プロローグ
●逃げるジャックオーランタン
ハロウィンを盛り上げるべく開放されるはずの『ジャック・オー・パーク』がオーガたちに占拠された、という話は瞬く間にA.R.O.Aへと伝わった。
かくして、日々オーガを倒すべく、アトラクション内の瘴気を払うべく足繁くパークへと通うウィンクルムたち。
いつものようにパークをどうにかしようと訪れた とある日。
なんだろうか。普段より騒がしいような……
どこかでオーガと戦闘でも起こっているのだろうかと、身構えて辺りを見渡すその視界に飛び込んできたもの。
わらわらわらわら~
カボチャたちが駆けていく。
モノによっては空まで飛んでいる。
至る所から大量に。
居合わせた仲間たちと思わず目を見合わせるウィンクルムたち。
そこへ、オーガたちの動向を報告する役目なるパーク内に身を潜めていた本部職員が、慌てたように走り寄ってきた。
うむ。説明せよ。
職員の話ではこうである。
パーク内アトラクションで恐らく登場する予定だったウサギとカモが、オーガたちの襲来で逃げ出した上
オーガたちが被っているものと同じジャックオーランタンを誤って被ったまま逃走中だとのこと。
オーガたちがパーク内で被っているジャックオーランタンとは、見た目カボチャそのものだが
何故かオーガたちに対してのみ特殊能力を与えてしまう厄介な代物。
不幸中の幸いか、オーガにしか効力は出ない為、ウサギやカモたちには何も影響は出ていないらしい。
しかしこのまま逃走されては、新たなオーガの下に転がり込んで特殊能力を与えかねない。
早く捕まえなくては、ということだ。
今のところ、パーク内オーガたちは各アトラクションを瘴気に満たしたり遊んだり増やしたり遊んだりげふん、諸々夢中なようで
あまり屋外にその姿は見えない。
もしも見つかりそうになっても、仮装をした上でその都度カボチャを被れば、仲間だと思われやり過ごせる確率も高そうだ。
かくして、かくれんぼしながら鬼ごっこのような一日が始まったのだった。
- - - >8- - - 以下 スタッフから活き活き説明された仮装。楽しそうな様子は気のせいということにしておこう - - - >8- - -
★ゴースト:かわいいおばけの仮装
パートナーを驚かすことが得意となり、サプライズがとても上手になる。
(不器用なサプライズでもばれにくくなり、サプライズがしやすくなります)
★ドラキュラ:紳士、淑女を思わせるドラキュラの仮装
甘噛みされたパートナーがしばらく素直になる。
★ジャックオーランタン:オーガよりもとってもかわいいデザインの、ジャックオーランタンの仮装
気分が高揚し、普段言わないようなことなどを言いやすくなります。また、表情が豊かになりやすくなる。
(※ジャックオーランタン伝説の元になった方が、酒好きだったところから。お酒に気分よく酔っているイメージです)
★ウィッチ:魔女の美しい仮装。つまり、女装の形となります。女装の形となります(大事なことなので2回以下略)
箒にまたがると、空を飛ぶことが出来ます(建物内での使用は出来ません)。
解説
●目的:逃走しているウサギ&カモの捕獲
ウサギ:
今のところアトラクションテント内には入り込んでいないようです。
花壇の中や木々の根元、甘い香りのする屋外カフェの椅子の下などに隠れてることが多い様子。
カモ:
噴水の中でプカプカしたり、木の上やテント屋根にいたり。
飛んで逃げやすいので、工夫して捕まえる必要があるかもしれません。
ジャックオーランタンを被ってしまったウサギとカモの数は不明。とにかくいっぱい。
捕まえ方や捕獲場所などは自由にお書き下さい(全てを捕獲出来なくとも大丈夫です)
なんせカボチャ頭で顔をすっぽり覆われているので、視野は狭いかもしれませんね☆
●騒ぎにオーガがテントから顔を出したり見回ったり。
見つからないように、タイミングを見て各自に配られたカボチャを被って上手く誤魔化したり隠れたりして
やり過ごして下さい。
ずっと被っていてもいいですが、視野が狭いわ隣を見てもカボチャ顔でパートナーが切なくなるわ、と
諸々支障はあるかもしれません。
●特殊な効果がついた仮装。雰囲気に紛れながらの捜索兼ついでにパートナーとハラハラドキドキ楽しめるといいですね☆
オーガにさえ見つからなければ、時折カフェやベンチで休憩も出来ます。
・自販機:ジュースやお茶など各種 <1本 50Jr>
・屋外カフェ:カボチャポタージュ<80Jr>
カボチャサラダのサンドイッチ<150Jr>
飴とビスケットの盛り合わせ<100Jr>
仮装は神人精霊共に必ずする形になりますが、効果発動は任意です。
発動させたい場合、神人か精霊の【どちらか片方】【一回限り】となりますのでご注意頂いた上で
プランにご記載下さい。
各仮装とその特殊効果については、プロローグをご参考下さい☆
●逃げた動物たち。捕まえた後とてもお腹を空かせていたらしい。
しょうがないなぁ。餌代寄付で1組<300Jr>消費。
ゲームマスターより
男性側ではすっかり珍獣GM、蒼色クレヨンでございます!
