さくらスイーツ祭り!(らんちゃむ マスター) 【難易度:簡単】

プロローグ

●訪れた春
 暖かな日差しに、ほどよく心地良い風が吹く。
その風に乗って、春の便りが窓からすっと入ってくる。
「おや、もうそんな季節なんだね」
窓からやってきた便りを手に取ると、白い服を着た青年はくすりと微笑んだ。

「んー…どうにかしてこの美しさを生かしたいなあ…」
 テーブルに置かれた春の便りをじっと見つめながら考えている青年に、後ろから声がかかる。
「先輩、何見てるんですか?…さくら?」
「そうなんだ、どうせなら綺麗な間に何かできないかな…って思って」
「なるほど…!俺にいい案がありますよ!」
大きく手を叩いた後、ノートを広げ大まかに描かれる【いい案】
それを見た青年の顔はみるみる輝いていき、書き上がる頃にはそれだ!と大声を上げた。

●さくらスイーツ祭り
 「春真っ只中!美しいさくらを見ながらコレをやるのは今のうち!」
そんなうたい文句が書かれたポスターは、街中の目立つ場所に貼られていた。
淡いピンクのカラーが目につく、とても可愛らしいポスター。
そこにはこんな内容が書いてあった。

「あなたの描いたさくらスイーツを実現します!皆で素敵なスイーツを作ってみませんか?」
 甘いものが好きな人には夢の様なその文字は、たちまち街中の女性を中心に広がっていった。
発案者は小さなスイーツショップ、それに多くの店が賛同する大掛かりなイベントとなった。
そしてポスターの下には、こんな事も書かれていた。


「あなたの想いを込めたスイーツ、愛しのあの人にプレゼントしてみては…?」

多くの女性がそこに書かれた一文を見逃しはしなかっただろう。
…今年の春は、とても甘く賑やかになりそうだ。

解説

●解説

スイーツショップが完全バックアップ!
貴方の描いたさくらを用いたスイーツで、甘く楽しいお花見をしましょう。
恋人と一緒に作るも良し、内緒で作ってプレゼントも良し!
春限定の素敵な思い出をスイーツと共に作りませんか?

・スイーツのどこかにさくらが使われている事
・大きさは手のひらサイズから、ワンホールケーキサイズまで
・材料は全てスイーツショップが負担!分からない所はスタッフが助太刀します!
・完成したら桜が舞う綺麗な場所でお花見しましょう。

以上を踏まえつつ、貴方の描いた素敵なさくらスイーツを教えてくださいね!
貴方にとって素敵な春でありますように。


ゲームマスターより


●GMから

はじめまして。
新人GMになりましたらんちゃむと申します!
春ですね、さくらが綺麗な時期はほんの一瞬だけですよ…!
私の地元は大雨やら暴風やらでもう緑がちらほらとしてます…。
ですが!まだ春は終わってません。
素敵なさくらスイーツを片手に、皆様とお花見を楽しめたらな…と思います。
これからどうぞ、よろしくお願い致します。

リザルトノベル

◆アクション・プラン

キアラ(アミルカレ・フランチェスコ)

  ・動機
さくらスイーツのポスターのプレゼントの記述を見て「あ、精霊にでも渡そうかな」と思いついたので参加

・菓子
サプライズで渡したいので精霊は居ない

作りたいのは桜風味のメレンゲ二種
塩抜きした桜の葉を刻んで入れたもの
桜パウダーと桜リキュールを入れたもの

桜の花の形に絞り出して見た目も桜らしく
大きさはだいたい一口サイズほど
小さめな分、数は少し多めに

・お花見
お菓子をお互い分けつつ、色々話す

ただ、仲の良い若い子達を見るのは好きなため、他の人のやりとりをほほえましく見ることも

・後
他の皆様に
「今回は楽しかったよ、あんがと」
「こういう場になるか戦場にになるかは分からないけど、また会う機会があったらよろしくね」



油屋。(サマエル)
  サマエルの奴、任務以外はずっと自分の事務所に籠ってるんだぜ?
外はこんなに気持ちが良いのにもったいねぇよな
つー訳でサプライズ、皆でお花見大作戦!

