プロローグ
すっかり雪も解け花々が香り高く咲き乱れる春。
世間にはのどかでうららかな空気が流れるが、各地の川は山からの雪解け水で激しい急流。
そう、ラフティングにはもってこいの季節がやってきた!
ラフティングとは一般的に、楕円形のゴムボートにオールを持った複数名が乗り込み、急流を下るウォータースポーツ。
水飛沫を被りながら猛スピードで川を下るスリルと爽快感で、老若男女問わずファンが多い。
ミットランドでは、トムトム山麓の川でタブロスきってのスポーツ用品専門店「ゴスミスポーツ」主催のラフティング大会が開催予定で、現在参加者を絶賛募集中である。
大会詳細は、ゴスミスポーツ広報課からの説明をどうぞ。
みなさん初めまして。わたくし、ゴスミスポーツ広報課のオクイと申します。
今回開催予定のラフティング大会ですが、参加者には4つのチームに分かれていただき、約20キロメートルのコースを、ゴールまでにかかった時間で順位を決めるタイムトライアル方式となっております。
大会後には、川辺でバーベキューを予定しております。
肉や野菜、魚のホイル焼きのほか、ドリンクもソフトドリンク、アルコールと取り揃えております。
優勝チームにはなんと!ここで高級牛肉のバーベキューセットが贈られますので、ぜひとも勝利の味を噛みしめてください。
参加費用は、おひとり様100jrです。
この料金の中に、ライフジャケットなど道具の貸し出し、バーベキューの食材費が含まれております。
さてここで、4つのチームそれぞれのリーダーから、ひとことどうぞ。
Aチームリーダーは頼れる兄貴、ケンゴ。
「みんなで力を合わせて、とにかく最速のゴールを目指そう!スタートからゴールまで直近ルートで一気に行くぜ!」
Bチームリーダーはルーキーのフィリップ。
「川の周りには美しい自然がいっぱいです。景色を楽しみながら、ゴールを目指したいと思います」
Cチームリーダーは今回唯一の女性リーダー、アンナ。
「一番大事なのは安全性。着実なルートでみなさんを無事にゴールまで導きます」
Dチームリーダーはトムトム川でのラフティング歴17年のベテラン、マイク。
「その日の川の状態に合わせて、一番効率の良いルートを選ぼうと思っているよ。とっておきのルートが使えると良いんだけどなぁ……」
どうやら、それぞれ目的や戦略が違うようですね。
しかし、どのチームでも、大切なのはチームワーク。みんなの呼吸を合わせて激流を乗り越えてください!
参加者希望者は、どのチームに加わりたいかを明記のうえ申請願います。
なお、1チームの人数はリーダーを含めて7人。
希望者が定員を超えた場合は抽選となり、抽選から外れた参加者は申し訳ありませんが、主催者側で振り分けたチームに加入していただくことになりますので、ご了承ください。
それでは皆様のご参加、心よりお待ちしております!
解説
参加費は、1人100jrなので、2人での参加では200jrとなります。
どのチームに参加したいか、プランに書いてください。
優勝を目指すも、純粋に自然とラフティングを楽しむのも、あなた次第です。
ゲームマスターより
アクティブな神人さんにおすすめ!
