プロローグ
♪ 雪やこんこん あられやこんこん
子供達がそう歌いながら公園で雪遊びをしています。
クリスマスも間近になったその街では前夜にたっぷりと雪が降りしきり、朝起きると素晴らしい銀世界が広がっていたのでした。
通勤通学のお父さんやお兄さん達は大変ですが、子供達はすっかりはしゃいで、公園の中に大きな雪だるまをいくつも作りました。
その後は、二組に分かれて雪合戦です。
寒い中、子供達は正に風の子、飛び回り跳ね回り雪玉をぶつけあって元気に遊びました。「明日も雪で遊ぼうね!!」
夕暮れにお母さん達が迎えに来た時にはそう約束したのです。
翌日--
子供達はまた、雪遊びをしに公園にやってきました。
「さあ、今日も雪合戦だ!」
そう勢いこんだガキ大将の顔面に、いきなり大きくて固すぎる雪玉がぶつけられました。その勢いで、ガキ大将は後ろにひっくり返ってしまいます。仰天する子供達。
「畜生! 誰がやったんだ!!」
鼻を真っ赤にしながら立ち直るガキ大将。
その目が信じがたいものを見いだしました。
昨日作った雪だるま……それが宙に浮き上がって勝手に動いているのです。
子供達は大はしゃぎで、雪だるまにクリスマスの三角帽子やマフラーや、木ぎれで出来た手なども作ってあげていました。だからそれが自分たちの作った雪だるまだと分かります。
その雪だるま達のお腹がもっこりと膨れあがったかと思うと、そこから無数の弾丸のように雪玉が発射されました。
あまりにも大きくて固いそれに子供達はたまりません。悲鳴を上げながら逃げ出します。 それを宙に浮いて移動し、追跡する雪だるま達。
合計三体。
「助けてええ!!」
子供達の悲鳴に、大人達も異変に気がつきました。
近所の家の大人達が大慌てで家の中に子ども達をかくまいます。
子供達を探して外ではうろうろしたり通行人に雪玉を発射したりする雪だるま。
早速、大人達はA.R.O.Aに通報しました。
「雪だるまが、雪だるまが大変なんです!」
黒き宿り木の種に寄生された雪だるま--。あなたたちウィンクルムは彼らを倒す事が出来るでしょうか!?
解説
雪だるまは合計三体です。
Dスケールオーガになります。
クリスマスの帽子を飾られた雪だるま大将×1
木ぎれの腕の子分雪だるま×1
マフラーを巻いた子分雪だるま×1
雪だるまは遠隔からは固い雪玉を発射して攻撃してきます。
近寄ると体当たりをします。
宙に浮いて移動しますが、最大で子供のかけっこ程度の速さです。
雪だるま大将は一回り体が大きいため雪玉も大きく、体当たりも痛いようです。
この三体の雪だるまを撃退して、子供達の公園の平和を取り戻して下さい。
ゲームマスターより
初めてのアドベンチャーエピソードで緊張しています。
精一杯頑張りますね!!
リザルトノベル
◆アクション・プラン
ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)
【トランスタイミング】 開幕ハイトランス 【ポジション】 移動中:クラウスさんの横 移動後:精霊より少し前 シルキア&クラウスの組と一緒に大将の方へ向かいます クラウスさんの【シャイニングアロー】範囲内にいながら鞭で雪玉叩き落とし 自分が入ることでシルキアさんが範囲外になってしまうようならリュングベル・フォースで防御 攻撃は雪だるまのお腹の雪を削るように鞭を振るう 子供達が雪だるまの為に取り付けた帽子やマフラーは傷つけないように注意 枝は拾ってくればいいですが、他はそうでない 自分自身の体力が危ない場合精霊に声をかけポジションチェンジ その際羅針盤で体力回復 |
シルキア・スー(クラウス)
現場近くでトランス済 彼の背後に付く 他から飛んでくる雪玉盾で受け剣で払い彼の背を守る 彼が攻撃抑えてる子分に皆が攻撃加える時は 自分も加わる 戦闘後 公園で身長1m位の雪だるま作り 枝等でスマイル顔作り 子供達がだるまに着せていた物を使えるなら再利用 使えない物は回収 胸に木のプレート埋め込む 『ごめんね またいっしょにあそぼう』 のメッセージ 彼に お疲れ様 |
シャルティ(グルナ・カリエンテ)
