おせちは何味?(森静流 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 クリスマス、大掃除が終わると新年はもうすぐそこです。
 初詣に行って、書き初めをして、初売りに行って……。
 色々と計画を立てるあなた。
せっかくの三が日なのですから、出かけるのもいいものですが、元旦ぐらいはおせち料理を食べて家でゴロゴロしてみるのもいいものです。
 何しろ今年はクリスマスのオーガ討伐が一苦労だったんですから。
 お正月をゆっくり休むためにおせちを作り置きしようと、あなたはスーパーに出かける事にしました。
 スーパーでは既におせちのコーナーが設置され、出来上がったかまぼこや伊逹巻などが陳列されています。その他にも黒豆や田作りや……。
「どうしようかな。最初から手作りしてもいいけれど、このスーパーのおせちもいいかも……」
 そんなことを呟きながら野菜や果物のコーナーから見て回る事にします。
 そのコーナーの隣におせち料理のピンナップが張り出されていました。
「へえ、最近はカレー味やゆずこしょう味のおせちなんてあるんだ。伝統もいいけれど、変わり味も挑戦してみたいよね~」
 無料でレシピが頒布されていたので何枚か貰っていくことにします。
「そういえば、あいつはおせち料理の事、どう思っているんだろう。うちの実家では栗きんとんが定番だけれど、あいつの家では……?」
 なんだか相方のおせちの事も気になってきました。一緒にこたつでおせちをつつくお正月、それもいいかもしれません。

解説

ウィンクルムのおせち、お正月の思い出。
 お正月にこたつでおせち料理をつつきながら、あるいは一緒におせちを作ったりしながら、おせちとお正月の思い出を語り合って下さい。
 おせち料理は
 1伊達巻き
 2黒豆
 3田作り
 4栗きんとん
 5紅白なます
 6おにしめ
 7叩きゴボウ
 8花人参
 etc……
 この中から自由に選んで下さっても構いませんし、お好きなおせち料理を書いて下さってもOKです。
 おせちやお雑煮の事で喧嘩する新婚カップルのようなウィンクルムもよし。一緒におせちをつくってほのぼのする熟年夫婦のようなウィンクルムもよし。素敵なプランをお待ちしています。
 おせちの材料を買ったということで500jrいただきます。


ゲームマスターより

皆さんが平和で楽しいお正月を迎えられるようにと思いながら書きました。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

かのん(天藍)

  天藍が手伝いに来てくれたので、飾り切り等お煮染めの下拵えしながらおせち談義

1人で年末を過ごしていた時はあまりお正月らしい事をしていなかったのでおせちも久し振りです

両親と死別した頃(十代半ば)はおせち作りのお手伝いをあまりしていなかったので、お母さんのレシピが分からないのですよね
彩り鮮やかにお重に入っていた記憶はあるのですけれど
もう二度と食べられないんだなと思うと…少し寂しいです

天藍のお家はどうだったんですか?

天藍はお正月実家に帰ったりはしないんです?
一緒に過ごせるのは嬉しいのですけれど…

余計なお節介だと思いますけれど、会える時に家族と会っておいた方が良いと思うのですが…

天藍が良いのなら喜んで…


ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)
  ディエゴさんはおせちのおかず?に茶碗蒸しが好きなようです
作ったことはないですが、料理の本を見ながら作ってみましょう

…いえ、ただ作って出すのは面白くないですね
うーん
そうだ、まずプリンを作りましょう
そしてそれを「茶碗蒸し」と言って差し出すんです
どんなリアクションするかな~
あ、ちゃんと茶碗蒸しは並行して作りますよ。

まずはプリンを「茶碗蒸し」として出します
駄目だ、まだ笑うな
ディエゴさんの動きが固まった時に笑顔で「美味しい?」って聞いてみます
言い淀むディエゴさんが流石に可哀想になってきたので種明かしです
プリンとしてもう一度食べてもらうと美味しいって言ってくれました
でも、メインディッシュは茶碗蒸しですよ~


シルキア・スー(クラウス)
  館の共有台所で調理

黒豆煮つつ
黒豆って
健康にまめに働く
て意味なんだね
料理それぞれ意味ある事に感心
クラウスが和食好きなのってこういう所からなの?