お世話になっておりますっ(ペコペコペコッ)
個別描写予定ですが、参加者様同士で協力されるのも大歓迎☆
少々やることが多いかもしれませんが、少しでもハロウィンを楽しんで頂ければ幸いです!
今回のハロウィンイベントについては、
公式インフォメーション、「10月エピソードキャンペーン【終わらないハロウィンパーティー!】」を
是非ともご参照下さい☆
リザルトノベル
◆アクション・プラン
セラフィム・ロイス(火山 タイガ)
不謹慎だけど面白いって思ってしまう 初めてのカクレンボで周りはハロウィン一色、隣にはタイガがいる 幸せだ 衣装さえ違えば…! ■ウィッチ。群青色にラメが夜空のよう神秘的(丈や詳細お任せ 何で僕が魔女の格好…っ!?(南瓜かぶされ、返し 飛ぶのは…興味あるし上からなら探しやすいけど 好きなのかな…?人ごみが苦手で騒がしい所は避けていたけど (いや倒れて迷惑かけたり、一人だと寂しいから嫌だったんだ。変わったのはきっと) 赤面)…敵わないな)でも今楽しいよ。タイガと一緒だから ほら挟み込もう ★重さで高くは飛べないだろうと上から追いたて 南瓜は被って動けないと判断。南瓜マスク着用。屈んでテント上でやり過ごす 誤魔化せますよう |
セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
ゴーストの格好をして行くぜ。 白い布被って黒いくりくりおめめ、な感じので。 オーガに遭遇しないように気を付ける。 オーガと距離のあるうちにカボチャ頭を被りやり過ごす。敵が去ったら外す。探すのに邪魔だし。 野外カフェでパークの地図を開き作戦会議だ。 土と木の多い区域や水の多い所を地図で確認しそこを重点的に廻ろうぜ。オーガもあまり来ないかも? サンドイッチもぐもぐしつつ地図にマーク。 噴水のカモは死角からそーっと近づき、後ろから捕まえる。仮装用の布は多めに用意し、それをばさーっと被せて捕まえるのも良いな。そのまま括っておけるし。 ウサギは木の洞や根元、茂みの中を探すぜ。後ろから捕まえる。草をおやつにして気を引く。 |
蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)
仮装:ウィッチ 空を飛ぶ特殊効果を使う為だから、仕方なく カボチャと箒、捕獲したウサギとカモをいれるゲージ・捕獲用の網を、フィンと一緒に持ちパーク内を行く オーガの気配に注意して、成るべく物陰に隠れながら フィンと協力して死角の無いよう警戒 オーガの気配がしたら、親指立て合図の上、カボチャを被る 花壇の中・木々の根元、木の上やテント屋根を中心に カボチャを被っているから視覚は狭い 後ろからそっと歩み寄り捕獲を狙う 木の上やテント屋根の高い位置に居るカモは、フィンに周囲の警戒をお願いし、俺が箒に跨り飛んで捕獲に 投げ網で捕まえる ある程度ゲージが満タンになったら、一旦職員の元へ引き渡しに 屋外カフェで休憩 お疲れ様と乾杯 |
葵田 正身(いばら)
ドラキュラの仮装です カボチャも被ります が、いばらが怯えているので 被るのは必要時、オーガと遭遇しそうになった時のみにします いばらよりは身長分遠くまで見渡せるので私は高い場所や広域を確認 複雑な構造のパークなので死角に注意。 ウサギやカモ、と捜すよりはオーガへの警戒も併せて 動くカボチャを捜すようにします アトラクションテント内への侵入を防ぐ為 敢えてテント近くを重点的に捜索 発見したら追い立て、動物達がいばらに気を取られた所を 相手の視野の狭さを利用し後ろから近付いて抱え上げ。 場所柄敵と遭遇確率が高く緊張する場面も多いかと。 ある程度捕獲したらカフェ休憩を。 出来ればカボチャの無い状態で言って貰いたいな 微笑ましい |
◆