何にでも寄生するのね… なに言ってるの。ほらトランス 戦闘中 開幕時にトランス/必要な時サクリファイス 先に子分その1、2を討伐。その後に大将(大将討伐が済んでいたら子分のみ対応。精霊も) 基本的に神人は後方でクリアレイン、オ・トーリ・デコイで敵の注意を引く 戦闘後は協力して子供たちのために雪だるまを作る 雪だるま、作ってあげるのは良いアイデアね 出番じゃない? 雪だるまマスター(関連エピ 12) この前のと同じ感じで …私も手伝う。子供たちのためにね。…あの子達(寄生だるま)にも悪いことしたし え? なにか言った? |
八神 伊万里(蒼龍・シンフェーア)
蒼龍さんとは初めてのトランス …向こうは全然緊張してないみたい 最初は後衛に位置し、雪玉攻撃の弾道を観察し皆に伝える コースが単調だったり、一方向にしか投げられないようなら軌道を読んでかわしつつ接近 全方位に投げられたり、玉の数が多すぎて回避が難しいようなら 精霊さん達の陰に隠れ、蒼龍さんのパペットに囮になってもらい近づく まずは子分雪だるまから 体当たりの直後や精霊さん達の攻撃の合間等の隙を狙ってエムシで攻撃し、敵の防御を下げる 深追いはせず、ヒット&アウェイを心がける 一撃当てるかまたは危険だと判断したら、無理せずシャイニングアローの後ろまで下がる 戦闘後、皆で雪だるま作り リボンをつけたら可愛くなりそうですね |
A.R.O.A.からの指令でウィンクルム達は公園に急行した。
「初戦闘だね。新しい関節技を試したかったんだけど、雪だるまじゃ無理だなあ」
公園に向かう途中、蒼龍・シンフェーアは余裕の態でウィンクルムの八神伊万里にそう微笑んでいる。
(蒼龍さんとは初めてのトランス。……向こうは全然緊張してないみたい)
伊万里はやや緊張気味である。
「何にでも寄生するのね……」
シャルティは半ばあきれ顔である。
「めんどくせぇもんに寄生しやがって……」
相棒のグルナ・カリエンテは表情の方でも面倒くさそうだ。
「なに言ってるの。ほらトランス」
「ん、戦えるなら何でも良いか」
シャルティに声をかけられ、グルナはインスパイアスペルを唱えた。
――我に代わり力となれ――
続いて蒼龍達もトランス状態に入る。
――汝、罪無し――
それを見て、シルキア・スー、クラウス達もトランスを行った。
――光と風、交わり紡ぐ先へ――
公園に駆けつけると、そこでは種に寄生された雪だるま達が遊具に雪玉を発射したり飛び回ったりとやりたい放題である。
それを見て、ハロルドとディエゴ・ルナ・クィンテロ達もハイトランスに入った。戦闘開幕である。
――Youre My Best Friend――
まずクラウスがマジックブック「トリニティサイン」を取り出し、シャイニングアローを発動させた。
クラウスの周りに光の輪が浮遊し、彼の周りを旋回し始める。同時に盾「車盾」を前方に高く掲げた。
「俺が盾役になります。皆さん、ついてきて!」
頼もしい背中を見せるクラウスに対してシルキアがついていく。
「背中は任せて」
「頼むぞ、盾役」
そう言ったのはディエゴだ。
異変を感じ取った雪だるま達が公園入口の彼らに向けて雪玉を発射させ始めた。
腹部が異様に盛り上がったかと思うと固い雪玉が何個も連続でクラウスに向けて襲いかかってくる。
しかし、雪玉は光輪に触れたかと思うと、さながら鏡のように雪玉を反射し、雪だるま達の方へと跳ね返した。
それを確かめてからクラウスは皆を連れて公園の中に踏み込み、中央にいる雪だるま大将の元へと進んだ。
木ぎれの腕の雪だるまが浮遊しながら旋回し、走るクラウスの斜め横から雪玉を撃ち放つ。
「させないっ!」
クラウスの背中を庇うシルキアがトランスソードで雪玉を叩き落とした。
クラウスの背後をシルキアが守り、その左右をハロルドとディエゴが固める。その後を、シャルティとグルナ、蒼龍と伊万里がついていき、光輪に守られながら公園の中央へと入る。
公園の中央にはひときわ大きなクリスマスの帽子を被った雪だるまがいる。その大将雪だるまが狙われている事を悟った、木ぎれの腕の雪だるま(子分1)と、マフラーを巻いた雪だるま(子分2)はその文字通り大将の方へと飛びつき左右を固めた。
同時に腹を膨らませながら雪玉を発射した。盾役ではなく、後方についている女子群を狙っている。
「そうはいかないよっ!」
途端に、蒼龍はパペットマペットIIで黒猫のぬいぐるみを呼び出し、雪玉から伊万里を庇った。攻撃を受けた黒猫は消える。
接近していき、子分1の側についた。蒼龍は再び黒猫を呼び出す。
「僕とイマちゃんの仲を邪魔する泥棒猫だから盛大に破裂してもらおうっ」
その発言を聞いて生真面目な伊万里は顔を赤らめている。
