【枯木】ルクリアが咲く頃に(如月修羅 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●ルクリアとは
「アッサムニオイサクラともいうのですが……これがですね、ひょっとしたら何度かいったこともある方もいると思うのですが、千年桜のある通称、「サクラ村」で冬も「サクラ」を楽しもう! ということで沢山植えられたのだそうです」
 とはいえ、と職員が小さく微笑む。
「ひょっとしたら自宅で育てている方もいるかとは思いますが……植えた、と言っても植木鉢に植えてあってですね。村人の家々に綺麗に並んでていて……そして、村中がいい香りなんだそうで。
そもそもサクラ村は、春の「桜」の季節に観光客が沢山来て、秋の収穫祭があって、冬は桜の木の加工品を売ることで食いつないでいるそうなんです」
 そこで、今年からは冬もどうにか集客を、ということで初めての試みらしい。
「そんな試みをするっていう矢先に……」
 黒い種が埋め込まれてしまったのだというのだから、大変だ。
「そこでですよ! 皆様のお力が必要だというわけです!!」
 黒い種は愛の力を浴びせれば枯れるという。
「村はただいま「ルクリアとサクラの魅力祭り」を開催中です。村の家々の門の所に、ルクリアのかかれた小さなカードがあります。
すべて集めるとルクリアの鉢植え1つとクッキー、栞、半分集めるとルクリアの焼印が押されたクッキーと栞、半分以下、ようは一枚でも取ればルクリアのはんこが押された栞がもらえます」
 そんなに大きくない村のため、そんなに大変ではないだろう。
「ロードマップが配られますから、それからそれたりすると、失格ですよー」
 協賛している家々をつないだロードマップらしい。
「そして、広場では「加工体験」ができます」
 一体どういうものがあるのかという問いに、職員がパンフレットを差し出した。
「サクラのスプーンは大まかなな形が既に掘りあがっておりますので、削ったり磨いたりする程度になります。ストラップもハートと星型はすでにある程度できているものを使うので、不器用な人もなんとかなるでしょう」
 そういうのもいいけれど、何かもっと大きなものは……? という問いかけに、にこりと微笑む。
「ご安心ください! 500jr払えば、道具も家具職人さんもなにもかもついて、お好きなものを掘れたり作れたりするようです!
と、言っても……小さな腰掛や踏み台とか、小さなテーブル程度ですけれど」
 あくまでも本格的な物は作れないということらしい。
 まぁ値段的に考えても妥当かもしれない。 
「あとは、飲み物や焼きそばみたいな屋台ものも数件並ぶそうです、そういうのを楽しむのもいいでしょうね」 
 では、楽しんでください、と送り出すのだった。

●そのころサクラ村にて
「かっちゃん、おめぇはりきってるなー」
「んだとも、絶対成功させるぞー!」
 いつだったか乗っ取られたトラックにのり、かっちゃんが声を張り上げる。
「ねぇねぇ、ウィンクルムのお兄さんたちも、くるのかな?」
「さぁ、どうかしらねぇ」
 そんな会話が繰り広げられる。
 甘い甘い香りの中に、少しだけ不穏な空気が混じっていて……。
「早く、来てほしいな!」
 子供の楽しげな声が広がっていく。

解説

 三回目の登場で、ようやく村名をだせたぜ!
 というわけで、ことあるごとに災難が降りかかる「サクラ村」を助けてください。
 どちらか一方でも、どちらも参加でも構いませんが、jrのご利用は計画的に!

