プロローグ
「元柱固真。八隅八気。五陽五神。陽動二衝厳神。害気を攘払し、四柱神を鎮護し、五神開衢。悪鬼を逐い、奇動霊光四隅に衝徹し、元柱固具。安鎮を得んことを、慎みて五陽霊神に願い奉る――」
陰陽師が朝に唱えるとされる呪文を詠唱し、男は「ふぅ」と息を吐いた。
「さて、と。……どうしたものか」
年末年始の大掃除、並びに大祓えを行ったばかりの神社に、ふよふよとケサランパサランのようなモノが浮遊している。
所謂幽霊ないし、物の怪。
今は実害がないが、放っておけば強大な凶災になりかねない。霊的なもので起こる災い――霊災が起こってもおかしくないだろう。
祓うのはとても簡単で、木気をもつこの物の怪は、火気を持つ呪術で焼き払ってしまえば良いのだが、なにより量が多い。
一気に焼き払うのも出来なくはないが、呪力を大量に使うので、非常に疲れる。
もっと言えば、
「めんどくさい」
男は「はぁ」とだるそうに溜息を吐き、物の怪を一瞥する。
自分でやるのは面倒だし、人を雇うのはお金がかかるので更に嫌だ。
「あー、金が儲かってしかもこいつ等祓える方法ないかなー」
ダメ人間発言をしつつ、じーっと物の怪を睨みつける。
すると、ふと良い案が降ってきた。
物の怪を祓う行為を、アトラクション感覚にすれば良いのではないか?
「……でもアレか。見鬼の才能とか、霊視とか出来ないとダメなのか」
思いついた案を冷静に分析し、またもハッと顔を上げる。
あるじゃないか、一時的に見鬼に出来る方法が!
「ふっふふふ……これで楽できるぞ!」
男は高らかに笑いながら、さっそくパソコンを開き、チラシを作成し始める。
物の怪はその様子を見て、苦笑するようにふわりと漂った。
解説
・物の怪を、焼き祓い、遊ぶエピソードです。
物の怪を祓魔しつつ、陰陽師になりきって遊ぶのが目的なので、ダメージなどはありませんし、辛い戦闘にはなりません。
・呪術などを、他に何か使いたい、という方が居りましたら、プランにその旨と、使用用途を記載してください。
・物の怪は基本的にふよふよと漂っているだけですが、大きくなって柔らかく相手を吹き飛ばす行動、服に入り込んでくすぐってくる、鼻にあたってむずむずする、耳にあたってぞわっとする、など微妙な行動しかしません。
・不動明王の火界咒「ノウマク・サラバタタギャテイビャク・サラバボッケイビャク・サラバタタラタ・センダマカロシャダ・ケンギャキギャキ・サラバビギナン・ウンタラタ・カンマン!」
もしくは、
「火行符!『急急如律令』!」(急急如律令での省略化)
と、唱え、物の怪を焼き祓います。
前者がたくさん焼き祓う時、後者が前者よりもやや火力が低いです。
たくさん居るので、どんどん焼き祓いましょう!
・呪符費として、500jrいただきます!
・神社が広いので、他の参加者さんとは絡みはありませんが、絡みたい、ということでしたらご報告ください。
・では、陰陽師になりきって、遊んでいちゃいちゃしちゃってください!
ゲームマスターより
どうも、東雲柚葉です!
今回はウィンクルムが、陰陽師となって遊ぶというエピソードです!
危険なエピソードでもないですし、そもそも擬似戦闘なので、アドベンチャーでもありません!
服に物の怪がっ! とか、耳をくすぐられた神人の反応で精霊ドキドキとか、そんな感じですね!
ただ、呪術を使って物の怪をどんどん祓ってはほしいので、
お好きなだけ呪術を使って敵を祓いまくってください!
では、宜しく申し奉る!