作る物:桜のミルクレープ

初心者でも分かり易いものを作ろう
生クリームに桜リキュールを、生地には桜葉パウダーを
焼き方や分量、コツ 店の人にアドバイス貰いながら作るよ
皆が食べやすいように切り分けて
飾り付けは桜の塩漬けを上にのせる

誰かのために料理するって初めてかも
どうか失敗しませんように!
…あと、アイツに「美味しい」って言って貰えますように

おずおずと自分が作った物を差出し
「こ、これアタシが作ったんだけど 食べてくれる?」
思わず頬が緩む。また来年もお花見したいな




かのん(天藍)
  お菓子作りと合わせて、天藍をお花見に誘いましょう
ただ・・・、天藍、甘い物は大丈夫でしょうか・・・
(お酒が好きなことは知っているので少々不安、辛党かも?)

プレゼントを渡すというよりも、一緒に作って食べるようにしたいです

桜スイーツ
小さく丸めた桜餡を薄く四角い形にのばした求肥で包んで、上に桜の塩漬けを一輪
上記の和菓子を入れた菓子器の空いた部分にエビの粉で桜色にし、桜の花びらの形に整えた薄い塩味のあられを散りばめる

たっぷりお湯の入ったポット、お茶の葉、カップに急須等道具一式持って暖かな日差しの中お花見に

他のウィンクルムの皆さんと今回のお菓子を持ち寄って、お互いに試食しながらのお花見ができると良いです



日向 悠夜(降矢 弓弦)
  そういえば、今年はお花見してなかったなぁ…
折角だから降矢さんを誘って行こうかな?
丁度企画が催されているみたいだからね

私用の黒いエプロンとか色々用意してと…

会場の前で待ち合わせだね
あ、降矢さん!こっちだよ~
エプロン、持ってきた?
…似合いそうだね

今回は「桜カステラ」を作ろっか
簡単簡単!分からない事はスタッフの人に聞けばいいんだだから、ね?

桜色を綺麗に出したいのよねぇ
綺麗に仕上げる為のポイントをスタッフの人に聞こうかな?

さて、無事出来上がったらお花見しながら食べるんだけれど…
大勢で食べた方が楽しいし、美味しいじゃない?

いやあ、皆上手だね…
桜も綺麗で、美味しいものも食べれて…
ふふ、幸せだねぇ


雨宮 沙夜(白影)
  【心情】
お菓子作り…上手くできるといいけど…

【行動】
お菓子作りには、シロさんと一緒に参加するわ。
お菓子は…プリンに挑戦してみようかしら。
桜風味のピンク色のプリン。上にホイップクリームを少し添えて、飾り付けに桜の花を1輪。
分からない所はスタッフさんに教えてもらいつつ、シロさんにお手伝いをしてもらうわ。

「シロさん、ホイップの準備をしてくれる?」

お菓子が出来上がった後は、他の参加者様と一緒にお花見に参加します。
出来上がったプリンを皆様にお配りした後は、シロさんにもプリンをあげるわ。
シロさんのはホイップと桜を増量した特別なのをプレゼントしようかしら。

「今日は手伝ってくれてありがとう。凄く助かったわ」


○本日は晴天なり!
 午前中にも関わらず、そこは人気がいつにも増して多くなっていた。
街中に貼られた「さくらスイーツ祭り」の開催日は、今日なのだ。

「それではみなさん!受付でナンバープレート貰ってくださいねー!」
「同じ番号のスイーツショップは入るようお願いしまーす!」

staffと書かれたネームプレートを首にかけた数人のパティシエ達が人混みに負けじと大声を出す。
参加者の人たちは受付を済ませると、一人、また一人と指定のショップへ入っていった。
「いやー、晴れてよかったよね!」
「だね!午後まで晴れるみたいだし……俺達も頑張ろうか!」
張り切るスタッフはにこりと笑い合うと、深呼吸し、更に大きな声を出した。
「さくらスイーツ祭り参加者の皆さんは!まずこちらへお願いしまーす!!」

