プロローグ
なめらかなスケートリンクが、あなたの目の前に広がっていた。
このスケートリンクは屋内式で、ドーム状の屋根に覆われている。
初心者向けの昼のスケートリンク。
親子連れやカップルが和やかに遊んでいる。大衆的なレジャー施設や初心者向けの練習所といった感じだ。転んでいる人やヨロヨロ進んでいる人もチラホラ見られる。失敗しても気にしないで楽しもうというのどかな空気に包まれている。
昼の部は、反時計回りのシンプルな滑走がメインだ。ジャンプやスピンのような複雑な技は、初心者がぶつかってしまう危険性があるので昼は禁止になっている。
上級者向けの夜のスケートリンク。
昼の雰囲気とは異なり、静かで真剣な空気が漂っている。
運動神経に自信のある上級者が集まっており、ジャンプやスピンといった技が解禁される。
上手く滑ることができたのなら、多くの賛辞を集めることだろう。
スケートリンクの外には、休憩場所を兼ねた飲食コーナーがある。
プラスチック製の椅子とテーブルが、たくさん置かれている。
紅茶やコーヒーはもちろん、ココアや甘酒やコーンポタージュやお汁粉といったホットドリンクが多めに並んだ自動販売機。
食べ物のメニューは四種類。ちょっと安っぽい感じだけれど、体がポカポカ温まる食べ物が用意されている。
飲食コーナーは、昼でも夜でも利用できる。
解説
・必須費用
参加費:1組400jr
・プラン次第のオプション費用
ホットドリンク:1人分10jr
ラーメン:1人分30jr
たこ焼き:1人分30jr
カレー:1人分30jr
おでん:1人分30jr
・時間帯について
スケートをしにいくのは昼か夜か、プランに記載をお願いします。
両方参加する、神人と精霊で別々の時間帯に参加する、ということはできません。ご了承ください。
・服装について
スケートリンクでは『スケートシューズ』、『長ズボン(または丈夫なタイツ)』、『手袋』、『帽子』を身につけて滑ることになります。温かな服装だと、なお安心。
『スケートシューズ』のレンタル代は、参加費に含まれています。
『長ズボン(または丈夫なタイツ)』、『手袋』、『帽子』、その他上着などの服装は次の三種類の方法で決めることができます。
A:プランで指定する。
B:GMに任せる(自由設定などから、そのキャラに似合いそうな服装を描写する形式)
C:デートコーデで揃える(全部のアイテムを揃えるのが大変な場合、AやBと併用可能)
・『黒き宿木の種』について
レッドニスの力とダークニスの瘴気から作られた。宿主をオーガ化させる。
『黒き宿木の種』にはダークニスの力が注がれており、これを破壊することで間接的にダークニスの力を削ぐことが可能。
スケートリンク近辺に発芽前の種があることには、ウィンクルムもNPCも気づかない。
種への警戒や対策は不要。ウィンクルムが絆を深めることで、被害が出る前に種を枯死させることができる。
ゲームマスターより
山内ヤトです。
スケートリンクで楽しく遊びつつ、結果的にダークニスの野望を粉砕!
……なんかダークニスが哀れですね!
