Small World(木口アキノ マスター) 【難易度:普通】

プロローグ

 マティナとノーテは、お互いを尊敬し合う若い魔法研究者でした。
 しかしいつからか、ノーテはオーガの魅力にとりつかれ、マントゥール教団に協力するようになったのです。
 一方マティナは、人々をオーガの驚異から守るための研究を続けていました。
 二人は互いの能力を認めながらも、別々の道を歩むようになったのです。

 ある日マティナは、ノーテが精霊の力を弱体化させる魔法を研究していることを耳にしました。
 それに対抗すべく、マティナは精霊の力を強大化する魔法を研究し、それはほぼ成功したのです。
 マティナの所属する魔法研究所がある村がオーガたちに襲われたのは、そんな矢先でした。

 魔法研究所は、小さな村のはずれに所在します。
 オーガたち……ヤグアート10匹にヤグズナル7匹は小さな村中を我が物顔で闊歩し村人たちを恐怖に陥れています。それほど強いオーガではありませんが、数も多いうえ、素 早さが特徴のオーガばかりで、攻撃が難しそうです。
 そこでマティナは、完成したばかりの魔法でオーガ退治にやってきたウィンクルムに精霊の力を強大化する魔法をかけたのです。

 すると――。

「あれ?なんだか、村が小さくなっていくぞ」
 違います。
 精霊の身体がぐんぐん大きくなっているのです。
 元の大きさの5倍ほどになってしまいました。
 これでは、下手に動くと村人を踏み潰したり、家屋を蹴倒してしまいかねません。
 また、動きの素早いヤグアートやヤグズナル相手に、攻撃がより当たりにくく、死角も多くなってしまいました。
 そして悲しいことに、攻撃力・防御力ともに変化はなかったのです。
 しかも、魔法の効果はいつ切れるかわからない、とのこと。効果が切れるのを待っている余裕はありません。
 神人たちは、マティナや村人たち、そして精霊を安心させるように言いました。
 自分たちが精霊をサポートするから、きっと大丈夫――と。

解説

 村は、住宅地が一般的な野球場2個分くらいの広さで、その周りに広大な林野が広がっています。
 オーガが暴れまわっているのはこの住宅地が中心です。
 住民は50人前後、戸数は10戸ほどのごく小さな村です。
 家屋は密集しているわけではないので、気をつけて動けば踏んだり蹴ったりはしないと思いますが……。
 魔法研究所は村のはずれ、住宅地と林野の境界の辺りにひっそりと建っています。ここには数十人の研究者がいるようです。

 身体が大きくなってしまったことで戦いにくくなった精霊たちを、神人がうまくサポートしてあげてください。
 残念なことに、トランス前に身体が大きくなってしまいましたが、トランスは問題なくできるようです。
 武器・防具などの装備品も一緒に大きくなってくれました。
 しかし、その他の持ち込みの品は大きくできませんので、今回は、コーディネート以外の持ち物申請は無しといたします。


ゲームマスターより

 マティナさん、魔法、失敗じゃないですか。
 というツッコミはしないであげてください。
 攻撃が当たりにくい&死角が多い戦闘を、神人がどうサポートしてあげるのか、が成功の秘訣ですよ!

 余談ですが、マティナは女性、ノーテは男性で、二人とも淡い恋心はあったようなのですが……今や敵対してしまいました。ノーテは現在行方知れずです。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

ハロルド(ディエゴ・ルナ・クィンテロ)

  【トランス】
開幕ハイトランス

腕にのせて貰ってトランスします
よし、ディエゴさんそのままロケットパンチです!
リモコンとかあれば良いのになあ。

このときに上から見下ろし、ディエゴさんが落ち着ける場所と
オーガの大体の居場所を探ります
ディエゴさんをそこに座らせて、私はオーガの注目を引くために攻撃を加えつつ住民とイズミさんの組とは反対の方向へ誘い込みます。

ディエゴさんの攻撃があたるように移動したいです
ディエゴさんが見つけられないなら、大声でどこにいるか知らせて攻撃してもらいます。

住民が安全な場所に避難するまで持ちこたえてみましょう
お家や畑などが少しだけどうにかなっちゃうかもしれませんが
命あっての物種ですよ!