●ロードマップ巡り
 家々は比較的小さく、屋根が赤や緑や青や黄色など、カラフルです。
 そこかしこにルクリアの鉢植えが飾られており(たとえば出窓など)とてもいい香りです。
 参加料がお一人 300jr 掛かります。
 全部で50枚となっており、全部回るとの表記がない場合は半分とみなします。

●広場
 千年桜がある広場。
 広場では、「桜の木」を使った工芸品を作ったり買ったりすることができます。
 サクラのスプーン:所要時間 30分程度 お一人様 400jr
 サクラストラップ:所要時間 20分程度 お一人様 300jr 
 自由:所要時間 各自の力量による お一人様 500jr

●村人たち
 村人たちは気さくで、過去の経験から、ウィンクルムの人たちがくると熱狂的に迎え入れます。
 おまけとかばんばん寄越す勢いです。
 職員さんからの依頼の関係で、皆様がウィンクルムさんだと理解しておりますので、ウィンクルムだという自己紹介は必要ありません。
 されど、お名前の自己紹介はしていただけたら、村人たちは喜んで皆様のお名前をおよびいたします。

ゲームマスターより

 村の名前、決めてなかったなんてそんなことないんですよ(視線をそらしつつ)
というわけで、もしも宜しければ、遊びに来て下さいませ!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)

  前回の秋祭り以来だ!
ロードマップ巡りするぜ。懐かしくて全部巡る。
ラキアと一緒に協賛している家を回るぜ。
家人がいる所は世間話もしたい。
昨年の収穫祭はとても美味しかった、と感想を伝えたいし。
皆、元気にしているかちょっと気になるし。
かっちゃんと会えばハイタッチで「元気してたー?」とか。
ゴプリンはあれから来ていないみたいで良かったな、とかさ。

広場で桜のスプーンも作りたいぜ。ラキアとお揃いで。
スプーンなら毎日お茶飲む時に使うし。
ラキアのでまねっこして形を整えよう。
工作とかは好きだぜ。好きと上手は違うけど(笑。
ラキアはやっぱ器用だぜ。
柄の装飾はあえてシンプルにするんだな。
その方が綺麗?なるほどー。


天原 秋乃(イチカ・ククル)
  愛の力と言われてもよくわからないが……。
とりあえず、イチカと一緒にサクラ村のイベントを楽しめばいいんだよな?

主にロードマップ巡りを頑張る。
イチカも賛同してくれてるし、全部まわるつもりで行こう。ルクリアの鉢植え欲しい。

イチカと並んでのんびり歩いてカードを集めていく。
村人たちには愛想よく挨拶。
家々のルクリアをみて癒される。甘くていい香りだな……。
イチカの発言はどう返していいかわからず、いつも通りの塩対応。
「……はあ。…そうかもな」
……だいたい2人って誰と誰のこと指して言ってるんだよ。
俺とイチカ…?……いや、いや…それはない……。
誰ともなしに否定する。

ロードマップ巡りで得たルクリアは大事に育てたい。



新月・やよい(バルト)
  バルトに誘われて
お洒落に気を使おう
洋服にコート、ストール…は、なるべく彼に合わせて選ぶ

街を見て驚いた
…冬に、花?桜が咲いているのですか?
こっちにも、あ、向こうにも…!こんなに…っ!
もちろん!

少し背伸びして隣を歩く
少しでも彼の視界に近づくように

ええ、本当に
その間に僕達…何が出来たんでしょうね
一枚カードを取るたび、出来事を一つ口にする
その時間が、とても楽しい


頂いた鉢植えの隣でメモ帳を開く
ええ、今年一年の出来事を小説に

この村のことも後で小説にしようかと

来年はもっと沢山の出来事がある年にしたいなって思うんです
出来なかった事ができるように
誰かの役に立てるように
…手伝ってくださいますか?

来年もよろしく




咲祈(サフィニア)
  村人には名乗る
千年桜……ふむ、それは興味深いね
…ずっと部屋に居るのは体に良くないと言ったのは君だろう? 気分転換になるんじゃないのかい
 サフィニア、広場行こう

 広場/サクラストラップ ハート型/神人のみ参加
ふむ、これまた興味深い……
さくら、すとらっぷ?(咲祈は興味があるようだ
 …サフィニア……君は意外と乙女なのかい? …ああ、いやすまないなんでもない(汗
……駄目だ。サフィニア、君が決めてくれないかい? なにが良いか分からない
え…星、じゃあないのかい…?
(ちなみに、出来はそこそこ)
…あの。僕は子どもかい…?(撫でられて釈然としない。嫌じゃないけど


カイエル・シェナー(エルディス・シュア)
  「…良い匂いがする。これの鉢植えか
鉢植えが欲しい」

広場の工芸だけと言っていたのを急遽変更した
ロードマップをエルディと全て回る
精霊が理由を聞く、理由?「とても良い香りがするから」で充分だろう?

