【枯木】今年の穢れは今年のうちに(森静流 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 教師も走り出すという師走。
 街には歳末助け合いの募金の少女達が立っています。寒い中声を枯らして募金への声を呼びかけています。
 あふれかえるクリスマスの街灯、トナカイの音楽。
 そうかと思えばスーパーには新年のしめ縄の飾り付け。
 コンビニに行けば年賀状の棚。
 今年もいよいよ残り少なくなり、更にオーガ討伐の事件も立て込んでいる中、あなたは多忙ですっかり忘れていました。
 それはA.R.O.Aの職員の一言から。仕事の話をしていた時にぽろっと出たのです。
「……ああ、その日は支部は大掃除で業者を頼むから、来ても係の人間いないんで……」
 その一言で思い出しました。
”大掃除”!!

 何しろ忙しくてすっかり忘れていたあなた。
 部屋の中は大荒れ、とてもこのままじゃ来年を気持ちよく迎えられません。
 早速日程を調整して無理矢理、大掃除の日を作り出しました。
 後はウィンクルムのパートナーを呼び出して一緒に片付けをやっつけちゃえばいいだけです。
 パートナーを巻き込むな?
 いえいえ、後でパートナーの部屋も大掃除してあげるんだからいいんです。
 何はともあれ、大掃除を片付けて、清らかな気持ちで来年を迎えましょう!!

--キッチン
換気扇を外す、五徳を外す、他に油脂で汚れているものはみんな流し台に。
重曹をたっぷりかけてセスキソーダをシュッ。後は放置。
更に油の飛んでいる床や壁にセスキソーダを吹きかけ、ティッシュを貼り、更にセスキソーダ。そのまま30分以上放置。
その後、換気扇他はぬるま湯で洗い流し、床や壁もティッシュを外してぬるま湯の雑巾で拭く。

--リビング
カーテンを洗濯。洗濯しているうちに、窓をスクイーズで掃除。
それから窓側からドアに向かって掃除機をかけ、更にセスキを吹きかけて雑巾がけで掃除をする。
それから腰から下の部分にあるものは一通り雑巾で拭いて綺麗にする。

--風呂・トイレ
浴槽や便器を各種洗剤を使いぴかぴかに磨き立てる!
更に壁もセスキでざっと雑巾がけ。

--玄関
ドアをセスキで雑巾がけ。
床も掃き掃除をして靴を並べ直す。

ざっとこれぐらいの掃除をする予定です。
ちなみにあなたは気がついていませんが--。
あなたの部屋のすぐ外の地面に妖しい力。黒き宿り木の種です。
この大掃除で愛と清めの力をふるい、その宿り木の種の穢れも払ってしまいましょう!!

解説

キッチンやリビングなどのどれか一つを選び、ウィンクルムで掃除をして下さい。
その最中に体がぶつかったり励まし合ったり、時にはいちゃいちゃと喧嘩をしたり……。
そんなプランをお待ちしています!

掃除用具を買いましたので300Jrいただきます。

ゲームマスターより

大掃除の季節ですので書きました。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)

  フィンと同居している部屋
キッチンを大掃除

普段、家事はフィンに任せてばかり…
だから、フィンが普段立つキッチンを綺麗にして喜んで貰いたい

換気扇を外すのは俺に任せてくれ
脚立に登って…う、意外と固い?
すんなり外れな…わ…!

わ、悪い、フィン…!(もしかして今のって…)
か、換気扇外れたからシンクに置くな
ガスレンジ台から五徳とか外せるものを外して回りシンクへ

床や壁の掃除も任せてくれ
あ、俺が雑巾で拭くから。フィンは雑巾持つの禁止

…とはいえ、普段からフィンが掃除してくれているから、そんなに酷い汚れはないみたいだ

改めてフィンに感謝だな…

あのさ、フィン…
この間も言ったけど…いつも有難う…な
俺も出来るだけ家事するから


李月(ゼノアス・グールン)
  現代日本仕様リビング続きの対面式台所

やる気あるのか?
この汚れの戦犯はお前なんだからな
まじめにやらないなら肉料理は今後作らん!

