【枯木】作ろう、お菓子の家!(雪花菜 凛 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 魔法世界『らぶてぃめっと世界(ステージ)』。
 白い月『ルーメン』と紅い月『テネブラ』──二つの月に照らされているこの世界では、精霊と人間が共存して暮らしています。
 精霊と人間は手を取り合いこの世界で暮らしていますが、そんな彼らを脅かす恐ろしい存在が居ました。

 精霊と人間のとっての脅威──魂を食らう凶悪な生物『オーガ』です。

 オーガは見境なく人畜を襲い、その魂を喰らいます。
 オーガには、どのような武器も、魔法も全く通じません。
 オーガ達の行動の根源は、自分達を除く生物全てへの憎悪であり、魂を喰らう事は単なる栄養補給以上の意味があるようでした。

 そんなオーガへの唯一の対応手段、それが『ウィンクルム』です。
 特殊な力に目覚めた『神人(かみうど)』と呼ばれる元人間と、その神人に適応することが出来た精霊とが、契約を取り交わしパートナーとなることで、オーガを滅ぼす力を得ることが出来ます。
 固い絆で繋がれた神人と精霊──彼らは『ウィンクルム』と呼ばれています。


「先生、どうしてうぃんくるむは、おーがを倒せるの?」
 挙手した一人の少年に、絵本を広げている女性が微笑みました。
「『愛の奇跡』の力が、彼らにあるからよ」
「あいのきせき?」
 少年の首が大きく傾きます。
「そう、相手を慈しみ大切に想う愛の心……まだ君には少し難しいかしら?」
 女性は優しく少年の髪を撫でました。
「オーガはすべてのものを憎んでいるけれど、ウィンクルムはその逆なの。パートナーを、世界を愛して……オーガの憎しみを打ち砕くのよ」
 そこまで言って、女性は少し眉を下げて笑います。
「君も大きくなったらきっと分かるわ。誰よりも大好きで大切な人が出来たら……」


「うぃんくるむ、かぁ……」
 少年はその日の夜、布団の中から、窓の外の月を見上げていました。
「オレもうぃんくるむになれたら、おーがをやっつけられるのかなぁ……」
 思い浮かぶのは、おぼろげな両親の姿。少年の両親は、彼が3歳の頃、オーガに襲われて命を落としていました。
 彼は今、小さな孤児院で、同じ境遇の子供達と一緒に暮らしているのです。
「サンタさんにお願いしたら、うぃんくるむになれるのかなぁ……」
 窓の外には白い月。ウィンクルムになれば、紅い月も見えるようになるといいます。
 少年はもう直ぐやってくるクリスマス──孤児院ではささやかですがパーティをします──を思いながら、眠気に瞼を閉じたのでした。

 その時、孤児院の天井に恐ろしい『種』が埋め込まれた事は、まだ誰も知りません。

 ※

 A.R.O.A.の職員達が通報を受けやって来た時、少年は深い眠りの中に居ました。

 Anti the Risk of Ogre Agency──略称『A.R.O.A(アロア)』は、対オーガ専門機関です。
 オーガが関わる事件については、全てA.R.O.Aが対応しており、各地域の警察や自治体も可能な限りA.R.O.Aへの協力は惜しみません。
 ウィンクルム達もA.R.O.Aに所属し、日々A.R.O.Aからの依頼を受け、オーガを討伐しています。

「もう、一週間も眠り続けているんです」
 孤児院の若き女性教師は、心労で青ざめた顔でそう言いました。
 医師を呼んで診て貰っても身体に異常はなく、もしかしたらオーガの影響なのではないかと疑い、A.R.O.Aへ通報してきたと言います。
「この種……『黒き宿木の種』?」
 周囲を調べていたA.R.O.A.職員は、孤児院の天井に、不気味に光る種子を見つけます。
 『黒き宿木の種』は、最近、高い知性と能力を持ったオーガ──『ギルティ』によって世界に散蒔かれた恐ろしい呪いの種子です。
 地面に植えれば瘴気を撒き散らし、動くものに寄生すると寄生されたものをオーガにしてしまう力を持っています。
「この瘴気の影響か……早急に種子を処理しなければいけません。ウィンクルム達を呼びましょう」
 A.R.O.A.職員は、ウィンクルム達に打診すべく、通信機器を手に取りました。

