てた? と尋ねるも、見逃してしまったパートナー。
「大丈夫だよ、今日はたくさん星が流れるんでしょう?」
 肩を落とすパートナーに優しく笑いかけて、もう一度夜空を見上げる。
 しゃらり。
 星が、流れた。
「わぁ! 綺麗綺麗!」
 今、お願い事した?
 尋ねると、パートナーは首を横に振る。
「間に合わなかった」
 でも、大丈夫。今日はたくさんたくさん星が降るんだから。

 恋のお願い?
 夢についてのお願い?
 星はきっと見守ってくれているはず。
 色とりどりの星が流れるのをじっと見つめて祈るあなた。
 そんなあなたの足もとに、ころん。とひとつぶ金平糖が落ちてきたことに気付いた。

「……これは?」
 
 そっと拾い上げる。
 甘い香りに、綺麗な色。
 あなたがひろった金平糖は、どんな色だった?
 ――どんな味だった?
 
 月の無い夜、美しい無数の星々が、流れる。

解説

目的:バレンタインの奇跡の大流星群です! 今年は当たり年! 
   一緒に星に願いをかけましょう。

参加費:交通費等で一律300ジェール頂きます。

 二人で流れ星を眺め、ゆっくりと語らってください。
 星に願いをかけてみましょう。
 お願い事をすると、その願いのイメージに合った色、味の金平糖が足元に降ってきます。
 自分で食べても良いし、パートナーにあげても良いですね。
 金平糖の色や味は、文字数がきつい場合はお任せでもOKです。
 なにかしら美味しそうなのを書きます。
 神人、精霊それぞれのお願い、金平糖のイメージをお書きください。
 どちらかしかお願い事がない場合は、どちらかに絞っていただいてもOKです。

 それでは、甘い金平糖ナイトをお楽しみください。

ゲームマスターより

 おいしいこんぺいとうたべたい。
 ことぶきです。お久しぶりです。
 最近は、いろんなフレーバーのこんぺいとうがあるって知って
 もう、たまらないです。
 チョコレートかかってるやつとかね、おいしいよね。
 よろしくお願いいたします!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

七草・シエテ・イルゴ(翡翠・フェイツィ)

  流れる星を見つめ、綺麗ですねと呟く。
けど、その顔には心が入ってない気がしました。
「まだ、願い事が……決められません」

時々、不安に思うんです。
自分がしてきた事は、ただの自己満足じゃないかって。

「翡翠さん」
確かに楽しい事があるように、悔しい事もありました。
いつも、いつの日も。

これからも私達が成す事は、実になる。
そう信じて瞳を閉じ、両手を合わせ、願いをかける。
誰かの為に、何かの為に、私達が貢献出来ますように。

落ちた金平糖を拾い上げ、見つめてみる。
この形、この色、そして香り。
しばらく、目を細めて思案した。
声をかけられて、我に返り、翡翠さんのと比べる。

私は尋ねる。
今年もまた、一緒に歩んでくれるんですね?


ユズリア・アーチェイド(ハルロオ・サラーム)
  (正座で見上げる)ショコランドは可愛らしいところですわね
ふふ、落ち着きませんか?

金平糖の流星群…普通の流星群も見たことはありませんが…これは壮大ですわね(感嘆)

お願いはもちろん、アーチェイド家の再興ですわ
ハルロオは?…だと思いましたわ(苦笑
どんなお味になりましょうかしら?(お任せ)

ブレないですわね…でもそれ以外のことはブレ始めた気がします
ハルロオのお陰で、私は家に縛られない生き方というものもあるのだと気づけましたから

再興はしますわ!さっき申しましたでしょ!
そうでなく…兄様と結婚しない生き方もあると…
(貴方と結婚という道もあると…そう意識するとなんだかドキドキしますわ…そんなまさか、これが恋?)


ひろの(ルシエロ=ザガン)
  ……?(少し考え、恐々と近づく
好きって、何がだろう。(首を傾ぐ
!?

