アニマルカフェっぽいもの(こーや マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●カフェ開店
 君達はA.R.O.A.を訪れた。
 任務だけでなく、外出への案内が出ていることもあるので、することに困った時はA.R.O.A.に行くのがいいからだ。
 君達が一覧を眺めていると、ふいに受付娘が思い出したようにチラシを取り出した。
 カフェのオープン案内のチラシだ。
 目を通してみると、ショコランドの動物をモチーフにしたカフェらしい。
 君達は首を傾げた。
 ショコランドの動物は一味も二味も変わっていて、お菓子の身体を持っている。
 可愛らしい見た目のものが多いのだが、ショコランドは立ち入りが制限されている場所だ。
 一般人にはショコランドの動物は馴染みが無いはず。
「このカフェ、元ウィンクルムの店なんですよ」
 察した受付娘が事情の説明を始める。
 彼女達はA.R.O.A.の正規職員で経験も豊富だった為、危険な任務を受け持っていた。
 けれど、少し前の任務で神人が大怪我をしてしまったのだ。
 日常生活に支障はないが、戦闘を伴う危険な任務は難しい。
 その為、引退して二人で店を開くことにしたのだという。
 元ウィンクルムならではの店をと考えた結果、ショコランドの動物をモチーフにした訳だ。
 チラシには、可愛らしいヒヨコのチョコが乗ったチーズケーキ、ピンクの綿飴が添えられゴリラの絵がかかれたパンケーキなどの写真が見える。
 なかなかに美味しそうだ。
 特に気になる任務もないし、ここへ行こうと決めた。

解説

●参加費
飲食代300jr

●メニュー
・はしらせピヨのチーズケーキ
 ホワイトチョコで出来たヒヨコがチーズケーキの上にのってます

・ユーゴリwithパンケーキ
 ピンクの綿飴が添えられたパンケーキ
 パンケーキにはゴリラの絵が描かれてます

・ゆめハムのチョコレートと金平糖
 チョコレートと金平糖の盛り合わせin三角グラス
 グラスにハムスターの絵がプリントされてます

・かすていら侍の活け作り
 抹茶パウダーがかかったカステラ
 飴でできた刀が竹串代わり

・オトーフの活け造り
 牛乳寒天にイチゴジャムをかけたもの

飲み物は喫茶店であるようなものならだいたいあります。
食べ物は1組につき2品まででお願いします。
(神人は食べない代わりに、精霊が2つ頼むというのもOKです)

●その他
まったりお茶してください
ちなみにモチーフの動物たちの姿は下記参照
 https://lovetimate.com/campaign/creator_campaign.html#gm_animal


ゲームマスターより

どうでもいいネタ
受付娘の名前が決まるかもしれない
6面ダイスを1つ振っていただき、一番人数が多かった名前になります
複数あった場合は、先に人数が揃った方
ここはネタなので自由参加
プランには書かなくていいです

1・2:ミシェル
3・4:ソフィア
5:ペペロンチーノ
6:ミラクル☆マイちゃん

リザルトノベル

◆アクション・プラン

かのん(天藍)

  はしらせピヨのチーズケーキ、 オトーフの活け造り+紅茶×2

ショコランドの動物がモチーフって可愛いです
私達が会った事があるのはオトーフだけですね…
それにしても、活け造り?

そういえば、粉砂糖の砂漠にいたオトーフ達は元気でしょうか?
天藍が本気で嫌そうなので首傾げ
理由を聞いて
あ…そうですね、スカートじゃ無くても良いなら良いかなと思ったのですけど

はしらせピヨ可愛いです!
フォークでつつきつつ、何だか食べてしまうのを躊躇ってしまいますね
オトーフの方は…確かに活け造り…何だかこのままでも動き出しそう…
…あ、美味しい…

きっとまだ会った事がない動物沢山いるのでしょうね
機会があったら、ショコランドにまた行きたいです



ひろの(ルシエロ=ザガン)
  活け造り……。
見た目がそっくり、なのかな。
「なんでもない」牛乳寒天にする。
飲みものは紅茶。(ストレート

(牛乳寒天をじっと見る
オトーフの話は聞いたことあるけど、ブリッジで早いんだっけ?(首傾げ
(一拍置いてルシェを見る
「オトーフって見たことないから、どんなかなって」
これ見ても、想像つかないけど。
牛乳寒天が動くんだよね。(スプーンで軽くつついて食べる
おいしい。(口元が緩む