○それぞれの個性
「320番の皆さんはこっちですよー!……えーといち、に……全員っすね」
 受付を済ませ指定された場所へ来ると、シンプルなスイーツショップ。
出迎えたのは青年のパティシエが二人だった。
「皆さんのサポートさせてもらいます、どうぞよろしく」
にっこりと微笑むスタッフは、奥へどうぞと全員を調理場へと案内した。
 普段使う事のない器材、大きすぎるオーブン、沢山入る冷蔵庫。
いろんなものが置いてあるそこへ案内され、スタッフの声が少し響く。
「それじゃあ始めましょっか!皆さんのスイーツ、完成させましょう」
頑張るぞー!と片手を上げるスタッフに合わせ、一同は腕を天井へと突き上げた。

○美味しさの秘密
 開始してから数十分、調理場には甘い香りが漂っていた。
「すみません、ちょっといいですか?」
「はい、なんでしょう」
声をかけたのは日向悠夜だった。黒いエプロンをした彼女はスタッフへ声をかける。
「綺麗に仕上げたいんだけど、何かコツってありますか」
「そうですね~……えっと、お二人はカステラでしたね」
確認の為にスタッフが資料を確認すると、割烹着を着た男性……降矢弓弦は目を丸くした
「えっ、カステラって作れるものなのかい……?」
「何作ってると思ったの……」
 材料を見る限り、最終段階の一歩手前まで捗っているようだ。
生地をじっと見たスタッフは、二人に向かって微笑みながら説明を始める。
「砂糖を多めに使ってるので、焼き加減には十分な注意が必要ですね、そこは俺達もお手伝いしますのでご安心ください!」
「焦げやすいのか…なるほどね」
生地を混ぜながら頷く日向と降矢に、スタッフは言った。
「あと、食べて欲しい人にどんな顔して欲しいか考えながら作ると、美味しくなりますよ」
「え?…あっはは!またそんな迷信紛いな」
「本当ですよ!これは、俺達パティシエがいつもしている事です」
「そうなんだ…どんな顔、して欲しいか…」
日向が口に出して言うと、ぱちりと降矢と目が合う。
驚くものの、二人はくすりとほほ笑み合った。
…少しだけ、頬の色が変わったのは気のせいだろうか。

焼く前にまた見に来ますと去ったスタッフに、二人は小さく頭を下げた。


○難しいけど
「牛乳を少しずつ少しずつ入れて混ぜます…そう、少しずつですよ?」
「全部混ぜたらダメなのか?」
「綺麗に馴染ませる為には、何回かに分けて混ぜるんです」
 スタッフに教わりながら、牛乳を少しずつ入れ混ぜていく油屋。
細々した作業の中、思わず全部思い切ってやりたくなる衝動に駆られるも、スタッフに言われぐっとこらえる。
丁寧に作れば作るほど、食べて貰う相手に美味しいと言ってもらえる為の段階だと思えば、どうってことない。
「…楽しく作るのも、コツの内ですよ」
「え?」
突然そう言ったスタッフに、油屋。は首を傾げる。
スタッフは微笑むと、油屋。にも同じく笑うように促した。
「難しい顔して作るお菓子は、硬くなってしまいますから…スマイル、スマイル」
折角のミルクレープですから。
そうスタッフが言えば、サプライズを仕掛ける相手の顔が脳裏に浮かぶ。
「…スマイル!」
「素敵な笑顔ですね!…じゃあ早速焼きましょうか、根気が必要な作業になりますよ」
「根気なら十分持ち合わせてるぜ!」
ぐっと腕を上げる油屋。に、スタッフも同じポーズをして、頑張りましょうと意気込んだ。
「薄く焼いて…そうそう、それを繰り返していきましょう」
 単純だけど、ミスをしやすい作業。
眉間にしわが寄り添うになるものの、スタッフのコツを思い出してはにっこりと笑って作る。
事務所に篭もりっきりの彼に、美味しいと言ってもらえるように。