またこの体勢。(頬を薄く染め、視線が下がる
(小さく首を横に振る
「嫌じゃ、ない」けど。(以前を想起して恥ずかしい
(一拍後に気づき、更に赤くなる

「きれい」流れ星、初めて見た。(羞恥を一時忘れる
「願いごと……」
ルシェに恋人ができても、一緒にいたいって思うのは。
やっぱりわがままかな……。(無意識に服の胸元を握る
叶うなら『ルシェとずっと一緒がいい』。

何か落ちて来た。
「ありがとう」金平糖?(受け取って眺める
ちょっとすっぱい。(食べた

(無意識にルシェの手に触れ、気づいた後ビクッと
なんで、ルシェは私にこういうことするんだろう。(再び顔が赤くなる


レイナス・ティア(ルディウス・カナディア)
  「星が…たくさん、降るんだそうです…!願いを掛けると、金平糖が降るって…!」
ルディウス様と一緒に同じものを見れるのがただ楽しみで、二人で芝生に座り込んで
一緒に星を見上げていたルディウス様が願い事を言いかけて、やめた

それでも降ってきた金平糖に、相手が目を見開いて遠くへ投げようとしたのを、大切なものを守るようにそれを奪い取って口の中へ
彼の願いならどんな思いも受け入れられるって
そう思ってた

味はうっすらと甘くて、そしてほろ苦かった
それで
それは今一番近くにいるはずの私では叶わない願いなんだって、悟った

今、一番近くにいるのに

泣きそうになる
でも改めて言う
「おいしい、です…! まだ、いくらでも食べられ…ます!」


アラノア(ガルヴァン・ヴァールンガルド)
  金平糖お任せ

いろんな色の星が…こんなに綺麗な流星群初めて…

ガルヴァンさんは何願うんだろう…?

精霊と仲良くなるにつれて思うのは、自分の中に押し込んだ気持ち
…もしガルヴァンさんに、その隣に相応しい素敵な人が出来たとしても…
胸を張って、ウィンクルムのパートナーとして、
笑顔で祝福できるようになれるかな…なれますように…

…願ってる間心が痛い気がするのは気にしないふり※メンタルヘルス

金平糖拾い

…いつか現れるだろうその人の邪魔になりたくないけど…
やっぱり友達としてでもいいからもっと仲良くなりたいって…我儘…かな

金平糖を食べる
もう一回願いを込めながら

差し出され戸惑う
い、いいの…?