広場で精霊と別行動
どうやら作りたいものが違うようだ
ふと、気まぐれにハートと星型の両方を作る事にした
け、決して器用とは言えないが……何とかなる、何とかする

出来た2種類のストラップ
精霊に「どちらか好きな方を選べ。だが俺は星型の方が欲しい」と言ったら、呆れた様子で長いため息と共に相手はハート型を取った

相手がずっと作っていた物をこちらに渡してきた
手の中の小さな動物細工が愛嬌があって、無性に嬉しくそして心から微笑んだ



 わいわいとにぎわう「ルクリアとサクラの魅力祭り」。
「ロードマップ参加様は、こちらにどうぞー!!」
「体験したい方はこちらですよー!」
 係りの人たちの声があがり、その声に促されるかのように人々の歩みは大体二手に別れて行く。
 楽しげなその雰囲気に、やってきたウィンクルム10名はほっと息を吐いた。
 不穏な空気が満ちているわけではないようで、ここで楽しむことで種を枯らすことができるというのならば、楽しまない手はないだろう。
 そんなわけで、皆が思い思いに散らばって行く。

 そんな彼らと離れ、千年桜……と小さく呟くのは咲祈だ。
「ふむ、それは興味深いね」
 今はまだ枯れ木状態の千年桜の立派な幹をみつつ言う彼に、心配げに声をかけるサフィニア。
「咲祈、出て来て大丈夫?」
 とある依頼での精神的なダメージを心配してだ。
 心配そうに見つめられるのに、きょとんと見つめ返す咲祈。
「……ずっと部屋に居るのは体に良くないと言ったのは君だろう? 気分転換になるんじゃないのかい」
 心配げな彼の様子に首を傾げつつ、まぁ、そうなんだけどさ、と答えを返すサフィニアに広場を指差す。
「サフィニア、広場行こう」
「はいはい」
 どこかうきうきとした様子を見せる彼に笑みを一つ零し、サフィニアと咲祈は広場へと向かう。
 一方その頃、他のウィンクルム達といえば、ロードマップの方へと足を運んでいたのだった。


 ロードマップの受付も、広場への受付も、沢山の人が並ぶ。
 さぁ、イベントを楽しもう!


●ルクリアが咲く通り
 人々が家々を廻ろうと、受付にと並ぶ。
 そこは、既に甘くいい香りが漂っていた。
「……良い匂いがする。これの鉢植えか」
 カイエル・シェナーは、そんな人々の様子を眺め、それが受付に置いてある鉢植えから香ってくるのに気が付いた。
 エルディス・シュアは立ち止まった彼がやりたいのであろう、体験コーナーに足を運ばないのに小さく首を傾げる。
「鉢植えが欲しい」
 唐突に告げられた言葉と共に、既にカイエルはエルディスの返事など聞かずに列の方へ。
「いきなりロードマップとか!」 
 理由は何かと問われれば、とても良い香りがするから、意外になんの理由があると至極真面目に答えられた。
「理由が気まぐれとか、あんた何考えてんですか!」
 カイエルはそんなエルディスの心からの突っ込みをスルーし、受付へ向かうのだった。
 

 揺れるルクリアの花々が、なんだか楽しそうに踊っているようにも見える。
 突っ込みを入れていたエルディスであったが、カードを一枚、一枚と取って行けばやはり心が躍った。
 ピンク色の小さな花々に負けじと、家々もまた興味をそそってきた。
(へぇ……こじんまりしてて可愛い)
 色とりどりの屋根を持つ小さな家々。
 少々足早に歩く彼らの間に、淡い甘い香りが広がる。
「いい香りだな」
 問いかけた先のカイエルと言えば、じーっと辺りを見ていて。
 どうやら彼もまた、この光景に目を奪われているようだ。
 ピンクの花々が踊り、家々も色とりどりで。
 広場にも行かないといけないから、あまりじっくり見て回るとは言えないものの、二人が半数以上手に入れた頃。