クッション製のもこもこジャックオーランタンの帽子を頭に乗せ、黒と橙の衣装に身を包んだ いばら は
足元や草むらを注意深く見つつ時折、ドラキュラの衣装纏う 葵田 正身 へチラリと視線を送る。
マントが追加されたものの、漆黒の服装はいつも通りなのだけれど。
(ちょっと……こ、怖いですね)
似合い過ぎて。
穏やかで誠実な性格の葵田が黒でしっかりと正装すると、本人の意思に関わらず魅惑的雰囲気が増長されたらしく。
葵田本人も、妖しい色気帯びたことは露も知らぬけれど、いばらの普段とは自分を見る気配が少々違うことは察知していた。
特に、オーガ回避対策用に配られた大きなカボチャ頭を、被ったまま移動しようとした時の怯えた瞳には。
(警戒する子猫みたいで可愛くはあったんですけどね)
折角今少しずつ打ち解けてきているのだ。怖がらせるのはやぶさかというもの。
「いばら、そっちはどうだ?」
そんなわけでオーガに遭遇するまではカボチャ頭は脇に抱え、いつもの落ち着いたサファイアの瞳を葵田は向ける。
ようやく仮装の葵田に慣れたいばら、その表情にそっと安堵を浮かべながら。
「あ、ウサギ発見です」
「……よくそんな所に居るの見つけたね」
「僕ならこのあたりに隠れるかなって。あ、かくれんぼは得意なんです!」
完全に姿隠していた白いふわもこを、背丈のある草をかき分け後ろからそっと捕まえる様子に、葵田が感心の声をかけた。
照れくさそうに、でもどこか誇らしげに『見つからなさすぎて弟に先に帰られます』と
夕焼け色の瞳を輝かせ伝えてくるいばらを、微笑ましそうに見つめる。
じゃあオーガから隠れる時も頼りにしてる、なんて口にしながら。
「で、いつまでそうしてるんだ?」
「いえあの……先日ペタルムと戯れられたので今回も上手く……いくかと思ったんです、けど……」
わし、とウサギの胴体に両手をかけたはいいものの、ペタルムよりずっと小柄な小動物。
抱っこなど経験したことがほとんど無いいばらはオロオロし出す。
「やわらか……こ、これどう持てば……」
「こうかな」
いばらの手に片手添え、もう片手はウサギのお尻を支えると
静かに持ち上げそのままいばらの胸元へ葵田は持っていってやる。
『わぁ……!』と感動の声を上げるいばらに優しく視線やってから、葵田は再び歩み出した。
身長差分で上手く役割分担する2人。
足元をいばらが担当し、高い場所や広域を葵田が注視する。
その視界に時折ウィッチなウィンクルムが舞うのを捉えると、あっちは探してくれているみたいだ、といばらにも指差して伝えてやる。
頷いた時、いばらの両の目が今テントから出てこようとするオーガを捉えた。
動物たちがテントに入り込まないよう、二人はあえてテント周辺を捜索していたのだ。おかげでオーガに気づくのも早かった。
「こちらに気付いていないなら、動かずいるよりもっと死角へ移動しましょうか」
かくれんぼの極意かのように小声で語りながら、音を立てず後ずさるいばらに葵田も続いた。
オーガと動物たち、どちらもカボチャを被っていることに変わりはないなと、動くカボチャを集中して捜す葵田のおかげで
常に上手く身を隠し、隙を見てはウサギやカモを追い立て捕まえる作戦はとても順調に進んだ頃。
カフェを見つけた葵田が休憩を提案した。
(……僕を気遣って、ですかね)
あえて口にしない優しいパートナーの心は、いばらも少しずつ感じられるようになっていた。
きっと、常に緊張強いられる作業で自分が気疲れしないかと考えてくれたのだろう、と。
互いに視線交わし微笑み合うと、足並み揃えてカフェへと向かった。
「いばら、何がいい?」
買ってくるよとすでに中腰で立っている葵田に、遠慮するような戸惑った瞳を一瞬向けるも。
「あの……じゃあお願いします。えっと、これ二つ……」
お言葉に甘えてくれたいばらへ、気にするなとポンとそのカボチャ帽子を優しく叩いてから葵田は背中を向けた。
