【寄生】オーガなイノシシを撃退しよう(春夏秋冬 マスター) 【難易度:普通】

プロローグ

 無残に砕かれた馬車の破片が、周囲には散らばっていた。
 それと同時に、馬車に積まれていた荷物は巨大な二頭のイノシシに踏み荒らされる。
「止めてくれぇ……」
 離れた場所に避難しながら、馬車に乗り荷物を運んでいた男達は懇願するように声を上げるが、二頭のイノシシはお構いなしに踏み荒らしていく。
 時間をかけ心を込めて作った何枚ものセーターやマフラー、そして手袋などが無残な姿に変わっていった。
 それらはクリスマスに関するものなら何でもある市『マルクトシュネー』で売る為に作られた物。プレゼント用に色もデザインも凝って作ったそれらは、収入と皆に喜んで貰える嬉しさに支えられ、毎年この時期には販売の為に輸送されている。
 けれどそれも、このままではどうしようもない。
 マルクトシュネーへと続くこの道に、角を生やした二頭のイノシシが現れるようになって以来、誰もこの道を使うことは出来なくなっていた。
「ちくしょう、せめて他の道が使えれば」
 忌々しそうな言葉に、仲間の男達が応える。
「うちの村から荷物を積んだ馬車が通れる道なんて、ここぐらいだぞ。あのイノシシ共をどうにかしないと、どうにもならねぇ」
「無茶言うな、あいつらオーガだぞ。俺達がどうこうできる相手じゃねぇだろ」
「分かってるよ。だからA.R.O.Aに退治して貰えるよう、頼みに行ってんだろ。助けが来るまで耐えるしかねぇ」
「だから助けが来るまで待とうって言ったじゃねぇか。オメェが良いとこ見せようとするからよ」
「お前だってノリノリだったじゃねぇかっ」
「うっせーっ、頼られたらその気になんのが男ってもんだろっ」
「テメーは下心満載だっただろうがっ」
「オメェが言うなっ」
「……おい、お前ら」
 言い争う二人に、もう一人の男が怯えたような声を上げる。
 いつの間にか、馬車と荷物の残骸を荒らしていたイノシシ達は、男達に視線を向けていた。
 緊張感のある静寂が一瞬過ぎると、
「逃げろ!」
 突進してきたイノシシ達に、男達は必死に逃げ出すのだった。

 そんな事があった頃、A.R.O.A本部には今回の件の解決に関する依頼が入っていた。
 内容は、オーガなイノシシ退治と、マルクトシュネーに就いた際の商品販売の手伝い。
 どうやらオーガなイノシシに襲われたせいで、商品の売り子も足りていないらしい。
 依頼の際に聞き取った内容から、どうやら今回のイノシシオーガは、黒き宿木の種に寄生されたもののようである。
 この依頼に、アナタ達は――?

解説

 黒き宿木の種に寄生された猪オーガが、マルクトシュネーに続く道の一つで暴れています。これを撃退し、マルクトシュネーでの商品販売に協力してあげて下さい。

 敵情報

 猪オーガ×2

 特別強い訳ではありませんが、ある程度の防御力と体力を持ち攻撃力もそこそこな相手です。
 倒すのに手間取り過ぎたり、余裕を与えすぎると荷馬車にぶつかりに行きます。
 無用な被害を出さない為に、出来る限りすばやく倒す必要があります。

 敵との遭遇状況

 3台の荷馬車で道を移動中に現れます。
 村人からの聞き取りにより、今まで複数の荷馬車で道を進んだ際には、馬車の先頭と最後尾を挟み込むようにして1頭ずつ猪オーガは現れ、威嚇した後に馬車に突っ込んでくるとの情報を得ています。
 3台の荷馬車の内、どれに何人同乗し、敵が現れた時に即座に対処するか。その辺りが重要になります。
 戦闘の際は、馬車を守りながらの戦闘になります。
 道は左右を木々に囲まれ、そこからイノシシオーガは現れます。
 戦う際に十分な幅が道にはあります。

 戦闘終了後

 マルクトシュネーで販売のお手伝いをして下さい。
 商品は、プレゼント用の冬物衣料。温かなセーターやマフラーに手袋など。
 よほど無茶な商品でない限り、冬物衣料の範囲なら揃っている物とします。
 販売形式は露店販売です。イメージ的には、フリーマーケットのような感じです。
 売れたかどうかやお客の入りに関しては、頂いたアクションプランにより判定させて頂きます。

ゲームマスターより

 初めまして、春夏秋冬と申します。私がリリースさせて頂く最初のエピソードになります。
 前半が戦闘、後半がマルクトシュネーで販売のお手伝いになっていますが、頂いたアクションプランで描写の比率は変えさせて頂く予定です。