リザルトノベル
◆アクション・プラン
ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)
昼に滑る 【服装:B】 教えてやるからってディエゴさんに連れられました 私暖かい島国の出身なのでウィンタースポーツの経験は殆どありません 特にスケートは初めてです こんなほっそいブレードで立てるわけないですよ。 私の手を引きながら教えてくれるディエゴさんは笑ってます 生まれたての子馬みたいに震えてる私を見て面白がってるんです 絶対に手を離さないでくださいよ! こうなればディエゴさんより上手くなってやります… って、手離さないでって言ってるじゃないですか、馬鹿!馬鹿! ―― 速めに滑るくらいには上達できたような気がします 練習すればスピンもできますよ ディエゴさんやっぱり教えるの上手いです、ありがとうございました。 |
紫月 彩夢(紫月 咲姫)
夜の部参加 結構お気に入りの兎の上下に手袋 フードは脱いどく スケートの経験は数えるほどだけど、今日はジャンプに挑戦しようと思って 他の人がやってるのを見て、タイミングとかを勉強 一応動画とかも見たのよ。えっと…こう、後ろ向きで滑りつつ、飛ぶ瞬間に前を向くようにして…! …ちょっと、飛べてた?ねぇ咲姫、どうだった? ん…何となくタイミングは掴めそう もう少しスピード上げて、高さを出してみるわね せーの!っと…わ、な、なんとか転ばずにはできた…! ま、回れてた?本当? ホットドリンク飲みつつ休憩 てゆーか 咲姫、ごめんね。あたしばっかり滑る形になって 昼の方がよかった? …ま、久々に咲姫と出かけられて、あたしは楽しかったけど |
瀬谷 瑞希(フェルン・ミュラー)
昼間に参加。 ミュラーさんにスケートを教えて貰います。 くるくると何周もできるようになりたいです。 いつかバックで滑れるようになりたいな(憧れ。 氷の上に立ったのはいいですけど 「前にはどうやって進めば?」と足元フルフル。 そこから!?なんて顔をされそう。 ここからですよ、初心者だもの。 良く判らないまま滑った…ら、ころん、とすぐ転んで。 バランスが大事だと、頭では分かってても体がついて行きません。 私の運動神経、どこに行ったの(汗。 手を取ってくれるミュラーさんって優しい。 手を繋いだまま滑ってくれて、何か滑り方が判ってきました。 寄り添って、転ばないようにエスコートしてくれるのが凄く嬉しい。ドキドキしちゃいます。 |
八神 伊万里(蒼龍・シンフェーア)
昼 服装B 寒いの苦手だし初心者だからちょっと不安 ぷるぷるしつつ手につかまって滑り出し、転びかける あ、ありがとうそーちゃ…蒼龍さん、これ支えるじゃなくて抱き締めるっていうんじゃ… は、離してくださ…えっやっぱり駄目!離さないで! 転ぶと冷たそうだから必死でしがみつく そーちゃん、もしかして寂しいのかな… そういうことなら…少しくらいならこうしててもいいけど でも人目は気にしてください ゆっくり離れるのかと思ったらくすぐられて吃驚 逃げる途中でふと気が付く あれ…?私、普通に滑れてる… もしかしてそーちゃんはこのためにわざとあんな態度を? そんなわけないか たくさん動いて体がポカポカ そーちゃんの寂しい心も温まったらいいな |
御神 聖(御神 勇)
昼 共にB 勇、靴はしっかり履かないと危ないからね ママも自信ないから、手を繋いで楽しく滑ろう 勇とはそう話して、手を繋いでスケートリンクへ 勇は初めてだし、あたしも久々(亡き勇の父親とのデート以来)だから、転んだりへっぴり腰ご愛嬌で、楽しみながら滑るか (…勇、その露骨なアピールは何なの) 好きか嫌いかで言えば好きだけど恋愛かと言われるとどうかな そういう目で見たことなかったというか あと、普通そこは反対する立場なんじゃ そう思ってたらスケート教授に声掛けられた ナンパだな、うざい しかも親子と思ってないとか 「声掛ける前に眼科行け」 あたしらそっくりでしょが 楽しく滑り終わったら、2人分の飲み物とおでん買って一息つこう |
