お弁当に愛を詰めろ!(巴めろ マスター) 【難易度:とても簡単】

プロローグ

●レッツ・クッキング!
「明日、かぁ」
 貴女は部屋の壁に掛かったカレンダーを見て、小さく呟いた。明日の日付のところには、赤いマジックで大きく丸がつけてある。明日はウィンクルムとしての任務もなく2人共が休日で、だからパートナーと2人で外出する予定なのだ。2人で話し合った結果、街中ではなく野外に出掛けることになった。秋の気配が色濃い季節だ。天気予報によると幸い明日はあたたかな日のようだし、偶にはきっと、そんなお出掛けも悪くない。
(まあ、喫茶店もレストランもないっていうのはちょっと不便ではあるけど)
 思わず、貴女は少し笑った。出掛け先で食べる弁当は、コンビニででも買っていこうかという話になっている。勿論、それだって悪くはないのだけれど、折角の外出のお供がコンビニ弁当というのは、ちょっぴり味気ない……かもしれない。と、
(そうだ!)
 貴女は突然の思い付きに、ぱあと顔を輝かせた。不意に、名案が浮かんだのだ。
(お弁当を作っていこう。ちゃんと2人分。彼、びっくりするだろうなぁ)
 パートナーの驚く顔を想像したら、また笑みが漏れた。もしかすると喜んでくれるかもしれないと思うと、居ても立ってもいられないような気持ちになる。
「よし!」
 気合を入れて、立ち上がる。そうして貴女は急ぎ、近くのスーパーへと向かったのだった。

解説

●このエピソードについて
明日はパートナーさんと2人で野外デートです!
神人さんが手作りしたお弁当が当日のごはんです。
手作りのお弁当を食べながらのやり取りがエピソードのメインとなります。
また、行き先は原っぱでもピクニックでも夜の海を見に行くのでも軽いハイキングでも、野外なら基本的に自由です。
デート先は、プランにて分かるようにご指定くださいませ。
デート当日は比較的あたたかな日でお天気は晴れです。
なお、リザルトで取り扱うのは少なくとも家を出て以降の描写となります。
お弁当作りの時間はリザルトでは描写いたしかねますのでご注意くださいませ。

●お弁当について
神人さん手作りのお弁当です。
お弁当の美味しさは、6面ダイスを1つ振って決定します。

1.うっ、控えめに言っても不味い……
2.美味しくはないけど食べられなくはないな
3.可もなく不可もない普通の味
4.おっ、そこそこ美味しいじゃん!
5.おおお! これは美味しい!
6.こんな美味しいお弁当食べたことないよ……!

出た目によって、上記のような美味しさレベルのお弁当が完成します。
但し、調理スキル次第で美味しさの補正が可能です。(必須ではないです)

調理スキル1~2:出た目+1段階まで美味しさUP可能
調理スキル3~4:出た目+2段階まで美味しさUP可能
調理スキル5:出た目+3段階まで美味しさUP可能

調理スキル3以上の方は、1段階だけ美味しさUP等も可能です。
最終的な美味しさをプランにてご指定くださいませ。
例:ダ4+ス1(こう表記いただくとダイスは4目+スキルで1段階美味しさUPと解釈いたします)
また、出た目とスキル補正の合計が6を超えてもお弁当のレベルは6となります。

●消費ジェールについて
デート先までの交通費&お弁当の材料費として300ジェールお支払いいただきます。

ゲームマスターより

お世話になっております、巴めろです。
このページを開いてくださり、ありがとうございます!

美味しいお弁当を一緒に食べるのも素敵ですが、美味しくないお弁当を頑張って食べてくれる彼、なんていうのも個人的にはきゅんとします。
お弁当の味はダイスとスキル次第ですが、どんなお弁当かはプランにてご指定可能です。
お肉たっぷりスタミナ弁当! やバスケット入りサンドイッチ! 等、およそお弁当なら何でもありです。
甘い卵焼き必須! トマトはNG! 等の詳細も拘りがあればご指定を。
ご指定ない場合はお弁当の内容はお任せとなりますこと、ご了承くださいませ。
皆さまがお弁当と共にどんな時間を過ごすのか、わくわくしながらお待ちしております。
皆さまに楽しんでいただけるよう力を尽くしますので、ご縁がありましたらよろしくお願いいたします!

