冬のイルミネーション(森静流 マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

 ハロウィーンが過ぎると紅葉の季節。それも過ぎると忽ち冬……。
 初雪がひらひらと舞い散る季節になりました。
 大都会タブロスではあちらこちらがきらびやかなイルミネーションに彩られていきます。
 夕方を過ぎた頃合いから輝く電灯によって道路も街路樹も交差点も全て飾られてまばゆいばかり。
 それらの輝きは滝を模したもの、人を模したもの、あるいは昔ながらのおとぎ話のワンシーンを描いたもの……ためいきが出る程綺麗です。
 オーガを駆逐する日々、ましてや年末に向けてひときわ忙しい日々ですが、ほっと一息つくために、あなたも精霊とイルミネーションを見に出かける事にしました。
 有名なスポットはどこも大変な人混みだとは分かっていますので、口コミで穴場を探しました。
 タブロス近郊の公園で、中央に展望台があり、そこから下界を覗くと公園全体に描かれた文字や絵が見られるということです。
 他にも木々やドームを電灯で飾り付け、聖夜の星マークやペンタグラムが神々しいぐらいに美しいとのこと。
 屋台も沢山出ており、温かい飲み物で寒さを凌ぐ事が出来ます。
 穴場をチェックしたあなたは、早速、精霊と二人で夕方過ぎにその公園を訪れました。
(その展望台を訪れた恋人達は絶対に幸せになれる……)
 そんな口コミの噂にも引かれながら。



 きらびやかで見ているだけでも幸せになれそうな、おとぎ話のお姫様達の電飾。
 それらを一つ一つ眺めて、最後にあなたは精霊と展望台を登ります。
 その展望台には無料のパンフレットが置いてあったのであなたは一冊取りました。エレベータの中で内容をチェックします。
 そして最上階。
 夜の闇の中に、公園全体を彩る Happy Xmas の文字。まだ随分早いけれどみんな気分は盛り上がっているのですね。雪だるまやサンタクロースなども白、赤、緑の電飾で見る事が出来ます。それに美しい星々や雪の結晶のマーク。
 

解説

あなたはそっとパンフレットを開いて、そこに書かれるエピソードを頼りに精霊に話しかけます……。

1 この展望台で告白すると想いが叶うんだって
2 この展望台で手をつなぐと幸運が訪れるんだって
3 この展望台でキスをすると永遠の恋人になれるんだって
4 この展望台、また来年も来ようね

 お好きな言葉で精霊にアピールをしましょう。
 これから恋人達の季節、素敵なウィンクルムに素晴らしい幸運が来ますように!
 ※展望台へのチケット代として【500ジェール】いただきます。



ゲームマスターより

ゲームマスターより
 初めまして、遠東です。初めてのエピソードで緊張気味です。
 皆様の精霊との仲を少しでも深められる冬の話をと思って考えました。
 皆様のご希望に添って楽しめる内容にしていきたいと思います!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

かのん(天藍)

  こんなに綺麗なのに本当に穴場なんですね
ホットワイン?
ありがとうございます、天藍

展望台へ向かう途中冷えた手の指先に息をかける
いえ…とても温かいです
公園に着いた時から向けられる天藍の優しさが嬉しい
繋いだ天藍の腕に反対の手を添え寄り添って歩く

何となく天藍の気が塞いでいると感じている
原因はこの間の依頼ですよね
きっと2人の立場が逆でも同じだったと思うから吹っ切って欲しくて

天藍ここでキスした2人は永遠の恋人になれるそうです
永遠の恋人ともなれば…
悪い魔法使いが天藍の姿を変えても見つける事ができたりしそうですよね

私、天藍の事で分からない事沢山あります
もっと天藍を知れたらと思うんです
同じ位天藍にも知って欲しいと


シルキア・スー(クラウス)
  パンフ①見てドキ
迷信と思いつつもソワソワ

展望台からの眺め堪能
今日はいっぱい遊んじゃったね
明日からは気を引き締めなきゃ

ハート電飾にドキ

告白してみようかな

横顔チラ
難しい顔
ここ来る前のカフェでもそんな顔をしていた

悩み事?
この展望台で悩み告白すると解決するご利益あるんだって
(ちょっと改変したけどだいたい合ってるからよし

じゃ私の悩み
パートナーが悩みを打ち明けてくれないのが悩みです
ご利益あるかな
悪戯っぽい笑み向け

言葉を聞き胸がいっぱいに
ずっとそれを考えてたの?