●今だけはキミを独り占め
昼のスケート場。
今日の『八神 伊万里』は、フェイクファーのポンポン付きの白い帽子、防水性の手袋、動きやすくて温かな長ズボンといった出で立ちだ。機能性を重視しつつ、可愛らしさも忘れていない。
「寒いの苦手だし初心者だからちょっと不安」
伊万里はそう不安をこぼした。
「僕はちょっとだけ滑れるから、一緒にゆっくり滑ろう」
その不安を受け止めるように『蒼龍・シンフェーア』は人懐っこそうな笑顔を見せる。茶色いムートンのキャスケットをくいっと上げた。帽子には、ディアボロの角を出す穴が空けてある。手袋は、茶色と緑を組み合わせた落ち着いた色合いのもの。黒に近いダークブルーのズボンを履いていた。
「さ、イマちゃん、いこう」
足元がおぼつかない伊万里の手を引いて、蒼龍がリンクの端まで案内する。蒼龍に手助けされながら、伊万里はそこでスケートの練習をすることにした。
「転びそうになったら支えるから安心してね」
その言葉に勇気づけられ、ぷるぷるしながらも蒼龍の手につかまって滑り出す伊万里。
「……そのままぎゅって抱き締めちゃうかもだけど」
「えっ!?」
驚いた拍子に伊万里がツルッと転びかけたところ、宣言通り蒼龍はしっかり支えてくれる。それに、ぎゅっと抱きしめてきた。
「あ、ありがとうそーちゃ……蒼龍さん、これ支えるじゃなくて抱き締めるっていうんじゃ……」
困惑している伊万里の言葉を聞き流して、蒼龍は彼女を抱きしめたままでいる。
「んー役得だね」
「は、離してくださ……」
そう頼む伊万里に、蒼龍は少しだけ意地悪そうな顔をして。
「転んでもいいなら離すよ?」
「えっやっぱり駄目! 離さないで!」
氷の上で転んだら、冷たいし痛そうだ。恐怖心から、伊万里は慌てて蒼龍の体にしがみつく。
ふと、耳元で蒼龍がささやくのを感じた。
「イマちゃん、クリスマスは家で過ごすんでしょ」
クリスマス。その日、伊万里は蒼龍と一緒に過ごす予定はない。
「僕今一人暮らしでさ、その日も一人」
そう言った蒼龍の声はどこか寂しげだった。
「だから今日くらいはキミを独り占めしたい」
切ない思いを感じさせる眼差しで、蒼龍は伊万里を見つめる。
(そーちゃん、もしかして寂しいのかな……)
蒼龍に寂しい思いをさせてしまった。伊万里の胸に、チクリとした小さな痛み。
「そういうことなら……少しくらいならこうしててもいいけど」
「……ありがと」
優しい蒼龍の声。
「でも人目は気にしてください」
さすが伊万里。しっかり者で、きちんとしている。
「あっ、確かにこの体勢じゃスケートできないもんね」
「そういうことでは……でも、ひとまず離れてくれるなら」
しおらしい態度で、蒼龍はゆっくりと体を離したかに思えたが……。
「……なんてね! 隙あり! くすぐり攻撃だ!」
「きゃっ!」
くすぐりから逃げる伊万里。
「あれ……?」
逃げながら、ふと気づく。
「私、普通に滑れてる……」
逃げようとして、自然に滑れるようになったようだ。
(もしかしてそーちゃんはこのためにわざとあんな態度を?)
「次は追いかけっこ? 負けないよ!」
「そんなわけないか」
体がポカポカしてきたところで、休憩コーナーへ移動した。
「はい、イマちゃん。コーヒー買ってきたよ」
「ありがとう」
「運動して暖かくなってもその後体を冷やしたらいけないからね」
椅子に腰掛け、二人でのどかにホットの缶コーヒーを飲んだ。
今日、伊万里とスケートができたことを蒼龍は心から喜んでいた。
(そーちゃんの寂しい心も温まったらいいな)
●俺が教えられること
スケートは未経験だという『ハロルド』を誘って、『ディエゴ・ルナ・クィンテロ』は昼のスケート場にきていた。
「教えてやるからってディエゴさんに連れられましたけど、私暖かい島国の出身なのでウィンタースポーツの経験は殆どありません」
ハロルドが身に着けているのは、薄柿色から水色のグラデーションがかかったニット帽。温かな手袋の手の甲には、雪の結晶の模様がワンポイントで入っている。ボトムスはアイスブルーの長ズボンだ。