 それではどうか、村の人達を助けて、プレゼント販売のお手伝いをお願い致します。 

リザルトノベル

◆アクション・プラン

上巳 桃(斑雪)

  私とはーちゃんとは先頭の馬車に乗車
猪が近付く気配を感じたら、トランス
猪が出たら全部の馬車を一旦停止してもらうよう、予め御者さんにお願いしておこう
あとは魔守のオーブを発動させたら、私も馬車を降りて、短剣ではーちゃんの援護かな
コネクトハーツはタイミングが重要だし、回復そっちのけで、はーちゃんと声を掛け合いながらがんばろ

目的地に着いたら、冬物を売るお手伝いかー
その前に売り物を1枚お借りしてもいい?
じっとしてたら、寒くなっちゃって…
…Zzz(←じっとしてたら、すぐ眠くなる奴

あ、おはよーはーちゃん

マリィさんが猪鍋作ってくれるんだって
ラッキー☆
御馳走になります
…Zzz(←お腹いっぱいでも、すぐ眠くなる奴


紫月 彩夢(紫月 咲姫)
  出発前にトランスして、最後尾の馬車に同乗
猪が現れたら魔守のオーブを展開して突進に備える
馬車から降りられるなら降りて攻撃
馬車への直撃は避けたいし、早めに援護貰うために、少し横にずれるように誘導したい
その為にも、積極的に前進よ
倒し切るよりは、逃さずに仲間が攻撃しやすい流れを作るつもりで行動
ちょっとの怪我なら、気にしない

あんまり後始末が要るようなのは避けたいけど、
後から通る人のためにも事後の始末はしっかりと

商品の販売のお手伝い
帽子とかマフラー系を、咲姫とペアで付けて、
ペアも可愛いってアピールしながらお客さんを呼びたいな
全部売れたら良いけど、余りそうなら一組買って帰れたら嬉しい

鍋、混ぜて貰えるなら参加


マーベリィ・ハートベル(ユリシアン・クロスタッド)
  出発前
御者や同行のNPCの方々に
ご協力をよろしくお願い致します
と挨拶をする

真ん中馬車
精霊隣乗り右見張る

敵発見
トランス
大声で敵の数皆に知らせる
止まった馬車降り状況見守る

敵森に逃げたなら
ユリアンの背後に寄る

馬車を守る
盾構え敵の飛び出し警戒
絶対真正面では受けない様意識
攻撃を受けるなら必死に迎撃

手伝
寒いだろうとプレゼントしてもらった
赤いマフラー身に着ける
会計
商品包装
受け渡し
テキパキ
彼の接客態度に対しては考えない様にする
(これは人助け人助け‥
呪文の様に

手伝い後
現場で道具材料調達し
討伐した猪で鍋を作り皆で一緒に食す
複雑な気分
(命受け継ぎます‥


●出発前
 依頼を受け村へと到着したウィンクルム達は、全ての準備を整えマルクトシュネーへと出発しようとしていた。

「ご協力を、よろしくお願いします」
 マーベリィ・ハートベルは、御者として同行する村人達に挨拶する。
 猪オーガの出る道を通るため緊張していた村人達だが、マーベリィの丁寧な挨拶のお蔭もあり少し緊張が和らぐ。そこへ更に、
「準備も整えているから、安心して下さい!」
 斑雪が力強く言う。
 ハンティングに覚えがある彼は、これまで猪オーガに襲われた村人達と、道中の地形に詳しい村人達にも話を聞き、猪オーガが出現しそうな場所を皆と協議しピックアップしていた。
 単純に猪オーガが出た時の話を聞いただけでは得られない優位性を、これにより皆は手に入れている。そして、
「斑雪くんからハンティングの知識を教わっているし、きっと巧くいく筈だ。心配せずに任せてくれ」
 ユリシアン・クロスタッドが言うように、事前に斑雪からハンティングの知識を皆は受けていた。
 もちろん聞いただけで技術が身につく訳ではないが、知識を伝達するやり取りの中で、いざという時の配置などに関する簡単なシミュレーションにも繋がっている。その分、戦闘になれば有利になるのは確かであろう。そこに、
「私が上巳ちゃん達と一緒に最前列の馬車。彩夢ちゃんが最後尾で、ハートベルちゃん達が真ん中に乗って進む、で良いのよね」
 紫月 咲姫は、改めて確認する事で村人達を更に安心させるように言う。そして、
「猪が出たら、一端馬車を停止して下さい。その間に、やっつけちゃいますから」
 上巳 桃が、戦闘になった際の手順を御者である村人達に伝え、これにより戦闘時の村人達の混乱も幾らかは事前に抑える事が可能になった。
 こうして戦闘に関するやり取りも終わり、後は出発するだけ。けれどその前に、
「オーガを倒した後の始末は、どうする? 時間を取られ過ぎるなら避けたいけど、後に通る人達のことも考えると、出来るだけの事はやっておきたいわね」
 紫月 彩夢が後始末のことも考えて提案してくれる。
 もっともだという事で、それに関しては同行する村人達も可能な限り行うという事になった。
 またその中で、猪オーガを無為に倒すだけでは命を粗末にすることに繋がるという事で、マーベリィの提案で倒した猪は鍋にする事に決まる。
 鍋の道具や肉以外の食材はマルクトシュネーで手に入れる事にし、倒した肉をさばくのは、後々の販売にウィンクルム達が協力する事も考え出来るだけ汚れないよう、それに関しても村人達が出来得る限り行うことに決まった。
 ただ、オーガ化した生き物の肉には微量の瘴気が含まれている事もあり、ウィンクルム達以外の一般人が食べると軽い痺れなどが起こる場合もある事から、食べるのはウィンクルム達だけという事になっていた。
 そうした話し合いも終わり、必要な物を馬車に積んでいく。
 その間に、先頭の馬車と最後尾の馬車に分かれて乗り込む咲姫と彩夢は、現場で余計な隙を作らないよう今の内にトランスを行う。
「運命を、嗤おう」
 インスパイアスペルを唱えトランスを行う。
 トランスを事前に行う場合、いつ猪オーガが出るかによって持続時間が切れる可能性もあったが、彩夢と咲姫であれば切れる前にマルクトシュネーに辿り着く。それほどに、二人の親密度は強い。
 こうして全ての準備を終えたウィンクルム達は、マルクトシュネー目指し出発した。

