プロローグ
マティナとノーテは、お互いを尊敬し合う若い魔法研究者でした。
しかしいつからか、ノーテはオーガの魅力にとりつかれ、マントゥール教団に協力するようになったのです。
一方マティナは、人々をオーガの驚異から守るための研究を続けていました。
二人は互いの能力を認めながらも、別々の道を歩むようになったのです。
さて、近頃のノーテは、精霊の力を弱体化させる魔法を研究していました。
そんなある日、マティナがノーテの研究している魔法に対抗し、精霊の力を強大かする魔法を編み出すことに成功したという噂が耳に入ったのです。
マティナに負けるわけにはいかないと焦ったノーテは、未完成の魔法を、丁度近隣の村に現れたオーガを退治するためにやってきたウィンクルムたちに使ったのです。
主に乳牛を飼育する酪農業で成り立っている小さな村。
村の面積の7割が牧場です。
そこに、オーガたち……ヤックハルス5匹が現れ、牧場を荒らし始めたのです。
村人たちの依頼を受け、ウィンクルムたちがやってきたのですが、突然現れた怪しいローブ姿の男が、凶々しい杖をひと振り――。
「あれ?なんだか、村が大きくなっていくぞ」
違います。
精霊の身体がどんどん小さくなっているのです。
身長30センチメートルほどになってしまいました。
突然の出来事に気を取られている間に、怪しい男は消えてしまいました。
精霊たちは、小さな身体のまま、オーガと戦わなければなりません。
しかし幸いなことに、攻撃力・防御力ともに変化はなかったのです。
これなら、きっと、戦える。神人たちのサポートがあれば、小さな身体でも、きっと勝てる……はず。
解説
村は、住宅地が一般的な野球場2個分くらいの広さで、牧場が主です。
オーガが暴れまわっているのは牧場になります。
住民は50人前後、戸数は10戸ほどのごく小さな村です。
ひとつの家庭はだいたい住居、牧場、牛舎1棟で成り立っており、それが村内に点在している形になります。
身体が小さくなってしまったことで戦いにくくなった精霊たちを、神人がうまくサポートしてあげてください。
残念なことに、トランス前に身体が小さくなってしまいましたが、トランスは問題なくできるようです。
武器・防具などの装備品も一緒に小さくなってくれました。
しかし、その他の持ち込みの品は小さくできませんので、今回は、コーディネート以外の持ち物申請は無しといたします。
ノーテの魔法は未完成でそのうち解けますが、解けるのを待っていたら、牧場の牛たちは全てオーガに食べられてしまうでしょう。
ゲームマスターより
先に女性PC用エピソードで公開させていただいた「Small World」の対になるエピソードですが、「Small world」を読まなくとも影響はありません。
精霊を神人がどうサポートしてあげるのか、が成功の秘訣ですよ!
リザルトノベル
◆アクション・プラン
アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
ギョッとしつつもランスを拾う トランスしハイトラ 彼にはハンティングジャケットの横ポケットかシャツの首周りの中か、選んで貰う 胸から上を出してもらう形だ しっかり掴まってろよ(撫で 盾の能力で仲間のHPを増強 牧場に飛び込み、威嚇して叫んで敵の注意を引く 俺達を無視して家畜に行くとは考え難いが、念の為間に割り込んで引き離そう 逃げたり離れたりで魔法が効果的な位置へ誘導 杖の能力で牧場の草を伸ばし、敵の脚を絡めて行動阻害 仲間が近接し易いように手にも絡みつかせよう ランスの詠唱が最後になったら大声で「行くぜ」と合図 体が小さいと声も小さい だから俺が代わりに叫ぶんだ ★仲間の危機には咄嗟に杖で殴ったり、手を貸して抱えて走る |
セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
直ぐトランス→ハイトランスする。 牧場でオーガを倒すぜ。村人の所へは行かせない。 防御力を生かしてオレは前へ。 敵の注意を引き攻撃を引き受け、ハイトランスの攻撃力で敵オーガを倒すぜ。主戦力の一員だ。 元々オレ達このスタイルだから特に問題無いぜ。 敵攻撃を分散させ他の人達への攻撃回数を減らす・防御力を生かして負傷リスクを減らすのが目的だ。 敵の数も早く減らしたいからな。 「オレが相手だ!」 と敵の気を引き、精霊が敵の死角を使いやすいようにする。 敵1体に対し複数人で攻撃し、確実に敵の数を減らしていこうぜ。 ランスさんの魔法発動時は退避する。 広範囲魔法ならラキアを抱えて一緒に退避。 オレの方が元々足早いし!まかせとけ。 |