 前回の秋祭り以来だ! とセイリュー・グラシアとラキア・ジェイドバインもロードマップ片手に全部制覇しようと共に歩いていた。
 ふわりと香る甘い香りが、前回とはまた違う様子を彼らに見せる。
「綺麗に咲いてるね」
 立ち止まったラキアが声を掛けるのは住人……ではなく、外に置かれたルクリアの鉢植えだった。
 そうでしょう? と胸を張るかのように揺れる花弁に、ほわんと笑みが毀れた。
 健気に咲くその姿に、「元気だね」とも声を掛ける。
 村人によって愛情深く育てられたルクリア達。褒めてやれば、さらに美しく咲き誇るだろう。
「お、なんか元気になったぽいな?」
 セイリューが覗き込んだ瞬間、わぁっと歓声があがった。
「おめさん、来てたかー!」
「かっちゃん! 元気してたー?」
 どうやらそこは、かっちゃんの家だったようだ。
 満面の笑みを浮かべた彼とハイタッチ。
 元気だったかとか収穫祭とてもおいしかっただとか。
 止まることのないその様子を見ていれば、おずおずと顔を覗かせた女性がいて。
「綺麗に咲かせてますね」
 そう言えば、ぱぁっと笑顔になった。
 畑の野菜達も愛情たっぷりに育てられて美味しかったと伝えれば、さらなる笑顔だ。
(花達への村人達からの大きな愛情を感じるよ)
 その笑顔と共に、どんな世話をしているかと話し始めた女性の声音は、愛情に溢れていた。
「おめさん方のおかげで、ゴブリンもこなくなって皆元気になったんだべー」
 だからこそ、楽しんで行って欲しい。
 その言葉に、二人が大きく頷き……のんびりと、家々を巡り、ルクリアの花々を楽しむのだった。 
 

 ゆっくりとロードマップをめぐるのは天原 秋乃とイチカ・ククル。
(愛の力と言われてもよくわからないが……)
 とりあえず、イチカと一緒にイベントを楽しめばいいのだと隣を歩くイチカにちらりと視線を投げる。
 それに気づいたのか気づいていないのか。
 やはり同じように不穏な気配を感じつつもそれは頭の隅に置いておくことにして、イチカは秋乃と共にイベントを楽しもうと思っていた。
(秋乃、ルクリアの鉢植えのこと気になってるみたいだし)
 全部回ろうと、秋乃とイチカの意見は一致することになった。
 のんびりと足を進めながら、黄色や青や紫や、緑や……その家の主の趣味なのだろうか。
「カラフルだな」
 ルクリアもだけれど、家々を見ていても飽きない。 
 赤い屋根の家にて、何やら動く人影が。
「あ、こんにちわ!」
 鉢植えに水をやりにきた老人が、秋乃の挨拶に手を振ってこたえる。
「いい天気ですね」
 イチカは秋乃以上ににこやかに対応する。
 ひらり、ひらり。
 揺れる指先から、穏やかな交流が始まった。
 何枚目かの問いに、既に半数以上集まってることを伝えれば、疲れただろうと飲み物を差し出される。
 ふわりと甘い香りが漂う中、家々はとりどりの色彩をたたえ二人を見守る。
 ありがとうとその場を辞した後、また一つ、カードを手に取る秋乃。
「それにしても、サクラ村の家ってどこも小さくて可愛いなあ」
 そうだな、と答えを返したところでイチカがさらりと言葉を紡ぐ。
「2人で住むなら、このくらいの家がちょうどいいよね」
 ほんの少し、訪れる沈黙。
「……はあ。……そうかもな」
 からかうつもりで言ってみたけど、秋乃の反応はいまいちだった。
(あれ? でも顔赤い……?)
 伺いみた秋乃は、少々耳元付近が少々赤くみえた。
 まるでルクリアのようにほんのりと赤いその姿。
(……まあどっちでもいっか)
 イチカが納得していた頃。
 秋乃としてはどう反応していいのか分からずいつもの塩対応だったのだ。
(……だいたい2人って誰と誰のこと指して言ってるんだよ。俺とイチカ……?)
 秋乃の胸の内は嵐のようになっていた。
「……いや、いや……それはない……」
「……?」
 誰ともなしに否定している秋乃の様子に首を傾げれば、ルクリアの花も同じようにふるりと震えて二人を見守るのだった。