●猪オーガを倒そう
 出発して一時間ほど、過去に猪オーガが良く出て来たというポイントに差し掛かった時、事態は動いた。
「旦那様!」
「分かってる、こちらからも来たよ」
 真ん中の馬車に乗り、左右の林に注意を払っていたマーベリィとユリシアンが、馬車を追走する角の生えた猪に気付く。
 数は右の林と左の林、それぞれ一匹。それを伝えるべく警戒の声が響く。
「右の林の中から、オーガが一匹来ています! 前方に向かっているので気を付けて下さい!」
「左からも一匹来ている! こちらは後方に向かっているぞ!」
 マーベリィとユリシアンの声に、馬車は緊急停止。これまでとは違う馬車の様子に猪オーガ達は戸惑ったのか動きが鈍い。
 それに対しウィンクルム達の行動は速かった。
「はーちゃん」
 馬車から降り立った桃に呼ばれるまでもなく、戦う意志と桃を護ろうとする心意気を漲らせ、斑雪は彼女の傍に寄り添う。
「ネクタル」
 インスパイアスペルを唱えトランス。そうして戦闘態勢を整えるのはマーベリィとユリシアンも。
「マリィ」
 ユリシアンに呼ばれ、マーベリィは頬を染めながら傍に寄りそう。
「仰せのままに私の旦那様」
 インスパイアスペルを唱えトランス、そしてユリシアンは即座に最後尾へと向かう。
 それに対して馬車を守る役に就く予定だったマーベリィは、猪オーガがこれまでと違う状況に戸惑い動きが鈍い事もあり、後方の馬車を守る事も念頭に置きつつ、ユリシアンの援護も考え傍に寄り添う。
 これによりウィンクルムたち全ての戦闘態勢が整った。
 それに対し敵である猪オーガは、事前に発見され迎撃態勢を取られていたことで、一手以上遅れる。
 先手はウィンクルム達。その有利を生かすべく咲姫は動く。
「さて、手早く終わらせましょうか」
 猪オーガを馬車から引き離し注意を引く為にファンファーレを使う。
 華やかな音楽をひきつれ、きらびやかな明かりに包まれる咲姫に、猪オーガは興奮したように注意が向かい突進してくる。
 そこへ横合いから踏み込んだのは斑雪。
「いっくぞーっ!」
 気合一杯力を込めて突撃。その元気の良さに猪オーガは急停止をすると、振り向きざまに体当たり。
 しかしそれは陽炎による分身。手応えの無さに戸惑う猪オーガに、すかさず桃がコネクトハーツの一撃を与え離脱。
「今だよ、はーちゃん」
 それに応え、斑雪は音もなく一撃を与えるべく死角から忍び寄る。
 しかしそれに猪オーガは気付き向きを変えようとするが、
「余所見してると危ないよ」
 咲姫は魔道書をなぞり罰ゲームを発動。現れたピコピコハンマーに襲われ注意が逸れた猪オーガに、斑雪のバトルロッソの一撃が叩き込まれる。
 それにより桃が与えたコネクトハーツのダメージ効果も発動し、猪オーガを追い詰めていく。

