【糖華】煌めくキャンディフラワー(りょう マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●Sweet Candy Flower
 店頭に並ぶ多種多様な花。しかし、普通の花とは異なり、キラキラと煌めいている。
 なんだろう?と近づいてみると、
「大切な人に、キャンディフラワーを贈りませんか?」
 キャンディフラワー——飴で出来た花を手にした妖精が声を掛けてきた。40cmほどの小さな妖精は、背中の蝶の羽根を羽ばたかせ、柔らかく微笑んでいる。売子であるらしい。
 キャンディニア王国の城下町だ。キャンディ類のお菓子の生産を多く行っているその町の一角に、飴細工で出来た本物そっくりな花を売る花屋があった。それが、ここ『Sweet Candy Flower』だ。
「キャンディ……これ、飴なの?」
「そうです。ご試食してみます?」
 言って、一輪のバラを差し出された。それを受け取り、眺めてみる。花も葉も茎も、全て飴で出来ているらしく、光を受けるとキラリと煌めく。
 花弁に触れ、僅かに力を加える。パキッと小さな音をたてて花弁が剥がれた。それを口へと運ぶ。すると、飴の甘い香りに混ざって僅かにバラの香りが広がった。
「美味しい……」
「ありがとうございます」
 売子は嬉しそうに言った。
「お一ついかがですか?キャンディフラワーにメッセージカードを添えて、バレンタインの贈り物にピッタリですよ!」
 うーん、と思案していると、売子が言葉を重ねてきた。
「バレンタインに贈る想いや言葉って、愛に限らないんですよ。普段は照れくさくて言えない、感謝の言葉でも良いんです。大切なのは、相手を幸せにする気持ちです」
「幸せにする、気持ち……」
 僅かに考え、そして答えた。
「それじゃ、一つ下さい」
 どうせならと、花束にしてもらう事にする。赤いバラの花に、白く小さなかすみ草を添えた花束だ。シンプルだが赤と白のコントラストが可愛らしい。
 出来上がった花束をこちらへと手渡しながら、売子は思い出したように言った。
「ああ、そうだ!お客さん、30年に一度の金平糖ナイトをご存知ですか?」
「え?」
 知らない、と首を振った。
「バレンタイン城の付近では、金平糖の流れ星がよく見られるんですけど、今年は30年に一度の大流星群がやってくる年なんです。きっと、素敵な光景が見られますよ」
 お礼を言って花束を受け取った。
 キラキラと煌めく花束。これを渡すのは、流星群の下が良いだろう。その光景を思い描いて微笑んだ。

解説

●概要
キャンディフラワーにメッセージカードを添えて、パートナーにプレゼントしてください。
金平糖の流星群が煌めく夜空の下で手渡します。

●消費Jr
購入費として400Jr消費します。

●キャンディフラワー
見た目は本物の花そっくりな、飴で出来た花です。見て良し、食べて良しです。
バラ、アネモネ、チューリップ……などなど、一般的なお花屋さんで扱う花は揃っています。
お好きな花を指定してください。
花束にする事も、一本だけ購入する事も可能です。値段は同じです。

●メッセージカード
一言、二言程度のメッセージを書く事ができます。
メッセージは愛の言葉でも日頃の感謝でも何でもOKです。

●その他
バレンタインイベント関連エピソードです。

ゲームマスターより

ご覧いただきありがとうございます。りょうです。

バレンタインですよー!テンション上がる。
チョコレートも良いけど、お花も良いよね!食べられたらさらに素敵だよね!ということで、キャンディフラワーです。
金平糖の星降る夜に、甘い花にメッセージを添えて、パートナーに贈りませんか?

皆様のご参加をお待ちしております。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

(桐華)

  お空のキラキラは金平糖なんだってね。凄いね桐華さん
で、そんなロマンチックな場所に遊びに行こうなんて珍しいね?
何か嬉しいお話でも、あったりするの?