リザルトノベル
◆アクション・プラン
かのん(天藍)
ふよふよ浮いてるこれを祓うのですね 触ったらふかふかしているのでしょうか? 見た感じ実害なさそうですけれど… 祓魔を行う様子がないからか、ふよふよしたのが彼方此方から寄ってきて集られくすぐったさに閉口 単体ならともかく集まると厄介ですね… (自力で払い避けるには持て余す量に上目遣いで)…天藍助けてください ごめんなさい、助かりました… 物の怪から解放されほっとしつつ、悪い影響が無さそうで良かったと天藍からポンポンと軽く頭を撫でられ目を細める 気を取り直して頑張ります 1つ1つ祓うのが確実なのでしょうけど、挟み撃ちするように纏めて祓ってみます? 天藍が火界咒唱えて焼き払う様子を見て、陰陽師の衣装似合いそうですよねと |
ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)
コスチュームとかあれば、もっと盛り上がったのになぁ ディエゴさんきっと似合いますよ! ここはやはりドーンと派手に焼き祓っちゃいましょう 悪霊退散、いざ、レッツゴー 不動明王の火界咒! ノウマク…サラバタタギャテイビャク、サラバボッケイ…わわっ 服の中に入ってきました、もぞもぞします! 助けてください! ふぅ、ありがとうございます うーん…言いにくいですねこの呪文 だけどもう一回チャレンジしてみます! ノウマク・サラバタタギャテイビャク・サラバボッケイビャク・サラバタタラタ・センダマカルッ…舌かんじゃいました い、痛いです、ガリッといきました 診てもらえませんか… さっきから馬鹿にしますけど ディエゴさんは言えるんですか? |
シルキア・スー(クラウス)
事前に係り員に 見鬼の才は無いのでどの様に物の怪を察知すれば良いのか聞き 呪文の読み方習う 実践 クラウスが華麗に実践してるの見惚れる (ほわわカッコイイ…私だって! えーと『ノウマク・サラダバー? 覚えられない+カミカミ がばりされ 動悸 混乱 (ええええー!? だ…大丈夫!怪我しないって説明あったし (ここはありがとうでしょ私! 彼のサポートに従い発動された炎に感嘆 これ…すごい! サポート受けながら二人で掃っていく 彼に背中から覆われる形になったり(ひええ 手を繋いでダンスでも踊っている様な形になったり(シャルウィ? 顔が近かったり(きゃあー近い近いっ 終了後 密着度思い出し(心臓壊れる~っ しばらく彼の顔が見れなかった |
エリー・アッシェン(モル・グルーミー)
心情 モルさん、呪術ですって! うふふっ! ぞくぞくワクワクしちゃいますねぇ……。 怪奇を目にしてはしゃぐオカルト1 行動 可能なら陰陽師のコスプレ(無理なら諦める) 呪符をキラキラした目で観察して頬ずり。 うふふ、素敵ですね。 私は物の怪退治に専念するので、モルさんとは一時的に別行動になりそうです。 ふよふよ漂う無害な物の怪を恍惚の笑みで見た後、容赦なく怒涛の火界咒。 コーデの扇子を持って、事あるごとにいちいちドヤ顔でかっこつけます。 物の怪が逃げれば、追いかけていきますよ! っと、モルさんと合流ですね。 いえ、私は何も見ていないです。 四十過ぎの男性が情けない声を出して膝から崩れ落ちていく場面など、記憶にございません。 |
アラノア(ガルヴァン・ヴァールンガルド)
