プロローグ
●小さなお姫さまの願いごと
ルルアンは、首都タブロスのとあるお金持ちの家の一人娘。
生まれつき病弱なルルアンは、今日も車椅子で広い庭に出ます。庭へ出ると、ルルアンの唯一のお友達・アフガンハウンド犬のシャンテが、嬉しそうに駆けてきました。
「おはよう、シャンテ。今日も素敵な日ね」
ルルアンはシャンテの艶やかな毛並みを撫でて、歌うように言いました。
「でも、でもね、シャンテ。明日は、今日よりもっと素敵な日になるのよ」
そう。明日はルルアンの誕生日なのでした。誕生日にはお前の願いごとを何でも叶えてあげるよと、ルルアンのパパとママは約束してくれました。だからルルアンは、大好きな二人にこう言ったのです。
「私、お庭でパーティーが開きたいわ。お菓子でいっぱいのおかしなパーティー。それでね、たくさんの人を招待して、たくさんのお友だちを作るの!」
屋敷の敷地内だけが、ルルアンにとっての世界です。ルルアンは屋敷の外の世界にずっと憧れていましたが、パパとママは、ルルアンが外の世界に行ってみたいと言えばきっと困ってしまうでしょう。だからルルアンは、一生懸命考えて、パーティーのことを思いついたのでした。素敵なパーティーを開けば、外の世界のお話も聞けるでしょうし、たくさんのお友だちだってできるかもしれません。
「ああ、明日が待ち遠しい! このお庭に、いっぱいのお菓子と皆の笑顔が溢れるのよ。何て素敵なのかしら!」
●お菓子なパーティーの招待状
「お菓子尽くしのパーティーに興味のある者はいないか?」
A.R.O.A.職員の男は、厳つい顔に柔らかな表情を浮かべてそう切り出した。手には、男の風貌には似つかわしくない、女の子の夢を詰め込んだような可愛らしい招待状。
「ルルアンという少女からの、誕生日パーティーのお誘いだ。彼女の親は、A.R.O.A.とも縁が深くてな。その関係で、ここにも招待状が届いたようだ」
たくさんの人に気軽に遊びに来てほしい。主役の少女のそんな意向で、パーティーにドレスコードはない。だから、気楽に普段着で出かけてもらって構わない。
「但し、パーティーは随分と豪華なものになるみたいだな。特注の巨大ケーキに、新鮮な果物を甘くコーティングして楽しむチョコファウンテンやキャラメルファウンテン。飴細工師に好きな形の飴を作ってもらうこともできるし、とりどりの菓子を盛る皿までタルト生地でできていて最後には美味しく食べられるのだとか」
他にも、お菓子と名のつくものなら大抵のものが食べられるだろうというような徹底ぶりらしい。しかも、その全てが無料で楽しめるのだというのだから驚きだ。
「参加する者は存分に楽しんでくるといい。だが、このパーティーの主役のことも忘れるなよ。ルルアンは病弱で、屋敷の外の世界や友人との他愛のない会話に憧れているらしい。何か知っている話を聞かせてやったり話し相手になってあげたりすれば、きっとルルアンは喜ぶだろう」
難しいことは何もない。少女が求めているのは、ほんのささやかな幸せだ。
「彼女にとっての特別な一日が、佳き日になるよう祈っているぞ」
男は穏やかな笑みを口元に乗せて、そう話を締め括った。
解説
●ルルアンの誕生日パーティーについて
プロローグにあるように、スイーツを存分に楽しめるお菓子なパーティーです。
参加費は無料。
参加者の皆さまがパーティーを楽しんでくれるだけでもルルアンは喜びますが、お話を聞かせてあげたりお友だちになってあげたりするともっともっと喜びます。
●ルルアンについて
生まれつき病弱な12歳の少女。いつも車椅子に乗っています。
純粋無垢な愛らしい女の子ですが、外の世界に出たことがなく友だちは愛犬のシャンテだけ。
お菓子な誕生日パーティーを心待ちにしています。
●プランについて
公序良俗に反するプランは描写いたしかねますのでご注意ください。
また、白紙プランは描写が極端に薄くなりますので、どうかお気をつけて。
ゲームマスターより
お世話になっております、巴めろです。
このページを開いてくださり、ありがとうございます!
今回は、とある少女の夢に溢れた、お菓子なパーティーのお誘いです。
皆さまに楽しんでいただけるよう力を尽くしますので、ご縁がありましたらよろしくお願いいたします!