飴の花?へぇ、きれい…
前に飴の指輪をつけたことはあったけど、これは、飾っておけそうでいいねぇ
ちなみに、何でこの花選んだの?
…特に意味は無いって、ふふ、君らしいや

アネモネかー…
素敵な言葉もあるけど、花自体には悲しい伝説があるらしいねぇ
はかない恋だとか、見捨てられるだとか…そういうのの由来
それに、紫のアネモネには「貴方を信じて待つ」って言葉があるからね
むしろ僕から君に贈りたいお花だよ?

…しあわせの後にはさよならが欠かせないんだよ
忘れないで。約束、でしょう?


アルヴィン=ハーヴェイ(リディオ=ファヴァレット)
  キャンディフラワーかぁ。
見ても食べてもいいって良い事尽くめって感じだね。
リディに贈ったら喜んでくれるかな…。

花はバラが良いかな。リディに似合いそうだし。
…うーん、沢山贈っても食べきれないってなったら嫌だし。
バラは贈る本数によっても意味が変わるみたいだし、二本が良さそうかな。
赤と白のバラで一応、二つの意味を込めて…って事で。

金平糖の流星群って何だか美味しそうな感じがしちゃうなぁ。
普通の流れ星みたいに何かお願いしちゃっても良いのかな?
願い事って言っても、リディが元気で幸せにいられるように…っていう感じかな。
…こういうのって、オレ次第な所もあるから願ってもいいのかわからないけど。


セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
  チューリップって本物も美味しそうな形してる、って思う事あるだろ?
元々の曲線が飴玉を彷彿とさせるというか。
それが本当にキャンディーで出来てるなんて、良いじゃん!
しかも普通の花より、小さいチューリップを見付けてさ。
コレだ!と閃いた。すげー美味しそうじゃん?
本物より少し小さくてミニチュアっぽいからレア感あるし。
きっとラキアが喜ぶぜ。
白、ピンクの単色の花と、下が白で段々赤く変化してるのを各2~3本ずつ使って花束にして貰った。
カードには『大好きだ!』と書く。

可愛い花だろ、と花束を渡すぜ

ラキアからもキャンディー貰えて嬉しい。
花の色が沢山あるんだな。
え、もっと沢山あるのか、それはスゲエ。

素直にあーん、する。


柳 大樹(クラウディオ)
  バレンタイン城で30年に一度の流星群。
雰囲気的にはロマチックってヤツなんだろうけど。
飴とはいえ、花を貰うとは思わなかったかなあ。

「似合わないもの持ってると思ったら、俺に?」
「お返しが欲しかった訳じゃないけど」
まあ、くれるって言うなら貰うけど。
メッセージもいつも通り。偶には別のこと書けば良いのに。

花を夜空にかざしても、日が出てないから透けたりもしないや。(少し残念
花びらの端っこ咥えて、割って口に入れる。
甘いし、匂いもする。手作りなのかな。よくできてる。
「クロちゃんもどう?」
「いいから食べなって」(ぐいっと、花をクラウの顔に近づける

「俺、花言葉とか知らないけど。なんか意味あったりする?」(ふと疑問


葵田 正身(うばら)
  青薔薇ってあります?
花束を作って貰うのにも指示を出させて頂いて。

待ち合わせはバレンタイン城下。
誘えば一言二言文句が返りますが結局は来てくれる、
そんな彼を待つ――心算だったのですが。

「随分早いな、まだ15分前だぞ?」
返答に野暮は言わず花束をうばらへ。
「何ってプレゼントだ。受け取ってくれるだろう?」

白薔薇の花束。
こうでもしないと受け取って貰えないかと思いまして。
メッセージカードには
『沢山の
星と
白薔薇と
青薔薇に
感謝の想いを添えて』

飴細工だそうだ。
星は、ほら。降り注いでいる訳だし。
……気付くのが早いな。うばらに隠し事は難しそうだ

いつも有難う。これからも末永く宜しく。
次の大流星群も共に見られるぐらいに。


●金平糖の星降る夜に
 バレンタイン城下町にある、広い公園。バレンタイン城を望めるその場所は、視界を遮る物がほとんどない。
 空を見上げれば、満天の星。そして、降り注ぐ金平糖の流れ星。それは、一つ二つではない。数えきれないほどの星が、流星群となって降り注いでいる。
 30年に一度の金平糖ナイトを一目見ようと、集まる人の姿は少なくない。


