君を護って、君を愛して(東雲柚葉 マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

 あなたにやたら絡む男が居た。
彼は様々な女性に声をかけ、彼氏持ちの女性だろうと構わずに手を出す。それも、かなり強引にだ。少し女性が隙を見せたり、可哀想だからとカラオケのような個室に入ろうものならば――どんなことをされるかわかったものではない。
 ある女性が言うには、カラオケに同席したとき、突然抱きつかれたかとおもうと胸部を触られたり、無理矢理キスをされたりしたという。
 準強制わいせつ罪、いや、強制わいせつ罪に服されても文句は言えないような所業の数々だろう。
 男は今日も今日とて女性を嫌な視線でねめまわし、丁度その視線の先に運悪くあなたが居た。
「こんにちは、今暇? 何してんの?」
 突然声をかけられて驚くも、有無を言わせない男の迫力に、あなたはしぶしぶといった調子で精霊との待ち合わせをしているけれど、もう1時間はこれなさそうだからと待っていたところだと打ち明けてしまった。
 男は獲物を見つけた蛇のように舌なめずりをして、あなたに声をかける。
「10分でいいからさ、ちょっと遊ばない?」
 背後にあった壁に手をつく形で、男はあなたに迫る。
 生理的に回避したくなる距離まで近づかれて、少し身を離しつつ男を何度か拒否するが、男は引き下がらない。
 仕方が無い、10分だし、とあなたが折れて男に承諾の旨を話すと、
「本当!? やった、じゃあちょっとついて来てよ!」
 突然手を引かれ、あなたは裏路地へと連れてゆかれる。抵抗するが、男の人の力には敵わない。
「大丈夫大丈夫、この裏にあるカラオケに行くだけだからさ」
 笑いながらこちらにそういう男は、前方を注意していなかったのか、
「……って」
 フードのついたパーカーを被った青年にぶつかってしまった。男は平謝りをしながらそのままあなたの手を引く。
 助けを求めようと声を出そうとしたが、それよりもはやく、
「すみません、急いでいたもので!」
 と男に声を被せられ、助けを呼ぶことは叶わない。
 軽い調子で手を引く男の呼吸音に、生理的嫌悪を感じつつも、あなたはカラオケの個室へと連れ込まれてしまうのだった。


「…………ウィンクルムの神人に手を出すなんて、いい度胸してるね」
 男と衝突した仄暗い雰囲気をした青年が呟く。
「これは、精霊に報告しないといけないよね」
 青年は、手に持った端末を見て、男と神人の場所を確認する。先程ぶつかったのは、わざとだ。あの拍子に発信機を取り付けてどこに行ったかを確認するためにあえてぶつかりに行った。
「愛と憎しみが一度に見られるなんて、すごく幸先がいいね僕は」
 男が向かうだろう店を特定し先回りをするべく、青年はコツコツと革靴を鳴らして歩き始めた。
「もう既に半殺しくらいにはされるだろうけど、――精霊が殺意を覚えるくらいに激昂するようなことをあれがする前に、僕が手をうたないとね」
 でも、別に死んでもいいのかな? あんな男なら。と、ぼそりとつぶやいて、青年は精霊に状況を伝えるべくしてA.R.O.A.へと連絡を入れるのだった。

解説

●解説
・クズ男をぼこぼこにする話です。バトルではありませんが、ぼこぼこにする描写を事細かに書いていただいても大丈夫です(あまりグロいのはダメです)。ウィンクルムが手を汚すのは困るので、人間的な道を踏み外さない程度でお願いいたします。
 ただ、男になんらかの措置を要求する場合は、措置の要求をお願いいたします。
 それか、私の気まぐれで男には退場してもらいます。

・神人がカラオケに連れこまれ、丁度抱きしめられながらキスされそうになっている現場で精霊が到着します。それ以上のことはされないように、青年が時間を稼いでいます。はやめに精霊は目的地に着くようにしてください。

・プランの流れとしましては、
 男にカラオケの中で色々されそうになるも、抵抗等。
 ↓
 けれども、結局抱きつかれてキスされそうになる――、
 ↓
 精霊到着、男ぼこぼこ。
 ↓
 その後……。

 といったものです。
 
・精霊はなんらかの理由で遅れていた、としてください。ただ、必ずキスされそうになる目前で止まりますのでご安心下さい。

・また、このエピソードは個人個人での話とします。他のプレイヤーさんとの接触はございません。

・青年が使った発信機料を後に返金したので、500jrいただきます。



ゲームマスターより

寒くなりましたね、東雲柚葉です!