(心遣いに溢れた‥
それってクラウスみたいクスッ

黒豆アク取り
昆布巻き(喜び願い
伊達巻(勉強家な彼の勉強が捗る様に
作りつつ
新年の風習話

お婆様が
幸運クッキーを1つ仕込んだケーキを
近所の子に振る舞ってた
私は当った事無かったけど
遠い目

わ‥
ワイルドだね
(彼って実は体育会系?

オーブン設定ミス焦がしたのは伊達巻
ああっ知識が焦げた

かまけてる内昆布も煮汁尽きて
きゃあーよろ昆布も焦げ昆布に

超テンパリ
黒豆だけは
鍋の取手引っかけ
あ‥(終わった

実食
後光が見える
(貴方に出会えて良かった


シャルティ(グルナ・カリエンテ)
  1伊達巻き
大丈夫、手紙送って親に作り方訊いたし。なにより料理もするし
 思い出……それ、私に訊くの?
ダメじゃないけど別に。まあ、お正月らしい思い出はないけど
って、言うのも、
前までは親から守ってもらう身だったし日付感覚も狂ってたしで、お正月って言われても今でもピンと来ないくらい。というか、そんな暇自体なかったんじゃない?
……どういう意味? それ

明日はなに作ろう…んー
…殴るわよ黙らないと
 あんたは無かったの? 思い出
でもグオリャンと知り合いだったんでしょ?(もう1人の精霊

…あ、忘れてた
あけましておめでとう。今年もよろしくお願いします


リーヴェ・アレクシア(グレリヴィー・ミディアス)
  我が家でグレイと一緒にお節作り
お節は私が作ってたし、想定範囲の申し出だな

昆布と黒豆は既に戻してある
幾つか作業は並行するからな
※所謂関東(東京)系を普通に作成

(作業中)
ウィンクルム活動に熱心だったからだろうが、あれはないよな…
私は5歳にして、自分が料理しないと死ぬと思った
生存本能の発揮だな

リクト(双子の下の弟でグレイの結婚相手)も仕方ない奴め
銀雪?
最近トリップ率が高い※EP38以後だが本人は大した事と思ってない
好きか嫌いかで言えば好きだが、そういう意味ではないな
可愛い奴とは思うよ
…ブレなさ過ぎるが※EP34、39