「あの、ね。ルシェ」(ちらりとルシェを見て、視線を戻す
「ショコランドの動物、見に行きたい」
「ルシェと、一緒に見たい」(段々と声が小さく

(瞬きしてルシェを見る
いい、んだ。(安心したように笑う
「ルシェとね、見たいんだよ」(ぽろっと零れる



シルキア・スー(クラウス)
  注文
はしらせピヨ
紅茶


待つ間
「元ウィンクルムのお店かぁ
事情に物思い
どちらが欠けても成立しない
ウィンクルムのリタイアの可能性
それを何だか痛切に思いつつも
自分達にもあり得る事?
そしたらクラウスとお店を?
光景を想像して少し赤面
でもすぐ不謹慎だと首を振り
気持ちを正す


注文届く
何気に相手の品を「可愛くて美味しそうだね

あーんに
しまった
この人は悪気なしでこういうの繰出してくる人だ
一口を前に体裁とか羞恥とか頭グルグル
意を決し速攻パクリ
平静装いモグモグ
(どうしてくれるのよこの鼓動
「おいひぃ
味なんてよく分らない

はっ
もしかしてお返しあーんをしなくてはいけない状況?
またグルグル


「クラウス!
気合の赤面顔でケーキ一口を差出す



宮森 夜月(神楽音 朱鞠)
  (椅子に向かい合わせに座る)
わあ、どれもおいしそうだね!
朱鞠はどれを食べるの?
私は……うーん、牛乳寒天かなあ。

胸の話はしなくてよろしい!


注文:オトーフの活け造り
   紅茶

(運ばれてきたオトーフを見て)
うわあ、かわ、いい?かな?
イチゴジャムが妙にリアルだね…
い、いただきます!
(オトーフの頭の方からそっと削って食べていく)
あっ!美味しい!
(だんだん削り取る部分が大きくなっていき
あっという間に食べ終えてしまう)
ごちそうさまでした!
…えっ、朱鞠もう食べないの?
やったー!いただきまーす!
美味しい!