 こうして奮闘を見せる前方グループ。そして後方のグループも、苦戦しながらも奮闘を見せていた。

「ほら、こっちよ」
 彩夢は魔守のオーブを展開し、猪オーガを馬車に近づけないよう、そして少しでも早く援護を受けられるように誘導しながら迎え撃つ。
 多少の傷も覚悟の上で積極的に前に出てくる彼女の動きに、猪オーガは間合いを狂わされる。
 それを嫌い、一端突進する事で距離を取ろうとするも、それを横合いからマーベリィが抑えに動く。
「逃がしません」
 盾を構え必死に、余裕があればトランスソードで斬りつける。
 前と横を抑えられた猪オーガは、隙を見てその場から離脱しようとするも、
「そちらには行かせん」
 ユリシアンの射撃が抑えに入る。
 苛立たしげに鳴き声を上げる猪オーガ。
 猪オーガにとって、いま自分に立ち向かってくるマーベリィとユリシアン、そして彩夢の攻撃は致命的というほどではない。
 だが、完全に抑え込まれている。もし知性の高いオーガであれば、それがある種の時間稼ぎである事に気付けただろうが、猪オーガは目の前の邪魔な相手を排除する事しか考えられない。
 鳴き声を上げ暴れ回り、多少のダメージを与えながらも、その場から動く事が出来ないでいた。
 けれどやがて、それは終わりを迎える。
 前に出て圧力を掛けていた彩夢が、突如距離を取る。それに続きマーベリィはユリシアンの元へ寄り添うように近付く。
 それを好機と見た猪オーガが突進しようとした瞬間、どこか可愛らしい音をさせピコピコハンマーが叩き付けられた。
 罰ゲームのダメージ、そして彩夢が与えたコネクトハーツのダメージ効果が発動し、猪オーガは無視できないほどの傷を受ける。
 前方で戦っていたグループが決着をつけ、援護に来たのだ。
「ごめん。待たせちゃった?」
「別に。でも感謝はして欲しいかな。見せ場を作ってあげたんだから」
 どこか遊ぶように、咲姫と彩夢は言葉を交わす。そこへ更に桃と斑雪の連携が入る。
「はーちゃん、私の方が合わせるから好きに動いて。無理しちゃダメだよ」
「大丈夫です主様! 任せて下さい!」
 斑雪が積極的に前に出ることで猪オーガの気を引き、そこを桃がコネクトハーツで援護。すかさず斑雪が追撃を与え更なるダメージ。
 連続で叩き込まれたダメージによろける猪オーガ。そんな猪オーガに、マーベリィは悲しそうな表情をする。それに気付いたユリシアンは、
「マリィ、ここで逃がせば余計な被害が出る。哀れな被害者だが、倒すしかないんだ」
 そう言うと、態度で示すように前に出る。その姿に力付けられるように、
「はい、分かっています、旦那様」
 マーベリィはユリシアンの背を守るように寄り添い、共に戦う。
 そうして皆が攻撃を重ねる中、ついに猪オーガは倒された。
 そして即座に片付けを行う。早めに村を出ていたとはいえ、戦いの分、道中の遅れは出ている。
 道の邪魔にならないよう林の中に猪オーガを移動させ、鍋用に一部持ち帰る。
 後始末も全て終わらせるとマルクトシュネーへと再出発。そしてほどなくして到着した。

●販売協力 
 辿り着いてすぐ、皆は忙しく働いた。
 折り畳みの台を広げ、温かなセーターやマフラーに手袋やストールなどを置いていく。
 暖色系の物もあれば、オフホワイトや薄いピンクのような淡い色合いの物。
 ふわふわもこもこふんわりあったかそうな物に、すらりとしたデザイン重視の物まで。
 目移りしそうな幾つもの商品が、年齢性別さまざまに揃えて用意されていた。
 そして、いざお客さんを呼び込み商売開始。なのではあるけれど、
「むにゃ……」
「あ、主様~。お外で寝ちゃったら風邪引きますよー、起きてくださーい」
 桃は、あったかそうなセーターとストールを身に着け、膝にはブランケット、そして頭には毛糸の帽子を被った完全防備で椅子に座り夢の世界にまどろんでいた。
 マルクトシュネーに到着後、桃は寒さに服を一枚貸してくれないかと頼んだのだが、それならばモデル代わりに着て貰おうと、完全防備を用意されたのだ。
 その上、ブランケットも見て貰おうという事で、椅子が用意され座っていると、当然のように睡魔の国に招かれた、という訳である。
 とはいえ、寝かせたままにしておく訳にはいかないと斑雪は起こそうと頑張るが、桃に気を使いながらでは起きる訳もない。途方に暮れる斑雪。
「どうしよう……あ、そうだ」
 良いことを思いついたとばかりに、斑雪は表情を輝かせると、
「お外でお昼寝が出来るほどあったかい冬物はいかがですかー? すっごくあったかいんですよー」
 起こせないならそのままで協力して貰おうと、お昼寝な桃を呼び込みに使う。
 かわいらしい売り子さんに微笑ましいモデルの少女。それに誘われ年配の女性たちが集まってくる。
 結果的にお客の引き込みは成功である。
「えっと……主様、ごめんなさい」
 孫用にと、年配の女性たちが眠ったままの桃をモデルに服を物色。直接触れる訳ではないが、どこか着せ替え人形のような役をさせてしまっている事に斑雪が小さく謝っていた。
 とはいえ、彼も他人事ではなくて、
「え? どれが好きかと言われても……」
 斑雪も当然ターゲットにされる。次から次におばちゃん達にモデル代わりに服を当てられもみくちゃに。
「た、助けて下さい~、主様ー」
「むにゃ……」
 微笑ましくも平和な二人だった。

