【枯木】ぐーてんもるげんっ!(東雲柚葉 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

マルクトシュネー。
それは、太古の森に設営された期間限定のクリスマス市のことだ。
すれ違う人々から笑顔が零れ、ざわめく雑踏も心なしか浮き足立っているように聞こえる。
街の装飾も一際美しく輝いており、装飾された店や木々をみつけるたびに、足を止めてしまう。活気と美しさを兼ね備えた、素敵なお祭りだ。
すれ違う大人がほとんど酔っているのは、こけももを使った珍しいホットワイン、ヒムベアヴァインが販売されているからだろう。なんとも注文しにくい名前だが、味わい深い最高の一杯となっている。
ホットワインを中心に販売されているからか、酒のおつまみとして用意された食べ物や、食べ歩き用に作られた食べ物が多く取り扱われている店が多い。
中でも盛況をみせているのが、ソーセージだ。
マルクトシュネーでは1500種類以上のソーセージを取り扱っており、ソーセージ食べるだけでも目移りしてしまう。
しかも、ここで販売されているソーセージは、ガスや炭ではなく、太古の森で取れたブナの木を――しかも3年以上乾燥させた薪のみ――使って焼いているというこだわりよう。
グリルの上で焼かれたソーセージがジュウウウと心地よい音を聴覚に訴えかけ、ほどよく色のついたソーセージから立ち上るハーブやスパイス、肉の香りで嗅覚が刺激される。
こんがりと焼けたソーセージから立ち上る湯気と、肉汁がパチッと弾けてソーセージが寝返りを打つように動いている様を眺めるのは、それだけで涎が溢れてきてしまう。
あなたは、そんな極上のソーセージを取り扱っている名店『ヴァイナハテン』の予約を取り、席に腰をかけていた。
太古の森の木を使って建てたというこの店は、グリルの熱と人々の談笑も合間ってとても暖かい。店内の床を突きぬくように、細い木が何本か生えておりそれがまた良い雰囲気を出している。
細い木にはクリスマスツリーのような装飾が簡単に施されており、何色かの色を断続的に放っている。テーブルにはグリルのほかに木で出来たコップが既に備え付けられており、これでお酒や飲み物を飲むのだろう。
クリスマスリースに装飾として施されている黒い種に一度視線が行くが あなたはすぐに他の場所へと視線を移動させた。
 メニューを確認すると、そこには注文しにくい名前がつらつらと書かれている横に、すべて注文したくなってしまうほど美味しそうな食べ物の写真が掲載されており、はやく食べろ、とお腹がぐぅ、と鳴った。
 さて、最初は何を注文しようか。
 あなたは、メニューの写真をじっと眺めた。

解説

●解説

 レストラン『ヴァイナハテン』でのお食事デートです。
 暖かいお店の中で、美味しいご飯を食べましょう!

 下記メニューから商品を一つ以上購入してください。


【メニュー】
・ニュルンベルガー
  (短めのソーセージ、6本入り)
  500jr

・チューリンガー
 (100グラムを超える大ぶりなソーセージ、1本入り)
  500jr

 ・ブロートヒェン
  (白いパン、ソーセージに挟むとサンドイッチに!)
  300jr

 ・フルヒテブロート
  (フルーツがぎっしりつまったパン)
  300jr

・レープクーヘン
  (蜂蜜とスパイス入りのクッキー)
  300jr

 ・ヒムベアヴァイン
  (こけももを使ったホットワイン)
  300jr



 他の商品は取り扱っておりません、ご了承下さい。
 ※一応お持ち帰りも出来ます。
  が、家に帰って食べる描写や、外で食べる描写は出来ません。

 黒き宿木の種が店内に存在していますが、このエピソードで悪さをすることはありませんので、気にしなくても問題ありません。


ゲームマスターより

ぐーてんもるげんっ!
東雲柚葉です!