今回はちょっとリアルな話かもしれませんね。
現実でもこういうことが起こりえるので、気をつけましょう。

もうぼっこぼこにしてください。二度とこんなことが出来ないようにぼっこぼこにしましょう。

では、たくさんのご参加お待ちしております!

リザルトノベル

◆アクション・プラン

夢路 希望(スノー・ラビット)

  早く時間が経たないかと時計チラチラ
指摘されておどおどと謝ると迫られ後退り
抱き締められたら硬直
(ユキにされる時と、違う)
羞恥心より不快感が強く
何より怖くて声を出せずにいると顔が近づいてきて驚く
抵抗するけど抑えられると動けなくて
…ここは特別な人にって、決めてたのに…
固く目を瞑ると聞き慣れた声
…スノー、くん?
呆然としていると呻き声にハッと
だめ、です
ユキが悪くなっちゃう、から
震えながら必死に止める

男の人のことは警察へ相談することに
(青年さんには感謝

謝るのは私の方です
私が、断れなかったから
縋るようにしがみ付き、涙声
…怖かったです

温もりに落ち着くと恥ずかしさに赤面
も、もう大丈夫です…ありがとう、スノーくん


リヴィエラ(ロジェ)
  リヴィエラ:

(男に抱きしめられ、キスされそうになる)
嫌、やめてくださいっ! お願い、離して…!
いやぁぁッ、ロジェ…ロジェ様ぁぁッ!

(ロジェが現れ、男をぼこぼこに。彼の腰に縋り付き、首を振るリヴィエラ)
ロジェッ、もう良いんです、もう止めてください! 私は、私は大丈夫、
何もされていませんからっ…!
お願いです、オーガのようになってはダメ…!(泣きながら)

(青年に対して感謝を述べ、頭を下げ微笑む)
貴方は確か、以前の…ううん、助けて頂いてありがとうございました。
(照れてぷいっと横を見ながら礼を言うロジェを見やり)
うふふ、ごめんなさい。ロジェはただ、照れているだけなんです。


吉坂心優音(五十嵐晃太)
  ☆心情
「(なんでこんな所にいるんだろう…
あん時付いて行くなんて言わなければ良かった!)」

☆カラオケ
「あっあのぉ、あたし、やっぱり戻りま…っ!?(急に手を握られ驚く
す、少し、驚いただけ、ですからっ(何で手を握ってくるのっ!?
てか怯えてるのが可愛いって何!?)
……ひゃっ!?(徐々に男の手が足や胸付近を撫でる
ちょっ、やめっ…!
ひっ、ゃぁっ!(抵抗はするも杞憂でしかなく遂に抱きしめられキスされそうに
ちょっ止めてくださいっ!
い、やぁぁっ!(必死に抵抗
(嫌っ助けてっ晃ちゃんっっ!!)」

☆その後
・泣きながら晃太に抱きつく

「ふぇぇっ怖かったよぉっ
晃ちゃん助けてくれて有難う
うん、行く
だから泊まってって良い…?」



桜水 桐子(アルフレート シェルリング)
  遅刻の原因にまた喧嘩かと心配

断って体を捻ったらバッグが当たり、具合が悪い介抱しろと言われ付いてきた

気分が悪いと距離を詰められ
どうしましょう…流石に近すぎる?
精霊乱入

あら、アル!ちょうど良かった、この方気分が…
急に言い合う2人に吃驚

【反撃無
再び寄ってくる男に
(具合がもっと悪く?
急に男の背後に現れたアルに目を丸く
微笑んでるので怒ってないと安心
アルを見つめていて時雨に気付かない
声は小さく聞こえてない


あら急にお元気に…
また喧嘩?
アル、そんな一方的に…(心配

最後の脅しはアルの配慮で背中に遮られわからない

最後に何を話していたの?
そう、では安心ね!
あぁそういえばマイクの弁償、どうしましょう?
…原因、ですか?