はにかんだ笑顔で
間違いなく世界一信じてる人だよ
これからも

胸元に寄り俯き
聞こえない様に抑えに抑えた声で囁く


桜倉 歌菜(月成 羽純)
  2 この展望台で手をつなぐと幸運が訪れるんだって
パンフレットの中、目に留まったこの言葉を口にして

(美しい電飾
温かい光
この光のように、キラキラと温かく
そんな幸運が、羽純くんに沢山降り積もりますように)
願いを込めて、羽純くんの手をそっと握る

えへへ…おまじないだよ
これで、私と羽純くんは幸せに…
(って、何だかこれってプロポーズみたいじゃ!?あわわ)

え、えっと…羽純くんの手、温かいね
(そして凄く大きくて…安心する)

羽純くんの温もりに嬉しさと恥ずかしさが湧き上がって…!
ち、違うの!嬉しいけど、びっくりして…凄く温かい
有難う、羽純くん

そうだね、屋台沢山あったし…(って、手を繋いだまま? 嬉しいけど、ドキドキする


瀬谷 瑞希(フェルン・ミュラー)
  公園でイルミネーションを間近に楽しみます。
小さな時に童話で読んだお話モチーフのものとか。
光で素敵に表現されていて、とても綺麗。
木々が光の粒に包まれてて、幻想的ですね。
つい見とれてしまいます。
誘ってもらって本当に良かった。
ココアを受け取って「ありがとう」。
貰う時少しミュラーさんと手が触れてドキドキ。

展望台では眼下の輝きが凄く美しいです。
「地上が星の海になっているのを見ると、人間の文明って本当に凄いと思います」と。
「何百年も前、夜は暗闇に包まれるものだったのに、今はこんな風に輝きに溢れた光景が広がるんですもの」
女の子っぽくない感想かも?
「また来年もミュラーさんと一緒に星の海を見たいです」と笑顔。



シャルティ(グルナ・カリエンテ)
 
ずっと依頼ばっかりだったし、たまにはこういうのも良いわよね
あんたって、相変わらず寒がりね…
最近寒いんだし着込めって言ったでしょ

良い眺めね
……まあ、そうね
この展望台……ロマンチックなことが囁かれてるみたいよ?(パンフレットを精霊に見せる
ええ、あんただとかなりシュールね

ねえ、この展望台来年また、来ない?
……そのにやにや顔止めなさいよ
…普段言わないだけ。たまにはパートナーらしく振る舞わせてよ

…ええ、そうね。…なんだか気になるのよ、この場所
イルミネーションも素敵だしなにより眺めね(綺麗なイルミネーション、冬らしい寒空に笑みがこぼれる
(あんたと居るのは嫌いじゃないし。何かあったら気に掛けてくれるし…)


冬のイルミネーション

シャルティ編

(ずっと依頼ばっかりだったし、たまにはこういうのも良いわよね)
 その日、占い師のシャルティは、用心棒代わりの精霊グルナ・カリエンテとともに展望台のある公園に来ていました。
 飾られているきらびやかなイルミネーションを見物するためにです。
「うー……さっみィ……」
 幸福のコートに手を突っ込み背中を丸めながらグルナはぼやいています。
「あんたって、相変わらず寒がりね……最近寒いんだし着込めって言ったでしょ」
 隣を歩きながらシャルティは紫色の瞳を横目に流しツンとした調子でそう言いました。
「良いっつったんだから良いんだよ」 ぶるぶる震えながらグルナは返事をします。
「余計な心配すんなっての」
 なんだか意地を張っています。
 そうして二人は展望台の方へと登っていきました。
 展望台からは公園の美しいイルミネーションが一望に見渡せるのです。