リザルトノベル
◆アクション・プラン
ミサ・フルール(エミリオ・シュトルツ)
ふふ、了解! 半分ずつ分け合った方が色んな種類のケーキを食べれるもんね♪ お菓子を食べた後、ルルアンちゃんの所に行くよ 『幻の虹色リンゴ』の話をするね 任務でケスケソル村に行ったんだ 仲間と協力してデミオーガを退治した先で虹色に輝く林檎を発見したの とても神秘的な林檎だったんだよ ルルアンちゃんの話も聞かせて? 好きなお菓子とか、愛犬の話を聞きたいな 月野さん提案の花火と誕生日の歌に参加するよ はい、誕生日プレゼント クッキーを焼いたの(一般スキル使用) お誕生日おめでとう 最後ルルアンちゃんと参加者全員で写真を撮るよ 後日 今度皆でお茶会しようよって、 手紙と一緒に撮った写真をルルアンちゃんに贈るね ☆持ち物 クッキー カメラ |
キアラ(アミルカレ・フランチェスコ)
今回、喫煙は控える ・動機 無料という事に惑わされたクチ ・菓子 何でも食べるがフルーツ系がわりと好み のでファウンテンが気に入る ・ルルアン >話 昼のカルーセル 「金色で縁取られててね、綺麗だったよ」 「もうそんな年じゃないし乗ってはいないのだけどね、もう一種の回転木馬は見れてないし」 →マリアベルに話をふる(直接面識はないが、乗るのを見かけた 桜のお菓子を作り花見をした 「シンプルなメレンゲだったけど、桜見ながら食べるのはなかなか美味しく感じたよ」 >誕生日プレゼント 犬の玩具:ボール 「犬のお友達がいるって聞いて、一緒に遊べるものが良いかなってね」 >花火と写真 ありがたく一緒に 「これで全員ルルアンの友達ってワケだね」 |
月野 輝(アルベルト)
せっかくのお誕生日 思いっ切り楽しくしてあげたいわ そうだ、前にイベントで作り方を習った線香花火なんてどうかしら 皆でやったら楽しくない? 花火作りを習った時の話もしてみましょう 皆で誕生日の歌も合唱しましょうよ♪ 服装はせっかくだからちょっとだけお洒落してみようかな 皆で写真も撮るみたいだし 一応お出かけ用のワンピースにボレロ、それにとっておきのハイヒールで… ね、アル、似合う? 誕生日プレゼント、野原に咲いてる花で花冠を作って持っていくわ ワンちゃんとお揃いで二つ、ね 豪華な物より、外を感じられる物の方がいいかなと思ったの お菓子 す、すごい…っ(目が釘付け はっ!? こ、これは違うのっ 豪華だから惹きつけられただけで!? |
夢路 希望(スノー・ラビット)
今日は、体重は、気にしません (…幸せです) 目に留まったお菓子を タルトなお皿へ少しずついただいて 堪能した後は、 ユキの提案で少し寄り道 …飴細工に瞳を輝かす姿を見て 可愛いと思ったのは秘密です ルルアンさんを見つけたら 自己紹介と招待していただいたお礼を述べ 雑談のお相手に お誕生日の歌は、練習してきました …少し恥ずかしいですが、頑張ります 「お誕生日おめでとうございます、ルルアンさん」 私達からのプレゼントは、写真立てです 市販品のシンプルなフレーム部を リボンやレースで飾って 可愛らしく仕上げてみました …中は、今日の思い出を飾れるように空けています 線香花火は、最後まで落とさないように挑戦 記念撮影は、はにかみ笑顔で |
マリアベル=マゼンダ(アーノルド=シュバルツ)
お父さまからルルアンさまのおたんじょう日の招待状をいただきました…お父さまどうしは仲がよろしいそうですが…わたくし、ルルアンさまとはお会いしたことがありません… 仲良くできますでしょうか… アルさまもAROAの方から招待状を? お父さまとアルさまがそうおっしゃるのでしたら…(ドキドキ) ルルアンさま、おたんじょう日おめでとうございます…! わたくしも、あまり体がじょうぶな方では無いので、お外に出る事はそんなにないのですが…移動カルーセルに乗りましたの。 大きな箱の中に、宝石を散りばめたようなキラキラした夜空が広がっていて、すてきな木馬が回ってました 馬車の中からながめていましたが、とてもきれいでしたよ |
●おかしなお菓子の甘い誘惑
パーティー会場には、甘いお菓子の香りが満ちていた。そんな中、心細げに立ち尽くす少女がひとり。
「緊張、してしまいます……」
愛らしく小さな手でドキドキと騒ぐ胸を抑えて、マリアベル=マゼンダは呟いた。そんなパートナーを安心させるように、傍らに立つアーノルド=シュバルツは柔らかく微笑んでみせる。