アラノア(ガルヴァン・ヴァールンガルド)
  (何、この人…怖い…!)

精霊との落ち着きのある空間が好きなだけに、男の態度に嫌悪感

な…何ですか…?
っ…や、やめてくださいっ(突き飛ばす)
(やっぱり折れるんじゃなかった!逃げないと!)

扉の方に逃げようとするが腕を掴まれて抱き付かれ

ひぃっ…!?(き、気持ち悪い…!)
や、やっ…離して下さいっ(身を捩ったり体や顔を押し退けようとする)
っ…ひゃぁっ…?!
…~~~っ!(思わず目を瞑る)

…え…?
ガルヴァン…さん…?



ごめん…迷惑、かけて…
だっ…て、私が断り切れなかったせいで、ガルヴァンさんに余計な心配掛けちゃった…から…
あ…(笑った…!)…う、ん…助けてくれて…ありがとう…(やっと落ち着き少し顔を伏せて笑う)



☆夢路 希望 スノー・ラビット ペア☆

 フリータイム飲み放題の3時間コース。10分だけと言っていたのに、男にそのつもりはなかったようだ。
 はやく時間が経たないかな、と夢路が時計をチラチラと確認していると、
「こんなのと居るのは嫌だった?」
「い、いえそんな……」
 おどおどとした調子で夢路はつぶやく。
 その反応に男は笑みを浮かべて、夢路の隣に腰を掛けゆっくりと近づいてくる。夢路は後退りをして距離を保とうとするが、男が一気に距離を縮めて夢路に抱き着いた。
 急に抱きしめられて夢路は硬直する。
(ユキにされる時と、違う)
 この人に抱き着かれていると、とても嫌な感じがする。
 夢路は突然抱きしめられたことに対する羞恥心よりも、好きでもない男に抱きしめられたことに対する不快感が渦巻く。同時に恐怖心に支配され、振りほどくことも嫌だと言葉を発することも出来ない。
 それをどう受け取ったのか、男は夢路の肩に埋めていた顔をあげ、ゆっくりと夢路の顔に近づけてくる。
 キスされる。
 そう脳が判断し、夢路は抵抗をしようとするが、男はがっしりと夢路の両頬を掴んで逃げられないようにしてしまった。
(……ここは特別な人にって、決めてたのに……)
 男の鼻息が頬にかかり、さらに不快感が加速する。こんなの、嫌だ。でも、抵抗できない。
 夢路の目尻に涙が浮かび、グッと固く目をつぶる。

「ノゾミさんっ!」

 扉が壁に激突し、盛大な音を鳴り響かせるのもお構いなしに、スノー・ラビットはカラオケルームに躍り出た。
 そして、目の前で夢路に無理矢理キスをしようとしている男の姿を見て、数瞬意識が飛ぶ。
 気が付けば、足元に男が転がっていた。
 何かが倒れるような音を聞いて、夢路が驚いて目を開くと、そこには床に横たわる男と男を睨みつけるラビットの姿があった。
「……スノー、くん?」
 ふと夢路にラビットが視線を送ると、どうやら夢路は無事のようだ。
無事だったという安堵とともに、もう一度激情が湧き上がる。
許せない。許さない。
 ラビットは無言で男に近づき、思い切り胸倉をつかみあげた。
 許さない、という言葉が脳内を駆け巡り、ラビットの右腕が拳を握って振りかぶる。
 しかし、ラビットが振りぬこうとした右腕は男の顔面に突き刺さることなく、振りかぶったままの状態で鎮座していた。
「……なんで止めるの?」
 腕に必死に縋り付く夢路を肩越しに見やって、ラビットは問う。
「だめ、です」
 か細い声でつぶやき、夢路は首を振る。
「だってこの人は、ノゾミさんを……っ!」
 激情に駆られたまま夢路に振り返るラビットの目に飛び込んだのは、身体を打ち震わせながらも必死にラビットの腕を抱きしめている夢路の姿。
「ユキが悪くなっちゃう、から」
 夢路の必死な様子にラビットは男の胸倉を離し、男はべちゃりと地面に倒れ伏した。