また、余談ですがGMページにちょっとした近況を載せております。
こちらもよろしくお願いいたします。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

かのん(天藍)

  ダイス6
お弁当の他にアヒル特務隊に温かいスープを入れて持参
1日外ですから食事の時も温かい物があった方が良いですよね

だいぶ葉が落ちてしまっていますね
リスさんどこにいますか?
天藍が指さす方に目を向けるものの見つけられず

天藍顔が近いです…(心の声)
頬染めながらも言われた場所で見つけ顔を綻ばせる
あ、お腹真っ白で耳と尻尾がふかふかですね可愛い

私達もお昼にしましょうか?
アヒル特務隊からスープを天藍に渡しお弁当を広げる
黙々と食べる天藍の様子に味の好みが合っていただろうかと様子を窺う
天藍の感想に満面の笑み

あんなに沢山木の実を集めてどうするんでしょう
疑問に冬眠をしない事を教わる
天藍の誘いに喜び約束ですよと指切り



ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)
  【お弁当】
【ピクニックバスケット】にサンドイッチを詰める

どうしましょう、料理ってあんまり得意じゃないんですよね
ずーっと前のことですけどほめられたことのあるサンドイッチをまた作ってみます、具は卵とチキンカツとトマトにレタス…

どうせなら失敗しないように事前に具の作り方を調べて…
そうだ、パンは以前ディエゴさんが買ってきてそのままにしてあるホームベーカリーで焼いてみますか
美味しくできますように!

喜んでもらえるなら嬉しいです
まあ、レシピとホームベーカリーのおかげと、運がよかったからなんですけどね今日ばかりは無駄に買ってきた家電のことは怒らないです。

あー
そう言ってくれるなら、料理頑張ってみます…(赤面)




桜倉 歌菜(月成 羽純)
  ダ3+ス3
お弁当に、おにぎらずを作りました!

溶き卵を焼き、ミートソースを入れてオムレツ風の具
ハムカツにチーズの具
ごぼうサラダの具

おやつに、甘いさつまいもで作ったスイートポテト

飲み物は緑茶と紅茶の二種類用意
バスケットに彩りよく詰めて

紅葉を観に軽くハイキング
紅葉を見渡せる丘にレジャーシートを敷いてお弁当を食べます
景色は綺麗、空気は美味しいし最高だね♪

お茶を入れ、羽純くんにお手拭きも渡して
口に合うかな?とドキドキ
食べやすさを追求してみたんだけど

羽純くんに美味しいと言って貰えたら頬が緩んで止まらない…!

食後に甘党な彼の為に用意したおやつと紅茶を
出す
羽純くんの笑顔が見れるだけで、何でこんなに幸せなんだろ



瀬谷 瑞希(フェルン・ミュラー)
  味:ダ5

そうですね、紅葉もそろそろ終わりかもしれません。
途中の紅葉を楽しみます。本当に綺麗です。
滝はしばらく見とれちゃいました。水の音が心地よいので、つい。

「ピクニックですから、気合を入れてお弁当を作ってきました!」
と差し出します。
ピクニックの主役はお弁当ですもの。
内容は平凡です。
梅干しの入ったおにぎり。唐揚げ、アスパラの牛肉巻きにミニハンバーグ。ほうれん草の胡麻和えと海老とプチトマ。コールスロー。
母がお出かけの時に作ってくれた物を参考にしました。
だから私の好物も多いです(照れ。
それとミュラーさんはお肉多めの方が良いかなって(更に照れ。
自信なかったけど、喜んでもらえたようで嬉しいです。(笑顔。



リオ・クライン(レイン・フリューゲル)
  ふふ、かなり朝早くから支度してしまった・・・。
これだけ作れれば上出来だろう。
私も成長したからな!