「お友達を増やすチャンスですよ、マリー。境遇も似ていることですし、きっといいお友達になれると思うのです」
「仲良く、できますでしょうか……?」
「ええ、大丈夫ですよ」
アーノルドの言葉に、マリアベルの表情がほっとしたように幾らか和らいだ。
ルルアンの父親と仲が良いという自身の父親から、この誕生日パーティーの招待状をもらったマリアベル。けれど、マリアベルとルルアンの間には面識はなく。不安に思っていたところに、A.R.O.A.経由で同じく招待状をもらったというアーノルドが、声をかけてくれたのだった。お父さまから招待状をもらったのなら尚の事、一緒に行きましょうと。
「さて……まずは、お菓子を楽しみましょうか。折角のパーティーの趣向ですからね」
何がご所望ですかと問われ、マリアベルはじぃと考え込む。
「……紅茶のお菓子は、あるでしょうか?」
「そうですね、きっと」
「そうしたら、アルさまといっしょにそれが食べたいです」
自分と、それからアーノルドの好きな紅茶。その紅茶を使ったお菓子があったなら、是非二人で味わいたい。
「ええと、それから……それから……」
言葉に詰まるマリアベルに、アーノルドはそっと救いの手を差し伸べて。
「では、回りながら好きな物を見繕うのはどうでしょう?」
その言葉に、マリアベルはこくりと頷いた。
「ヴァイオリンを持ってきてくれと言うから何かと思えば。なるほど、パーティーなら音楽は必要ですね」
会場の賑わいを見やり、アルベルトは合点がいったというように言葉を零した。そんなアルベルトに、月野 輝はふわりと笑いかけて。
「アルには、誕生日の歌の伴奏をしてほしいの」
「……まあ、いいですが」
よかった、と輝が微笑む。ワンピースの裾がひらりと風に揺れた。折角のパーティーだからと、お洒落をしてきた輝。お出かけ用のボレロとワンピースを身に纏い、足元はとっておきのハイヒールで決めている。そんな彼女に合わせて、今日はアルベルトもカジュアル系のスーツ姿だ。
「ね、アル。似合う?」
「ええ、似合いますよ。馬子にも衣装、ですね」
「ちょっと、そういう言い方……」
「冗談ですよ。本当に似合ってます」
「え? あ……ありがと」
さらっと言われて、思わず赤くなる輝である。アルベルトが、くすりと楽しげな笑みを零した。
「それにしても、女性陣の目の輝きが違いますね」
アルベルトの視線を追えば、輝の目にもとりどりのお菓子たちが映る。
「す、すごい……っ」
素直な感想が口をついた。視線はお菓子の王国へと釘付けだ。と、アルベルトがくつくつと笑みを漏らした。我に返り、慌てる輝。
「こ、これは違うのっ! 豪華だから惹きつけられただけで!?」
「今更隠そうとしなくて良いですから、食べてきたらどうですか。何でしたら持ってきて差し上げますよ、お嬢様?」
アルベルトの声はまだ笑っている。
「じ、自分で取りにいける! からっ!」
「慣れないヒールで歩き回ってこけないで下さいよ」
「わかってるわよ。……きゃ!」
「ほら、言ってる側から」
バランスを崩しかけた輝を、アルベルトが支えた。相変わらず、その声は楽しんでいるような響きを帯びている。
「一緒に回りましょうか。ひとりで行かせるのは、危なっかしくていけない」
「……うう」
実際に転びかけた後では返す言葉もなく、二人は並んで、お菓子が待つスペースへと歩き出した。
「無料という言葉には、抗い難い魅力があるよね」
からからと笑いながら、キアラはカットされ串に刺さったバナナをキャラメルファウンテンの中に潜らせた。隣では相棒のアミルカレ・フランチェスコが先の言葉には是も否も唱えず、チョコレートを纏わせたキウイを口に運んでいる。もっとも、「お菓子食べ放題らしいよ、無料で」というキアラの誘いに「タダなら行く」と即答したくらいだから、彼も間違いなく無料という言葉に惑わされたクチであった。
「そういえばさ、甘すぎる物は好きではないイメージだけど、節約家だし実は何でもいけたりするのかね」
キャラメルバナナに舌鼓を打って、キアラはアミルカレに問う。深緑の視線が、じっとキアラに注がれた。
「確かに甘すぎるのは好きではないけれど……基本的に、甘い物は好きだ。チョコレートも桜の焼き菓子も、美味かった」
そう答えて、アミルカレは今度は苺をチョコレートファウンテンに潜らせ始める。相棒からの嬉しい言葉に、キアラは密かに口元を緩めた。
(今日は、体重は、気にしません)