 うつむき加減の夢路に、ラビットは優しく触れ、おそるおそるといった調子で抱きしめる。拒絶されることは、なかった。
「……怖い思いさせてごめん……ごめんね……」
僕が遅刻しなければこんなことにならなかった。謝っても謝り切れない。
「謝るのは私の方です。私が、断れなかったから」
 涙声で縋り付くようにラビットの腰を掴む夢路。小さく嗚咽を漏らす身体は、ラビットの腕の中で震えている。
「……怖かったです」
 もし着くのがもう少し遅かったら……。想像しゾッとする。
 ぎゅっ、とさらに強く抱きしめて、ラビットは夢路の髪に顔を埋めた。
 抱きしめてくれたラビットの暖かさに落ち着いた夢路は、そう思ったことに赤面。恥ずかしくなり身を離そうと、
「も、もう大丈夫です……ありがとう、スノーくん」
 けれど、ラビットは夢路を固く抱きしめたまま離さない。
「……まだ駄目」
 まだ、さっきの男の臭いがする。
だから――夢路の匂いも感覚も僕で上書きするよう抱き込む。






☆吉坂心優音 五十嵐晃太 ペア☆

 五十嵐晃太は、ある事件に巻き込まれて帰りが遅くなっていた。
「あぁもう何でこないな時に事件が……」
 悪態をつく晃太の携帯がバイブし、苛立たしげに晃太は通話をつなぐ。
「……は? みゆが攫われた、やて……?」
 報告を聞き、晃太は無表情となり、続いて怒気を孕んだ呟きを漏らす。
「ほぉそいつはよっぽど死にたいんやなぁ」
 呟いた晃太の表情は、魔王な微笑みを浮かべていた。



 案内された部屋は、薄暗い照明のカラオケルーム。
 部屋に入って、吉坂心優音はいままで感じていた危機感が確信に変わり、咄嗟に退室しようとする。しかし、
「あっあのぉ、あたし、やっぱり戻りま……っ!?」
 男は心優音の手を掴んで、部屋の中へと引き寄せた。
「手、握られてときめいちゃった?」
「す、少し、驚いただけ、ですからっ」
「怯えてるの、可愛いね」
 舌なめずりした男が、ぐいっ、と強く心優音を引っ張り椅子に押し倒した。
「……ひゃっ!?」
 倒された心優音の服がはだけて、きめ細やかな肌が露出する。男は露出した腹部を舐めまわすように撫で、心優音の反応を確認する。
 漏れそうになる声を右手で抑え、反対の手で男の手を振り払おうとするが、敵わない。
「感度いいね」
 荒い鼻息のまま、男は心優音の服をゆっくりとたくし上げて行き、胸部部分に手を忍び入れて、二回三回と握る。
「ちょっ、やめっ……!」
 好きでもない男に身体を触られているという事実に不快感が駆け巡り、全身が総毛立つ。
 血走った眼に、伸びた鼻の下。男が自分の唇を舐めった時、次の男の行動が予測できてしまった。
「ひっ、ゃぁっ!」
 顔を背けて逃げようとするが、後頭部に手を回され顔を逸らすことも出来ない。
「ちょっ止めてくださいっ!」
 がばっと抱きしめられ、背中に回った手が何かを探すように蠢いている。
 必死に抵抗するが、力が思った以上に強く振りほどけない。男の顔が次第に近づき、鼻息がかかる距離まで顔と顔が近づいた。
(嫌っ助けてっ晃ちゃんっっ!!)

 ガァァアァンッ! と盛大な音が入り口付近から発せられ、男がそちらに視線を移す。
 見ればひしゃげた扉が、壁にもたれ掛かっていた。
 現れた晃太の鬼気を孕んだ視線に、男は「ひっ」と呻き声を漏らす。
 とても人に向けるものとは思えない殺気と鋭い睨を効かせ、晃太は殴りかかる――が、その拳は突き刺さることなく寸止めされる。
晃太は男の背後に素早く周り込み、腕を捻上げた。
そうして、耳元で、
「……ワレ何やしてんや? 俺の恋人に手ぇ出すってかふざけてんのか、や゛?」
 晃太は男の腕をさらに締め上げる。呻き声がさらに漏れるが、情けは一遍も介在していない。
「死にてぇやったらお望み通り殺ってやるねんけどってみゆを泣かせるとかめっさ死にさらせ取り敢えずぶっ殺す答えは聞とらん!」
 高速で捲くし立てられて、男は恐怖のあまりにその場で卒倒した。