黒猫の挑発に乗り、子分1が体当たりをしてくる。途端に黒猫は破裂して子分1にカウンターダメージを与えた。
「今よ!」
伊万里はエムシを抜き、その子分1に斬りかかった。エムシの特殊効果が発動――。子分1の防御力がダウン。
続いて蒼龍は子分2にも黒猫のパペットをぶつけて破裂させる。そのカウンターダメージで子分2が硬直している間に、伊万里がエムシのヒットアンドアウェー。敵の防御力ダウン。
伊万里は深追いはせず、シャイニングアローの後方に戻った。
防御力を奪われた子分雪だるま達の怒りは、パペットを操る蒼龍へと向かう――。
盾のクラウス達の脇を固めるハロルドとディエゴ。
ハロルドは鞭を振るい、迫り来る雪玉を弾き落としていく。時には魔方陣リュングベル・フォ―スを利用して、神人達を庇う。
ディエゴもまた、神人達の後ろから銃を発砲し、雪玉を破砕していく。
ハイトランス時には威力を増す音速の鞭「ローズ・オブ・マッハ」の前では雪だるまの雪玉など子供だましのようだ。
そのとき、前方でパペットを操り、子分1,2の攻撃を受けていた蒼龍の体勢が崩れた。
「悪い、ディエゴさん……」
蒼龍の声を聞いて、ディエゴは体の向きを変える。
「ハル、ちょっと目を離すよ」
ディエゴは神人に一声かけた。すかさず、ディエゴはダブルシューターIIで蒼龍を支援する。威力に特化した弾丸攻撃の連続により、子分1の動きが止まり、腹に大きな穴が開いている。
その穴は種の力でまた雪が膨らみ穴を消していくが……。
ハロルドがその隙に光輪から飛び出て、子分1へ至近距離から音速の鞭を振るう。
子分1の危険を感じて、子分2がハロルドに向かい体当たり!
たまらず小柄な彼女は後ろへと吹っ飛ばされた。
「ポジションチェンジだ!」
ディエゴが前に出る。弾丸が雨のように突き刺さり、子分2を足止めする。それからディエゴは弱っている子分1の方へと方向転換。
雪だるまのへこんだ腹に向かい、狙い澄ましてスピニングショットを撃ち放つ。
その攻撃力により子分1は粉砕された。
ハロルドは後方で運命の羅針盤により回復。
ディエゴと同じく、シャルティは後方から鉱弓「クリアレイン」で戦っていた。
子分1が沈んだ今、狙うべきは子分2である。
「ほら、あんたもいいとこ見せなさいよ!」
シャルティはポケットからアヒル特務隊「オ・トーリ・デコイ」を取り出し、子分2の方へ放り投げた。
ぜんまい仕掛けのアヒルは独特の鳴き声を放ちながら雪だるまへとまとわりついていく。
雪だるまはそちらの方へと体当たりを始めた。
グルナはその背後からムーンスカルで斬りかかる。
既にエムシの攻撃で防御力を失っている雪だるまへと、大剣の攻撃。
雪だるまは振り返ってグルナへと雪玉を発射し、逃げに入って距離を稼ごうとする。
しかしそこへシャルティが冷静にクリアレインで矢を雨のごとく注いだ。
子分2は矢を恐れて動けなくなる。
更にシャルティはオ・トーリ・デコイを操り、雪だるまが進もうとする方角を阻む。完璧な足止めだ。
「うまいぜ、シャルティ」
神人の巧みな支援攻撃にグルナは満足そうである。
そして彼は戦闘狂らしい楽しげな笑みを浮かべると、ムーンスカルを持ち全身をコマのように回転させた。
ハードブレイカーの腕力、攻撃力が竜巻のような力となり雪だるまに叩きつけられる。
トルネードクラッシュII
破壊力と命中精度の増した攻撃により、雪だるまの子分2もまた粉砕された。
「やったわね」
シャルティがほっとしたような息を漏らした。
残るは大将雪だるまである。
クリスマスの帽子を被っていかにも楽しげな様子のひときわ大きい雪だるま。
しかし、彼はクラウスの呼び出した光輪に対し、ずっと体当たりをかまし、時には距離を取って雪玉を発射したりしていた。
それに対してクラウスとシルキアが健気な抵抗を続けている。
子分2も倒れた事を確認したディエゴは、その盾役達の背後から、銃弾による攻撃を続ける。
「でかいだけあって意外にしぶといな……」
思わずそんな言葉が漏れてしまう。
「大丈夫です……私が」
そのとき、運命の羅針盤で体力を回復していたハロルドが立ち上がった。無口な彼女は「私が」で言葉を途切れさせ、「私が戻ってやっつけてやります」とまでは言わない。
「本当に大丈夫か?」
ディエゴがいかにも心配そうな顔つきで彼女を振り返る。
「はい、平気です」
笑みさえも見せてハロルドはローズ・オブ・マッハを手に握りしめる。そして雪だるまの腹を狙い鞭を振るう!