●星に願いを
「綺麗だねぇ」
 感嘆の声を上げたのは、アルヴィン=ハーヴェイだ。隣で同じように星空を見上げているリディオ=ファヴァレットも、同じように声を出す。
「うん、とても綺麗だね」
 夜空を幾筋もの光が流れていく。
「金平糖の流星群だなんて、何だか美味しそうだなぁ」
「そうだね」
 アルヴィンの呟きに、リディオはくすっと笑った。
「普通の流れ星みたいに、何かお願いしちゃっても良いのかな?」
「良いと思うよ」
「そうだよね」
 アルヴィンは手を組み、流れる星に願いを込めた。
(リディが元気で幸せにいられますように……)
 アルヴィンは、リディオの横顔を盗み見た。リディオは星空を見上げている。
(でも、こういうのはオレ次第だよね)
 リディオの幸せを望むのは、本当の気持ち。けれど、彼が幸せになれるかは自分の努力次第だと、アルヴィンはわかっていた。
 リディオはいつだって思いを素直に口にしてくれる。今日は、アルヴィンが伝える番だ。そう思って彼を誘ったのだ。
「リディ」
 名前を呼ぶと、彼は何?と此方を向いた。
「これ、プレゼント」
 差し出したのは、小さな花束。
 赤と白の薔薇が一本ずつ、計二本の薔薇の花は、薄ピンク色のラッピングペーパーを纏っている。結ばれたリボンは赤。
 薔薇の花が、月明かりを受けて僅かに煌めいた。
「キャンディフラワーっていうんだって。飴で出来てるから食べられるんだよ」
「アルが選んでくれたの?」
「うん。リディに似合うと思って」
 花束を受け取ったリディオはふわりと微笑んだ。
「ありがとう、アル。とっても嬉しいよ」
 言われ、アルヴィンは僅かに頬を染めながら微笑み返した。
「カードがついているね」
 花束に添えられたメッセージカードに気づいたリディオが、それを手に取った。

『何時も支えてくれて有難う』

 カードのメッセージを読むリディオの様子を、アルヴィンはどきどきしながら見つめた。声に出して伝えた訳ではないけれど、やはり照れてしまう。
 リディオは視線をアルヴィンに移した。
「こちらこそ、ありがとう」
 リディオは優しく微笑んだ。
 それがなんだかくすぐったくて、アルヴィンははにかんだ笑みを浮かべた。
「ほら、折角だから食べてみて。本物の花みたいで綺麗だけど、食べられるんだから」
 恥ずかしさをごまかす様に言うと、リディオはくすっと笑った。
 アルヴィンに促されるままに、リディオは赤い薔薇の花弁を一枚摘み取って、口へと運ぶ。
 その様子を、アルヴィンは眺めた。嬉しそうなリディオの表情に安堵する。どうやら、喜んでもらえたようだ。

 頭上を、星が流れている。
 自分次第なのはわかっているけれど、もう一つだけ、星に願いを。
 本当は、メッセージにはこう続けたかった。
『大好きだよ、リディ』
 それが出来なくて、代わりに花に想いを託した。
 赤薔薇の花言葉は『あなたを愛する』。白薔薇の花言葉は『尊敬』。
 2本の薔薇は『この世界は2人だけ』。
 アルヴィンは願う。どうか、花に込めた想いが彼に伝わりますように。