「良い眺めね」
 クリスマスやおとぎ話の見事なイルミネーションを見渡して、うっとりしながらシャルティが呟きます。
「…そうだな。けど、たけぇとこって寒くねぇ?」
 グルナも景色を見ていますが、やはりまだぶるぶる震えているようです。
「……まあ、そうね」
 シャルティは少し興ざめしてしまいました。ですが、気を取り直してパンフレットを精霊に見せます。
「この展望台……ロマンチックなことが囁かれてるみたいよ?」
 グルナはちらりとパンフレットの内容を見ました。
「ロマンチック……うえ……俺にはクソ似合わねー内容だな」
 そう言って綺麗な顔を歪めます。黙っていればそれなりにいい顔なのに。
「ええ、あんただとかなりシュールね」
 そっけなくシャルティはそう答えました。だって事実ですから。
「自分で言っといてなんだけどよド直球に言ってくれんなよお前……」
 これでも傷ついたのか、グルナは少し恨みがましそうです。

「ねえ、この展望台来年また、来ない?」
 シャルティは微笑んでそう誘いました。
「ん、お前にしちゃストレートなお誘いだなぁ? 珍しいじゃねぇか?」
 シャルティの素直な笑顔が見られて、グルナは喜んでいます。なんだかにやにやしています。
「……そのにやにや顔止めなさいよ。……普段言わないだけ。たまにはパートナーらしく振る舞わせてよ」
 ちょっと怒ったようなそぶりでシャルティは抗議します。だって二人はパートナーなんですから。
「へいへい。ま…お前見てるのも飽きねぇし。断る理由もねぇよ。こっからの眺め、気に入ったのか?」
 グルナは肩を竦めて誘いを受け入れてくれました。シャルティはまたうっとりした眼差しをイルミネーションに向けます。パンフレットを握りしめながら。
「……ええ、そうね。……なんだか気になるのよ、この場所」
 広がる星の夜空。その星々に負けないように光り輝く目映いばかりのイルミネーション。まるで光のおとぎの国のよう。
「イルミネーションも素敵だしなにより眺めね」
 寒空と光を見比べながらシャルティは思います。
(あんたと居るのは嫌いじゃないし。何かあったら気に掛けてくれるし…)
 シャルティに寄り添うようにグルナも展望台の窓に寄っていきます。
「……さみィ…けど…ま、たまになら悪くねぇか」
 ぼそっと言ったグルナの言葉を聞き逃さず、シャルティは彼の顔を見上げました。
「べっつにー? なんも言ってねぇよ?」
 さりげなく誤魔化すようにグルナは言って、窓から離れていきました。なかなか素直になれないようですが、イルミネーションは彼も気に入ったようです。
 冬のイルミネーションと寒空は反対にウィンクルムの心を繋いでくれたようでした。二人は来年の約束をして絆がほっこり温まるのを感じています。残りわずかな今年も、来年も、仲良く。

シルキア・クラウス編

(この展望台で告白すると想いが叶うんだって)
 パンフレットに掲載されているそんなエピソードを読んで、シルキア・スーの胸はどきどきと高鳴りました。
 迷信だと分かっていても、なんだかそわそわして、隣の精霊クラウスの顔は何度も見てしまいます。
 今日のクラウスは空色の腰までなびく長髪がよく映えるブルーのペアマフラースノーフェアリーを着けてすっかり冬支度です。何だか厳しい顔をしているけれど、今日のデートは楽しんでくれるでしょうか。
 シルキアの方は可愛いサンタコスチュームでキメてきました。