 最近、お互い忙しかったから。
(少しでも元気になってくれたら、なんて)
 赤い瞳を細め、隣で受付へ向かう新月・やよいを見るバルト。
 やよいはいつもと少々雰囲気が違うのに気がつく。どうやらコートに、洋服が、いつもと違った印象を与えてくるようで。
 彼の今日の服装は、バルトに合うように選んできたのだ。
 そんなやよいは、やってきて驚いていた。
 冬というのに咲く桜の花だというのだ。
「……冬に、花? 桜が咲いているのですか?」
 みても信じられないとばかりに瞳を瞬く姿に、バルトが小さく笑う。
「桜の香りが凄いな……ああ、匂い桜というそうだ」
 匂い桜、と一つ頷いて、瞳はきょろきょろとあちらこちらを彷徨う。
 彼の視線に映るのは、誇らしげに、愛情たっぷりに育てられた可憐はまるで桜のようなルクリア達。
「こっちにも、あ、向こうにも……!」
 こんなに……! と興奮気味の様子に、楽しげに瞳を細めバルトが列にと並ぶ。
「イメージしていたより小柄だけど……存在感あるよな」
 そうですね、と受付に飾られたルクリアをみて頷くやよい。
 やってきた受付を済ませ、貰ったロードマップを片手にさて、どこから行こうかとバルトを見つめる。
 どうやら順番は決まっていないようだ。
「どうする? カードは全部集めるか?」
「もちろん!」
 了解、と微笑み、じゃぁ、一体どんな順路でいけばいいのかと、二人、地図を覗き込むのだった。


 ひらり、ひらり。
 少し背伸びをして彼の隣を歩く。
 そんなやよいの目に映るのは、風に揺れる薄ピンクのルクリアの花々。
 ひらり、ひらり。
 外に置かれているルクリア達はどこか楽しげに揺れている。
 彼の視線に少しでも近づけるように……背筋をしゃきりと伸ばしたやよいの視界の中、きっと、彼も同じ物をみているのだ。
 バルトはそんな彼の隣で、歩みを少々ゆっくりめにしながら歩いていた。
 それは、楽しげに瞳を輝かせてみているやよいと少しでも傍にいれるように。
「こうやって花を見ていると出会ってすぐを思い出すな」
 えぇ、本当に。と答えを返し、また一つ、カードを手に取る。
「春に会って……一年なんてあっという間か」
 手に入れたカードに笑みを零すバルト。
 ぽこりと押されたルクリアの花弁が、カードに踊る。
「その間に僕達……何が出来たんでしょうね」
 さて、一体何が出来たのだろう。
 二人共に過ごした時間を、出来事を、一つカードを手に取るたびに口にしていく。
 カードの数よりも沢山ありそうで、こんな風に話せること時間がとても楽しい。
 さぁ、あと何枚残っているだろう?
 まだまだ話が尽きることはない……。