●赤色のガーベラ
 柳 大樹は空を見上げていた。夜空。星が降ってくる。幾つも幾つも……。
 30年に一度の金平糖の流星群。それは、ロマンチックという言葉がピッタリな光景なのだろう。けれど、自分たちには似合わない。そんな気がした。
 隣へと視線をやれば、夜と同化したクラウディオの姿。どうして彼は、自分をここへと誘ったのか。疑問だ。そして、疑問はもう一つ。彼の手にしている物は何なのか。
 頭の中に疑問符を浮かべていると、徐にクラウディオが手にしている物を差し出してきた。
「え?」
 差し出されたのは、一輪の赤いガーベラ。透明なセロファンと赤色のリボンでラッピングされている。
「似合わないもの持ってると思ったら、俺に?」
 首を傾げて問えば、クラウディオは静かに答える。
「物をもらった場合、返す必要があると知った」
 クリスマスの日に大樹から贈られた、赤いクッション。彼が自分用と称した青いクッションと並んで、気づけばクラウディオの部屋の一部になっている。
 大樹は2色のクッションを思い浮かべながら言った。
「お返しが欲しかった訳じゃないけど」
 それは理解しているとクラウディオは頷いた。花を用意したのは、自分が何かを返した方が良いと判断したからだ。
 大樹は此方に差し出された花と、クラウディオの顔とを交互に見ると、それを受け取った。
 花にはメッセージカードが添えられていた。

『護る』

(いつも通り……)
 大樹は僅かに苦笑した。彼の護衛であるクラウディオは、大樹を護る事を常に考えている。その事は大樹もよく知っている。だからこそ思うのだ。偶には別のことを書けば良いのにと。
 大樹は視線を花へと移す。そして気づいた。それがただの花ではない事に。
 月明かりを受けて僅かに煌めく花弁。
「飴で出来ているらしい」
 大樹はへー、と感心したように飴を眺めた。
(飴とはいえ、花を貰うとは思はなかったなあ)
「何で一輪だけ?」
「糖分の取り過ぎは身体に悪い」
 そんな事まで気にしなくても良いだろうにと、大樹は肩を竦めた。

 大樹は改めて飴のガーベラを眺める。丁寧に手作りされているのであろうそれは、本物の花のようだ。
 夜空にかざしてみた。日の光があれば、綺麗に透けて見えるだろう。残念ながら、月明かりでは無理そうだ。
 大樹は花弁を一枚咥え、パキッと静かに割った。そのまま口の中へと運ぶ。
 広がるのは、優しい甘さと、花の香り。
 花弁を食べているという不思議な感覚に、表情が緩む。
 大樹はじっと此方の様子をうかがっているクラウディオに、花を差し出してみた。
「クロちゃんもどう?」
「購入時に試食している」
 無表情に答えるクラウディオにの口元に、大樹は手にした花を近づけた。
「いいから、食べなって」
 クラウディオは押し付けるように迫ったガーベラを一瞥すると、仕方なさそうに花弁を一枚割り取った。口元を覆っている布を下げ、花弁を口へと運ぶ。
 甘い飴を口に含んでも、彼の表情に特別な変化は無い。
 クラウディオが食べるのを見届けてから、大樹は手の中の花を眺めた。
 ガーベラの花。なぜクラウディオはこの花を選んだのかと、大樹は疑問に思った。
「俺、花言葉とか知らないけど。なんか意味あったりする?」
 クラウディオは口布を元に戻すと、静かに首を振った。
「花言葉というものは私も知らない」
 目についた物を購入しただけだと言えば、大樹はそうか、と応えるだけ。
 花に込められた意味を期待していた訳ではない。けれど、なぜだろうか。少しだけ残念な気がするのは。
 