ディエゴの援護射撃を受けながら、子供達のものであろうクリスマスの帽子には一切触れず、続けざまに鞭を振るい続けた。
確実に雪だるま大将にはダメージを与え続けていく。
立ち直ったハロルドの勇姿につられて、他のウィンクルム達も一斉に雪だるま大将へと攻撃を開始した。
ディエゴはその仲間達の背中の隙間から巧みにダブルシューターIIを繰り出す。的確な攻撃は敵には相当痛い筈だった。
「オラオラァ!!」
戦いが大好きなグルナは、自分が子分2を見事に仕留められた事により、完全にテンションが上がっている。
大剣ムーンスカルを振り回してハロルド同様、前衛で戦う。
雪だるまは威勢の良いグルナに対して何度も体当たりをしてくるが、グルナは堪えない。攻撃することに夢中になっているのかもしれない。
そのグルナの背中を危うげに見つめながら、シャルティもまた弓クリアレインとオ・トーリ・デコイで彼の支援を続ける。
彼女の支援があると油断したか、テンションが余りに高揚したためか――
グルナは再び、トルネ―ドクラッシュIIを放った。
しかし、その途端に雪だるまは機敏な動きで攻撃の刃をよけた。
グルナはバランスを崩して硬直。
そこに雪だるまは雪玉を雨霰と発射し、更に助走をつけてグルナに体当たりをぶちかました。
「グルナ!」
シャルティは叫び、即座にグルナの背中に抱きついた。
思わず目を見開く他の神人達。全く気にせず、シャルティはインスパイアスペルを唱える。
――我に代わり力となれ――
月の加護によりサクリファイスが発動……。グルナとシャルティは痛みを分かち合い体力を均等に半々にしてしまう。
「ありがとうよ」
グルナは不敵な笑みを浮かべて立ち上がると、再び雪だるま大将に向かった。
「舐めるんじゃねえぞっ!!」
そしてトルネ―ドクラッシュII。
的確に雪だるま大将の腹へと攻撃はめりこんだ。
ハロルドやグルナ達により、雪だるま大将の体力は相当に削れている。
クラウス達はそう判断した。
クラウスはずっとシャイニングアローを解き放ち、雪だるま大将の攻撃を光輪に集中させ、時には車盾で正に全員の盾役を行っていた。
シルキアはその背中を守っていた。
「私だって……!」
シルキアはトランスソ―ドを手に、果敢に大将へと立ち向かった。
一撃、二撃、片手剣が雪だるまの顔や腹を突き刺していく。
雪だるまは後退し、シルキアに対して距離を取ると腹を膨らませて雪玉を発射。
「キャ!」
思わず悲鳴を上げつつ、シルキアは魔方陣リュングベル・フォースを発動。自分とクラウスを防御しつつ、再び剣を敵に向ける。
「フォォオ……」
雪だるまはうなり声を上げて、その場で一番か弱そうに見えたシルキアへと狙いをさだめ、体当たりをぶちかました!
「危ないっ!!」
クラウスが前に出る。
衝撃は魔方陣に吸収されている。シルキアは臆せずトランスソードで大将に斬りかかる。
そのシルキアの攻撃に続いて、クラウスが「車盾」で雪だるまを殴りつけた。
シールドバッシュ。
剣の攻撃に続いて、タイミングよく、盾で敵を殴りつけた事により、雪だるまの動きが固まる。
途端にマジックブックトリニティサインが輝いた。
巧み安連携攻撃が決まった事により、特殊効果が発動――
雪だるま大将の動きが格段に鈍くなる。
「やった! 連携が入った!!」
クラウスとシルキアの顔に喜びの輝きが宿る。
敵の動きが格段に鈍る事により、こちらはずっと攻撃しやすくなるはずだった。
「ここからは僕達に任せて!」
パペットマペットIIで黒猫を呼び出しながら蒼龍が言った。
黒猫に挑発をさせて雪だるま大将の意識を集中させる――。
雪玉を乱射させながら雪だるま大将が黒猫に接近。
黒猫に体当たり!
途端に黒猫は破裂し、雪だるま大将にカウンターダメージを与える。
その黒猫の影から伊万里が飛び出る。
伊万里はエムシを高く掲げて、雪だるまの顔に一撃!