●広場にて
 あちらこちらで木を切る音や削る際のカツカツという音が鳴り響く。
 子供も大人もその瞳は真剣そのものだ。
(ふむ、これまた興味深い……)
「さくら、すとらっぷ?」
 興味深げに覗きこむのは、サンプルだ。
 ころんと転がるストラップは、木の色合いが暖かな印象を与えてくれる。
「咲祈、やってみたら? ハート型とかどう」
 見守るサフィニアがそういえば、ぱっと振り向く咲祈。
「……サフィニア……君は意外と乙女なのかい?」
「はい咲祈、もう一回言って?」
 にこにこ口元は微笑んでいるものの、絡んだ視線はまったく笑っていない。
「……ああ、いやすまないなんでもない」
 冷や汗かきつつ視線をそらし、並ぶサンプルをみて悩む咲祈。
 ハートに視線が行き、星にいった後、一応自由工作のサンプルにも目が行く。
 思い思いのそれらを見たあと、やはりどれがいいのか決められない。
「……駄目だ。サフィニア、君が決めてくれないかい?」
 なにが良いか分からないと途方にくれる様子に、サフィニアがえぇっと声を上げる。
(えー……だったら最初にハート型って言った時点で頷いてれば良いのに)
 それ俺に訊くの!? と呟きつつも、やはり選ぶのはハートだ。
 やはり星じゃないのかい? とどこか不満げに星を見つめる咲祈。
「俺的には、咲祈のイメージって星よりハートなんだよね」
 そんなにガッカリしなくても……、と苦笑を浮かべれば、とうとう咲祈はハート型にと手を伸ばした。
「わかった、これにする」
 やり方を聞く咲祈を、サフィニアが見守る。
(さて、どうなるのかな)
 一体どんなモノが出来上がるのか。
 それを想像すれば、自然と口元に笑みが浮かぶのだった。



 削って削って、そして磨いて磨いて。
 それを何度繰り返しただろうか。
 真剣なまなざしの咲祈に、サフィニアが優しい眼差しを向ける。
「出来た」
 何度目かの果てに、磨く手を止めた咲祈の掌の中には、少々でっぱりが残っているもののハート型のストラップが出来ていた。
「おー頑張ったね咲祈!」
 伸ばされた指先が、柔らかい咲祈の髪を撫で上げる。
 撫でられて釈然としない気持ちを抱えつつ、咲祈がじぃっとサフィニアを見詰めた。
「……あの。僕は子どもかい……?」
 決して嫌ではないけれど、どこか拗ねたような彼の姿に、サフィニアが笑みを零した。
(俺からすれば大きな子ども……かな)
 そう言ったら、余計拗ねてしまうだろうか?
「素敵な思い出ができたね?」
 サフィニアの言葉に頷く。
(一緒だからかな……)
 きっと、彼と一緒だからこそ素敵な思い出になる。
 掌に転がるハート型ストラップが、良かったね、とでも言うように転がった。 


 全部回り終えた後、さらに楽しもうと広場に来てスプーンを選んだのはセイリューとラキアだ。
(スプーンなら毎日お茶飲む時に使うし)
 そう思って選んだものだったが、ちらり、ちらりと視線をやるのはラキアの手元だ。
 紙ヤスリで表面を滑らかにしていくラキアを見つめていることに気が付いたのだろう。
「少しずつ細かい目の物に変えていくのがコツだよ」
 その言葉に、ずっと同じ物を使っていてラキアとの違いに首を傾げていたセイリューは納得の表情を浮かべた。
 工作は好きだけれど、好きと上手はやはり別物……。
 ラキアの手先の器用さに、感嘆の溜息が毀れる。
「やっぱりラキアは器用だぜ」
 その言葉に笑みを一つ零しつつ、お互い形になってきたスプーンを見つめる。
「持ち手の先を、珠が付いている形に装飾しようか」
「柄の装飾はあえてシンプルにするんだな」
 手に持った桜の木の感触を確かめながらの問いに、ラキアが頷く。
 素朴な味を醸し出すスプーンだからこそ。
「その方が綺麗だからね」
「その方が綺麗?」
 なるほど、と納得の声を零して再びスプーンを整えるのだった。