 そうして販売に勤しむのは、マーベリィとユリシアンも。

「良く似合っていますよ」
 柔らかな笑みを浮かべながら、ユリシアンは服をお客に勧める。
 お客の層は、若い女性が中心。
「大切な人への贈り物なら、こちらはどうですか? きっと喜ばれますよ」
 自分への買い物に、プレゼント用。一期一会の誠意を込めて接客し、お客を喜ばせる。
 だからこそ、彼に向けられるのは笑顔。嬉しそうな笑顔を向けるお客さん達を目の端に止めながら、マーベリィは会計に商品包装、そして受け渡しをこなしていく。
 出来るだけ、余計な事は考えずテキパキと。頭の中で「これは人助け人助け……」と繰り返しながら。
 傍で見る分には役割分担をこなす手際の良い二人。けれど、心の中は?
 マーベリィは、考えれば考えるほどユリシアンに向かいそうな気持ちを押し殺し、販売に集中していく。
 そんな中、人の流れが途切れる。広げていた物を売りきって、補充に村人が走る。
 ほんの少しの二人だけの空白。その空白を、ユリシアンは温かな気持ちで埋めていく。
「マリィ」
「ぇ……あ」
 ふわりと、赤いマフラーが。ユリシアンが選んだそれを、彼は自分でマーベリィに身に付けさせる。
「うん、良く似合っているよ、マリィ」
「あ、その……旦那様」
 頬を赤く染め、恥ずかしそうに小さく俯くマーベリィに、
「寒いと良くないからね。さっき、買っておいたんだ」
 優しげに眼を細めユリシアンは言う。それにマーベリィは、
「それなら旦那様の方こそ、あたたかくされないとダメです」
 慌てて一生懸命に言う。それにくすぐったいような心地好さを感じながら、
「大丈夫。自分用も買っているよ」
 そう言うと、台の上に置いていた白のマフラーを手にする。
「あ……」
 それを見たマーベリィが小さく声を上げ、ユリシアンは悪戯っぽく微笑む。
「着けてくれるの? ありがとう、お願いするよ」
 そう言うとマーベリィに白のマフラーを手渡す。
 顔を真っ赤にし、オロオロするマーベリィ。けれどその間に新しいお客さんの一団が来る気配が。
 それに慌てたマーベリィ、顔を真っ赤にしたまま意を決し、身長差があるので少し背伸びをしてマフラーを着けていく。
「ありがとう、マリィ。それじゃ、残りも頑張ろう」
「その……はい、旦那様」
 そうして二人は温かな気持ちになりながら、色違いでお揃いのマフラーを身に着け販売を続けた。