防御力ダウンが発動――
ほぼ同時に、伊万里は蒼龍の背後まで走り寄り、雪だるまの追撃から逃れる。
クラウスのシャイニングアローや盾、リュングベルフォースの力もあって、雪だるま大将は伊万里を狙う事が出来ない。
完璧なヒットアンドアウェーだ。
「さあ、僕と踊ろうか!」
蒼龍はそう叫ぶと、タロットダンスを披露した。
タロットカードの幻影、まやかしが雪だるま大将を包む。
さながら等身大のタロットカード……それも太陽のカ―ドに四方八方から囲まれたような錯覚。雪に対して太陽とはそれだけで不吉だ。
「太陽よ、生命エネルギーの源よ……闇のオーガに与えられた偽りの命を溶かし尽くしたまえ! 汚れた雪を浄化し、正しい姿へ!」
妖しい占いを唱えながら蒼龍はタロットの影、その太陽の絵図の影から攻撃を開始する。
仕込み刀「時雨」がトリッキーな動きで旋回しながら雪だるま大将の腹を抉る。
鮮やかな二回攻撃が決まり、雪だるま大将はついに倒れた。
粉々に粉砕されてクリスマスの帽子だけがその場に残る。
「子供達は大丈夫か」
戦闘が終わると、ディエゴは被害者である公園の子供達の安否を気遣った。
「確か、付近の家がかくまっているとか……」
ハロルドがA.R.O.A.での説明を思い出しながら言う。
ディエゴとハロルドは公園の近所に建ち並ぶ家の方へ歩を進めた。
すると一軒の家からドアから顔を出している主婦がいる事に気がついた。通報した大人の一人で、公園の様子を窺っていたらしい。
「すみません、A.R.O.A.から派遣されたものですが……公園の子供達は在宅でしょうか。私は医学スキルを持っている者です」
ディエゴがそう説明すると、その主婦は安心した笑みを見せて、家の中に彼とハロルドを招き入れた。
公園で遊んでいた5,6人の幼い子供達がリビングで不安そうな顔をして座り込んでいた。
「怪我はないかい。見せてごらん」
ディエゴが話しかけても、怯えたように子供達は身を竦める。
「大丈夫、この人はお医者様の知識を持っているから……痛いところがあったら、見せてあげて」
ハロルドが子供達に目線を合わせ、穏やかな声でゆっくりと言った。
子供達は顔を見合わせて黙っていたが、やがて一人がディエゴに向かっておずおずと痛む腕を差し出した。
ディエゴが袖をめくると青あざが出来ていた。雪玉をぶつけられたせいだろう。
「大丈夫だ、これなら2~3日で治る。今、湿布をしてやろう」
他の怪我も大体、転んだ時の擦り傷や打ち身程度で、医者に診せる程もない程度のものだった。ハロルドの手も借りてディエゴは的確に処置をした。
その頃、シルキアは公園でまだ雪を相手に悪戦苦闘していた。
雪を転がして大きな雪だるまを作っているのである。
大きさは一メートルほどだろうか。
「きっと、自分の作った雪だるまに襲われて、子供達はショックを受けているよね。それを少しでも和らげてあげられたら……」
そんな気持ちからころころと雪玉を転がして、更に大きくしていき、ごろごろと転がして……
シルキアは大きな雪玉を二つほど作り、それを積み上げた。
それから顔の部分に、公園の木の枝や砂利を利用して、どうにかこうにかスマイルマークを作っていく。
「シルキア、道具はこれでいいかな」
クラウスもその作業に参加して手伝っていた。
どこからか木の板を探してきて、それに紐をつるして雪だるまの方にかけさせる。
シルキアはその板にマジックで大きく、「ごめんね、またいっしょにあそぼう」と子供にも分かる字で書いた。
「きっとこれで、……子供達だって、雪だるまの事を許してくれるよね」
シルキアは微笑んで言った。最後に雪だるまにクリスマスの帽子を飾ってやる。
寒さに顔は紅潮し、目は潤んできらめいている。
クラウスはそんなシルキアの事を美人だと思った。シルキアはクラウスの顔に対してコンプレックスを持っているようだが、自分よりも、こういう時のシルキアの方がずっと綺麗だと思うのだ。
「お疲れ様」
作業が一通り終わって、シルキアはいい笑顔でクラウスの事を振り向いた。
クラウスも微笑みを返して、冷えた指先、手を繋いだ。
雪だるま作りには伊万里も参加した。
「子供達の心を無駄に傷つける訳にはいきません。ここに元あったような雪だるまがあって、微笑んでいれば、心のダメージは大分減るでしょう」
生真面目な顔でそう言って、せっせと雪玉を転がし始めたのである。
「真面目だな~イマちゃんは……。ま、そういうところも好きだけどね!」
そんな彼女の姿を見て、蒼龍ももう一個の雪玉を転がし始めた。
二人で大きめの雪玉をシルキア達の作った雪だるまの隣に持ってきて、上の部分と下の部分で合体させる。
「後は顔の部分ですね。木や石を拾ってきましょう」