(働く元ウィンクルムの二人を見ながら)
いつか、朱鞠も怪我しちゃうときが来るのかなあ、と
漠然と不安に思う


●へんなやつ
 メニューに書かれた『オトーフの活け造り』という文字をひろのはまじまじと見つめる。
 活け造りとはどういうことなのだろうか。オトーフにそっくりな見た目なのだろうか。
「ヒロノ、どうした」
「なんでもない」
 ルシエロ=ザガンはなにやら考え込んでいそうなひろのの様子が気にかかったが、たいしたことではなかったようだ。
 それならいいと気にするのを止める。
「何にする?」
「……牛乳寒天にする。それと、紅茶」
 ルシエロは既に決めていたらしく、店員を呼び止めた。
 ひろのはルシエロが注文している間、テーブルの上にちょこんと鎮座している青い猫の置物をじっと見ていた。
 この猫もショコランドの生き物をモチーフにしているのだろうか。
「氷ネコっていうらしい」
 ひろのが顔を上げると、ルシエロが側にあったカードスタンドをひろのの方へ押しやる。
 小さなカードには氷ネコの簡単な説明が書かれてあった。
 名前の通り、氷の身体を持つ猫らしい。青い色はカキ氷のシロップなのだとか。
 そうこうしているうちに注文していたものが運ばれて来た。
 自然と、2人して同じ行動を取る。すなわち、皿の上のものを見るということ。
 ルシエロはふっと微笑んだ。
 チーズケーキの上に座り込むように乗せられたホワイトチョコのひよこが可愛らしい。
 随分と細かい造詣だ。小さな嘴と羽に足までしっかり作りこまれている。
 このひよこは自分よりもひろのに似合う気がして、なんとなくケーキから下ろしてやる。
 さて、ひろのの方はどうなのかとルシエロが視線を向ける。
 そこには、なんというかルシエロが頼んだものとは180度くらい方向性が違うものがありまして。
 白い牛乳寒天が皿の上にどーん。チョコで目と口が描かれていて、皿には手足らしきものも描かれている。
 そしてその牛乳寒天の上に真っ赤なイチゴジャム。
 ひろのはこのオトーフの活け造りをじーーーっと眺めていた。
「そんなに眺めてどうした」
「オトーフって見たことないから、どんなかなって」
 これを見ても、実際はどういう生き物なのかは分からないけれど。
 そう言いながらも、ひろのはフォークでちょこっと牛乳寒天をつついて一掬い。
 ブリッジで動く牛乳寒天というものは想像が難しい。というよりも、出来ない。
「オレ達が見たのはベニエシアンだけだったか」
 ショコランドで出会った、ドーナッツで出来た犬を思い出す。
 あれは可愛らしかったし、ルシエロとしては有意義なひと時を過ごせたので好印象を抱いているが……はっきり言って、オトーフは違う。
 各方面から伝え聞くオトーフはろくでもない生き物の代表格なので、ルシエロとしてはひろのには会わせたくないところだ。
「おいしい」
 ひろのの頬が緩んだ。
 この顔に免じて、オトーフの詳細について『今は』黙っておいてやろう、とルシエロは決めた。
 ルシエロは何も入れていない紅茶を一啜りし、ソーサーの上へ戻す。
 紅茶は冷める前に飲むに限るが、ケーキは急いで食べる必要もない。
 ゆっくり、小さく切り分けてケーキを口へ運ぶ。
「あの、ね。ルシェ」
 ちらり、一度だけ視線をルシエロに向けた。
 口に物が入っていた為、ルシエロは視線で応じるもすでにひろのの視線は皿の上。
「ショコランドの動物、見に行きたい」
 どこか気まずそうで、どこか恥ずかしげな声音は、徐々に徐々に小さく、萎んでいく。
「ルシェと、一緒に見たい」
 ルシエロの無言の問いには気づいていないようなので、紅茶で胃へと流し込む。
「オマエからの誘いは初めてだな」
 緊張の面持ちのひろのはぎゅっとフォークを握り締めた。
 勇気を出していってみたものの、答えが怖い。
「勿論構わん」
 予想外――という訳では無い。期待していた答えだが、思わずひろのは顔を上げる。
 ルシエロはうっすらと口角を持ち上げていた。
オレンジの色味が強い柘榴石の瞳がひろのを見ている。
「むしろオレ以外と行ってくれるなよ」
 ぱちり、ぱちり。ひろのは瞬きを繰り返し、ほっとしたように息を吐いた。
 安心したように、唇が自然と緩む。
「ルシェとね、見たいんだよ」
 ひろのの言葉と笑みに、近頃では落ち着いたと思っていた、ルシエロの中にあるひろのへの衝動が膨らむ。
 その衝動を流し込むべく、ルシエロは紅茶を飲んだ。
 けれど、抱きしめたいという熱はなかなか落ち着いてくれず。
 最後まで置いておいた、ひよこのホワイトチョコを食べる頃になっても、その熱は燻ったままだった。