お弁当・サンドイッチやエビフライ、ポテトフライ、野菜サラダなどのおかずを詰め合わせたバスケットランチ

ダ1+ス1(初級マニュアル本「調理」使用)

<行動>
・完璧に作ってみせた・・・と思ったら、無理して早起きしたせいで寝ぼけて調味料の配分をまちがえてしまった
・なので極端に薄すぎたり、濃すぎたり
「も、申し訳ない兄様!食べなくていいから!」
・「いや、彼とは今はちょっと微妙な感じで・・・」(EP49参照)
・最近のアモンは少しよそよそしくなったような気がする
・早起きのせいかうとうとして寝てしまう

※アドリブOK!



●秋、紅葉の下で
「近くの山に滝を見に行こう。ピクニックだよ。途中、紅葉がとても綺麗なんだって」
 そんな言葉で、フェルン・ミュラーは瀬谷 瑞希を秋色のお出掛けへと誘った。紅葉狩りが出来るのもあと少しだしね、と柔らかな微笑を零されれば、瑞希にだって否と応える理由はない。そういう次第で、2人は滝へと続く遊歩道を並んで歩いているのだった。
「秋のトンネル、っていう感じだね。紅葉をじっくり楽しめていいな」
 フェルンの言う通り、遊歩道は色付いたモミジやイチョウが頭上を覆うようにその彩りを誇っていて、眩しいほどの美しさだ。目元を和らげるフェルンの傍らで、瑞希も感嘆の息を漏らす。
「本当に綺麗です」
「ミズキがそう言ってくれるなら、俺も声を掛けた甲斐があるよ。楽しんでもらえてるかな?」
「はい、とても。ありがとうございます、ミュラーさん」
 瑞希の返事に、「それは良かった」とフェルンは満足げに口元を緩めた。はらり、モミジが瑞希の頭に落ちて黒髪を彩る。それに気づかない様子の瑞希の頭へと手を伸ばして、フェルンはモミジのひとひらを手に取るとくるくると指で遊ばせた。
「頭についてたよ、ミズキ。こんなに散るなら、もう秋も終わりかな?」
「そうですね、紅葉もそろそろ終わりかもしれません」
 ならば、余計に今この時を楽しまなくては。2人は鮮やかな自然の色を目に楽しみながら、目当ての滝へと向かうのだった。

「滝、すごかったね。見られて良かったよ」
「しばらく見とれちゃいました。水の音が心地よいので、つい」
 荘厳な滝を満喫して、2人は先に歩いた遊歩道からほど近い広場の一角にレジャーシートを広げた。モミジの樹のすぐ近くである。
「あの、ミュラーさん。ピクニックですから、気合を入れてお弁当を作ってきました!」
 言って、瑞希は手製の弁当をフェルンへと差し出した。受け取ったフェルンが、機嫌良く笑う。
「ふふ、ミズキの手作りのお弁当とは嬉しいな」
「ピクニックの主役はお弁当ですもの。……その、内容は平凡なんですが」
 もごもごと、小さく付け足す瑞希。彼女が用意した弁当の中身は、先ず、梅干し入りのおにぎり。メインのおかずは唐揚げにアスパラの牛肉巻き、それからミニハンバーグだ。他にも、ほうれん草の胡麻和えや海老とプチトマトにコールスローも入っている。弁当の蓋を開いたフェルンが、
「わあ、とても美味しそうだね」
 と、その見た目に相好を崩した。先の言葉通り嬉しそうなフェルンの様子に、瑞希も表情を柔らかくする。
「母がお出かけの時に作ってくれた物を参考にしました。だから私の好物も多いです」
 なんて言いながら一抹の照れ臭さに頬を染める瑞希のことを愛おしく思いつつ、フェルンは「それじゃあいただきます」と唐揚げを口に運んだ。
「ん、パリッとして美味しいよ。ミズキ、料理も上手になったね」
 真っ直ぐな褒め言葉に、頬を益々赤らめる瑞希。そうして彼女は、小さな声でぽつと音を紡いだ。
「その、お弁当の中身なんですけど」
「うん?」
「母のお弁当を思い出しながら作ったのと……ミュラーさんは、お肉多めの方が良いかなって」
 瞳を瞬かせるフェルンの視線に耐えかねて、瑞希は真っ赤になって俯く。フェルンはそのかんばせに、そっとあたたかな笑みを乗せた。
(俺のことを考えて作ってくれたお弁当、ってことだよね)
 優しい告白に、自然と心が弾む。そのうちにほっこりと幸せなお弁当の時間を終えれば、フェルンの手元にはすぐに水筒から食後のコーヒーが用意された。散策の時の飲み物はこちらも水筒入りの茶だったはず。瑞希の細やかな心遣いが、コーヒーと共にフェルンの心に染み渡る。
「ミズキの気配り、すごく嬉しいよ。最高のお弁当だった」
「本当ですか? 自信なかったけど、喜んでもらえたようで嬉しいです」
 料理の不得手を気にしている瑞希である。だからこそ今回の成功もフェルンの言葉も格別嬉しくて、その顔には笑顔の花がふわりと咲いた。