ディエゴはスケートに慣れているらしく、落ち着き払った様子だ。ノルディック柄の帽子。ツイード生地とレザーを組み合わせた手袋。ウィンタースポーツ用のズボン。カジュアルさと大人の落ち着きを両立させた服装だ。
スケートシューズを指さして、ハロルドは主張する。
「こんなほっそいブレードで立てるわけないですよ」
「慣れれば面白いしやってみればいい」
「うーん……そうですか?」
「大丈夫だ、手を引きながら教えてやるし転びそうなら受け止めるから」
ディエゴの言葉にうながされて、ハロルドもスケートに初挑戦してみることにした。
ハロルドはかなり怖がりながら、おっかなびっくりスケートリンクに足を踏み入れた。
「ひゃっ!」
氷の上に立つこともままならない様子だ。
そこにディエゴの手がすっと伸ばされた。ハロルドは彼に手を引かれ、滑り方を教わるが……。
最初のうちは上手くいかず、ハロルドは産まれたての子鹿のごとく震えてしまう。
ハロルドのそんな姿を見て、ディエゴはほほえましさからつい笑顔を浮かべていた。
「あー、ディエゴさん。私を見て面白がってますねっ!」
ハロルドはちょっと怒った顔になる。
「すまん。表情に出ているとは思わなかった」
「やっぱり面白がってた! もう、絶対に手を離さないでくださいよ!」
「ああ」
ディエゴは単に面白がっているだけではなかった。スポーツ万能だと思っていたハロルドの意外な一面が見られて、新鮮さや可愛らしさも同時に感じていた。
「こうなればディエゴさんより上手くなってやります……!」
「そうか」
そろそろスケートに慣れてきた頃だろう。そう判断して、ディエゴがパッと手を離す。
「って、手離さないでって言ってるじゃないですか、馬鹿! 馬鹿!」
パニックになり悲鳴をあげるハロルド。危うく転倒しそうになったところで、ディエゴがぎゅっと腕をつかんで支えてくれた。
急に手を離したことを謝ってから、ディエゴはハロルドを励ます。
「お前なら滑れるって、俺が教えた通りにすれば良い」
それから二人で練習をして、ハロルドは速めのスピードで滑走できるようになった。初日でこの上達ぶりはなかなかのものだ。
ハロルドはちょっと得意げな顔をして、ディエゴに笑いかけた。
「練習すればスピンもできますよ」
「スピンの練習……となると今度は夜の部にいくか? このまま行けば俺より上手くなるな」
「ディエゴさんやっぱり教えるの上手いです、ありがとうございました」
ディエゴは優しく微笑みながら、ハロルドの耳元にそっと顔を近づけた。二人きりの時だけの特別な呼び名が他の誰かに聞こえないように、小声でひっそりとささやく。
「……久しぶりにエクレールに教える事があって楽しかった」
「ディエゴさん……」
「記憶が戻って、お前に教えることがもうないと思った時……少し寂しかったからな」
「……一緒にもう一滑りしましょう」
スムーズな滑走で、ハロルドはディエゴと並走する。上達したのでもう手は繋いでいなかったが、それ以上にお互いの心の結びつきが実感できた。
●ぼくだけは味方だから
『御神 聖』と『御神 勇』は昼のスケート場に遊びにきていた。
聖の服装は、スポーティーな青系のニット帽に温かな毛糸の手袋。運動に適した素材の長ズボンを履いてきている。
勇も聖と似た格好をしている。二人でお揃いだ。
「勇、靴はしっかり履かないと危ないからね」
「うん!」
聖はしゃがみ、勇のスケート靴の紐をしっかり縛る。
「ママも自信ないから、手を繋いで楽しく滑ろう」
「ママも自信ないならぼくとお揃いー」
手を繋いで一緒にスケートリンクに入っていった。
「わ、思ったより安定悪い」
勇は滑りそうになって手をパタパタ動かした。
「ひゃ、転んじゃうっ」
手の動きでバランスをとろうと頑張ったが、すてんと転んでしまう。
「大丈夫?」
優しく手を差し伸べる聖。
「あたしもスケートは久々」
聖は、今は亡き勇の父親のことを回想する。