クリスマスが近くなってきましたね。
個人的にクリスマスは11月にやれば、お正月とも日にちが離れてて財布的にも準備的にも助かると思ってます。

このエピソードを書いたのが0時近くだったので、ソーセージなどの参考画像をあさっていたらお腹が空きました……。


では、楽しいお食事を!
アオフ ヴィーダアゼーエンっ!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

リヴィエラ(ロジェ)

  リヴィエラ:

まぁっ! どれも美味しそうなものばかりですね、ロジェ!
では私は、フルヒデブロートをひとつ、頼んでも宜しいですか?

(パンを食べながらも、ロジェの頼んだチューリンガーを美味しそうに見つめながら)
わ、良いのですか? で、では一口…んぅ~、美味しいです~!

(ロジェの話を聞き)
え、私もロジェのお部屋に…? うふふ、お泊り会のようで照れてしまいますね。
(あたふたしながら)…って、はわっ!? そ、そうすると、寝る時も一緒のお布団ですか?
あ、あの、その…でもこれからの季節、寒いですから、ロジェと一緒なら暖かいですね。
(もじもじと照れながら)嬉しい…宜しくお願いします、ロジェ。


イズミ=リチャードソン(カムイ=スチュアート)
  注文:ニュルンベルガー×1
   ブロートヒェン×1

あんたそれだけで足りるの? 男の子でしょ?
パンに1本ソーセージを挟んでサンドイッチに
肉汁がジュワァッと湧き出て……最ッ高! エクスタシー!