呼吸を合わせて川を下るうちに、お互いの距離も近づくことでしょう。
ラフティングを楽しんだ後は、バーベキューでも精霊との親睦を深めてくださいね。
リザルトノベル
◆アクション・プラン
ミサ・フルール(エミリオ・シュトルツ)
私達ラフティングって初めてだからCチームを選択するよ 安全は大切だよね アンナさんのセーフティートークをよく聞いて、指示にはちゃんと従うよ チームプレイや、自然の景色とか、色々楽しみたいな♪ 食事はアンナさんや他の皆も誘ってみようかな こういうのは大勢で食べた方が美味しいもんね 食後にエミリオさんと2人で川辺を散歩するよ わぁ、あそこに見えるの何だろう? きゃああ!? エ、エミリオさん!? ごめんね・・・どうも有り難う 私も今日凄く楽しかった! また一緒に来ようね エミリオさん記念写真撮ろうよ カメラ持ってきてるの ・・・距離、ち、近過ぎじゃないかな? は、恥ずかしいよ・・・ エミリオさんも笑顔でね? 約束だよ? はい、チーズ! |
篠宮潤(ヒュリアス)
ケンゴ…さん、宜しくだ(Aチーム) 体力、は大丈夫だと思う えっとオールをこう…? え?うん初めて、だけど。う、ご…ごめん! コツさえ掴めば、無我夢中でいける、かなって…っ (ゴール後) 良かった…ボート傾いた時はどうなるかと…でも、うん。楽しかったよ。 っとワワワ…ッ! …?。……ヒューリ?あ、ありがとうッ う、うん。ずっと緊張のまま踏ん張ってたから、力が入らないみたい、で…(恥) いや!いいっいいっいいから…!!(汗)え、あ、邪魔…っ? (がっくり)皆が集まってくる前、には…下ろしてくれ、ね……(脱力) (バーベキュー) ……(至福) ヒューリ、ちゃんと食べてる?僕?野菜も食べてるよ…っ はい、コレ焼けたみたいだ |
八神 伊万里(アスカ・ベルウィレッジ)
動きやすい服装を着て 念のため着替えとタオルも持参 アスカ君は体を動かす遊びの方が好きかなと思って誘ってみたんです。 さあ、勝ちに行きますよ! Dチーム希望 まずはボートを操る楽しさそのものを味わいたいです。 初心者なのでみっちりレクチャーの内容頭に叩きこみます。 特にその日の最適なルートの読み方等を教えてほしいです。 それが分かれば、ボート上での指示の意味も分かって、やりやすそう。 ボート上ではリーダーの指示に従って漕ぐように努めます。 船頭多くして…って言いますからね、勝手な判断はしないよう心がけます。 力を合わせて、いい成績を残しましょう。 終わったらバーベキューですよ! 実は、こっちの方が楽しみでした…… |
クロス(オルクス)
(アドリブOK) ラフティングか… やった事ないが楽しそうだな♪ だが川に落ちないよう最善の注意を払わねぇと(汗) 俺はオルクと一緒にCチーム 初心者だし安全性が1番だ 勝負なら優勝したいが、今回は楽しめればいいや 初めてだし焦ってやって川に落ちたりしたら大変だろ それにチームプレイが大切だと思うし、皆の息を合わせて且つ楽しみながらゴール迄行けたら良いな バーベキューは参加者全員でワイワイ食べて喋ったり楽しみたいな! 肉や野菜を焼いたり、皆に配ったりもする (焼いたりしていて手が離せないとオルクスが食べさせてくれる 恥ずかしながらも素直に食べる) オルク、お返しだ!はいあーん/// (お返しに自分もオルクスに食べさせる) |
リーヴェ・アレクシア(銀雪・レクアイア)
目的:ラフティングを楽しむ 心情:川下りか、アウトドアスポーツを楽しむのもいいだろう 手段:選ぶコースはBコース。 優勝も確かに魅力的だが、それ以上に景色を楽しまなければ勿体無いだろう。 こういう景色は金を支払っても見ることが出来ないものだからな。 ラフティングの際はライフジャケットをきちりと着用し、安全確認。講習をしっかり受けた上で、出来る限り無茶をしないよう指示を聞きながら、下っていく。 銀雪、川から眺める景色も見事だと思わないか? この景色こそ得る価値が大きいものだ。 バーベキューは銀雪だけでなく、皆とも喋りたい。 そちらの景色はどうだったか、とか、ラフティングは楽しめたか、など。 来て良かったな、銀雪。 |
空は快晴、風は穏やか。
天気に恵まれて、ラフティング大会の日がやってきた!