伊万里はそう言ったが、雪に覆われた公園のどこからそんな部品を拾って来られるのか、心許ない。運良く落ちていたものはシルキア達が使ってしまったらしい。
伊万里は下を向いて公園の隅から隅まで探し始めた。
「イマちゃん! 見て見て!」
ところが、そのとき、蒼龍の元気そうな声が響いたので、伊万里は雪だるまの方へ駆け寄って行った。
そこでは蒼龍が、既に木ぎれと石で雪だるまの顔を描いていた。
「あっ……やってくれたんですか……」
伊万里は真面目に礼を言おうとした。そのとき、蒼龍が残りの木ぎれを両手に構えて雪だるまに向かった。木ぎれの腕を復活させるのだろうか。
「枝を差して角にしよう。これは僕だよ」
「ま、待って下さい! これは子供達のものですよ! 蒼龍さんの雪だるまじゃないですっ!」
「ええ~、いいじゃない、これぐらい……」
伊万里と蒼龍は雪だるまの事でいちゃいちゃと争い始めた。
雪だるまの最後の一個は、シャルティ達が作っていた。
正確にはグルナだが。
「雪だるま、作ってあげるのは良いアイデアね」
「……またあれ作らせる気かよ……」
シャルティは喜んでいるが、グルナはあからさまにげんなりしている。
「出番じゃない? 雪だるまマスター。この前のと同じ感じで」
「つか、その変な呼び名マジ止めろ伝染(呼び名が)したらどうしてくれんだッ!」
シャルティがからうかうと、グルナは面白いほど血相を変えて怒る。
結局シャルティに言われるままに、グルナはしぶしぶと雪玉を転がしてシルキアや伊万里の作ったような雪だるまを作り始めた。
「……私も手伝う。子供達のためにね」
しばらくすると、シャルティは自分も雪玉を転がして雪だるまの頭部を作り始めた。
「……あの子達(寄生だるま)いも悪いことしたし」
ぼそっと言うその言葉がグルナの耳に入る。
「……やっぱ、優しいよお前。つか、優しすぎ」
グルナは白い息を吐きながら、聞こえるか聞こえないかの声でそう言った。クラウスではないが、こういう時の女性はやけに美人にも見えると思う。
「え? なにか言った?」
シャルティはグルナの声がよく聞こえなくてそう訊ねた。
「な、なんも言ってねぇっ」
グルナはぷいと顔を横に背けた。
顔がやけに赤かったのは、寒さだけのせいではなかったかもしれない。
普段冷静沈着で冷めているようなのに、時として不意打ちのように優しくなるのはずるいと思う。ずるいけれど、嫌いではないと思う。
寒い雪の日に、雪だるまの周りは、やけに温かかった。
依頼結果:大成功
MVP:
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 森静流 |
エピソードの種類 | アドベンチャーエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | 戦闘 |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 4 / 2 ~ 5 |
報酬 | 少し |
リリース日 | 12月14日 |
出発日 | 12月22日 00:00 |
予定納品日 | 01月01日 |
参加者
会議室
-
2015/12/21-23:30
プラン提出しました
うまくお役に立てる事を祈ります -
2015/12/21-23:04
-
2015/12/21-21:41
-
2015/12/21-21:40
蒼龍:
こっちもできたよ~
早めに倒せたら大ダルマの方に加勢に行くね。 -
2015/12/21-20:12
プランは完成した
蒼龍達の手は煩わせることなく大将は倒すつもりではいるが
こちらも苦戦していたらよろしく頼む -
2015/12/21-14:57
あーわり。俺の具体的な行動? 言ってなかったな。
っと、ハロルドたちはまた会ったなよろしく。
俺についても子分その1、2潰してーその次大将潰すようになってる。
けど大将そのまんま潰すんなら子分だけ相手する。
ジョブスキルについては「トルネードクラッシュⅡ」使うぜ。
タイミングはー…そうだな、相手が弱った時。
最初行動上げた時とスキルは別に変わってねぇし、うちの神人ちゃんの行動もクリアレイン、デコイで撹乱って感じで動くぜー
…あ、問題あったら指摘してくれ。プラン書き直す。 -
2015/12/21-14:35
場所については…住宅街の真ん中にある公園をイメージしていた
-
2015/12/21-14:24
大将の前までは俺たちと移動、その後は小ダルマへ…だな、わかった
よろしくたのむ -
2015/12/21-14:05
言い忘れ
>戦闘場所
>子供達を探して外ではうろうろしたり通行人に雪玉を発射したりする雪だるま
とあるのでもしかして公園外にいる可能性?