そんな思いを胸に、夢路 希望は会場へと足を踏み入れていた。タルトでできた皿の上には、目に留まったスイーツたちを少しずつ。生チョコのように濃厚なチョコレートケーキを口へ運べば、心もとろり蕩けるようで。
(……幸せです)
胸の内でうっとりと呟く希望をそっと横目に見て、パートナーのスノー・ラビットはふんわりと目元を柔らかくした。そうして、自分もタルトタタンをぱくりとする。
「美味しいね、ノゾミさん」
「は、はい。すごく、美味しいです……」
お菓子なパーティーを存分に楽しめば、次はルルアンへと挨拶を……と、その前に。
「ノゾミさん、行きたいところがあるんだけど、いいかな?」
「? はい、大丈夫です」
向かったのは、飴細工の屋台だ。飴細工師に、スノーは兎を二つと薔薇を一つ頼んだ。二人の目の前で、べっ甲色の飴は手品のように兎と薔薇に変身していく。まるで子どものように目を輝かせるスノー。
(……何だか可愛い、です)
そんな嬉しい感想は、心の中にしまっておいて。
「……凄かったね。魔法みたいだった」
食べるの勿体ないねと笑いながら、スノーは希望へと飴色兎を一羽差し出す。
「わ、私に、ですか?」
「うん。僕とお揃い。ね?」
王子様の笑みでそう言われて、希望は頬が熱くなるのを感じた。
パーティー会場には、巨大な特注ケーキの他にも、パティシエ特製のケーキがずらりと誇らしげに並んでいて。
「ミサ、いつも通り『ケーキは半分ずつ』の作戦で行くよ」
キリリと真面目な顔でパートナーのミサ・フルールに声をかけて、エミリオ・シュトルツはフォークを構えた。そのごく真剣な表情にミサはくすりと笑みを零して。
「ふふ、了解! 半分ずつ分け合った方が、色んな種類のケーキを食べれるもんね♪」
こうして二人は、片っ端からケーキを攻略していく。ケーキはどれも絶品で、実は大の甘党のエミリオは心なしか幸せそうだ。甘党であることを隠しているエミリオが自分にだけ見せてくれる一面。そんな彼の姿を知っていることが嬉しくて、ミサの表情も思わず緩む。
「……何? 俺の顔に何かついてる?」
「ん? 何でもない何でもない! それよりほら、あっちのも美味しそうだよ?」
言えば、エミリオの瞳がきらりと輝いて。
「行くよ、ミサ。作戦は……」
「『ケーキは半分ずつ』だよね。了解だよ!」
二人の戦いは、まだまだ終わらない。
●お姫さまはお喋りがお好き
「あの……」
ウィンクルムたちの中でルルアンに最初に声をかけたのは、希望だった。
「夢路 希望、です。今日はご招待ありがとうございます」
「スノー・ラビットだよ。お招きありがとう、ルルアンちゃん」
希望はぺこりと頭を下げて、スノーは少女に視線を合わせるように柔らかな芝生に片膝をつき、飴細工の薔薇を優雅に差し出した。薔薇を受け取ったルルアンの顔が、ぱああと輝く。
「ありがとうございます。嬉しいな……。あの、お二人はもしかしてウィンクルムの方じゃないですか?」
「わ、その通りです……! その、何でわかったんですか?」
希望が首を傾げると、ルルアンはえへへ、と笑みを零した。
「だって、とっても仲良しさんに見えたから。ご本に出てくる王子様とお姫様みたい!」
「お姫様……!」
無垢な少女の一言に、真っ赤になる希望。スノーはというと、そんな二人のやり取りをにこにこ笑顔で眺めていた。
「二人のお姫様は、もうすっかり仲良しだね。僕も仲間に入れてほしいな」
「勿論です! もしご迷惑でなければ、たくさんお話聞きたいなぁって」
駄目でしょうか? と二人を見上げるルルアンに、否と答える理由はなく。
「駄目じゃない、です。いっぱいお話ししましょう」
「僕もルルアンちゃんのお話、聞きたいな」
希望とスノーの言葉にルルアンはますます表情を明るくし、傍らの愛犬シャンテも、ルルアンが笑っているのを喜ぶように尻尾を振った。
間もなくして、ルルアンの元に新たなお客様がやってくる。お菓子をたっぷりと堪能したミサとエミリオだ。
「こんにちは、ルルアンちゃん。今日はありがとう!」
ミサたちがルルアンの元を訪れた時、希望たちはちょうど外の世界の話を一つ語り終えたところだった。ルルアンがきらきらと瞳を輝かせているのを見て、今度はミサが、『幻の虹色リンゴ』について話し出す。
「私も、外の世界のことを話すね。前に、任務でケスケソルっていう村に行ったんだ。仲間と協力してデミオーガを退治した先で、虹色に輝く林檎を発見したの」
「虹色に輝く林檎?!」
ルルアンは興味津々だ。
「ふふ、そうなの。とても神秘的な林檎だったんだよ」