「サマエル、美味しいって言ってくれるかな」

○心の現れ
「…硬いんだが、大丈夫なのか」
「もう少し混ぜていくと、柔らかくなりますよ」
 求肥を作る作業を天藍、中身の餡を作るのをかのん。
お互いの作業を見ながら、イメージしたスイーツを作り上げていく。
「あとはどうすればいい?」
「求肥も出来上がりましたし…包んで飾るだけですよ」
そう言ったかのんは器用に桜餡を包んでいく。
白い指がやんわりと動き、丁寧に包まれていく過程を眺めていた。
手のひらに乗せられたそれを天藍へ向け、こんな感じですとかのんは笑う。
「…少し不格好になるかもしれん」
綺麗に包まれたそれを見て、ハードルが高いを思った。
通りかかったスタッフに、綺麗に包める器材は無いかと聞こうとするも、スタッフはグッと拳を作る。
「物は試しっすよ!こういうのって、人の心や気持ちが現れるって言うじゃないっすか」
そう言ったスタッフに、天藍はアバウトだとため息をこぼす。
 …心や、気持ちの現れ。
綺麗に包まれた、かのんが作った和菓子を見て、天藍はくすりと笑った。
「まずかったら修正してくれるか」
「大丈夫ですよ、頑張りましょう」

隣で微笑む、愛しい人への思いを、手のひらに乗せた小さな菓子で形にしていく。

○浮かぶ顔
 メレンゲを二種類完成させ、クッキングシートに絞っていくキアラに、スタッフが声をかける。
「お菓子作り慣れてますね」
「どーも、あまり作った試しがないんだけどね」
にこりと笑ったキアラは、またクッキングシートにメレンゲを絞っていく。
作った試しがないと彼女は言ったが、スタッフはその器用さに驚くばかり。
「綺麗なさくら型ですね、僕も一ついただきたいくらいです」
そう言うと、顔を上げて本当に?とキアラは尋ねた。
「本当ですよ!だってこんな素敵なお菓子見るだけなんて寂しいじゃないですか」
「…そう思うかい?」
「はい!えっと…サプライズプレゼントでしたね!贈られる相手が羨ましいです」

 社交辞令…ではなく、スタッフである彼の率直な気持ちなのだろう。
スイーツに携わる彼からすれば、一般人である彼女たちの案も作業工程も刺激的なものなのだ。
目をキラキラさせる彼に、キアラはふっと笑みを浮かべ言った。
「多めに作ってあるから、よかったら後で食べに来ればいいよ」
「ほんとですか!…あ、しまったつい」
嬉しそうに笑ったスタッフに吹き出して笑えば、スタッフはすみませんと頭を下げた。

「また見に来ますね、焼き加減など気になったら声かけてください」
「ああ、ありがとう」
他の参加者の様子を見にその場を去るスタッフを見て、キアラの脳裏にふとよぎる…贈る相手の顔。
 どんな顔をするだろうか、食べるだろうか…唐突に浮かぶ疑問。
だが彼女はふっと笑い、新しいクッキングシートに一つ、また一つとさくらを描いていった。

「気になるけど、まあすぐ分かるだろうね」


○あとは待つだけ
 スイーツ作りが始まって数時間、完成も間近になってくる頃合い。
遠目から参加者が困っていないか眺めていると、スタッフの肩が後ろから叩かれる。
振り返れば、自分よりも少し高い男が立っていた。
「聞きたい事があるんだけど、来てもらってもいいか」
「もちろんっす!えっと…あのテーブルは…ああ、プリンっすね?」
スタッフがそう言えば、白影は大きく頷いた。
聞きたい事があったのは、どうやら一緒に参加していた女性の方らしく、彼は呼びに来てくれたらしい。
テーブルへ向かうと、小柄な女性…雨宮沙夜は首を傾げていた。
「どうしました?」
「あ、実は生地に泡が出てしまって…出来上がりが綺麗にならないですよね?」
 プリン液の入ったボールには小さな気泡が浮いていた。
このままでは彼女の言った通り、綺麗なプリンは完成しないだろう。
寂しそうにプリン液を見つめる沙夜に、白影は大丈夫だからと肩を叩いた。
「彼の言うとおり、大丈夫っすよ!まずはもう一度裏ごしから始めましょう」
スタッフがそう言うと、二人ははいと返事を返した。
息ピッタリに帰ってきた返事に、スタッフに笑みがこぼれた。