掃除さぼってたのは自分だが
その気にさせる為捲し立て

換気扇取り外し
手がうまく届かず
脚立‥わっ

ソーダがけ
マスク付忘れ咳込

いいか今年はうちの両親帰ってくるんだ
きちっと綺麗にして安心させれば
お前の心証も良くなるんだからな

いいとは言えない
だから頑張るんだ
熱血顔

相棒が暴走している

わーやめてくれ
仕事増やすなー

床拭きつつ
(まず力の加減覚えてもらう所からだな
疲れ苦笑

次はもっとうまく出来るよ
(もう掃除さぼりません
涙目決意

買換えを余儀なくされた物の為
台所ピカピカ

クスッ
まあいいか
何か、らしい結末



むつば(めるべ)
  めると暮らす、廃校舎の玄関口を掃除する。
まずは天井からゆく。
道具を使っても手が届かぬなら、脚立を使う。
或いはわらわの手の届く範囲で作業する。
「日頃の汚れは天から湧き、地へと降り立つものよ」
わらわは長柄のモップを使い、奥から手前へと一筆書で水拭き後、跡をなぞるように別のモップで乾拭きする。

次は靴箱じゃ。
外側と内側は塵屑を床に落とすように箒で払い、
土等の汚れは濡れ雑巾で拭く。
無論、最後は乾拭きもするぞ。

最後は床。
屑はわらわが箒で回収する。

速やかに掃除の道具を片付けた後、
家庭科室から暖かい茶を用意。
めるに労いの言葉をかける。
「お疲れじゃ、思ったより時間をかけたな。
舌先三寸でしか言えぬが……例を言う」




エリック・イェーガー(ジハード)
  掃除の場所 リビング 自分の家(マンション暮らし)

さて、大掃除やりますか! ジハードはこういうの厳しそうだよね
え……それはすごいね……(ドン引き
まずはカーテンの洗濯からだね……届かないからジハードよろしく
背が高いっていいよね、同じ男としてうらやましいなぁ……
失礼なこと言うねジハードは
罰として窓ふきは全部任せたよ
冗談だったんだけど納得してるならいいや

その間に掃除機をかける
これはさすがにジハードの手を煩わせないよ
窓からドアに向かって一通りかけたら、セスキを吹きかけ雑巾がけ
そのころにはジハードの窓ふきも終わってるだろうから
一緒に雑巾がけかな
終わったら、温かいココアでも作って一緒に飲もうかな
※アドリブ歓迎