集合時間より早めに到着したのは八神伊万里とアスカ・ベルウィレッジ。
「アンタがアウトドアに誘ってくるなんて意外だな」
「アスカ君は体を動かす遊びの方が好きかなと思って誘ってみたんです」
「その荷物何入ってんだ?」
伊万里の大きな鞄に疑問を持つアスカ。
「着替えとタオルです。備えあれば憂いなしです」
「気合い入っているな」
「やるからには真剣にやらないと。さあ、今日は勝ちに行きますよ!」
そうこうしているうちに、集合場所には大会参加者が続々と集まってきた。
「こんにちは!今日は晴れて良かったね!」
明るい笑顔のミサ・フルールとエミリオ・シュトルツがやってくる。
「たまには自然の中でアウトドアスポーツもいいものだろう?銀雪」
銀雪・レクアイアを従えたリーヴェ・アレクシア。
「今日は絶対優勝したいな!」
「ほう、ウルはラフティングの経験があるのかね」
「いいや、今日が初めてだ」
「……初めてで優勝は無謀だぞ」
やる気に満ち溢れた篠宮潤と、そんな彼女をちょっと心配そうに見つめるヒュリアス。
クロスとオルクスもやってきた。
「ラフティングはやったことないけど、楽しそうだな。オルクはどうだい?」
「昔に一度体験した事あるが、子供の頃だしな……初心者と変わらないな」
「そうか。今日は川に落ちないように気を付けねぇとな」
集まった面々を見て、エミリオが
「A.R.O.A.のメンバーも結構来てるみたいだね」
と、ミサに言う。
「そうだね。ねぇ、みんなは、どのチームを希望したの?私達はラフティングって初めてだからCチームにしたよ」
ミサが皆に話しかける。
「私たちは、Dチームです」
と、伊万里。
「リーヴェ、俺たちはどのチームにするんだい?」
銀雪がリーヴェに訊く。
「そうだね。Bチームが良いと思うんだ」
「……」
「どうした、銀雪」
「いいや、何も……」
「不満があるならはっきり言ったほうがいい」
「不満というほどでは……。だけど、なぜ、Bチームにしようと思うんだ?」
「優勝も確かに魅力的だが、それ以上に景色を楽しまなければ勿体無いだろう。こういう景色は金を支払ってもなかなか見ることが出来ないものだからな」
「なるほど。リーヴェの意見はもっともだね。よし、Bチームで楽しもう」
銀雪も、リーヴェの考えを聞いて納得したようだ。
「僕たちは、Aチームだ」
優勝を目指すと言っていた潤は、スピード重視のAチームを選んだようだ。
「俺はCチーム。初心者だし安全性が1番だ。できれば優勝したいけど、今回は楽しめればいいや。初めてだし焦ってやって川に落ちたりしたら大変だもんな」
と、クロス。
「勝ち負けよりも、楽しんだもん勝ちだな」
オルクスもそう言って笑った。
簡単な開会式を終えた後、参加者は各チームに分かれて準備運動や注意説明、作戦会議などを行うことになった。
Aチームに参加の潤は、リーダーのケンゴに挨拶をする。
「ケンゴ、さん、宜しくだ」
「篠宮さん、よろしく!うちのチームはガンガン行くけど、体力に自信はあるかい?」
「体力、は大丈夫だと思う」
「よし、それじゃあ、準備体操の後、パドルの使い方をレクチャーするよ!」
念入りな準備体操ののち、参加者にパドルが配られる。
「では、右側に座る人は、パドルの水かき部分を右に、左側の人は反対に構えてね」
「こ、こう、かな?」
「まずは前漕ぎいくよ~!水かき部分を深く水に差し込んで~」
「みずかき……漕ぐ…………回す……」
潤のパドルがぶんっと回ってヒュリアスの鼻先をかすめる。
「こ、こらウルっ。パドルにばっかり集中してないで、周りもよく見るんだ。肩に力が入りすぎなのだよ」
「あ、ご、ごめん」
「これで優勝を狙うとは……大丈夫かね」