座れる場所に座って残りのソーセージを食べる
カムイも誘って会話

そういえば、依頼以外であんたと会ったのって契約の時くらいよね?
いや、まだお互いの事殆ど知らないなーって

背中を預ける相手のことを知らないのはちょっとどうかと思うのよ
だから――まあ、ね? あんたの話を聞かせて欲しいなって

別にいいけど、そんなに面白い話なんて無いわよ?
何それ変わってるわね

なるほど、言われてみればそうね
あんたとは気が合いそう

ソーセージ食べる?
おいしいわよ



☆リヴィエラ ロジェ ペア☆

 楽しげな談笑が作り出す温かな喧騒と、ソーセージの焼ける心地よい音が耳を打つ。
 リヴィエラとロジェはメニューを手にとって、取り扱っている料理に目を通す。
「まぁっ! どれも美味しそうなものばかりですね、ロジェ!」
 リヴィエラは目を輝かせながらメニューの写真を食い入るように眺める。ロジェはリヴィエラの様子に表情を柔らかなものにしつつ、同じくしてメニューをざっと確認する。
「へえ、色々とメニューがあるんだな……」
 ニュルンベルガーと呼ばれる短めのソーセージ、チューリンガーという100グラムを超える大ぶりなソーセージなどの目玉料理から、白いパンのブロートヒェン、フルーツがぎっしりつまったパンのフルヒテブロートなどの主食など様々なものが掲載されている。
「では俺は、このチューリンガーをひとつ頼もう」
 ロジェがメニューを指差した先には、大ぶりなソーセージが映っている。写真の中に映るチューリンガーからは、肉汁が溢れており、とても美味しそうだ。
「では私は、フルヒデブロートをひとつ、頼んでも宜しいですか?」
 続いて、リヴィエラも目星の料理を指差して目を輝かせる。ロジェは「ああ、もちろん」と首肯し、店員にそれぞれの注文をした。
「ここのお店、暖かくて良いですね」
 険悪な雰囲気など一つもない、明るい食卓を囲んでいるような、そんな暖かい雰囲気がこのお店には漂っている。それが、とても暖かく感じるのだ。
「確かに、ここなら神経を張り巡らせなくても良いな」
 周りを鋭い視線で警戒していたロジェだったが、もう一度店内をぐるりと見渡して、そう呟く。
 追っ手から追われている二人としては、心が休まる場所はほとんどない。けれど、このお店の中にはそういった脅威はなさそうだ。
 店内を見渡しながら、注文の品をわくわくと擬音が浮かびそうなほどにリヴィエラが心待ちにしていると、
「お待ち! これがチューリンガーだ! で、こっちがフルヒデブロートだ!」
 少し粗暴な口調ではあるが、快活といった調子のいかついお兄さんが料理をリヴィエラとロジェの前に差し出した。
 お兄さんは、慣れた手つきでチューリンガーをテーブルに付属しているグリルに置き、にかっと笑いながら、
「両面にほどよく焼き目がついたらかぶりつきな! 肉汁がジュースみたいになるぜ!」
 グリルに置かれたチューリンガーが香ばしい香りとともに、心地よい音を奏ではじめる。
 ロジェとリヴィエラは、目の前で焼ける大きなソーセージの官能的なまでの上品さに釘付けになり、お兄さんはそれをみて満足したのか、もう一度笑顔を見せて厨房に去っていった。
 あまりに釘付けになっていたので、リヴィエラははっとして自分で注文したフルヒデブロートを口に運ぶ。
「んっ、美味しいです!」
 パンの中にびっしりと敷き詰められたフルーツが口の中でふわっと広がり、パンももっちりとしていてとても美味しい。
 しかし、とても美味しい、美味しいのだが、目の前でロジェがひっくり返したチューリンガーがやはり気になってしまう。
 ジャストな焼き加減で返されたチューリンガーは、すでに強いハーブの香りとスパイスの香りを放っており、それだけで涎が零れ落ちてしまいそうだ。
 じゅううう、と焼ける音に聞き惚れながらリヴィエラがチューリンガーを眺めていると、ロジェがグリルからそれを取り出して、皿に乗せることなくそのまま口へと運ぶ。