●兄の心妹知らず
(ふふ、かなり朝早くから支度してしまった……)
 早朝から弁当作りに精を出した疲れもあるはずなのに、行楽の目的地を目指すリオ・クラインの足取りは決して重いものではない。むしろ、その歩みは彼女の心境をそのまま表しているかのように軽やかだった。リオ、兄のように慕うレイン・フリューゲルが今は大事そうに抱えてくれているバスケットの中身を思ってそっと口元を緩める。
(サンドイッチやエビフライ、ポテトフライに野菜サラダ……どれも我ながら上出来だ)
 私も成長したからな! なんて、レインがその彩りや味に相好を崩す様子を思い浮かべるリオ。完璧に作ってみせた、という自負が彼女にはあった。
「この中身、リオちゃんの手料理なんだよね。嬉しいなあ♪」
 隣を歩くレインが、にっこりとしてリオの方を見遣る。
「リオちゃんがお料理できる様になるなんてね」
「レイン兄様。私ももう子供ではないのだから、料理くらい……」
「ふふ、そうだね、ごめん。立派なレディに失礼なことを言ったかな」
 そんなふうに談笑しながら、2人はじきに目的地へと辿り着いた。清々しいような秋空の下、持参したバスケットの蓋を開ける。
「うわあ!」
 なんてレインがどこまでも真っ直ぐな感嘆の声を上げたのに、リオは誇らしさに表情を柔らかくした。
「さあ兄様。どれでも好きな物を、好きなだけ食べてくれ」
「ありがとう、リオちゃん。それじゃあ、いただきます」
 レインが、にこにこ笑顔でサンドイッチを口に運び――そして、瞬間難しいような顔になる。彼はすぐに優しい笑顔に戻って「美味しいよ」と言ったけれど、リオは、レインのちょっとした表情の変化を見逃さなかった。急ぎ、自分もサンドイッチをぱくりとする。
「……味がしない」
 食材の味しか感じられないほど薄味のサンドイッチに、リオは愕然とした。無理をして早起きをしたせいで、寝惚けて調味料の配分を間違えてしまったらしい。他の料理の味も確かめるが、どれも極端に味が濃かったり、逆にサンドイッチのようにおよそ味というものがなかったり。
「も、申し訳ない兄様! 食べなくていいから!」
「大丈夫! 食べられないこともないし、せっかくリオちゃんが僕のために作ってくれたんだから」
 しゅんとするリオを励ますように、今度はエビフライを口にしてレインは明るく言った。そうして、レインはふと遠く空を飛ぶ鳥へと眩しそうに視線を遣り、ぽつりと音を零す。
「ねえ、リオちゃん。本当はアモンくんとも来たかった?」
 唐突な問いに、リオは鮮やかな赤の瞳を見開いて――けれどすぐに、視線をバスケットへと落とした。
「……いや、彼とは今はちょっと微妙な感じで……」
 とある事件がきっかけで、リオは彼の深い部分に期せずして触れてしまったのだ。以来、1人目のパートナーは何だか少しよそよそしい、そんな気がする。
「……心配するくらい大切なんだね」
「そっ、そんなこと……!」
 レインの言葉に、頬を朱に染めるリオ。そして、彼女は慌てて言葉を付け足した。
「に、兄様も大事だぞ? 妹としてな。私にとって、兄様は家族にも近いからな」
「ふふ、ありがとう」
 レインがにこやかに微笑む。そんな彼へと自分も笑みを返して――リオは、口元を抑えて小さく欠伸をした。
「リオちゃん?」
「すまない、兄様……ちょっと、眠くて……」
「そっか。きっと、お弁当作りを張り切ってくれたからだね……あまり無理しないでね?」
「ん……」
 うとうととしてもう座っているのもやっとな様子のリオの頭を、レインは優しく自身の膝の上へと誘う。そのまま、リオはすやすやと眠りの底へ。そんなリオの頭を、レインは慈しむような手つきで撫ぜる。
「……リオちゃん、ずっと好きだったよ。妹としてじゃなく」
 呟いた秘密はリオの耳に届くことなく、秋の風に溶けて消えた。