李月(ゼノアス・グールン)編

 今日は李月とゼノアス・グールンが大掃除をする日です。場所は、現代日本によく似た平屋のリビング続きの対面式台所です。ゼノアスは勝手に李月の部屋に転がり込んだ同居人ですので、大掃除を手伝うのは当然です。
 李月は気合いを入れて、ホワイトヴァイツにくろうさオーバーオールの上からブルーのエプロンを身につけています。
 それに対してゼノアスは白うさぎのもこもこパーカーを羽織ってエスニックスノーパンツ姿。エプロンもつけていません。
 一年分の汚れを落とそうと頑張る李月ですが、ゼノアスは彼に後ろから抱きついて回って離れません。
「遊びに行こーぜ」
 ゼノアスは李月に構って欲しくて遊んで欲しくて仕方ないのです。
「やる気あるのか? この汚れの戦犯はお前なんだからな。まじめにやらないなら肉料理は今後作らん!」
 冷たい事に、そんなゼノアスに李月は一喝したのでした。だって今日は前から決めていた大掃除の日なのです。
 李月は小食のため、サラダやスープだけで食事が足りてしまいます。肉料理を封印したって何も困りはしないのです。
(そんな事になったらオレは飢え死にだ……)
 ゼノアスはしぶしぶ李月を解放し、彼を手伝う事にしました。
 そんなゼノアスを見て、李月は掃除をさせる気にするため更に色々まくし立てました。掃除をさぼっていたのは彼なのですが。
「まずはここからだ!」
 それから台所の換気扇を取り外そうと背伸びをします。手がうまく届かず、脚立を探しに行こうとした時。
「わっ」
 李月は思わず声を上げました。
 ゼノアスが後ろから李月を軽々と抱き上げてしまいました。普段からゼノアスは李月の腰によく抱きついているので、こういう行動はお手の物です。
「オマエ軽りーなもっとメシ食えよ」
 ゼノアスはそんなことを言っています。
 彼も認める凄い美形に抱き上げられてそんな事を言われ、李月は無言のまま赤面してしまいます。
 しかしうっとりとはしていられません。今日は大掃除なのです。
 そんな彼に協力してもらいながら、李月は換気扇を取り外してソーダをかけました。
「ゴホ、ゴホッ」
 しかし、マスクをしていなかったため、激しく咳き込んでしまいます。
「ゲホッゲホッ」
 ゼノアスも巻き込まれて咳き込みます。
 のっけから大変な目に会いました。
 しかしここで挫けてはいられません。
 気合いを入れて李月はゼノアスに向かって言いました。
「いいか今年はうちの両親帰ってくるんだ。きちっと綺麗にして安心させればお前の心証も良くなるんだからな」
 それに対してゼノアスは怪訝そうな顔です。
「悪いのか? オレは」
「いいとは言えない。だから頑張るんだ!」
 いつになく熱血な顔で李月は強調します。
 眼鏡の奥でアイスブルーの瞳が燃えています。
「おう!」
 釣られてゼノアスも熱血です。
 そうしてゼノアスは頑張りました。とても自由に頑張りました。
 五徳の細かい汚れを落とそうとして力んで、形を変形させたり……
 ファンもバキリ……
 ガスコンロにお湯をぶっかけて水浸しに……
 ゼノアス、大暴走です。
「わーやめてくれ! 仕事増やすなー!!」
 李月は大慌てで止めに入りました。
 結局、二人でゼノアスの広げた惨状の後始末で床を拭きます。雑巾がけをしながら李月はもうぐったり。
(まず力の加減を覚えてもらうところだな……)
 疲れ切りながら苦笑します。相棒である精霊の性格を考えてみたら、大掃除を完璧にやるのはなかなか難易度が高かったかもしれません。
「なかなか出来ねぇモンだな。オマエこんなんいつもやってたんだな。スゲー奴だ」
 ゼノアスは真面目に雑巾がけをしながらそう言いました。
 どうやら李月の事を感心しきっている様子です。そうして、彼の顔を見る笑顔は本当にいい笑顔です。
 なんだかそんな笑顔を向けられたら、何も憎めなくなってしまいます。
「次はもっとうまく出来るよ」
 怒りも忘れて、李月はゼノアスをフォローしていました。なんといっても、ゼノアスは魅力的な精霊なのです。
 しかし、台所の惨状を見ると
(もう掃除さぼりません……)
 心の中では涙目で決意です。
 大掃除をする予定だったのに、逆に汚れと破壊が広がってしまっています。
 そうして、ゼノアスの活躍によって、多くのものが買い換えを余儀なくされてしまいました。破壊されたものは全て新品になり、どうしようもない壁や床は張り替えました。
 結果的に台所はピカピカです。
 大掃除というよりリフォームになってしまいました。それでも台所はピッカピカ。
 それを見て、李月は何だか笑ってしまいました。
「クスッ……まあいいか」
 なんだかんだで、二人らしい結末なのでした。
 何事も自由人の精霊ゼノアスに振り回されるのは今日に始まった事ではありません。ドタバタと騒がしい毎日ですが、以前のように本だけが世界だった頃よりも、ずっと生命力に溢れて躍動感のある毎日だと思います。新年はどうなることやら--何だか楽しみな李月でした。