二人は転んだりへっぴり腰になったりしながらも、スケートを楽しんだ。
そこでポツリと勇がこぼす。
「ここにだいきおにーちゃんがいれば完璧なのに……」
(……勇、その露骨なアピールは何なの)
「親子にも見られるし、ママにナンパ来ないし。だいきおにーちゃんをパパに推薦したいぼくとしてはお得過ぎたんだけど、だいきおにーちゃんは本日お仕事なんだよね」
「好きか嫌いかで言えば好きだけど恋愛かと言われるとどうかな。そういう目で見たことなかったというか」
聖は曖昧に答えた。
「あと、普通そこは反対する立場なんじゃ」
スケート場には聖達以外にも利用者がいた。その中の一人、ここでスケートを教えている男性が誰かに向かって何かを言った。
どういうわけか、聖はそれを自分に対するナンパの声掛けだと認識した。
(ナンパだな、うざい)
心の中で思っただけなら、揉め事にまでは発展しなかっただろう。しかし、聖の思考を助長するように勇が無邪気に煽る。
「そう思ったらやっぱりママにナンパ。ママは確かにスタイルいい美人さんだけど、ぼくのママだし!」
「しかも親子と思ってないとか」
その攻撃的な言葉が自分に向けられたものだと、男性が気づく。怪訝な顔で聖を見た。
「声掛ける前に眼科行け」
聖が喧嘩腰ですごんでみせる。
「あたしらそっくりでしょが」
「きっぱり断るママかっこいい!」
勇は愉快そうに歓声をあげた。
「不当な言いがかりだ」
返ってきたのは、怒りのにじんだ反論。
男性はこのスケート場で講師をしている。仕事場で身に覚えのない悪評を立てられては、たまったものではない。
「他者に一方的に汚名をかぶせ、自分の引き立て役にするとは。そんなことを勝手に確定されたら、あなただって嫌だと思うのでは?」
騒ぎを聞いてスケート場の係員がかけつけた。係員は中立の立場で両者の話を聞いた後、聖に尋ねる。
「ナンパされたと判断した、その具体的な証拠か根拠を教えていただけますか?」
聖には、周りを納得させられるような説明ができない。状況的に無理だった。
自分はナンパされる、という決めつけだけが頭の中を先走っており、事実に基づいた理由は何一つなかったのだから。
神人の言動は神人自身の意志によるもの。
精霊の言動は、願いを反映するという形で神人の影響を受ける。
それ以外の人物の言動は、神人が自由自在に決定できるものではない。
二人は飲食コーナーにいた。テーブルには二人分のドリンクとおでん。
「はー、ガミガミ怒られちゃった」
勇が、気遣うように微笑みかけた。
「ママが買った飲み物とおでん温かい……えへへ……忘れないで。ぼくはママの味方だよ」
「励ましてくれたの? ありがと」
聖は勇の頭をなでた。
●俺の手をとって
昼のスケート場に、『瀬谷 瑞希』と『フェルン・ミュラー』の姿があった。
瑞希は、落ち着いた緑色のニット帽を被っていた。手袋も同系統の緑で揃えている。着ているVネックセーターワンピースの色合いに合わせてのチョイスだ。全体のメリハリをつけるため、雪のように白い長ズボンを履く。これなら上着のモルドワインコートとも色が合うので、コーディネートがチグハグな印象にならないはずだ。
フェルンの頭には、レジャーシーンでも違和感のないようにカジュアルアレンジされたデザインのフライトハット。それと、手袋「冬の魔法」で、寒さ対策をしていた。エメラルドグリーンのボトムスも、フェルンなら自然体で着こなすことができた。
「ミズキにスケートを教えてあげよう」
フェルンの言葉に、瑞希も乗り気で頷く。
「くるくると何周もできるようになりたいです」
今のところはそれが瑞希の目標だ。
「いつかバックで滑れるようになりたいな」
そう憧れて、瑞希はスケートリンクへと降り立った。
「わ……! これ、バランスをとるのが難しいです!」
「何だか生まれたての小鹿を彷彿とさせるよ」
フェルンはにこやかな表情で、氷の上で危なっかしく震えている瑞希の姿を見守っている。
「前にはどうやって進めば?」
足元をフルフルさせながら、瑞希が真剣かつ必死な声で問いかける。