「ふぇぇっ怖かったよぉっ……晃ちゃん助けてくれて有難う……」
 溜めに溜めた涙を零れ落ちさせながら、心優音が晃太に抱きつく。
「よしよし、もう大丈夫や」
 先程までと同じ人間とは思えないほど優しい表情で、晃太が心優音の背中を撫でる。
「俺のせいで御免な?」
 もし遅れていたら、と思うと背筋が凍る。今でもあの男を殺してやりたいとさえ思うのに、あれ以上のことを心優音がされていたら、晃太はあの男を本当に殺してしまっていたかもしれない。
 黒い感情を頭の隅に追いやって、晃太は微笑む。
「ほな家デートに変更しよか。まったり過ごそう」
「うん、行く」
 心優音はそう呟き、涙目の上目使いで晃太に問う。
「だから泊まってって良い……?」
 この表情は、自分にだけ見せる心優音の表情。
 他の男にどうされようとも、心優音はこんな表情は浮かべない。
 晃太はやや照れつつも笑顔を浮かべて、
「聞いてみてからな」
 と返すのだった。






☆リヴィエラ ロジェ ペア☆

 リヴィエラと買い物に来ていたロジェがふと横をみると、そこにリヴィエラの姿がなかった。
「――リヴィエラ?」
 リヴィエラの姿が見当たらない。
 ロジェは、慌てて草の根を掻き分けるかのように探し始めた。



 店員が案内したのは、カラオケルームの中でも薄暗い部屋。
「わ、私、やっぱり帰りますっ」
 男の不穏な気色に耐えられなくなったリヴィエラは、ついに逃げようと覚悟を決めるが、
「そう言わずにさ、ほら、一緒に気持ち良くなろ?」
 吐き気を催すような言葉を吐きながら近づく男に抱きつかれ、椅子に押し倒されてしまった。
「嫌、やめてくださいっ!」
 男は抵抗するリヴィエラの両腕を片腕に掴み、ぐいっと上に持ち上げる。
 もがくリヴィエラの髪を手に乗せて鼻に近づけ、そのまま男がすぅ、と息を吸い込んだ。
「お願い、離して……!」
 抵抗しつづけるリヴィエラだが、男の力に敵わず手を振りほどくことも出来ない。
 男はリヴィエラの頬を撫でるように手を添え、目を剥いて嫌がる様子が楽しいとでも言うように、ゆっくりと顔を近づける。
「いやぁぁッ、ロジェ……ロジェ様ぁぁッ!」
 リヴィエラが断末魔のような悲鳴をあげ、ロジェの名を呼ぶ。
 カラオケルームにリヴィエラの澄んだ声が響き渡り、それに合わせるようにして。

 「……何をしている?」

「ロジェ……様……?」
 開け放たれた扉の向こうには、肩で息をして心配と焦燥の色を浮かべたロジェの姿があった。
 硬直する男と、うるんだ瞳で両手を吊るされているリヴィエラを見て。
ロジェの表情が鬼のような形相へと移り変わり、激昂の色を爆裂させる。
 ロジェは大きく振りかぶった拳を、男の顔面に突き刺した。
「貴様ぁぁッ、俺の女に手を出そうとしていたのはこの腕か!? この口か!」
 壁に衝突した男は続けざまに地面に突き飛ばされ、伏した。
 ロジェは無様に這いつくばる男に殺意の視線を向けたまま、剣の柄を握る。
 はっとしたリヴィエラがロジェの腰に抱きつき、
「ロジェッ、もう良いんです、もう止めてください!」
 振り返るロジェに首を振りながら、さらに静止を願う。
「私は、私は大丈夫、何もされていませんからっ……!」
 お願いです、とリヴィエラは両目から透明な滴を伝わせながら。
「オーガのようになってはダメ……!」
 人間を殺せば、やっていることはオーガと同じだ。
 リヴィエラと一緒に居る人間が、そんな風になってはいけない。ロジェはそう考え――剣を収めた。
「……この、バカ! 君の唇にキスをして良いのは俺だけだ」
 しかし、これだけは譲れない。
 ロジェは涙を浮かべるリヴィエラを優しく抱きしめて、――キスをした。