「コツさえ掴めば、無我夢中でいける、かなって……っ」
ヒュリアスは頭を抱えた。この分では、ラフティング中も潤から目を離せそうにない。
Bチームに参加したのは、リーヴェと銀雪。
リーヴェはあっと言う間にパドル操作を覚えてしまう。
「ふむ、長いパドルも慣れると動かしやすいものだな。銀雪、調子はどうだ」
「うん……なんとかなりそう……かな」
「両腕は肩幅程度に開くといいそうだ」
と、リーヴェは銀雪のフォームを直す。
リーヴェの助言のおかげか、銀雪もそれなりにパドル操作をマスターした。
Cチームには、ミサとエミリオ、クロスとオルクスが参加している。
「それでは注意事項などを説明させてくださいね」
アンナがセーフティトークを始めると、ミサたちは真剣な面持ちで聞き入る。
パドルの扱い、ライフジャケットの正しい着用など一通りの説明が終わると、
「こういうのって仲間の連携が大切だよね。漕ぐタイミングを合わせる為にかけ声決めない?」
と、エミリオが提案する。
「いいね、それ」
「確かに、息が合わないとうまく進まないからな」
クロスとオルクスも賛成する。
「どんな掛け声がいいかな?言いやすい言葉がいいかしら」
ミサが言うと、オルクスが
「言いやすい言葉、か……オレは、『クロス』かな」
と、にやりとする。
「な……っ、何言ってんだよっ」
思わず赤面するクロス。
話し合いの末、掛け声は普通に「ファイト!」に決定した。
そして、Dチーム。
参加した伊万里は、優勝を狙っているだけに準備体操もライフジャケットの装着もすべてにおいて真剣だ。
アスカも伊万里に負けじと真剣。ボートの上での最適な姿勢や、バランスを崩したときの対処方法などをリーダーのマイクに訊いている。
ひととおりのレクチャーが終わったところで、マイクが、他に質問はないかと訊ねると、伊万里が手を挙げる。
「はい。最適なルートの読み方を教えてください」
「そうだね、ルート選びは重要だね」
マイクはにっこりする。
「川の流れが強いところと弱いところを見極めることが大切だよ。流れが強いと速く進むけど操船が難しくなるね」
「なるほど……奥が深いですね」
「今日は川の水量が多いわりに風が少ないから……とっておきのルートを使えるかもね」
と、マイクは意味深に笑った。
各チーム準備が整い、いよいよボートに乗り込む。
一番手はAチーム。
「それじゃみんな、力いっぱい漕いでくれよな!」
ケンゴの大きな声とともに、潤とヒュリアスたちを乗せたボートが動き出す。
潤は右側の前から2番目、ヒュリアスはその隣に座っている。最後尾にリーダーのケンゴが立ち、ボートをコントロールする。
まずは川幅が広く障害が少ない流れ。
「さあ、どんどん漕ぐよ~!」
ケンゴの指示に従い、潤は無我夢中でパドルを操る。
「ちょ……ウル、ひとりで突っ走りすぎだ。少しは俺の動きも見ろ」
「あ、ご、ごめん!」
「うむ、ちょっと深呼吸したまえ」
ヒュリアスはパドルだけではなく潤もコントロールしてやらなければならないようだ。
「この先は大きなカーブがあるよ!カーブの外側は波が出てるから、波に負けないようにさらに強く漕いで!」
ケンゴの指示でボートはスピードアップ。
カーブを曲がりきるところではボートが大きく傾き多量の波しぶきをかぶる。
「わ、わわっ」
慌てる潤だが、ケンゴは
「これもラフティングの醍醐味だ!」
と、からから笑う。
「お、落ちるかと思った……」
「さあ、ここから岩が多くなってくるよ!障害物の間をぬう最短コースを行くからね!」
ボートは狭い岩間を通り何度も左右に揺れ大きくバウンドし波しぶきをかぶる。
乗っている潤たちは激しく揺さぶられる。