むつば(めるべ)編

 今日はむつばとめるべが大掃除をする日です。
 むつばは一見すると紫色の髪の毛を長く腰まで伸ばした、銀色の瞳の中華風の十五歳の少女に見えます。ですがれっきとした六十八歳の老人男性です。
 めるべもまた、黒髪に金色の瞳の、十六歳程度の中華系の少年に見えますが、実年齢は八十歳。
 どちらもある薬を服用した結果、その姿にとどまり続けているのでした。
 数奇な縁でウィンクルムとなり、同じ廃校舎に住んでいます。
 場所はめるべと共に暮らす廃校舎の玄関口です。
「まずは天井からゆく」
 むつばはたおやかな手を天井にかかげ、ハタキをかけようとしました。
 ですが、手が届きません。何しろむつばの身長はわずか154㎝なのです。
 仕方がないので脚立を持ってきてハタキの手を伸ばしました。
 ですが、手が届きません。今度はむつばは脚立の上に立って、更に乾いたモップを天井に掲げました。
 やっと手が届きました。むつばはモップで作業を開始です。
 めるべはむつばと反対側の天井に向かいます。
 めるべも身長は158㎝、それほど背が高い訳ではありません。それで、廃校舎の椅子を持ってきて、その上に立ち、やはり乾いたモップで天井を拭き始めました。
 埃がどんどん落ちてきます。何しろ一年分の汚れなのですから。
「日頃の汚れは天から湧き、地へと降り立つものよ」
 埃にも負けずにむつばは真理を悟ったような発言。
 むつばは長柄のモップを使って、奥から手前へ一筆書きに水拭きにして行きます。そしてそのあとをなぞるように別のモップで乾拭きしました。
「げほ、げほ……」
 埃にせきこみながら、むつばもめるべと同じモップを使って反対側から水拭きと乾拭きを繰り返します。
 むつばが水拭きをしている時には、めるべが乾いたモップを使ってから拭き。
 めるべが水拭きをしている時には、むつばが乾いたモップを使ってから拭き。
 脚立と椅子の上に立って二人はまるで双子の兄弟のような動きを繰り返しました。
 それぞれ天井の左右反対側から順番に天井を掃除していって、たちまち玄関の上半分は元の輝きを取り戻しました。
「次は靴箱じゃ」
 むつばは靴箱の外側と内側のチリクズを床に落とすように箒で払います。それから土などの汚れはぬれ雑巾で拭きます。最後は乾拭きで艶を出します。
 めるべもてきぱきと同じ行動を反対側から繰り返していきます。
 古い靴箱は二人の手によって元の清潔感を取り戻しました。今は使う者は二人しかいませんが、かつては何百人もの生徒がこの靴箱を使っていた事でしょう。
 そのときだってこんなに綺麗に磨いて貰えた事はないかもしれません。
 最後に床です。
 むつばが箒で屑を回収していきます。天井から落ちた埃や、靴箱の汚れや、様々な泥などで床は汚れきっています。
 むつばがさっさと箒を掃いて一箇所に集めていきます。流石に六十八歳、汚れにも狼狽えず愚痴も吐かずに、慣れた手つきで作業を進めていきます。
 そのあとを、めるべが濡れた雑巾で拭いていき、更に乾いた雑巾で乾拭きします。めるべの方も、汚れを前にしても狼狽えるような事はありません。泰然とした仕草で作業に集中して床を磨き上げました。
 最後に速やかに掃除用具を片付けます。
「これが掃除のそうじよう効果というヤツか」
 めるべは駄洒落を言っています。
 むつばは駄洒落に苦笑いを浮かべて相づちをうちます。めるべの駄洒落につきあうのも大掃除の作業のうちなのでしょうか。あるいは日常の事として受け止めているのでしょうか。
 駄洒落を言い合いながらも二人は手早く掃除の道具を片付けます。
 そして、磨き上げた玄関の床に大文字になって寝転んでしまいました。
 むつばは家庭科室から温かいお茶を用意してめるべにねぎらいの言葉をかけました。
「お疲れじゃ、思ったより時間をかけたな。舌先三寸でしか言えぬが……礼を言う」
 めるべはむつばと差し出された茶を交互に見つめ、礼を返しました。
 数奇な縁で結ばれたショタジジイ二人。片方はロリババアにも見えますが、やはりショタジジイです。
 見かけによらず枯れた老人二人は、日頃から仲良く茶を啜る事も多いのでしょう。老体に似合わない肉体労働で疲れた後に、ゆっくりと啜る茶は格別です。
 和みのひとときを楽しみながら、二人は暮れてゆく今年の事を思います。来年もまた一つ歳を取りますが、最早二人とも歳を数える事はありません。互いに見慣れたお互いの顔を見やりながら、のんびりとしたひとときを過ごす事でしょう。
「これで新たな年を迎えられるが、やはり一人より二人はいいものよの」
 どちらからともなくそんな事を言い合いながら、また茶を啜り、枯れた笑顔をかわしあいました。
 いくつになっても仲の良いということは、本当に素晴らしい事なのです。