 ※

「眠る少年を助け、『黒き宿木の種』を枯死させるため……ウィンクルムの皆さんには、少年の夢の中へ入って頂きます」
 駆け付けたウィンクルム達に、A.R.O.A.職員は眼鏡をくいっと上げながら、真剣な眼差しでそう言います。
「少年は種の瘴気の影響で眠り続けています。きっと悪夢を見ている筈です」
 職員の言葉に少年を見遣れば、確かに彼の眉間には皺が寄り、苦しそうに見えました。
「夢の中に入り、悪夢を良い夢へ変える事が出来れば、少年は瘴気の影響から逃れて目覚めるでしょう。
 そして、この『黒き宿木の種』ですが……『ウィンクルムの愛の力』で枯れる事を確認しています」
 職員はコホンと咳払いしました。
「つまりは──少年の夢の中で『愛の力』を見せて、少年を救い出し、種も何とかして頂きたい」
 うわーざっくりとした指示、キタ!
 ウィンクルム達は、お互いの顔を見合わせます。
「夢の中には、これを使って入って頂きます」
 職員は、ごそごそと鞄から年季の入った手鏡を取り出しました。
「これは『夢見の鏡』。これを手に、眠っている人を映せば……その人の見ている夢の中へ入れます」
 何でも『紅月ノ神社(あかつきのじんじゃ)』の秘宝の一つで、今回特別に借り受けて来たと言います。
「黒き宿木の種が発芽する前に、少年の悪夢を良い夢に変えて下さい」
 ウィンクルム達は、手鏡を手に取ります。
「いいですか、イチャイチャを忘れずに!」
 イチャイチャって言うな!
 職員に全力でツッコミを入れてから、ウィンクルム達は少年の夢の中へと旅立ちました。

 ※

 少年は荒野の中に居ました。
 最初、お菓子の家が立ち並ぶ楽しい夢だった筈なのに、いつの間にか何もない荒地に変わってしまい、幾ら歩いても誰も居ません。
「さみしいよぅ……」
 ぽたりと大粒の涙が落ちて、荒れ果てた大地を濡らしました。

解説

『少年の夢の中』で、瘴気の影響を受け荒れ果てた夢を素敵な夢に変えて下さい。
眠る少年を助け、『黒き宿木の種』を枯死させる事が目的のエピソードです。

<夢の中>
荒れ果てた荒野。
何もなく、誰も居ません。
一人立ち尽くす少年は、直ぐに見つけられます。少年を見つけた所からをプランに記載して下さい。

<出来る事・夢をクリエイトする>
少年の夢を、楽しい夢に変えましょう!
少年は『お菓子の家』の夢を見ていました。
夢の中ですので、ウィンクルムと少年の想像力で、自由に世界を変えられます。
つまり、念じれば、何でも出てきます。

少年に夢を与えるように、魔法をかける演出が良いでしょう。
荒野をメルヘンな『お菓子の家の世界』に変えて下さい!

<お菓子の家>
オリジナルのお菓子の家を作り上げ、少年を楽しませて下さい。
出来上がった家を、一緒に食べてみる事も出来ます。
ついでにウィンクルム達も楽しんで、『黒き宿木の種』を愛の力で枯らせましょう!

・お菓子の家の例
 屋根はチョコレート
 壁はビスケット
 窓は飴でステンドグラス風
 椅子とテーブルはフルーツグミ
 ソファは冷たいアイスクリーム

・台詞例『メルヘンデリシャススイーツ……ビスケットの壁、出てきて!』

<少年>
7歳。名前はニコ。
素直でお菓子が大好きです。

ゲームマスターより

ゲームマスターを務めさせていただく、『お菓子の家に住んでみたい。ただし二次元に限る』方の雪花菜 凛(きらず りん)です。

クリスマスは色んなお菓子や料理が美味しい、一年で一番大好きな時期です!
そんな訳で、お菓子の家なエピソードにしてみました。

どんなお菓子の家が出来るか、ワクワクしております♪

リザルトノベル

◆アクション・プラン

シバタ(雪月花)

  「なんてひどい所?」
夢をこんなにされてニコ君が可愛そうです!