えと…ありがとう…
素直に食べる



 ガルヴァン・ヴァールンガルドは、神人アラノアと共に空を見上げた。
 無数の流れ星は、タブロスで見るそれとは違って色とりどり。
 赤、金、銀……まるで、宝石のような星々が空から零れ落ちてくる。
「いろんな色の星が……こんなに綺麗な流星群初めて……」
 ほぅと息を吐くアラノアの傍らで、ガルヴァンも感嘆のため息を漏らした。
「見事だな……」
(ガルヴァンさんは何願うんだろう……?)
 ちら、と傍らの精霊の瞳に映り込む星を見てアラノアは考えた。まるでそれに気づいたかのように、ガルヴァンは薄く微笑む。
「願い事か……夢はある」
 どうしてわかったの? と言うようにガルヴァンの瞳を覗き込むアラノア。そんなアラノアの表情に、ガルヴァンは不敵に笑った。
「だがそれは自分の手で叶える予定だ。星に願ってまで叶えようとは思っていない」
 あぁ、ガルヴァンさんらしい。確固たる決意を持っていて、自分の夢をしっかりと追いかけられる人。だからこそ、憧れてしまう。アラノアは再認識して、頷く。
 自分は何を願おうか。そう思って空を見上げ、アラノアは考える。
 彼と仲良くなるにつれて大きくなっていくのは、自分の中に押し込んだ気持ち。
(……もしガルヴァンさんに、その隣に相応しい素敵な人が出来たとしても……)
 星たちが語りかけてくる気がする。本当に、その願いで良いの? アラノアは切なげな微笑みを浮かべ、願った。
(胸を張って、ウィンクルムのパートナーとして、笑顔で祝福できるようになれるかな……なれますように……)
 しゅるり、と星が流れた。
 願っている間の胸の痛みは、――気にしない、……顔に、出ないようにゆるりと微笑む。
 足元にころん、と落ちてきた金平糖を見て、ガルヴァンは呟いた。
「本当に、降ってくるのだな」
「うん……綺麗だね」
 アラノアは、自分の願いから生まれた金平糖を拾い上げる。それは、まるでガルヴァンの髪のような葡萄色。
(……いつか現れるだろうその人の邪魔になりたくないけど……やっぱり友達としてでもいいからもっと仲良くなりたいって……我儘……かな)
 そっと口に運ぶと、ふわりとワインの香りが広がった。ほの甘く、ちょっぴり苦い。まるで、先刻の願いのように胸を締め付ける、幸せで切ない味。
 ガルヴァンはその傍らで何やら考え込んでいた。
「そうだな……」
 ふと、クリスマスにガラスのツリーに願った時の事を思い出す。この状況、似ている気がした。そして、ガルヴァンはその時の願い事をもう一度思い返す。
(ウィンクルムとしても、人としても、良好な関係を築けたら)
 そう思ったことは、今でも変わらない。嘘偽りなく、アラノアと良い関係を築きたいと心の底から願っている。……けれど。
 ほんの少しずつ、何かが変わっている気がする
(それが何なのかは、未だ掴めないが……)
 ……アラノアともっと良好な関係を築けたら、その答えもわかるだろうか?
 見上げた星に、そっと問うように願いをかけた。
 しゃら、と星が流れた。ガルヴァンが足元を見ると、そこには綺麗な苺色の金平糖。そっと拾い上げると、ガルヴァンはふと思い立ってそれをアラノアに差し出す。
「食べるか?」
 この想いを、少しだけ届けられるならば。
「い、いいの……?」
 アラノアは戸惑いを隠せず、目を泳がせる。
「ああ」
「えと……ありがとう……」
 短く返事をすると、アラノアは金平糖をガルヴァンの手からとり、口へと運んだ。
 ふわっと甘酸っぱい苺の香りが口いっぱいに広がる。瞳をキラキラさせて、アラノアは感想を伝えた。
「甘い、とっても美味しいよ」
 食べていないガルヴァンにも伝わるように、苺の味だよ、と付け加える。そんな彼女に、心が満ちるような感覚を覚えてガルヴァンはそっとその髪をぽんぽんと撫でつけた。
「……?」
 うっすらと頬を染めてきょとんとした顔で見上げてくるアラノア。この感情がなんなのかは、まだ、わからないけれど。