鳥飼(隼)
できるだけ、被害は少なくしたいですね。 牧場内に入るか、ヤックハルスが近ければトランスします。 ヤックハルスの15m手前ぐらいまで、小さい隼さんを抱えて移動します。 他前衛の負担軽減を目的に前に出て戦います。 それと隼さんから注意を逸らす為に、偶に大振りして隙があるように見せかけます。 防御は下げたいですけど、無理はせずに攻撃の合間を狙います。 囲まれないように位置にも気を付けます。 味方と離れすぎて孤立する訳にもいきません。 アキさんの合図があれば、小さい隼さんを抱えてランスさんの射線から退避します。 隼さんの体力が、僕より低くなってたらサクリファイスです。 僕より、攻撃力のある隼さんが動けた方が良いはずです。 |
●小さくなっちゃった!
「うわ、ランス?いったいどうなってるんだ」
ギョッとしつつ、ヴェルトール・ランスを抱き上げるアキ・セイジ。
小さくなった以外に怪我はないか、不調なところはないかと抱き上げたランスをあちこち調べる。
「大丈夫。小さくなった他はなんともない。ただちょっと、移動が大変になりそうだ」
と、ランスは肩をすくめる。
大丈夫との言葉を聞いて、セイジはひとまずほっとした。
「それなら、俺が運んでやるよ。ジャケットの横ポケットかシャツの首周りの中、どっちがいい?」
とセイジが訊ねる。
ランスはしばし考える。
シャツの首回り……戦闘時でなければ、間違いなく、より密着できるこちらを選んだだろう。
しかし、今はそんな場合ではない。
「ポケットかな。下に落ちずに済むし」
「わかった」
「じゃあ先に、トランスしておこう」
ランスに促され、セイジはインスパイアスペルと共にランスの頬に口付ける。そして、もしもの時のために、さらにハイトランスへと移行する。
それからセイジは小さくなったランスを優しくポケットに入れた。
「しっかり掴まってろよ」
と、セイジはランスの頭を撫でる。
ポケットからぴょこんと胸から上を出しているランスは、遠目にはぬいぐるみか何かのようだった。
遠くからオーガの咆哮が聞こえ、ラキア・ジェイドバインは顔をしかめる。
「これから戦闘だというのに、こんなことになるなんて」
しかしラキアの憂慮を、セイリュー・グラシアの明るい声が吹き飛ばす。
「ま、何とかしようぜ」
ラキアはふ、と微笑む。
セイリューがそう言うと、本当に何とかできるような気持ちになる。
「うん、何とかしよう」
セイリューの前向きな明るさは、いつでも心強い。
セイリューはラキアの両脇に手を入れ、猫の子のように抱え上げると、その頬にキスをした。
「滅せよ」
2人の身体をオーラが包み込みトランスへ移行する。
「今回は、ハイトランスもしておいた方が良さそうだぜ」
とセイリューに言われ、ラキアは「そうだね」と同意すると紋様の入った手を差し出し、そこにセイリューのキスを受けた。
「大丈夫ですか、隼さん。驚いていませんか」
鳥飼は、隼の傍らに膝をつく。
隼は無言で少しだけ頷いた。
以前から風変わりな依頼もあると聞いていたために、こんな展開になっても、多少驚きはしても冷静でいられるのだ。
「できるだけ、被害は少なくしたいですね」
鳥飼は辺りを見回す。少し離れたところに見える牧場で、ヤックハルス3体が牧舎に体当たりをしている様子が見えた。
そこへ、出迎えらしき村人がやってくる。
「来てくれてありがとうございます……って、えっ?」
小さくなった精霊の姿に、村人は目を丸くした。
「ちょっとトラブルがあったんだ」
「依頼は引き受けるから、問題ないぜ」
セイジとセイリューが言い、鳥飼が頷いた。
村人に状況を訊いたところ、牧場の牛たちは早急に全て牧舎の中に戻したらしい。
また、ヤックハルスは現在見えている3体の他、さらに奥にある牧場でも、2体がうろついているとのことであった。
「では、そのまま牧舎を閉めたままでいてください。住民の皆さんも、家の中に避難していてくださいね」
鳥飼の指示に村人は頷き、本人も安全のために家に戻る。
ヤックハルスは2箇所に分かれて襲撃している。
しかし、こちらは人数的にも2組に分かれる余裕はない。
手前の3体から順に倒していくのが一番いいだろう。
ウィンクルムたちは、まず手前の牧場に急ぐ。
「うぅ……ポケットの中って案外揺れるのな」
ランスはセイジのポケットの中で、エンドウィザードの攻撃の要である杖を落とさないようにしっかりと握りしめていた。
●小さくたってウィンクルム!