ゴール地点に着くころには、潤はすっかり目を回してしまっていた。
「やれやれ、無事に着いてよかったよ」
ヒュリアスがほっと息をつく。
「傾いたときにはどうなるかと……でも、うん、楽しかったよ」
潤はボートから降りようとして、がくっと膝を折る。
「ウルよ、何をしているのかね」
「う、うん。ずっと緊張のまま踏ん張ってたから、力が入らないみたい、で……」
仕方ない、というように肩をすくめたヒュリアスが、潤より先にボートから降りると、潤の両脇に手を差し込み、まるで猫の子を抱え上げるかのように潤を持ち上げた。
「ひゅ、ヒューリ……っ?い、いや、いいから、自分で降りられるからっ」
焦る潤に、ヒュリアスは溜息とともに一言。
「いつまでもそこに居ては他のメンバーが降りるのに邪魔だろう」
「え、あっ、邪魔……そ、そうだな」
冷静を務める潤だが、内心は(皆に見られる……!早くおろしてくれっ)と気が気ではなかった。
「立てるようになるまでおとなしくしているんだな」
ヒュリアスは潤をボートから降ろすと、手ごろな岩に彼女を座らせた。
Aチームが出発してから5分後、次はBチームの出発だ。
リーヴェは出発前にライフジャケットの装着状況を今一度確認する。
「安全第一だからね」
銀雪もリーヴェに倣って自分のライフジャケットを再確認した。
「さあみなさん、まずは川の流れを感じてくださいね」
Bチームのリーダー、フィリップが言うと、ボートはゆっくり動き出す。
リーヴェと銀雪はボートの最前列で目の前に広がる景色を楽しんだ。
ボートが川の中ほどまで進むと、フィリップからパドルを漕ぐよう指示が出る。
「この先はカーブです。無理をせず、スピードを落としていきましょう」
パドルを漕ぐ手を緩め、カーブに備える。
緩やかにカーブを曲がった先に、草花が青々と茂る平原、その向こうに連なる山々が見える。
「美しいね。街の中にいると、こういう景色が恋しくなる」
リーヴェの唇に笑みが広がる。
「景色を楽しむ余裕があるなんて、さすがだね」
「なんだ、銀雪はもう疲れたのかい」
「いやいや、まだまだ頑張るよ」
景色を楽しみつつ下っていくと、前方にごつごつとした岩間が見えてきた。
「ここからは障害物が多くなります。できるだけ障害物の少ないルートを進みます」
とはいえ、まったく障害物がない場所がないくらいの岩の数である。
ボートが右へ左へと動くたび、頭から水飛沫をかぶる。
平原を進んでいた川はいつの間にか崖の間を走っていた。
「銀雪、見てごらん。木の根の隙間から、子ウサギが顔を出しているよ」
「え、ど、どこに?」
こんな中でも周りの景色が見えているとは、さすがリーヴェだ。
崖の間を抜けると、いよいよゴールだ。
先に到着したAチームのメンバーが手を振って迎えてくれた。
「銀雪、川から眺める景色も見事だったと思わないか?この景色こそ得る価値が大きいものだ」
「そうだね」
「この先、世界がどうなるかわからない。けど、この世界にあのような景色が存在するという事実は、心の支えのひとつになると思うんだ」
「かもしれないね」
明日にでも、オーガとの激しい戦いがあるかもしれない。そんな時に、リーヴェと見た美しい景色、リーヴェと過ごした時間を思い出せば、力が湧いてくるかもしれない。と、銀雪は思った。
「私たちは、焦らず確実に行きますよ」
Cチームのリーダー、アンナがメンバーに声をかけると、「おーっ」と呼吸のあった声がかえってくる。
ボートには、前から2列目にミサとクロス、3列目にエミリオとオルクスが乗った。
ボートが川の流れに乗り出すと、あらかじめ決めておいた掛け声のもと、メンバー全員でパドルを漕ぐ。