 ちょこん、と芝生の上に正座するとユズリア・アーチェイドは星空を見上げる。
「ショコランドは可愛らしいところですわね」
 見渡せば、キャンディの木やクッキーの石畳。大変にメルヘンで愛らしいもので埋め尽くされている。
「少女趣味ってーの? 痒くなるわ、こんなとこ」
 精霊、ハルロオ・サラームはユズリアの横に胡坐を組んで座ると、ぽりぽりと頬を掻いて見せた。
「尻が砂糖まみれなんだけど、これベタついたりしねえよな?」
 芝生の上の粉砂糖が、彼のお尻と尻尾にふわふわとまとわりつく。もぞりと座りなおすハルロオを見て、ユズリアは笑った。
「ふふ、落ち着きませんか?」
「落ち着かねーわ」
「ふふ」
「くそ、笑いやがって、お前最近性格更に悪くなってね?」
 じろ、と横目で見てくるハルロオをよそに、ユズリアは夜空を見上げ感嘆の声を漏らす。
「金平糖の流星群……普通の流星群も見たことはありませんが……これは壮大ですわね」
 流星群、その名の通り惜しみなく無数の星が頭上を滑ってゆく。きっといつまで見ていても飽きないだろう。そっと胸の前で手を組んで、ユズリアは願いを込めた。
「アーチェイド家の再興を」
「どうせお前の願いはそれだわな。知ってた」
 ニッと口の端をあげるハルロオ。顔を見合わせて笑う。そして、ハルロオも慣れない手つきでユズリアの真似をするように手を組んでみた。
「ハルロオは?」
「俺? 当然、金持ちになって成り上がることだ」
 夜空を流れる金平糖を真剣な瞳で追いながら、ハルロオは頷く。
「……だと思いましたわ」
 苦笑するユズリアに向きなおると、ハルロオは笑った。
「そこらへん二人共ブレねーよな」
 ころん、と足元に転がってきた金色の金平糖を拾い上げてユズリアは小さな唇に運ぶ。ピリ、と少し辛い、ハニージンジャーの香りが口内に広がった。
(――これが、わたくしの、願い)
 噛みしめるように、ユズリアはアーチェイド家の未来を思う。そして、顔をあげるとぽつりと呟いた。
「ブレないですわね……でもそれ以外のことはブレ始めた気がします」
 えっ、と驚きを隠せないハルロオの瞳を見つめて、ユズリアは続ける。
「ハルロオのお陰で、私は家に縛られない生き方というものもあるのだと気づけましたから」
 ふわり、と微笑むと焦った様子でハルロオは尋ねた。
「えっ、まさかユズ吉、家の再興しないとか……!?」
「再興はしますわ! さっき申しましたでしょ!」
 わたくしがアーチェイド家を捨てることなどありえないでしょう、とユズリアは慌てるハルロオに即答する。
「はぁよかった、マジ頼むぜ」
 安堵のため息をついてほぅっと肩の力を抜くハルロオはこう付け足す。
「俺はアンタに一点張りしてんだから……」
 もちろんその一点張りは成り上がりのための物だけれど。
 ハルロオは、じゃあ、家に縛られないってどういう意味だよ? と問う。
「そうでなく……兄様と結婚しない生き方もあると……」
「ああ、あいつな。あんな家乗っ取ろうとしてる奴なんか見捨てろ見捨てろ」
 けっ、と嫌悪感を顔に出してハルロオは吐き捨てるように言う。
「俺の成り上がりの邪魔だ」
 全部持ってく気だろ、あいつ。ハルロオは苦々しい顔でつぶやく。
 うつむき気味で、ユズリアは考える。
(貴方と結婚という道もあると……そう意識するとなんだかドキドキしますわ……)
 カァッと頬に熱が集まるのを感じて、ユズリアはきゅっと胸のあたりで拳を握った。
「……ズ、ユズ吉?」
「えっ」
 慌てて顔をあげると、そこにはハルロオの顔。
「おい、ユズ吉なんか顔赤いぞ?」
 何かを言い返す前に、ハルロオは顔を近づけてくる。
「風邪なんて引くなよ、めんどいから」
 こつん、と額と額が当たった。
 ハルロオはきっと何も意識していないだろうに、ユズリアの心臓の鼓動は無遠慮に高鳴る。
「ちょっと熱いか? さっさと帰んぞ」
 ユズリアの手を取り立ち上がるハルロオ。そして、薄暗い道のりを手を引いて先に歩いてくれる。
 紳士的な動きなんてできないのに、こんなときはしっかりとエスコートしてくれるのだ。
 ――ずるい。
(そんなまさか、これが恋?)
 まさか、まさか……。
 ユズリアは説明のつかないドキドキを抑えるのに、深く息を吸い込みもう一度夜空を見上げた。