夢でも家はしっかり作ったほうがいいと思うのです。
一階は、チョコやクッキーなんか丈夫そうな材料で、上の方は軽いウエハースとかで。
気になりだしたら壊れたりしますよね、夢って。

お庭に栗きんとんの池作ってもいいですか?

完成したら
「ニコ君!貴方の家よ。全部食べてもいいよ」
ニコ君が満足してくれたら、お庭の栗きんとんの池へ直行!
あれ?いつの間にかお庭は雪景色、クリスマスツリーまでできている。
綺麗。

「え? 寒くなんかないですよ。雪は綿飴じゃないですか」
「手をですか? あ!(なるほど、フフフ寒いから手をつなぐんですね)」
げっかさんお顔が真っ赤……私も?


 一組のウィンクルムが、その荒れ果てた夢の中へと降り立った。
 見渡す限りの荒野。
 何もないこの場所は、言いようのない不安と孤独を感じさせる。
「なんてひどい所?」
 シバタは両腕で己の身体を抱くようにし、周囲を見渡した。雪月花はそんな彼女の肩を、軽くポンと叩く。
「シバタさん、何があるか分からないから、俺から離れないで下さいね」
「……あ。げっかさん、あそこ! 男の子が居ますよ」
 黒曜石のような瞳を見開いて、シバタが指差す先に、ぽつんと立ち尽くす少年が居た。
 シバタと雪月花は顔を見合わせてから、少年の元に駆け寄る。
「君が、ニコ君ですか?」
「うん、僕はニコだけど……お兄さん達、だぁれ?」
 雪月花の問い掛けに、少年は小首を傾げた。
「コホン。お兄さんは……ある時はゆるふぇすMC。またある時は声優。そしてまたある時は作曲家、然してその正体は──……!」
「あ、お姉さんはシバタといいます。こちらは雪月花さん。シバタさんとげっかさんと呼んで下さい。ウィンクルムやってます。あ、これ名刺です」
「わあ、うぃんくるむさんなんだね! すごいなぁ~!」
「…………」
「げっかさん? ナニ涙ぐんでるんですか?」
「な、何でもナイデス。コホン。そんな事より……ニコ君。こんな所に一人で寂しかったね?」
 雪月花がしゃがんで頭を撫でると、ニコはうんとか細い声で頷いて、涙ぐんだ。
「あのね、お菓子の家がたくさんあったの。でもね、急にお空が真っ黒になって……気付いたら、お菓子の家もなくなって……僕、一人だったの」
「それは怖かったですね……。でも、ニコ君、もう大丈夫ですよ。げっかさんとこのシバタが付いてますからね」
「そうです! まずはこの殺風景な荒野から、お兄さんが料理してくれましょう!」
(こんな酷い事するオーガはお仕置きですよ)
 雪月花はぐっと拳を握る。
「……ちょっとちょっと、げっかさん」
 急にシバタが声を落として、雪月花の袖を引っ張った。
「いいんですか、そんな大きな事言っちゃって。どうにか出来るんですか? この荒野を」
「ふっ……シバタさん、一つ忘れちゃ居ませんか? ここはニコ君の夢の中。夢の中は人の想像力によって、何処までも自由に変えられるんですよ」
 雪月花は不敵に笑うと、ニコを振り返り、天高く人差し指を虚空に向ける。

「スウィーツ・オブ・ファンタスティック! いでよウェハースの壁!!」

 どーん!

「げっかさん凄いや! ウェハースが降って来たよ!」
「……本当に出ちゃいました」
 ニコが飛び跳ねて喜び、シバタが目を丸くさせた。
「本当に出てきた!?」
 当の本人である雪月花も、大きく瞬きして巨大なウェハースをまじまじと見遣る。
「これは面白いですね、美味しそうですね……! どんどん出してお菓子の家にしちゃいましょう!」
「げっかさん、ちょっと待って下さい」
「シバタさん、何で止めるんですか?」
「夢でも、家はしっかり作った方がいいと思うのです」
「しっかり……ですか?」
「はい。例えば、一階は、チョコやクッキーなんか丈夫そうな材料で、上の方は軽いウエハースとかで」
「成程」
「気になりだしたら壊れたりしますよね、夢って」
「……大丈夫! 壊れないよう、私とシバタさんで素敵な家を作りましょう」
「……そうですね!」
「よーし、それでは行きますよ。まずは一階の床をクッキーで作りましょう」

 雪月花は人差し指を空に突き付ける。

「スウィーツ・オブ・ファンタスティック! いでよクッキーの床!!」

 ずずーん!