「川から見る景色って、きらきらしていて素敵だね!」
ミサが目を輝かせる。そうこうしているうちに、ボートはカーブに差し掛かり、水飛沫が降ってくる。
「うわ~、冷た~!気持ちいい~!」
と、クロスがはしゃぐ。
「さあ、これから障害物が多い場所になりますよ!ひとつひとつ、確実に岩を避けていきましょう!」
「はい!」
アンナの指示のもと、パドルを漕ぐ力を強めたり緩めたりしながら、岩場を抜けていく。
「ラストスパートで~す!」
「おー!」
全員一丸となってボートを漕ぎ進める。どんどんスピードをあげて、ついにゴール。
「水飛沫がいっぱいかかったけど、楽しかったね」
「川に落ちなくて良かったぜ」
「2人とも、良い笑顔だね」
「来たかいがあったな」
楽し気なミサとクロスを、エミリオとオルクスがにこやかに見つめた。
最後はDチーム。
ベテランの技を活かしたこのチームが出すタイムによって、勝敗が決まる。
伊万里は右側の前から2番目に座り、アスカはその後ろについた。アスカは、何かあったら伊万里を支えられるようにと、この位置にしたのだ。
「では、出発するよ~」
伊万里たちを乗せたボートがゆっくり進む。
川の流れに乗ると、全員でパドルを漕ぎ始める。
「さあ、カーブが見えてくるまでとにかく漕ぎ進めて!」
マイクは川の流れの微妙な強弱を読んでボートをコントロールする。
事前に、どのようなルート取りが有効か聞いていた伊万里は、ボートの動きに送れることなくパドルを動かすことができた。
「さあ、カーブだよ!カーブの外側に行きすぎると転覆しちゃうからね、ちょっとだけスピード押さえて!」
「はいっ」
ボートはさほど傾くことなくカーブを曲がりきる。
目の前に美しい景色が広がったのも束の間、今度は障害物の岩がごつごつと飛び出している。
「最小限の動きで済むようなルートを行くからね。全力で漕いで!」
「えっ?」
マイクの指示に疑問を持ったが、とりあえず従う。
目の前の水面下に、大きな岩陰が見える。水流が水面下の岩にぶつかり跳ね返って、小さな水の山のようになっている。
(これ、避けなくていいの……?)
伊万里は座礁や岩に跳ね返った水流の勢いで転覆するのを心配したが、ボートはスピードをあげまっすぐ進む!
ボートの先が水の山に乗った、と感じた瞬間、ボートは水面をジャンプしていた。
「きゃあぁっ」
思わず悲鳴が口をついて出る。伊万里が倒れないようにと、後ろからアスカがしっかりと支えてくれた。
スピードに乗ったまま岩間を抜け、さらに加速してゴールまで突っ切る。
「いやぁ、今日はコンディションが最高だったよ」
と、にこにこしているマイク。
「ハラハラするところもあったけど、きれいな景色も見られて楽しかったですね、アスカ君」
「えっ、ああ、そうだな。あはは」
伊万里のうなじに見惚れて景色なんてほとんど見ていない、なんてとても言えないアスカだった。
ゴール地点では、ゴスミスポーツのスタッフにより、すでにバーベキューの準備が済んでいた。
「さあ、お待ちかねの結果発表です!」
ゴスミスポーツ広報課のオクイが拡声器で叫ぶ。
「優勝は……Dチーム!おめでとうございます、高級牛肉ゲットですよ!」
わあ、っと他のチームから拍手が起きる。
「やったぜ!よし、俺が調理のスキルで高級肉をさらに美味しく焼いてやるぜ!」
アスカはさっそく焼き台に向かう。
他のチームのメンバーも、それぞれバーベキューの材料を手に焼き台へ。
お楽しみのバーベキュータイムの始まりだ。
流石に手際の良いアスカ。下味をつけた肉や野菜をバランスよく串に刺し、絶妙な焼き加減で仕上げ、伊万里に差し出す。
「お疲れさん。たくさん食べてくれ」
「ありがとうございます!……お、美味しい!」