「虹色リンゴ、懐かしいな」
その時のことを思い出しながら、エミリオが言葉を継いだ。
「ケスケソルはタブロス市近郊にある小さな村で、虹色の花の里としても有名だよ。近くの森にデミ・オーガが出たって討伐依頼がきて、俺たちが行くことになったんだ。あ、そうだ」
そこまで話して、エミリオは悪戯っぽく笑んでみせる。
「任務中にさ、ミサが派手に転んで服の裾を破いたんだよ。そそっかしい奴だよね」
「もうっ、エミリオさん?!」
にやりとするエミリオに、真っ赤になるミサ。ルルアンが、くすくすと笑みを漏らした。
「き、気を取り直して……。ルルアンちゃんの話も聞かせて? 好きなお菓子とか、そこにいるわんちゃんの話も聞きたいな」
ミサにそう促されて、ルルアンは心底から嬉しそうにお喋りを始める。ずっとこうしてお話しがしてみたかったのだと、弾む声が語っていた。
次いでやってきたのはキアラとアミルカレ、それからマリアベルとアーノルドの二組だ。
「よろしくね、ルルアン。お招きありがとう」
「ルルアンさま、おたんじょう日おめでとうございます……!」
キアラはルルアンの頭をぽんぽんとして、マリアベルはアーノルドの後ろからそっと顔を出し、勇気を振り絞って言葉を生む。
ルルアンのご所望で、次はキアラが外の世界の話をすることとなった。まずは、移動遊園地の昼のカルーセルについて。
「金色で縁取られててね、綺麗だったよ。子どもたちがたくさん乗ってたなぁ。すごく楽しそうだったよ」
キアラの声が優しく響く。ルルアンは早くもその様子を思い浮かべて、うっとりしているようだった。
「もうそんな年じゃないし乗ってはいないのだけどね、もう一種の回転木馬は見れてないし」
苦笑混じりに零したキアラの台詞に、アミルカレが続く。
「俺も、キアラと一緒にカルーセルを眺めていたな。ああ、確かその後だったっけ。バレンタインのチョコを渡されたのは」
「余計なことは言わなくっていいよ」
軽くアミルカレを小突くキアラである。
「あ、そうだ。そこの嬢ちゃん、もう一つの回転木馬――夜のカルーセルに乗ってなかったかい? 乗るのを見かけた気がするんだけどね」
キアラに話しかけられて、ひょこんとパートナーの後ろから顔を出していたマリアベルが、ぴゃっと引っ込んだ。
「大丈夫ですよ、マリー」
優しくアーノルドに促されて、マリアベルがまた、おずおずと顔を出す。そうして、花のように可憐な少女は、ぽつりぽつりと夜のカルーセルについて話し始める。
「えっと……わたくしも、あまり体がじょうぶな方では無いので、お外に出る事はそんなにないのですが……移動遊園地のカルーセルに乗りましたの。大きな箱の中に、宝石を散りばめたようなキラキラした夜空が広がっていて、すてきな木馬が回ってました。馬車の中からながめていましたが、とてもきれいでしたよ」
マリアベルが話し終えると、ルルアンは、感嘆のため息を漏らした。
「外の世界にはそんなに素晴らしい物があるんですね……。素敵なお話を、ありがとう」
笑いかけられて、マリアベルはドキドキしながら小さく頷く。
「――上手にお話しできましたね、マリー。よく頑張りました」
マリアベルだけに聞こえるように言って、アーノルドがそっと微笑んだ。その笑顔があんまり優しかったので、マリアベルは真っ赤になって俯く。
「私からもありがとう。夢のある話だねぇ。後は……そうだね、桜の菓子を作って、花見をしたよ」
マリアベルに礼を言い、キアラが再び話し出す。
「シンプルなメレンゲだったけど、桜見ながら食べるのはなかなか美味しく感じたよ」
「俺は花見にって呼び出されて。サプライズで菓子を渡された」
相棒の言葉に、キアラは苦笑を漏らす。
「なんか、食べ物の話ばっかだね。いや私のせいだけどさ」
場に、和やかな空気が満ち満ちた。
最後にやってきたのは輝とアルベルトだ。
「ルルアンさん、今日はご招待ありがとう」
にこりと少女に笑いかけて、輝は後ろ手に隠していたある物をルルアンへと差し出した。
「これは……?」
「これはね、線香花火っていうの」
「花火……ですか? わたし、花火ってお空に咲いているのしか見たことがありません」
これが花火……とルルアンは興味深そうに輝が用意した線香花火を眺め回している。そんなルルアンを見て、輝はそっと微笑んだ。
(せっかくのお誕生日、思いっ切り楽しくしてあげたい)
そういう思いから、線香花火を持参した輝である。