 芝生の上に腰かけたルシエロ=ザガンは、ひろのに手招きをする。
「ヒロノ、こっちに来い」
「……?」
 こっち? と頭に疑問符を浮かべながら、ひろのはルシエロの傍らに腰を下ろす。
 ゆるりと首を横に振ったルシエロが笑った。
「隣り合うのも良いが、オレはこの方が好きだ」
(好きって、何がだろう)
 ことり、と首を傾げると、ルシエロの腕が伸びてきてあっという間に抱きすくめられてしまった。ひょいと持ち上げられ、そのままルシエロの脚の間に座らされる。背中をそっと柔らかく抱きしめられると、ひろのの頬が薄く染まった。
(またこの体勢)
 ひろのは緊張こそしているようだが、硬直していないあたり少し慣れてきたらしい。ルシエロは、その耳元にそっと囁く。
「嫌だったか?」
 楽しげな声に、ひろのは小さく首を横に振った。
「嫌じゃ、ない」
 けど……以前を想起させるから、恥ずかしい。
『嫌じゃない』と言う言葉に気をよくしたルシエロは、ひろのの帽子を優しく取ってそのつむじに軽く口づけた。
 一瞬、何をされたかわからなくてきょとんとするひろの。けれど、その柔らかな感触がなんだったのか一拍後にようやく気付き、耳まで赤くする。
(……ああ、可愛いな)
 背後からでもわかる彼女の可愛らしい反応に、ルシエロは頬を緩めた。振り返られなければ、この表情には気付かれまい。――本当は、唇にしたかったということも、きっと。
「流れ始めたぞ」
 ルシエロが、ひろのに空を見るよう促す。
「きれい」
 色とりどりの流れ星が、夜空を駆ける。
(流れ星、初めて見た)
 ほぅっと夜空に見とれるひろのに、ルシエロは笑いかける。
「これだけ多いなら、願いを叶える星が一つはあるかも知れんな」
「願いごと……」
 そういえば、考えていなかったな。とひろのは自分の願いを考え始める。
 ルシエロには星に託す様な願いは無い。自分で、叶えるからだ。けれど、その考え方を人に押し付けるつもりもない。人それぞれだから、ひろのに願いがあるのならばそれを見守ろうというように優しく微笑んだ。
(ルシェに恋人ができても、一緒にいたいって思うのは。やっぱりわがままかな……)
 急にせつなくなって、ひろのは無意識に自分の服の胸元をきゅっと握った。
(……叶うなら『ルシェとずっと一緒がいい』……)
 きらり、と星が一粒光った。そして、燃えるように輝きを放ちながら滑り降りてくる。
 ……何か落ちて来た?
 ひろのがころころと足元を転がる何かを見つめると、ルシエロはさっとそれを拾ってくれる。
「ほら」
「ありがとう」
 金平糖? ひろのは、手のひらの上に乗せられた黄色い金平糖を眺める。
 キラキラしていて、綺麗だ。これが、空を流れていた? それが、ここに降ってきた?
完全なるメルヘンの世界に、もう慣れてきてしまっていることに少し驚きながらも、ひろのは金平糖をそっと口に運ぶ。
(ちょっとすっぱい……)
 先刻のひろのの願いを受けて落ちてきた流れ星は、ひろのの願いのように少しばかり甘酸っぱかった。
 無意識に、ひろのはルシエロの手を探して、触れる。
 そして、そのぬくもりに触れてびくりと肩を震わせた。くす、と背後でルシエロが笑う息遣いを感じる。
 自分で手を触れておいて驚くひろのがなんだか愛おしくて、離れようとしたひろのの手をルシエロの一回り大きな手が覆う。そして、するり、と柔らかく絡め取った。
「!!」
(なんで、ルシェは私にこういうことするんだろう)
 意図がわからなくて、
 妙にドキドキしてしまって。
 ひろのは、その頬を真っ赤に染める。
 ――ショコランドの宵闇の中、流星群の明かりだけが、二人を照らしていた。