マント翻したその姿を見送りながら、ふといばらは自分の仮装を見下ろして何かを考える。
ポタージュを二つトレーに乗せて戻ってきた葵田は、いばらの正面に座ると不思議そうにその表情を見つめた。
するといばらは、徐ろに帽子を深く被り直し、回避用カボチャまでその上からずぽっと被った。
呆気に取られた葵田へ、いつもの控えめな声色でない、真っ直ぐないばらの声が飛ぶ。
「葵田さんありがとうございます仮装格好良いです!」
仮装効果をいばらは発動したのだ。
照れくさくて口に出来なかった言葉。カボチャから勇気をもらう。
―― 出来ればカボチャの無い状態で言って貰いたいな。
きょとん、のち吐息だけで笑えば、思わずどんな顔して言ってくれてるのか見たくなって。
それでも心から微笑ましく胸が温かくなるのを感じると、葵田はそのささやかな願望をポタージュと共に
そっと喉の奥へとしまうのだった。
◆
「ゴーストの格好していくぜ」
「魔女の格好をして行くよ」
同時に口にして、決めた仮装に身を包んだ セイリュー・グラシア と ラキア・ジェイドバイン。
お互いの格好をしげしげと見つめては笑い合う。
「あ、セイリューのそのお化け可愛い。白地のトコに大きい黒い目がくりくりしてて」
「ラキアも魔女の格好似合うなー。うん、美人美人」
「あはは、ありがとう」
全く他意無く素直に言葉にするセイリューをラキアもよく分かっている。
気にすることなく嬉しそうに箒も装備すれば、さてどこから探そうか……と思案しながら着替用テントを出た瞬間、『あっ』と小さく叫んだ。
ぐいっと手を引かれ首を傾げたセイリューだが、その意図はすかさず隣でカボチャ頭をすぽっと装着したラキアの行動で、すぐに察しがついた。
まだ距離はあるが、アトラクションのテントとテントの間をカボチャ頭のオーガが闊歩していたのだ。
音を立てないようセイリューもお化けのフードの上からカボチャを被る。
「セイリュー、その姿でカボチャ頭を被るとてるてる坊主みたいだねぇ」
まさに、巨大てるてる坊主ハロウィンバージョン★状態なセイリュー。
くすくすと思わず漏れるラキアに、てるてるお化けの指がシーッと口元に寄せられたり。
「行った……かな」
「ああ、もう大丈夫そうだ。そこにカフェあるし、ちょっと地図見て作戦会議しようぜ」
「あれ?カボチャ取っちゃうの?」
「いや探すのに邪魔だしさ」
残念~と冗談半分に言うラキアに、また後でなっ、と笑って返してからセイリューはラキアとカフェのベンチへと移動した。
そこでパーク内の地図を広げ、注文したサンドイッチが来ればモグモグしながらセイリューは考え
地図にマークを付けていく。
「土と木の多い区域や水の多い所、そこを重点的に廻ろうぜ。オーガもあまり来ないかも?」
「地図で事前チェックなんて、セイリュー、かなりヤル気だね? 自然ぽい所中心に回るのは賛成。動物の本能的に居そうだよね」
「仮装用って言って布も多めに貰ったし、それをばさーっと被せて捕まえるのも良いな。そのまま袋みたいにして括っておけるし」
「あ、ちゃんと考えて布貰ってたんだ」
素晴らしくやる気だった、と今実感したラキアから感嘆の声が出た。
そんなラキアの言葉にセイリューは当然!と返す。
「早く安全に捕まえてやらないと、動物たち可哀想だろ?」
「うん、そうだね」
―― 万一、オーガに見つかった動物たちが酷い目に遭うのを見たら、きっとラキアが悲しがるだろうし。
そんな思いはわざわざ口にしない。まぁバレちゃってるだろうけどさ。
セイリューの心を受け止めるように、ラキアはポタージュを含んだ口の端をこっそり綻ばせるのだった。
噴水でプカプカ寛ぐカモを、カボチャ頭で見えない死角からセイリューはそーっと近づき、後ろから捕まえる。
そのすぐ傍では、テント上で日向ぼっこしているカモを見つけたラキアが、魔女仮装の効果を発動して
