お雑煮バトル(森静流 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 あなたはうきうきと鼻歌を歌いながら家に帰ってきました。
 小脇のレジ袋の中にはどっさりと切り餅。
 お正月は大好きなお雑煮とみかんをこたつで食べながらこたつで正月番組を見る予定です。初売りや初詣は寒いし、人混みが酷いし。
「上機嫌だね、何買ってきたんだ」
 部屋の中から出てきたウィンクルムの相方が話しかけてきました。
「正月のお雑煮用の餅だよ。お前も食べるだろう?」
「いいねー」
 どうやら相方もお雑煮が大好きならしいです。
 しかし、彼はあなたの買ってきた角形の切り餅を見て眉間に皺を寄せました。
「何……これ?」
「何って? 雑煮用の餅だけれど?」
「雑煮用? 何で? 何で四角いのが雑煮なんだ。そんなの雑煮じゃないよっ!!」
「はあ!? 雑煮用は長方形の角形に決まってるんだろ!? それからたっぷりの小豆用意して……」
「小豆!? あんこ!? ありえねーっ!! 汁は赤味噌に決まってんだろ!?」
 …………。
 さあ始まってしまいました。
 雑煮の形は四角か丸か。
 小豆汁か赤味噌か、具は何を入れるのか。白味噌やすまし汁に入れる地域だってありますね。
 様々な地域がありますが、どうやらあなたと相方は全く違うお雑煮を作る家で育った模様。大好きなお雑煮についての思い入れを譲れず大変な事に……。
 新年を迎えるにあたってあなたとウィンクルムでお雑煮バトル。正月の平和は勝ち取れるのか!?

解説

 お雑煮で異文化に触れあったウィンクルム……を最初考えましたが、正月早々喧嘩するのもどうかと思いますので、お雑煮を食べながらこたつでだらだら正月をしているウィンクルムを募集します。
 勿論、お雑煮で喧嘩するウィンクルムも大歓迎。
 お雑煮を作ってあげるウィンクルムや、お雑煮で餅を伸ばして遊んでいるウィンクルムもいいですね。
 素敵なプランをお待ちします。
 また、お雑煮の準備をしたということで、300Jrいただきます。

ゲームマスターより

あけましておめでとうございます。
お正月、みなさんのお宅のお雑煮はどんなのかなと思って書きました。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)

  具財を買って帰る
一緒に作ろうと誘う
ランスの好きな鶏肉もたっぷりで…どうかな?

椎茸?干しならあるけど出汁は昆布と鰹だろ?
香ばしい香り…って餅焼いてる?!

はあはあ)
一寸待とうか
情報整理しよう
どうやら俺達は全く別の料理を作ろうとしているんだな

2人の案を合わせたらどうかな
餅はそのまま焼いて、椎茸は戻して、人参と里芋は入れず蒲鉾にしよう
出汁は…じゃんけんで味噌になる

鰹節どんだけ入れてんだよランスは(笑
あ、でも、鰹節と一緒に餅を食べると美味いや…
もぐもぐもぐもぐ

やっぱり冬は雑煮だよな
鍋も良いけど雑煮も好きだよ

?「好きだよ」?(何だろ?

うん…貰うよ
コタツはぬくぬくしてなんとも出づらくて甘えてしまうんだ(飲み



瑪瑙 瑠璃(瑪瑙 珊瑚)
  「どっちのお雑煮がうめぇとしても、
お互いの料理が食べられるんさ幸せな事だと思うべ」

(※調理スキル使用)
珊瑚へのお雑煮を作ろう。
まずは台所で雑煮の具材(玉葱、つと、きのこ、ほうれん草、大根、三つ葉、海老、椎茸、鶏肉など)を切り、
切った後の具は、鍋に入れ、醤油の出汁と一緒に煮る。