「え、そこから!?」
初歩的な質問に驚くフェルン。
「ここからですよ、初心者だもの」
「どう進むって……こうやって?」
試しに、瑞希によく見えるように軽く滑ってみせるフェルン。
「うーん……。どうもイメージがつかめません」
瑞希はまだ固まっている。
そうやってじっくり考え込んでいたら、スケートが勝手に滑り出してしまった。
「あ、あわわ……っ!」
瑞希が焦った顔をしても、フェルンは可愛い可愛いとほんわかしながら鑑賞しているだけだ。
ちょっとだけ進んだところで瑞希は、ころん、と転んだ。
「大丈夫?」
そう言って心配するが、フェルンの頬は緩んでいた。瑞希の可愛らしい反応に、うっとりしていたからだ。
「うう……私の運動神経、どこに行ったの」
氷の上に尻餅をついた瑞希は、しょんぼりした顔になる。バランスが大事だということは頭では理解しているのだが、理論に体がついていかない。
悲しそうにがっかりしている瑞希を見て、フェルンも本格的に滑り方を教える気になったようだ。
「さあ、ミズキ。俺の手をとって立ち上がって。体が冷えてしまうよ」
フェルンが瑞希に手を差し伸べ助け起こす。
「俺が手を引くから、少し滑ってみよう」
「ありがとうございます。ミュラーさんって優しい……」
フェルンは瑞希が転ばないよう、さり気なく体に手を添えるのも忘れなかった。
「少し滑り出したら、後は体が覚えるから。ほら、滑れるだろう?」
「はい。なんだか滑り方がわかってきました」
瑞希の笑顔に、フェルンもつられて微笑んでいた。
そのままゆっくりとスケートリンクを二人で一周した。
瑞希が転ばないようにと、フェルンは寄り添いながら紳士的にエスコートをしてくれる。それがとても嬉しくて、瑞希はドキドキしていた。
「少し慣れてきたね」
瑞希の体を支えていた手を外し、手だけ繋いでもう一周滑ってみる。
「うん、上手だよ」
フェルンに褒められて、瑞希の顔が赤く染まる。
「ええ。ミュラーさんに、リードしてもらいましたから」
順調に滑れるようになった瑞希は、フェルンと一緒に心ゆくまでスケートの滑走を楽しんだ。
●私からのエール
夜のスケート場は、昼の空気とはまた違っていた。スケートの刃が氷を削る音、練習に勤しむ人々の掛け声。
『紫月 彩夢』は、ピンクがかった白ウサギのパーカーとオーバーオールのセットと、手袋をつけていた。パーカーのフードは外したが、頭部保護のために帽子をかぶった。
「これ、結構お気に入りなのよ」
彩夢が着ているウサギのセットを見て、『紫月 咲姫』は嬉しそうに目を細めた。
「その服、可愛いわよね」
咲姫の出で立ちは、厚手のコートに長ズボン。
「私はリンクの外側で見てるわ。スポーツはそんなに得意じゃないし、ぶつかったりするのは、ね」
咲姫は特に滑る予定はない。が、これから上級者向けの練習をする彩夢に万が一何かあった時にはすぐリンクに入れるように、動きやすい格好をしてきた。
今日、彩夢が練習するのはジャンプだ。スケートの経験は数えるほどだったが、彩夢はスポーツ技能に優れており、スケートの動画も見てきた。
まずは他の人達の練習風景を見て、実際の動きのタイミングなどを勉強する彩夢。
「ほら、彩夢ちゃん、あの人のジャンプ綺麗よ。参考になりそうじゃない?」
リンクの外で見学していた咲姫は、上手な人を探して観察していたようだ。
「本当……ああやってジャンプするのね」
彩夢は、咲姫が教えてくれた人の動きをじっくり見た。
イメージトレーニングで自信がついたので、実際に滑ってみることにした。
「えっと……こう、後ろ向きで滑りつつ……」
ここまでは順調だ。果たして、ジャンプは上手くいくか……。
「う、タイミングが難しい」
さすがに、一回目でいきなり大成功、というわけにはいかなかった。
「できるまでチャレンジしてみましょ。練習に使える時間はたっぷりあるんだし」
咲姫に励まされて、彩夢はやる気を取り戻す。
ミスを繰り返しながら、少しずつ体で動きを学んでいく。
(飛ぶ瞬間に前を向くようにして……!)