 ロジェが口を閉じようとして、ふと熱烈な視線に顔を上げると、涎をたらりと垂らしてこちらを見ながら固まっているリヴィエラの姿が映った。視線は完全にロジェがフォークで刺しているチューリンガーに注がれている。
「やれやれ、仕方ない。ほら、一気にかぶりつくんだぞ?」
 ロジェが、少し可笑しそうにしながらもリヴィエラにチューリンガーを差し出すと、
「わ、良いのですか? で、では一口……」
 ぱあぁぁっと目を輝かせて、リヴィエラが口を開く。
 リヴィエラがチューリンガーを一口咀嚼すると、まるで爆弾でも弾けたかのようにハーブとスパイスの香りが広がった。口の中で爆発する香りの爆風に襲われながらも、リヴィエラはもう一度咀嚼をする。
 次に襲ってきたのは、肉汁。
 お兄さんの言っていたのは、比喩でもなんでもなく本当に。リヴィエラの口いっぱいに溢れる肉汁は、さながらジュースのようだ。
 突然あふれ出した予想外の量の肉汁に、リヴィエラの口の端からたらりと肉汁が零れ落ちる。
「んぅ~、美味しいです~!」
 幸せそうに両手で頬を押さえるリヴィエラ。リヴィエラは満面の笑みのまま、口の端と唇に垂れた肉汁を舌でぺろりと舐めた。
 口から零れ落ちた肉汁と、リヴィエラがちらりと見せた舌の動きが官能的で、目の前で見たロジェは、頬をやや朱に染めながらリヴィエラから目を逸らす。
 が、視線がもう一度リヴィエラの口元に移動し、必死にまた目を逸らそうとする。
 ロジェが理性と欲望に葛藤していると、
「? どうかしましたか、ロジェ?」
 リヴィエラがきょとんとロジェを見据えて、問う。ロジェは慌てて取り繕い、
「そ、そう言えばだな。君に話があるんだ」
 なんでしょう、とリヴィエラが小首をかしげて問うと、ロジェはコホンとひとつ咳払いをして、
「これまでは、二人別々の部屋で暮らしていただろう?」
 首肯するリヴィエラに、ロジェは至極真面目な表情で続ける。
「これからは、一緒の部屋にしないか?」
 パンを口に運んでいたリヴィエラの手が、ふと止まる。
「その方が、君を狙う追手の魔の手にも、俺が気づきやすくなると思ったんだ」
 追手に捕まることなく現在に至るわけだが、今後二人が捕まらないと言う保障はない。自分の力で追手を打ち倒せるロジェは良いものの、リヴィエラがもしロジェとともに居ない時に襲われてしまえば、すぐに捕縛されてしまうだろう。
 ならば、極力リヴィエラを一人にすることは避けるべきだ。
 ロジェはそう考え、真面目な表情でリヴィエラの反応を伺う。親密な仲とはいえ、やはりプライバシーというものがある。リヴィエラに断られれば、ロジェも諦めるつもりではあったが、
「え、私もロジェのお部屋に……? うふふ、お泊り会のようで照れてしまいますね」
 楽しそうに、しかも気負っていたのが勿体無いほど簡単にリヴィエラは承諾し、二人で生活――所謂同棲――を脳内で再生しているようだ。
「……って、はわっ!?」
 ロジェが、やや毒気を抜かれたようにしていると、リヴィエラが突然あたふたとしながら視線を泳がせる。
「ど、どうした?」
 至極当然な反応をロジェが返すと、
「そ、そうすると、寝る時も一緒のお布団ですか?」
 今までは、「おやすみ」や「おはよう」といった挨拶は、布団から出てからしていたが、同じ部屋で生活するとなれば、当然寝る前も起きた時も隣にリヴィエラが居ることとなる。
 ロジェはその様子を脳内でシミュレーションしながら、片手で顔を覆う。
「あ、ああ、そうなるな」
 目をぐるぐる回して、再びリヴィエラが、
「お、お着替えのときも一緒ですか?」
 リヴィエラが着替えをしている姿を想像しかけて、何かメーターのキャパシティを超えかけるロジェだったが、踏みとどまり、冷静を装って返す。
「着替えの時は、後ろを向くか部屋から出る、安心してくれ!」
 けれど、平静を取り繕うロジェとは対照的に取り乱しつづけるリヴィエラが爆弾を投下する。