 そうしたお揃いを着て販売をしているのは、彩夢と咲姫も。

「ありがとうございます。お客さん達も、良く似合うと思いますよ」
 咲姫とお揃いの帽子やマフラーを身に着けた彩夢は、お客として来た一組の女性達に褒められる。
 友達同士という二人は、クリスマスも近いのでお互いのプレゼントを買いに来たようで、ちょうど彩夢と咲姫のお揃い姿に目を引かれたのだ。
 そんな彼女達を接客する彩夢。彼女を助けるように、咲姫もセールスポイントを口にする。
「見た目だけでなくて、実用性にも優れているの。丁寧に作ってある物は温かくて素敵よね。こういうアイテムは、あって損はないわよ」
 力仕事もこなしていた咲姫は、販売員としても奮闘する。そこへ更に畳み掛けるように、彩夢も言葉を重ねる。
「ペアで揃えるのも可愛くて良いですよ。値段もお手頃ですし、試しに着けてみてはどうですか?」
「それ良いわね。これなんかどうかしら。二人にとっても良く似合うと思うの」
 どこか友達同士の会話のように、お客さんとお喋りしながらお試しタイム。お客さんは楽しそうに笑顔を浮かべ、お揃いの帽子とマフラーを購入。
 プレゼント用に包装し、それを受け取るとお客さん達は立ち去る。
 そして一息つくように、お客さんの来ない空白時間が。
 彩夢と咲姫は息を抜くように少し黙っていたけれど、
「さっきのペアのマフラー、可愛かったし温かくて良かったわよね。彩夢ちゃんは、何か買って帰らないの?」
 咲姫が楽しそうに呼び掛ける。それに彩夢は、
「余ったら、一組買って帰ろうかなって思ってる。全部売れるならその方が良いし、諦めるけど」
「そうなの? だったら、後で良いのを見ておきましょう。さっき商品を馬車から出す時、欲しい物があったら先に取っておいて下さいねって言われてるから」
「それ、気を使わせちゃってるんじゃない?」
「違うみたいよ。販売員の特典なんだって。下手に気を使ったら、自分達も欲しいのを取っておけないから、遠慮しないでって言われたの」
「そうなんだ。なら、一組見つけておこうかな」
「……買うの、一組で良いの? ふふ、お土産にも、丁度いいんじゃない?」
 楽しそうに、そして優しそうな響きを込め尋ねる咲姫に、彩夢は誰かを想うような間をほんの少しだけ開けた後、
「そうね、考えておくわ」
 静かに返す。それに咲姫が返そうとした所に新しいお客さんが。
 二人は気持ちを切り替えて、再び販売に勤しんだ。

 そうして販売は好評の内に終わる。後は片付けと帰るだけ。とはいえ、幾らか時間があるという事で、倒した猪オーガを使った鍋を皆で食べる事になった。

●鍋で体ポカポカ
「あ、おはよーはーちゃん」
 斑雪に起こされ桃は軽く背伸び。そして美味しそうな匂いに、
「マリィさんが猪鍋作ってくれたんだ。ラッキー☆ 御馳走になりに行こう、はーちゃん」
 二人仲良く鍋を食べる。灰汁取りをしっかりと、野菜と香辛料をふんだんに使った鍋は地味に溢れて美味しい。
「美味しいね、はーちゃん」
 桃に頷きながら斑雪はおかわりも。お腹の中からぽかぽかと良い気分。という訳で、
「主様、寝ちゃダメですよー」
 睡魔の国に誘われる桃であった。

 そして彩夢と咲姫も美味しく頂く。
 
「うん、臭みも無くて美味しい」
「そうね。香辛料が効いてるのが良いのかも」
 二人は感想を言い合いながら食べていく。
「猪肉は無理だけど、豚肉で試しに作ってみる?」
「気が向いたらね」
 気安いお喋りを重ねながら食べていった。

 そして鍋を作ったマーベリィは複雑な気持ちで食べていた。

「気になるのかい、マリィ」
「……はい、旦那さま」
 ユリシアンの言葉に返すマーベリィに、
「気持ちは分かるよ。だから、せめて悼む気持ちは忘れないでいよう」
 ユリシアンは肩にポンと軽く手を乗せる。その温かさに気持ちを落ち着かせながら、心の中で猪の命を受け継ぐ気持ちを込めて、残さず食べていった。

 こうして体が温まる中、片付けを終らせ、依頼を完遂するウィンクルム達であった。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 春夏秋冬
エピソードの種類 アドベンチャーエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル 戦闘
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 普通
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 3 / 2 ~ 5
報酬 通常
リリース日 12月12日
出発日 12月20日 00:00
予定納品日 12月30日

参加者

会議室

  • [20]上巳 桃

    2015/12/19-23:54 

  • ユリシアン:

    簡単ではあるが援護についてプランに入れました

    変更は早期発見を重要視しての移動です
    馬車が速度落ちた所で飛び降りるので
    それほどぼくの攻撃タイミングにラグはないと思っていますが
    せっかちな敵でない事を祈ります

    プランは提出完了です

  • [18]紫月 彩夢

    2015/12/19-22:22 

    ノーマークの馬車をなくしたい、という解釈でいいのよね。それなら問題無いわ。
    敵が二体だし、想定通りなら前後に現れるだろうから、
    敵の数の確認と、可能なら援護を貰えたら助かるわ。
    あんまり倒すつもりでプランは組んでないから少し攻撃寄りに修正しておくわね。
    まぁ、あたしだけじゃ倒せないと思うから、誘導しつつになると思うけど。

  • ユリシアン:

    このタイミングですまないが
    乗る荷馬車を真ん中のものへと
    変更したい
    やはりここだけノーマークなのが気がかりだ
    それ以外特に変更はない
    彩夢さんを一人にしてしまうが
    不都合はないだろうか