と思ったんですが考えない事にします -
2015/12/21-13:51
状況が変わったんですね
ディエゴさん
ハロルドさん
よろしくお願いします
【クラウスは大ダルマに接近するまでディエゴさん方の壁になり
接近後はお二人が大ダルマの足止めもしくは討伐にあたり
クラウスは小ダルマ戦の方々の壁に向かう流れ
なのかなと‥解釈合ってるかな?
そしたらクラウスは例えば木ぎれだるまの1体を無力化して
皆さんにマフラーだるまの方倒してもらって
こっちのも近距離攻撃上等でボコって貰って
大ダルマに向かう‥】
勝手に流れ考えてしまいましたが
可能でしょうか?
囮行動などの作戦出ていましたが1体目のだるまに
そのまま使えると思うのでそんなにプラン変更を強いる事は
ないと思うのですが
あ でも壁として雪玉遮ってくれてればいいというなら
それでも全然大丈夫です
仲間に当らない様雪玉をスキルで防ぐという
ふんわりしたプランになります多分
時間が無いので長文で考え述べさせて頂きましたが
一応【 】で括っている行動でプラン組み立ててみます -
2015/12/21-08:40
よろしくな
シルキア組との連携に異論がなければ
神人はクラウスの横か少し前で大将と対峙
俺はシルキアの後ろから射撃し他の組の応援要請に応え易くするつもりだ
シルキアの組を挟むポジションになるな、クラウスのアローで手数を増やしたいが、攻撃がきつそうなら俺の組が防御を引き受けよう。
-
2015/12/21-07:30
蒼龍:
わー、ディエゴさんだ!
お噂はかねがね。よろしく~。
そうだね、攻撃の手が増えるのは嬉しいな。
僕たちは先に小ダルマの対応するってことになってるから、
大ダルマを抑えててくれたら助かるかなあ。
それで僕たちが小ダルマに苦戦してるようだったらヘルプを頼むし。 -
2015/12/21-00:13
大将だった
-
2015/12/21-00:10
滑り込みですまん
ハロルドとディエゴ・ルナ・クィンテロだ
よろしく頼む
攻撃役が足りないのであれば、クラウスのアローと連携しながら
対象に接近して攻撃しようかと今のところは思っている
どこか手が足りないところがあればそちらに回るつもりだ
-
2015/12/21-00:06
-
2015/12/21-00:01
>足止め
大だるまの足止めは「クラウスさんが足止めで自分達は子だるまを先に対応」って感じで仮プラン出してるわ。
だから行動はそれで良いと思うわ。
>戦闘場所
「公園の平和を取り戻して下さい」って解説には書いてあるから
どこで戦闘、とは書いてないけど、私は公園で戦闘だって思ってたわ…。 -
2015/12/20-22:59
>大ダルマの足止め
みなさんに不都合が無ければ
遭遇したら大ダルマ足止め
という行動を取らせて頂きたいと思います
大ダルマに向かう最中はスキルを発動させています
[5]の流れも可能‥という考えなのですが
そこはお任せします
利用できそうでしたら利用してください
>戦闘場所
遭遇したらそのまま戦闘に入る感じでしょうか
可能なら公園に連れて行きたいところですが
というか公園にいてほしいですが
-
2015/12/19-13:21
蒼龍:
ボスの抑えはクラウスさんだね、分かったよ~。
一人だと大変そうだし、なるべく早く小ダルマを倒しちゃわないとね。
シャルティさんが後方からクリアレイン&デコイで敵をかく乱してくれるなら
その隙に乗じてイマちゃんがエムシを当てに行くよ。
閃光の効果と、デコイで気が散って雪玉の命中率も下がると思うしね。 -
2015/12/19-06:47
>シャイニングアローの壁範囲
腕を広げて立てば後ろに2~3人なら潜むことは可能そうです
盾で2重防御をしたいので片腕のみ広げる感じです
(レベルが低いので防御を万全にしないとご迷惑をお掛けする事にもなりかねないので
>体当たり
こちらもシャイニングアローで相殺できるように迎えうつ心構えでいようと思いますが
攻撃はみなさん頼りです
>大ダルマの足止め (先に小ダルマを討伐するならの話です
シャイニングアローで大ダルマに接近し攻撃を相殺している間に
小ダルマの討伐を完了しみんなで大ダルマ討伐
初期のシャイニングアローがどこまで耐えられるかわかりませんが
接近すれば体当たりも十分な威力は発揮できなそうと読んでいます
その間彼の背後は私が守ります
方法の1つとして上げておきます