「裏ごし、終わりました」
「それじゃあ次は…このキッチンペーパーを液の上に乗せます」
スタッフがキッチンペーパーをプリン液にそっと乗せるのを、二人はじっと見ている。
時々小さく頷いて、気泡が無くなる理由を聞くと納得したのか大きく頷いたりもしてみせた。

「あとはこれを真ん中から摘んで、ゆっくり持ち上げるだけっす!やってみましょっか」
「はい!」
「お嬢、頑張ってください!」

キッチンペーパーを真ん中から、ゆっくり上へ持ち上げ離していく。
口をきゅっと閉じて集中する沙夜を見て、白影はじっと沙夜を見ていた。
無事、するりと離れたキッチンペーパーをトレイに置けば、プリン液は泡の無い綺麗な液体になっていた。
「…できた!」
「凄いなお嬢!」
「お見事っす!あとは容器に流して蒸すだけっすね」
スタッフが用意した蒸し器をじっと眺める沙夜。
その隣で同じ位置まで腰を下ろし、目の前で完成していくプリンを二人でじっと見つめていた。
横を見れば、ぱちりと目があって。

「…シロさん、ホイップの準備をしてくれる?」
「はいよ、お嬢」

気恥ずかしくなるものの、飾るホイップを白影に頼む沙夜。
そわそわとする二人が次に口を開くのは タイマーが鳴った時だろう。

「…あとは待つだけ」
「あとは待つだけだぜ」



○出来上がり

「最後に大きめに作ったクレープをかけて…」
「……できた!!」
「おめでとうございます!」
 生地の大きさがバラバラになってしまい、気落ちしていた油屋。だったが最後に乗せた一枚で綺麗なミルクレープを完成させた。
出来上がった嬉しさに大きな声を上げれば前のテーブルで調理をしていたキアラと目が合った。
「おめでとう、よかったじゃないか」
「え!あ…ありがとうございます」
恥ずかしそうに笑う彼女に笑顔を向けるキアラは、焼きあがったメレンゲを包装している最中だった。
「サプライズの皆様はもうそろそろ呼び出して大丈夫ですよ!」
スタッフの言葉に時計を見て、キアラと油屋。は連絡をしに外へ出た。

「緊張するなー…綺麗に焼けてるといいけど」
「大丈夫だと思うよ、取り出してみようか」
 崩れないようにそっと持ち上げ、ゆっくりとお皿に下ろしていく。
ストン、と落ちたカステラは、綺麗な桃色の可愛らしい出来上がりになっていた。
「うん…桜の、いい香りだ」
「やったね降矢さん」
にっこりと微笑む彼女に、降矢も笑みをこぼした。

 完成したと声があがっていく中、かのんと天藍は外へ出る準備をしていた。
綺麗に包まれた和菓子を、天藍はかのんに渡す。
「折角綺麗にできたんだ、形が崩れないようにそれだけは、かのんが運んでくれ」
「分かりました、他はお願いしてもいいですか?」
そう聞くと小さく頷いて、天藍は荷物を持って外へ出た。
かのんは他の参加者に、先に行って待ってると告げ天藍の後を追った。
どうやらサプライズの参加者はもう既に相手と合流する為に向かったようだった。
 先程まで賑やかだった調理場が、ゆっくりと静けさを取り戻していく。
一人、また一人と外へ出ていき…最後に残ったのは白影と沙夜だった。
「お嬢?皆行っちゃったぜ?」
「待って、これだけ…よし、出来上がりよ」
最後のプリンにホイップを乗せ終えた沙夜は白影と共に外へでた。
しん、と静まる調理場に残ったのは、スタッフの二人だけだった。
腕をまくる二人は、楽しそうに笑っていた。