火属性に火の呪術…強くない筈がないっ(キリッ 術とか魔法に憧れてたのでテンション上げ気味 試しに一発… 火行符!『急急如律令』! 出来た…! 今度はなるべく固まってる方を狙う ノウマク・サラバタタギャテイビャク・サラバボッケイビャク・サラバタタラタ・センダマカロシャダ・ケンギャキギャキ・サラバビギナン・ウンタラタ・カンマン! た…楽しい…! この調子でどんどん焼こう…! ノウマク・サラバタタギャテイビャ… 詠唱途中で耳に物の怪が ひゃぁっ…?! 思わず体が跳ねる あう…ご、ごめん…(耳を擦りつつ 私…どうにも耳が駄目なんだよね… えっ…?! 珍しく取り乱す精霊に驚く え、あ、うん… ガルヴァンさんでもあんな声出るんだ…(ドキドキ |
☆かのん 天藍 ペア☆
神社の境内にて、かのんと天藍はふよふよと漂っているケサランパサランのような物の怪をもの珍しそうに眺めていた。
「ふよふよ浮いてるこれを祓うのですね」
受け取った呪符を見やり、もう一度物の怪に視線を戻す。
天藍は、境内の至る所で漂う物の怪をぐるりと見渡し、その数の多さにやや辟易とした様子で、
「有象無象も集ると厄介ってこういう事か」
神主の話によれば、単体では実害がないとのことだったが、小さな力も集まれば大きくなる、塵も積もれば山となるというやつだ。
「触ったらふかふかしているのでしょうか?」
触ったらとても柔らかそうで、気持ちよさそうな物の怪に好奇心を刺激され、かのんは物の怪にふと手を伸ばした。
「見た感じ実害なさそうですけれど……」
「ああ、かのん、無防備に手を伸ばさない方が良い――」
天藍が言った矢先に、かのんの周りにふよふよした物の怪が彼方此方から集まり始めた。どうやら、祓魔を行う様子のないかのんに、彼等なりに害を与えているようだ。
とはいえ、この物の怪が出来ることと言えば、その身に宿すふわふわとした毛で人をくすぐるぐらいなので、怪我をすることはないのだが、
「ひゃっ!?」
触られると、非常にくすぐったい。
かのんの首筋と耳元で浮遊する物の怪が、その毛でくすぐり、かのんはくすぐったさに短く悲鳴を漏らしながら身をよじる。
言わんこっちゃない、と天藍はその様子に苦笑を呈した。
「単体なら、ともかく集まると厄介で、すねっ……」
かのんが呪符を取り出し、自力で脱出しようとするも、自力で祓うのには数が多く対処しきれない。
耐え切れなくなったかのんが天藍を上目づかいで、
「……天藍助けてください」
やや紅潮した頬と、くすぐったさで若干涙目になっているかのんに、天藍は二つ返事で首肯した。
かのんを助けるにしても、火界咒で焼き祓ってかのんを巻き添えにしてしまうことは避けなくてはならない。そう考えた天藍は、物の怪を引き離すために摘まんでは放ってを繰り返す。
すると、掌に置いていた呪符の上に四匹の物の怪が集まったので、「急急如律令」と唱えてみる。すると物の怪はきれいに祓われ消え失せてしまったので、これなら、とかのんの周囲にいる物の怪を祓ってゆく。
次第にかのんにくっついていた物の怪が離れて行き、ようやくかのんが解放される。
「ごめんなさい、助かりました……」
解放されたかのんを天藍が確認するが、呼吸を少し乱しているだけで特に悪い影響は出ていないようだ。
解放され、かのんがほっとしていると、
「大丈夫そうだな。安心した」
と、天藍が安堵した表情のままかのんの頭をポンポンと優しく撫で、かのんは撫でられてふと目を細めた。
気を取り直して祓ってしまう、と二人で態勢を立て直して呪符を取り出し「急急如律令」と唱えて物の怪を祓ってゆくが、キリがない。
「1つ1つ祓うのが確実なのでしょうけど、挟み撃ちするように纏めて祓ってみます?」
さらに増える物の怪の様子を見て、天藍はその提案に首肯する。
「そうだな。やってみるか」
二人で両手を広げ、無防備な姿を見せてみると、やはり物の怪はこちらに少しずつ集まってきた。