珊瑚と他愛ない話をする間も、時々、時間を確認。
鍋には、予め焼いた角餅も入れて煮込む。
仕上げにはイクラを適量乗せよう。

「したっけ、頂きます」
待ってましたとばかりに、珊瑚の料理に手をつけた。
「珊瑚。この味、好きだべ」

珊瑚が上機嫌になる中、一呼吸置いた後もう一度呟く。
「それにその味も、
お前が故郷を愛する想いが詰まっているからな」


天原 秋乃(イチカ・ククル)
  お雑煮を作って食べる

イチカに「任せた」って言われたから、俺なりのレシピで作っていいんだよな?
餅は角餅で、すまし汁、具は大根と人参と……
「って五月蠅い!!黙って待ってろ!!」
イチカがあまりにもいろいろ言ってくるものだから、思わずキレてしまった
料理の邪魔をしてくるあいつが悪い。そもそも、急におしかけてきて「お雑煮食べたい」とか勝手にもほどがあるぞ
……まあ、それでおとなしく作ってやってる俺もどうかと思うが……

「不味くても文句言うなよ」
できあがった雑煮をよそってイチカに渡す
美味しいと言ってくれたので一安心
「つか、あきのんって呼ぶの今年こそやめろ」
……今度作る時はイチカの好みの味つけにしてやるか……


李月(ゼノアス・グールン)
  雑煮の材料が余ってたのでうどん入れて夜食に
ちなみにすまし汁タイプ

うどん吹き出しそうになる
ピンクの雑煮!?
詳しく話せ

独創的だな
てかどこで食ったんだよ
なんとなく嫌な予感

それ‥女子か?

(それ完全に誘われてるんじゃないのか?
腐ってもイケメン精霊
校門で女子の人だかり作るのも日常茶飯事
それで何もなかったのか?

そうじゃなくてってか
固めの盃!?
お前何受けちゃってんだよ
結婚かおめでとう
‥馬鹿か!

!!
違わないよ
飲まなかったのか
そうか
トーン下がってく
(意味知ってたらどうしたのかな
そのおかしな女‥名前は?

沈黙
変な気まずさ
知らない女についてくなよ

こっちもズズ
(何をイラついてんだ僕は‥嫉妬はおかしいだろ
困惑笑

おう
食えや!


カイン・モーントズィッヒェル(イェルク・グリューン)
  ※ティエンを自身の膝に乗せリビングのソファで雑煮談義

雑煮…イェルの家のはどういうの?
醤油の澄まし、焼いた角餅、鶏肉、人参、大根…誤差は小松菜か
実家も嫁のも三つ葉だった
ま、地元同じならそういうもんか

丸餅とか餡餅とか
味噌仕立てとか小豆仕立てとか
あと中身とか
場所によって色々違うらしい
詳しいっつーか、嫁が詳しかった※EP31で調理師判明

馴染みの奴以外にも色々作ってみても面白いだろうな
一緒に作れば楽しい

とりあえず、馴染みのを作ろうぜ
小松菜でいいかって?
イェルの家の奴食いたいから問題ねぇよ
それもイェルのルーツだし、寧ろ教えろって感じだし?