「以前イベントで花火師さんに教わってね、作ったことがあるのよ。火薬を使わない花火、なんていうのもあるの。面白いでしょう?」
輝の話を、ルルアンは興味津々で聞いている。そんなルルアンに、輝は明るい声で言った。
「後で、ここの皆でやってみない? きっと楽しいと思うの」
「いいんですか! 嬉しい!」
はしゃぐルルアンに輝はにこりと笑いかけ、皆の方を振り返った。
「ねえ、皆で誕生日の歌も合唱しましょうよ♪」
提案に、否を言う者はひとりもいない。
「主役の姫様、何かリクエストはおありですか?」
「お任せ、してもいいかしら?」
ヴァイオリンを手にしたアルベルトの問いに、ルルアンはそう答えて。
それではと、アルベルトが奏で始めたのはごく一般的な誕生日ソングの旋律。それに合わせて一同の歌声が溢れ出す。ルルアンは、幸せそうな顔でその歌を聞いていた。
●最高のプレゼント
「お誕生日おめでとう、ルルアンさん!」
歌が終わると、輝はルルアンの頭に可愛らしい花冠を乗せた。それから、傍らでじっとしているシャンテの頭にも。
「野原に咲いている花で作ったの。ワンちゃんとお揃いで二つ、ね。豪華な物より、外を感じられる物の方がいいかなと思って」
ルルアンは、頭の花冠をそっと手に取った。瞳が、宝石のように輝いている。
「野原のお花……! 素敵! ありがとうございます!」
それこそ花のような笑顔で、ルルアンが礼を言う。外に憧れるルルアンには、とても嬉しいプレゼントだった。
「はい、誕生日プレゼント! クッキーを焼いたの。お誕生日おめでとう」
ミサがプレゼントしたのは可愛くラッピングした手作りのクッキーだ。わああ! とルルアンがはしゃいだ声を出す。
「お菓子の誕生日パーティーにお菓子のプレゼントはどうなの? って思ったんだけど、ミサはパティシエ志望だからさ。『自分の作ったお菓子をルルアンに食べてもらいたい』って聞かなくてね」
エミリオが、柔らかな声音で続けた。ルルアンのためにと張り切るミサの姿を思い出している、そんな様子だった。
「俺もクッキー焼くの手伝ったんだ。プロには敵わないけど、心を込めて作ったから、貰ってくれると嬉しい。ルルアン、誕生日おめでとう」
食べるのが勿体ないわ、と呟いたルルアンは、本当に嬉しそうで。
「おめでとう、ルルアン」
キアラがプレゼントを差し出した途端、ずっとお利口にしていたシャンテが嬉しそうに鳴いた。
「何だ、自分の物ってわかるんだな。賢い犬だ」
アミルカレが感心したように呟いた通り、プレゼントはシャンテに関係した物だった。
「犬のお友達がいるって聞いて、一緒に遊べるものが良いかなってね」
プレゼントは犬の玩具のボール。ルルアンはにこりとした。
「わたし、これでシャンテといっぱい遊ぶわ!」
これを聞いて、シャンテがやった! とばかりにぴょんと跳ねた。
「お誕生日おめでとうございます。ささやかながら、私とマリーからプレゼントです」
おずおずとルルアンの前まで歩み出たマリアベルが差し出したのは、カルーセルのオルゴール。先ほど素敵なカルーセルの話にうっとりしていたルルアンは、大切に大切にオルゴールを受け取った。
「わたくしが乗ったカルーセルに、似ているんです。よろこんでいただけたらうれしいのですが……」
「勿論とっても嬉しいわ。ありがとう」
よかったですと小さく呟くマリアベル。
「それから、これを」
アーノルドが差し出したるは13本の青薔薇の花束だ。
「青薔薇の花言葉は神の祝福、奇跡。そして夢叶う、です」
柔らかな声音でアーノルドが言えば、今日という日にぴったりだとルルアンは笑った。
「お誕生日おめでとうございます、ルルアンさん」
「お誕生日おめでとう、お姫様」
希望とスノーが共同で用意したのは写真立て。シンプルな市販品のフレーム部分を、リボンやレースで飾った可愛らしい一品だ。
「素材選びは一緒に。配色は彼女で、配置は僕。喜んでもらえますようにって二人で頑張って作ったよ」
どうかな? とスノーが首を傾げれば、ルルアンは満面の笑みを零して「ありがとう」と。
「ちょうどよかった! あのね、皆で写真取ろうと思ってたんだ」
じゃーん! とミサが取り出したるはカメラである。屋敷の者に撮影係を頼んで、その場にいた全員での撮影会が始まった。
「これで全員ルルアンの友達ってワケだね」
キアラの言葉に、ルルアンは今にも泣き出しそうな顔で笑み崩れた。
写真撮影の次は、皆で線香花火を楽しんで。ルルアンは、初めての線香花火にすっかり心奪われている様子だった。