  • [16]上巳 桃

    2015/12/19-20:03 

    斑雪:
    おにくおいしいですよっ(もぐもぐ

    桃:
    プラン一応書けたよ
    でも、もうちょっと手を入れる予定
    馬車の停止のこともプランに入れましたー

  • [15]紫月 彩夢

    2015/12/19-18:50 

    ん、ありがとう、多分、噛み合わないことはないと思う
    一応ちょっとずつ修正しながら様子見てるし、基本が補佐メインだから、大丈夫かと。
    逃げられると困るわよね…なるべくこっちに向かってきてもらうようには、頑張るわ。

    鍋、混ぜて貰えるのなら参加させてもらうわね、ありがとう。

  • ユリシアン:

    紫月さんのお二人、仲間は多い方が心強い
    よろしくお願いします

    こちらの行動は
    始めに威嚇のタイミングでダブルシューターⅡ2回撃ち
    他に
    ・突っ込んでくる
    ・森に逃げ込む
    という敵の行動を想定し対応をプランに入れた
    森に逃げ込んだ場合10分まで出てくるまで待つ事にしている
    紫月さんがどんな作戦で行っても
    そうかみ合わない事は無い様に思う

    >弔いの猪鍋
    プランに入れているので
    紫月さんのお二人も
    良ければ一緒にどうですか?

    >御者に停止を頼む
    ではこの件に指摘を入れてくれた
    上巳さんにプラン記入をお願いします

  • [13]紫月 彩夢

    2015/12/19-16:55 

    …おにく、美味しそうね。
    えっと、咲姫のスキルをファンファーレと罰ゲームで行くことにしたから、お知らせしておくわね。
    パペットマペットにしようか迷ったけど、カウンターで爆発するのが少し気にかかるから、避けたわ。
    基本はファンファーレできらきらしてることになると思う。

    売り子の方は、特に、凝ったことはしなくていいのよ、ね…?
    普通に客引きとかのお手伝いとか、必要なら設営とかも、くらいで書いたわ。
    戦闘もその後も、手の足りない部分があれば言ってもらえれば対応できるから、何かあれば、ぜひ。

  • [12]上巳 桃

    2015/12/19-16:45 

    わーー紫月さんありがとー
    よろしくお願いしますっ
    はーい、もろもろ了解だよ

  • [11]紫月 彩夢

    2015/12/19-14:07 

    ……すごくギリギリだけれど、気になっていたから、お手伝い、出来たらと。
    その、うっかり、前衛じゃなくて後衛の兄を連れてきたんだけど…
    えぇと、ここまではざっくりとだけ目を通していて、
    マーベリィさん達が3台の馬車のうちの最後尾、上巳さん達が最前列の馬車に乗り込むってことで、良いのよ、ね?
    えっと、あたしと咲姫は、多分、分かれて移動してもそれなりにトランス時間持つと思うから、
    良ければ咲姫が前列、あたしが後列に混ぜてもらいたいなって思ってる。
    それなら、今から二人が動く必要もないかなって。

    あたしは一応魔守のオーブ持ってるし、上巳さんも持ってるようだから、
    分かれたほうが保険としては都合いいかなって思って。
    そんなわけで、あたしはオーブも使って自衛しつつ、イノシシに突っ込む形になるわ
    咲姫は今のところ罰ゲームとタロットダンスを活性化してるけど、
    ファンファーレで知能の低い敵の気を引くのも出来るようになったから、そっちの方が良いかな。
    あたしも咲姫も、いつトランス切れるかわかんないし、二人が攻撃する隙を作る方向で動きたいと思ってるわ

  • [10]上巳 桃

    2015/12/19-13:15 

    こっちこそ書き直したこと気付かなくってごめんなさい。

    >馬車
    じゃ、猪が出たら馬車は停めてもらうことにするね。
    そしたら、私も降りられるから、短剣持ってけるかな(弓とか遠投武器なかった
    短剣「コネクトハーツ」で、はーちゃん助けに行けると思う。
    馬車の停止はこっちでもプランに入れられると思うけど、どうしよう?