 赤色のガーベラ。それが意味するのは『愛情』。
 それを知らない彼らを寂しがるかのように、花弁の欠けたガーベラが静かに煌めいた。


●互いの気持ち
 星が降り注いでいる。セイリュー・グラシアは寝転んで星空を見上げていた。その隣に座るラキア・ジェイドバインもまた、空を見上げている。
 数えきれないほどの流れ星。それらは金平糖であるらしい。
 本当に金平糖ならばぜひとも食べてみたいなと、セイリューがポツリと言えば、ラキアがくすっと笑う。
「あの金平糖を食べさせてあげるのは無理だけど、代わりなら」
 セイリューは体を起こすと、え?と視線をラキアに向けた。
 ラキアが差し出したのは、ガーベラの花束。
「本物そっくりだけど、キャンディだから食べられるよ」
 白、ピンク、赤、黄、オレンジ……色取り取りのガーベラの花束。オレンジ色のラッピングペーパーに包まれ、黄色のリボンが結ばれている。
 それを受け取ると、セイリューは嬉しそうに笑った。
 ガーベラの花言葉は『希望』、『常に前進』。それは、とてもセイリューに似合う言葉だと思い、ラキアはこの花を選んだ。
 もっとも、セイリューはそんな事は気にかけない性質である。彼は純粋にカラフルな花束を楽しんでいる様子だ。
「花の色が沢山あるんだな」
「本物のガーベラはもっと沢山の色があるんだよ」
「え、そうなのか、それはスゲェな!」
 素直な感想を口にするセイリューが次に目にしたのは、花束に添えられたメッセージカード。
 セイリューはカードを手に取った。

『毎日が楽しいよ』

 ラキアからのメッセージに、セイリューは夜空のどの星よりも明るく答えた。
「オレも、毎日が楽しいよ。有難う、ラキア!」
 その言葉に、ラキアは優しく微笑んだ。

 ひとしきり目で花束を楽しんだセイリューは、次は口で楽しもうと、花束からガーベラを一本抜き取った。そのままかぶりつこうとするのを、ラキアは笑って制止した。
「一枚ずつゆっくり食べよう?」
 ラキアはガーベラの花に手を伸ばすと、花弁に触れた。パキッと割り取る。
「はい、あーん」
 セイリューに差し出せば、彼は僅か驚いた様子。
「皆、流星群を見上げているから誰も見てないよ」
 ラキアが笑って言えば、セイリューは素直に口を開けた。
「あーん」
 ラキアは花弁をセイリューの口へと運ぶ。
「美味しい?」
「うん。甘くて美味しい」
 にこりと笑い合う。
 すると、徐にセイリューが何かを取り出した。
「オレからも。可愛い花だろ?」
 彼が手にしているのは、チューリップの花束。セイリューもキャンディフラワーを用意していたのだ。
 ラキアはそれを受け取った。
 白、ピンク、白から赤へとグラデーション。それらの色のチューリップの花は小さい。
 まるでミニチュアの様な小さく可愛らしいチューリップの花が、ラキアを見上げて煌めいていた。
「本物のチューリップもさ、曲線が飴玉みたいで美味しそうな形してる、って思うことあるだろ?」
 セイリューの言葉に、ラキアはクスクスと笑いながら、そうだね、と答えた。
「それが本当にキャンディで出来てるなんてさ!すげー美味しそうじゃん?」
 言われてみれば、茎の先に飴玉がついている様に思えてくる。
 チューリップには愛に関する花言葉があるのだが、セイリューはそのことを知らないだろう。美味しそうだからという理由で花を選んだというのは、彼らしいとラキアは思う。
 チューリップの花束には、ラキアが送った花束と同じく、メッセージカードが添えられていた。
 ラキアはカードに視線を落す。