>ゆきだるま作成
ありがとうございます
子供たちはたくさん雪だるまを作ったのでみんなで思い思いに作ったらいいなと思っています
投稿し直しました -
2015/12/18-16:24
伊万里は行動まとめありがとう。分かりやすいわ。
私はクリアレインで雪だるまから距離をとって攻撃を試みるわ。
私もシルキアと同じで、子分その1、その2から倒した方が効率良いと思う。
大将の方が子分より雪玉、体当たり痛いなら尚更ね…
えっと…人数増えたら手分けして倒すのも悪くないんじゃないかって個人的には思うわ。
あと、オ・トーリ・デコイ私持ってるからこれで敵の注意を引くのも良いかもね。
要らないようならそう言ってもらえると。
で、戦闘後の雪だるま作り、私も賛成。
寄生された雪だるまが原因で冬の楽しみを無くしたら寂しいし… -
2015/12/18-14:06
改めて、八神伊万里です。よろしくお願いします。
流れというか、全体での動きとしては
・蒼龍さんがパペットを出して敵を挑発し雪玉攻撃を集めさせる
・クラウスさんがシャイニングアローで防御しつつ敵に接近
・近づいたところでグルナさんが攻撃役
こんな感じでしょうか。
これなら蒼龍さんは、雪玉を避けるための囮にするよりは、
最初はクラウスさんのシャイニングアローの後ろにいて
普通に攻撃する際はタロットダンスで中衛から
敵の体当たり攻撃が来た時に潰す手段としてパペットを使う、の方がいいかもしれません。
どちらにも対応できるようにしておこうと思います。
そして現時点で三組、手が少ないので神人も攻撃に回ってもいいかもしれませんね。
私の持っている儀礼刀「エムシ」は、攻撃を当てた相手の防御力を下げる効果があるので
積極的に使っていきたいところです。
雪玉は一度にバラバラの方向に投げてきたりとかするのでしょうか…
全員をシャイニングアローで守るのは人数的に無理そうなので、
なんとか雪玉を避けながら接近する方法を考えないとですね。
最後に雪だるまを作るの、すごくいいと思います。
子供たちにとっても私達にとっても、きっといい思い出になると思います。 -
2015/12/17-21:04
はじめまして
シルキアとライフビショップのクラウスです
本格的な戦闘は初めてですが
みなさんの支援ができればと思っています
よろしくお願いします
今考えているのは
3体とも遠距離攻撃を持っている相手なので
小ダルマ(小さいほうの雪だるま)を先に倒してしまった方が良さそう
私も小ダルマ相手なら戦闘に参加できそう
攻撃時はクラウスが壁役になり近距離接近もできるかも
「シャイニングアロー
術者の周囲に数個の光の輪が浮遊し、術者の周りを回る。
攻撃があった場合、この光輪が鏡のように敵の攻撃を反射し、反撃する。 」
クラウスの所持本の効果が役に立つかも
「表紙に三つの輪が描かれた本。書かれた呪文には協力や連携のものが多く、
味方との連携で真価を発揮すると言われている。
連携の効果が発動した際には相手の動きを鈍らせる事が出来る。」
戦闘後は雪だるまを作りたいと思う
理由は公園の瘴気の浄化と子供たちの作った雪だるまを壊してしまうと思うからと
子供たちに雪だるまのトラウマを残したくない
雪だるま作成以外はみなさんの行動次第ですが
お役に立てそうでしたらどうぞ -
2015/12/17-10:40
シャルティ。あとHBのグルナ。よろしく。
蒼龍さんが囮役をするなら、その隙にうちのせんとうきょ……グルナが攻撃を仕掛けられそうな状況なら仕掛けても良いなって思ってる。
ジョブスキルは「トルネードクラッシュⅡ」を一応予定にしてるわ。
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2015/12/17-06:09
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2015/12/17-06:09
蒼龍:
はじめましてー、蒼龍・シンフェーアとパートナーの八神伊万里、イマちゃんだよ。
僕は戦闘任務初めてだから色々慣れないこともあると思うけどよろしくね。
んー今のとこ、ジョブ的に攻守は揃ってる感じだねえ。
敵は雪玉を投げて攻撃してくるみたいだから、僕はパペットを出して囮役をしようかなって考えてるよ。
とりあえずはまだそれだけかな…
細かい作戦はまたのちのち考えるよ~、イマちゃんが!
伊万里:
えっ、私!?