お節の意味を教えつつお重に詰めて完成
新年はのんびりしたい
銀雪がお節食べに来そうだがな


リーヴェ・アレクシア( グレリヴィー・ミディアス ) 編

 今日はリーヴェ・アレクシアが精霊のグレリヴィー・ミディアスとおせち料理を作る日です。
 グレリヴィーこと通称グレイは、リクトに手作りのおせちを食べて欲しいのでリーヴェに習いに来たのでした。
(おせちは私が作っていたし、想定範囲の申し出だな)
 総菜屋で働いているリーヴェは自信がありますし、快く引き受けました。
 当日、グレイがリーヴェの台所に行くと、金髪に金色の瞳の彼女は、シックなYシャツに楽なスラックス姿で出迎えました。そうしたざっくりした姿もかなりの男前な彼女には似合っています。
 銀髪のふわふわしたロングヘアに緑色の瞳のグレイも、ブルー系のシックなYシャツにスラックス姿です。胸ポケットにはしっかりとメモ帳。リーヴェのおせちテクニックを全てメモしていくつもりです。
 既に昆布や黒豆は戻してあります。さあ、作業開始。
「準備ありがとう、抜かりない」
 流石に手際のいいリーヴェにグレイは素直に賞賛を送ります。
「いくつかの作業は並行するからな」
 そうして、リーヴェはグレイと醤油ベースのしっかりした味付けのお節を普通に作成し始めました。リーヴェはてきぱきと手際がよく、教える口調も頼もしいものです。隣のグレイはしっかりメモをとりながらも手伝っていきます。
 リーヴェはお節作りを教えながら、義姉弟らしい会話も挟まりました。
「僕の両親も君の両親もウィンクルム活動熱心だったからかこっち方面凄まじいよね」
 グレイはリーヴェの作っているおいしそうなお節を見つめながら苦笑交じりにそう言いました。
「ウィンクルム活動に熱心だったからだろうが、あれはないよな……」
 リーヴェも親の悪口は言いたくないのですが、正直な感想を漏らします。
「引退後の両親が共働きになった関係で自営業の君の家に子供の頃はよくお世話になったが、君が初めて炊いたご飯に感動した位凄まじい」
 ウィンクルムだった両親は、それは多忙だったのでしょうが、子供にとってはとんでもない経験をさせられていたようです。
「私は5歳にして、自分が料理しないと死ぬと思った。生存本能の発揮だな」
「生存本能の発揮……冗談と笑えない……僕達は親の手料理ならぬ君の手料理で育った」
 そこでふとリーヴェは弟の存在を思い出し、彼はどうしているかグレイに訊ねました。双子の弟のリクトはグレイと結婚しているのです。
「リクト? 家の大掃除してる」
「リクトも仕方ないやつめ」
「銀雪が手伝うらしいから君の話で盛り上がって大掃除になるか不明だが」
「銀雪?」
 リーヴェは彼の名前を問い直しました。銀雪は実にわかりやすくリーヴェに対して恋をしているのです。
「実際どうだ?」
 からかうような、本気で気にかけているような、どちらともとれる表情でグレイはリーヴェの真意を問いかけました。
「最近トリップ率が高いがたいした事と思ってない。好きか嫌いかで言えば好きだが、そういう意味ではないな。可愛い奴とは思うよ。…ブレなさ過ぎるが」
「…今後の彼の努力に期待する」
 グレイはやはり苦笑気味です。
 そうしているうちにすっかりお節ができあがりました。
 リーヴェの特製のお節は華やかながらも伝統に沿ったもので、誰からも好評を受けるでしょう。総菜屋勤務は全く伊逹じゃありません。
 リーヴェはグレイにお節の意味を一つずつ教えながらお重に詰めていきます。最後までやって完成です。
「新年はのんびりしたい。銀雪がお節を食べに来そうだがな」
 気にしていないようでも、リーヴェはなんだか銀雪が来るのを期待しているようです。
「新年はゆっくり過ごしたい」
 グレイの方はそんな義姉をどう思っているのか、同じような事を言っています。一緒にお節を作って、同じような事を考えて、とても気の合っている義姉弟ですね。来年もきっと仲良く過ごせる事でしょう。