 レイナス・ティアは、嬉しそうに精霊ルディウス・カナディアに語りかける。
「星が……たくさん、降るんだそうです……! 願いを掛けると、金平糖が降るって……!」
 素敵ですよね、と微笑むレイナスは、ルディウスと一緒に同じものを見られるのがただただ楽しみで、嬉しくて、二人で同じ時間を共有できることに胸の高鳴りを感じていた。
 二人で芝生に座り込んで、キラキラと流れる流星群を見上げる。
 ぽつり、とレイナスが問いかけた。
「ルディウスさ……ルディウスの願いは、何ですか?」
 様、と言いかけ、直す。
「僕の願い、ですか?」
 煌めく星空の美しさに心を奪われ、ルディウスの中に思わず本音が浮かび上がる。
『今、この隣にいるのが幼馴染であったら良かったのに』
 どきり、とルディウスの心臓が跳ねあがる。
 いけない、こんな願い……。慌てて振り切って、消し去ろうとする思い。
 待って。まだ降ってこないで。
 その願いは空しく、ルディウスの足もとにころりと金平糖が降ってきた。
 ルディウスは、慌ててそのダークブラウンの金平糖をひっつかむ。その様子を見て、レイナスは彼の腕にしがみ付いた。遠くへ投げすてようとしたその手の中の金平糖を、無理矢理彼の手から奪う。握りしめた拳をこじ開け、まるで大切な宝物を奪い返すかのようにレイナスは金平糖を自らの手に取った。――そして、己の口の中へ。
 その様子を、ルディウスは唖然として見つめる。……奪われてしまった。そして、あんな残酷な願いを、彼女は食べてしまったのか。
 ――彼の願いならどんな思いも受け入れられる。そう、思っていた。
 けれど。
「……ふ……」
 ぼろり。
 レイナスの紫水晶の瞳から、大粒の涙が一滴、零れる。
 うっすらと甘く、そして、苦い。ビターなコーヒーの味? ……焙煎された、深い香り。お菓子にはそぐわない、少しきつすぎる苦みにレイナスはぽろ、ともう一滴涙を流す。
 それは、口に合わなかったからというわけではない。
 彼の願いは、今一番近くにいるはずの私では叶えられない願いなのだと、悟ったから。
 切なくて、悲しくて、わけもわからず涙があふれる。
 ――今、一番近くにいるのに。
 あふれる涙を拭い、もう泣かないと決めてレイナスは笑う。
「おいしい、です!」
 そんな彼女を見て、ルディウスは胸の奥がズキリと痛んだ。
(僕はなんて事をしてしまったのか)
 初めて、そう思った。
 酷い。……なんて、ひどい。
「おいしい、です……! まだ、いくらでも食べられ……ます!」
 そう言って無理に涙を押し込めるレイナスに、ルディウスは覚悟を決めて問う。
「あなたの、願い事は何ですか?」
 すると、レイナスはその瞳を瞬かせ、そしてそっと夜空を見上げる。
「……私の、願い事は」
『もっとお話したい。もっとあなたを知りたい、もっと……!』
 レイナスの願いが届き、星が流れた。
 足元に転がってきた真っ赤な金平糖を、ルディウスは戸惑うことなく拾って口の中へ入れる。彼女の願ったことはなんなのかわからないままだが、甘く、酔わせる媚薬のようなその味に、ルディウスは少し辛そうに微笑む。
「これで、おあいこですね」
 レイナスのまだ涙に潤む瞳が乾くまで、二人は夜空を見上げて一時の美しい時間に酔いしれた。