バーベキューをほおばる伊万里を見つめるアスカ。
「いつぞやのドレス着てパーティーより、今の方がアンタらしいぜ」
別の焼き台では、せっせと肉を焼いては食べる潤の姿が。
「ヒューリ、ちゃんと食べてる?」
と、ヒュリアスの皿にも大量の肉を置いていく。
「……人の皿に盛りすぎではないかね。それに、肉ばかりではないか」
「ちゃんと野菜も食べてるよ」
その時、後ろの焼き台から
「いてっ」
と、小さな悲鳴があがる。
「串で手に突いてしまった……」
恨めしそうに串を見る銀雪。その隣で、アスカほどではないが手際よく串に肉を刺していくリーヴェ。
「大丈夫かい、銀雪」
「ああ、幸い血は出ていないようだ。リーヴェは、こういうの慣れているのかい?」
「別に、慣れてはいないけど」
とリーヴェは笑う。
銀雪は、なんでもそつなくこなすリーヴェはやはりすごいと思った。
「ねぇねぇ、もう大会も終わったことだし、チームごとに分かれていないで、みんなで食べましょうよ!リーダーさんたちも一緒に!」
ミサが声をかけると、皆それに同意した。
「あ、このお肉も、みなさんで分けませんか」
伊万里が高級牛肉を差し出す。
「いいね!どんどん焼こう!」
クロスが新たに肉を焼き始める。
アスカと同じく調理のスキルを持っているミサも、次々に肉や野菜を焼いていく。
「さあ、焼けたよ!みんな、もっと食べて!」
焼けた肉をみんなに配るクロス。配り終わったらまた肉を焼き……と大忙しだ。
「クーも食べないとなくなるぞ?」
と、クロスの前に美味しそうに焼けた肉を差し出すオルクス。
「ほら、あーん」
「……っ」
(みんなのいる前で『あーん』をしろというのかっっ)
真っ赤になるクロスの様子を見て楽しむかのように、オルクスは再度、
「あーん」
と迫る。
クロスは真っ赤な顔のまま、オルクスが差し出した肉をほおばる。
「美味いか?」
こくこくと頷くクロス。
「それは良かった」
「お、お返しだ、あーーーーんっ」
クロスは焼きあがったばかりの肉をオルクスに差し出す。
「ひどいなクー。こんな熱々じゃ食べられないよ」
クロスは慌てて差し出した肉にふーふーと息を吹きかけて冷ます。
「ありがとう。クロスが冷ましてくれたから一層美味しいね」
そして、ひととおり食べてお腹が満たされると、それぞれ談笑したり川辺で水遊びを始めたりする。
エミリオと共に川辺を散歩していたミサは、
「わあ、あそこに見えるのなんだろう!」
と、ガラスでもあったのだろうか、川の中にひときわ輝くものを見つけて駆け出す。
「ミサ、そんなにはしゃいで転んでも知らな……」
エミリオの注意は少し遅かった。声をかけた瞬間、ミサは石に足をとられて転ぶ。
「言ってるそばから……」
エミリオはミサに近づき手を差し出す。
「……っ」
顔をしかめるミサ。
「ちょっと、こっちに来て」
座れそうな場所を探して、ミサを連れていく。
「足をくじいたみたいだね」
「ミサさん、大丈夫?」
伊万里が救急箱を持ったスタッフを連れてやってきた。転んだミサに気付いてくれたらしい。
「ありがとう。ああ、怪我をしたのがラフティングの後で良かった~」
ミサの手当てが終わるころ、大会はお開きの時間となった。
「今日は楽しかったですね。優勝もできたし」
満足そうな伊万里。
「そうだな。俺も楽しそうなアンタを見られて良かったよ」
と、アスカも笑う。
「美しい景色も堪能できたし、他のウィンクルムともいろいろ話せて有意義な一日だったよ。そう思わないかい、銀雪」
「ええ」
リーヴェの言葉に、銀雪は静かに頷いた。
「ウルは、今日は楽しめたかね?」
そう尋ねるヒュリアスに、潤は目を輝かせて