エリック・イェーガー(ジハード)編

 今日はエリック・イェーガーとジハードが自宅のマンションを大掃除する日です。
「さて、大掃除やりますか!」
 そう言って気合いを入れるエリック。さらさらの長い黒髪で、女の子のように見えますが、男の子です。
「む、大掃除か……俺は妥協しないぞ」
 堅物で軍人のジハードは険しい顔でそう言います。
 エリックはウィンクルムの相棒のジハードに向き直ります。
「ジハードはこういうの厳しそうだよね」
 何気なく聞いてみただけでした。
「ああ、軍にいた頃はシーツに皺ができただけで窓から寝具一式を放り出されたからな
軍ってすごいだろ?」
 そうすると即座にジハードはそう答えました。苦笑いはしていますが胸を張ってやけに自慢げです。否、軍の厳しさとそれに耐え切れた自分を自慢しているのでしょう。
「え……それはすごいね……」
 エリックは彼から退いてしまいながらそう言います。社交的なへらりとした笑みを浮かべていますが、軍の厳しさにも、それを自慢するジハードにもちょっと困ってしまっています。 そんなスゴイ掃除をする人達に、普通のマンションの大掃除をつきあわせていいのでしょうか。
 ですが彼は気を取り直して、大掃除を始める事にしました。
「まずはカーテンの洗濯からだね……届かないからジハードよろしく」
 そう言ってエリックはカーテンレールを指さしました。
 何しろ女の子にしか見えないエリックの身長は160㎝足らず。
 背伸びしながらカーテンを外すのは一苦労なのです。
「む、カーテンに手が届かないのか、任せろ」
 身長2メートル近くの体格の良さを誇るジハードは早速カーテンレールに手を伸ばし、生真面目な顔をしてカーテンを外し始めました。
「背が高いっていいよね、同じ男としてうらやましいなぁ……」
 その頼もしい背中を見守りながらエリックは本当に羨ましそうに呟きました。
 そこでジハードはエリックを振り返り、思わず口を滑らせてしまいました。
「ああ、そういえば貴様は男だったな」
 本当についうっかりという感じです。
「失礼な事を言うねジハードは!」
 たちまちエリックは怒り出してしまいました。
 女の子に間違われる事に調子に乗って、女の子っぽい仕草を真似したりもしているのですが、それとこれとは別なのです。
「罰として窓ふきは全部任せたよ!」
 怒ってエリックはジハードに背中を向けながら言いました。
「罰の件了解したぞ、任せろ」
 意外にあっさりとジハードは承諾しました。
「ふっふっふ……見えなくなるまで磨いてやろう」
 軍の訓練で窓ふきをしたことでもあるのでしょうか。
 汚れが完全に消え去って見えなくなるまで、ジハードはやってしまう気です。
 キュキュキュといい音を立てながら窓ふきを始めました。
(冗談だったんだけど納得してるならいいや)
 ジハードの渡したカーテンを抱えて、エリックはそこは彼に任せる事にしました。
 ジハードが窓磨きをしている間に掃除機をかけます。
(これはさすがにジハードの手を煩わせないよ)
 何しろ彼は窓磨きをしているんですから。
 窓からドアに向かって一通り掃除機をかけます。
 床の上を丁寧に、ゴミを漏らさず吸い上げて、綺麗にしていきます。
 日頃から掃除機をかけているつもりですが、四方の隅や机の裏などには思ったよりも埃が溜まっていて、結構時間がかかりました。
 その後、腰より下の位置にある椅子や机の脚、壁などの汚れにセスキを吹きかけて雑巾で拭いていきます。
 日頃、あまり目にしない場所だけに、汚れを取るのは一苦労です。
 そうしていると、ジハードの窓ふきの作業も終わったようでした。
 窓ふきの雑巾をバケツに入れて水道の方に向かっています。
「ジハード、それ終わったら、床の雑巾がけつきあって!」
「分かった、すぐやる」
 ジハードはきびきびと返事をします。やはり掃除も軍の訓練だったのでしょうか。それとも彼の堅物な性格が成せる技でしょうか。
 戻って来たジハードと、雑巾にセスキをたっぷり吹きかけて、床をダーっと雑巾がけしていきます。
 まるで競争するかのように床磨き。
 やはりジハードの方が早く、エリックが1/3床を磨いている間に彼は2/3も床を磨き上げてしまいました。
「流石だね、ジハード。ココアでも入れようか?」
「ああ、頼む」
 そんな訳で、エリックがココアを入れました。
 彼のポケットに入っている「初級マニュアル本「調理」」の知識を生かして、甘くて温かいおいしいココアを入れる事が出来ます。
 綺麗に大掃除を終えた部屋で、二人でココアを飲みながら一息ついていると、ココアの甘味だけではない幸せに包み込まれていくようです。
 堅物で融通の効かないジハードですが、何だか、一緒に年を越すのも年を迎えるのも彼しかいないという気分にさせられるのです。
 それが初めて知る、何とも言えない、甘い幸せなのでした。
(ジハードもそう思っているといいんだけれど……)
 そこまでは言い出せないのですが。いえ、きっと彼もそう思っている事でしょう。