…新年早々可愛い反応だよな
※ティエンに同意求め→ティエンの行動に笑う


 今日、瑪瑙瑠璃と精霊の瑪瑙珊瑚は、それぞれの故郷のお雑煮を一緒に作る事にしました。
「どっちのお雑煮がうめぇとしても、お互いの料理が食べられるんさ幸せな事だと思うべ」
「やしが、瑠璃ぬ雑煮と、わんぬ雑煮。どっちがまーさっさー(美味しい)だろうなっ」
 二人は生まれ育った地域が違うので、全く違う方言を話しますが、それでも意志の疎通は出来ています。
 それにしてもそっくりな二人です。どちらも青色系の短い髪型をしていて、顔立ちも双子のように似ています。眼の色のみ、瑠璃が青色、珊瑚が赤色です。着ているものも、スカジャン「月と兎」を上着にして、中には同じデザインのノルディックセーターを着ています。見る人がいたら誰もが、彼らを双子の兄弟だと思い込む事でしょう。
 ですが、実際には血のつながりはなく、それぞれ全く違う地域で生まれ育った人間なのでした。
 瑠璃と珊瑚は、それぞれ、調理スキルを利用して、てきぱきとお雑煮を作り始めました。
(珊瑚へのお雑煮を作ろう)
 瑠璃は、まずは台所で雑煮の具材(玉葱、つと、きのこ、ほうれん草、大根、三つ葉、海老、椎茸、鶏肉など)を切りました。切った後の具は、鍋に入れ、醤油の出汁と一緒に煮ます。
(瑠璃の隣で、雑煮を作るぜ!)
 珊瑚は、台所の瑠璃の隣で雑煮の具材(丸餅、人参、椎茸、紅白かまぼこ)を切りました。具は鍋に入れたら、鰹節出汁で一緒に煮ます。
 瑠璃は珊瑚と他愛ない話をする間も、時々、時間を確認しています。鍋には、予め焼いた角餅も入れて煮込みます。仕上げにはイクラを適量乗せます。
(瑠璃とゆんたくしてる間も鍋の様子を見て、焦げないよう混ぜる。てーげーに煮詰まったら、生姜を適量乗せて完成!)
 珊瑚も瑠璃とおしゃべりしながらも、手を休めていません。二人とも料理上手ですし、故郷のお雑煮には自信があるので、難しい作業をしながらも楽しく話す事が出来るのです。
 やがてそれぞれが、おいしそうなお雑煮を作り上げました。
「したっけ、頂きます」
 待ってましたとばかりに、瑠璃は珊瑚の料理に手をつけました。鰹出汁がしっかりきいた味わいが口の中に広がります。
「珊瑚。この味、好きだべ」
 その言葉に、珊瑚はたちまち上機嫌になります。
 一呼吸を置いた後、瑠璃は言いました。
「それにその味も、お前が故郷を愛する想いが詰まっているからな」
 それを聞いて、珊瑚はこう言いました。
「わったー、顔も服も同じだけどさ、こうやって作ると、やっぱ生まれも育ちも違うな」
 珊瑚の言葉に瑠璃は苦笑します。瑠璃は言語学を学んでいるのでなんと言っているのか分かりますが、故郷の人たちは何を言っているのか分からない事でしょう。
「わんぬ故郷、雑煮をかむん習慣がねぇーやさ。中身汁やイナムドゥチなら、自信あったけどなぁ」
 雑煮を独特の食べ方をしながら、珊瑚が呟きます。それを聞いて、
「それなら今度、一緒に作ろう」
 瑠璃は即座に言いました。
「へへ、上等やさ!瑠璃と作ればデージマーサン!だ!」
 生まれ育った地域は違うとしても、お互いに相手を知ろうと思い、相手の故郷に敬意を払う事により、お互いに笑顔で暮らす事は出来るのでした。瑠璃が珊瑚の得意な郷土料理を作るように、珊瑚もきっと瑠璃の大事な故郷の料理を一緒に作る事があるのでしょう。そういう互いに寄り添う心を持っている素敵なウィンクルムたちです。きっと今年も、仲のよいパートナーシップを発揮して、素晴らしい活躍を見せてくれる事でしょう。