 どうやら相棒とは作るものが違うようだ、とストラップを作るのを選んだのはカイエルだ。
 気まぐれに手に取った二つのストラップ。
 星型とハート型をじぃーっと見詰めつつ、決して器用とはいえないものの。
(何とかなる、何とかする……!)
 ぎこちない動作でまずは削り始めるのだった。 
 その相棒のエルディスといえば。
 自由工作ができるとそちらへ行けば、大きめの木を渡される。
 思い浮かべるのはカイエルのこと。
(兎……?)
 兎を思い浮かべながら、丁寧につくりこんでいくけれど。
「……なぜ」
 出来あがったモノを手に取り、解せない顔をしつつ合流することにした。


「どちらか好きな方を選べ。だが俺は星型の方が欲しい」
 選択肢がないじゃないか、とながーく溜息を吐いた後、ハート型を手に取る。
 それはカイエルの不器用ながらの思いが籠ったもの。
 うっかり口元に笑みを浮かべつつ、自分も作った物を手渡す。
「………」
 手の中の小さな動物細工。
 兎だったはずが、熊のようなモノになっていたそれはとても愛嬌があった。
 カイエルと、熊(?)の視線が合う。
 無性に嬉しくて、ここからの笑みが自然と浮かぶ。
 ふわりと花のような笑顔に、思わず思考が止まるエルディス。
 心が奪われる、というのはきっとこのことを言うのだろう……。
 二人を、淡い甘い香りが包んで行くのだった。


 楽しげな広場の喧騒をBGMに、やよいとバルトは二人静かにベンチへと腰をおろしていた。
 受付に申請し、もらった鉢植えを隣に置いて、今年一年の出来事を小説に。
 そんな彼の隣で、暖かな飲み物を買ってのんびりと飲みながら見守るバルトは楽しげな皆の様子とやよいの様子を交互に見詰める。
「小説かいてるのか?」
「ええ、今年一年の出来事を小説に」
 この村のことも後で小説にしようかと、とさらに紡ぐのにバルトがそうか、と一つ頷きを返した。
 その小説を見せて貰えば、どうやら自分とやよいのことのようだ。
「いいんじゃないか。きっと素敵な宣伝にもなる」
 少々照れくさいながらも、やよいの紡ぐ小説はとても穏やかで美しい。
「出来たら、俺にも読ませて」 
 貴方の書く本が、好きだ。
 その真摯な言葉に少し照れたように笑い、そしてほぅっと溜息を吐いた。
 視線はバルトの方へ。
「来年はもっと沢山の出来事がある年にしたいなって思うんです。出来なかった事ができるように」
 そして、誰かの役に立てるように。
 その誓いにも似た言葉に、バルトが微笑む。
「……手伝ってくださいますか?」
「あぁ、もちろん」
 力強いその言葉に、ほっと息を零し、やよいがふんわりと微笑んだ。
「来年もよろしく」
「こちらこそよろしくな、相棒」
 二人の間に、穏やかながらも頑固たる静かな決意が、確かな繋がりとなってむすばれていく……。


 受付で申請して、手に入ったルクリアの鉢植えとクッキーと栞を手に、秋乃とイチカがベンチにと座る。
 所々、村人の好意で休ませてもらったとはいえ、心地よい疲れが二人の体を包む。
「綺麗だな」
 大切に育てないと、と手の中にあるルクリアを見つめて呟く。
 広場にもルクリアの甘い香りが満たされてるのに瞳を細める秋乃に、お疲れ様とイチカがクッキーを口元へ差し出した。
「……」
 両手は塞がれている。
 そして、イチカは簡単にはその手を退けてはくれそうにない。
(素直にあーんってしてくれるといいけど)
 秋乃とイチカの視線が複雑に絡み合うのだった。