「悔いなく歩もう」
牧場の入口まで来たところで、鳥飼は隼の頬に口付け、トランスへ移行した。
2人の周りに羽根のような光がふわりと舞い降り、青緑のオーラが現れる。
牧場では、ヤックハルスたちは牧舎を破壊しようと暴れまわっていた。
「牧場でオーガを倒すぜ。村人の所へは行かせない」
セイリューはヤックハルスたちを睨む。
精霊が小さくなってしまっても、彼らは何も悲観していなかった。
むしろ、小さくなったことで戦略の幅が増えた、くらいに思っているようだった。
鳥飼の腕から降りた隼は、小さくなった身体をさらに屈め、草に身を隠すようにしてヤックハルスに接近する。
鳥飼、そしてセイリューとラキアの3人は、隼をできるだけ補助しようと、視線を合わせて頷きあう。
「ランスの魔法の準備が出来たら、合図するよ」
というセイジの声に送られて、鳥飼たちは隼の後を追う。
隼はヤックハルスまであと数メートル、というところで屈めていた身体をさらに腹ばいにして、匍匐前進を始める。
ギリギリまで、隼の存在がヤックハルスに気付かれないようにしたい。
「オレが相手だ!」
ラキアを地面に降ろしたセイリューが、わざと目立つように走ってヤックハルスに急接近。
牧舎の破壊に夢中になっていたヤックハルスは、「ぐぅ?」と唸って首をひねり、視界にセイリューの姿を捉えた。
「がぁぁっ」
ヤックハルスは我先にとセイリューに向かって突進していく。セイリューの方も、勢いを止めない。
ぎいん!と、ヤックハルスの爪とセイリューの大刀「鍔鳴り」がかち合い火花を散らす。
セイリューはそのまま大刀を横に薙ぎ、ヤックハルスを払いのけ、即座に後に続くヤックハルスの脇腹を柄で殴り飛ばし、さらにもう1体の胸部を返す刃で斬りつけた。
これで3体のヤックハルスはある程度ばらけ、1体1体を攻撃しやすくなる。とにかく1体ずつ確実に倒し、数を減らしたい。
3体目のヤックハルスは負傷しながらもセイリューに反撃し、その爪を避け、セイリューは後ろへ下がった。
途端、ヤックハルスは足の甲に激痛を覚えうずくまる。
そこに潜んでいたのは、グレートソード「バーリー」を構えた隼だった。隼の身体の周りには数個の光の輪が浮遊していた。ラキアのシャイニングスピアにより、防御力が上昇しているのだ。
ヤックハルスは悔しそうに隼を睨んだ。
1体目と2体目のヤックハルスが立ち上がり、同時にセイリューに襲い掛かるが、ラキアが1体のヤックハルスの脚をぽこりと魔本で叩けば、たちまち2体のヤックハルスの意識はラキアに向かう。
セイリューは3体目のヤックハルスを大刀で斬りつけながら振り払うと、そこは隼と鳥飼に任せ、急いでラキアに襲い掛かるヤックハルスに駆け寄り、その背中を縦一閃に斬りつけた。
その間、セイジはヤックハルスの視線を避けるように大回りして、牛舎の入口へと周り込んでいた。
万一、ヤックハルスの意識が牛舎の中の牛たちへと戻ってしまった時のことを考慮してだ。それに、この場所からだと戦闘の全容がよく見えた。
戦闘状況を把握して、一番適した魔法を使いたかったランスにとって、もってこいの位置だった。
一方、隼と対峙したヤックハルスは、無謀にも隼にその爪を振り下ろすが、光輪の反撃で五指をズタズタに切られる。
呻いたところに、隼はヤックハルスの右足をグレートソードで深く突き刺した。
「ぐあぁっ」
ヤックハルスはやぶれかぶれなのか負傷した手で隼のグレートソードを掴み、武器を奪おうとする。
そこへ。
「こちらですよ」
柔らかな声が聞こえ、儀礼刀「エムシ」がきらりと閃く。鳥飼だ。