カイン・モーントズィッヒェル(イェルク・グリューン)編

 その日、カイン・モーントズィッヒェルはレカーロのティエンを自分の膝に乗せて、リビングのソファでくつろいでいました。レカーロとは異様に尖った耳とくるんと丸まった尻尾を持つ、犬のようなおデブな動物です。
 傍らには恋人にして精霊のイェルク・グリューンがいます。この三人はペットOKの2LDKマンションに住んでいるのです。それぞれ実家は別に持っています。
 くつろぎの時間ですので、二人はくだけた普段着姿でいますが、はっきり分かるのは同じデザインのノルディックセーターを着ているということです。おそろいです。
 今の話題はお正月のお雑煮の事です。
「雑煮…イェルの家のはどういうの?」
「お雑煮ですか」
 イェルクは簡単に毎年食べていた雑煮の具材を答えました。
「醤油の澄まし、焼いた角餅、鶏肉、人参、大根…誤差は小松菜か。実家も嫁のも三つ葉だった。ま、地元同じならそういうもんか」
 カインはそう言って頷きました。誤差は小松菜と水菜だけでした。イェルクの家のお雑煮は小松菜、カインの家のお雑煮は三つ葉なのです。
「丸餅とか餡餅とか、味噌仕立てとか小豆仕立てとか、あと中身とか場所によって色々違うらしい」
「詳しいですね」
「詳しいっつーか、嫁が詳しかった」
 亡くなったカインの奥様は、調理師だったのです。
「詳しいと思ったら、奥様伝授でしたか」
 カインならちょっと意外ですが、本職なら知ってても不思議はないですね。
 カインとイェルクはオーガのせいでともに大切な人を亡くしていますが、悲しみを乗り越え、今ではお互いにそうした事も遠慮せずに話し合える関係でした。ウィンクルムとして活躍して、二人でここまで絆を築いてきたのです。
「馴染みの奴以外にも色々作ってみても面白いだろうな。一緒に作れば楽しい」
「では一緒に作りましょうか。小松菜で大丈夫です?」
「とりあえず、馴染みのを作ろうぜ。小松菜でいいかって? イェルの家の奴食いたいから問題ねぇよ。それもイェルのルーツだし、寧ろ教えろって感じだし?」
(って、またカインが恥ずかしい事を)
 イェルクは赤くなって沈黙してしまいました。男前のカインは、そうした言動をあっさりと何のてらいもなく行う事が出来るのです。イェルクはその攻撃に弱いのでした。
「…新年早々可愛い反応だよな」
 それを見て、カインは苦笑し、ティエンに同意を求めます。
 そのとき、ティエンが動きました。
(ティエンがカインの膝から移動して前足でカインの膝叩いて…私に譲ってる? ティエンの前で…って、2人きりならOKってなる…が、膝の上…カインなら抱きしめて頭撫でてくれて…って私は何を)
 たちまちピャアアアレベル2です。イェルクは、先程までのティエンのように、カインの膝の上に乗って抱き締められ頭を撫でられる自分を想像してしまいました。レカーロのティエンが気を回すほどとは、イェルクは最近、カインに甘えたりなかったのでしょうか。
「お雑煮作りますよ」
 イェルクは気を取り直して路線へ戻そうとします。何事もなかったように冷静にお雑煮に話を戻してしまうのです。照れているのは表情で分かりますが。
(後で三つ葉のも作って、あなたのルーツも知りたい。……恥ずかしいから言わないが)
二人でキッチンに移動をしながら、イェルクはそんな事を考えています。彼はやはり、カインにとってわかりやすい可愛い嫁なのでした。
 そのあと二人で一緒に小松菜のお雑煮を作って食べて、翌日、三つ葉のお雑煮を作る約束をしました。お互いのルーツを知り合うために。
 こんなふうに一年をスタートし、今年もきっと家族仲良く素敵な一年になる事でしょう。