 それぞれ楽しむウィンクルム達。
 のんびりとした時間が過ぎて行く……。

● 
 やがて、ウィンクルム達がやってきていると噂で聞きつけたのか、子供達が楽しむウィンクルム達に声をかけては通り過ぎていく。
 それに答えるウィンクルム達。
「お兄ちゃん、ハート素敵だね!」
 良かったね、と笑うサフィニアに頷きつつ、咲祈が袋にと入れてもらったストラップを大事に持つ。
 その様子に、声を掛けた少女がにっこりとほほ笑むのだった。
「わ、おにいちゃんたち、何作ったのー?」
 カイエルとエルディスの元にも、子どもたちがわらわらと寄ってくる。
 これだ、と見せられた二つのストラップと、熊のようなものに、わーっと歓声があがった。
 二人ベンチに腰掛け語りあうやよいとバルトの元には、差し入れのあたたかな珈琲が。
「ね、ね、何を作ってるの?」
 小説だよ、という言葉に、少年がすごーいと声をあげるのだった。
「私のおうちも、まわってくれた?」
「勿論!」
 セイリューのその力強い頷きに、少女がぱっと笑う姿を、瞳を細めてラキアが見守る。
 嬉しいと笑う姿に二人顔を見合わせ、微笑むのだった。
 ベンチで休む秋乃とイチカの元へ少年がやってくる。
 作ったクッキー美味しかった? と問われ、秋乃が頷く様子を、イチカが楽しげに見守る。
 ひょっとしたら味なんて感じる暇なんてなかったかもしれないけれど! 
 そんな二人の様子に、少女が不思議そうに首を傾げたのだった……。


 皆がそれぞれお祭りを楽しんで……。
 その様子に、サクラ村の人々はさらに好意を持ったようだ。
「楽しんでくれて、ありがとう!」
 暖かな感謝と幸せな気持ちが、サクラ村を優しく満たしていくのだった。 



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 如月修羅
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 男性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 12月10日
出発日 12月16日 00:00
予定納品日 12月26日

参加者

会議室

  • [5]新月・やよい

    2015/12/15-23:59 

    滑り込みですがひょっこりと。
    新月とバルトです。

    色々やりたい事があるのですが、折角なので街を散策する事に
    皆さん。お互い良い時間になりますように

  • [4]カイエル・シェナー

    2015/12/15-18:01 

    >咲祈
    エルディス:ああ、その肩ぽんが温かい……(涙)
    ……何しろ、うちの神人は世間への見識が甘いようでな……。出来ることと、出来ないことをそのうち覚えさせないと、

    カイエル:誰が、甘い、と! 要は帳尻さえ合わせれば良いのだろうっ!?

    エルディス:ぐぇっ! 何事も程々が一ば…!(ガクッ)

    カイエル:咲祈、サフィニア。相談では大変世話になった。礼を言う。
    ……戦っているのだから、こういう時に楽しまずしてどうするというのだろうな、うちの精霊は。

    ゆっくりと考えて選ぶのも悪くないな。
    心に残る、良い思い出を作れるよう祈っている。(軽く頭を下げて)

  • [3]咲祈

    2015/12/15-11:15 

    …大丈夫かい?(エルディスに肩ぽん
     …あ、咲祈と精霊のサフィニア。よろしく。

    全部行ってみたい。興味深い…。でもそうするとサフィニアがうるさ…なんでもない。
    何をしようか考えているところさ。

  • [2]カイエル・シェナー

    2015/12/13-14:46 

    カイエル(神人):
    カイエル・シュナーと、精霊のエルディス・シュアだ。宜しく頼む。

    エルディス(精霊):
    どうもー、よろしくな!

    カイエル:
    鉢植えが欲しい。ストラップは不器用でも出来るそうだ。それから、簡単な細工物が

    エルディス:
    あの…時間とジェールの概念、頭に入ってますか……?

    カイエル:
    ジェールは後々稼いで、時間は二人でやれば、何とかなるだろう?

    エルディス:
    (頭を抱えて)まあ…こんなんだが…ホント、どうかよろしく頼む……

  • セイリュー・グラシアと精霊ラキアだ。
    秋祭りで色々と楽しんだので、再びやってきたぜ。
    千年桜にもまた会いたかったし、村巡り楽しそうだし。
    盛りだくさんで色々と迷うよな。
    とにかく、今回もヨロシク!


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