ヤックハルスはグレートソードから手を放し隼を蹴り飛ばすと、鳥飼の攻撃を躱す。
それでも鳥飼は攻撃の手を止めない。ヤックハルスも、シャイニングスピアに守られている隼より、大振りで隙のある攻撃の鳥飼のほうが狙いやすいのか、隼よりも鳥飼に焦点を当ててきたようだ。
しかし隼は、鳥飼のその攻撃に疑問を感じていた。大振りすぎるのだ。
そんな隙だらけの攻撃では、いつ反撃をくらうかわからない。
隼の視線に気づいたのか、鳥飼は微かに唇の端を上げる。笑った?
そこで、隼は鳥飼の真意に気付く。
これは、ヤックハルスの意識を鳥飼に引きつけ、隼に攻撃の機会を与えるためなのだと。
隼はぐっと武器を握り締めて気合いを入れると、地を蹴り、ヤックハルスの背に向けてグラビティブレイクを発動させた。
隼の大剣はヤックハルスの肉を削ぎ、さらにグラビティブレイクの効果でヤックハルスの防御力は大きく低下する。
ぐうう、とヤックハルスは呻き、うずくまった。
セイリューとラキアは、ラキアが気を引きその隙にセイリューが攻撃し、ヤックハルス2体をどうにか押さえていた。が、決定的ダメージには至らない。
そこへ、セイジの大声が響いた。
「行くぜ」
短い合図で皆理解した。
キューキューと空気との摩擦音をたて、ヤックハルスたちの頭上でプラズマ球が大きくなっていく。
セイリューはヤックハルスの攻撃をかいくぐってラキアを抱え、鳥飼も隼を抱き上げて、速やかにそこから離れる。
ランスが発動させている魔法はカナリアの囀りⅡだ。中心地から12メートルは離れなければならない。でなければ巻き込まれる。
突然戦闘から離脱しはじめた2組のウィンクルムにヤックハルスたちはうろたえる。
その間にもプラズマ球はどんどん大きくなり――
「小さくても魔力が下がらなきゃ問題ねぇの。魔法使いにゃ喧嘩を売るなってな!」
ランスが声高に言い、セイリューたちが充分に離れたところで、っそれは炸裂する。
轟音とともにプラズマが四散し、ヤックハルスたちも爆風に身を切られながら吹き飛ばされる。
地に倒れ伏したヤックハルスはそれでもまだ、ぴくぴくと蠢いていた。
隼がそれに駆け寄り、急所を狙い大剣を突き立てる。その手際の良さに皆見惚れるが、ラキアがはっと気づく。シャイニングスピアの効果が切れている。
他にもまだ2体のヤックハルスの息がある。最早体力も僅かの相手といえども、油断はできない。ラキアは隼の周囲に光輪を生じさせた。
隼が次のヤックハルスへ引導を渡そうとしているそのとき、ランスの耳がぴくりと動く。
「まだ、来るぞ」
皆に緊張が走る。
他の牧場でも2体のヤックハルスがいるとの情報だった。
その2体が戦闘の音を聞きつけて、こちらにやってきているのだ。
ランスはすぐさま、次の魔法詠唱を始める。
鳥飼と隼の2人は、倒れているヤックハルスへ、反撃を食らわぬよう注意しながら止めを刺し、セイリューは武器を構えて新たなヤックハルスの襲撃に備える。
ラキアは、怪我を負った者はいないか、と仲間たちの様子を確認する。幸い、皆、深刻な怪我には至っていないようだが、この先も油断はできない。まだ余力はあるが、いつ、どれだけサンクチュアリを使用しなければならなくなるかわからない。
ヤックハルス2体の姿が目視できるようになると、セイリューはセイジに、
「ランスさんの魔法の準備ができるまで、隠れていて」
と、声をかける。
セイジは素直に頷き、牧舎の陰に一旦身を隠す。魔法詠唱に集中しているランスを守るのが、今のセイジの最優先事項だ。
ラキアは、セイリューとヤックハルスの間に出てぶんぶんと魔本を振り回す。