 展望台からの眺めは、本当に美しく、圧巻な光の宴にシルキアはすっかりはしゃいでしまいました。
 堪能した後、シルキアはクラウスの方を振り返ります。
「今日はいっぱい遊んじゃったね。明日からは気を引き締めなきゃ」
 クラウスは、きらびやかな電飾に歓声を上げるシルキアに相づちを返しては、一緒に眺めを楽しんでいました。
 ですが心に曇りがあって、いつものように穏やかな笑顔でいることが出来ません。
 そのとき、シルキアは公園の端っこにいくつものピンクのハートマークが描かれその隣におとぎ話のラブシーンが並んでいる事に気がつきました。
 顔が赤らんで、胸がどきどきしてきます。
(告白してみようかな……)
 パンフレットの事もあって、シルキアは覚悟を決めようかと思います。
 ちらりとクラウスの横顔を観察してみます。
 とても難しい顔をしています。
(ここ来る前のカフェでもそんな顔をしていた……)
 シルキアは何だか悲しく心配になってきました。せっかくのデートなのに。
(私じゃ頼りにならない?)
 シルキアは思い切って切り出してみました。
「悩み事? この展望台で悩み告白すると解決するご利益あるんだって!」
 ちょっぴりだけパンフレットを改変しています。大体あっていますよね。
「じゃ、私の悩み。パートナーが悩みを打ち明けてくれないのが悩みです! ご利益あるかな?」
 そう言ってシルキアは悪戯っぽい笑みを彼に向けました。
 笑みを向けられ、気を使われている事に気がついてクラウスは覚悟を決めました。
「聞いてくれるか。俺は日々修練を積み精神を鍛え精霊の使命に邁進する己に自信を持っていた。だが、最近俺は御し難い感情を覚え、己の弱さを悟った。戦場に於いてお前を喪うかもしれないという恐怖」
 クラウスはしっかりと姿勢を正しシルキアに向き合います。
「御し難くはあれど敗北は許されない。向き合い必ず克服する。このような弱さ持つ男だが信じて身を任せてほしいと思う」
 その言葉を聞いて、シルキアは胸がいっぱいになってしまいました。シルキアは不安だったけれど、クラウスはずっと彼女の事だけを考えていたのです。難しい顔で、とてもとても真剣に。
「ずっとそれを考えてたの?」
 溢れてくる感動。彼女が問いかけると、クラウスは武人らしく生真面目に頷きました。喜びに溢れて、彼女は表情を変え、はにかんだ笑顔をクラウスに見せます。
「間違いなく世界一信じてる人だよ。これからも」
 シルキアはクラウスの側に寄り、その胸にくっつきそうなぐらいの近くに立ち、俯いて小声で囁くように言います。その声はあまりに小さくて、間近にいるクラウスにも聞こえませんでした。
 クラウスは目の前のシルキアにそっと手をかけ、彼女の肩の細さと柔らかさに戸惑います。心に暖かいものが沸いて溢れる、新しく知る感覚。
 シルキアの「好き……」という一言は届かなかったけれど、展望台の伝説は今にも本当の事になってしまいそうです。その想いが叶う日は近い事でしょう。

かのん・天藍編。
「こんなに綺麗なのに本当に穴場なんですね」
「人混みが少ないのは有り難いな」
 今日、ガーデナーのかのんと彼女を守る精霊天藍は、冬のイルミネーションを見物に来ました。
 かのんは妖精が作ったあたたかなニットセーターの上に夜叉装束黒桜を纏っています。美しい和装です。天藍も同じ和装で、中身も神官の衣装です。おそろいの衣装を着た黒髪の二人は非常にお似合いのカップルに見えます。
「かのん、ほら」
 寒い十二月の夜です。天藍は屋台の中からホットワインを二つ買い、片方をかのんに手渡しました。
「ホットワイン? ありがとうございます、天藍」
 嬉しそうに顔を綻ばせるかのん。天藍はいとおしさが胸にこみあがってきて自然な微笑みを見せます。