箒で緩やかに飛んで捕まえていた所だった。
カモを抱えオーガに注意しようと周りを見渡すと、ちょうど向こうのテント上に他の魔女の姿が映った。
ラキアはくすっと笑みを零す。
「皆基本的に考える事は同じだね」
ほらセイリュー、なんて仲間の勇姿を教えてやる。
見上げて視界に捉えると、頑張れーと手を振りながらセイリューは降りて来るラキアをちらりと見た。
(楽しそうで良かったな)
箒に跨って飛ぶラキアの表情に、ホッとする。
生き物を慈しむラキアにとって、結構緊張感強いんじゃないかなこの捜索……とどこか心配していたけれど。
大丈夫そうだ、と確認して、セイリューは今度はウサギ捕獲へと勤しみ始めた。
草をぷちぷちっと拝借し木の洞や根元のウサギを誘き出す。
「セイリュー、居た?」
「居た居た。ウサギって土の有るトコ好きそうだもんな」
「その木の上にカモもいる?」
「えーと……」
ウサギの口へ草のおやつをやりながら幹をなぞるよう、セイリューは徐々に視界を上へと移動させる。
かなり上の方、太い枝の脇から尾のついたプリッとしたお尻が見えた。
「りゃ。結構高い所にいるなー」
「ならそっと登って捕まえようか」
「オッケー、俺も登るぜ!」
空気穴も付けた布兼袋に捕まえたウサギを優しく入れてから、ワクワクとした顔でセイリューがラキアの後に続いた。
やっぱり。木登りとか好きそうだよねセイリュー。
その行動を読んでいたラキア、笑みを浮かべ一緒に幹へと足をかける。
それにしても、やけに手際よく登るセイリューに素朴な疑問が浮かんだ。
「なんか慣れてるねぇ」
「ほら、たまにクロウリーとトラヴァーズが木に登って下りらんなくなるからさ。そのたんび俺が救出に登ってるから」
「……セイリュー、庭には子猫に危険な植物もあるから、あまり外に出さないようにって……」
「あっやべ……!」
―― 一緒に暮らしてるのに……一体いつの間に……
バレちゃった、といわんばかりの表情になったセイリューに、仕方なさそうにラキアは肩をすくめるに留める。
子猫たちと遊んでるセイリューは本当に楽しそうで、それを見ているのも好きなのだ。
それ以上追求せず、2人仲良くカモを抱き上げるのだった。
◆
草むらやテントの物陰を利用し隠れながら移動しているのは、黒艶髪なびかせた美しい魔女もとい、蒼崎 海十。
あまりにも似合うロングヘアウィッグに何度も見蕩れては、いけないいけない……と首をふりふりしながら
彼のパートナー、フィン・ブラーシュ はその背後を護るようついて行く。
オーガを見つけた方が親指を立てて合図することで、声を上げることなくすかさずカボチャ頭を被ることが出来る
息ぴったりの作戦は、お互いを信頼し合っている証拠。
どちらかが動物を追うのに集中していれば、必ずもう片方がその死角を補って周囲を見張って行動していたおかげで
海十とフィンが借りてきたゲージには、すでに幾羽ものウサギとカモが捕まえられていた。
「これ以上入れると、狭くなって可哀想だな」
「一旦職員さんの所へ渡しに行こうか」
心配そうにゲージの中を覗く海十へ、フィンは優しく提案した。
賛成して歩み出そうとした海十の視界に、テントの上で暖を取り合うように群がるカモの姿が映る。
「飛べるのは一回だけみたいだけど、使うなら今かな?」
「ああ、いいと思うよ」
「あ……でもさ、この捕獲用の網で絡められたとして、バランス崩してカモたち落ちたりは」
「大丈夫。俺がマントで優しくキャッチするよ、任せて」
同じく借りてきた投げ網片手に、呟かれた一抹の不安もフィンはすぐに笑顔で払拭してくれる。
ドラキュラのマントを翻してウィンクしてみせるその姿が、あまりに様になるからずっと見づらいじゃないか……
なんて、パートナー兼恋人になってから大分経つのに、未だこれくらいで染まりそうになる己の頬を