「で、ではお風呂も一緒ですか!?」

「なぁっ!?」
 飲み物を口に含んでいれば、確実に噴出していただろう。
 ロジェは脳内に再生されそうになるリヴィエラとの入浴シーンを必死に押しとどめながら、同じくこちらも押し留めるようにして鼻を押さえる。
 お互いに顔を真っ赤にし、リヴィエラは何か空気を一転させようと口ごもるようにしながら、
「あ、あの、その……でもこれからの季節、寒いですから、ロジェと一緒なら暖かいですね」
 「一緒なら」という単語がロジェの脳内で反芻し、寄せ合ってひとつの布団で眠る自分とリヴィエラのビジョンが鮮烈なものとなって襲い掛かる。
 そして、止めを刺すようにして、リヴィエラはもじもじと照れくさそうにしながら、
「嬉しい……宜しくお願いします、ロジェ」
 顔を赤くし、上目使いの表情で呟かれ、ロジェはついにリヴィエラを静視出来なくなった。
 ロジェはこれ以上にないほどに顔を真っ赤にして、
「……た、他意はない。本当だからな!」
 とそっぽを向き、真っ赤になった耳をリヴィエラに向けるのだった。






☆イズミ=リチャードソン カムイ=スチュアート ペア☆

 じゅううう、と食欲を刺激するソーセージの焼ける音が鼓膜を叩き、強いスパイスやハーブの香りが鼻をくすぐる。
 中にはフルーツや甘いはちみつの香りも交じっており、まるで香りの川の中にでも身を投げているかのような感覚が身を打つ。
 温かな、耳障りにならない喧騒に包まれる中、イズミ=リチャードソンとカムイ=スチュアートは注文した料理を眺めていた。
「あんたそれだけで足りるの? 男の子でしょ?」
 イズミの目の前に置かれているのは、ニュルンベルガーと呼ばれる短めのソーセージ6本に、ブロートヒェンと言われる白いパンだ。ニュルンベルガーには付け合せにポテトサラダが用意されており、ニュルンベルガーもブロートヒェンも小さくはない大きさなので、女性が食べる量とするとやや多い。
 それとは対照的に、カムイの目の前にはフルヒテブロートと呼ばれるフルーツがぎっしり詰まったパンだけが鎮座していた。
 イズミはそれを見て、やや心配というよりはいぶかしげな視線をカムイに向けながら、
「あんたそれだけで足りるの?」
 男性ならば、空腹であればチューリンガーを挟んだサンドイッチでも、2、3個食べてしまえるだろう。
 そう考えると、カムイが朝ごはんに食べるとお腹が喜びそうなくらい軽食のフルヒテブロートだけでは、夕食としては少ない。とすれば、イズミの疑問も頷ける。
 しかし、カムイはフルヒテブロートを指刺して、
「ボクはそんなにお腹へってないからコレでいいよ」
 カムイが指を刺すフルヒテブロートは確かに、フルーツがぎっしりつまっていておいしそうではあるが、イズミからすれば絶対に少ない、と思う。
「男の子でしょ?」
 素朴な疑問のように投げかけるイズミに、カムイは、
「余計なお世話だよ?」
 と苦笑いで返した。
 イズミはブロートヒェンにニュルンベルガー、そして付け合せのポテトサラダを挟み込み、オリジナルのサンドイッチを完成させた。
 イズミがサンドイッチを完成させて目を輝かせていると、カムイがフルヒテブロートにかじりつき、ふわりと広がるフルーツの香りに目を丸くする。
「む、パンも美味しいね」
 おいしそうにパンを食べるカムイに、負けじとイズミが自作サンドイッチをにかぶりつく。
 瞬間、イズミの目が見開かれ、びくっと肩を打ちふるわせた。
「肉汁がジュワァッと湧き出て……最ッ高! エクスタシー!」
 ソーセージを噛んだ途端、まるで飲み物を口に含んだかのように肉汁がいっぱいに広がった。同時にスパイスとハーブの香りがぶわっと口内に充満し、入りきらなかった香りの本流がイズミの鼻からすぅ、と抜けてゆく。
 噛めば噛むほど出てくる肉汁は、もはや暴力的だ。
 グルメリポーターよろしく解説をするイズミに、カムイはやや辟易とした表情で、
「……キミは食レポでもしてるのかい?」