 目映く輝く公園を散策した後、二人は展望台へ向かいました。
 途中で冷えてしまった手の指先に、かのんがはあっと息を吹きかけます。
その寒そうな様子を見て天藍はさっとかのんと手を繋ぎました。そして繋いだ手ごと自分の上着のポケットへ入れてしまいます。
 突然の動きに、かのんは少しびっくりしています。
「嫌か?」
 切ない眼差しでそう問いかける天藍。
 そう言いながらも天藍は、寄り添うかのんとずっとこうしていたくて、繋いだ手を強く握りしめました。
 そうしていると同時に、彼の中に躊躇いの気持ちも沸いてきます。
 前の依頼で、かのんとオーガの意識が入れ替わっている事に、俺は気がつかなかった……。
 そんな後悔の気持ちです。
 かのんは眼を見開いてそんな天藍の表情を見つめています。
「いえ……とても温かいです」
 少し恥じらいをこめながらもかのんはそう答えました。
 公園に着いた時から向けられる天藍の優しさが、かのんは嬉しいのです。
 かのんは繋いだ天藍の腕に反対の手を添えて寄り添って歩いて行きます。

 展望台に着きました。素晴らしい光のおとぎの国の光景が眺められます。そして星の輝く冬空。
 ですがかのんは、何となく天藍の気が塞いでいると感じていました。
 彼の力になってあげたい、悲しみや迷いを取り去ってあげたい、かのんは強くそう願います。
 過去は変えられない。でも、過去は過去の事。
 天藍が過去の苦しみを打ち明けてくれないのも悲しかったのです。こんなにも幸せな光のイルミネーションの中、辛い気持ちでいるなんて。
 天藍と二人で、この光のおとぎ話の国の人々のように、遠い未来まで、結ばれた恋人達として幸せになりたい--!
 かのんは、先程パンフレットに書いてあった事も思いだしていました。
 この展望台でキスをした二人はきっと永遠の恋人になれる……!
「原因はこの間の依頼ですよね。きっと2人の立場が逆でも同じだったと思うから吹っ切って欲しくて……。天藍ここでキスした2人は永遠の恋人になれるそうです。永遠の恋人ともなれば……。悪い魔法使いが天藍の姿を変えても見つける事ができたりしそうですよね。私、天藍の事で分からない事沢山あります。もっと天藍を知れたらと思うんです。同じ位天藍にも知って欲しいと……」
 憂いを秘めながらも情熱をこめてかのんはそう言いました。
 天藍は驚きながらその言葉を聞いていました。
 そうして、天藍は、怖い思いをさせたのに更に気遣わせてしまった事に気がつきます。
(俺も何があってもかのんを見つけられるようになるだろうか)
「大丈夫」
 そう、隣で微笑むかのんに、天藍はそっと腕を伸ばし、彼女の事を深く深くその両腕と胸に抱き取りました。いとおしさが全身を駆け巡ります。そうして彼は、彼女に、感謝と祈りを捧げながら、聖なる愛のためのくちづけを行いました。
 二人の愛は、ずっと、ずっと、永遠に--