慌てて隠すように、海十は『じゃ、じゃあっ、任せるな』と箒に乗って飛び上がった。
空へ舞っていく魔女(仮)を、フィンはとても満足そうに見つめる。
(うんうん、こんな機会でもないと見れない姿だよね)
着替用テントでも、これは人助け……ならぬ動物助けだ……仕方ないんだ……っ、とずっと唱えていた海十を思い出しながら
来て良かった、と心から感動しているドラキュラ氏1名。
カモたちを驚かさないよう背後からふわふわ近づき、いくぞ、と網を投げるタイミングを合図で伝えてくる海十に気付いて
おっと仕事仕事、とフィンも思考から戻る。
投げた網ごとカモたちが落下し、それがフィンにより無事マントでキャッチされたのを見届けると
海十は安堵の表情を浮かべた。
と、その見晴らし良い視界に手を振る人影の姿。
セイリューがよいえがおで親指を立て、ちょうど同じタイミングで飛んでいた魔女姿のラキアも
お見事と唇の形で告げていた。
「っ!?」
見られた……!
幸か不幸か……着替え終了から今まで仲間に出くわしていなかった為、羞恥心は何とか引っ込んでいた海十だったのだが。
誤魔化すように曖昧な笑顔を返すも、フィンの元へと降り立った時にはすっかり耳まで赤く染まっていた。
「? 海十、どうかしたの?」
「い、いや!何でもない、にゃん!」
「……」※悶え
「……」※絶句
「疲れたならそこのカフェで休憩しようか」
「ち、違……! 今のは……!」
仮装小道具代わりになるならと装着していた、「ネコマタ手袋」効果がまさかの今、発動。
お揃い♪ とフィンが喜んでるならいいか……と思ってしまったのは惚れた弱みだったのか。
そういえば稀にそんな効果が出るんだっけ、とすぐに手袋のせいだと気付いたフィンは
必死に弁明しようとする海十の背中へ手を回し、大丈夫分かってるよ、と華麗なフォローと優雅なエスコートでカフェへと誘うのだった。
「可愛かったんだから気にすることないのににゃん」
「フィン、それはフォローじゃ無いぞ……」
効果なのかわざとなのか、どこから突っ込めばいいか分からず、一斉に沸いた羞恥心を落ち着かせグッタリする海十の傍に
温かな湯気立つカボチャポタージュのマグカップが置かれる。
さりげない気遣いに、海十の口元がゆっくりと弧を描いた。
「フィンは疲れてないか?」
「全然」
今度はフィンが笑顔を浮かべる。
意識せずに自然とお互いを想い合えるのは、きっとゆっくり歩み寄って深めた絆の力。
とりあえず一旦……
そうだね、一旦……
瞳で会話しどちらからともなく、マグカップを掲げる。
「お疲れ様」
カチン、とマグカップが優しい音を立てた。
ネコマタウィッチとネコマタドラキュラな個性溢れる仮装は、カボチャ頭を被らなくとも下っ端オーガの目は勝手に逸らされたとか。
ナンダ、アタラシイ種ノ仲間カ なんて ――。
◆
「盛大に逃げたなぁ……よし、やったろうぜ!セラ!」
職員から拝借した捕獲用麻袋を大量に肩に背負って、火山 タイガ は気合の一声を放った。
オーガの動き次第でいつでもカボチャ頭も被れるよう、サバイバルな気配読みを頼もしく遂行している様子に
セラフィム・ロイスは破顔しそうになるのを、大きな魔女帽子で隠している最中。
(不謹慎だけど面白いって思ってしまう)
生まれて初めてのかくれんぼ。
周りはハロウィン一色。お祭りのように胸躍らせるパーク内の装飾たち。
そして、隣には一緒に仮装してくれている大きなカボチャお化け、タイガがいる。
セラ、と呼んでくれる大事な人。
一時の頃、彼の口から『ロイス』としか呼ばれない時間を味わったことがある。
セラフィムの心にはまだその切なさが刻み込まれていた。
―― 幸せだ。
隣に居てくれて、共に思い出を作っていけるのが。親しみを込めて名前を呼んでくれるのが、本当に……
衣 装 さ え 違 え ば …… !