●ひよこのきもち
 注文を終えたシルキア・スーは、テーブルの上に飾られたピンクの兎の置物を指でつつく。
 セタラビットというらしいが、シルキアの思考は別のところ。
「元ウィンクルムのお店かぁ」
 ウィンクルムは神人と精霊のどちらが欠けても成立しない。
 ともすれば他に適応する相手が現れるかもしれないが、それは果たして『幸運』と言えるのかどうか。
 ここの店主達のように『ウィンクルム』をリタイアし、別の道を進まねばならない可能性も十分にある。
 くるくると忙しなく動く店主達の姿を見て、痛切に感じる。
 けれど、もしそうなった時は――
 シルキアとクラウスも彼女達のように2人で店を営むのだろうか?
 突然湧き出した考えがシルキアを赤面させる。
 思わず指先に力が入り、セタラビットの置物がこてりと倒れる。
「あっ……!」
「っと!」
 テーブルから転げ落ちた置物をすんでのところでクラウスが受け止めた。
 置物が無事だと知ると、シルキアはほっと息を吐いた。
「どうした? 具合が悪いのか?」
「なんでもない」
「……それならいいんだが」
 シルキアの挙動を変に思い心配していたクラウスは安堵した。
 シルキアは不謹慎だったと先程の想像を、首を振って追い出して気持ちを正す。
 そのタイミングで注文の品が運ばれて来た。
 ことり、丁寧に置かれた皿。
 シルキアが頼んだのははしらせピヨのチーズケーキ。
 今にもぴよ、と鳴きそうな愛らしいヒヨコのホワイトチョコが乗っている。
 シルキアは何気なく、クラウスの皿へ視線を向けた。
 抹茶パウダーが振り掛けられたカステラに、黒蜜で顔が描かれている。
 渋そうな顔はどこか愛嬌があって可愛らしく見えた。
「可愛くて美味しそうだね」
「味をみるか?」
 しまった、と思ったときにはもう遅い。
 飴で出来た串でカステラを切り分けると、クラウスはすっとシルキアへと差し出した。
 クラウスは悪気も他意も無く、こういうことを繰り出してくる人物だということをシルキアは失念していた。
 再び自分の頬が赤くなるのを感じながらも、ぐるぐると渦巻くシルキアの思考。
 体裁だとか羞恥だとか、そう言った感情の間に挟まれるも、シルキアは意を決した。
 まるで敵を見るような目でカステラを捉え、素早くぱくり。
 シルキアは平静を装ってはいるが、心臓がばくばくと音を立てているのを感じる。
「おいひぃ」
 口を隠しながら、どうにか感想を言いはしたものの、味なんて分からないのが本当のところ。
 そんなことは露知らず、クラウスは穏やかに笑う。
「そうか」
 満足気に言うと、今度はクラウス自身が味わうべく切り分ける。
 抹茶の渋さとカステラの柔らかな甘みがうまく調和していて、さらに飴の甘みもほのかに口の中に広がる。なかなかに美味い。
 元ウィンクルム……いや、語弊があるか。
 守るべきパートナーがいる。それだけでウィンクルムだ。
 ちら、とクラウスは店主の精霊を一瞥した。
 己を賭して、命果てるまで神人を守る――それが精霊の役目。
 彼がこうして店を営むことになった原因を思うと、彼は守りきれなかったと言えるかもしれないが、それをどうこう言うつもりは無い。
 けれど、どうしようもなく胸が痛んだ。
 シルキアが悪夢を見るという術をかけられ苦しんだのは、少し前というよりも最近のこと。
 あの時、言いようも無い、これまで経験したことが無い恐怖がクラウスを蝕んだ。
 店主の精霊は、あの感情とどう向き合ったのだろうか。
 御し難いあの感情を抱え、自分は戦えるのだろうか。
 クラウスがそんなことを考えている一方で、シルキアも悩んでいた。
 お返し――つまり、『あーん』をするべきかどうか。
 ぐるぐるぐるぐる、再び思考の渦に囚われかける。
 が、女は度胸。
 切り分けたチーズケーキをずいっと突き出す。
「クラウス!」
 名を呼ばれ、クラウスは我に返った。
 弱気になってなどはいられない。任務の遂行、それだけが己が存在意義なのだから。
「え?」
 ――我に返りはしたものの、クラウスが眼前の状況を咄嗟に理解できなかった。
 硬直するクラウスに、シルキアは再びずいとフォークを突き出す。
「ほら! さっきのお礼!」
 気合の入ったシルキアの声で、ああ、そういうことかと察する。
 シルキアの顔が赤くなっている理由に気付かぬまま、クラウスは素直にお礼を受け取った。
 チーズケーキは甘く、ほんの少しの酸味が隠れていた。