桜倉歌菜、月成羽純編

 可愛いウィンクルム、桜倉歌菜と月成羽純は、今夜、展望台から公園のイルミネーションを見に来ていました。
「この展望台で手をつなぐと幸運が訪れるんだって」
 展望台から素晴らしい冬のイルミネーションを見ながら、歌菜はパンフレットで読んだ事を口にします。
(綺麗なイルミネーション……とっても温かい光……! この光のように、キラキラと温かい、そんな幸運が、羽純くんに沢山降り積もりますように)
 パートナーの幸せだけを願って、歌菜は微笑みながらそっと羽純の手を握ります。
「えへへ……おまじないだよ! これで、私と羽純くんは幸せに……」
「エレベーターで熱心にパンフを見ていると思ったら、そんな事が書かれていたのか
確かにおまじないみたいだな」
 羽純は笑いながら歌菜の手をぎゅっと握りしめました。
「きっと、幸運は訪れる。この温かな光のように歌菜の未来が幸せであるように
願いを込めて」
 そこで歌菜はあることに気がつきました。
(って、何だかこれってプロポーズみたいじゃ!?あわわ)
 真っ赤になって慌ててしまいます。
 平然としている羽純を見上げたり、目の前のイルミネーションを見たりしながら次第に心拍数が上がってきます。
 クリスマスのイルミネーションの中にはおとぎ話のお姫様や恋人達を彩っているものも多く、中には結婚のエピソードも……。それで思わず、自分とパートナーの結婚式などを想像してしまって、歌菜は頭がくらくらしてきます。
「え、えっと…羽純くんの手、温かいね」
 考えをそらすために、歌菜は平静を装って羽純にそう言いました。
(そして凄く大きくて…安心する)
 異性の掌をダイレクトに感じて歌菜はそう思います。
「歌菜の手は冷たいな。空気が冷たいから無理もないか。貸せ。温めてやる」
 そう言って羽純は歌菜の手を両手で包み込むと、はあっと温かい息を吹きかけてくれました。
(小さな手だな。華奢で…)
 いつも元気な歌菜の手は、今はなんだか白く強張って縮こまって、震えているようです。それを解きほぐすようにもんでやったり握ってやったりしながら、羽純は息を吹きかけます。
 羽純の温かさが直接伝わって来て、歌菜は驚きと喜びに声も出ません。こんなこと、想像もしていなかった。
「どうだ? 温もって来たか?」
 歌菜からの反応はありません。
(…歌菜の奴、真っ赤になって黙ってしまった)
 可愛い百面相のような不思議な表情で歌菜は身動きもしません。
「そんなに固まる事はないだろう?嫌だったか?」
 おどけた口調で羽純はそう言い、額を軽く小突きます。まるでからかっているような様子。それでも不思議と腹は立たない、彼の魅力を感じます。
 すると歌菜は忽ち慌てて想っていた事を口にするのでした。
(羽純くんの温もりに嬉しさと恥ずかしさが湧き上がって…!)
 嫌だったのでは勿論ありません。嬉しかったのです。
「ち、違うの! 嬉しいけど、びっくりして…凄く温かくて……! 有難う、羽純くん」
 一生懸命、嫌ではないという気持ちを伝えようとする歌菜。そんな様子に羽純は心から可愛いと想います。
「そろそろ下に降りるか。温かい飲み物でも飲もう。そしたらもっと温まる」
そう言って歌菜をエスコートするように手を握りしめ、彼は歩き始めました。
「そうだね、屋台沢山あったし……」
 元気な歌菜は途中で見かけたおいしそうな料理の屋台に胸をはせます。
(って、手を繋いだまま? 嬉しいけど、ドキドキする……)
 何だか夢のようにふわふわした心地で、歌菜は羽純と手を繋いだまま展望台を降りていきました。残り僅かな今年も、きっと来年も、仲良く過ごせそうな雰囲気です。

瀬谷瑞希・ミュラー編

 その日、瀬谷瑞希とフェルン・ミュラーは冬のイルミネーションを楽しみにその公園に来ていました。
 瑞希は輝くイルミネーションを間近から楽しんでいます。
 寒い日ですので、瑞希はVネックのセーターワンピースの上にモルドワインコートを重ねて着ています。
 ミュラーの方は武勇伝トップスの上にサンタジャケット2015。クリスマスのイルミネーションを更にサンタの衣装で盛り上げています。
 瑞希が眺め渡すと、そこには、小さな時に童話で読んだお話モチーフが目映い電飾に彩られて公園の地面や木々にキラキラと輝いています。
「光で素敵に表現されていて、とても素敵」
 次々とめくるめくような光のおとぎ話の電飾をくぐり抜けていきます。イルミネーションが人工のものだと分かっていてもとてもロマンチックな気分です。
「木々が光の粒に包まれていて、幻想的ですね。つい見とれてしまいます。誘ってもらって本当によかった……」