●雪白の契り
「だいぶ葉が落ちてしまっていますね」
 秋色に染まった郊外の森の中。唇から音を漏らしたかのんの肩には、彼女が寒い思いをしないようにと天藍が持参した大判のブランケットが掛けられている。この時期にしてはあたたかな日ではあるものの森の奥の空気は冴え冴えとしていて、だから愛しい人のこの気遣いはかのんの心まで温もりに染めた。
「ほら、かのん。あそこだ」
 傍らに立つ天藍が、少し潜めた声で、けれどどこか楽しそうに言った。彼の指先が示すのは木の幹――をすばしっこく行き来するリスである。その観察が、2人の本日の目的なのだ。けれど、かのんの目は、天藍のようにすぐにはリスの姿を捉えられない。
「えっ? リスさんどこにいますか?」
「あの木の、丁度あの辺りに」
「え、ええと……」
 天藍の指が教える場所を懸命に目で追うのだが、中々リスを見つけられないかのん。それを見て取った天藍は少し屈んでかのんと目線を合わせ、彼女に顔を寄せて、
「かのん、ほら、あそこにいる。見えるか?」
 と、改めてかのんにリスの居場所を示してみせた。彼の温度さえ感じられそうなほどの距離と耳元に響く声の心地良さに、
(天藍、顔が近いです……)
 なんて頬を染めるかのんだったが、じきにその紫の双眸に愛らしい小動物の姿を見留め、その表情を綻ばせる。
「お腹真っ白で耳と尻尾がふかふかですね、可愛い」
「な、可愛いだろ?」
 瞳を煌めかせるかのんへと悪戯っぽいような笑みを向ける天藍。2人はしばらく寄り添い合うようにしてリスがせっせと木の実を集める様子を眺めていたが――そのうちに、天藍の腹の虫がきゅうと鳴った。かのんが、くすりと笑む。
「天藍、私達もお昼にしましょうか?」
「……ああ」
 少しバツが悪いような気がしながらも、頷く天藍。そうして2人は、秋色の森の中でかのんお手製の弁当を広げた。炊き込みご飯のおにぎりに、人参の橙が美しい根菜のきんぴら。秋野菜の肉巻きも見た目からして食欲をそそる。
「美味そうだな」
 と笑み零す天藍に、かのんはアヒル特務隊『ポカポカ・アッタマール』から注いだ熱々のスープを手渡した。
「すごいな、スープまであるのか」
「1日外ですから食事の時も温かい物があった方が良いかと」
 かのんの心配りを嬉しく思いながら、「いただきます」とスープを口に運ぶ天藍。
(……美味い)
 あまりの美味しさに、次から次へと弁当の中身に手が伸びる。けれどやがて、
(味の好みは合っていたでしょうか……?)
 と、言葉もなく黙々と食事に集中してしまっていた自身の様子をかのんが窺っていることに気がついて、天藍は「あ、すまない」という謝罪の言葉と、次いで柔らかな笑みをかのんへと向けた。
「とてもおいしいからつい1人で食べてしまってたな。一緒に食べよう」
 嬉しい感想に、かのんのかんばせにはとびきり鮮やかな笑顔の花が咲いて。2人は共に、ほっこりとあたたかな食事の時間を楽しんだ。その間にもせっせと木の実を集め続けているリスの姿に、弁当を口に運ぶ手を止めたかのんが首を傾げる。
「リスさん、あんなに沢山木の実を集めてどうするんでしょう」
「ああ、木の実は冬用に貯蔵しているんだ。あの種類のリスは冬眠しないからな」
「そうなんですか。冬の間のごはんが必要だから、あんなに一生懸命なんですね」
 ふと湧いた疑問に動物学に詳しい天藍が明快に応え、成る程とばかりにかのんは表情を明るくした。そんなかのんの様子を微笑ましく思いながら、天藍は目元を和らげて言葉を零す。
「雪が降ったらまたリス達の様子を見に2人で来ようか。落ち葉と同化しない分、探しやすいかもしれない」
 それは、来たる冬にもまたこの場所へ、という嬉しいお誘い。そっと微笑して、かのんは小指を差し出すと秘密っぽく言った。
「約束ですよ、天藍」
「ああ、必ず」
 指切り一つ、いずれ来る約束の日のことを想って、2人はどちらからともなく見つめ合い、笑みを零すのだった。