「……逆探知したんだね、流石はウィンクルムだね!」
 仄暗い印象を覚える青年の前に立つロジェとリヴィエラ。ロジェが青年の携帯端末を逆探知し、青年の居場所を突き止めたのだ。
「貴方は確か、以前の……」
 リヴィエラは青年を見て、ロジェの偽物が現れた時のことを思い出していた。けれど、湧き上がる邪推を押し留めて、
「ううん、助けて頂いてありがとうございました」
 続いてロジェも、そっぽを向きながらではあるが、
「俺にはあんたが何者なのかはわからない。けれど……リヴィエラを助けてくれて悪かった」
 その様子にリヴィエラはクスリ、と笑う。
「うふふ、ごめんなさい。ロジェはただ、照れているだけなんです」
 二人の様子を見て、青年が愉しそうな笑みをこぼした。
「やっぱりウィンクルムは素晴らしいよ。もっと君達の愛を見せてほしいな」
「『ウィンクルム』じゃない、ロジェとリヴィエラだ」
 ロジェの一言に青年は笑みを深くして、
「そうだね、覚えておくよ。またね、ロジェ、リヴィエラ」
 踵を返して雑踏に消えゆく青年を見送って、ロジェとリヴィエラは手を繋いで買い物の続きに出かけるのだった。






☆桜水 桐子 アルフレート シェルリング ペア☆

 カラオケボックスに鎮座する桜水桐子は、「バッグが当たって具合が悪い介抱しろ」と言われてついてきた。
店員に案内されたカラオケボックスは、店員やトイレに立つ人が通らない一番奥の部屋。
どうやらこの男は、機種によってどこの部屋に案内されるのかを把握しているようだ。
男は部屋の明かりを薄暗く設定し、桜水の隣に腰をかける。
「気分が悪くなってきた」
 腰を抱かれ、身を寄せ合う形に無理矢理された桜水は、流石に近すぎると怪訝げにするが、男はしっかりと腰を掴んでいる。
 男は桜水の胸元に視線を這わせて、腰に回している手とは逆の手で桜水の手を握り、
「ちょっと、胃がムカムカするんだ、さすってくれ」
 そう言われて桜水は男のお腹をさすり、しばらくそうしていると、今度は男が桜水の手を再び握って、
「今度はこっちをさすって」
 と、さすってほしい部分の上に手を誘導する。
けれども、そこは介抱するといった行為をするにはおかしな場所だ。流石に抵抗する桜水だが、男は無理矢理触らせようと腕に力を入れてくる。
力に負け、触ってしまいそうになったその時、

「下衆野郎……トーコ様から即刻離れろ!」
 
 扉を蹴りつけて開け放ったアルフレート シェルリングが、男に殺意の視線を向けながら現れた。
 突如現れたアルフレートに桜水は、
「あら、アル! ちょうど良かった、この方気分が……」
 その言葉を遮るようにして、男がぐいっと桜水の腰を抱き寄せ――、
「子供はすっこんでろ」
 その一言にアルフレートは鼻で笑い、ゴミでも見るかのような視線を男に向ける。
「その子供黙らせてから言え××低脳猿が」
「何?」
「発情期の猿みたいに、性欲も抑えられない猿は引っ込めって言ってんだよ」
 アルフレートの煽りに、男は桜水から手を離しアルフレートに近き、手を伸ばす。
 しかし、胸倉を掴もうとしたその手は空を切り、目の前からアルフレートの姿が消えている。桜水はその一部始終を目撃していたが、アルフレートが男の背後に立つまでの行動がまったく視認できなかった。
「高、括ってる?」
男が硬直して視線を下に下げるとそこには、アルフレートが常に携帯している仕込み刀「時雨」が添えられていた。
桜水は、微笑むアルフレートが怒っていないと安心しているので、どうやら時雨には気がついていないようだ。
「強制わいせつ罪、それにこの状況なら説明次第で正当防衛」
 A.R.O.A.の支援として、ウィンクルムが正当化されることが多い。それに、今回は男の方が神人に手を出している。確実に男の有罪は免れないだろう。
「しかも、子ども相手にやられたなんて……笑えねぇけど?」
 耳元で囁くように呟いているせいで桜水には声が届いていないが、男には脳に反響するかのようにしっかりと届けられた。
「こ、子どもだろうが人に手をかければ犯ざッ!?」
 アルフレートに急所を蹴り付けられて、男が地面に這い蹲る。
 一方的な喧嘩に、桜水が心配そうに視線を送るが、アルフレートが背中で遮っている所為で何が起こっているかがわからない。
 アルフレートは這い蹲る男に時雨を向けながら、耳元でもう一度囁く。
「今後2度と誰にも不埒な事はしないと誓いなよ。じゃなきゃ……無くなっちゃうよ?」
 男は顔面を真っ青にしながら、局部を押さえてふらふらしつつも逃げ帰っていった。