天藍は、すっとポケットからなにやら呪符ではない紙を取り出す。不動明王の火界咒の呪文をメモったカンペだ。
「ノウマク・サラバタタギャテイビャク・サラバボッケイビャク・サラバタタラタ・センダマカロシャダ・ケンギャキギャキ・サラバビギナン・ウンタラタ・カンマン――」
天藍の放った呪符から大量の火が放たれ、一陣の業火が物の怪達を一挙に焼失させてゆく。
業火によって巻き上げられた空気が吹き抜け、天藍の衣服と髪をバサバサと揺らす。
その姿を見て、かのんはふと思う。
「天藍は、陰陽師の衣装似合いそうですよね」
「ん?」
火界咒の燃え盛る音で聞こえなかったのか、聞き返す天藍にかのんは、
「なんでもないです」
と、ふと微笑みながら呟いた。
☆ハロルド ディエゴ・ルナ・クィンテロ ペア☆
「巫女服と狩衣あるけど巫女服の着付けとかわからないから検索して」
殆ど投げやりな形で、神主がハロルドとディエゴ・ルナ・クィンテロに巫女服と狩衣を手渡した。
苦笑しつつもハロルドが巫女装束の着付けをパソコンで検索。
案外手軽にさっと着てしまい、ディエゴも神主に教わりながら着付けを終わらせた。
「ディエゴさん似合いますね!」
厳粛な雰囲気を漂わせる狩衣がディエゴの雰囲気に合っており、歴戦の呪術師のように見える。
「ハロルドも、似合ってるぞ」
ハロルドもミステリアスな雰囲気が巫女装束の神掛った雰囲気にマッチしていて、とても似合っている。和装下着を身に着けていても胸部が強調されているのは、ハロルドが人より胸が大きめな所為だろう。
「悪霊退散、いざ、レッツゴー!」
ハロルドが、怨霊や物の怪に困ったときに言いそうな叫び声をあげて、物の怪達の前に躍り出る。
「ここはやはりドーンと派手に焼き祓っちゃいましょう」
ハロルドは呪符を取り出してすぅ、と息を吸う。
「ハロルド、いきなりその呪術使うのか? 急急如律令、とか簡単なものから始めたほうが良くないか」
「問題ありません!」
やる気に満ち満ちた声色で断言するハロルドに、ディエゴは苦笑を漏らす。
「まあ……勢いだけは良いな」
呪符を握り、ハロルドがついに呪文を叫ぶ。
「不動明王の火界咒! ノウマク・サラバタタギャテイビャク・サラバボッケイ……わわっ! 服の中に入ってきました、もぞもぞします!」
が、呪文の途中で物の怪がハロルドの巫女装束に飛び込み、くすぐりはじめた。
「助けてください!」
「……何やってんだ」
呆れ気味にディエゴが呪符を取り出し、ハロルドの襟首から入っていた物の怪を――手を入れていいものかと悩んだが、これは仕方ないだろうと己に言い聞かせながら――掴み、呪文を唱える。
「火行符、『急急如律令』」
焼かれた物の怪は祓われ、辺りに漂っていた物の怪も嫌がるように離れていった。
「これだけでも追い祓えはするんだな、大丈夫か?」
「ふぅ、ありがとうございます」
ディエゴが物の怪から解放されたハロルドの無事を確認し、身体の自由が取り戻されたハロルドは、物の怪に再び視線を移し、
「うーん……言いにくいですねこの呪文」
「そんなに言いにくい呪文なのか? お前、舌回らないだけじゃあ?」
ハロルドは呪符を三枚手に取り、もう一度呪文の詠唱準備をする。
「だけどもう一回チャレンジしてみます!」
「もう一回やるのか、頑張れ」
呪符を空中に放り、神経を集中させ鋭い視線を物の怪に向けつつ呪文を詠唱。
「ノウマク・サラバタタギャテイビャク・サラバボッケイビャク・サラバタタラタ・センダマカルッ……舌かんじゃいました」
物の怪すら心配しそうなほどの大きな音が境内に響き渡る。