●殺し文句は甘い味
「私、料理ってあんまり得意じゃないんですよね」
 そんなことを言うハロルドの指に切り傷も火傷の痕も絆創膏もないことを改めて見て取って、ディエゴ・ルナ・クィンテロは胸の内に安堵のため息を零した。
(いつも俺が料理しているからな。どうしても不安になる……)
 なんて思いは、腹の底に飲み込んで。というのも、彼女の調理中に心配から色々と口を出しては、最終的にキッチンから締め出されたディエゴなのである。
「ずーっと前のことですけど、ほめられたことのあるサンドイッチです。尤も、ディエゴさんは私の腕に期待していないようですが」
「いや、エクレール、そういうことじゃ……」
「いいんですよ、自分でも料理上手だとは思っていませんし」
 とは言いながらも、じとーっとした目でディエゴの顔を見つめてくるハロルド。背に汗の滲むのを感じながら、ディエゴはキッチンから追い出されて手持ち無沙汰になった際、仕方なしに買いに出掛けた茶を口に運んだ。場を持たせる意味半分、気持ちを落ち着ける意味半分である。そんなディエゴの様子に、ハロルドはやれやれと肩を竦めた。
「まあ、とにかく食べましょう。埒があきません」
 言って、ハロルドが開いたピクニックバスケットの中には、彼女お手製のサンドイッチが並んでいる。チキンカツにトマトとレタス、それに卵も挟んだボリューミーな一品だ。
「あー、その……いただきます」
「はい、どうぞ。召し上がれ」
 というやり取りを経て、バスケットに詰まったサンドイッチのうちの一つをディエゴは手に取り、それにぱくりとかぶりついた。瞬間、蜂蜜色の双眸が仄か見開かれる。
「……美味い」
 小さな声が、ぽつとその唇から漏れた。その言葉を耳に捉えて、安堵したように少し口元を緩めるハロルド。
「凄いな、料理の腕上達したのか?」
「お褒めに預かり光栄です。それに、喜んでもらえるなら嬉しいです」
 心底から感激した、という調子でディエゴが問いを零す。それに応じた後で、「まあ」とハロルドは付け足した。
「レシピとホームベーカリーのおかげと、運がよかったからなんですけどね」
「ホームベーカリー……ああ、そういえば前に買ったな」
「サンドイッチのパン、以前ディエゴさんが買ってきてそのままにしてあるそのホームベーカリーで焼いたんですよ」
 今日ばかりは無駄に買ってきた家電のことは怒らないです、と付け足されて、ディエゴはまたもたじたじだ。
「いや……いつか使うと思って。それに、今日役に立ったじゃないか」
「はい、そういうことにしておいてあげます」
 しれっと応えて、ハロルドは自分もサンドイッチを口に運んだ。自分の舌で確かめても、やはり上出来である。
(どうせなら失敗しないようにと、事前に作り方を調べて良かったです)
 そんなことを胸に思いながら、ハロルドはサンドイッチを口の中に味わう。もぐもぐと本当に美味しそうに同じ物を食べ進めていたディエゴが、ふと口元を拭ってハロルドへと視線を向けた。
「何と言えばいいのか……正直言うと、俺自身の料理は美味いと思えないからさ。だから、これだけ美味いものを作れるお前の料理なら毎朝食べても良いなって思ったよ」
 柔らかな表情と共にハロルドだけに向けられる、賛辞の言葉。それってどんな殺し文句ですかと、ハロルドは嬉しさと照れ臭さに頬を火照らせ僅か俯いた。
「あー……そう言ってくれるなら、料理頑張ってみます……」
「エクレール? ……俺何か変な事言ったか?」
 ハロルドの様子に、ディエゴが不思議そうに首を傾げる。
「……そんな気はしましたが無自覚ですか」
「え?」
「いえ、何でも。それよりほら、沢山作ってしまったので頑張って食べてください」
 そうして、ディエゴはハロルド作のサンドイッチをぺろりと食べ切った。
「御馳走様、美味かった」
 満足げなその言葉に、美味しくできますようにと願いを込めた甲斐があったと、ハロルドは密か目元を和らげたのだった。