シャルティ(グルナ・カリエンテ)
  …随分、見晴らしが良さそうね
……正直、分かりたくないわ
そんなこと良いから、住民たちの安全確保

・行動
ディエゴさんが壁、囮になってる間、
イズミ、カムイさんと住民の安全確保として安全地帯への誘導
精霊が安全地帯の確認ができたらそちらへ誘導

神人は基本的に、住民の安全確保



イズミ=リチャードソン(カムイ=スチュアート)
  開幕と同時にトランス

カムイや、シャルティさん達と協力して避難誘導
精霊には壁役になってもらう
自分達は誘導に集中

避難誘導が完了した後は、住民たちからなるべく離れる。
(ただし、見える位置に陣取る)
移動は慎重に、移動の最中に襲われた時は、回避に専念。

移動後は、そこから動かずオーガを挑発、落ちている小石を投げたりしてこちらに注意を向けさせる。

シャルティさんが戦っているのであれば、そちらの援護を優先する。持っている武器で応戦。

ハロルドさんたちの援護は、邪魔にならないのであれば援護。


●村の入口にて
「ど、どどどどーしましょう!」
 マティナは慌てて魔法を解こうと書物を調べたり杖を振ったり踊ってみたりといろいろ試していたが、焦ってうまくいかないのだろうか、精霊たちの大きさは一向に元に戻る様子はない。
「これは、下手に動けないな」
 ディエゴ・ルナ・クィンテロは眉根を寄せる。
 この大きさで普段通りに動いてしまえば、人に怪我をさせたり、家屋を破壊したりしかねない。
 足元では、ハロルドが目を丸くしてディエゴを見上げている。
「ディエゴさん」
「なんだ?」
「巨大ロボみたいです」
「………」
 他に感想はなかったのか。ディエゴは痛むこめかみを押さえた。
 シャルティは冷静にグルナ・カリエンテの姿を見上げた。
「……随分、見晴らしが良さそうね」
 グルナは苛立たしげに舌打ちをする。
「不便で仕方ない。つか、落ち着かねぇっての……」
 見晴らしが良い?冗談じゃない。
 そうしている間にも、村にはオーガの咆哮が響く。
 このオーガたちを今すぐにでもぶっ飛ばしてやりたいのに。
「こんなんじゃ、上手く武器も振れねぇし」
 グルナだって、単なる戦闘大好き戦闘狂なだけではない。今の自分の状況はわかっているのだ。オーガたちをぶっ飛ばそうと下手に動けば、周囲に被害を与える可能性があると。
「そんなに不便かしら」
「お前もなれば分かるんじゃねぇの」
「……正直、分かりたくないわ」
 こんな状況でもいつもと変わらぬ態度のシャルティに呆れるグルナ。冷静と言えば聞こえは良いが、愛想が無いというか、感情に乏しいというか。
「そんなこと良いから、住民たちの安全確保」
 シャルティはグルナの呆れ顔など気にもせずに、落ち着いた声で指示を出す。そう、まずは住民に被害が及ばないようにしなければならない。
「あーはいはい……」
 いつでも冷静なシャルティにそろそろ慣れてきたグルナは、無駄に反論をすることもなく従うのだった。
「私たちも、一緒に住民の避難誘導するね」
 まだ経験の浅いイズミ=リチャードソンがシャルティに申し出る。
 直後、再度オーガの咆哮が響き、イズミは自身がオーガに襲われた時の恐怖を思い出したのか、身体をびくりと硬直させる。
「ゆっくりと魔法が解けるのを待っている時間はないようだね」
 カムイ=スチュアートはイズミたち神人にぶつからないよう注意しながら跪き、さらに顔をイズミに寄せる。
「イズミちゃん」
 声をかけると、カムイの意図を理解したようで、イズミは上ずった声で返事をすると、
「朧月に舞え!」
 と、インスパイアスペルと共にカムイの頬に口付けトランスに移行する。
 シャルティとグルナもそれに続いてトランスへ移行。
「ディエゴロボ……じゃなかったディエゴさん、私たちは村の様子を探りましょう」
「ああ、そうだな」
「ちょっと、腕を下ろしてください」
「ん?」
 ディエゴが腕を下ろすと、ハロルドがそこへよじ登り、頬へ口づけ、トランス。それから体勢を変えて、ディエゴの手の甲の文様に口づけ。ハイトランス・ジェミニで二人の力を分かち合う。精霊が戦いにくい今、ハイトランスで神人の能力を高め、自身も戦うつもりなのだ。いやむしろ、ハロルドが主戦力になると考えて良い。
 雪の結晶が舞い髪の色が変化していく中、ハロルドはオーガの咆哮が聞こえてくる方をびしっと指差す。
「よし、ディエゴさんそのままロケットパンチです!」
「俺は巨大ロボじゃない!」
 ディエゴの反論が聞こえているのかいないのか、
「リモコンとかあれば良いのになあ」
 と不満そうなハロルドだ。リモコンでハロルドに自由に操作されるなんて、想像するだけでも恐ろしい。