『大好きだ!』
 
 それはとても真っすぐな言葉。ラキアは花のように笑った。


●末永く宜しく
 葵田 正身は待ち合せ場所へと向かっていた。手にした大きな花束は、キャンディフラワーの売子に細かく指示を出して用意した代物だ。
 時刻を確認すれば、待ち合せ時間の15分前。少し早めに着いたならば、一言二言の文句を言いながらも、最後には誘いに乗ってくれた彼の事を思いながら待つつもりでいた。しかし。
「随分早いな、まだ15分前だぞ?」
 待ち合せ場所には、約束の相手の姿が既にあった。
「待ち合わせ時間、間違えただけだ」
 うばらはぷいっと横を向いて、素っ気無く答えた。
 実のところは、待ち合せ時間の30分前には到着していたのだ。他者を優先させる彼らしい行動であるが、それを知られることを、良しとしない。
 うばらは、葵田は待ち合わせには早く来るタイプなのだな、と記憶する。
(次からはみつからねぇように待とう……)
 内心そう決意した。
「で?その手の物は何だ?」
 正身が手にしている大きな花束を顎で示せば、彼はにこりと笑う。
「何って、プレゼントだ。受け取ってくれるだろう?」
 差し出された花束を、うばらは横目で確認する。
 白色のラッピングペーパーを綺麗に纏い、クリーム色のリボンが結ばれた、白薔薇の花束。
 それは普通の花とは異なるようで、キラキラと輝いている。何だこれは?と訝しんでいると、飴細工の花だと説明された。
 月明かりの下で遠慮がちに光るキャンディフラワー。
(俺が花束なんて受け取らねぇのを見越しての花のチョイス……)
 白薔薇。それは、うばらの兄、いばらを意味する花。それをうばらが無下にするかといえば、答えは否だろう。
 うばがら思い出すのは、今日の約束を取り付けてきた電話での会話。口が上手いとは思っていたが、こういう事まで上手いのかと、悔しいながらも感心せざるを得ない。
 正身の顔を窺えば、笑みを浮かべている。それが余裕の表情に見えるのは気のせいだろうか。
 うばらは渋々といった体で花束を受け取った。
 抱えるほどの大きな花束には、メッセージカードが添えられていた。

『沢山の 星と 白薔薇と 青薔薇に 感謝の想いを添えて』

「たくさんの星と、たくさんの白薔薇と……」
「星は、ほら。降り注いでいる訳だし」
 言って、正身は空を仰ぐ。つられて、うばらも夜空を見上げた。
 金平糖の流れ星が煌めいた。
(星……。なら、白薔薇は……)
 それは、この白薔薇の花束を指すのだろうかと、視線を手元に移す。
 やけに大きな花束だ。その中に、少し違う輝きを見た気がして、うばらは白薔薇をかき分けた。
 そこには、小さな青薔薇達が、やっと見つけてもらえたとでも言うかの様に、静かに輝いていた。
「……青薔薇も、たくさんか?」
 青薔薇を一本を引き抜いて正身に示すと、彼は僅か肩を竦めた。
「気づくのが早いな。うばらに隠し事は難しそうだ」
 油断ならないな、と言う彼に、それはこっちの台詞だとうばらは胸中で毒突いた。
「まぁ、何が言いたいかって……」
 正身は咳払いを一つ。
「いつも有難う」
 星降るロマンチックな夜だから、こういう事を伝えても良いじゃないか。
 正身はうばらに微笑んだ。
「これからも末永く宜しく。次の大流星群も共にみられるぐらいに」
 最後は少し冗談めかして言えば、うばらは僅かに笑ったようで。
「30年に一度って聞いたぜ?その時には、葵田なんかジジイじゃねぇか」
 皮肉気に言って、腕の中の花束を一瞥する。
 沢山の白薔薇。そして、沢山の青薔薇。
 うばらはとても小さな声で呟いた。
「まぁ、宜しく」