ヤックハルスの目をラキアに引きつけて、セイリューが攻撃しやすいようにするためだ。
鳥飼の助けを得つつ弱っていたヤックハルス2体を片付けた隼に、鳥飼は声をかける。
「隼さん、怪我はありませんか。まだ、体力はありますか」
と、気遣う。
隼は大丈夫だというように、小さく頷く。
「怪我をしたりしたら、いつでも言ってくださいね」
鳥飼は、隼の体力が減少していれば、サクリファイスを使用するつもりだった。
「僕より、攻撃力のある隼さんが動けた方が良いはずですから」
と、鳥飼は小さく漏らした。
ラキアの思惑通り、ヤックハルスはラキアを標的にした。
ラキアが目立つから、ということの他にも、セイリューとラキアを比べたら、小さく、武器も刃物ではないラキアの方が弱そうだと判断したというのもある。
ラキアに向けて、ヤックハルス2体が同時に飛びかかる。
後退り避けるラキアを、鋭い爪が掠める。攻撃後の隙だらけのヤックハルスに、セイリューは大刀で斬りつける。1体を斬り、ひらりと返した刃でもう1体。
2体のヤックハルスは呻きながら跳び退る。
そのうち1体へ、隼が忍び寄っていた。
隼はグラビティブレイクでヤックハルスの膝下に大きなダメージを与える。
ヤックハルスが膝をついたところで、畳みかけるようにセイリューが刀を振るい、鳥飼も駆けつけ、エムシで援護する。防御力の低下したヤックハルスには、2人の攻撃が大きなダメージとなり、最後に隼が一撃を加える。属性の相性も良かったのだろうか、それは思いのほか大きなダメージとなり、ヤックハルスは痙攣しつつ倒れ、やがて動かなくなった。
さらに、離れた場所からプラズマ球が飛来し、ラキアの頭上を飛び越えると、もう1体のヤックハルスの胸部ど真ん中で弾け、ヤックハルスは悶絶する。もし続けてグラビティブレイクを叩き込めればそれが決め手となったであろうが、今の隼にはその余力は残っていない。
しかし、隼、セイリュー、鳥飼の3名で一気に攻撃を与え、ヤックハルスはまともな反撃もできず徐々に体力を奪われ、最後にひと声咆哮すると、息絶えたのであった。
●戦い終えて
村からオーガの咆哮が全て消え失せ、平和が戻る。
「ありがとうございました!」
家から出て来た村人たちが、口々にウィンクルムたちへ感謝の言葉をかける。
それを笑顔で受け止めるウィンクルムだが――精霊の姿はまだ小さいまま。
「いつになったら戻るんだろうな」
セイジは、ぷに、と小さいランスの頬をつつく。
「そのうち戻るだろ。それより、この状況を楽しもうぜ」
「楽しむって、どうやって?」
セイジが問う。
「俺、セイジの肩に乗ってみたい」
ランスがポケットの中から手をのばしてシャツを掴み、よじ登ろうとする。
「あはは、わかったよ」
セイジはランスを抱え上げ、自身の右肩に乗せてあげた。
「おお!見晴らしが良い」
小さくなってから今までずっとポケットの中からの景色ばかりだったせいか、セイジの肩の高さからの景色すら、新鮮に思える。
セイジはそんなランスを、(子供向け名作アニメとかによく出て来る、主人公の肩に乗ってるペットみたいだな~)なんて思いながら眺めていた。
「もうちょっと高いところからも」
と、ランスはさらにセイジの頭の上に登ろうとする。セイジは苦笑しながらそれを手助けしてやった。
ほんの少しだけ、可愛い動物を飼っている気分で。本当は、大きな獣なんですが。
「セイリュー、お疲れ様」
ラキアはセイリューを見上げ、戦闘を労う声をかける。
「ラキアこそ」
セイリューはラキアをひょいと持ち上げ、片腕で抱きかかえると、その頭を撫でる。