「星空が好きなミズキだから、イルミネーションも好きかと思って、誘ってみたんだ」
 この公園のイルミネーションに誘ったのはフェルン・ミュラーでした。
(とても嬉しそうで、誘ってよかった……)
 真っ直ぐな黒髪のポニーテールを、本当の子馬の尻尾のように揺らしながらはしゃいで歩いている瑞希の様子に、ミュラーはとても満足です。
 笑顔でイルミネーションを見ている瑞希はとても可愛いのです。それはやはりウィンクルムのパートナーだから余計にそう思うのでしょうか?
(彼女はイルミを見るのに夢中だが俺は彼女に視線釘付けさ)
そうしているうちにミュラーは近くの屋台に気がつきました。
「少し寒くなってきたから、ココアでもどう?」
 イルミネーションは見事ですが、何しろ十二月の寒い夜です。さっと温かいココアを買ってきてミュラーは瑞希に手渡します。
「ありがとう」
 やはり寒かった瑞希は手をさしのべました。
 瞬間、紙コップの上で指先と指先が触れ合います。二人の皮膚の感触--指の感触が伝わって来ます。
 瑞希は頬を紅に染めて、一瞬、手を引っ込めて、そのあとそっとミュラーの指には触れないようにして紙コップのココアを受け取りました。
 その恥じらうような緊張した様子にミュラーは相好を崩します。
(うん、やっぱり可愛い)

 展望台に上ると眼下の輝きの美しさがいっそうよくわかります。
「地上が星の海になっているのを見ると、人間の文明って本当に凄いと思います」と。
 瑞希は淡々と述べます。
 展望台から遙か下の光の洪水、光の宴に対して瑞希は理知的な考えを見せました。
 目映いばかりの童話のお姫様や王子様を見ても彼女のクールな理性は変わる事はないのでしょう。
「何百年も前、夜は暗闇に包まれるものだったのに、今はこんな風に輝きに溢れた光景が広がるんですもの」
 彼女の考えは何も間違っていません。本当にそう思ったからそう言ったのです。
 ですが、そう言ってしまってから、瑞希はふと不安に駆られました。
(女の子っぽくないかも?)
 だけど、ミュラーは
(地上を星空に例えるのがミズキらしい……)と半ば感心しています。ミュラーは瑞希の瑞希らしさが好きなのです。
「また来年もミュラーさんと一緒に星の海を見たいです」
 そう、笑顔の瑞希。
「じゃあ、来年もまた一緒にここに来ようね」と。
 ミュラーはそうまた誘います。
「来年はまた、今年とは少し違う星の海が見られるよ」
 そうした上で、重ねて誘います。
「その次の年も、また一緒に来よう」
 未来への約束に瑞希は笑顔で「はい」と応じてくれました。



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 森静流
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ロマンス
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 11月23日
出発日 12月03日 00:00
予定納品日 12月13日

参加者

会議室

  • [7]桜倉 歌菜

    2015/12/02-23:53 

  • [6]桜倉 歌菜

    2015/12/02-23:53 

  • [5]瀬谷 瑞希

    2015/12/02-23:51 

    こんばんは、瀬谷瑞希です。
    パートナーはファータのミュラーさんです。
    皆さま、よろしくお願いいたします。

    プランは提出できています。
    素敵な光景が見られそうでとても楽しみです。

  • [4]かのん

    2015/12/02-20:37 

    少し早いですがプラン提出してきました
    展望台から眺めるイルミネーション楽しみです
    素敵な時間を過ごせますように

  • [3]シルキア・スー

    2015/12/01-04:09 

    よろしくおねがいします

  • [2]かのん

    2015/11/28-00:36 

  • [1]桜倉 歌菜

    2015/11/28-00:06 


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