「さーて、後片付けしますか」
「10分以内に終わらせて、僕達も向かいますからね」
「まだまだ終わらないっすよー…さくらスイーツ祭りはこれからっす!」

 大体の片付けは参加者自身がしたので、普段よりは早く終わらせる事ができる。
だが二人にはそれ以前に、企む何かがあるようで…?
慣れた手つきで調理場の清掃にとりかかる二人は、楽しそうにしていた。


○春の贈り物

「皆さん!こっちですよ」
 かのんが後からやってくる参加者達に手を振る。
一際大きな桜の木の下に、数枚のレジャーシートが敷かれていた。
各々が座れば、皆が初めに口にしたのは、お互いを労う言葉だった。
会話すら無かったものの、頑張っていたのは分かっていた。
「それじゃあ…お花見、はじめましょうか」
かのんがそう言えば、さくらスイーツ祭りの大一番 花見が始まった。


「桜がキレーな場所があってねぇ、良かったらちょいと一緒にお花見でもしないかい?」
 突然そう呼び出されたアミルカレ・フランチェスコはキアラの隣に座っていた。
花見でも、なんて言われてやってくれば大人数で行われているではないか。
呆然とその流れを見ていると、キアラに小さな袋を渡された。
可愛らしいさくらの形をした焼き菓子が入っている。
「…俺に?」
「ああ、プレゼントだよ…皆にも作ってあるから、よかったら食べてね」
 キアラが差し出した袋に一同目を輝かせて受け取る。
わいわいと盛り上がる中、受け取っていた袋を開け、一口食べると
他の人に渡された菓子と自分のが少し違う事に気づいていた。
ほんのりとリキュールの香りがする、上品な甘さに思わず笑みがこぼれた。

「こういう場は二人きりよりさ、人多い方が楽しいと思うんだよねぇ私は」
「…まあ…キアラ」
隣に座るアミルカレに視線を向ければ、あっという間に減っている袋が目についた。
気恥ずかしいのか、少しだけ目を逸らした後、アミルカレはふっと笑ってみせた。
「美味い」
「それはよかった」
美味しそうに食べるアミルカレと、目の前で楽しそうに話す参加者の仲間を見て、キアラは来てよかったと思った。


「…あ、あのさサマエル」
 事務所で仕事をしていたサマエルを呼び出した油屋。は、彼の隣でそわそわとしていた。
彼女が次に言う言葉を待っていれば、言葉より先に、ソレは目の前にずいと出された。
「こ、これアタシが作ったんだけど 食べてくれる?」
「…俺に?」
サマエルの顔を見ず、大きく首を縦に振る油屋。
食べやすいようにとカットされたミルクレープを、サマエルは油屋。から受け取り一口くちにする。
「……」
「…お、美味しいか?」
 不安そうにサマエルを見る油屋。に、サマエルはただ黙っていた。
二口目を口に運んでみせれば、油屋。の顔はどんどんと不安に曇っていく。
そんな彼女に、サマエルはにこりと微笑んでみせた。
優しげなその表情に、油屋。の頬がほんのり色づく。
「美味しいよ、早瀬」
「っ…本当か!?やった…!」
あまりにも嬉しかったのか、両手を上げて喜ぶ油屋。をサマエルはくすりと笑って見ていた。
やわらかな風に乗って、ミルクレープの上にひらりと花が落ちる。
ふと見あげれば、空を隠してしまうほどの桜に、サマエルは息を呑んだ。
「…見事な桜だ」
「な、私もそう思う!」
隣で幸せそうに微笑む油屋。を見て、サマエルは自分の尻尾で油屋。の頬をつついてやった。


「賑やかだねー…参加してよかったよ」
「うん、そうだね…カステラも美味しいし」
「他の参加者さんからお菓子も貰えるなんてね!…んーっ美味しい」
 貰ったお菓子を食べて幸せそうに笑う日向を見て、降矢も来てよかったと口にする。
天気にも恵まれ、やわらかな風に温かな日差しが木々の間を通ってほんわかとした空間を作っていた。
賑やかに進む花見の中、降矢は隣でお菓子を頬張る日向に声をかけた。
「…悠夜さん」
「はーい?」
「誘ってくれてありがとう…また、来年来ようか」