しみじみ、と実感して無意識に下がった自らの視界に、夜空の星たちが瞬いているような
群青色のラメなスカートが飛び込んだ瞬間、
セラフィム、一気にがっくり。
「ねぇタイガ……何で僕が魔女の格好……、んぶっ!?」
「しっ」
なんの仮装をしようか迷っていた所にタイガから、絶対似合う!と意気揚々と手渡されたこの衣装に
何度目かの文句を言おうとしたセラフィム、オーガの気配を察知したらしいタイガにより回避用カボチャを勢いよく被せられた。
タイガの緊張はらんだ表情から読み取れば、自分が持っていたカボチャ頭をセラフィムもタイガへ被せ返してやる。
「……やり過ごせた?」
「おう。とりあえず行っちまったみたいだ」
ありがとう、とお礼はちゃんと言ってから。
で……? とカボチャ頭を脱ぐと、しっかり先程の物申しへの返答をタイガへ促すセラフィム。
そんな視線を受けると、タイガはむしろ不思議そうに首を傾げた。
「だって、魔女で飛べるんだぜ? セラそういうのや賑やかなの好きだろ?」
「……え?」
意外な回答が返ってきて、今度はセラフィムが首をこてんと倒す。
「飛ぶのは……興味あるし上からなら探しやすいけど。好きなのかな……?」
タイガは己の感情に自覚の無い恋人へ、真っ直ぐに教えてやる為にその瞳を覗き込んだ。
(大人にみえてそわそわが分かるっていうか。好きなのに楽しみ方わかんねーんだろうな。育ちできっと)
「好きだって。今、目キラキラしてる」
俺と同じだ、と嬉しそうに顔を寄せてくるタイガの、カボチャフードから覗いた黄金色の前髪を
頬に柔らかく受けたセラフィムは、ぱちくりと瞬きをした。
人ごみが苦手で騒がしい所は避けていたはずだけど。
どうして彼には分かるんだろう。賑やかなのは決して嫌いじゃない自分の心が。
(……いや倒れて迷惑かけたり、一人だと寂しいから嫌だったんだ。変わったのはきっと……)
少しずつ頬へ集まる熱を感じて、改めて自覚する。
――……敵わないな。
自分よりも自分のことを分かってくれている存在が、セラフィムを微笑ませた。
「そうだね。好き、なのかも。でも今も楽しいよ。タイガと一緒だから」
向けられた温かな微笑に、へへっ、とタイガは照れ笑いを浮かべた。
「ほら挟み込もう」
「おう! ヤベー時は手鏡で知らせるからさ」
テント上に群がるカモカボチャもとい、カボチャ頭のカモたちを見つけると
セラフィムはどこか楽しげな笑みをもはや隠すことなく、箒に跨り宙へと浮かんでいった。
小動物が、小さめとはいえカボチャ頭なんて被っていたら重さでそう高くは飛べないだろうというセラフィムの判断に委ね、
上空から此方へ追い立てられたカモを、タイガは周囲に常に気を配りつつ捕獲待機する。
オーガに気づいたら、持ってきた手鏡の反射を合図に。
幸い、今の所周辺に危険な気配は感じられず、再び上空へ視線をやったタイガの瞳は、セラフィムの翻るスカートを映した。
(飛んでるセラのスカート際どっ……! いやいやいや)
俺どこ見てんだっ、今見るところはカモたちだろ!