 精霊たちは大きくなってしまったことで、不便な面はあるが、視界が広がるというメリットもあった。
「どこか避難に適した場所はないかしら」
 とシャルティがグルナに問う。
「魔法研究所のあたりが、広さもあるし、避難するには良さそうだな」
「ボクたちが壁になるから、イズミちゃんたちは住民のみんなを魔法研究所の方へ逃がしてあげて」
 カムイの言葉に、イズミは頷く。
「こちらは現状把握しつつ囮になろう。避難誘導は任せた」
 ディエゴは、避難誘導組と距離をとるようにして、村の中心部へと歩いていく。
 マティナには、先に魔法研究所に逃げているよう指示した。

●村人たちに安全を
 グルナとカムイは声をあげて、住民たちへ避難するよう呼びかけつつゆっくりと魔法研究所の方向へ進む。
 戸外にいる住民はその呼びかけに従い、避難する。
 シャルティとイズミは一軒ずつ家を訪れ、中にいる住民へ避難を呼びかける。
 30戸ほどしかない村である。二人で手分けして行えば、それほど時間もかからない。
 ディエゴとハロルドは、村の現状を確認していく。
 合計17匹のオーガは、村のあちこちで暴れている様子だった。一箇所ずつ出向いて対応するのはこの人数では難しい。
 そこで、魔法研究所とは別方向の一角に空き地を見つけ、その場所で、囮作戦を展開することにした。
 ディエゴの腕から降りたハロルドは、ディエゴを先に空き地に向かわせると、自分は空き地に行くまでの間に出会ったヤグアート2匹にウィップ「ローズ・オブ・マッハ」で先制攻撃を仕掛ける。
 ハロルドの存在に気づいたヤグアートはギイギイ鳴きながらハロルドに襲いかかる。
 ハロルドはウィップでその攻撃を躱しながら、空き地へ走った。
 わざと、ヤグアートに致命傷を与えないように。わざと、ヤグアートが騒ぐように。
 その目的は、他のオーガをおびき寄せることにある。
 オーガをなるべく一箇所に引き寄せたほうが戦いやすく、また、避難中の住民からオーガを遠ざけることができるからだ。
 とはいえ、当然ながら、全てのオーガがハロルドを追ったわけではなかった。