 三人の眼前に、クッキーで出来た床が降って来た。
「おお、凄く頑丈ですね……!」
「クッキーの柄が何だかお洒落ですよ、げっかさん」
「げっかさん、僕、チョコチップクッキーのカーペットも欲しいな」
「ヨシキタ! お安い御用ですよ」
「げっかさん、今度は私に任せて下さい」
「シバタさんに? ええ、お任せしましょう」

「アブラ・カダブラ・ファンタスティック! チョコチップクッキーのカーペット、来て下さい!」

 どどんっ!

「わあ、美味しそう! シバタさんもすごーい!」
「ざっとこんなものです」
 ドヤァ。
「これは……私もシバタさんに負けていられませんね! 次はチョコレートで壁を作りましょうか」
 二人はニコの希望を聞きながら、次々とお菓子を召喚する。

「スウィーツ・オブ・ファンタスティック! いでよチョコレートの壁!!」

「アブラ・カダブラ・ファンタスティック! 飴細工の窓、来て下さい!」

「スウィーツ・オブ・ファンタスティック! いでよクッキーの屋根!!」

「アブラ・カダブラ・ファンタスティック! チョコレートのテーブル、来て下さい!」

 形になったお菓子の家を見上げ、ニコは瞳をキラキラさせた。
「二人とも、すごーい! 大きな家が出来ちゃった……!」
「家はざっとこんなものでしょうか」
「庭も作りたいですよね、げっかさん」
 少し考えて、シバタはニコに尋ねる。
「ニコ君、お庭に栗きんとんの池作ってもいいですか?」
「いいよ! 栗きんとんって甘くておいしいよね!」
「栗きんとんの池ですか……ならば、私はクリスマスらしく、わたあめの雪を降らせて、アイスのかまくらを作りましょ」
「雪を降らす事も出来るの?」
「お任せ下さい、ニコ君」

「スウィーツ・オブ・ファンタスティック! いでよ!わたあめの雪!!」

 雪月花が空に拳を突き上げると同時、パラパラと頭上から、甘い雪が降って来た。
 粉雪のようなわたあめは、あっという間に辺りに降り積もり、地面をお菓子の家の屋根を、白く染めていく。
「すごいや! すごいや!」
 ニコが両手を広げ、わたあめの雪を両手に受け止めた。
「げっかさん、やりますね……! 私もやりますよー!」
 シバタは、お菓子の家の横に立ち、地面を指差す。