「い、痛いです、ガリッといきました。診てもらえませんか……」
「……思いっきり噛んだな、見せてみろ」
ディエゴの元に駆け寄り、ハロルドが小さく舌を出す。ディエゴは真剣な表情でハロルドの舌をじっと見つめる。
「血は滲んでないな……家帰ったら薬あるから、それを塗れば大丈夫だ」
そして、ディエゴはハロルドの無事を確認し、
「いや、何度見てもこの呪術がそこまで言いにくい風には見えない」
ディエゴのその言葉に、むっとした調子でハロルドが、
「さっきから馬鹿にしますけど、ディエゴさんは言えるんですか?」
「俺が言ってみるから、見とけよ」
呪符を取り出し、眼光を鋭くするディエゴ。集う物の怪を一気に消滅させるべく呪文の詠唱準備をする。
その双眸に物の怪を映し、蔓延る敵を殲滅せんと息を吸い――、
「ノウマク・サラバタタギャチッ……」
思い切り噛んでしまったディエゴは赤面を浮かべつつ、ハロルドのにやにやとした視線から顔を背ける。
そして、今まで小馬鹿にしたのを詫びるようにして、
「……こんな日もあるだろ」
そう、ぼそりと漏らした。
☆アラノア ガルヴァン・ヴァールンガルド ペア☆
ふよふよと漂う物の怪を見て、なにより神主から渡された呪符を手に取って。アラノアのテンションは振り切っていた。
「火属性に火の呪術……強くない筈がないっ」
真剣な表情かつ高揚した気分が、アラノアの表情に浮き彫りとなっている。
「いつになく張り切っているな……」
ガルヴァン・ヴァールンガルドは、テンション上がり気味の神人を珍しく眺める。すると、アラノアが興奮気味に、
「だって、楽しそうだよ!」
と両手の拳を握ってガルヴァンに輝く瞳を覗かせる。
(やはり慣れない剣よりも、こちらの方が神人の性に合っているのかもしれないな……)
そんなガルヴァンの懸念に気づくことなく、アラノアは呪符を一枚取り出して物の怪の眼前に立ち塞がる。
「試しに一発……」
境内に漂っている霊気を呪符に集約させ、呪力を練り上げていく。
アラノアは十分に呪力の籠った呪符を物の怪に投擲し、
「火行符! 急急如律令!」
呪符から火の手が上がり、木気を宿している物の怪は火気を宿す呪術に焼かれ、数秒も立たない内にその姿を焼失させた。
「出来た……!」
アラノアの口から無意識に零れ落ちるかのように歓喜の声が漏れた。呪符を握っていた手を見つめて、自分が目の前で発生した攻撃を繰り出したのだと再認識する。
「この調子でどんどん焼こう……!」
今度は、大技だ。アラノアが呪符を数枚取り出して、物の怪に対峙する。
「ノウマク・サラバタタギャテイビャ……」
真剣そのものの表情で呪文を詠唱するアラノアに、物の怪がふわりと近寄り、耳にそっと毛先を触れさせた。
「ひゃぁっ……?!」
短い悲鳴が零れ落ち、思わずアラノアの身体が跳ねる。
耳を抑えて蹲ったアラノアの手から呪符を取り、ガルヴァンがアラノアの耳に触れた物の怪に向かって呪符を投げつけた。
「――急急如律令。……大丈夫か?」
物の怪が燃え消え、ガルヴァンはアラノアの手を引いて優しく立ち上がらせる。
「あう……ご、ごめん……」
アラノアはやや紅潮した頬で耳を擦りながら、
「私……どうにも耳が駄目なんだよね……」
「耳が弱いのか……」
ガルヴァンの意識が無意識にアラノアの耳に向く。
すると、何故か頬を染めて耳を擦っているアラノアの様子に胸の奥がざわつく感覚を覚えた。敵の気配を感じた時のそれとはまた違う、不思議な感覚だ。
その正体がなんなのかが分からず、ガルヴァンの頭上に疑問符が浮かぶ。
(最近感じるこの感覚は何だ……?)