 イズミが避難を呼びかけ各家を回っていると、どすん、と大きな音が聞こえる家屋があった。
「!?」
 何事だろうとその家に向かう。その途中で、さらに、どん、どんと音が響き、家が振動した。
 不安が胸を過ると同時に、その不安を裏付けるように、家の中からオーガの咆哮が聞こえたのだ。
 イズミの足はぴたりと止まり、膝が震える。
 あの家の中には、オーガがいる!
 躊躇しているうちに、中から人の悲鳴も聞こえてきた。
「あ……」
 どうしよう、家の中にはまだ、住民がいる。助けを求める住民が。
 震えている場合じゃ、ない。
 イズミはガクガクする膝を懸命に動かし、家の扉を開けた。
 そして、足元の小石を拾い上げ、中で暴れているヤグズナルに向かって投げつける。
「ぐぉうっ」
 ヤグズナルは短く吠えると顔をあげ、イズミの姿を見止める。
「……ひっ」
 イズミは息を飲み、後退る。
「イズミちゃん!」
 後方からカムイの声。
 イズミは即座にカムイの脚の後ろに逃げ込んだ。
 そして飛び出してくるヤグズナル。
 カムイは一瞬、手裏剣「紅葉」を取り出そうとしたが、すぐに思い直す。巨大な武器で少しでも手元が狂えば大惨事になりかねないからだ。
 仕方なしに、素手でヤグズナルをべしっと払う。
(やっぱりちょっと痛い!)
 素手での攻撃は自分にもダメージがあるが、ここは我慢。
「あ、ありがとう」
「今のうちに、家の中の人を避難させて」
 イズミは頷くと、家の中、テーブルの下で震えている親子3人に優しく声をかけ、避難を促した。
 ヤグズナルは1匹では分が悪いと思ったのか、逃げていってしまった。しかし、今はこれを深追いしている場合ではない。一刻も早く、住民たちを避難させるのだ。
 シャルティの方は、滞りなく自分が受け持った全戸に避難を通告し終え、イズミたちより先に住民とともに魔法研究所へ向かっていた。
 あと少し、のところでグルナは木の陰に隠れていた1匹のヤグアートを発見し、魔法研究所へ向かう住民たちの脚を止め、後ろからついてきていたシャルティにヤグアートの存在を伝える。
「向こうはまだこっちに気づいていないみたいだぜ」
「それなら、迂回しましょう」
 歩きやすい道からは外れてしまうが、ヤグアートが潜む木から離れた草むらの中を通れば、相手に気づかれにくいだろう。
「もし気づかれたときには、わかってるわね」
 と、シャルティは念を押す。
「俺が壁になればいいんだろ」
 シャルティは頷くと、避難する住民たちに迂回ルートを指示した。
 グルナはその場に残り、ヤグアートの様子を伺う。こちらに気付く様子はない。
 避難する住民たちの後ろから、イズミとカムイがやってきた。
「これで、村の全員に声をかけ終わったよ」
 イズミの報告に、グルナは
「近くにヤグアートがいる。静かに急げ」
 と指示する。
 イズミは頷き、住民たちと共に早足で魔法研究所へ向かう。
 これが最後尾とわかったので、グルナはカムイと共に、後方からの攻撃を警戒しながらその後をついていった。