●貴方と過ごす幸せを
「も、もうすぐ着くかな?」
「……まだもう少し掛かるんじゃないか?」
 既に疲れ気味の桜倉 歌菜の方を振り返って、月成 羽純は仄か呆れの色を纏った息を吐いた。紅葉が美しいという丘の上を目指す軽いハイキングである。それなのに、歌菜は「着くまでは見ちゃダメ!」だという弁当が入った大荷物をよいしょと抱えているのだった。
「何でそんなに大荷物なんだ、歌菜」
「ま、まだ秘密だよ!」
 慌ててそう答える歌菜が用意した弁当のメインは、目にも鮮やかなおにぎらずだ。具は、溶き卵を焼いてミートソースを入れたオムレツ風に、ハムカツとチーズ。ごぼうサラダを挟んだ物もあり、料理好きの歌菜の本気が窺える。
(それから、おやつには甘いさつまいもで作ったスイートポテト!)
 それらが彩り良くバスケットに詰まった弁当のことを思い、羽純くん喜んでくれるかな? と心を弾ませる歌菜。飲み物だって、緑茶と紅茶の2種類を準備してある。緑茶は弁当用に、紅茶は甘党な羽純におやつと一緒に楽しんでもらえるよう用意した。そういう次第で、歌菜が腕に抱く弁当は、結構な重さになってしまったのである。
(重い……けど、頑張る!)
 気合いを入れ直す歌菜の腕の中から――ふと、およそ重量というものが消えた。顔を上げれば、やはり呆れ混じりの、けれど優しい表情をそのかんばせに浮かべた羽純が、歌菜の荷物をひょいと抱えていて。
「やっぱり俺が持つ。その方が早く着くだろ」
「は、羽純くん! 大丈夫だよ、私、自分で持てるから……!」
「細かい事ぁいいんだよ」
 説明はこれでお終い、ということだ。けれど彼の行動の理由が、あたたかなものであろうことは歌菜にも想像がつく。だから。
「ありがとう、羽純くん」
 歌菜はそう応じて、今後は羽純の後ろではなく、彼の傍らに並んで歩き出した。そうして、やがて2人は目当ての丘の上へと辿り着く。そこは見事な紅葉を見渡すことができる、格別贅沢な場所だった。
「景色は綺麗、空気は美味しいし最高だね♪」
 紅葉の眩しさに目を細めながら、歌菜は広げたレジャーシートの上、バスケットの蓋を開ける。その中身を見た羽純の双眸が、大きく見開かれた。
「……これは初めて見た。歌菜の実家の弁当屋にはないメニューだ」
「えへへ、おにぎらずって言うんだよ」
「ただのおにぎり……ではないんだな。言うならばおにぎりのサンドイッチか? 見た目も華やかだ」
 未知の、けれどとびきり美味しそうな食べ物をしげしげと見つめる羽純へと、歌菜はカップに注いだ緑茶とお手拭きを渡す。受け取ったお手拭きで手を綺麗にすると、羽純は「頂きます」とオムレツ風のおにぎらずをぱくりとした。
(口に合うかな? 食べやすさを追求してみたんだけど……)
 どきどきしながら羽純の反応を待つ歌菜の前で、羽純は驚きのあまり声を出すのも忘れておにぎらずを咀嚼する。
(美味いな。お世辞じゃなくて、本当に美味い。食べやすいし……)
 こくりと一口を飲み込んだところで、羽純はやっと、歌菜が心配そうに自分の顔を窺っているのに気がついた。そして、小さく微笑む。
「美味いよ。紅葉も見事だが……今日はこんな美味い弁当を食べる事が出来て、ラッキーだ」
 自分だけに向けられた笑顔と、一番聞きたかった「美味しい」という言葉。自然、歌菜の顔も明るく華やいで。
(やだ、頬が緩んで止まらないよ……!)
 幸せをいっぱい抱えたままお弁当タイムを終えて、歌菜は今度は、スイートポテトと紅茶を羽純の前に用意した。
「デザートまで……それで、荷物があんなに重かったんだな」
「うっ、ご、ごめんなさい……!」
「冗談だ。甘くて美味い……紅茶も美味だな」
 羽純が静かに笑っている。その笑顔が、歌菜の心をどこまでもあたためる。
(羽純くんの笑顔が見れるだけで、何でこんなに幸せなんだろ)
 そんなことを思う歌菜の嬉しそうな表情に、羽純も益々満たされるような気持ちを感じた。
「有難う、美味かった」
 笑顔には笑顔を重ねて。穏やかな時間は、ゆったりと過ぎていく。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 巴めろ
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル イベント
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 とても簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 11月11日
出発日 11月18日 00:00
予定納品日 11月28日