思考を巡らせていると、風に乗って漂う物の怪が今度はガルヴァンの元へと近寄り、不意を突く形でガルヴァンの尻尾に物の怪が触れた。
「ふあっ?!」
「えっ……?!」
ガルヴァンがびくりと身体を飛び上がらせる。その様子にアラノアが目を見開いて、珍しく取り乱すガルヴァンに驚いた。普段クールな分、余計にインパクトが強い。
思わず変な声が出たこと、そしてそれをアラノアに聴かれたことでガルヴァンは激しく動揺。わなわなと肩を震わせて、その元凶を作り上げた相手に勢いよく振り向く。
「キ・サ・マ……!」
さっと呪符を数枚取り出して、呪力を練り上げる。
そして、呪力を宿した呪符を集う物の怪達に投擲し、呪文を詠唱。
「ノウマク・サラバタタギャテイビャク・サラバボッケイビャク・サラバタタラタ・センダマカロシャダ・ケンギャキギャキ・サラバビギナン・ウンタラタ・カンマン!」
地獄の業火を思わせる火の手が上がり、辺り一帯に漂っていた物の怪達を一網打尽にしてしまった。
「ふん……」
羞恥の念を物の怪にぶつけきったガルヴァンは、自分に向けられている視線にハッとなり、
「い……今のは……忘れてくれ……」
「え、あ、うん……」
アラノアはドキドキと胸を高鳴らせながら、ガルヴァンから少しだけ視線を外した。
(ガルヴァンさんでもあんな声出るんだ……)
二人は恥ずかしくなってしまい、その日一日まともに顔を合わせられなかった。
☆シルキア・スー クラウス ペア☆
物の怪が視認出来ない場合をシルキア・スーが神主に問うと、
「あ~大丈夫、見鬼の才なくても境内ん中なら問題ないようにしておいたから」
受け取ったJrを手で弄びながら、神主がシルキアに呪符を渡す。シルキアは一通りの呪文の詠唱方法も神主から学び、陰陽師の知識を持っているクラウスは確認程度に神主の説明を聞いた。
ついに実践。境内に出た二人は呪符を取り出して、物の怪と対峙する。
「火行符、――急急如律令」
クラウスは、呪文唱え焼き祓い続けて少しずつ勝手を掴んで行き、次々物の怪を祓っていく。
そして、しばらく『急急如律令』で焼き祓っていた手を止め、今度は一挙に物の怪を焼き祓うために数枚の呪符を取り出した。
「ノウマク・サラバタタギャテイビャク・サラバボッケイビャク・サラバタタラタ・センダマカロシャダ・ケンギャキギャキ・サラバビギナン・ウンタラタ・カンマン」
この世のものとは思えないほどの業火が物の怪に殺到し、焼き祓う。
(ほわわカッコイイ……私だって!)
シルキアは、クラウスが華麗に実践してるのに見惚れていたが、ハッと我に返り呪符を取り出す。
「えーと、ノウマク・サラダバー? ……き、キュウキュウニョ……あれ?」
わたわたと呪文を詠唱できずにいるシルキアに物の怪達が集っていく。
クラウスはそれを確認して、シルキアをがばりと抱しめ庇った。
(ええええー!?)
突然抱きしめられたシルキアは突然の動悸と混乱に見舞われ、一気に顔を真っ赤に染める。
クラウスが集った物の怪を簡単に祓い、シルキアの顔を覗き込んだ。
「大事は無いか」
混乱から抜け出せていないシルキアは、
「だ……大丈夫! 怪我しないって説明あったし!」
と目を回して返し、内心自分の頭を抱えて転げまわりそうになる。
(ここはありがとうでしょ私!)