「ちょっとセイリュー!それ、猫と同じ扱いだよ」
「あ、つい、無意識で。大きさが猫と同じくらいだったからさ」
ごめんごめん、とセイリューは笑ってラキアを降ろす。
「このまま家に帰ったら、あの子たちどんな反応するかな」
ラキアの言う「あの子たち」とは、もちろん、2人が飼っている愛猫たちのことだ。
「一緒に遊んだりできるかもな」
言いつつ、セイリューはその場面を想像してみた。
一緒に遊ぶというより、もしかしたら、玩具にされるかもしれない。ある意味、オーガと戦うより体力を使いそうだ。
「隼さんも、お疲れ様でした」
鳥飼は隼の前にしゃがみ、微笑む。
無口な隼はなにも言葉を返さないが、鳥飼はそれでも不満はなかった。隼は寡黙であるが仕事には忠実である、それだけで今は十分だった。
「それにしても……」
鳥飼は、精霊たちを小さくしてしまった魔法使いの姿を思い返す。
あの魔法使い、一体どこへ消えたのだろう。いつの日か、またウィンクルムたちの目の前に現れることはあるのだろうか。
そう考えているうちに、目の前に影がおりた。
はっと顔をあげると、そこには、大きさの戻った隼がいた。
鳥飼の後方から、
「わあ、いたたっ」
「悪いセイジ!急に戻るとは思わなかったぜ」
と、セイジとランスの悲鳴が聞こえてきた。魔法の効果が切れる時間が来たようだ。
「良かったです、元に戻れましたね」
立ち上がる鳥飼を、隼がじっと見る。
「どうかしましたか」
問うも、隼はなんでもないとでもいうように、視線を外す。
「そうですか。では、そろそろ帰りましょうか」
と、鳥飼は帰宅を促す。
精霊は神人の手足となれ。幼少の頃よりそう教えられてきた隼は、今回の戦闘での鳥飼をどう思っただろう。
戦略のひとつであったとはいえ、神人でありながら、手足であるはずの隼のために自ら敵の目を引きつける役を買って出て、自分よりも隼の体力を慮っていた鳥飼を。
そして隼にとって、今回の戦闘でひとつ、はっきりしたことがある。
鳥飼にそこまでさせてしまった自分はまだまだ未熟なのだということ。
隼には、父の罵倒の声が聞こえたような気がした。
依頼結果:成功
MVP:
名前:鳥飼 呼び名:主 |
名前:隼 呼び名:隼さん |
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 木口アキノ |
エピソードの種類 | アドベンチャーエピソード |
男性用or女性用 | 男性のみ |
エピソードジャンル | 戦闘 |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 普通 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 3 / 2 ~ 5 |
報酬 | 通常 |
リリース日 | 11月13日 |
出発日 | 11月21日 00:00 |
予定納品日 | 12月01日 |
参加者
- アキ・セイジ(ヴェルトール・ランス)
- セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
- 鳥飼(隼)
会議室
-
2015/11/20-23:46
プランは提出できてるぜ。
不具合が無い事を祈っている…。
特にハイトランスがセットされていない、とか
精霊スキルが反映されていない、とか。
致命的になるよーな不具合が無いと良いな。
セット確認はしたけど、このシステムでのプラン提出は初めてだしさ。
とにかく、良い結果になりますように!