 七草・シエテ・イルゴは、流れる星々を見つめてぽつりと呟いた。けれど、その顔はなんとなく、心ここにあらず。ぼんやりと虚空を見つめている神人に、翡翠・フェイツィはそっと話しかける。
「あぁ、綺麗だな……シエ?」
 曇る神人の表情を覗き込み、翡翠は優しく背を支える。
「まだ、願い事が……決められません」
 ぎゅっと握りしめた拳が、小さく震えた。そして、ようやくこちらを向いたシエテは、ぽつり、ぽつりと話しはじめる。
「時々、不安に思うんです」
「ん?」
 どこまでも優しく自分を見つめている翡翠の瞳に、シエテは絞り出すように言葉をつづけた。
「自分がしてきた事は、ただの自己満足じゃないかって」
 翡翠は、小さく『そうかもな』と呟いた。彼女の思い、真剣な悩みを真っ向から否定することはしない。でも。
「その時は直せばいい」
「翡翠さん」
「戦いから逃げてるなら、戻ってくればいい」
 ここに、ちゃんと俺はいるから。彼の瞳がそう語る。
「苦しい事もある分、楽しい事もあるんだ」
 そうですね、とちいさくシエテは頷く。
「確かに楽しい事があるように、悔しい事もありました。いつも、いつの日も」
 そんな彼女をそっと見つめ、翡翠は目を細める。
「今までも、これからも」
 きちんと覚悟をして臨めば、それさえもきっと成長の糧になると翡翠は空を見上げる。
(これからも私達が成す事は、実になる)
 シエテはそう信じて瞳を閉じ、両手を合わせ、願いをかける。
「誰かの為に、何かの為に、私達が貢献出来ますように」
 ころり、とシエテの足もとに銀色の金平糖がやってきた。それを拾い上げ、じっと見つめる。
(この形、この色、そして香り……)
 そんなシエテを見つめていた翡翠も、彼女と同じようにして星に祈りを捧げ、落ちてきた金平糖を拾い上げる。それは、二人を包むトランスのオーラと同じ翡翠色の金平糖。シエテのそれと見比べ、翡翠は小さく呟く。――けれども、お互いにかけた願いは変わらないさ。
「ねぇ、シエはどう?」
 声をかけられてハッと我に返り、シエテは手のひらの上の銀色の金平糖を見せる。まるで、本当に空に輝いている星のような白い輝きに、翡翠は目を細める。
 シエテの願いはわかっている。そんな翡翠の願いは……
(――そんなシエを支える事)
「一人きりで成せない事でも、二人なら成せるから」
 その言葉に、縋るような、けれど決意を固めた視線でシエテは翡翠を見据える。
「今年もまた、一緒に歩んでくれるんですね?」
 その問いに、一呼吸置いて翡翠はしっかりと頷いた。
「もちろんだよ」
 閉ざされた心が、解きほぐされていく。後ろ向きになっていた思いにそっと寄り添って、前を向かせてくれる。シエテはホッとした表情で、そっと彼の肩に頭を預けた。
「だから、信じるんだ。俺達が成した事は、いつか誰かの役に立つって」
「はい」
 彼の声を心地よく胸にとどめ、シエテは空を見上げる。
 大丈夫、この人と歩んで行けば、きっと。




依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 寿ゆかり
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 3 ~ 5
報酬 なし
リリース日 01月21日
出発日 01月26日 00:00
予定納品日 02月05日

参加者

会議室

  • [6]ひろの

    2016/01/24-11:00 

    (脱字につき、再投稿しました)

    ひろの、です。よろしく、お願いします。

    流星群、見るの初めてだから。
    少し楽しみです。

    願い事は……、なんかあったかな。(呟く

  • [4]レイナス・ティア

    2016/01/24-00:30 

    は、初めまして……レイナス・ティアと…精霊のルディウス、様です……!
    落ちてきた、ルディウス様の…お願いで作られた、金平糖を食べてみたいと、思います…!!

    ど、どう皆さんかよろしくお願い致します……!

  • [3]アラノア

    2016/01/24-00:25 

    アラノアとパートナーのガルヴァン・ヴァールンガルドです。
    よろしくお願いします。

    この流星群、いろんな色と味の金平糖が降ってくるんですねぇ…
    願い事の味って、どんなものなんでしょうか?


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