シルキア・スー(クラウス)編

 今日は館の共同台所で、シルキアは頑張ってお節を作っています。
 精霊のクラウスは、和食に馴染みが薄くしかもお節の風習を知らない彼女が気になり作り始めた所へ様子見に来ました。
 シルキアはちょうど、ぐつぐつと黒豆を煮込んでいました。
「黒豆って、健康にまめに働くって意味なんだね」
「そうだな。知れば奥深な心遣いに溢れた食文化に驚かされる」
 シルキアの言葉にクラウスがそう応えました。シルキアは料理それぞれ意味がある事に感心しています。
「クラウスが和食好きなのってこういう所からなの?」
 シルキアは思い切って切り込みましたが、クラウスは聞き逃してしまいました。
「ん?」
(心遣いに溢れた……それってクラウスみたい)
 シルキアは思わずくすっと笑ってしまいます。
 シルキアは黒豆のアク取りをし、喜びを願って昆布巻きを作り、勉強家な彼の勉強がはかどるように伊達巻きを作ります。
 お節を作りながら、シルキアは、故郷の新年における風習の話を始めました。
「お婆様が幸運クッキーを1つ仕込んだケーキを近所の子に振る舞ってた。私は当った事
なかったけど……」
 ついつい遠い目になってしまいます。
 クラウスは彼女の話をほほえみながら聞いています。やがて自分も話し始めました。
「前年の遺恨を掃う為、遺恨を持つ者同士で思いの丈を出し切り殴り合うというものがあったが……」
 何でもないように語っています。
「わ……ワイルドだね」
 シルキアはなんだかクラウスの別の一面を見たような気持ちです。
(彼って実は体育会系?)
「あれは実に潔い禊行事だったと思う」
 クラウスは涼やかに語っています。
 シルキアは真顔でうんうんと彼の話に聞き入っていました。それが悪かったのでしょうか。
 そこでクラウスが異臭に気がつきました。
「焦げているぞ!」
 シルキアは叫ばれてから気がつきました。
 火の元を振り返ります。
 オーブンの設定ミスです。
 焦がしたのは伊達巻き。
「ああっ! 知識が焦げた!!」
 慌ててオーブンに突進するシルキア。
 オーブンの方をがちゃがちゃしているうちに、昆布巻きの煮汁がつきます。
「きゃあー! よろ昆布も焦げ昆布に!!」
 焦げる伊達巻き。焦げる昆布。
 火の元を止めて、あっちを見たりこっちを見たり、シルキアは超テンパってしまいます。
 そこを慌ててクラウスがフォロー。
「伊達巻きは香ばしいぐらいが食欲を誘ってよい」
「昆布巻き、俺は喜んで食すと誓おう」
 落ち着かせようと言ったクラウスの言葉ですが、どういう訳かシルキアはますます焦ってしまいます。
 健康を守る黒豆だけはと慌ててつかんだ途端に、シルキアは何と取っ手に袖口を引っかけてしまいます。
 鍋がコンロから外れて……
(あ……終わった)
 気が遠くなりそうな瞬間、戸口から飛び出てきたクラウスが鍋をがっちりとキャッチ。コンロに戻します。
「無事だ今年の健康は守られた」
 クラウスのフォローのおかげで何とか食べられそうです。
 さて実食……。
 シルキアが作ったお節ですが、すっかり焦げ焦げ。何しろお節初心者なのだから仕方ないのですが。
 クラウスは、いつもの穏やかな笑顔が気を抜くと緩みそうな事に少し焦りつつも、食べました。
 シルキアがお節に込めてくれた気持ちには感謝しているからです。
「ありがとう」
 そう言って食べてくれるクラウスに、シルキアは後光が見えるような思いでした。
(貴方に出会えてよかった……)
 来年はきっとおいしいお節を食べてもらいましょうね!

ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)編

 ハロルドは、精霊のディエゴ・ルナ・クィンテロと想いが通じ合ってからは、彼をからかって照れさせる事が好きです。
 お正月に何が食べたいか、ハロルドはディエゴに聞いて見ました。
 すると彼は、「茶碗蒸し」と答えたのでした。お節もいいのですが、お正月に茶碗蒸しは、彼にとってはなくてはならないものなのです。
(ディエゴさんはおせちのおかず?に茶碗蒸しが好きなようです。作ったことはないですが、料理の本を見ながら作ってみましょう。……いえ、ただ作って出すのは面白くないですね。うーん。そうだ、まずプリンを作りましょう。そしてそれを「茶碗蒸し」と言って差し出すんです。どんなリアクションするかな~。あ、ちゃんと茶碗蒸しは並行して作りますよ)
 そういう訳で、ハロルドはディエゴを台所から閉め出してしまいました。どうせ作るなら一緒に、と思ってついてきたディエゴですが、リビングに押し出されて手持ちぶさたです。
 ですが、作ってくれるなら楽しみに待っていようと、ソファに腰を落ち着けたようです。
 そうして、いよいよ、ハロルドは台所から該当の料理を持ってきました。
 顔は自信ありげに満面の笑みです。
「茶碗蒸しです」
 そう言って、ハロルドはプリンをディエゴの前に置きました。
(少し心配だったが茶碗蒸しはできたようだ。見ためは美味そうだな)
 そういう訳で早速彼は茶碗蒸しだと信じ込んでプリンを食べました。
「……いただきます」
 ハロルドはにこにこと笑っています。
「………………………………」
 ディエゴは箸を持ったまま硬直しています。
(なんで茶碗蒸しがこんなに甘いんだ!?)
 茶碗蒸しだと思っていますから、とんでもない味が口の上に広がっています。
「美味しい?」
 ハロルドは天使のような微笑みでそう問いかけます。
(どう答えようか……正直に言って、いや……)
 こんな甘い茶碗蒸しは食べた事がありません。しかし。
「お、美味しい……」
 作ってもらったハロルドの気持ちを考えてディエゴはそう答えました。いい人です。
 言い淀んでいるディエゴを見ていて、ハロルドはちょっと可哀相になってきました。
「それは、茶碗蒸しじゃなくて、プリンですよ」
 そこでようやくハロルドは種明かしをしました。
 ディエゴはまたハロルドにからかわれた事に気がつきました。
「遊ぶな」
 そう言って背の低い彼女の額をトンと指先で突きます。
 ハロルドは楽しそうにデコトンを受けています。
 それから、ディエゴは正体の明かされた該当の料理をもう一口食べてみました。
「プリンとして食べたら、美味い」
 ハロルドは初めてでしたが、ごく普通のプリンを作れたようです。
「メインディッシュに茶碗蒸しも作っていますよ」
 ハロルドは褒めてもらえて嬉しそうにそう告げました。ディエゴの事をからかう事は好きですが、ちゃんと彼の願いも聞き入れる事が出来るのです。彼の事が大好きですからね。
「安心した」
 ディエゴはお正月の茶碗蒸しをちゃんと食べられるようです。ほっとしながらディエゴはソファに座り直し、まずはハロルドのいたずらのプリンを食べ終える事にしました。
 からかわれたけれど、そういう行動を許すのは彼女だからです。彼女の作ったものもきちんと食べ終えてくれるのでした。
 正月早々、いちゃいちゃと仲のよい二人。今年もきっと愛の幸運が沢山舞い込んでくる事でしょう。