「最後に何を話していたの?」
 桜水が、ふとした調子でアルフレートに問う。
「まだ具合が悪いですか、と訊いてました。でも寝ていれば治るそうです」
 まるで天使のような微笑を浮かべて、アルフレートが言い、ぱああっと桜水が、
「そう、では安心ね!」
 と微笑んだ。
 アルフレートが微笑みながら桜水の手を引く。
「さ、行きましょう!」
そう言って二人はお互いに笑顔を浮かべて、手繋ぎ、デートという名の買い物へと向かうのだった。






☆アラノア ガルヴァン・ヴァールンガルド ペア☆

 薄暗いカラオケボックスで、アラノアは強烈な後悔に襲われていた。
 男のアラノアを見る目が、とても気持ちが悪いのだ。気がつけばアラノアの胸や太腿、唇を眺めている。
(何、この人……怖い……!)
精霊との落ち着きのある空間が好きなだけに、いやらしい視線を向けてくる男の態度が受け付けない。
そう考えていると、突如として男がアラノアの太腿に手を這わせた。
「な……何ですか……?」
 這う手を弾くと、男は、
「まぁまぁ、ちょっとくらいいいでしょ?」
 アラノアの手を掴んで、男は強引に太腿を触りだす。ぞわぞわっ、と背筋に虫が這うような感覚に襲われ、男を突き飛ばした。
「っ……や、やめてくださいっ」
 アラノアは男が椅子からへたり落ちている間に立ち上がり、扉へと駆ける。
(やっぱり折れるんじゃなかった! 逃げないと!)
しかし、腕を掴まれ振り返ると――拘束するように抱き付かれてしまった。
「ひぃっ……!? や、やっ……離して下さいっ」
身を捩ったり身体や顔を押し退けようとするが、男に身に着けていたチョーカーを引っ張られて引き寄せられる。
「っ……ひゃぁっ……?!」
 男の顔が迫り、嫌な呼吸音が近づいてくる。
「……~~~っ!」
 思わず目を瞑って、現実逃避をするアラノアだったが、
「なんだおまヴェッ!?」
 ドンッ、地面に叩きつけられる音がし、アラノアが目を開けた。
「……貴様か、俺のパートナーを連れ去ったのは」
 抱きついていた男の荒い息遣いも、嫌な体温も感じない。
 目に入ってきたのは、男を床に叩きつけているガルヴァン・ヴァールンガルドの姿。
「……え? ガルヴァン……さん……?」
 ガルヴァンは苦悶の声を上げる男の胸倉を片手で掴んだ体勢から、ぐいっと男を持ち上げて壁に叩き付け、締め上げる。
 男の耳元でアラノアには届かない声量で、ガルヴァンが囁く。
「貴様、こんなことをしてただで済むとは思っていないだろうな? 俺を敵に回し、あまつさえ逆鱗に触れることがどういうことかわかるか」
 落ち着きがありつつもドスのきいた声色に、男は目を見開いて歯の根を振るわせる。
「ここは、所謂“呼んでも助けが来ない場所”……というやつだったな?」
 そう呟かれ、男は血の気を失せさせて暴れ始める。しかし、ガルヴァンの手からは逃げられない。
 醜く暴れる男に、ガルヴァンは角部分使い頭突き。鈍器で人を殴るかのような音が鳴り響き、男が頭を抑える。ガルヴァンは苦悶の声を上げる男を床に投げ、起き上がる前に胸のあたりを踏みつけた。
「あがっ……!?」
 ガルヴァンはアラノアを横目でちらりと確認してから、
「……運が良かったな。“この場にオーガ用の武器が無くて”」
 その一言と、ガルヴァンの本気の殺気を身に受けて。男は泡を吹いて意識を失った。
 ガルヴァンは、つまらなさそうに男を一瞥し、視線をアラノアに移す。
「大丈夫か?」
 心配そうに声をかけるガルヴァンに、アラノアは俯きがちに呟く。
「ごめん……迷惑、かけて……」
「……何故謝る。そもそも俺が遅れたのが原因だというのに……」
いつもより仕事が立て込んでしまい、急いで待ち合わせ場所に向かっている途中連絡があって、ガルヴァンはここに向かってきたのだ。
「だって、私が断り切れなかったせいで、ガルヴァンさんに余計な心配掛けちゃったから……」
 アラノアが申し訳なさそうにする様子に、ガルヴァンは、小さく溜息をつき、
「……ともあれ、無事でよかった」
 ガルヴァンがふと笑い、アラノアの頭をポンと撫でる。
「あ……」
 笑みを溢したガルヴァンを見て、アラノアの心が温かい気持ちに包まれる。
「……う、ん……助けてくれて……ありがとう……」
 ガルヴァンに撫でられるのは、とても心地が良い。
アラノアはやっと落ち着きを取り戻して、少し顔を伏せながらだったが微笑を浮かべた。