●いやなやつ
「ショコランドの動物がモチーフって可愛いですね」
 かのんの手にはメニュー。目線の先はホワイトタイガーの置物。
 ペーパースタンドに挟まれたメモによると、キラリンタイガーというらしい。
 置物は陶器だが、実物はバニラアイスや黒蜜の生き物だとか。
 かのんを見上げる大きな目が可愛らしくて、笑みが零れる。
「私達が会った事があるのはオトーフだけですね……」
「確かに見た事ないのが多いな」
 メニューに書かれたモチーフの中でかのんと天藍が見たのはオトーフだけ。
 ショコランドの動物とは何種類か遭遇はしたものの、愉快な仲間達はまだまだ他にもいるということなのだろう。
「それにしても、活け造り?」
 とても甘味とは思えない品名にかのんは興味を抱いた模様。
「俺の分で頼むといい」
「ありがとうございます。それでは、遠慮なく」
 注文を済ませると、ついついオトーフのことを思い出してしまう。
「そういえば、粉砂糖の砂漠にいたオトーフ達は元気でしょうか?」
 ついつい、天藍は顔を顰めてしまうが、仕方が無い。
「あのな、かのん。もし、また、オトーフ救出の依頼があっても行かないからな」
 本気で嫌そうな天藍の声音。
 理由が分からず、かのんは首を傾げた。
 天藍はふぅと小さく息を吐くと、水のグラスへ手を伸ばす。
「スカート必須で下着を見せなきゃいけないなんて依頼は1度行けば十分だ」
 あのオトーフとかいうナマモノは女性の下着を見たがる訳で。
 恋人としては何度も出会いたくないと思うのは至極当然のこと。
「あ……そうですね、スカートじゃ無くても良いなら良いかなと思ったのですけど」
 それだとなお悪い、という言葉を天藍は水と共に飲み込んだ。
 どんな手段を講じてでも見ようとするに違いないと思うのだが、これは限りなく確信に近い男の勘。
 恐らくかのんに正しく伝わることはないだろう。
 何よりも。何が悲しくて自分も見た事のないかのんの下着をオト-フの観賞用に提供しなくてはいけないのか。
 いつかあの時の鬱憤をどこかで晴らしたいところだが、勿論、こんなところではおくびにも出さない。
 かのんのもう1人の契約精霊なら、今の天藍の心境をぴたりと言い当てて笑うかもしれないが。
 そうこうしている間に、注文の品が運ばれて来た。
 ぱっとかのんの顔が輝く。
「はしらせピヨ可愛いです!」
 チーズケーキの上にちょこんと乗せられたホワイトチョコのひよこが愛らしい。
 切り分けついでにヒヨコをフォークでつつけば、思っていたよりも重い。中は空洞では無いようだ。
「何だか食べてしまうのを躊躇ってしまいますね」
 なにやら本物のはしらせピヨを指先でつついているような錯覚に陥る。
 天藍の方は――
「確かにこれは活け造りだな」
「確かに活け造り……何だかこのままでも動き出しそう……」
 でーん、とオトーフが皿の中央で寝そべっているような盛り付け方は、まさに活け造り。
 納得の見た目と名前。2人してまじまじと凝視してしまう。
 けれど、天藍はかのんと違いすぐにフォークを動かした。
 一切の躊躇無く、頭にあたる部分を切り分ける。
「美味しいな」
 イチゴジャムの酸味が効いているからだろうか。存外にくどくなく、さっぱりしている。
 天藍は興味深そうなかのんに気付き、皿を寄せる。
「良かったらかのんも食べるか?」
 かのんは礼を言ってから、天藍の言葉に甘えて一口。
「あ、美味しい……」
 感想の声が小さかった理由は、きっと天藍と同じ。
 思っていたほどくどくなく、純粋に美味しいと思える味だったから。ちょっと、予想外だった。
 くすり、かのんの唇が綻ぶ。
「きっとまだ会った事がない動物沢山いるのでしょうね」
 この活け造りのような、意表をつくような不思議な生き物がショコランドには沢山いるに違いない。
「機会があったら、ショコランドにまた行きたいです」
「そうだな、機会があったらまた行こうか」
 どちらともなく、目が合う。
 かのんの瞳も、天藍の瞳も穏やかで、それでいて楽しげに輝いている。
 2人が浮かべた微笑みは、とてもよく似た幸せそうな笑みだった。