相談その他色々とお疲れさまでした。 -
2015/11/20-23:27
プラン提出ページに色々不具合があるなあ。(クロームとIEで試した)
プランは提出できている…筈だ。
うまくいくと良いな。 -
2015/11/20-22:44
上着(ハンティングジャケット)のサイドポケットだから相当大きいよ。
それに、それでもダメだと言われた場合を考えて、
「シャツから顔を出す」って発言4に書いたようにB案も提示しておくからどっちかはイケルだろう。 -
2015/11/20-22:42
>隼さん
HBは通常攻撃でも高攻撃力だせるから
スキル切れても普通に武器ふるっても充分な戦力b
ウマく俺やラキアを盾に使ってくれ!
命中率は…当たると信じれば当たる!7割あるから大丈夫!
>ランスさん
魔法使用時はオレ達も効果範囲外へ退避するぜ。
-
2015/11/20-21:19
>アキさん
合図ですね。
わかりました。合図があったら隼さんを抱えて避けますね。
小さいと歩幅の関係で移動距離も短くなるでしょうし。
それと、精霊さんは小さくなっても30cm前後はあるらしいです。
ポケットだと狭くないですか? -
2015/11/20-20:32
アキ・セイジだ。相棒はウイズのランス、よろしくな。
村への被害を避けるためにも、できたら「牧場」で戦いたいし仕留めたいと思ってる。
ランスは、俺の服のポケットか、シャツから顔を出すか、そんな感じで魔法を唱えるのに支障はなさそうだ。
いつもは俺がランスの詠唱をガードして前にでるが、今回は腕を前にするだけで守れるかな。
盾の特殊効果で皆のHPを+25ずつ増やし、
あとは、ランスが範囲魔法を炸裂させ易い場所に誘導してみる予定で居るよ。
撃つ前には合図の言葉を発するので、さけてくれると余波も食らわずにすむと思う。
さて、背後にネオチ禁止だと言ってくるとしよう。 -
2015/11/19-19:57
セイリューさん、アキさん、今回もよろしくお願いします。
>スキル
隼さんはグラビティブレイクの予定です。
2回しかできませんけど、まずは数を減らしたいな、と。
>シャイニングスピア
助かります。
隼さんの命中率は低いので、まずは当たるように頑張りますね。
僕はエムシを持って行きます。
ヤックハルスに当てて、防御を下げたいと思ってます。 -
2015/11/19-00:41
セイリュー・グラシアとLBのラキアだ。
今回も、皆、ヨロシク!
この事態でラキアが身長30cm……。
ま、何とかしようぜ!
よく考えたらオレ達の場合、基本的に前に出るので
やることはあまり変わらない。
でも盾役として有効なのはオレ1人だけかも?
ヤックハルスは弱そうな個体を狙う傾向があるから
それでラキアが敵の気を引ける…かぁ?(期待しない)
Dスケールオーガ5体が相手なので
このまま6人出発ならハイトランス使用予定。
ラキアはシャイニングスピアを隼さんに使用。
12Rの間、隼さんの防御+210 カウンター威力+128で
隼さんが前に出やすくなって
HBの攻撃力をより活かせてもらえるかなって考えてる。
ラキア自身にSスピア使うより、攻撃力的に見たらこの方がいいじゃん?
負傷はサンクチュアリで回復予定。
今考えているのはこのくらいかな。
-
2015/11/16-21:51
隼さんが小さくなっちゃいました。
あ、僕のことは鳥飼と呼んでください。
こちらはハードブレイカーの隼さんです。
まだ他に誰もいませんけど、任務が一緒になったらよろしくお願いしますね。
---
【戦う場所】牧場(野球場2個分の広さがある村の7割を占める)
【敵】ヤックハルス5体
【精霊】
30cmサイズに小さくなった(その内戻るらしい)
武器、防具も合わせて小さくなっている
※持ち込みはコーディネートしたものだけ
---
こんな感じでしょうか。
隼さんはハードブレイカーですから、前衛です。
僕も隼さんのサポートで前に出ようと思ってます。