 半分ほど食べ終わった頃、イズミがふと食事の手を止めてカムイに何気なく疑問を呈した。
「そういえば、依頼以外であんたと会ったのって契約の時くらいよね?」
 疑問を受けてカムイがイズミと依頼以外で会ったかどうか思い起こしてみるが、言われた通り、確かにプライベートで会った記憶はない。
「そうだけど、どしたの突然?」
「いや、まだお互いの事殆ど知らないなーって」
 依頼で会った、というのも今回で三回目なので、片手指で数えるほどしか顔を合わせていないと言える。テーバサーキーを一緒に食べたり、精霊であるカムイが大きくなったりと、一般の人々が一生体験したいであろう体験を共有してはいるが、一緒に過ごした時間はあまりに少ない。
ウィンクルムという立場でなければ、知り合いと呼ぶにも微妙な距離感かもしれない。
「そうだねぇ、そういえばボクもキミのことあんまり知らないや」
 そりゃそうよね、とひとつ頷いて、イズミは続ける。
「背中を預ける相手のことを知らないのはちょっとどうかと思うのよ」
 ウィンクルムという立場である以上、背中を預けるというのは文字通り命を預けると同義だ。
 親密でもない相手に命を預けるというのは、恐怖以外の何物でもない。
「だから――まあ、ね? あんたの話を聞かせて欲しいなって」
 イズミの言葉を受けて、カムイも同調して首肯。
「たしかにそれもそうだよね」
 そうだなぁ、とカムイは何を話そうかと思考を巡らせて視線を虚空にさまよわせる。
数秒ほどすると、ふと思い至ったのか口を開き、
「じゃあ、ボクが見て回った国の話でもしようか」
 イズミはカムイの発言をうけて、そういえば、と思い出す。
「元バックパッカーで、世界中を旅してんだっけ?」
「そうそう、世界には色んな国があって面白いよ」
 いままで巡ってきた国を脳裏に思い浮かべて、カムイはふと遠い目をした後、続けて柔らかな笑顔を浮かべた。
「その代わり、キミの話も聞かせてよ」
 カムイの予想外の返しに、イズミはやや虚をつかれつつも、
「別にいいけど、そんなに面白い話なんて無いわよ?」
 世界を旅して、様々なものを見てきたカムイに比べて、イズミはそれほど特異な人生を送ってきているわけではない。正直、カムイと交互に自分の話をし合っても、話の内容の差が出てしまうだろうと感じる。
 しかし、カムイはそんなイズミの怪訝を読み取って首を振る。
「いいのいいの、こうやって話をするのが面白いんだから!」
 本当に、楽しそうにカムイが笑うので、イズミはやや怪訝な顔のまま笑顔を浮かべた。
「なにそれ変わってるわね」
愛想笑いのように笑顔を浮かべたイズミに、カムイは真面目な顔となって饒舌に語り始める。
「だって、ボクはキミのことを知らないんだから、キミの話は全部知らないことでしょ?」
「知らないことを知ることってすごく楽しいことだと思う」
 気になることは徹底的に知りたくて仕方がないカムイは、知的好奇心が非常に強いのだろう。けれど、ただ闇雲に好奇心を奔らせて行動しているわけではなく、自分の信念をもってして知識を蓄えている。
 だから、好奇心を向けられても、いやな気はしない。
「知る楽しみが解る人は素敵だね」
 そう言って笑うカムイの表情は晴れ晴れとしていて、カムイにとって『知る』という行為がどれだけ素晴らしいものになっているのかということが如実に現れていた。
 イズミは、カムイの発言に同調してしきりに頷き、口からふとこぼれたかのように、
「なるほど、言われてみればそうね」
 と楽しそうに笑いつつ、
「あんたとは気が合いそう」
 と、今までカムイが見たことのない、知り合いとは一線を越えた者にしか見せないであろう笑顔がイズミの表情に現れていた。
 カムイは、イズミのその表情を見て、同じ種類の笑顔を浮かべる。
「ボクもそう思うよ」
 二人はふふ、と笑い合って、どちらからとともなく握手を交わした。
 そうして、イズミがふと思い出したかのように、皿に乗せられている自作サンドイッチに視線を移し、手に取った。
「ソーセージ食べる?」
 イズミが半分ほど食べ進めていた自作サンドイッチをカムイに向かって差出し、
「おいしいわよ」
 と微笑む。
 カムイも、イズミの好意的な行動を無下にすることなく微笑みながら、
「あ、じゃあ1本もらっとこうかな? ボクのパンもあげるよ」
「ホント? なら、お言葉に甘えて」
 ぱくり、と一口カムイがイズミの自作サンドイッチを食べ、イズミもカムイのフルヒテブロートを齧る。
 ソーセージの香りと肉汁がカムイの口内いっぱいに広がり、イズミの口の中でフルーツが弾けるように主張を繰り返す。
 仲が良いものと摂る食事は、ただの知り合いと摂る食事よりも美味しい。
 お互いの料理を食べた二人は、美味しそうに微笑んだ後、
「エクスタシーっ!」
 と、店内に幸せそうな声が響き渡った。




依頼結果:成功
MVP
名前:リヴィエラ
呼び名:リヴィエラ、リヴィー
  名前:ロジェ
呼び名:ロジェ、ロジェ様

 

名前:イズミ=リチャードソン
呼び名:イズミちゃん
  名前:カムイ=スチュアート
呼び名:カムイ

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 東雲柚葉
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 2 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 11月22日
出発日 11月27日 00:00
予定納品日 12月07日

参加者

会議室

  • [2]リヴィエラ

    2015/11/26-21:32 

    まぁっ! 初めまして。
    私はリヴィエラ、こちらのパートナーはロジェと申します。
    今回は宜しくお願い致しますね。

    ふふ、私達も、ソーセージの美味しそうな香りに誘われて
    やってきたんです(にこっと微笑みつつ)

  • 初めまして、イズミ=リチャードソンとパートナーのカムイよ。

    二人ともソーセージの匂いに誘われてやってきたわ。

    今回はよろしくお願いね!


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