シャルティ(グルナ・カリエンテ)編

 シャルティは今年のお節料理に伊達巻きを作る事にしました。
 同じ借家で暮らしているグルナが当然、手伝いをしに近づいてきます。
 純和風の伊達巻きを作ろうと頑張っているシャルティでしたが、その日、身につけていたのは髪飾りに漆黒の薔薇、衣装はメルヘン街道ワンピースでした。白色系の長い髪の毛と紫色の瞳を持つシャルティが、そうした衣装に様々なアクセサリーを身につけていると、正にゴシックロリータと言った雰囲気です。
 グルナの方も銀狼を刺繍された黒のホワイトヴァイツをインナーに着込み、ネックレスにジンジャーカップル、イヤリングに月幸・半月と、全体的に黒っぽくシャープな雰囲気。 それでもしていることはお正月の伊達巻きの手伝いです。かえってほのぼのしてしまいます。
「……おい、大丈夫なのかよ作り方とかその他いろいろと」
「大丈夫、手紙送って親に作り方訊いたし。なにより料理もするし」
「なあお前って正月の思い出、なんかあるか?」
 何となく気になって、グルナはシャルティに問いかけました。
「思い出……それ、私に訊くの?」
 何事も冷静沈着でそっけないシャルティは、お正月の話をしてしんみりという性格には見えません。ですがグルナは食い下がりました。
「お前しかいねぇだろ。で、ダメか?」
「ダメじゃないけど別に。まあ、お正月らしい思い出はないけど」
 シャルティは手を休めずにそう答えました。
「ふぅん……やっぱ結構忙しかったみてぇだな」
「って、言うのも、前までは親から守ってもらう身だったし日付感覚も狂ってたしで、お正月って言われても今でもピンと来ないくらい。というか、そんな暇自体なかったんじゃない?」
 さらっと簡単にシャルティはそう言いました。
 お正月に親がいなかったことも、大して気にしていない様子です。
「お前……よく生きてたな」
 グルナは真顔でそう言いました。
「……どういう意味? それ」
 本当に、気にしていなかったシャルティは、グルナの反応に突っ込みました。
 そうこうしているうちにシャルティは人数分の伊達巻きを作り終えました。
「明日はなに作ろう…んー」
「つーか明日のこともう考えてんの? ああ、食う気満々なのか太るぞ」
 グルナはにやにや笑っています。
「…殴るわよ黙らないと」
「ははっわりぃわりぃ!」
 悪いと言いつつ全く悪びれていないグルナ。
 シャルティはあきれながらも、ふと彼に問いかけました。
「あんたは無かったの? 思い出」
「俺? 別になんも。……誰と過ごしたっつー記憶もねぇし。あーいや俺も同じで日付感覚は狂いっぱなし、だった」
 お正月のようなイベントを家族と過ごしていないと、また、家族との思い出が少ないと、日付はどんどん狂っていくものなのです。
 自分一人で、自分の事だけしていればいい、自分の身を守れさえすればいい、そういう気持ちが高まっていって、周囲への関心も薄れていきます。
「でもグオリャンと知り合いだったんでしょ?」
 シャルティはもう一人の精霊の事を思い出して訊ねました。
「なんで知り合いっつーだけで正月にあいつと過ごした云々の話になんだよ気持ちわりぃ」
 グルナはそう言って精悍な顔を顰めました。
 シャルティはそれ以上、聞くのは諦めました。
「……あ、忘れてた」
 シャルティは腰掛けていた椅子から立ち上がり、ぺこりとグルナへ礼をしました。
「あけましておめでとう。今年もよろしくお願いします」
「ん、こちらこそよろしく。シャルティ」
 グルナも礼儀正しく頭を下げました。
 以前は、一緒にお正月を過ごす誰かもいなかった二人ですが、今はこうして、顔を見合わせて声をかわせる相手がいます。
 それまで、自分一人の淡々とした生活を送っていたとしても、これから開ける一年は、誰かとの交流で心に血が通い、時間を取り戻していくものになるのかもしれません。
 既にお節は作っていますし、一月から順繰りに、季節を彩るイベントで、人生に新しい「日付」を作っていくのでしょうね。あけましておめでとうございます。