「うん、楽しかった!」
と答える。
「……少しは、俺に慣れてきてくれているようだな」
ヒュリアスは小声で呟いた。ヒュリアスに対してまだぎこちなさが残る潤だったが、今日は少し距離が縮まったようだ。
「今日は楽しかったよ。正直、集団行動って苦手だったけど、ミサと出会ってから考えが変わった」
「私も今日凄く楽しかった!また一緒に来ようね」
ミサとエミリオも、今日の楽しさを再確認する。
「ねぇエミリオさん、記念写真撮ろうよ」
ミサが、カメラを取り出す。
「俺が撮ってやるよ!ほら、並んで並んで!」
クロスがミサからカメラを受け取る。
川を背に並ぶミサとエミリオ。
「え、エミリオさん、……距離、ち、近過ぎじゃないかな?は、恥ずかしいよ……」
「そう?近寄らないと写らないでしょ」
「そ、そうだね……」
「ほら、笑って」
「エミリオさんも笑顔でね? 約束だよ?」
「はい、チーズ!」
クロスがカメラのシャッターを押す。
「記念撮影か……そのうち俺たちも撮ろうな、クー」
ミサとエミリオを少し羨ましそうに見つめて、オルクスが言った。
思いきり体を動かした後は気分も晴れやかになったことだろう。
さあ、また明日からの日々に備えて、今日はしっかりと眠ろう。
ウィンクルムたちには、いつ、どこで、厳しい戦いが待ち構えているのかわからないのだから……。
依頼結果:成功
MVP:
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 木口アキノ |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | コメディ |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 04月30日 |
出発日 | 05月08日 00:00 |
予定納品日 | 05月18日 |
参加者
- ミサ・フルール(エミリオ・シュトルツ)
- 篠宮潤(ヒュリアス)
- 八神 伊万里(アスカ・ベルウィレッジ)
- クロス(オルクス)
- リーヴェ・アレクシア(銀雪・レクアイア)
会議室
-
2014/05/03-09:53
初めまして、俺はクロス。
パートナーはテイルスのオルクスだ。
参加ギリギリだけど宜しくな(微笑)
伊万里とミサは前に一緒になったよな?
又宜しく!
俺は、ラフティングっての初めてだしCにするぜ。
何事も基本が大事だしな!
その後のバーベキューかぁ…
楽しみだ!
皆で食べると美味しいしな! -
2014/05/03-08:14
誘惑に勝てなかった… 初めまして。篠宮潤というよ。
ミサさんは、何度かご一緒してるね。コンニチハ、だ。
夢中で我武者羅に漕いでる…自分が、目に浮かぶよ…
頑張って、Aでいこう、かな。
体を動かした後のバーベキュー、おいしそうだね。 -
2014/05/03-05:50
八神伊万里です、よろしくお願いします。
お二人ともエピでご一緒するのは初めて…でしたよね?
私はDにしようと思ってます。ベテランの方にみっちり教わっていい成績を残したいです。
バーベキューも楽しみですね。 -
2014/05/03-05:16
こんにちは!
ミサです、よろしくお願いします(ぺこり)
どのチームでも楽しそうだけど、私ラフティングって初めてだから、第1希望はCがいいなって思ってるよ。
第2希望はBです。
ふふ、自然の中のスポーツも食事も凄く楽しみ♪ -
2014/05/03-00:28
リーヴェだ、よろしく。
私はBを選びたいと思っているよ。
優勝もしたいが、景色を楽しまないのは勿体無い。
まぁ、銀雪の性格はCなんだろうが(笑)