李月(ゼノアス・グールン)編

 その日、李月は雑煮の材料が余っていたのでうどんを入れて夜食にしました。ちなみにすまし汁タイプです。
 精霊のゼノアス・グールンも相変わらず彼にべったりくっついています。
 ゼノアスがこたつで温まりながらうどんを食べつつ言いました。
「今日ピンクのゾウニを食ったぞ。種類があんだな」
 李月はうどんを吹き出しそうになりました。
「ピンクの雑煮!? 詳しく話せ」
「ミルクゾウニとか言ってたな。汁がピンク色で、赤いモチが入ってて、赤いカマボコと
赤いカブと……、具が全部ハート型してんだよ。面白れーよな!」
 ゼノアスは楽しそうに笑っています。
「独創的だな。てかどこで食ったんだよ」
 なんとなく嫌な予感がします。
「外でオマエのガッコの奴に会って、食ってけ食ってけうるせーから」
「それ……女子か?」
「おう。なかなか旨かったぜ」
(それ完全に誘われてるんじゃないのか? 腐ってもイケメン精霊。校門で女子の人だかり作るのも日常茶飯事)
 ゼノアスは白髪に白い肌、ミステリアスな黒い瞳のディアボロです。神秘的で野性的な魅力があり、当然女子の人気も相当高い事でしょう。
 それに対して李月はうっとうしそうな漆黒の前髪にアイスブルーの瞳の眼鏡くん。特に李月は自分をノンケと信じていますから、美形過ぎるゼノアスとの境界は定かでなくなることも……
「それで何もなかったのか?」
 それなのに、李月は彼の事がこんなに気になってしまうのです。
「何も? ああセキハン食ったぜ。あとカタメノサカズキ……」
「そうじゃなくてってか、固めの盃!? お前何受けちゃってんだよ! 結婚かおめでとう! ……馬鹿か!!」
「バカたぁなんだ! 飲め飲め言われたけど『片目』なんざ縁起でもねぇから断ったぜ。ショウガツは縁起モンかっ食らうのが習わしだってオマエ言ってたろ。違うのか!?」
 ゼノアスはプンスカ怒っています。
 凄くズレた事を言いながら、怒っているのでした。
「!! 違わないよ。飲まなかったのか。そうか」
 李月のトーンが下がっていきます。とりあえず、ゼノアスが固めの杯を受けなかった事が分かったのでした。でも、固めを片目だと勘違いしていたようですが。
(意味知ってたらどうしたのかな)
 なんだかそのことがとても気になります。
「そのおかしな女……名前は?」
「……」
 ゼノアスはしばらく視線を泳がせました。
「知らん」
 その答えにより、沈黙が落ちます。
 変な気まずさも落ちてきます。
 李月は、ゼノアスが誤魔化しているのかもしれないと思いました。誤魔化しているのか、それとも、本当に知らないのか、李月には判断することが出来ません。
「知らない女についてくなよ」
 ぼそりと李月が言いました。たしなめるように。
 ゼノアスが無言でうどんを啜るのを再開します。
 ズズ
 李月もうどんを啜ります。
 ズズ
「顔は知ってんだよ」
 ズズ
 ゼノアスは不機嫌そうです。でもひょっとしたら悪い事をしたと思っているのかもしれませんね。引っ込みがつかなくなっているだけかも。
(何をイラついてんだ僕は……嫉妬はおかしいだろ)
 李月は、自分の心理に困惑して笑ってしまいます。だって自分はノンケなのですし、ゼノアスは本人がなんと言おうと、こんなに美形なのですから。
「おう。おかわりだ。オマエのゾウニもっと食わせろ!」
 そこでゼノアスが元気よく言いました。うまく表現出来ないけれど、李月のお雑煮が一番だと言いたいのかもしれませんね。
「おう。食えや!」
 李月も力強く答えて、ゼノアスに自分のお雑煮をたっぷり食べてもらう事にしたのでした。なんだかんだ言って仲のよい二人です。今年は、二人とももっと素直になれるでしょうか? 素敵な一年になるといいですね。