今度は、二人で
そう続けようとした彼の言葉を遮るように、日向は嬉しそうに頷いてみせた。
「うん!来よう来よう!来年は何を作ろうか…っふふ、もう楽しみだね」
「…そう、だね 楽しみだ」
一口サイズにカットされたカステラを口に入れ、降矢は言えなかった言葉をカステラと一緒に飲み込んだ。
また、来年言えばいいと彼女を見て思ったのだ。


「シロさん」
「お嬢お疲れ様!」
 お互いを労うと、沙夜はとっておいたプリンを白影に差し出した。
「今日は手伝ってくれてありがとう。凄く助かったわ」
 先程していたスイーツの交換で渡していたプリンとは、少し違ったプリン。
白影が受け取れば、少し多めのホイップが乗せてあった。
「クリームいっぱいだなー!…うん!超うまい!!」
「ふふ、よかった」
頬を手で隠し笑う沙夜、白影は来てよかったと思った。
 寒すぎず暑すぎない、恵まれた天気の中参加者と楽しむお花見は一味も二味も違っていて。
一緒に作っていたあの時間ですら、楽しい思い出になっているのだ。
「お嬢ありがとう!俺いま超幸せ!また作ってくれよ!その時はまた一緒に手伝うからさ!」
プリンごちそうさま!と付け加えて白影が言えば、沙夜は目を丸くしてくすりと笑ってみせた。
何がおかしいのだろうと首をかしげれば、口元にハンカチを寄せられる。
ホイップが口の端に残っていたようだ。
「…うん、また一緒に作りましょう」
すっと差し出されたのは、沙夜の小さな指だった。
小指を絡ませ、二人はまた一緒にお菓子を作る約束をした。
次は何を作ろうか きっと楽しい思い出になるに違いないと、お互いに楽しみをふくらませていった。


「…来てよかった」
かのんからお茶を受け取った天藍がそう口にすれば、かのんは嬉しそうに微笑んだ。
「よかった、甘いもの苦手じゃないか心配だったんです」
「上出来、お茶と良く合うよ…このあられも良いな」
作った和菓子をお茶と一緒に食べる天藍に、かのんはほっと胸をなでおろす。
そんな天藍に、かのんから感謝の言葉を口にすれば、彼も同じように返した。
「一緒に来てくれて、ありがとう」
「…こっちこそ、また来よう」
また来よう、次の約束をすれば、かのんを呼ぶ声で話は途切れてしまって。
お互いに作ったスイーツの交換をし、楽しそうに笑うかのんを見て、天藍は気づかれないように笑った。
「…今度も、賑やかにするとしようか」


○サプライズ

「あ!いたいた!皆さーん」
 盛り上がるお花見の真っ最中に、先程まで聞いていた声が遠くから響く。
白い制服から私服に着替え、大きめの包みを持ったスタッフがやって来たのだ。
「あら、どうしたんですか?」
かのんがやって来た二人にそう尋ねると、待ってましたと言わんばかりにスタッフは笑った。
「ふっふっふ…じゃじゃーん!俺達からもさくらスイーツのプレゼントっす!」
「まだお開きになっていなくてよかった…皆さん、どうぞ召し上がって下さい」
包みを皆の前で広げれば、歓声の声が沸いた。
甘く仕上げたスイーツから、甘さを控えたスイーツ
いろんなお菓子が可愛らしくつめ込まれたそれに、一同は目を奪われた。
「皆さん、今日はお疲れ様でした」
「喜んで貰えてよかったっす!…お持ち帰り用にもおやつ作ったんで、まだまだ楽しんでください」

スタッフからのサプライズに、より一層盛り上がる花見はもうしばらく続いた。



依頼結果:大成功
MVP
名前:かのん
呼び名:かのん
  名前:天藍
呼び名:天藍

 