    というわけで、プラン書いてきまーす

  • ユリシアン:

    >馬車のスピード
    敵を発見次第皆に知らせる行動を入れているが
    それで馬車を止めて貰えると思い込んでいたがなるほど
    そこは出発前に御者の者に敵出現の知らせと共に馬車を止めるよう
    頼んでおけば解決できる気がする
    こちらでプランに入れてもかまわない

    >ハンティング
    ありがとうございます

    >猪鍋
    勝手すぎたかと思い発言を下げてしまった
    失礼した
    乗って貰えるならありがたい
    調理1のマリィが作ります
    ただ、道具等はどこから調達?という問題があり
    オーガ討伐のお礼にかこつけ現場でなんとか調達できるのではと考えています
    考えが甘いだろうか
    もし不発に終わったなら申し訳ないが
    プランにはしっかり入れておきます

  • [8]上巳 桃

    2015/12/19-09:42 

    真ん中の馬車が空いちゃうけど、仕方ないよね
    ひょいひょいと飛び移れたらいいんだけど…無理ー(汗

    これはすりあわせが必要だって思ったことなんだけど、
    猪が出たら馬車のスピードをちょっと落としてもらう、出来れば止まってもらうっていける?
    動く馬車に乗ったままじゃ上手く戦えないだろうと思うから、
    馬車のスピードを落としてもらって、はーちゃんだけでも飛び降りたいんだけど。
    あと、たぶん前方に飛び降りる気がするから、戦ってるときに馬車に突撃されないようにっていうか…
    本当は戦いながらなるべく横の方にずれてきたいんだけど、ちょっと自信がなくて
    間に合わないかもだし

    馬車が止まれば私達神人も馬車を移動できるかもだけど、オーガが出てからじゃ意味ないか
    それぐらいなら、たぶん戦闘のお手伝い行ったほうがよさげだろうし

    >「ハンティング」
    はーい、じゃあこっちのプランにも入れられるようにしておくねー

    >猪鍋
    お誘いありがとー
    じゃ、販売のお手伝いのあとに遠慮なくお誘いに乗っかっちゃうね

  • ユリシアン:

    >トランス
    報告の襲撃場とほぼ同じ場所で姿を現すと考えて
    そこに着く前に済ませるとしていましたが
    それは危険な思い込みだと気付きました
    二人で最後尾に乗る事にします
    アドバイスありがとうございます

    >ハンティング
    出発前に教えを受けたとプランに入れてもいいですか?
    成功率が上がるんじゃないかと思います

    (すいません[5][6]の書き込みを削除して投稿し直しました

  • [4]上巳 桃

    2015/12/19-02:05 

    少し考えてきたよ。
    こっちこそ、どもども。

    はーちゃんは攻撃力重視の片手斧装備してもらっていくね。
    それで、私とはーちゃんは先頭の馬車に乗って前の猪に対処してくよ
    (馬車に分乗しちゃうと「猪オーガが現れたら、トランス」って手段が使えなくなりそうだけど、大丈夫? スキルはトランスしないと使えない筈だけど)
    はーちゃんのスキルは「陽炎」かなあ
    で、人数をちょっと多く見せかける
    というか、手裏剣を装備しなかった場合に使えるスキルがこれぐらいしかなくって

    はーちゃんの一般スキルに「ハンティング」があるから使えそうだけど、まだ有効な活用法が思い付かないし、これはちょっと横に置いてと
    もし「ハンティング」が入り用だったら教えてね

    この人数だと、それぞれ前後で対処するしかないよねー
    はーちゃんは上に書いたみたいな感じだけど、私自身はまだちょっと未定

    マルクトシュネーで何するかもまだ考えてない(汗)
    多分普通にお手伝いかな
    …普通じゃないかもしれないけど、いや、たぶん普通。

  • ユリシアン:

    よろしくおねがいします
    というか‥ありがとう

    1つ、こちらの神人だが真ん中の荷馬車に乗り左側を監視させる予定です

    分担でほぼ単独行動で問題ないとは思いますが
    まめにここを覗くようにします
    すり合わせたい事があればなんでも

  • [2]上巳 桃

    2015/12/19-00:17 

    ギリギリだけど、入っちゃった。
    上巳桃とシノビのはーちゃんこと斑雪だよ。よろしくー。

    ちょ、ちょっと待ってね。今考えてくるから ←

  • ユリシアン:

    プレストガンナーのユリシアン・クロスタッドと
    パートナーのマーベリィ・ハートベルです

    まだぼく等だけだが考えている行動を表明しておきます

    馬車は最後尾希望
    敵が威嚇行動を取ったらそのタイミングでスキルで撃つ
    突っ込んでくるならこちらも接近し盾で受け流し近距離から撃ち込む
    ひるんで森に逃げるなら出てくるまで待ち
    出てきたなら同様の攻撃を

    敵は前後に現れるならこちらも前後分かれて対処するのが
    効率的かと思う

    種に寄生された被害者ではあるが
    猪はぼくにとっては食料のカテゴリーなので
    討伐後何かの弔いをするなら売り子を手伝った後で
    鍋にし食す事で弔いとしたい

    神人には戦闘に加わらず敵の警戒を
    していてもらおうと思う

    敵が報告通りの行動を取るかはわからないので
    不測の事態の対処についても考えている所です


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