「アブラ・カダブラ・ファンタスティック! 栗きんとんの池、来て下さい!」

 ざざーんっ。

 シバタを指差した先に、みるみる栗きんとんが湧き出て池となった。
「美味しそうです……!」
 シバタの瞳が栗きんとんに釘付けになる。そう、彼女は栗きんとんに目がない。食べている間は周囲が見えなくなるくらい。
 思わず一歩、栗きんとんの池にダイブすべく足を踏み出した所──。
「……あれっ?」
「シバタさん、危ない!」
 わたあめの雪に足を取られたシバタの身体を、雪月花が咄嗟に支える。
「ふう……大丈夫ですか?」
「あ、げっか……さん……」
「足元、気を付けて下さいね。……まあ、雪を降らせたのは俺なので、俺に責任がありますが……」
「気を付けます……。げっかさん」
「何ですか?」
「ありがとう、ございます」
「……どういたしまして……」
 照れ臭そうに瞳を逸らした雪月花を見上げ、シバタは彼の背後に広がる光景に瞳を瞬かせた。
「げっかさん、庭が凄いです」
「え? あ、ああ。アイスのかまくらと──ケーキのクリスマスツリーを作ってみました」
 彼の背後には、バニラアイスが光るかまくらと、巨大なケーキで出来たクリスマスツリーがある。
「凄くキラキラしてますね」
「クリスマスっぽくなったでしょうか?」
「ええ、とても」
「シバタさん、げっかさんー!」
 そこへ、わたあめの雪で遊んでいたニコが、笑顔で二人の元へ戻って来た。二人は慌てて離れて距離を取る。
「すごいね! 最初に見たより立派なお家が出来ちゃった……!」
「ニコ君! 貴方の家よ。全部食べてもいいよ」
 にっこりシバタが微笑んで言えば、ニコの顔が輝いた。
「お家の中、入ってみてもいい?」
「勿論です」
「やったー! ありがとう!」
 雪月花が頷くと、ニコは駆け足で家の中へと入っていく。
「ニコ君、嬉しそうですね」
「本当によかったです」
 二人でニコを見送り、雪月花は嬉しそうにしているシバタに視線を向ける。
 舞い散る雪の中、彼女の笑顔がとても綺麗だと思った。
「雪景色にしたら……手が冷たくなりましたね」
「え? 寒くなんかないですよ。雪はわたあめじゃないですか」
「いや、寒いですって。手、貸して下さい」
「手をですか?……あ」
 繋いだ手と手から、伝わる温もり。
(なるほど、フフフ……寒いから手を繋ぐんですね)
 シバタは雪月花の行動の意味を理解して、彼の横顔を見上げる。そして、気付いた。
(げっかさんお顔が真っ赤……私も?)
 空いている方の手で頬に触れる。頬は熱を持っていた。きっと、雪月花も同じ。
(やってみると恥ずかしいものです……手より顔の方が火照ってます)
 雪月花もまたは、シバタと目を合わす事が出来ず、栗きんとんの池を見つめた。
「げっかさんの作ったお家のお庭も……凄く素敵です」
「シバタさんの冷静な助言の数々、感心しました」
 素直に感想を伝え合えば、より体温は上がる。
「シバタさん」
「……なんですか?」
「折角だし、栗きんとん、食べませんか? シバタさん、さっき食べようとしてたでしょ?」
「そ、そうですね」
 雪月花とシバタは手を繋いだまま、栗きんとんの池の前でしゃがむ。
 お互いに空いている手で、栗きんとんを掬って口に運んでみた。
「うん、甘くて美味しいですね……!」
「口当たりがまろやかで……これは凄く美味しい栗きんとんです……!」
 シバタが瞳を煌めかせると、夢中になって栗きんとんを食べる。
「はぁ……幸せです……!」
 幸せの溜息を吐き出すシバタを見遣り、雪月花は気付いた。彼女の口元に栗きんとんがくっ付いている。
「シバタさん、口元に栗きんとんが付いてますよ」
 クスッと笑って、雪月花は彼女の口元を拭ってあげた。
「あ、すみませ……」
「……」
「……」
(ち、近い……です……)
(げっかさんが、凄く近い、ですね……)
(シバタさん……)
(げっか、さん……)
 二人の距離が、縮まる。
 あと少し、あと少しだけ近付いたら──。

 その時、急に二人の視界が白い靄に包まれた。
「あれ?」
「一体……」
 身体が透けていく。浮遊感を感じた瞬間、一気に視界がホワイトアウトして──。


 気付いたとき、雪月花とシバタは、古い手鏡を手に立ち尽くしていた。
「ここ……は?」
「……孤児院に戻って来た、みたいです」
 雪月花の問いにシバタが答えた時、二人の前にあるベッドで、小さな影がゆっくりと身を起こす。
「夢の中で会った……げっかさんとシバタさん……?」
 目を擦りながら、ニコが二人に尋ねれば、雪月花とシバタは顔を見合わせてから、声を揃えて言った。
「いい夢、見られましたか?」

Fin.



依頼結果:会場で判定します!
MVP

メモリアルピンナップ


( イラストレーター: 架神玲那  )


エピソード情報

マスター 雪花菜 凛
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 特殊
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 1 / 1 ~ 1
報酬 なし
リリース日 11月29日
出発日 12月02日 00:00
予定納品日 12月12日

参加者

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