「そうか。手を貸してくれるか?」
クラウスがそう言ってシルキアの呪符に触れるようにして手を取り、呪文唱える。
すると、辺り一帯を焼き尽くす広大な炎の海が発動され、物の怪達が祓われてゆく。
「これ……すごい!」
クラウスは、シルキアの表情に心と頬が綻び、
「ああ、実に……爽快だ」
心底楽しそうな表情のシルキアの手に呪符を握らせて、クラウスが呪文役を担って館内へと戻る活路を開く。物の怪達の量は減ってはいるが、それでもかなりの量が残っているので、走り回れるほどの隙間はない。
自分の中にすっぽりと収まるシルキアの小柄さを実感し、クラウスは抱きしめて守りたいという衝動を感じる。
このままシルキアに殺到する物の怪を祓ってしまいくらいだが、
(怪我はしないのだ……これは遊戯に近い、妨げてはならない)
と、クラウスは自分を戒めて衝動抑え、彼女の為にサポートに集中する。
けれども、やはり物の怪の数が多く、死角から物の怪が飛び出してくることもあるので、クラウスが咄嗟にシルキアを庇う場面が多々存在していた。
その度、クラウスが真面目にしてくれていることだと分かってはいるのだが、シルキアは内心ドキドキしながら悲鳴に近い声を上げてしまう。
背中から覆われるような形でシルキアがクラウスに抱きしめられたり。
(ひええっ)
呪符を掌に挟んだまま社交ダンスでも踊っているような形になったり。
(しゃ、シャルウィ?)
目を瞑っている最中に抱き寄せられて、目を開けると顔が近かったり。
(きゃあー近い近いっ!)
無事に境内に着いた時には、シルキアはドキドキしすぎてほとんど屍のようにぐったりとしていた。
二人は、残った呪符を神主に返して帰路に着く。
並んで歩くシルキアだったが、先程までの密着度思い出しまたも胸が高鳴る。どきどきで心臓が壊れてしまいそうで、シルキアはしばらくクラウスの顔が見れなかった。
シルキアは、クラウスの感触がよぎり自分の手を見つめる。
考えは定まらないが、シルキアとのこの日の経験はクラウスの心に深く刻まれた。
☆エリー・アッシェン モル・グルーミー ペア☆
エリー・アッシェンは、手渡された狩衣を着てテンションメーターを振り切らせている。立鳥帽子を頭にちょこんと乗せ、扇子春ノ風を掌に打ち付けてパチンと音を響かせた。
「モルさん、呪術ですって!」
眼前に広がる怪奇達に、エリーは目をキラキラと輝かせながら辺りに目まぐるしく視線を向け続ける。
「うふふっ! ぞくぞくワクワクしちゃいますねぇ……」
神主の胡散臭い雰囲気に、モル・グルーミーはどうにも口車にのせられている気がしてならないが、エリーは聞く耳を持たない。
それどころか、手渡された呪符をキラキラした目で観察して頬ずり。
「うふふ、素敵ですね」
まるで国宝を寵愛しているかのような様子に、モルは呆れたような表情でエリーを眺める。
圧倒的なほど数が多い物の怪をすべて焼き祓うには、別々に行動した方が効率がいい、そう判断した二人は、別行動で境内に出る。
二人の目の前に広がるのは、夥しいほどの数存在する物の怪の姿。
エリーはふよふよと漂う無害な物の怪を恍惚の笑みで眺めた後、呪符を数枚取り出して呪力を練り上げる。
「ノウマク・サラバタタギャテイビャク・サラバボッケイビャク・サラバタタラタ・センダマカロシャダ・ケンギャキギャキ・サラバビギナン・ウンタラタ・カンマン!」
業火が物の怪を吹き飛ばし、一挙に焼き祓ってしまう。
そして、さらに数枚の呪符を取り出して、もう一度不動明王の火界咒を使用。恍惚の笑みを浮かべながら地獄の業火を出現させ、物の怪を燃やし尽くす。
エリーは、春ノ風を持ちつつ事あるごとに恰好つけるポーズをとり、意志を持たない物の怪ですらイラッとしそうなドヤ顔を浮かべる。
激しく繰り出されるエリーの攻撃の連打からか、物の怪達がふよふよとエリーの元から離れ、移動していく。
丁度物の怪が移動している方向がモルの方だったので、エリーはそろそろ合流するべきだろうと判断し、