彩夢の体が宙を飛んだ。
「!」
少しよろけてしまったが、ケガをすることなく着地できた。
「……ちょっと、飛べてた? ねぇ咲姫、どうだった?」
チェック係をしていた咲姫に、興奮気味に彩夢が尋ねる。
「うん、少しだけど浮いてたわよ」
「ん……今ので何となくタイミングは掴めそう」
彩夢はジャンプのコツをつかんだようだ。
「次はもう少しスピード上げて、高さを出してみるわね」
「その調子。頑張って彩夢ちゃん!」
集中して、さっきよりも高いジャンプを目指す。
「せーの!」
彩夢が氷上を舞った瞬間を咲姫はたしかにその目でとらえた。
「っと……わ、な、なんとか転ばずにはできた……!」
リンクに着地した彩夢に、咲姫がパチパチと賞賛の拍手をおくる。
「さすが彩夢ちゃんよね」
「ま、回れてた? 本当?」
「うん、上手く決まってたわよ! ところで彩夢ちゃん」
咲姫はニコッと笑いながら。
「もう一回滑ってみせて。動画撮りたいから」
「……しょうがないわね」
「お疲れ様」
咲姫が彩夢にホットドリンクを手渡した。
「ありがとう」
たくさんスケートをした彩夢は、飲食コーナーの椅子で一息ついたところだった。
「てゆーか、咲姫、ごめんね。あたしばっかり滑る形になって。昼の方がよかった?」
咲姫は首を軽く横に振る。
「彩夢ちゃんが滑ってるの見るの、楽しかったわよ?」
「……ま、久々に咲姫と出かけられて、あたしは楽しかったけど」
「ふふ、私も、久々に誘ってくれて嬉しかった。じゃあ今度は昼の方で、レクチャーして?」
ジャンプやスピンの練習でへとへとになっていた彩夢は、一度やれやれという顔をした後で、すぐに誇らしげで嬉しそうな笑みを見せた。
「しょうがないわね」
依頼結果:普通
MVP:
エピソード情報 |
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---|---|
マスター | 山内ヤト |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 女性のみ |
エピソードジャンル | イベント |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 普通 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 5 / 2 ~ 5 |
報酬 | なし |
リリース日 | 11月28日 |
出発日 | 12月05日 00:00 |
予定納品日 | 12月15日 |
参加者
会議室
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2015/12/03-00:11
こんばんは、瀬谷瑞希です。
パートナーはファータのミュラーさんです。
私、スポーツがあまり得意ではなくて。
昼の部に行こうと思っています。
皆さま、よろしくお願いいたします。 -
2015/12/02-22:30
御神 聖と息子の勇だよ。
スケートは初心者だし、うちのはまだ小学生だから、昼に行くつもり。
仲良く滑ることが出来たらいいなと思ってるよ。
昼に行く人は、挨拶程度はすると思うから、見かけたらよろしくね。
夜に行く人は、ハイレベルなスケート期待してるので、よろしく。
じゃ、皆で楽しもう! -
2015/12/02-00:05
-
2015/12/01-21:57
八神伊万里と、パートナーはそーちゃん…蒼龍さんです。
よろしくお願いします。
私達は初心者なので、昼の方に行こうと思います。 -
2015/12/01-10:49
紫月彩夢と、姉の咲姫。夜の方に混ざる予定よ。
と言っても、実際滑るのはあたしだけで、咲姫は見てる時間が多くなりそうだけど。
普段なかなかできないから、ちょっと色んな技にチャレンジしてみようと思う。
どうぞ、宜しくね。