かのん(天藍)編

 かのんと精霊の天藍は、正月は一緒に過ごそうと約束をしていました。
 お節を作る日、天藍はかのんを手伝いに来ました。
 かのんは天藍が手伝いに来てくれたので、飾り切り等、お煮染めの下ごしらえをしながらお節の話を始めます。
「1人で年末を過ごしていた時はあまりお正月らしい事をしていなかったのでおせちも久し振りです」
 天藍は作業の手を止めて、しんみりした様子のかのんの頭をなでました。
 今日のかのんはインナーにフェアリースノウニット。ボトムスは和風の飛翔・朱雀演舞です。
 一方、天藍の方はインナーは狐神御服「黒衣大和」と和風で、下にはヴァン・ショーパンツを履いています。
 二人とも上着はおそろいで夜叉装束「黒桜」。桜の優雅な美しさが二人の大人びた雰囲気によくあっています。
「両親と死別した頃は、おせち作りのお手伝いをあまりしていなかったので、お母さんのレシピが分からないのですよね。彩り鮮やかにお重に入っていた記憶はあるのですけれど、もう二度と食べられないんだなと思うと…少し寂しいです」
 親から残された家には花と緑が溢れていてガーデナーとしては癒やされる毎日を送っています。それでも、お節を作る時に、母からもう教わる事はないのかと思うと、寂しさに襲われてしまうのは仕方ないかもしれません。
 そう話した後、かのんはふと天藍に紫色の瞳を向けました。
「天藍のお家はどうだったんですか?」
「実家の正月はおせちより具沢山の丼で出てくる雑煮のイメージかな」
 どんぶり? とかのんが首を傾げます。
「食べ盛りの男兄弟ばかりだったから、お椀だと何度もおかわりするんで、最初から大きな器にしたんだと思う」
 そういう天藍の茶色い瞳は、故郷の事をずっと懐かしんでいるようでした。口元にも優しい笑みがあります。
「天藍はお正月実家に帰ったりはしないんです? 一緒に過ごせるのは嬉しいのですけれど…」
 遠慮がちにかのんは訊ねました。
 タブロスに出てきてからは殆ど帰っていないと天藍は答えます。レンジャーの仕事とウィンクルムとしての討伐のため、ついつい先延ばしにしてしまっていたのでした。
「余計なお節介だと思いますけれど、会える時に家族と会っておいた方が良いと思うのですが…」
 控えめながらも強い口調でかのんは言いました。
 天藍は、両親を亡くしたかのんだからこその言葉だから、お節介だとは思いません。かのんもよその家庭に首を突っ込みたい訳ではなくて、純粋に天藍を思う気持ちからそう言ってくれているのです。
 かのんの天藍を想う気持ちは本物なのです。
 彼は、そんな彼女の気持ちにこたえる事にしました。
「そうだな…かのんさえ良ければだが、今度かのんも一緒に行かないか? 俺の両親や兄弟をかのんに紹介したいし、かのんの事もやっと出会えた大切な人だと紹介しておきたいな」
 天藍はごく優しい気持ちでそう告げました。家族に大切な人を紹介する時期が来たのだと思いました。かのんならきっと申し分ないでしょう。
 かのんは驚きます。
 彼から、両親への紹介。そのあとにステップを進めれば、どうなるのかは知っていますから。
「天藍が良いのなら喜んで…」
 はにかむかのんに天藍はほほえみます。
 彼から正月にそんな言葉をもらえるとは思っていませんでした。だけど、彼にそう言われた時は、喜んで答えようと心のどこかで思っていたのかもしれません。
 今年はどこまで、彼との仲が進むのだろうと、期待がわいてきます。ウィンクルムである以上、ただ甘い気持ちに浸れるばかりではないと、知っています。だけど、彼となら、どんな道を進んでも後悔はしない--そう思えるお正月でした。お節は忘れられない味になりそうです。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 森静流
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 01月01日
出発日 01月08日 00:00
予定納品日 01月18日

参加者

会議室

  • [5]シャルティ

    2016/01/07-13:17 

    よろしく。シャルティとグルナよ。
     普段料理するけどおせちとかはしたことないのよね。
    …なんとかなる…じゃなくてするのよ(謎のやる気

  • [4]かのん

    2016/01/07-07:02 

    こんにちは

    2人でおせちを作るのは楽しそうだなと思って、間際に飛び込みました
    かのんとパートナーの天藍です

    よろしくお願いします

  • [3]ハロルド

    2016/01/06-20:51 

  • あけましておめでとうございます。
    ということで、リーヴェ・アレクシアだ。
    今回のパートナーはグレリヴィー・ミディアス。

    ごく普通にお節を作る予定だ。
    よろしく。

  • [1]シルキア・スー

    2016/01/04-01:33 

    あけましておめでとうございます

    シルキアとパートナーのクラウスです
    どうぞよろしくお願いします

    健康にまめに働く1年になる様に黒豆チャレンジしたいと思います
    料理は苦手なんですけどね‥


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