メモリアルピンナップ


エピソード情報

マスター らんちゃむ
エピソードの種類 ハピネスエピソード
男性用or女性用 女性のみ
エピソードジャンル コメディ
エピソードタイプ ショート
エピソードモード ノーマル
シンパシー 使用不可
難易度 簡単
参加費 1,000ハートコイン
参加人数 5 / 2 ~ 5
報酬 なし
リリース日 04月13日
出発日 04月19日 00:00
予定納品日 04月29日

参加者

会議室

  • [8]油屋。

    2014/04/18-21:15 

    こんばんはー!出発までもうすぐだね
    アタシもキアラさんと同じくサプライズの予定なので、相方は調理中居ないよ~
    お花見楽しみだな~♪

  • [7]雨宮 沙夜

    2014/04/18-13:54 

    いつの間にか、もう出発日前日ですね。
    結局、私はプリンを作ることにしました。
    お菓子作りにはシロさんも一緒に参加しますので、多少騒がしいかもしれません…

    全員、美味しいお菓子が出来上がると良いですね。
    お菓子作りもですが、皆様が作られたお菓子もとても楽しみです!
    あと、かのん様はお茶の準備までしてくださるのですね。有り難うございます。
    楽しいお花見になるといいですね。

  • [6]キアラ

    2014/04/16-22:20 

    挨拶が遅れてすまない。
    私はキアラっつーもんだよ、んで精霊はマキナのアミルカレ。
    ともどもヨロシク。
    遅れちゃったけど、よかったら私もお花見参加させてもらえると嬉しいかな。

    菓子はまだ悩んでるトコだけど、メレンゲとかどうかなって思ってるよ。
    どっかで桜の形に絞り出したのとか見た記憶あるんだよねぇ……。
    ああ、あとサプライズでプレゼントのつもりだから、菓子作りの時は精霊はいない状態になるよ。

  • [5]かのん

    2014/04/16-20:13 

    わ、お花見の件ご賛同ありがとうございます。
    こちらは、分からない所はスタッフが助太刀とのことなので、和菓子に挑戦したいと思っている所です。
    お花見には、スイーツと一緒に緑茶の用意をして行きますね。

  • [4]雨宮 沙夜

    2014/04/16-01:17 

    こんばんは。雨宮 沙夜と申します。以後お見知りおきを。
    パートナーはテイルスのシロさんです。合わせてよろしくお願いしますね。

    皆様でお花見の件ですが、私も賛成致します。きっと楽しい時間が過ごせるでしょうね。
    スイーツですが…そうですね…私はプリンとかにしようかなーと…ゼリーかプリンの二択で迷ってるところですね…

  • [3]日向 悠夜

    2014/04/16-00:40 

    こんばんは。日向 悠夜って言います。
    初めましての方は初めまして。よろしくお願いするよ。
    かのんさんとは前にご一緒したことあるね。改めてよろしくね?

    ふふ、たくさんの人と一緒にお花見するのも楽しそうだねぇ。
    お言葉に甘えて、私たちも混ぜてもらおうかなぁ?

    スイーツに関してはまだまだ何にも決めていないんだけれど…
    とりあえず、精霊の降矢さんと一緒に頑張って作ろうかなって考えているよ。

  • [2]油屋。

    2014/04/16-00:31 

    こんばんは、油屋。です。相方はディアボロのサマエルだよ。
    初めての人もそうでない人も宜しくね~
    良いですねお花見!ぜひ混ぜて下さい♪
    スイーツはお手軽にクレープでも作ろうかなって考えてました。

  • [1]かのん

    2014/04/16-00:21 

    こんばんは、かのんと申します。
    参加者の皆様よろしくお願いします。
    挨拶もそこそこで恐縮ですが、もし皆様がよろしかったらなのですが、
    用意したさくらスイーツを持ち寄って、皆でお花見しませんか?
    皆様がどのような物を用意されるのか、見てみたいなと(できれば味見も)思いまして・・・
    いかがでしょう?


PAGE TOP