「良いねぇ、花火。ルルアンの思い出にもなるけどさ、あんたの思い出にもなるだろ?」
「ああ。そうだな」
キアラの問い掛けに、アミルカレは素直にそう答えた。移動遊園地も花見も、そうやって確かに心に残っているのだから。
「花火は、初めて。最初の火花は驚いたけど……綺麗だね」
「はい、とっても」
スノーの言葉に希望はこくりと頷く。この時間ができるだけ長く続くようにと、最後まで玉を落とさないよう頑張る希望だった。
「昼間の花火も素敵だね」
「まあ、悪くはないよ」
微笑むミサに、エミリオも素直ではない肯定の返事を返して。ミサは密やかに笑みを零した。
「あの日のことを思い出しますね」
「ふふ、奇遇ね。私も同じことを思ってたところ」
アルベルトと輝は、初めて花火を作った日に想いを馳せる。
「きれい……。でも、ちょっとだけ、怖いです……」
「大丈夫ですよ。私が手を添えていますから」
マリアベルとアーノルドは、二人で一つの花火を楽しんで。触れる温度に、マリアベルの胸がとくんと鳴った。
●パーティーのその後に
後日、ルルアンの元に誕生日パーティーの席での写真と共にミサからの手紙が届く。思い出の写真と『今度皆でお茶会しようよ』と記された手紙に、ルルアンの顔には自然笑みが浮かび。
その写真は今も、希望たちがプレゼントした写真立てに大事に入れられて、ルルアンの部屋に飾られている。
依頼結果:大成功
MVP:
名前:ミサ・フルール 呼び名:ミサ |
名前:エミリオ・シュトルツ 呼び名:エミリオ |
名前:月野 輝 呼び名:輝 |
名前:アルベルト 呼び名:アル |
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 巴めろ |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | イベント |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | とても簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 04月20日 |
出発日 | 04月27日 00:00 |
予定納品日 | 05月07日 |
参加者
- ミサ・フルール(エミリオ・シュトルツ)
- キアラ(アミルカレ・フランチェスコ)
- 月野 輝(アルベルト)
- 夢路 希望(スノー・ラビット)
- マリアベル=マゼンダ(アーノルド=シュバルツ)
会議室
-
2014/04/26-06:56
私、誕生日をお祝いするの大好き!
皆でこっそりプレゼント用意するのってわくわくするね♪
ルルアンちゃん、喜んでくれるといいな
>キアラさん
あ、有り難うごさいますっ!(緊張と照れが入り混じり何故か敬礼)
キアラさんもバストアップおめでとうございます
大人のお姉さん、カッコイイです、素敵です・・・! -
2014/04/25-22:22
ふむ、ミサがクッキー持って行ってくれるそうだし、私は犬のおもちゃをプレゼントすることにするよ。
しかしどれも素敵だねえ、ルルアンもきっと喜んでくれるだろ。
あ、ここで言うのもなんだけど。
ミサ、全身図おめでとう、可愛いよ。 -
2014/04/25-19:36
私も、プレゼント、考えていました。
……いろいろと迷ったのですが、
フルールさんの提案を聞いて、写真立てにしようかな、と。 -
2014/04/25-04:41
うん!私もルルアンちゃんに誕生日プレゼント渡そうかなって考えてたよ。
手作りのクッキーをあげようかなって思ってるんだ。 -
2014/04/24-23:42
歌かぁ、良いと思うよ。
ふふ、こんなん何年ぶりかねえ。
うん、歌の話聞いてから私も持って行った方が良いかなとは思ったね。
まだ迷ってるけど、手作りの菓子か犬と遊べるおもちゃあたりを考えてるよ。
被りそうだったら他のも考えてみるよ。 -
2014/04/24-23:34
皆さん、ありがとう。
ふふ、私も歌を練習しなくちゃ。
プレゼント、私も持っていこうとは思ってたわ。
豪華な物はたくさん持ってそうかなって思ったので、
野原の花で花冠を作ってあげようかなって。
もう少し、他にも何か持っていった方がいいか考えてみるわ。 -
2014/04/24-23:26
あ、あの、みなさま……
ルルアンさまに、おたんじょう日のプレゼント、差し上げますか…?