●ゴミはゴミ箱に

 悪臭を放つゴミ処理場に、青年は男を運んでいた。
 縄で縛られ動転している男に、青年は微笑を浮かべたまま言い放つ。
「警察じゃ裁き切れない悪ってさ、やっぱりあると思うんだ」
「な、なんでこんなところに連れて来るんだよ!」
 青年は答えずに、男を破砕機へと繋がるレールの上に蹴り落とした。音を立ててゴミを破砕する機械が迫る。
「ひぃっ!? た、助けてくれ!」
「助ける? ゴミはゴミ箱に捨てるものでしょ?」
 青年はつまらなさそうに踵を返して、ゴミ処理場を後にする。
 素晴らしい愛を見せてくれる、ウィンクルムを探すために。



依頼結果:大成功
MVP
名前:リヴィエラ
呼び名:リヴィエラ、リヴィー
  名前:ロジェ
呼び名:ロジェ、ロジェ様

 

名前:吉坂心優音
呼び名:みゆ、心優音
  名前:五十嵐晃太
呼び名:晃ちゃん

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター 東雲柚葉
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 11月04日
出発日 11月09日 00:00
予定納品日 11月19日

参加者

会議室

  • [5]夢路 希望

    2015/11/08-09:49 

    スノー・ラビットだよ。
    パートナーのノゾミさんが、変な男の人に連れて行かれたって聞いて……凄く心配。
    とにかく急がなきゃ……!

  • [4]吉坂心優音

    2015/11/07-17:12 

    晃太:
    久し振りの奴は久し振りやんなー
    初めましての方もおるみたいやな
    俺は五十嵐晃太言うんや
    改めてよろしゅう頼むな!

    ほぉ、俺のみゆを攫ったとか……
    死にたいんか、そいつ?
    ほならお望み通り殺ってやろうやないか……(殺気と目が笑ってない

  • [3]アラノア

    2015/11/07-15:44 

    ガルヴァン・ヴァールンガルドだ。
    パートナーのアラノアが連れて行かれたらしい。

    …アラノアは平凡な生活しか知らないと言っていた。
    オーガの事もそうだが、こういったトラブルにも縁が無かったのだろう。
    …さて、連れ去った男…どうしたものか。

  • [2]桜水 桐子

    2015/11/07-13:57 

    【アルフレート】
    こんにちは、はじめまして
    アルフレート・シェルリンクと申します
    僕のパートナーのトーコ様が攫われてしまったようで…
    すごく心配しています!
    あぁ早く急いで助けに行かないとっ!

    (下衆め!見つけたらタダで済ますものか!

  • [1]リヴィエラ

    2015/11/07-12:38 

    ロジェ:
    俺の名はロージェック・イクサリスという。ロジェで構わない。
    パートナーはリヴィエラという。どうか宜しく頼む。

    クソッ、リヴィエラを攫った男…只では済ますものか。
    彼女が危害を加えられる前に、あの青年の言うカラオケへ向かわなければ…!


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