●オーガ殲滅
 ディエゴは避難していく住民たちを遠くから見ていた。
 魔法研究所の周囲にどんどん住民が集まっていく。
 そして最後に、魔法研究所へ続く道に蓋をするようにグルナとカムイが立つ。
 無事に避難は終わったようだ。
 ディエゴが視線をずらすと、ハロルドがオーガを引きつけながらこちらへ駆けてくる。
 ディエゴは自身の武器を取り出し溜息をつく。
「これだけでかい銃を無闇に使うと、弾丸の衝撃が心配だな」
 大砲を撃つようなものだ。使いどころには注意しなければなるまい。
 発砲音もかなりなものになるだろうから、住民を驚かせてしまうかもしれない。しかしそこは、避難住民と一緒にいるシャルティたちがなんとかなだめてくれるに違いない。
 とにかく、ハロルドとオーガの距離が近い今は、武器による攻撃はできない。
 ハロルドには現在、ヤグアート4匹、ヤグズナル3匹がまとわりついていた。
 離れたところからも、その戦闘を嗅ぎつけたヤグアートたちが追いかけてきている。
 傷を負いながらもハロルドは、これまでに2匹のヤグアートをウィップで叩きのめしていた。
 ハロルドがディエゴの行動範囲内に入ってくると、ディエゴは手を伸ばし、ハロルドをオーガたちから守るように囲った。
 ディエゴは片腕でハロルドを抱き上げると、もう一方の手で片手銃「マルモア」を構え、足元に向け引き金を引く。
 ゴゥン!
 激しい音がした。
 地面がえぐれ、風圧でオーガたちが四方に飛ばされている。
ぱっと見、大きな威力があるように思える。
 しかし与えたダメージは通常と変わらないという、なんとも残念な魔法だ。
 それでも、脅威を与えるには十分で、オーガたちは悶え戦いていた。
「周りの畑にも被害が及んでいますが……仕方ないですよね」
 衝撃で石や木が飛んで畑に入り込んでしまっている。しかし、畑の状態までも保持しながら戦うのは無理があるのだ。住民たちには、命あっての物種と、理解してもらうしかない。
 オーガたちはこれまでにハロルドからの攻撃も受けていたため、ヤグアート2匹、ヤグズナル1匹はすでに事切れている。
 残るオーガも悶え苦しんでいる様子から、あともうひと押しで勝てると踏んだハロルドは、ディエゴの腕から降り、ウィップを振るう。
 まずは、ヤグアートに向けて攻撃。素早いヤグアートも、音速の鞭に絡め取られ、地に叩き落とされる。
 ディエゴは、ヤグズナルが余計な手出しをしないよう、自らの巨体を利用して盾となる。
 おかげでハロルドは落ち着いてヤグアートを1匹ずつ倒すことができた。
 さらに、ヤグズナル2匹であるが、こちらもディエゴの大きな手で1匹ずつ離れさせ、連携攻撃ができぬようにしてから仕留めにかかる。
「キュルル!」
 ハロルドと対峙したヤグズナルが骨弾を撃ち出し、ハロルドはそれを躱しながら鞭を振るう。骨弾が腕を掠めるのも厭わずに。
 鞭に襲われ、さらに、骨弾を撃ったことで自らの体力を削ったヤグズナルはその場に倒れ伏した。
 残る1匹も、鞭の連撃をくらい、あえなく崩折れる。
「あと4匹、ヤグアートが接近している」
 付近を見回したディエゴが銃を構えて告げる。接近される前に銃で攻撃し、仕留めきれなかった分をハロルドの鞭で止めを刺してもらうつもりであった。
 ハロルドもそれを理解し、鞭をぎゅっと握り直した。そして、ふと疑問が生じる。
「ディエゴさん、他のヤグズナル4匹は、どこへ行ったんでしょう」

 避難中にカムイが退けたヤグズナルは、3匹の仲間を引き連れ住民たちを追ってきた。
「通させはしないぜ」
 グルナが大剣「テーナー」を地面に突き立てる。
 武器としては扱いにくくなった大剣だが、盾代わりに利用できる。
「イズミちゃんたちには手出しさせないよ」
 カムイも懸命にオーガを払いのける。
 それでも二人の精霊はじわじわとダメージを受ける。
 なんとか、持ちこたえなければ。
 精霊の後ろから、シャルティもフェアリーボウで応戦する。命中率に優れた弓矢ではあるが、相手を倒しきるほどのダメージはなかなか与えられない。
 イズミは短剣を構えてはいるものの、前線に出ることはできず、やきもきしつつ状況を見ていた。と、その視界に、近づいてくる大きな人影が。
「ディエゴさん!」
 イズミが安堵の息を漏らす。
追撃のヤグアート4匹もなんとか退けたディエゴがハロルドを腕に乗せ、駆けつけてきてくれたのだ。
 しかし、ほぼ主戦力となっているハロルドが疲弊しているのは誰の目から見ても明らかであった。
 なんとか彼女の負担を減らさなければ。
 カムイはとっさに、傷を負うのも構わず、両手で近くのヤグズナル1匹をがっしりと捕まえた。
 それを見たグルナも、カムイに倣う。
「このまま捻り潰せればなぁ」
 と恨めしそうに言うが、残念ながらそこまでの力を与えてくれる魔法ではなかった。
 ハロルドを降ろしたディエゴも、1匹のヤグズナルを両手で捕らえると、残る1匹に向けて、シャルティが矢を放つ。
「ぐあっ」
 右肩に矢を受けたヤグズナルはお返しとばかりにシャルティに襲いかかろうとするが、その無防備な背中を、ハロルドの鞭が襲う。
「がああっ」
 地にのたうつヤグズナルに止めの一撃を加えると、ハロルドはカムイに向かい
「次行きますよ」
と宣言する。
 カムイがヤグズナルを放すと、ヤグズナルはまずはゲホゲホと咽せる。カムイがよほど強い力で握り締めていたのだろう。
 もちろん、オーガにゆっくり咳き込ませておくほどハロルドは優しくない。
 容赦なく鞭を食らわせる。
「なるほど、素手でもいくらかダメージを与えることはできるな」
 グルナは、ハロルドがディエゴに捕らえられていたヤグズナルに鞭を振るっている間に、自分の手の中にいたヤグズナルの頭を掴み、何度も地面に打ち付けてやった。
 虫の息になったところで、ハロルドの止めの一撃。
「これで、報告にあったオーガは全て退治したようだな」
 状況を見て、ディエゴが告げた。
「ありがとうございます~!」
 魔法研究所から、マティナが飛び出してくる。
「礼はいいから、早く元に戻してくれ」
 と不躾な発言をするグルナを、シャルティが肘で小突いた。
「村の人たちに怪我はなかったかしら」
 イズミの問いかけに、マティナが頷き、カムイが「良かった」と笑みを浮かべる。