●二人の約束
 公園に幾つか設置されているベンチ。その内の一つに並んで腰掛けた叶と桐華は、夜空を見上げていた。
 瞬く星と、流れる星。
「お空のキラキラは金平糖なんだってね。凄いね、桐華さん」
 叶は空を見上げたまま、ここに自分を連れて来た張本人である桐華に声をかけた。桐華は、そうだな、と空を見上げたまま答えた。
 叶は桐華へと顔を向けた。
「で、そんなロマンチックな場所に遊びに行こうなんて珍しいね?」
 何か嬉しい話でもあるのかと問いかける。
「ロマンチック……まぁ、たしかにそうだけど」
 辺りを見渡せば二人組の姿は少なくない。
 キラキラと輝きながら流れる星達、それを見上げるカップル。それはとても絵になる光景だ。
 30年に一度訪れる金平糖の流星群。金平糖ナイトとまで呼ばれるそれは、ロマンチックに違いない。だが……。
 桐華は叶を見返した。
「ロマンスもときめきも、そんな期待はしてないんだろ?」
 叶はただ薄く笑うだけだ。
 桐華は一つ息を吐いてから、一輪の花を取り出した。
 ラッピングもメッセージカードも不要と言って購入した、紫色のアネモネの花。まるで、どこかから摘み取ってきたばかりの様なそれを、叶へと差し出す。
「キャンディフラワーというらしい。飴で出来ているんだそうだ」
「飴の花?へぇ、きれい……」
 花を受け取り、叶はそれを見つめた。
「前に飴の指輪をつけたことはあったけど、これは、飾っておけそうでいいねぇ」
 月明かりにかざしたり、くるくると回したりして花を眺める。その瞳は、何かを思案する様な色を帯びている。
「ちなみに、何でこの花を選んだの?」
「意味は特に……。ただ、その花がお前の眼の色に似てたから」
 それだけだと桐華が答えると、叶はふふっと笑った。
「特に意味は無いって、君らしいや」
 その笑みが、ふっと消える。
「アネモネかー……。素敵な花言葉もあるけど、花自体には悲しい伝説があるらしいねぇ」
 『期待』という花言葉がある一方で、『はかない恋』、『見捨てられる』という意味を持つ由来となった、悲しい伝説。
 それに、と叶は続ける。
「紫のアネモネには、『貴方を信じて待つ』って言葉があるからね」
 叶はにっこり微笑み、アネモネの花を持った手を桐華へと向けた。
「むしろ僕から君に贈りたいお花だよ?」
 桐華は叶の瞳と、アネモネとを見比べた。そして、此方に向けられた手を押し戻す。その花はお前の物だ、とでも言うように。
「言っただろ。お前の眼の色に似てるって。その花に、どんなに悲しい意味や苦しい意味があったって構わないんだよ」
 俺とお前との間に何があっても構わないのと、同じだと桐華は言う。
 アネモネの伝説を桐華は知らないが、物語には終わりがあるはずだ。
「どんな物語も、最後にはあいしあってしあわせになって、めでたしめでたし。だろ?」
 違うよ、と叶は泣き笑いの様な顔で、桐華の言葉を否定した。
 アネモネ——命を落とした愛する人。その人が流した血から生まれたといわれる花。
「……しあわせの後にはさよならが欠かせないんだよ」
 僅か、叶の手に力がこもる。
「忘れないで。約束、でしょう?」
「……忘れてないさ」
 叶との約束。叶を幸せにすると誓った。そして最後は——。
 桐華は叶の言葉を反芻する。
『しあわせの後にはさよならが欠かせない』
 その結末を、叶は良しとしているのだろうか。
(それを不満だと思うなら……殺さずに済む望みはあるんだろうけど)
 桐華は、叶の手の中で軋み出すアネモネの花を見た。
 どうか、そんなに力を入れないでくれ。壊れてしまうから……。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター りょう
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ロマンス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 01月21日
出発日 01月28日 00:00
予定納品日 02月07日

参加者

会議室

  • [3]葵田 正身

    2016/01/27-23:36 

    葵田と申します。同行の精霊は、うばら、です。
    宜しくお願いします。

    ストレートにバラの飴を選択しようと思っていますが、
    素直には受け取って貰え無さそうですので、一工夫ですかね。

    素敵な時間が過ごせます事を。

  • [2]叶

    2016/01/27-20:44 

    桐華:
    愉快な叶と、桐華だ。よろしく、な。

    甘い物が好きで、花とかも結構好きらしい神人に丁度いいと思って、なんとなく選んでみてる。
    そんな詳しくもないし、適当になりそうだけど…
    まぁ、どれ選んでも最終的には食えるんだし、なんでもいいよな。

  • [1]柳 大樹

    2016/01/24-11:06 

    クラウディオ:

    クラウディオだ。
    ……。(他に何を言えば良いのか考え中

    よろしく頼む。


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