「っと、モルさんと合流ですね」
エリーは呪符を取り出して物の怪を追いかけつつ、火界咒を放ち続ける。
少し離れたところで、モルはハイペースで火界咒を連発するエリーを冷めた目で眺めていた。あれほど呪術を連発していては、すぐに霊力がなくなってしまう。これだけ数が多い敵と戦うのだ。力を温存するに越したことはない。
呪符を扇子で吹き飛ばすようにして、モルは火行符の呪文を唱える。
「急急如律令」
広範囲の威力ではないが、的確に物の怪を焼き祓い進路を開けた。そうして、モルは空いた空間にゆっくりと進み、もう一度火行符を唱え物の怪を焼き祓う。燃え盛る集団に空いた隙間に空気が入り込み、一瞬にして火界咒並みの威力を発揮。
かなりの数の物の怪を祓ったが、それでもなお多い。エリーが荒っぽく暴れているので、モルの方に物の怪が集まっているようだ。
火行符だけで応戦していたが、応戦しきれない。
モルは呪符を数枚取り出し、ついに火界咒を詠唱する。
業火が吹き荒び、物の怪を焼き祓う。バルーンほどの大きさになっていた集団を一挙に燃やし尽くし、焼失させる。
大技を繰り出し、かなりの数を一気に焼き祓ったことで、モルは注意力が途切れてしまい隙が出来てしまった。
その隙を突く形で物の怪がモルに近づき、ふさふさとした綿毛のような自らの毛でモルをくすぐる。
「はふぅっ」
あまりのくすぐったさに情けない声が漏れ、モルはその場にへたり込む。
「…………」
ややあってモルが顔を上げると、そこには感情を失ったような表情を浮かべたエリーの姿。
昔話の妖怪や幽霊さながらの迫力でモルがエリーを見上げるので、エリーは咄嗟に目をそむけながら、
「いえ、私は何も見ていないです」
そして、そのまま続けて、
「四十過ぎの男性が情けない声を出して膝から崩れ落ちていく場面など、記憶にございません」
エリーが漏らす一部始終の様子に、モルは正体がバレた幽霊のようにおどろおどろしい雰囲気でつぶやく。
「見たのだな」
依頼結果:大成功
MVP:
名前:シルキア・スー 呼び名:シルキア |
名前:クラウス 呼び名:クラウス |
名前:アラノア 呼び名:アラノア |
名前:ガルヴァン・ヴァールンガルド 呼び名:ガルヴァンさん |
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 東雲柚葉 |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | コメディ |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | とても簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 01月11日 |
出発日 | 01月16日 00:00 |
予定納品日 | 01月26日 |
参加者
会議室
-
2016/01/15-21:17
-
2016/01/15-20:01
うふふ……。プランができましたよ!
ジャンルがコメディのエピソードなので、笑い重視の内容になってます~。 -
2016/01/15-06:36
シルキアとクラウスです
よろしくお願いします
呪文が長くて覚えられません… -
2016/01/14-21:15
アラノアとガルヴァンさんです。
平凡な人間でも派手な術が使えるとのことでワクワクが止まりません。 -
2016/01/14-19:35
こんにちは、かのんとパートナーの天藍です
ケサランパサランのような物の怪……
聞く限りでは触ってみたくなる形状ですけれど、呪符を使って祓わなくてはなのですね
どうぞよろしくお願いします -
2016/01/14-01:15
うふふ……。エリー・アッシェンと、精霊のモルさんで参加です。
よろしくお願いしますね!
物の怪、呪術、陰陽師……。
本格的な和の文化には馴染みがない私ですが、なんとも心惹かれる響きです。 -
2016/01/14-00:27