蒼崎 海十( フィン・ブラーシュ )編

 今日は蒼崎海十は、フィン・ブラーシュと同居している部屋、それもキッチンを大掃除する予定です。
「普段、家事はフィンに任せてばかり……だから、フィンが普段立つキッチンを綺麗にして喜んで貰いたい」
 フィンは海十の口から大掃除しようという言葉が出てきて驚きました。忙しい海十のために、彼がバンドの練習に行っている間にさっと済ませてしまおうと思っていたのです。
 十七歳の彼はまだ高校生。同時にインディーズバンドのボーカルとギターでもあり、更にオーガを倒すウィンクルムの神人でもあるのです。そんな生活をしている彼は、なかなか家事まで手が回りません。いつもフィンが家事をしているのでした。
 勿論、フィンはありがたく一緒に掃除することにしました。
(何かこういうのって……凄く家族っぽくていいな)
 フィンは大掃除するだけなのに密かにときめいています。海十が大掃除をするという事に感動をしている訳ではなく、二人で一緒に掃除をするという事にときめきを感じているのでした。
 そのとき、海十が脚立を持ってきて言いました。
「換気扇を外すのは俺に任せてくれ」
 そう言ってフィンが何かを言う前に、脚立に乗ってしまいます。
(あ、換気扇外すの少しコツが居るんだけど……大丈夫かな?)
 普段、家を掃除しているフィンは海十が換気扇に手を伸ばすのを見ながら、その事に気がつきました。
(う、意外と固い?)
 海十は脚立の上で腕に力をこめました。途端に足下がぐらぐらと不安定に。
「すんなり外れな……わ……!」
「海十、俺が代わる……、……!」
 フィンが代わろうと言い出した時。
 海十が換気扇の蓋を力任せに開けました。開けた途端に反動で後ろに大きくよろめきました。慌ててバランスを取ろうと換気扇を持った腕を振り回し、前に重心を傾けます。
 その重心が大きく前に偏って、海十は脚立の上から前に落っこちてしまいました。
 フィンが慌てて海十の前に滑り込み、その体を抱き留めます。
 そのとき、二人の顔と顔がぶつかってしまいました。
 海十は衝撃に目を閉じています。
 フィンは、海十を抱き留めようとしていますから、しっかりと目を見開いていました。
 顔がぶつかった瞬間、二人の唇と、唇が触れ合っていました。
 フィンはそれをしっかりと視覚で確認しています。
(唇……触れた)
 フィンは全神経が自分の唇に集中してしまいます。
 そのため、海十を受け止めたまま、後ろの床に激突してしまっても、痛みも何も感じていませんでした。
 掃除を始めた時から感じていたときめきは最大値。もう痛みも心配も危惧も何もありません。
「わ、悪い、フィン……!」
 慌てて海十はフィンの上から起き上がりながら必死に謝ります。
(もしかして今のって…)
 海十も落っこちた瞬間、フィンの顔が至近距離にあったことや、唇の感触は自覚しています。
 たちまちトマトのように真っ赤になってしまいます。
 まるで自分がフィンの唇を無理矢理奪ったように感じながら、必死に謝る海十。
 フィンはその赤くなって必死に謝っている海十が可愛くて、思わずにやけてしまうのでした。
 やがて立ち直った海十は換気扇の蓋を手に取りました。
「か、換気扇外れたからシンクに置くな」
 ガスレンジ台からも五徳など外せるものは外してシンクへと置いていきます。
「床や壁の掃除も任せてくれ。あ、俺が雑巾で拭くから。フィンは雑巾持つの禁止」
 そう言って、海十はきびきびと働き続けるのでした。