●しぶいかおのあいつ
 向かい合って座った宮森 夜月と神楽音 朱鞠の表情は対照的。
「わあ、どれもおいしそうだね!」
 うきうきとメニューを見る夜月に対し、朱鞠は少々うんざり気味でメニューを見ている。
 朱鞠はあまり甘味が得意ではない。
 では、何故ここにきたのかと言えば――夜月に無理矢理連れて来られた訳である。
「朱鞠はどれを食べるの?」
 尋ねる夜月の膝の上にはピンクのクマのクッション。キノックマというらしい。
 ソファに置かれていたものなのだが、背もたれにするには可愛すぎたので膝に乗せることにしたのだ。
「侍の活け造りとやらにする。このカステラなら甘さも控えめだろう」
「そっかぁ。私は……うーん、牛乳寒天かなあ」
「そうだな。牛乳を飲むと胸が大きくなるのだったか」
「胸の話はしなくてよろしい!」
 にやっと笑って軽口を叩く朱鞠。
 夜月はパタン、とやや大げさにメニューを閉じる。
 思わず力が入ってしまったのも仕方ない。
 牛乳で巨乳になれると信じていたのに、何故か神人になってしまったことはともかく、胸についてはお察し……だったことは今でも腑に落ちない。
 むにむにとキノックマのクッションで遊びながらとりとめないことを話しているうちに、注文の品が届いた。
 夜月が頼んだのはオトーフの活け造りと紅茶。
「うわあ、かわ、いい? かな?」
 皿の中央で牛乳寒天がでーん、と鎮座していて、チョコで顔が描かれている上にイチゴジャムが盛大にかけられている。
「イチゴジャムが妙にリアルだね……」
 店長である神人はオトーフに何か思うところがある……そんな気がする。
「な、なんだか目が合った気がするぞ」
 朱鞠の言葉に、何かと思ってみてみれば――抹茶パウダーがかけられたカステラにも顔が描かれている。
 こちらはチョコではなく、黒蜜をつかっているようだ。
「こやつ、なかなかに渋みのある顔をしているな」
「確かに侍っぽい気がする」
 太い眉に眉間の皺。『へ』の字の口。渋いという表現がとてもよく合う。
 夜月はそんなカステラから自分の牛乳寒天へと視線を移す。
 あちらはまっとうなのに、こちらは事件現場に見えてしまう。が、きっと気にしてはいけない。
「では、いただこう」
「い、いただきます!」
 2人揃って手を合わせ、それぞれの品へ手を伸ばす。
 夜月はフォークで、朱鞠は備え付けの飴の串で小さく一口分を切り分けて口へ運ぶ。
「あっ! 美味しい!」
「美味いな……だが、やはり甘い」
 嬉しそうに顔を輝かせる夜月に対し、変化があまり見られない朱鞠。
 抹茶の苦味があるものの、飴とカステラ、黒蜜の甘さは朱鞠には少々厳しい模様。
 容赦なく腹から切り分けたものの、下半分を食べ終えると手を止めてしまった。
 緑茶が無ければ半分も食べられたかどうか。
 一方で、夜月はぱくぱくと食べ進んでいた。一口食べるごとに、削り取る大きさが大きくなっていく。
 朱鞠が半分を食べ終えたのと、夜月が牛乳寒天を食べ終えたのはほぼ同時。
「ごちそうさまでした!」
 笑顔で手を合わせる夜月だが、この分だとまだまだ食べられそうだ。
「宮森」
「何?」
「我のぶんもやろう。食べきれないのだ」
「……えっ、朱鞠もう食べないの?」
 勝気な瞳を丸くしている夜月へ、朱鞠は皿を寄せる。
 遠慮する必要は無いのだと分かると、夜月の顔がさらに輝いた。
「やったー! いただきまーす!」
 ふふー、と幸せそうに食べる夜月。
「美味しい!」
 あっという間にカステラは夜月の胃の中へ。
 夜月が満足気に再び手を合わせたとき、すぐそばを店長の神人が通っていった。
 つい、視線が彼女を追い、その流れで店長の精霊も探してしまう。
 いつか――
 朱鞠も怪我をしてしまう時が来るのだろうか。
 漠然とした不安が夜月の心に圧し掛かる。
 曇る夜月の表情に何を思ったのだろうか。
 ふっと朱鞠が笑った。
「おい、宮森、店員に物欲しげな視線を送るな。意地汚いぞ」
「そ、そんな目してないし!」
「どうだか」
「してないったら!」
 あっという間に夜月は朱鞠のペースに飲まれていく。
 知らぬ間に、立ち込めていた暗いモノがなくなっていることにも気付かぬまま――



依頼結果:大成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター こーや
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル ハートフル
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 4 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 11月14日
出発日 11月19日 00:00
予定納品日 11月29日

参加者

会議室

  • [7]かのん

    2015/11/18-21:08 

    こちらもプラン提出しました

    受付の方のお名前は見事に二分したのですね
    このまま先行した1・2の目の選択肢になるのか、最後のお一人が参加されて情勢が変化するのか楽しみです

  • [6]シルキア・スー

    2015/11/18-02:07 


    プラン提出!

    ダイスがドラマチックですね
    もうお一人入られたら
    その人のダイスが運命を握るっていう

  • [5]かのん

    2015/11/18-00:07 

    こんにちは、デザートのメニューのハズなのに活け作りの文字が気になって参加しました
    どうぞよろしくお願いしますね

    【ダイスA(6面):5】

  • [4]宮森 夜月

    2015/11/17-22:00 

    こんばんは~。宮森夜月です!
    よろしく~

    【ダイスA(6面):5】

  • [3]ひろの

    2015/11/17-09:51 

    ひろの、です。
    シルキア、さん。はじめまして。

    (少し迷ってから、ダイスを振る

    【ダイスA(6面):2】

  • [2]ひろの

    2015/11/17-09:48 

  • [1]シルキア・スー

    2015/11/17-00:26 

    シルキア・スーっていいます。
    よろしくお願いします。

    とりあえずダイスだけふっちゃえ
    えいっ

    【ダイスA(6面):1】


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