天原 秋乃(イチカ・ククル)編

 今日、天原秋乃と精霊のイチカ・ククルはお雑煮を作って食べる事にしました。
 休日ですので二人とも楽な普段着姿でいます。イチカは王家印の高級サルエルパンツ。秋乃はらくらくスラックス(茶)。他にも装身具などは違いますが、着ているインナーはさりげなく色違いのシックなYシャツです。これは偶然なのでしょうか。それともどちらかがあえて合わせたのでしょうか。
(僕は秋乃ほど料理得意でもないから、お雑煮作りは秋乃に任せようかな)
 イチカはそう判断して秋乃に任せたと言いました。
(イチカに「任せた」って言われたから、俺なりのレシピで作っていいんだよな?)
 秋乃は秋乃でそう判断します。面倒くさがりなのですが、任せられた以上、頑張ってみようと思ったのです。
 そういう訳で秋乃は材料を用意し、キッチンで作業を開始します。ちなみに秋乃の自宅のキッチンです。
(餅は角餅で、すまし汁、具は大根と人参と……)
 それが彼の故郷のお雑煮でした。ところが、イチカは違ったようなのです。
「ってあれあれ、角餅なの?丸餅じゃなくて?」
「え、お味噌入れないの?」
 寄ってきたイチカは作業をしている秋乃に、色々と横やりを入れたのでした。任せるって言ったのに。
「って五月蠅い!! 黙って待ってろ!!」
 イチカがあまりにもいろいろ言ってくるものだから、秋乃は思わずキレてしまいました。彼は思った事がすぐに顔に出るタイプです。
(料理の邪魔をしてくるあいつが悪い。そもそも、急におしかけてきて「お雑煮食べたい」とか勝手にもほどがあるぞ。……まあ、それでおとなしく作ってやってる俺もどうかと思うが……)
 秋乃はイライラとお鍋の中身をかき回しながら思います。何故秋乃の自宅のキッチンで作業がされているのかというと、イチカが強引に頼み込んだのですが、流されやすい彼は、正月早々、相方のために結局自分がお雑煮を作ってあげていたのでした。
 そんな流されやすい調子で、気づいたら精霊と契約して、いつのまにかA.R.O.A.に所属することになっていたのです。性格とは恐ろしいものです。
(まあ、任せるっていったの僕だもんね。こたつにでも入って、ゆっくり待つとしようかな)
 怒られたイチカは素直にこたつの中に入って大人しくなりました。そういう悪びれた様子が彼の可愛げなのかもしれません。
「不味くても文句言うなよ」
 やがてお雑煮を作り上げた秋乃は、お椀によそってイチカに渡してくれました。
「僕が食べてたお雑煮とは違うけど、この味付けのお雑煮も美味しいよ。さすがあきのんだね」
 秋乃もイチカが美味しいと言ってくれたので一安心です。しかし、それはそれとして。
「つか、あきのんって呼ぶの今年こそやめろ」
 彼は子供の頃のあだ名で呼ばれるのが苦手なのです。イチカに呼ばれるのは特に苦手なのです。彼はちょっと本気で怒っていたかもしれません。
「美味しかった。ありがとう、秋乃」
 秋乃の様子を見て、イチカは言葉を直して、真面目な顔で言いました。秋乃は緑色の眼を少し大きく見開きます。イチカは赤い瞳を薄く閉じるようにして気さくににこにこ笑っています。
(……今度作る時はイチカの好みの味つけにしてやるか……)
 真顔でお礼を言われ、美味しいと言われたら、秋乃だって悪い気はしません。イチカの放った言葉にときめいてしまいます。
(あ、少し顔赤くなった? 秋乃ってばわかりやすいなあ~。今年もよろしくね♪)
 そんな秋乃の反応にイチカはすっかり嬉しくなってしまったのでした。
 剣呑な雰囲気にもなりましたが、今はほんわかとした空気に包まれています。今度は秋乃とイチカが一緒にお雑煮を作って食べてみるのもいいかもしれませんね。
 今年も仲のいいウィンクルムで幸せになれますように。

アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)編

 その日、アキ・セイジはお雑煮の具材を沢山買って帰ってきました。
 それから、精霊で相方のヴェルトール・ランスに一緒にお雑煮を作ろうと誘います。
「ランスの好きな鶏肉もたっぷりで……どうかな?」
 鶏肉の塊にランスは俄然やる気を発揮します。
「肉は日本酒に漬けとくんだよな」
 うきうきと言うランスにアキはちょっと変な顔をします。
「その間に餅も焼くぜ。あれ?丸餅だ。……間違って買っちゃったんだな。なあ、椎茸ドコ? 干し椎茸じゃなくて」
「椎茸? 干しならあるけど出汁は昆布と鰹だろ? 香ばしい香り……って餅焼いてる?!」
「うん餅焼いてる所。もうすぐ膨らむぜ。へ? 今食べるんじゃなくて雑煮に……」
 あれえ!?
 ランスの声が裏返ります。
 どこまでも食い違ってズレていく二人の動き。ちぐはぐどころの話ではありません。
 セイジははあはあと息を切らします。
「一寸待とうか。情報整理しよう。どうやら俺達は全く別の料理を作ろうとしているんだな」
 それでお互いに、お正月のお雑煮とはどんなものかを説明ました。

ランス:清まし、焼き角餅、鶏肉、椎茸、小松菜
セイジ:白味噌、丸餅、鶏肉、人参里芋、三つ葉

「一緒なの鶏肉だけかよ!」
 ランスはびっくりします。なんだか「えーっ」っていう感じです。
 そこでセイジが言いました。せっかく楽しい正月、美味しい雑煮なのに、喧嘩になったら損です。
「2人の案を合わせたらどうかな。餅はそのまま焼いて、椎茸は戻して、人参と里芋は入れず蒲鉾にしよう。出汁は…じゃんけんで」
 じゃんけんをしたところ、セイジが勝ったので白味噌の出汁になりました。
 セイジの提案にランスも、それもそうかと思い直しました。
「俺達風雑煮にしちゃおうぜ」
 ランスはなんだか嬉しくもなってきました。
 それから二人は自分たちの雑煮の特徴を合わせて新しい雑煮を作って完成させました。二人で取り組む新しい作業はとても楽しく魅力的でした。
 最後に、お雑煮をよそった御椀には追い鰹節をドバっと入れるランス。
「これが決め手だよ」
 そう得意顔です。
「鰹節どんだけ入れてんだよランスは」
 セイジは苦笑します。それから二人はこたつにお雑煮を持って行って一緒に食べ始めました。
「あ、でも、鰹節と一緒に餅を食べると美味いや……」
 もぐもぐと美味しそうに鰹節とお餅を食べるセイジ。
「な? 美味いだろ?」
 ランスは満足そうです。
「やっぱり冬は雑煮だよな。鍋も良いけど雑煮も好きだよ」
 美味しそうにお雑煮を食べながら口元に笑みを浮かべてセイジが言います。
(好きだよ…か)
 ランスはその言葉に誘惑されました。
「最後の部分もう一回言って?」
 ランスがセイジにそうせがみました。
「?「好きだよ」?」
 セイジは素直にそう答えます。
(何だろ?)
 天然なのか、セイジはランスの言葉の意味が分かりません。
「いいからいいからもう一回」
 不思議そうに「好きだよ」と言うセイジに対してランスは幸せなぐらい嬉しそうです。
「冷酒をチョコっとどう? 俺、取って来るからセイジはぬくぬくしてて」
 すっかり機嫌がよくなったランスはいそいそとお酒を取りに行きました。
「うん…貰うよ。コタツはぬくぬくしてなんとも出づらくて甘えてしまうんだ」
 こたつでぬくまりお雑煮を食べながら、もうセイジはこたつから出られない人になりかかっています。
 そして二人はお正月は、こたつに入ってお雑煮を食べて、お酒もちょこっと、だらだらと、しかしとても仲良く幸せに、まったりほのぼのと迎えたのでした。
 正月の幸せはきっと一年は続き、この一年もウィンクルムとして苦しい討伐があっても、きっと力を合わせて乗り越える事が出来るでしょう。何しろこんなに、仲がよいのですから--。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 森静流
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 01月02日
出発日 01月11日 00:00
予定納品日 01月21日

参加者

会議室

  • [11]瑪瑙 瑠璃

    2016/01/10-23:26 

    珊瑚:
    ……わんは食べた事ねぇけど、雑煮にアンコって本当にあるんだな。
    (※ネットで調べた)

    ちなみに、きな粉雑煮もあったぞー。
    っていうか、雑煮の世界って、ルミノックスより広いんじゃねぇか……?

  • [10]瑪瑙 瑠璃

    2016/01/10-23:13 

    寒中見舞い申し上げます。
    ……ゆるふぇすの「来たべさ」こと瑪瑙瑠璃です。

    李月さん達は初めまして。
    アキさん達、カインさん達は先日お疲れ様です。
    秋乃さん達は……日記の件ですね。
    (※数ヶ月前の話なので、記憶が忘れかけている)
    出発直前になりますが、改めてよろしくお願いします。

    プランは出しています。
    最近「台詞より行動の方に文字数が裂かれてる病」に侵されました。
    治療薬は、ないんでしょうか。

    ……以上です。
    明日は良いお雑煮日和になるといいですね。

  • [9]アキ・セイジ

    2016/01/10-23:05 

    プランは提出できているよ。

    雑煮は地域によっても家庭によっても違うよな。
    どれも美味しいと思うんだ。
    けど…アンコをいれるのは一寸理解しづらいな。
    幸いランスはアンコは入れないみたいだから、きっと俺達は歩み寄れる。
    和睦の道は遠くない。

  • [8]瑪瑙 瑠璃

    2016/01/10-22:56 

  • [7]李月

    2016/01/08-11:03 

    李月とゼノアスです
    よろしくお願いします

  • [6]アキ・セイジ

    2016/01/08-00:06 

  • [5]瑪瑙 瑠璃

    2016/01/07-00:52 

  • [4]天原 秋乃

    2016/01/07-00:37 

  • カインとイェルクだ。
    ぶっちゃけ俺とイェルって、地元同じだからお雑煮は家庭の誤差範囲なんだよなぁ。
    が、逆に違うお雑煮への感想が一緒という利点もあったから、楽しくやるわ。

    つーわけで……

  • [1]瑪瑙 瑠璃

    2016/01/05-23:47 


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