(雑巾に触るの禁止……海十、明らかに俺に気を使ってくれてる……)
 気を使ってくれているのはありがたいのですが、一緒に掃除するつもりだったフィンはなんだか手持ちぶさたになってしまいます。
……とはいえ、普段からフィンが掃除してくれているから、そんなに酷い汚れはないようでした。
(改めてフィンに感謝だな……)
 日頃、三足わらじで忙しくて、なかなか家の汚れなどには気が回らない海十は、改めてフィンの偉大さを噛みしめるのでした。
「あのさ、フィン……。この間も言ったけど……いつも有難う……な。俺も出来るだけ家事するから」
 海十は心からそう告げました。
 自分を支えてくれるフィンという存在がありがたくて、申し訳なくて、たまりません。
「……俺も有難う。一緒に掃除、またしてくれたら嬉しい。海十と一緒だと凄く楽しいから」
 海十の率直で素直な言葉に、フィンはそう答えました。海十が自分に感謝してくれる。そのこと以上に、喜びや幸せなどあるでしょうか。
「でも、海十の世話を焼くのが、今の俺の生き甲斐だから……あんまり海十に仕事を取られたら悲しいかな、なーんて」
 しかしフィンは軽い口調でそう茶化してしまうのでした。家事全般完璧にこなすのは、可愛い恋人を大切に幸せにしたい、そう思うが故の彼なりの努力とアピールなのです。
 互いに思いやる心が通じ合った、年末のある日の事でした。大掃除で家を浄めたら、いよいよ来年です。来たるべき年には、どんな幸せが待ち受けているのでしょうか。とても楽しみですね。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 森静流
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 12月18日
出発日 12月25日 00:00
予定納品日 01月04日

参加者

会議室

  • [6]蒼崎 海十

    2015/12/24-22:19 

  • [5]むつば

    2015/12/24-08:55 

    むつばと、テイルスのめるべじゃ。よろしく頼む。

    玄関というのは、一年中人の出入りが絶えないからのう。
    そういう事じゃから玄関を手掛けようと思っとる。
    締めくくりといっていいか、わからぬが、皆良い年を迎えられる事を祈る。

  • [4]李月

    2015/12/24-00:37 

    李月です
    相棒はゼノアス
    よろしくお願いします

    肉好きな相棒のせいで台所の油汚れが深刻‥!

  • [3]蒼崎 海十

    2015/12/24-00:36 

  • [2]蒼崎 海十

    2015/12/24-00:35 

    蒼崎海十です。
    パートナーはフィン。
    皆様、宜しくお願いします。

    俺はフィンと同居している部屋で、キッチンを大掃除する予定です。
    普段、フィンに家事は任せてばかりなので…大掃除くらい、俺も一緒に頑張りたいなと…。
    フィンが普段立つキッチン、思い切り綺麗にして喜んで貰いたいと思います。

    頑張りましょう!

  • まだ誰もいないみたいだけど、一応挨拶しておくね!

    ボクはエリック・イェーガー。
    精霊はジハードだよ。

    お互い大掃除頑張ろう!


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