●魔法が解けて
 魔法研究所員総動員であれやこれや試してくれたおかげで、オーガ退治から約1時間後に、精霊たちの姿は元の大きさに戻った。
「全く、とんでもない目にあったぜ」
 文句を言いつつも、あの大きさで周囲を気にせず存分に戦うことができたら、気分が良かったかもしれない、とグルナは思った。
「本当にごめんなさい」
 しゅんとしているマティナに、ディエゴは励ましの声をかける。
「失敗は成功の母という言葉もあるし、大きくなる魔法自体凄いことだろ」
「ディエゴさん、巨大ロボになれて嬉しかったんですね」
 ハロルドの言葉に、若干不満そうになるディエゴ。
「もしかして、巨大ロボより合体ロボの方が良かったですか」
「そういうことじゃない」
 実は密かに特撮好きのディエゴ、巨大ロボを操るのには憧れるが自分が巨大ロボになるのはあまり楽しいものではなかった。
 そんな二人の会話を聞きながら、マティナが「合体ロボ……そうか、精霊みんなの力を合体させる魔法……!」と目を輝かせたことには誰も気付かなかった。
 「精霊の力を合わせる魔法」と言いつつ失敗して精霊が合体ロボ化する日が、もしかしたら来てしまうのかもしれない。
「私たちも、少しは役に立てたかな」
 イズミがカムイに寄り添って言う。
「そうだといいね」
 カムイは微笑みを返す。
 そこへ、小さな女の子がやってきた。
 オーガに襲われていた家からイズミが助け出した家族の子だった。
「助けてくれて、ありがとう」
 女の子の笑顔に、イズミの頬も緩む。
 オーガに立ち向かうのは怖いけれど。今はまだ、カッコ良く戦うウィンクルムの姿にはほど遠いけれど。でも、こんな笑顔のために、これからも頑張ろう。
 イズミはそう心に誓うのだった。



依頼結果:成功
MVP

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 木口アキノ
エピソードの種類 アドベンチャーエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル 戦闘
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 普通
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 3 / 2 ~ 5
報酬 通常
リリース日 11月04日
出発日 11月12日 00:00
予定納品日 11月22日

参加者

会議室

  • [15]シャルティ

    2015/11/11-23:59 

    プランは提出できてる。
    そんじゃ、改めてよろしく。

  • [14]ハロルド

    2015/11/11-23:51 

  • そういえば、そろそろ日が変わるわ。

    急いでプラン書かないとダメね……。

  • やっぱりこの人数だと、一網打尽は無理か……
    なら個別に分散させる方向で行きましょうか。

    でも、多分私とカムイだけじゃ、個別撃破は難しそうねぇ……
    シャルティさん達と組んで行動させてもらおうかしら?