参加者

会議室

  • [17]桜倉 歌菜

    2015/11/17-23:49 

  • [16]桜倉 歌菜

    2015/11/17-23:49 

  • [15]リオ・クライン

    2015/11/17-23:25 

  • [14]かのん

    2015/11/17-21:44 

  • [13]かのん

    2015/11/17-21:44 

    (プラン提出に来てリオさんの出目と呟きに思わず反応)
    ……大丈夫、きっとレインさんにリオさんの気持ちは通じるはずです、ふぁいとです!

    ひとまずプラン提出してきました
    皆さんも楽しいお出かけになりますように

  • [12]リオ・クライン

    2015/11/15-19:03 

    調理スキルを足しても2・・・。

    ああ、兄様に申し訳ない・・・!

  • [11]ハロルド

    2015/11/14-19:32 

    リオさんの出目にワクワクしてしまいました

  • [10]リオ・クライン

    2015/11/14-18:23 

    大惨事・・・だと・・・!?

  • [9]リオ・クライン

    2015/11/14-18:22 

    リオ・クラインとレイン兄様だ、よろしく。

    さて、どう出るのか・・・。

    【ダイスA(6面):1】

  • [8]瀬谷 瑞希

    2015/11/14-10:13 

    女神さまのからの幸運が舞い降りたようです。
    レシピ本見て、頑張ります。

  • [7]瀬谷 瑞希

    2015/11/14-10:10 

    こんにちは、瀬谷瑞希です。
    パートナーはファータのミュラーさんです。
    皆さま、よろしくお願いいたします。

    料理は自信ないからどうしよう…(ダイスをころろん)

    【ダイスA(6面):5】

  • [6]ハロルド

    2015/11/14-08:30 

    あら、奇跡ですね

  • [5]ハロルド

    2015/11/14-08:30 

    ハロルドです、よろしくお願いします
    料理あんまり得意じゃないんですよね…

    【ダイスA(6面):5】

  • [4]かのん

    2015/11/14-08:10 

    えっと6なので……あ、良かった(安堵)
    天藍に喜んでもらえたら嬉しいのですけれど

    皆さんも楽しい時を過ごせますように

  • [3]かのん

    2015/11/14-08:06 

    こんにちは、かのんと天藍です
    どうぞよろしくお願いしますね

    まずは、と……お弁当を用意しなくてはですね

    【ダイスA(6面):6】

  • [2]桜倉 歌菜

    2015/11/14-00:56 

    よかった…!とりあえず普通…!
    あとは、調理スキルが火を噴く予定です!
    よっし、頑張りましょうね!

  • [1]桜倉 歌菜

    2015/11/14-00:53 

    桜倉 歌菜と申します。
    パートナーは羽純くんです。
    皆様、よろしくお願い致します!

    運命のダイスロール……どうか、美味しくできますように…!てぃっ!

    【ダイスA(6面):3】


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