わたくしは用意して行こうと思うのですが……同じようなものを贈ってしまうのも、どうかと思いまして……。
-
2014/04/24-10:39
お誕生日の歌……素敵だと思います。
わ、私も、練習しておきますね。 -
2014/04/24-05:25
皆どうも有り難う!
それじゃあ忘れずにカメラを(いそいそとカバンに入れる)
皆のお話聞けるの楽しみ♪
歌の件も了解です! 素敵だね!
エミリオさん誕生日の歌知らないみたいだから、
2人で練習しておくよ♪
-
2014/04/24-01:00
花火に、お写真ですか……すてきです……。
>キアラさま
…は、はい…っ!お、おはなし、がんばります……っ!(隠)
>輝さま
こ、こんばんはっ!こ、こんかいも、よ、よよよよろしくおねがいします……っ!
おたんじょうびのうたですね。すてきですっ!わたくしも、が、がんばってうたいますっ!
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2014/04/24-00:54
花火はバレンタインイベントの時に、プロの花火師さんに作り方を教えて貰ったの。
それじゃ、せっかくだから皆さんの分も花火持っていく事にしますね。
こう言うのは大勢でやった方が楽しいし。
写真もいいアイディアですよね。思い出に残るもの。
私もぜひ参加で!
あと、一つ提案が。
ルルアンさんの為に、みんなで「ハッピバースディトゥユー」を
歌ってあげたらどうかなと思うのだけど、どうかしら? -
2014/04/23-23:57
花火に写真か、素敵じゃあないか。
私も是非参加させて貰いたいね。
……ん、あー、マリアベルはもしかして夜のカルーセルに乗ったクチかな?
なんか入っていくの見かけた記憶があるんだけども……。
私は乗ってない上に昼の方しか見てないからね、実際乗ってみてどうだったとかの話は私も聞きたいなぁ。 -
2014/04/23-17:40
……は、初めまして。夢路希望といいます。
えっと、その……よ、宜しくお願いします。
基本は、雑談のお話し相手になれれば、と。
……何か聞かせてあげられれば、とは、思うのですが……うぅん……。
……あ。
……ご、ご一緒しても宜しいのであれば……
花火も、お写真も、まぜていただけると……嬉しい、です。 -
2014/04/23-07:23
初めまして、ミサ・フルールっていいます!
どうぞよろしくお願いしますね(お辞儀)
私はルルアンちゃんに任務先で見た虹色リンゴの話をしようかなって思ってるよ
わぁ、花火なんて素敵!(目をキラキラ輝かせる)
花火って作れるんだね、知らなかったよ
よければ私もご一緒していいかな?
そうそう、パーティーの最後にルルアンちゃんと記念写真を撮りたいなと思ってるんだけど、皆も一緒にどうですか? -
2014/04/23-06:37
こんにちは。
ええと、マリアベルさんは桜の木を植えた時以来ね。お久しぶり(にっこり)
他の皆様には初めまして、月野輝と言います。
こっちはパートナーのアルベルト。共々よろしくね。
私、前に線香花火を作った事あるのね。
その時の手作り花火を持っていって、ルルアンさんと一緒にできないかなと思ってるの。
良かったら、皆様もしません?花火。
一緒にして下さる方がいたら人数分持っていくわ。
私もお話はしたいなと思うのだけど、私の経験談、デミオーガ退治ばかりね…
ミステリーツアーのお話くらいはできるかしら……? -
2014/04/23-01:49
えっと……こんばんは…。
マリアベル=マゼンダともうします。よ、よろしくおねがいします……。
わ、わたくしも、あまり、体がじょうぶな方ではないので、ルルアンさまのお気持ちはよく分かります……。
楽しい、パーティーに、できるといいです……。
わたくしも、いどうカルーセルに乗りました、よ…。
箱の中で、キラキラしていました……(うっとり)
わたくしも、初めて、桜の木をうえた事や、ゆうれいさんと会った事を、お話したい、です……。
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2014/04/23-01:08
ん、なんとか落ち着いたみたいだね。
どうも、私はキアラっつーもんだよ、んで精霊はマキナのアミルカレ。
無料って言葉に惑わされての参加だけど、ともどもヨロシク。
せっかくお誘い頂いたのだし、お菓子頂いた後はそのルルアンちゃんと少しお話しようかなって思ってるよ。
こないだ桜のお菓子作って花見したのと……あと、しばらく前に見たカルーセルの話でもしようかな。
皆はどうする予定かな、折角だし私は皆の話も聞いてみたいのだけど。