  • [11]ハロルド

    2015/11/11-21:35 

    っと、すまん
    イズミの書き込みに気付かなかった
    一組にオーガが集中しても辛いだろうし、2方向に分散させてもいいと思う。

    集団で一網打尽は、参加人数的に難しいだろうな、5組入れば可能かもしれんが
    どんなに大きくなろうがスキルの範囲も変わらないだろうし

  • [10]ハロルド

    2015/11/11-18:56 

    神人が避難誘導をするのなら、精霊は囮にならない方がいい
    離れられないなら尚更だと思う
    避難誘導に動くのならオーガの妨害を精霊の助力に期待せず
    ある程度一人で動ける力がないと住民も神人自身も危ない。

    囮は俺の組でやっておくから、シャルティとグルナは住民の護衛や避難誘導で一緒に動いた方が安心だと思うぞ。

  • 了解よ。なら私達はたくさんいるオーガを、村人たちが逃げる方向の反対に誘導するわ。

    石でも投げればこっちを狙うかもしれないわね。

    出来るなら、オーガ全員を広いところに誘導して、一網打尽にできないかしら?
    集団だとちょっと厄介そうだけど……

  • [8]シャルティ

    2015/11/11-15:37 

    ハロルドもディエゴさんもまたよろしくね。

    …そう、ね。
    それなら、私は精霊が壁、囮になってる間に住民の安全を確保しようかと思うわ。
    安全地帯があるかどうか確認、ね。
     トランスするから、グルナとはあまり離れられないけど。

  • ディエゴさん、ハロルドさん、お久しぶり!

    そうね、今回の精霊は下手に動くよりも壁役や囮に徹したほうがいいかもしれないわ。

    家壊したりしたら冗談じゃ済まないだろうし……

  • [6]ハロルド

    2015/11/11-00:31 

    ディエゴ・ルナ・クィンテロとハロルドだ
    宜しく頼む

    自分達の組は神人が戦い、精霊が住民を守りオーガの攻撃や移動を妨害する壁になる
    と神人が言っていた
    武器を持って戦えるのが最善だろうが
    今は周りを巻き込んでしまうようにしか思えないからだと。

  • 精霊が戦いやすい環境作りも必要かも。
    例えば、どちらかが気を引いている間に村人を安全な場所……研究所(村から離れてる?)とかに誘導したりとか。

    できるだけ不安要素は無くしてあげたいものね。

    あとは、でっかくなったことを上手く利用できないかしら?
    大きいのがいると動きにくいのは相手も同じことだし。

  • [4]シャルティ

    2015/11/10-20:07 

    精霊の判断で動いてもらうより、神人で指示を出して動いてもらった方が良いかも。
    家屋を踏んだり蹴ったりしないためにも。

    神人は「あ、踏んだ(蹴った)」なんてことがないように周囲を十分に注意、ね。
    精霊の前に家屋があるなら、避けるように呼びかける、とか。

    …あと、精霊は走らない方が良いわ。
    大きくなった、ということだから、地響きとか凄そうだし…。

  • シャルティさんもグルナさんもお久しぶりね!
    今回もよろしく頼むわ。

    そうね、大きくなっちゃった精霊をどう誘導するか、どう行動してもらうかが重要そうね。

    なるべく建物が低くて死角の少ないところへ誘導してあげたいわ。


  • [2]シャルティ

    2015/11/09-21:04 

    ……トランス、どうやれって言うのよ…。

    …ええと、シャルティと馬鹿みたいに大きいのがグルナ。
    イズミとカムイさんはテーバサーキー以来、よね。
    今回もよろしく。

     巨大精霊をどう誘導するかで戦況が変わるみたいね。
    敵が複数、だから正直どうなるか…。

    …精霊には足元に気をつけてとしか…。

  • まだ誰も居ないようだけど、挨拶しとくわ

    私はイズミ=リチャードソン
    パートナーはカムイ=スチュアートよ

    なんだか随分厄介なことになったようね
    まあどうにかなるでしょう


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