邪な欲望を振り払って、セラフィムが上手く追い立てたカモたちを次々と片手で捕まえては
しっかり餌を入れておいた麻袋に誘導してやる。
(俊敏で野性的な動きなのに、仮装のおかげでなんか可愛く見える)
空からタイガの様子を微笑ましく見つめるセラフィム。
と、その視界に他の魔女たちの姿を偶然捉えた。
……
…………うん?
「セラー? ここのカモたちは全部捕まえたぞー?」
中々下りて来ないセラフィムに、タイガは声をかけた。
「……ねえタイガ」
「なんだ?」
「他の皆の、魔女の仮装……ロングスカートだったんだけど」
「え」
「これしか無かったって本当なんだろうね!?」
「ほっ、本当だってー! ほら、あれだ、セラが悩んでるうちに長いのは取られちまってたんだ!」
ロングブーツを履いているとはいえ、どうしても絶対領域と巷で呼ばれる太ももが覗く魔女スカート。
神秘的な色でセラに似合いそう、って思ったのは勿論本当だけれど。
言えない。実はロングもあったけど、こっちをあえて選んだ、なんて言えない。
「おっとオーガだ……!」
カボチャ頭を突如ボーリングのように転がし囮にすれば、ほらセラ今のうち!と手を引くタイガの背中に注がれる視線。
……誤魔化してないか?
暫くの間、セラフィムから疑惑の眼差しを向けられるタイガの姿があるのだった。
依頼結果:大成功
MVP:
名前:葵田 正身 呼び名:葵田さん |
名前:いばら 呼び名:いばら |
エピソード情報 |
|
---|---|
マスター | 蒼色クレヨン |
エピソードの種類 | ハピネスエピソード |
男性用or女性用 | 男性のみ |
エピソードジャンル | イベント |
エピソードタイプ | ショート |
エピソードモード | ノーマル |
シンパシー | 使用不可 |
難易度 | 簡単 |
参加費 | 1,000ハートコイン |
参加人数 | 4 / 2 ~ 4 |
報酬 | なし |
リリース日 | 10月14日 |
出発日 | 10月20日 00:00 |
予定納品日 | 10月30日 |
参加者
- セラフィム・ロイス(火山 タイガ)
- セイリュー・グラシア(ラキア・ジェイドバイン)
- 蒼崎 海十(フィン・ブラーシュ)
- 葵田 正身(いばら)
会議室
-
2015/10/19-23:56
プランは提出出来た。沢山ウサギやカモを捕まえられると良いな。
魔女仮装は人気高いな!遠目に眺めてニヨニヨとするぜ!
皆、楽しい時間を過ごせますように! -
2015/10/19-22:26
:タイガ
もう出発直前だけどこっちも、改めて。俺タイガとセラフィムだ
正身といばらは初めましてだよな。皆もよろしく頼むぜー!頑張ろうなー!
衣装はセラ魔女、俺ジャックオーランタンかなー。今んとこ
皆の戦術や衣装の詳細も楽しみにしてるぞー -
2015/10/19-00:54
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2015/10/19-00:53
あらためまして、蒼崎海十です。
パートナーはフィン。
皆様、宜しくお願いします!
俺はウィッチに扮して、高い所に居るカモを捕獲出来たらなって思ってます。
(…仕方ない、仕方ないんだ…!)
フィンはドラキュラに扮す予定だそうです。マントが捕獲に役立ちそうとか何とか。
オーガから隠れて、一匹でも多く捕まえられるよう、頑張りましょうね!(ぐっ) -
2015/10/18-02:01
葵田と申します。精霊はいばら、と。宜しくお願い致します。
策を弄するタイプでも無いので、手堅い方法で捕獲を試みる事になりそうです。
……ああ。そう云えば仮装もしないとなりませんね。 -
2015/10/17-09:34
セイリュー・グラシアと精霊ラキアだ。
葵田さんは初めまして!
セラフィムさんと蒼崎さんは今回もヨロシク!
ウサギとカモの回収も楽し……ゲフン、大変そうだ。
ちょっと休憩もしたいし。オーガからは隠れなくちゃならないし。
今回の最大の敵は、プラン書く段階のモ=ジスウだな!
(拳握り SE:ゴゴゴゴゴ・・・)
そして皆の仮装も楽しみにしているぜ。
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2015/10/17-00:31
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2015/10/17-00:18